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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

重症敗血症のERでの検査

■敗血症と診断する以上,まずSIRSの診断をしなければならない.そのためにもVital Signを漏れなく測定する.呼吸数が抜ける施設が多いが,これは敗血症を見逃し,治療開始の遅れにつながるため,普段から呼吸数計測を癖にしておく必要がある.敗血症と診断してからは時間との勝負であり,検査を順序立ててスムーズに行い,円滑に治療に移る必要がある.

■重症敗血症が疑われる症例であれば,ルーチンの検査では必要最低限の一般採血項目に加え,血液像,D-ダイマー,PT-INRを計測しておく.さらに尿検査も必要である.

■エンドトキシンに関してはどの程度まで重要視すべきかについては議論の余地があり,検査が必要かどうかは各施設の判断になる.
※当院ではエンドトキシンは外注項目であり,結果がかえってくるまでに数日程度を要する上コストもかかるため,治療経過に影響を与えないものとして,計測しないことを推奨している.
→詳しくはこちら「エンドトキシンは重要か?~エンドトキシンとPMX~

■各種培養検査を抗菌薬投与前に行う.ただし,例外的に髄液培養検体採取時は抗菌薬投与を先に行ってもよい.これは,検体採取に時間がかかるため抗菌薬治療開始が遅れることに加え,抗菌薬が髄液に移行するのに時間がかかるからである.

■血液培養はルーチン採血の際に1箇所確保.さらにもう1箇所必要となる.末梢から2箇所,さらに中心静脈カテーテルや動脈カテーテル挿入の際に1箇所とれば3セット確保できる.血流感染症において,1セット,2セット,3セット採取した場合の感度はそれぞれ65.1%,80.4%,95.7%となっており,4セット以上の採取は3セットと有意差がなかった[1].血液培養からコンタミネーションが疑われる菌が検出された場合,それが血流感染かどうかを判断するためには1セットのみの採取では十分な情報を得られない[2].実際,コンタミネーションであった場合,血流感染症と比較すると採取セット数が増加するほど血液培養陽性率は低下する[3]

■敗血症での血液培養陽性例の比率は敗血症17%,重症敗血症25%,敗血症性ショック69%である[4]

■血液培養は清潔操作を徹底し,コンタミネーションを最大限防ぐ必要がある.コンタミネーション発生により,医師は真の起炎菌かの判断に困る.検査技師は全く無駄な時間と労力,検査費用を投じることになり,検査キットと人件費で概算5000円ほどの損害となる.患者はコンタミネーションで検出された細菌に対して無用の抗菌薬が投与されれば無為に耐性菌が誘発されたり,副作用の発生,入院の長期化が起こる.これらのことに関連して無駄なコストが積み重なり,医療費が増大する[5]

■末梢血管が確保できないなどの理由で,血液培養検体がどうしても採取できないケースが少なからずある.その際は以下の方法がある.
① 動脈からとる
② 中心静脈カテーテル,動脈カテーテル挿入時に採取.
③ やむを得ない場合は,末梢点滴部より末梢側から採取も可.
④ やむを得ない場合は,駆血帯を一旦外して十分に血流を流す処置を間に加えれば同一箇所も可.

■感染巣を探すため,画像検査は必須となる.状態が悪いからと言ってCTも撮らず,感染巣不明のまま治療を行うようなことがあってはならない.画像診断を行うことで,病巣の同定とその程度の評価が早期に短時間で行え,外科的治療やIVR(interventional radiology)といった適切な治療法の選択が可能となることもある.敗血症患者の搬送や造影剤腎症のリスクを考慮すると,できるだけ簡略な画像診断が望まれる.レントゲン,CT,超音波検査を有効に使い,感染源の特定・評価を行う.

■重症敗血症での循環動態管理を行う前に心臓超音波検査で心機能の評価をしておくことは重要である.重症敗血症病態ではhyperdynamic stateによる心拍出量増加,収縮不全の所見がみられることがある.また,重度の低心機能合併例では循環動態管理においてPiCCOシステムや肺動脈カテーテルなどの挿入による厳重管理が必要となってくる.
→詳しくはこちら「敗血症の心筋障害」

[1] Cockerill FR 3rd, et al. Optimal testing parameters for blood cultures. Clin Infect Dis 2004; 38: 1724-30
[2] Weinstein MP. Current blood culture methods and systems: clinical concepts, technology, and interpretation of results. Clin Infect Dis 1996; 23: 40-6
[3] Weinstein MP, et al. The clinical significance of positive blood cultures: a comprehensive analysis of 500 episodes of bacteremia and fungemia in adults. I. Laboratory and epidemiologic observations. Rev Infect Dis 1983; 5: 35-53
[4] Rangel-Frausto MS, et al. The natural history of the systematic inflammatory response syndrome (SIRS). A prospective study. JAMA 1995; 273: 117-23
[5] 椎木創一.感染症999の謎:感染症検査の基本・微生物学.2010; 66
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by DrMagicianEARL | 2011-11-10 12:16 | 敗血症 | Comments(0)

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