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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

2012年敗血症関連文献集(3)~EGDTと循環作動薬,モニタリング~

3.敗血症とEGDT,循環作動薬,モニタリング
 EGDTにおいて血圧が維持できなかったり,酸素代謝能が低下している場合,各種昇圧剤が使用される.ノルアドレナリンとドパミンの論争が続いていたが,メタ解析により死亡率が上昇することが示され,一定の結論がでた.もともとβ刺激薬の有害性は多数の基礎的論文で指摘されており,近年ではむしろエスモロールに代表されるβ遮断薬の有用性が報告されるようになってきている.

 SSCGで推奨されている中心静脈酸素飽和度ScvO2モニタリングは,ScvO2高値でも死亡率が上昇するなど,近年その有用性が疑問視されてきている.

敗血症性ショックではノルアドレナリンよりドパミンの方が死亡率・不整脈発生率高い
De Backer D, Aldecoa C, Njimi H, Vincent JL. Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis. Crit Care Med 2012; 40: 725-30
PMID:22036860
ポイント:11報2768例のメタ解析.敗血症性ショックにおいてはドパミンの方が死亡率,不整脈発生率がノルアドレナリンより有意に高かった.敗血症性ショックにおけるノルアドレナリンとドパミンのメタ解析は2011年にJ Intensive Care Medでも報告されており,ノルアドレナリンの方が有意に死亡率が低いとの報告であった(6報2043例).また,すでに日本版敗血症診療ガイドラインからはドパミンは名前すら消滅しており,SSCG 2012においてもドパミンの推奨度は下げられた.

ショック患者における肺動脈カテーテルとPiCCOシステムは予後に有意差なし
Trof RJ, Beishuizen A, Cornet AD, et al. Volume-limited versus pressure-limited hemodynamic management in septic and nonseptic shock. Crit Care Med 2012; 40: 1177-85
PMID:22202713
ポイント:ショック患者120例(敗血症性72例,非敗血症性48例)を肺動脈カテーテル管理群60例とPiCCOシステム管理群60例で比較したRCT.人工呼吸器離脱期間,ICU滞在日数,臓器不全,28日死亡率に有意差はなかった.敗血症性ショック以外ではPiCCOで管理された方が補液量が多く,人工呼吸期間,ICU滞在日数が有意に長かった.

敗血症性ショックでの対循環平均圧と静脈還流におけるノルアドレナリン
Persichini R, Silva S, Teboul JL, et al. Effects of norepinephrine on mean systemic pressure and venous return in human septic shock. Crit Care Med 2012; 40: 3146-53
PMID:22926333
ポイント:60名の敗血症性ショック患者でノルアドレナリン(NA)投与量を減少させると体循環平均圧は有意に低下,静脈還流量の減少を確認した.ノルアドレナリンによる循環動態作用メカニズムの研究は敗血症性ショックではこれまでなかった.敗血症循環動態のよい復習になる文献.

敗血症性ショック患者におけるβ1アドレナリン受容体遮断薬とノルアドレナリンの併用
Balik M, Rulisek J, Leden P, et al. Concomitant use of beta-1 adrenoreceptor blocker and norepinephrine in patients with septic shock. Wien Klin Wochenschr 2012; 124: 552-6
PMID:22815003
ポイント:敗血症性ショック患者10例での検討.敗血症性ショックにおいてβ1ブロッカー(エスモロール 0.2-0.5mg/kg/day持続投与)とノルアドレナリンを併用すると,心拍数を30/分低下させるが血行力学的に悪影響はなく,高い心拍出量を保ち,安全かつ心臓保護的に作用する.

βブロッカーの入院前処方はICUに入院した敗血症患者の死亡率減少に関連する
Macchia A, Romero M, Comignani PD, et al. Previous prescription of β-blockers is associated with reduced mortality among patients hospitalized in intensive care units for sepsis. Crit Care Med 2012; 40: 2768-72
PMID:22824934
ポイント:敗血症患者9465例の後向き解析.βアドレナリン受容体遮断薬を継続処方されていた患者群の敗血症28日死亡率は17.7%,非処方群は22.1%であった.調整後では,処方群は敗血症28日死亡リスクを19%有意に減少させる.

薬剤注射の準備におけるエラー:RCT
Adapa RM, Mani V, Murray LJ, et al. Errors during the preparation of drug infusions: a randomized controlled trial. Br J Anaesth 2012: 109; 729-34
PMID:22850220
ポイント:48名看護師,患者シミュレータRCT.敗血症性ショック患者の急な血圧低下で持続カテコラミン投与開始時,指示受けてナースが調剤群vs充填済みシリンジ使用群を比較.指示を受けてから,調剤群で投与開始までの時間が長く,誤投薬リスクは17倍であった.

敗血症性ショック患者における全身・微小循環に対するドブタミンの効果
Enrico C, Kanoore Edul VS, Vazquez AR, et al. Systemic and microcirculatory effects of dobutamine in patients with septic shock. J Crit Care. 2012; 27: 630-8
PMID:23084135
ポイント:敗血症性ショックにおいて,ドブタミンは,心拍数,心係数,SVIを増加させるが,平均血圧は不変であり,全身血管抵抗は減少した.微小循環障害は投与前に高度な変化がある場合のみで改善する.なお,SSCGが推奨するEGDTにはドブタミンの記載はあるが,根拠があるわけではなかった.2013年1月8日にもドブタミンが有効でないことを示唆する報告がでている(Gothner M, et al. Acta Anaesthesiol Scand 2013 Jan.8)

敗血症性ショックにおける組織酸素濃度
Mesquida J, Espinal C, Gruartmoner G, et al. Prognostic implications of tissue oxygen saturation in human septic shock. Intensive Care Med 2012; 38: 592-7
PMID:22310873
ポイント:敗血症性ショック患者33例を解析した前向き観察研究.平均動脈圧が回復した敗血症性ショック患者では,脱酸素化が障害されていると,24時間後の臓器障害の改善はみられなかった.また,脱酸素化と再酸素化が低下していると,ICU在室期間はより長かった.脱酸素化と再酸素化は平均動脈圧に関連する.

敗血症患者における中等度レベルの乳酸上昇の敗血症性ショック進展予測
Song YH, Shin TG, Kang MJ, et al. Predicting factors associated with clinical deterioration of sepsis patients with intermediate levels of serum lactate. Shock 2012; 38: 249-54
PMID:22683735
ポイント:中等度(2-4mmol/L)乳酸レベルの成人敗血症患者474名の後顧的多変量解析.SOFA score≧5においては敗血症性ショック予測率は38.9%であった.

敗血症性ショックにおける正常範囲内の血清乳酸値は予後を予測しうる:コホート研究
Wacharasint P, Nakada TA, Boyd JH, et al. Normal-range blood lactate concentration in septic shock is prognostic and predictive. Shock 2012; 38: 4-10
PMID:22552014
ポイント:VASSTの665例とSPHの469例のコホート研究.敗血症性ショックにおいて正常範囲内の乳酸濃度は予後指標としてAPACHE-Ⅱscoreと同等に有用である.乳酸値1.4-2.3mmol/Lの患者は≦1.4mmol/Lの患者より有意に死亡率,臓器不全が増加した.1.4-2.3mmol/L群は2.3-4.4mmol/L群と予後は同等であった.さらに乳酸値が1.4mmol/L以下の患者ではバソプレシン投与が有益であった.

大腿静脈酸素飽和度は中心静脈血酸素飽和度の代用とはならない
van Beest PA, van der Schors A, Liefers H, et al. Femoral venous oxygen saturation is no surrogate for central venous oxygen saturation. Crit Care Med 2012; 40: 3196-201
PMID:23168611
ポイント:160例の解析.大腿静脈血酸素飽和度は,全身状態の安定度に関係なく中心静脈血酸素飽和度のサロゲートマーカーとはならない.同様の報告(Chest 2010; 138: 76-83)では,混合静脈血との比較が報告されており,こちらでも大腿静脈血酸素飽和度で代用はできないとしている.

重症敗血症・敗血症性ショックにおける中心静脈酸素飽和度(ScvO2)の持続的・断続的モニタリングの比較
Huh JW, Oh BJ, Lim CM, et al. Comparison of clinical outcomes between intermittent and continuous monitoring of central venous oxygen saturation (ScvO2) in patients with severe sepsis and septic shock: a pilot study. Emerg Med J 2012 Nov.8
PMID:23139093
ポイント:重症敗血症・敗血症性ショック患者106名のScvO2モニタリング施行を断続的か持続的かで比較.EGDTの6時間時点で目標到達率は41.5%vs35.8%で有意差はみられなかった.死亡率,ICU滞在期間も有意差はみられなかった.持続モニタリングするならPreSepカテーテルだが,コストが高く挿入操作も面倒である.そもそもScvO2がそこまで有用かという問題がある.

重症敗血症患者において咬筋組織の酸素飽和度は,EGDT中の中心静脈酸素飽和度の正常を予測し,死亡率を予測する
Colin G, Nardi O, Polito A, et al. Masseter tissue oxygen saturation predicts normal central venous oxygen saturation during early goal-directed therapy and predicts mortality in patients with severe sepsis. Crit Care Med 2012; 40: 435-40
PMID:22020233
ポイント:38名を解析した前向き観察研究.重症敗血症の6時間の蘇生処置後の組織酸素飽和度は,有意に手掌>咬筋>三角筋であり,咬筋組織酸素飽和度は手掌組織酸素飽和度よりもScvO2>70%を有意に予測した(AUC 0.80vs0.67).咬筋組織酸素飽和度(AUC 0.87),三角筋組織酸素飽和度(AUC 0.88)は28日死亡リスクを強く予測したが,手掌組織酸素飽和度(AUC 0,66)とScvO2(AUC 0.56)はそうではなかった.

重症敗血症・敗血症性ショックにおいて中心静脈酸素飽和度(ScvO2)は生存に関連しない
Chung KP, Chang HT, Huang YT, et al. Central venous oxygen saturation under non-protocolized resuscitation is not related to survival in severe sepsis or septic shock. Shock 2012; 38: 584-91
PMID:23143064
ポイント:重症敗血症・敗血症性ショック患者においてScvO2≧70%と<70%で死亡率に有意差はみられなかった.ScvO2と28日死亡率や院内死亡率に有意な関連性はなかった.低い平均血圧と高いCVPは高い28日死亡率と関連していた.

癌患者の敗血症における非侵襲的要素を含まないEGDTプロトコルの有用性
Hanzelka KM, Yeung SC, Chisholm G, et al. Implementation of modified early-goal directed therapy for sepsis in the emergency center of a comprehensive cancer center. Support Care Cancer 2012 Sep.7
PMID:22956191
ポイント:before-after研究.癌患者の敗血症においては,EGDTの非侵襲的要素のみで組んだ治療アルゴリズム導入は,導入前に比して28日死亡率が有意に改善した(20% vs 38%, p=0.005).平均血圧目標値までの到達率(90% vs 74%, p=0.004),尿量目標値までの到達率(96% vs 79%, p=0.002)も導入後の方が有意に改善した.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-19 17:44 | 敗血症 | Comments(0)

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