EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

2012年敗血症関連文献集(1) ~敗血症における抗菌薬治療~

遅くなりましたが,新年明けましておめでとう御座います.
本ブログを閲覧して頂いている皆様方,今年も御指導,御鞭撻の程宜しく御願い申し上げます.

今年も大阪で開催される敗血症,感染症,DIC関連の研究会(+KYOTO SEPSIS FORUM)にはほとんど参加する予定です.また,東京で開催される感染症関連のフォーラム,日本集中治療医学会,日本呼吸器学会にも参加する予定です.現地で会った際は宜しく御願い申し上げます.

今回は2012年にpublishされた文献で小生が閲覧したものの中から独断と偏見で興味深いものをピックアップしました.今後敗血症関連文献のみならず,2012年のARDS・呼吸管理関連文献,その他集中治療領域関連文献,感染症・抗菌薬関連文献,感染防止対策・抗菌薬適正使用関連文献,呼吸器領域関連文献を順次アップしていきます.

1.敗血症における抗菌薬治療
 2012年の敗血症領域での抗菌薬の主なトピックスは,抗菌薬の持続投与のエビデンスがでてきたこと,新薬であるリネゾリド(ザイボックス),ダプトマイシン(キュビシン),アジスロマイシン注射製剤(ジスロマック),チゲサイクリン(タイガシル)の知見であろう.最新の抗菌薬チゲサイクリンはまだ本邦で発売されたばかりであり,適応も非常に限られており,本邦での敗血症領域での報告はおそらくとうぶんは出ないと思われる.また,カンジダ血症においても本邦から大規模研究であるACTIONs BUNDLEの結果がICAAC 2012で報告され,カンジダ血症治療の強力なエビデンスになると思われる.

 日本版敗血症診療ガイドラインでは推奨抗菌薬の詳細な表が掲載されており,非常に参考になる.今後の課題としては,抗菌薬の投与開始のゴールデンタイムが1時間以内とする根拠はまだ乏しい状態にあること,持続的腎代替療法施行時の(特に本邦での)抗菌薬投与プランのエビデンスが乏しいこと,感染制御チームとの連携などが挙げられる.

重症患者におけるメロペネム(MEPM)の持続投与と間欠投与の臨床的・細菌学的効果の比較:RCT
Chytra I, Stepan M, Benes J, et al. Clinical and microbiological efficacy of continuous versus intermittent application of meropenem in critically ill patients: a randomized open-label controlled trial. Crit Care 2012; 16: R113
PMID:22742765
ポイント:ICUに入室した重症感染症患者240例におけるMEPM 2g 30分間投与を8時間毎のボーラス投与群と2gローディング→4gを24時間持続投与群を比較したチェコの単施設オープンラベルRCT.臨床的治癒頻度はボーラス群75.0% vs 83.0%, p=0.180で有意差はみられなかったが持続投与群が良好な傾向.細菌学的成功率(OR 2.977, 95%CI 1.050-8.443, p=0.040),ICU滞在期間(10日間 vs 12日間,p=0.044),MEPM投与期間(7日間 vs 8日間,p=0.035),MEPM総投与量(24g vs 48g,p<0.0001)は持続群で有意に改善していた.有害事象に有意差なし.

重症敗血症におけるβラクタム系抗菌薬持続投与:多施設共同二重盲検RCT
Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Continuous infusion of Beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Clin Infect Dis 2013; 56: 236-44
PMID:23074313
ポイント:5施設60例の二重盲検RCT.重症敗血症でのβラクタム系抗菌薬持続投与は間欠投与よりMICを有意に越えやすく,臨床的治癒率も有意に高かった(70%vs43%,p=0.037).生存退院率は有意差がみられなかった(90% vs 80%,p=0.47).

カルバペネムとピペラシリン/タゾバクタム(TAZ/PIPC)の抗菌薬長時間(または持続投与)投与vs短時間投与の臨床効果:システマティックレビュー&メタ解析
Falagas ME, Tansarli GS, Ikawa K, Vardakas KZ. Clinical Outcomes With Extended or Continuous Versus Short-term Intravenous Infusion of Carbapenems and Piperacillin/Tazobactam: A Systematic Review and Meta-analysis.
PMID:23074314
ポイント:14報1229例のメタ解析.カルバペネムやTAZ/PIPCの長時間(3時間以上または持続投与)群は短時間投与群と比較して死亡リスクを41%低下させた.肺炎患者では50%低下させた.

MRSA院内肺炎におけるリネゾリド:RCT(ZEPHyR trial)
Wunderink RG, Niederman MS, Kollef MH, et al. Linezolid in methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: a randomized, controlled study. Clin Infect Dis 2012; 54: 621-9
PMID:22247123
ポイント:MRSA肺炎患者(ITT 448例,per-protocol 348例)を患者をLZD 600mg 12時間毎投与群とVCM 15mg/kg 12時間毎投与群に無作為割付し,7-14日間(菌血症確認された場合は21日間)連日投与して効果を比較した.トラフ・腎機能障害に基づいてVCMの投与量は調節している.臨床効果がリネゾリドが有意に良好という結果であるが,試験デザインには非常に問題点が多い.査読の練習にもオススメの文献.

MRSA院内肺炎におけるバンコマイシンとリネゾリド:ZEPHyR trialをふまえて
Alaniz C, Pogue JM. Vancomycin versus linezolid in the treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: implications of the ZEPHyR trial. Ann Pharmacother 2012; 46: 1432-5
PMID:22947593
ポイント:MRSA肺炎に対するリネゾリドとバンコマイシンの効果を比較したRCTであるZEPHyR trialに関する批判的吟味.ZEPHyR trialの結果をもってMRSA肺炎に対してリネゾリドをルーティンで使用することは支持しないとしている.

重症院内敗血症における抗菌薬治療戦略,de-escalationの頻度
Heenen S, Jacobs F, Vincent JL. Antibiotic strategies in severe nosocomial sepsis: why do we not de-escalate more often? Crit Care Med 2012; 40: 1404-9
PMID:22430235
ポイント:院内重症敗血症167ケースの解析.16%で初期抗菌薬が不適切であった.de-escalationを行ったのは43%,escalationを行ったのは10%,変更なしは36%であった.

重症敗血症患者における敗血症関連臓器障害におけるモキシフロキサシン+メロペネム併用vsメロペネム単剤の経験的治療効果:RCT
Brunkhorst FM, Oppert M, Marx G, et al; German Study Group Competence Network Sepsis (SepNet). Effect of empirical treatment with moxifloxacin and meropenem vs meropenem on sepsis-related organ dysfunction in patients with severe sepsis: a randomized trial. JAMA 2012; 307: 2390-9
PMID:22692171
ポイント:重症敗血症・敗血症性ショック患者551例に対するモキシフロキサシン(400mg q24h)+メロペネム(1g q8h)併用群とメロペネム単剤群を比較した無作為化オープンラベル並行群間試験.28日死亡率(23.9% vs 21.9%, p=0.58),90日死亡率(35.3% vs 32.1%, p=0.43)に有意差なし.

持続的腎代替療法を受けている重症患者の抗菌薬濃度の変動:多施設共同薬物動態研究
Roberts DM, Roberts JA, Roberts MS, et al; RENAL Replacement Therapy Study Investigators. Variability of antibiotic concentrations in critically ill patients receiving continuous renal replacement therapy: a multicentre pharmacokinetic study. Crit Care Med 2012; 40: 1523-8
PMID:22511133
ポイント:4施設ICUのCPFX,MEPM,TAZ/PIPC,VCM投与を受けた持続的腎代替療法患者24名の解析.持続的腎代替療法を受けている重症患者において抗菌薬トラフ値はかなり変化しやすく,流量だけが原因ではない.経験的な抗菌薬投与では,投与間隔の25%の期間で目標トラフ値を達成できず.

初期の適切な抗菌薬治療を受けた敗血症性ショック患者の死亡リスク因子
The determinants of hospital mortality among patients with septic shock receiving appropriate initial antibiotic treatment. Crit Care Med 2012; 40: 2016-21
PMID:22584765
ポイント:血液培養陽性の敗血症性ショック患者436例の後向きコホート研究.初期の適切な抗菌薬療法を受けた敗血症性ショック患者で,ICUでの感染獲得(OR 1.99)とAPACHEⅡscoreの増加(OR 1.11)が院内死亡の決定因子であった.一方でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染は低い院内死亡リスク(OR 0.32)と関連していた.

持続的腎代替療法を施行中のICU患者におけるダプトマイシン(DAP)の用量用法
Preiswerk B, Rudiger A, Fehr J, Corti N. Experience with daptomycin daily dosing in ICU patients undergoing continuous renal replacement therapy. Infection 2012 Jul.21
PMID:22821405
ポイント:DAPは血液透析時は通常量を透析直後に週3回投与(48h-48h-72h)とする.CHDF時は8mg/kg隔日投与とする.ICUでのCHDF患者ではDAP投与は連日・隔日での有意差なし.他に参考になる文献として,重症患者のCHDF時のDAPの血漿中濃度(J Chemother 2012; 24: 253-6),週3回の透析を受ける患者におけるDAPのPK/PD(Butterfield, et al. Antimicrob Agents Chemother 2012 Dec.3),CVVHD(CHDF)を受けているICU患者におけるDAP投与量(Crit Care Med 2011; 39: 19-25)がある.海外と日本で流量は違うが参考に.

重症患者における広域抗菌薬による腎障害
Jensen JU, Hein L, Lundgren B, et al; Procalcitonin And Survival Study (PASS) Group. Kidney failure related to broad-spectrum antibiotics in critically ill patients: secondary end point results from a 1200 patient randomised trial. BMJ Open 2012; 2: e000635.
PMID:22411933,Free Full Text
ポイント:TAZ/PIPCは重症患者において腎機能(eGFR)回復遅延の原因となる.この腎毒性は他のβラクタム系抗菌薬では観察されなかった.デンマーク9施設ICUのプロカルシトニンのRCT(PASS)の二次解析.

ESBL産生腸内細菌による菌血症におけるカルバペネムとその他代替薬:システマティックレビュー&メタ解析
Vardakas KZ, Tansarli GS, Rafailidis PI, Falagas ME. Carbapenems versus alternative antibiotics for the treatment of bacteraemia due to Enterobacteriaceae producing extended-spectrum β-lactamases: a systematic review and meta-analysis. J Antimicrb Chemother 2012; 67: 2793-803
PMID:22915465
ポイント:21報1584例のメタ解析.ESBL産生腸内細菌菌血症ではカルバペネムやBL/BLIs(βラクタマーゼ阻害薬/βラクタム系抗菌薬)はnon-BL/BLIs(セフェムやキノロン)より有意に死亡率が低い.カルバペネムとBL/BLIsは死亡率に有意差なし.

黄色ブドウ球菌による敗血症性関節炎に対するアジスロマイシン(AZM)とリボフラビンの併用
Mal P, Dutta K, Bandyopadhyay D, et al. Azithromycin in combination with riboflavin decreases the severity of Staphylococcus aureus infection induced septic arthritis by modulating the production of free radicals and endogenous cytokines. Inflamm Res 2012 Nov.15
PMID:23229721
ポイント:AZMとリボフラビン(ビタミンB2)の併用は,フリーラジカルや内因性サイトカインを調整することで黄色ブドウ球菌による敗血症性関節炎の重症度を減じる.マウスモデル研究.2012年の第3回MRSAフォーラムでは,MRSA感染デバイスモデルに対してバンコマイシンにマクロライドを併用すると相乗効果が得られたとの報告もなされている.

敗血症管理におけるプロトコル導入は初期抗菌薬投与開始時間を早める
Tipler PS, Pamplin J, Mysliwiec V, et al. Use of a protocolized approach to the management of sepsis can improve time to first dose of antibiotics. J Crit Care 2012 Oct.24
PMID:23102528
ポイント:EGDTを強調した敗血症プロトコルの導入は抗菌薬投与開始までの時間を改善した(160分→99分).

緑膿菌菌血症における適切な経験的抗菌薬併用療法vs単剤療法
Bowers DR, Liew YX, Lye DC, et al. Outcome of Appropriate Empiric Combination versus Monotherapy for Pseudomonas aeruginosa Bacteremia. Antimicrob Agents Chemother 2012 Dec.21
PMID:23263001
ポイント:緑膿菌菌血症384例における経験的な抗菌薬併用療法と単剤療法を比較した後ろ向き多施設コホート研究.背景因子で調整した30日死亡率は有意差なし.院内死亡率は有意差ないが36.6%vs28.7%,p=0.17で単剤群が低い傾向であった.

by DrMagicianEARL | 2013-01-15 00:00 | 敗血症 | Trackback | Comments(0)
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