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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

敗血症とサイトカインのかかわり

■SIRSの成因として,過剰に産生される炎症性メディエーターの中でも,特に炎症性サイトカインの過剰産生が病態形成に大きくかかわっている可能性から,高サイトカイン血症hypercytokinemiaという表現が使用されるようになった.septic shockの起因に大きく関与するTNFαやIL-1βをブロックする,感染抵抗性を強めるTh1系サイトカインであるIFN-γをタイミングよく投与あるいはブロックする,もしくはTh2系サイトカインである炎症抑制性のIL-10などをタイミングよく投与する,いわゆるサイトカイン療法が期待された.そしてsepsisもしくはseptic shockなどに対して,過剰に産生された炎症性メディエータを中和する臨床試験が試みられてきた.その結果は,残念ながら有意な予後の改善が認められず,不満足な結果に終わっている[1-5]

■この結果に対して,SIRS提唱者であるBoneはSIRS病態についての自らの見解を修正した.sepsisの形成においては,代償性の過大な抗炎症性反応の存在が重要であるという観点から,CARS(compensated anti-inflammatory response syndrome)の病態を提唱した[3,4]

■sepsisからseptic shockに至る経過においては,肺,肝臓,腎臓などの重要な臓器障害が深くかかわっている.さらに,臓器障害からショックに至る過程でも,サイトカインがその病態形成に大きく関与していることは明らかである.緑膿菌性肺炎による急性肺損傷と,それに続発するseptic shockのメカニズムに関する研究[6-10]において,細菌による臓器障害がseptic shockを誘発することを明解に証明されている.

■緑膿菌をウサギに静脈内投与して菌血症を起こしても簡単にはショックにはならない.しかしながら,より少ない数の緑膿菌を肺内に投与して,肺上皮損傷を誘発した場合,ウサギは容易にショック状態に陥った.緑膿菌性肺炎による急性肺損傷と,それに続発する菌血症のメカニズムとして,PAMPsが肺上皮細胞の壊死を起こし,肺上皮バリアーを破壊し,急速な細菌の全身性播種が発生する.肺上皮バリアーの破壊は,細菌の全身性播種のみならず,肺胞腔側に誘導,蓄積されたTNFやインターロイキンなどの炎症性サイトカインの肺から全身循環への急速な移動を誘発し,SIRSの病態形成にかかわる.

■肺感染症を起こした場合,肺胞内のTNFαの濃度は通常の血液中の濃度の1000-10000倍の濃度勾配が存在する.上皮細胞間のtight junctionで形成される肺の上皮バリアーは強固であり,通常,細胞は簡単には肺水腫に陥らない.この上皮バリアーを越えて肺胞側に発生した感染を血漿シグナルとして伝達し,好中球の遊走反応などを誘導するためには,サイトカインの濃度勾配が必要なわけである.肺胞側に投与された放射性同位元素でラベルされたTNFαは,7時間後には損傷された肺上皮を越えて10%以上が流血中に移行したと報告されている[7].しかしながら,あくまで肺上皮が破壊されていないという条件のもとでこの濃度勾配は存在することになる.加えて,細胞毒性を持った緑膿菌株は,外毒素ExoUを直接肺上皮細胞の細胞内に注入し,細胞膜を構成するリン脂質二重膜を破壊して急性肺上皮損傷を引き起こす[9,10].いったん肺上皮バリアーが決壊するとそこから血液中の1万倍もの濃度に達している肺胞内サイトカインが流血中に流れ出てしまい,sepsisに至る.このように,sepsisにおいては細菌よりもサイトカインが病態の中心的役割をなすことが分かる.

■サイトカインがいわゆるサイトカイン・ネットワークを形成し,あるサイトカイン が過剰に産生されればその影響で他のサイトカインも過剰に産生されることを踏まえ,hypercytokinemiaが発症しているか否か,別の言い方をすればサイトカイン・ストームが吹き荒れているかどうかを判断するには,最も測定しやすいサイトカインの血中濃度を測定すればよい,すなわらちIL-6血中濃度の測定が簡便かつ有用かもしれない[11,12].実際にIL-6血中濃度を測定した報告[12]では,敗血症性ショック症例では他のSIRS,重症敗血症症例より1000倍程度もの高濃度を呈しており,この病態にhypercytokinemiaが深く関与していることを示唆している.

[1] Abraham E, Raffin TA. Sepsis therapy trials. Continued disappointment or reason for hope? JAMA 1994; 271: 1876-8
[2] Quezado ZMN, et al. New strategies for combatting sepsis: the magic bullets missed the mark ... but the search continues. Trends Biotechnol 1995; 13: 56-63
[3] Bone RC. Why sepsis trials fail. JAMA 1996; 276: 565-6
[4] Bone RC. Immunologic dissonance: a continuing evolution in our understanding of the systemic inflammatory response syndrome (SIRS) and the multiple organ dysfunction syndrome (MODS). Ann Intern Med 1996; 125; 680-7
[5] Zeni F, et al. Anti-inflammatory therapies to treat sepsis and septic shock: a reassessment. Crit Care Med 1997; 25: 1095-100
[6] Sawa T, et al. IL-10 improves lung injury and survival in Pseudomonas aeruginosa pneumonia. J Immunol 1997; 159: 2858-66
[7] Kurahashi K, et al. Pathogenesis of septic shock in Pseudomonas aeruginosa pneumonia. J Clin Invest 1999; 104: 743-50 Free PMC Article
[8] Sawa T, et al. Active and passive immunization with the Pseudomonas V antigen protects against type III intoxication and lung injury. Nat Med 1999; 5: 392-8
[9] Sato H, et al. The mechanism of action of the Pseudomonas aeruginosa-encoded type III cytotokin, ExoU. EMBO J 2003; 22: 2959-69 Free PMC Article
[10] Pankhaniya RR, et al. Pseudomonas aeruginosa causes acute lung injury via the catalytic activity of the patatin-like phospholipase domain of ExoU. Crit Care Med 2004; 32: 2293-9
[11] Oda S, et al. Sequential measurement of IL-6 blood levels in patients with systemic inflammatory response syndrome (SIRS) / sepsis. Cytokine 2005; 29: 169-75
[12] Hirasawa H, et al. Clinical aspect of hypercytokinemia-induced pathophysiology in critical care. In : Ogawa M, Yamamoto T, Hirota M eds. The biological response
to planned and unplanned injuries. Cellular, Molecular and Genetic Aspects. Excerpta Medica, New York, 2003, p39-40.
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by DrMagicianEARL | 2011-10-26 12:09 | 敗血症 | Comments(0)

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