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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

MRSAの抗菌薬耐性(1)

Summary
・MRSAに対してはニューキノロン系はほとんどが耐性化しており,たとえ感受性があっても速やかに耐性化を獲得されてしまうため,原則としてニューキノロン系をMRSAに用いることはない.
・ABK耐性MRSAは増加傾向にあり,現在10%弱が耐性化している.その耐性化機構にはAAC(6')/APH(2'')が関与している.

■以下ではMRSAに対して感受性を示しうる抗菌薬に対する耐性について記載する.

1.ニューキノロン系に対する耐性化

■ニューキノロンは,環状のds-DNAに負のスーパーコイルを導入するDNAジャイレース(GyrA,GyrB)と,複製したds-DNAを解離(デカテネーション)させるトポイソメラーゼⅣ(GrlA,GrlB)の活性を阻害し,結果として細菌のDNA複製を停止させることで殺菌効果を発揮する[1]

■ニューキノロン耐性を引き起こすGrlAとGyrAのアミノ酸置換変異は,特異的領域に集中している[2,3].この領域は多くの菌種間で保存性が高く,キノロン耐性決定領域(quinolone-resistance-determining-region:QRDR)といわれている.MRSAでは,GrlAのアミノ酸64位から103位間,およびGyrAのアミノ酸68位から107位の領域がQRDR領域と推定されている.QRDRに変異が蓄積すると細菌はキノロン高度耐性となっていく[4]

■MRSAを含めた黄色ブドウ球菌では,GyrとGrlのQRDRの段階的変異によって,ニューキノロン高度耐性菌が出現する[5]

■黄色ブドウ球菌の薬剤排出ポンプとして,NorA,NorB,QacA/B,Smr,MdeA,MepAなどが同定されている[6,7].これらは基質特異性が低く,種々の化学物質を細胞外に排出する.このうちニューキノロンを排出する蛋白質としてはNorA,NorB,MepAが知られている[6].しかし,臨床におけるMRSAの薬剤排出蛋白質によるニューキノロン耐性への関与は,薬剤標的部位の変異と比べて低い.

■2000年以降,GrlAとGyrAの多重変異をきたしたニューキノロン高度耐性MRSAが増加している.この多重変異パターンは,多段階変異だけでは説明し難いほど多様である.最近,本邦で分離されるMRSAの約40%が保有する多剤排出ポンプ遺伝子qacBⅢの産生する蛋白質QacBⅢはキノロンも排出することが明らかとなった.QacBⅢをもつMRSAのほとんどはレスピラトリーキノロンに高度耐性である.

■現在MRSAはほとんどのニューキノロンに耐性化してきており,STFXのみが良好な感受性を有している.しかしながら,速やかに耐性化を獲得されてしまうため,原則としてニューキノロン系をMRSAに用いることはない.
※MRSAに限らず,一般的に黄色ブドウ球菌にニューキノロン系単剤治療は行わない方がよい.

2.アミノグリコシド系(ABK)に対する耐性化

■抗MRSA薬に分類されるABK(ハベカシン®)は1991年に上市されたアミノグリコシド系であり,MRSAに対して殺菌作用を示す.現在市場拡大とともに耐性株の報告がみられている.

■臨床分離株におけるアミノグリコシド耐性機序は,抗菌薬に対する不活性化酵素の出現,もしくは抗菌薬の膜透過性の低下によるものと理解されている.多くは不活性化酵素の出現による場合が多いが,特にMRSAについてはAAC(6')/APH(2'')酵素の関連が主である[8-10]

■アミノグリコシド系は細菌の細胞膜表面に吸着した後にporinを介して細胞内に取り込まれ,細胞質内のribosomeに作用する.ところが,アミノグリコシド耐性株では細胞質に不活化酵素が局在し,細胞内に取り込まれたアミノグリコシド系を不活化することによって,アミノグリコシドとribosomeの結合を防ぐことで耐性機構が成立することが知られている[11].しかしながら,ABKの臨床分離株における耐性菌の出現頻度は比較的低く,AAC(6')/APH(2'')による耐性はMIC 25μg/mL以下の中等度に留まるものが多い[12]

■ABK耐性はGM耐性と相関性が高く,ABK耐性株は多くがGM高度耐性株であるが,GM耐性株は必ずしもABK耐性株であるということはない.これは,AAC(6')/APH(2'')がほとんどのアミノグリコシド系を不活化するにもかかわらず,ABKはこの酵素によって不活化されにくいからである[13].一方でAAC(6')/APH(2'')の酵素量が上昇すればABKも不活化されるという報告もある[14]

■本邦でのMRSAに対するABKの感受性率はおおよそ90%以上を保っている.

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[14] 鈴木隆男,藤田欣一,大久保豊司,他.Methicillin-resistant Staphylococcus aureusのArbekacin耐性菌出現について.Jpn J Antibiot 1994; 47: 634
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by DrMagicianEARL | 2012-08-15 00:22 | MRSA | Comments(0)

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