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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献レビュー】ビタミンB12(メチコバール)は末梢神経障害に本当に有効か?

※今回はいつもとはだいぶ毛色の違うお話です.大雑把なシステマティックレビューもどきですので,厳密な検証とはなっていませんが,軽い読み物として見ていただければ・・・.

■サプリメント全般に言えることではあるが,ビタミン製剤の有効性には常日頃から疑問があり,(本当に効果があるケースも当然ながらあるが)多くのケースはプラセボ効果程度しかないのでは?と小生は考えている.

■サプリメントでは,いわゆる「コラーゲン摂取でお肌が」とよく言われるが,これが意味のないことはどの医療関係者も知っている通りだと思う.他のサプリメントも多くが効果をRCTによって検証されていないにもかかわらず,一般市民が盲目的に購入し,摂取している.百歩譲って害がなければ問題ないとしてもよいかもしれないが,有害との報告も多数でている.しかしながらマスコミはスポンサーの関係もあるのかなぜかこの事実を報道しない.
※コラーゲンではなくビタミンCなら生体内コラーゲン産生における補酵素となるため有用と思っていたが,ビタミンC単体をサプリメントとして摂取してもプロオキシダント効果で,逆に酸化が進んでしまうようである(Front Gastroenterol 2011; 16: 5-6).

■閉経後女性のサプリメント内服で死亡率が上昇することが知られている[1].38772名の調査による多変量解析で,マルチビタミンで2.4%増加,ビタミンB6で4.1%増加,葉酸で5.9%増加,鉄で3.9%増加,マグネシウムで3.6%増加,亜鉛で3.0%増加,銅で18.0%増加という結果であった.バイアスが低いRCT47報180938名のメタ解析では,ビタミンCをはじめとする抗酸化サプリメントは有意に死亡リスクが増加していた(RR 1.05; 95%CI 1.02-1.08)[2]

■医療現場においてもビタミン剤が処方されるケースは多い.欠乏症においては投与されてしかるべきと思われるが,ある特定の症状に対して盲目的に処方するのははたして意味があるのか?今回小生のネガティブ記事の犠牲になるのはメチコバール(いらない薬と言ってるわけではない).小生は研修医時代に,入院してきた患者がビタミンB12製剤(メチコバール)を服用している場合,馬鹿正直にビタミンB12の血中濃度を内服直前に計測したところ,全例で基準値上限(938pg/mL)をはるかに上回る数千~万単位の結果が得られている.今回,末梢神経障害に対するビタミンB12製剤がどの程度エビデンスがあるのか,大雑把ではあるが調べてみた.

■"methylcobalamin"OR"vitamin B12"と"neuropathy"でPubMed検索すると430報がヒットし,そのうちRCTに限定した14報を通読し,5報が検索目的に該当した.

■該当した5報は以下の通り.
(1) Talaeiら(2009年)[3]:糖尿病性ニューロパチーに対するビタミンB12とノルトリプチンの100名での単盲検RCTで,ビタミンB12投与群が有意に有効との結論.
(2) Petersら(2006年)[4]:253名のアルコール性ポリニューロパチーに対するビタミンB12を含むビタミンB混合製剤とプラセボを比較した多施設共同二重盲検RCTでビタミンB投与群が有意に有効との結論.ただし脱落が72名いる模様.
(3) Strackeら(1996年)[5]:12名の糖尿病性ニューロパチーに対するビタミンB12を含むビタミンB混合製剤とプラセボを比較したRCTで,ビタミンB投与群が有意に有効との結論.
(4) Hughesら(1970年)[6]:血清ビタミンB12レベルが低い高齢者39名に対するビタミンB12とプラセボを比較した二重盲検RCTで,有意差なし.
(5) Yaqubら(1992年)[7]:糖尿病性ニューロパチーに対するメチルコバラミンとプラセボを比較した二重盲検RCTで,有意差なし.abstractにはN数記載はなかった.

■5報中,有意に有効であった報告は3報.糖尿病性ニューロパチーでの検討が3報,ビタミンB12レベルが低く末梢神経障害などを有する高齢者での検討が1報,アルコール性ニューロパチーが1報である.ただし,ビタミンB12単剤とプラセボを比較した二重盲検RCTは5報中2報のみで有意差はなかった.

■有意に有効と報告している3報を見ていくと,1報はプラセボではなくノルトリプチン(本邦未承認)との比較で単盲検であった.2報は介入群にビタミンB12を含むビタミンB混合製剤を使用していた.うち1報は約2割が試験途中で脱落.もう1報は12名とN数が少ない.

■一方,有意な効果が得られなかったとする2報はいずれも二重盲検であり,ビタミンB12単剤での介入であった.うち1報はビタミンB12レベルが事前に計測されており,ビタミンB12レベルが低い高齢者を対象にしている.もう1報はabstractが短く,対象数が不明.なお,この2報は有効とされた3報より古い論文である.

■次にメタ解析に限定すると検索目的に該当したのは2012年のXuらの1報のみ[8]であった.このメタ解析はプラセボとの比較ではなく,ビタミンB12(and/or ビタミンB1)と漢方薬を比較した18報のメタ解析を行ったものであり,漢方薬の方が有意に効果があるという結果であった.ただし,質の悪いstudyを含んでしまっている.

■このように大雑把にシステマティックレビュー(?)してみたが,これらの結果を見る限りは末梢神経障害に対するメチコバールの有用性に関するエビデンスはまだまだ乏しいと言わざるを得ない.効果については疑問が残るところである.
※小生は牛車腎気丸を処方することがある.Xuらのメタ解析結果を見るにメチコバールよりは効果があるか?

■現在チリと英国で2つのRCT[9,10]が進行中である.チリで行われているのはクラスター二重盲検プラセボ対象無作為化比較試験であり,介入はビタミンB12を使用,300名登録予定[9].英国で行われているのは二重盲検プラセボ対象無作為化比較試験であり,介入はビタミンB12を使用,200名登録予定[10]

[1] Mursu J, Robien K, Harnack LJ, et al. Dietary supplements and mortality rate in older women: the Iowa Women's Health Study. Arch Intern Med 2011; 171: 1625-33
[2] Bjelakovic G, Nikolova D, Gluud LL, et al. Mortality in randomized trials of antioxidant supplements for primary and secondary prevention: systematic review and meta-analysis. JAMA 2007; 297: 842-57
[3] Talaei A, Siavash M, et al. Vitamin B12 may be more effective than nortriptyline in improving painful diabetic neuropathy. Int J Food Sci Nutr 2009; 60 Suppl5: 71-6
[4] Peters TJ, Kotowicz J, Nyka W, et al. Treatment of alcoholic polyneuropathy with vitamin B complex: a randomised controlled trial. Alcohol Alcohol 2006; 41: 636-42
[5] Stracke H, Lindemann A, Federlin K. A benfotiamine-vitamin B combination in treatment of diabetic polyneuropathy. Exp Clin Endocrinol Diabetes 1996; 104: 311-6
[6] Hughes D, Elwood PC, et al. Clinical trial of the effect of vitamin B12 in elderly subjects with low serum B12 levels. Br Med J 1970; 1: 458-60
[7] Yaqub BA, Siddique A, Sulimani R. Effects of methylcobalamin on diabetic neuropathy. Clin Neurol Neurosurg 1992; 94: 105-11
[8] Xu HB, Jiang RH, et al. Chinese herbal medicine in treatment of diabetic peripheral neuropathy: a systematic review and meta-analysis. J Ethnopharmacol 2012; 143: 701-8
[9] Sánchez H, Albala C, Lera L, et al. Comparison of two modes of vitamin B12 supplementation on neuroconduction and cognitive function among older people living in Santiago, Chile: a cluster randomized controlled trial. a study protocol. Nutr J 2011; 10: 100
[10] Dangour AD, Allen E, Clarke R, et al. A randomised controlled trial investigating the effect of vitamin B12 supplementation on neurological function in healthy older people: the Older People and Enhanced Neurological function (OPEN) study protocol. Nutr J 2011; 10: 22
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by DrMagicianEARL | 2012-12-11 10:25 | 文献 | Comments(0)

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