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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

EGDTと尿量

■EGDTでは尿量を0.5mL/kg/hr以上確保することが目標となる.

■敗血症性ショック初期に生じる乏尿は血管内水分量の相対的不足に他ならない.よって,この状態は腎前性による乏尿であり大量輸液を行うのが原則で,利尿剤投与は有効血液循環量を減少させるためむしろ禁忌であることは今や常識である.

■一方,敗血症がある程度進行すれば急性腎傷害(AKI)が生じるが,敗血症におけるAKIは他のAKIと違い,腎灌流量は増加しており,輸出細動脈の過剰な拡張により糸球体濾過圧が低下して乏尿となっている[1].また,尿細管上皮細胞はサイトカインによりアポトーシスが誘導されており,これらの脱落が尿細管閉塞を招く.フロセミドなどのループ利尿薬はHenle上行脚の管腔側に存在するNa+-K+-2Cl-チャネルに尿細管管腔側より作用し,NaCl再吸収を抑制することで利尿効果を発揮し,尿細管の酸素需要を抑制したり[1],尿量を保つことにより尿細管の閉塞を予防し,閉塞による尿細管内圧の上昇からback-leakをきたすことを軽減することが期待されて用いられる.しかしながら,この機序ではループ利尿薬が糸球体濾過圧上昇が原因の敗血症性AKIに対しては効果が乏しいことが推察され,実際にこれまで敗血症性のみならず一般的AKIに対する数多くのメタ解析や観察研究がなされており,ループ利尿薬の有効性は認められていない[2].以上よりwarm shock期における乏尿およびAKIに対しての利尿剤投与は行ってはならない.

■低用量ドパミンは腎保護作用のあるカテコラミンと言われて汎用されてきた.これが,ドパミン神話である.しかし,その有効性を示す研究の多くはケースシリーズであり,EBMが確立してきた1990年代に入ってその有効性に疑問が投げかけられるようになった.1991年のSzerlipの報告から始まり[3],1994年にはLancetにも有効性を否定する報告がでている[4].その後,多くのドパミンの腎保護作用に関するRCTが行われているが,有効であるとのエビデンスは存在しない.これらの結果をまとめたレビューでは,急性腎不全患者[5],周術期患者[6],敗血症患者[7]のいずれにおいても腎保護目的にルーティンでドパミンを使用すべきでないとしており,ドパミン神話は崩壊への道をたどるようになる.ただし,1990年代のRCTの多くは単一施設での小規模なオープンラベル試験であり,エビデンスの質は高くないものが多い.

■そのような中,2000年に多施設無作為二重盲検比較試験であるANZICS trialが発表された[8].この発表では,SIRS患者におけるAKIでは低用量ドパミン群とプラセボ群では同等の効果しか示さず,有意な腎保護作用・利尿作用はないと結論づけられている.その後に発表されたレビューでも低用量ドパミンの腎保護作用はなく,その副作用を考慮に入れると,腎保護目的に使用すべきではないとしている[9-11].この結果はSSCGでも引用され,腎保護目的での低用量ドパミンの使用は支持されていない.

■以上よりAKIの治療は適切な循環動態を維持し,腎毒性物質を避けることにつき[12],また,先述のドパミン自体の敗血症性ショックに与える悪影響の懸念から,腎保護目的のドパミン低用量投与は行ってはならない.

[1] Nephron Exp Nephrol 2008; 109: 95-100
[2] Nephron Clin Pract 2008; 109: c206-16
[3] Ann Intern Med 1991; 115: 153-4
[4] Lancet 1994; 344: 7-8
[5] Cirt Care 1997; 1: 53-9
[6] Ann Surg 1999; 229: 444-5
[7] Clin Exp Pharmacol Physiol Suppl 1999; 26: 23-8
[8] Lancet 2000; 356: 2139-43
[9] Chest 2003; 123: 1266-75
[10] Crit Care Med 2001; 29: 1526-31
[11] Anesth Analg 2004; 98: 461-8
[12] NDT Plus 2008; 1: 392-402
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by DrMagicianEARL | 2011-11-24 11:46 | 敗血症 | Comments(0)

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