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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

敗血症と細胞死「ネクローシス,アポトーシス,オートファジー」

■重症敗血症/敗血症性ショックにおいて臓器障害が発症するのはその臓器を形成している細胞の機能障害,あるいは細胞死に起因すると捉えることができる.従来は細胞機能障害さらには細胞死はnecrosis(壊死)によるという前提に立ったものであった.その後重症例における細胞死の様式として,necrosis外にもapoptosis(アポトーシス:プログラム細胞死)という細胞死の形態があることが提唱された[1]

■apoptosisは個体をよりよい状態に保つために積極的に引き起こされる,管理・調節された細胞の自殺,すなわちプログラムされた細胞死である.正常の細胞におけるapoptosisはmitosis(細胞分裂)に多雨する細胞数の制御機構でもある.このapoptosisを活性化させる外因性経路として,現在,THN-R1やFasなどのDeath受容体シグナルが知られるようになった.

■そして重症敗血症/敗血症性ショックにおける細胞死に関する一番新しい話題はautophagyである.autophagyとは「自食作用」「自己融解」とでも訳すべき病態であり,autophagosome の出現のもと細胞質の重度の空胞化や細胞内器官の融解が起こり,細胞が死亡していく病態[2]である.
※2011年11月13日に群馬大学の佐藤健教授と佐藤美由紀助教がミトコンドリアの母性遺伝の仕組みを解明したことをScience Onlineで発表した.いわゆるミトコンドリア・イブ説であるが,父方の精子のミトコンドリアが受精卵内でどのように分解されるかこれまで分かっていないかった.本発表では,父方のミトコンドリアがautophagyにより消滅したと報告されている[3]

■autophagyは栄養環境が悪化したときなどに細胞が自らの蛋白質を分解する生理現象である.蛋白質のリサイクルを行ったり,細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体のホメオスタシス維持に関与している.細胞は飢餓状態になると蛋白合成が低下する.このような状況ではautophagyが生じ,自らのアミノ酸を他の細胞に譲り渡す.autophagyでは自己貪食空胞autophagosomeの中に細胞内小器官が取り込まれ,リソソームと融合して細胞内消化が生じる.このようなautophagyはAlart Cellをはじめ,膵臓,副腎など,sepsis病態のさまざまな細胞に認められる.sepsis病態で活性化されるFADDを抑制すると,apoptosisだけでなく,このautophagyも抑制できる.

■いかなる場合に細胞はnecrosis に陥り,あるいはapoptosisやautophagyに陥るかはまだ明確には解明されていない.ストレス,即ち侵襲が軽度ならばautophagyが,中等度ならapoptosisが,重度ならばnecrosisが発生する説が発表されている[4,5].この説に立てば,apoptosisやnecrosisが発生しない程度の弱い侵襲でも細胞はautophagyを発生して,それが臓器障害に繋がる可能性があるということである[5,6].今後重症敗血症/敗血症性ショックの病態の根幹をなす細胞障害,細胞死への対策を介しての治療を考える場合には,従来のnecrosisやapoptosisのみならず,autophagyの評価法,発生機序,その制御の方法などについても検討する必要があると考えられる[5,7,8]

[1] Clark JA, Coopersmith CM. Intestsinal crosstalk: a new paradigm for understanding the gut as the “motor” of critical illness. Shock 2007; 28: 384-93 Free PMC Article
[2] Nishida K, et al. Crosstalk between autophagy and apoptosis in heart disease. Circ Res 2008; 103: 343-51 Free Full Text
[3] Sato M, Sato K. Degradation of Paternal Mitochondria by Fertilization-Triggered Autophagy in C. elegans Embryos. Science 2011 Oct 13(Online)
[4] Delgado M, et al. Autophagy and pattern recognition receptors in innate immunity. Immunol Rev 2009; 227: 189-202 Free PMC Article
[5] Hotchkiss RS, et al. Cell death. N Engl J Med 2009; 361: 1570-83
[6] Nishida K, et al. Crosstalk between autophagy and apoptosis in heart disease. Circ Res 2008; 103: 343-51 Free Full Text
[7] Watanabe E, et al. Sepsis induces extensive autophagic vacuolization in hepatocytes: a clinical and laboratory-based study. Lab Invest 2009: 89: 549-61 Free Full Text
[8] Hsieh YC, et al. When apoptosis meets autophagy : deciding cell fate after trauma and sepsis. Trends Mol Med 2009; 15: 129-38 Free PMC Article
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by DrMagicianEARL | 2011-10-22 12:31 | 敗血症 | Comments(0)

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