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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

敗血症治療のバンドル

■SSC(Surviving Sepsis Campaign)では敗血症診療における重要ツールとして,重症敗血症バンドルを制定し,前項で述べたサイトでも詳しく説明している.その意義について,SSCは「重症敗血症の死亡率を25%減らすことを目標に,敗血症診療におけるさまざまな治療内容それぞれについて,介入時期や順序,治療ゴールなどについて,治療メンバーが周知することを目標に企図されたもの」としている.さらに「バンドルを用いることによって,複雑な敗血症の治療過程を分かり易いものにする」とし,「敗血症診療の中核Core」と位置づけている.バンドルという名前の由来は「重要な推奨項目を個別にそれぞれ実践するのではなく,それらを一纏めにして包括的にした方がさらに高い治療効果が得られる」という目的から「1つに束ねたもの:bandle」と称する.すなわち,ERからICUまで,重症敗血症の認知以降,バンドルに従って推奨項目を1つ1つ実践し,治療を進めていくことで,極めて効率よくかつ適正にSSCGに準拠した敗血症診療を行うことができる.

■SSCのサイト(http://ssc.sccm.org/)にはバンドルの1例が紹介されている.ただし,これはあくまでも例であり,医療環境は各国,各施設で異なるため,それぞれの施設に合ったバンドルを施設が作成する必要があり,作成されるバンドルは遵守できるように作ることが理想とされている.SSCで提唱されているバンドルは蘇生バンドル(resuscitation bundle)と管理バンドル(management bandle)に分かれている.

■以下に当院で作成,2011年11月4日に施行開始となった敗血症院内ガイドラインでのバンドルを1例として示す.
(1) 蘇生バンドル
 重症敗血症/敗血症性ショックの患者に対し,臓器不全発現予防及び救命目的で発症後6時間以内に全項目を100%達成すべき治療項目.全例ともER,一般病棟から施行開始し,ICUに搬送が望ましい.
①血液培養2-3セット+必要な細菌培養検体を抗菌薬投与前に採取する.
②適切な広域抗菌薬を1時間以内に投与開始する.
③乳酸値を測定する(最低でも2時間毎に測定).
④敗血症性ショックであれば輸液負荷チャレンジ(1000mL/30min)を施行する.
 ・容易にうっ血する場合は心臓超音波検査で迅速に心機能を評価する.
 ・重度の低心機能状態を合併している場合は肺動脈カテーテルを挿入し,管理を行う.
⑤呼吸状態良好な患者を含め,全例で酸素投与を開始する.
 ・挿管人工呼吸管理が不要な患者では全例NPPVを装着する.
⑥適度な鎮静を開始する.
⑦中心静脈カテーテルを全例で挿入する.敗血症性ショックにおいては動脈カテーテル挿入を検討する.
⑧EGDT+ELGTを施行する.
 ・晶質液でCVP 8-12mmHgにコントロール
 ・昇圧剤(ノルアドレナリン,バソプレシン)で平均血圧65-90mmHgにコントロール
 ・尿量≧0.5mL/kg/hrを維持する
 ・乳酸値を2時間毎に計測し,血管拡張薬を適宜使用し,前値から20%以上低下させる.
 ・輸血,DOB,CHDFなどでScvO2≧70%を維持する

(2) 管理バンドル
 蘇生バンドルを全項目終了した後に,24時間以内に行うべき治療項目.
①バソプレシン不応重症例では低用量ステロイド療法を行う.
②インスリン持続静注で血糖値を140-180mg/dLにコントロール
③Hb<7.0g/dLの場合,7.0-9.0g/dLを目標に赤血球濃厚液を輸血する.
④必要に応じ血小板輸血を行う.
⑤人工呼吸管理
 ・1回換気量6mL/kg,呼気プラトー圧≦30cmH2O,PaCO2上昇許容
⑥24時間以内に早期経腸栄養を開始する.
 ・カロリー補充目的での早期経静脈栄養は行わない.
⑦CHDFなどによる体液バランスの正常化
⑧DIC,ALI/ARDSに対する治療
⑨深部静脈血栓症予防を行う.
⑩ストレス性胃粘膜障害予防を行う.


■重症敗血症は全身疾患であり,治療法を提示する場合,循環・呼吸・感染・代謝・栄養の全てを意識するものにしなければならない.それだけに行わなければならないことは非常に多く,どうしても忘れてしまう項目もでてくる可能性があるため,何を既に行っていて何を行っていないかをICUスタッフと情報共有する必要がある.各バンドルについてチェックリストを作成することも必要であろう.医師一人で考えるのではなく,看護師,薬剤師,臨床検査技士,臨床工学技士,栄養士,理学療法士などのコメディカルと密なコミュニケーションを積極的にとるべきである.
※これらは三次救急病院などでは当たり前であるが,一般病院では非常にこの意識が希薄であり,当院でもその傾向は顕著であった.その根底には重症敗血症に対する知識が浸透していないことが最大の原因であるかもしれない.

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【余 談】
 小生の病院で院内敗血症ガイドラインを発表したのは2011年11月4日であるが,雛形自体は8月下旬に作成し,試験的に上記バンドルを導入した.導入してよく分かるのは,スタッフが慣れるまでに時間を要することである.特に1例目の敗血症性ショックは次に何をしたらいいのかを全スタッフがすぐには判断できないこともあった.各処置をどのような順序でやれば効率がよいか?ルート類の接続をどうするか?治療項目以外の内容も様々である.蘇生バンドルでは頻回にICUスタッフとコミュニケーションをとり,何の治療を行っていて,これからさらに何をしなければいけないのか,患者は現在どういう状態にあるのかのアセスメントを常に情報共有し,6時間をわずかながらに超過したもののなんとか急性期を脱し,3日でICU離脱状態まで回復できた.
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by DrMagicianEARL | 2011-11-09 16:13 | 敗血症 | Comments(0)

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