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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

MRSA肺炎に対するLZD vs VCM【ZEPHyR study】

■MRSA感染症においては最も古いVCM(バンコマイシン®)を対照群として,新規抗MRSA薬でRCTが行われてきた.LZD(ザイボックス®)はその高い移行性によりMRSA肺炎において理論上はVCMより有効ではないかと言われており,RCTは複数存在する.しかし,臨床現場ではLZDはその薬価の高さから敬遠される薬剤でもある.LZDであればVCMより治療期間が短くなるため,結果的に医療費は安くなり早期退院に持ち込めるという意見もあるが,経済面まで考慮した報告はまだない.

■2件のprospective double-blind RCT[1,2]があり,院内肺炎の治療においてLZDはVCMの固定用量(1g1日2回)に比べて統計的に非劣性であることが報告されており,両試験を統合した事後解析においてMRSA患者のサブグループ解析を調べたとき,その生存率(LZD 80.0% vs VCM 63.5%, p=0.03)および治癒率(59.0% vs 35.5%, p<0.01)はVCM群に比してLZD群で有意に改善されていたと報告された[3,4]

■しかしながら,VCM群で低い有効率と高い死亡率となった原因は,これらのstudyではVCMの用量が最適化されていなかったためとの指摘もあり,問題があった.現行のガイドラインでは,初回のVCM投与量は体重に基づき,その後はトラフ濃度に応じて順次調整することが推奨されており[5,6],最適化された用量のVCMとLZDの比較を行うため,今回ZEPHyR(ゼファー)trialが施行され,報告に至った.

■なお,メタ解析も2010年,2011年に報告されており[7,8],2つともLZDとグリコペプチド系(VCM,TEIC)の臨床効果,死亡率に有意差なし,1つでLZDで副作用(血小板減少,消化管出血)が有意に高かったと報告されている.

■下にZEPHyR studyのAbstractを掲載しておく.本studyではMRSA院内肺炎の治療に関して,per-protocolにおける試験終了時の臨床効果(主要評価項目)はVCMよりLZDが有意に高かったと結論づけている.その他結果は
・治療終了時のMRSA陰性化率はLZD群がVCM群より30%高い
・全体的な有害事象および重篤な有害事象はLZD群とVCM群で同様であったが,腎毒性はVCM群でほぼ2倍多く認められた.
・投与開始3日目時点で15μg/mLを越えるVCMトラフ濃度は,いかなら臨床反応の改善とも関連性がなかった.
・LZD群の死亡率は以前の事後解析と同程度であったが,VCM群では低値であった.
・60日死亡率には有意差なしであった.

■本studyにおける問題点は以下の通りであろう.
・メインスポンサーはLZDの製薬メーカーであるPhizer製薬である.
・ITT解析ではなくper-protocol解析を用いているため,無作為化が担保されていない可能性がある.
・per-protocol集団のベースラインで人工呼吸管理,菌血症,糖尿病,腎疾患,心疾患がVCM群で多いにもかかわらず,ベースラインの有意差検定がなされていない.
・血小板減少がLZD群とVCM群とでさほど差がなかったのは,VCM群に菌血症が多かったことから,敗血症性DICを合併していた可能性がある.
・非劣性試験であるにもかかわらず,LZDがVCMより臨床効果が高いという,優越性を強調してしまっている.
・Kaplan-Meier曲線が本文に掲示されていない.

■本studyを片手にPhizer製薬のMRが医師にLZD(ザイボックス®)を推奨してくることは容易に想像されるが,上記の問題点の通り,そう簡単にLZDがVCMよりよいと結論づけられるものではない.実際,臨床効果が得られるにもかかわらず60日死亡率に有意差がなかったのはインパクトファクターに欠ける.これに関しては,本文考察やメーカー側が「VCM用量を最適化したこと,院内肺炎患者のケアの質が全体的に改善されていること,VCM無効に対するサルベージ療法にLZDがしよう可能であったことを反映している可能性がある」と主張している.その一方で,60日死亡率は掲示しているのにKaplan-Meier曲線を掲示していないことはおおいに疑問が残る.そこで,Kaplan-Meier曲線を入手したところ,LZD群とVCM群の曲線はほぼ重なっており,差はまずないに等しいことが分かる.
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この曲線が本文に掲載されていないのは,メインスポンサーのPhizer社の要望により意図的に隠されたのではないかという疑いが残る.

Wunderink RG, Niederman MS, Kollef MH, Shorr AF, Kunkel MJ, Baruch A, McGee WT, Reisman A, Chastre J.
Linezolid in methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: a randomized, controlled study. (ZEPHyR study)
Clin Infect Dis. 2012 Mar 1;54(5):621-9. Epub 2012 Jan 12.

Abstract

BACKGROUND: Post hoc analyses of clinical trial data suggested that linezolid may be more effective than vancomycin for treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) nosocomial pneumonia. This study prospectively assessed efficacy and safety of linezolid, compared with a dose-optimized vancomycin regimen, for treatment of MRSA nosocomial pneumonia.

METHODS: This was a prospective, double-blind, controlled, multicenter trial involving hospitalized adult patients with hospital-acquired or healthcare-associated MRSA pneumonia. Patients were randomized to receive intravenous linezolid (600 mg every 12 hours) or vancomycin (15 mg/kg every 12 hours) for 7-14 days. Vancomycin dose was adjusted on the basis of trough levels. The primary end point was clinical outcome at end of study (EOS) in evaluable per-protocol (PP) patients. Prespecified secondary end points included response in the modified intent-to-treat (mITT) population at end of treatment (EOT) and EOS and microbiologic response in the PP and mITT populations at EOT and EOS. Survival and safety were also evaluated.

RESULTS: Of 1184 patients treated, 448 (linezolid, n = 224; vancomycin, n = 224) were included in the mITT and 348 (linezolid, n = 172; vancomycin, n = 176) in the PP population. In the PP population, 95 (57.6%) of 165 linezolid-treated patients and 81 (46.6%) of 174 vancomycin-treated patients achieved clinical success at EOS (95% confidence interval for difference, 0.5%-21.6%; P = .042). All-cause 60-day mortality was similar (linezolid, 15.7%; vancomycin, 17.0%), as was incidence of adverse events. Nephrotoxicity occurred more frequently with vancomycin (18.2%; linezolid, 8.4%).

CONCLUSIONS: For the treatment of MRSA nosocomial pneumonia, clinical response at EOS in the PP population was significantly higher with linezolid than with vancomycin, although 60-day mortality was similar.

[1] Clin Infect Dis 2001; 32: 402-12
[2] Clin Ther 2003; 25: 980-92
[3] Chest 2003; 124: 1789-97
[4] Intensive Care Med 2004; 30: 388-94
[5] Am J Respir Crit Care Med 2005; 171: 388-416
[6] Clin Infect Dis 2011; 52: 285-92
[7] Crit Care Med. 2010; 38: 1802-8
[8] Chest 2011; 139: 1148-55
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by DrMagicianEARL | 2012-03-30 17:01 | MRSA | Comments(0)

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