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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

PAMPs, Alarmins, DAMPs

■PAMPs(pathogen-associated molecular patterns:病原体関連分子パターン)とは,サイトカインや先天的な免疫に関連する蛋白の産生に繋がる細胞内シグナルを起こす物質のうち,エンドトキシン(LPS)をはじめとする病原微生物に関連した外因性の物質である[1].以下にPAMPsを挙げる.
 Triacyl lipopeptide
 Peptideglycan
 Lipoprotein
 dsRNA
 LPS(endotoxin)
 Flagellin
 Diacyl lipopeptide
 ssRNA
 Unmethylated CpG DNA
 Uropathogenic E.coli
 Lipoteichoic acid

■alarminは炎症反応に繋がる各種の内因性物質の総称である[1,2].以下にalarminsを挙げる.
 Necrotic tissue
 HSPs(HSP-60, HSP-70, Gp-96)
 Biglycan
 Self-messenger RNA
 Extra domain A-containing fibronectin
 Fibrinogen
 Polysaccharide fragments of heparin sulfate
 Oligosaccharides of hyaluronic acid
 Oxidized low low-density lipoprotein
 Surfactant protein A in the lung epithelium 1
 Neutrophil elastase
 Chromatin-IgG complex
 β-Defensin 2
 HMGB-1
 S100s
 HDGF
 IL-1a
 Uric acid
 Cathelicidins
 Defensins
 EDN
 Galectins
 Thymosins
 Nucleolin
 Annexins
※つい最近までalarminはDAMPs(danger-associated molecular patterns)と呼ばれていた[2].これは下記のdamage-associated molecular patternsと非常に混同されやすく,古い文献を読む際や,勘違いしてDAMPsを使用している文献も散見するため,注意が必要である.

■外因性物質であるPAMPsと内因性物質であるalarminsを総称してDAMPs(damage-associated molecular patterns:傷害関連分子パターン)と呼ぶ[1,3]

■RAGE(receptor of advanced glycation endproduct)やToll-like receptor(TLR)をはじめとするPRRs(pattern-recognition receptors)の発見は敗血症の病態生理のより正しい解明に大きな進歩をもたらした.すなわち,従来は基本的には,ある受容体はリガンドとしてある特定の病因物質(敗血症の場合には病原微生物)を認識して細胞内シグナルを誘発し,サイトカインの産生に結びつくと考えられていた.しかし,PRRsは特殊なアミノ酸配列ではなく,PAMPsやalarminなどのある種の普遍的で共通の立体構造を感知するmulti-ligand receptorである[4].すなわち,重症敗血症病態に関連した受容体はリガンドと1対1対応ではなく,ひとつの受容体で各種のPAMPs,alarminsをリガンドとして捉え,サイトカイン産生につながる細胞内シグナルを活性化し始める[5,6]

■PAMPsには実に様々なものがあり,LPS(リポポリサッカライド),すなわちエンドトキシンは勿論PAMPsではあるが,逆に言うとPAMPsのひとつに過ぎない.言い換えればエンドトキシン以外にも病原微生物由来の多種多様の物質,すなわちPAMPsがリガンドとしてPRRsに感知され,サイトカインの産生に繋がる細胞内シグナルを惹起するということである.この考えに立てば,エンドトキシン血中濃度が重症敗血症の重症度を必ずしも反映しないという結果[7]も,測定法に関する議論の余地はあるものの,納得できる.現在,エンドトキシン血症という概念からPAMPEMIAという概念に変わりつつある.
※臨床上,エンドトキシンの重要性に疑問がもたれはじめてきており,PMX-DHP(エンドトキシン吸着カラム)の有効性についても確たるエビデンスがあるわけでなく,CHDFに勝るものであるかはいまだに不明である.医療費のことも考慮すれば,次のSSCG 2012においてPMX-DHPが加えられたとしても推奨度はかなり低いものであると推察される.

■サイトカインの産生を促す細胞内シグナルを引き起こす物質はPAMPsのみと考えられてきた.しかし,そのような細胞内シグナルは内因性の物質によっても引き起こされることが判明してきて,alarminという概念が確立された.「死のメディエータ」であるHMGB-1もサイトカインであると同時にalarminの代表格でもある.そしてalarminには壊死組織も含まれている.つまり,どこかに感染巣があり,感染が重篤化してその部分の組織が壊死に陥り,壊死組織が免疫担当細胞に感知されると,PAMPsがなくてもPRRsを介してサイトカインの産生が促されることになる[1].また,autophagyに陥った細胞もまたalarminとして作用することも最近報告されている[8]

[1] Harris HE, Raucci A. Alarmin(g) news about danger: workshop on innate danger signals and HMGB1. EMBO Rep. 2006; 7: 774-8 Free PMC Article
[2] Oppenheim JJ, Yang D. Alermins: chemotactic activators of immune responses. Curr Opin Immunol 2005; 17: 359-65
[3] Rittirsch D, et al. Harmful molecular mechanisms in sepsis. Nat Rev Immunol. 2008; 8: 776-87 Free PMC Article
[4] Cinel I, Opal SM. Molecular biology of inflammation and sepsis: a primer. Crit Care Med 2009; 37: 291-304
[5] Kawai T, Akira S. TLR signaling. Cell Death Differ 2006; 13: 816-25 Free Full Text
[6] Tsujimoto H, et al. Role of Toll-like receptors in the development of sepsis. Shock 2008; 29: 315-21
[7] Lelly JL, et al. Is circulating endotoxin the trigger for the systemic inflammatory response syndrome seen after injury? Ann Surg 1997; 225: 530-41 Free PMC Article
[8] Delqado M, et al. Autophagy and pattern recognition receptors in innate immunity. Immunol Rev 2009; 227: 189-202 Free PMC Article
by DrMagicianEARL | 2011-10-23 11:28 | 敗血症

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