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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

敗血症の重症度評価

■SIRSは炎症性サイトカイン過剰状態であり,病原体が消失しても増悪することもあるため,病原体の消失は必ずしも病勢と比例せず,重症病態ほど相関関係はなくなる.敗血症は全身性疾患であり,その重症度評価も全身評価が可能なものが望ましい.すなわち,SIRSからMODSへの移行を考慮し,敗血症における多臓器にわたる機能障害を総和としてとらえる目的で作成された全身的な評価法が行われることが一般的である.

■1981年にKnaus[1]らによって発表されたのがAPACHE(acute physiology and chronic health evaluation)であり,心血管,呼吸などの34指標の異常をスコアリングし,その合計点により死亡率の予知を行った.その後,よりその予測を正確に,さらには簡便化するために改良され,1985年にAPACHEⅡが発表された[2].APACHEⅡは,急性の生理学的異常を示すAPS(acute physiolosy score),呼吸,循環,血液検査値,GCSの12項目において,治療の影響を受けていないICU入室後24時間以内のもっとも悪い値を0-4点にスコアリングし,さらに年齢スコア,慢性疾患スコアを加えたものである.最高点は71点,最低点は0点となる.その後,1991年にAPACHEⅢ[3],2006年にAPACHEⅣ[4]が発表されたが,使用するには商業契約が必要であるため,実際にはAPACHEⅡが広く使用されている.

■臓器不全の診断基準にはall-or-none分類と,各臓器の機能低下の程度をスコア化したものの2つがある.連続的な過程として把握する場合,後者が有用である.スコアに用いる指標は,普遍的,日常的,ベッドサイドで測定可能なもの,病期の経時的な進行を反映するもの,臓器特異的な治療法の奏功度を反映するものが考えられている.SOFA scoreは,欧州集中治療学会が1994年に提案したもので,1995年に行われた前向き試験では,毎日のSOFA scoreと生存,非生存の差別化はよく相関した[5].当初は,sepsis-related organ failure assessmentとして,敗血症に起因する臓器不全評価法として用いられたが,その後,敗血症に限らずMODSの評価法として有用であることが認められ,現在は,Sequential organ failure assessmentに改名されている[6].敗血症の診断後,48時間以内にSOFA scoreが増加する例の死亡率は50%と報告され,早期対処の重要性が指摘されている[7]

■ACCP/SCCMによる敗血症性ショックの診断基準[7]では乳酸値が含まれていないが,乳酸値>36mgl/dL(もしくは>4mmol/L)を満たしても敗血症性ショックと診断すべきである.これは臨床現場における実際の治療対象を明確にするためのものであり,ショックの概念が近年変遷してきたことによる.

■これまでの血圧低下をもってショックとする考えは大循環レベルの循環動態に依存していたが,近年では考え方が変化しており,たとえ血圧が維持されていても組織への血液灌流不全による酸素供給不足や末梢組織・細胞での酸素利用障害などを含む酸素代謝異常のことをショックとしている.すなわち,血圧低下はショックの一要因に過ぎず,血圧低下がなくともショック状態が存在することを認識する必要がある.SSCG 2008でも敗血症性ショックは組織低灌流と定義されており,微小循環障害が重視されていることが分かる.この微小循環障害において,組織酸素需給バランスを反映するのが中心静脈酸素飽和度ScvO2であり,組織酸素代謝を反映するのが乳酸である.敗血症では重症であるほど組織の酸素利用障害が強く,重症敗血症において高頻度に見られる高乳酸血症の主因は酸素利用障害である[8-10]

■重症敗血症の死亡率を16%低下させたEGDTも適応基準に血圧だけでなく乳酸値を使用しており,また,乳酸を低下させることを目標としたELGTも生存率を改善させることが示されており,乳酸値上昇も臨床的に敗血症性ショックに加えられるべき項目である.

■CRPは炎症反応初期より遅れて産生されるIL-6が肝臓に作用することで産生される蛋白であり,リアルタイムな病勢を反映しない.また,炎症反応には必ず抗炎症反応が伴う.SIRSに対してCARS(compensatory anti-inflammatory response syndrome:代償性抗炎症反応症候群)という病態があり[11],このSIRSとCARSが交互に優位になる混合病態をMARS(mixed antagonistic response syndrome;混合性拮抗反応症候群)と呼ぶ[12].このような炎症・抗炎症がめまぐるしく発生するMARS状態を伴う敗血症では,CRPは重症度を反映せず乱高下する.また,CRPは肝障害,低蛋白血症,その他様々な要因により炎症と乖離する.

[1] Knaus WA, et al. APACHE-acute physiology and chronic health evaluation: a physiologically based classification system. Crit Care Med 1981; 9: 591-7
[2] Knaus WA, et al. APACHE II: a severity of disease classification system. Crit Care Med 1985; 13: 818-29
[3] Knaus WA, et al. The APACHE III prognostic system. Risk prediction of hospital mortality for critically ill hospitalized adults. Chest 1991; 100: 1619-36
[4] Zimmerman JE, et al. Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE) IV: hospital mortality assessment for today's critically ill patients. Crit Care Med 2006; 34: 1297-310
[5] Vincent JL, et al. The SOFA (Sepsis-related Organ Failure Assessment) score to describe organ dysfunction/failure. On behalf of the Working Group on Sepsis-Related Problems of the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Med 1996; 22: 707-10
[6] Vincent JL, et al. Use of the SOFA score to assess the incidence of organ dysfunction/failure in intensive care units: results of a multicenter, prospective study. Working group on "sepsis-related problems" of the European Society of Intensive Care Medicine. Crit Care Med 1998; 26: 1793-800
[7] American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20: 864-74
[8] Cohen RD, Woods HF. Lactic acidosis revisited. Diabetes 1983; 32: 181-91
[9] 国元文生,肥田誠治.レター 組織酸素供給低下を示さない患者の高乳酸血症.日集中医誌2006; 13: 73-5
[10] Cohen RD, Woods HF. Metformin and lactic acidosis. Diabetes Care 1999; 22: 1010-1
[11] Bone RC. Sir Isaac Newton, sepsis, SIRS, and CARS. Crit Care Med 1996; 24: 1125-8
[12] J Immunol 2000; 5: 289-300
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by DrMagicianEARL | 2011-11-08 09:40 | 敗血症 | Comments(0)

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