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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

2012年敗血症関連文献集(4) ~各種メディケーション,PMX-DHP~

4.敗血症における各種メディケーション,PMX-DHP
 敗血症に対する薬剤治療は大きな進展はない.賛否両論のステロイドに関しては,有用と判断すべきエビデンスは2012年もあまりでておらず,むしろ有害との報告もでている.

 リコンビナント活性化プロテインC製剤の撤退と入れ替わりに本邦発のリコンビナント・トロンボモデュリン製剤がDIC領域で普及し,米国でも敗血症性DICにおいてPhaseⅡが終了しているが,現時点ではRCTレベルでの死亡率改善効果は得られていないのが現状であり,PhaseⅢの結果が待たれる.

 一方で近年敗血症・ARDS・肺炎領域で注目されているスタチン製剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)であるが,2012年にはRCT/PhaseⅡのASEPSIS trialが報告され,現時点では敗血症の重症化予防の効果のみという結果であった.

敗血症性ショックにおける早期の低用量ステロイド療法:後ろ向き観察研究
Park HY, Suh GY, Song JU, et al. Early initiation of low-dose corticosteroid therapy in the management of septic shock: a retrospective observational study. Crit Care 2012; 16: R3
PMID:22226237,Free Full Text
ポイント:低用量ステロイド療法を受けた敗血症性ショック患者178名の後ろ向き解析.敗血症性ショックに対する早期の低用量ステロイド療法開始は死亡率の減少と有意に関連.生存者と死亡者の低用量ステロイド療法開始までの時間は6.5時間vs10.4時間で有意に生存者の方が短かった(p=0.0135).6時間以内投与群は6時間後投与群より37%死亡率が低かった(32% vs 51%,p=0.0132).ステロイドを投与するなら早めに,ということにはなるが,本研究ではステロイド非投与群との比較は行われていない.ステロイド投与自体の改善効果についてはいまだ議論されており,エビデンスは不十分である.

成人敗血症性ショックにおける低用量ステロイドは死亡リスクを増加させる
Casserly B, Gerlach H, Phillips GS, et al. Low-dose steroids in adult septic shock: results of the Surviving Sepsis Campaign. Intensive Care Med 2012; 38: 1946-54
PMID:23064466
ポイント:2005-2010年の218施設敗血症患者27836名の解析.低用量ステロイド投与患者の病院死亡リスクは1.18倍,ショック後8時間以内に早期投与された例では1.23倍有意に増加していた.

PMX-DHPを用いない敗血症性ショック治療
岩崎衣津,時岡宏明,福島臣啓,他.エンドトキシン吸着療法を用いない敗血症性ショック患者の治療成績.日救急医会誌 2012; 23: 92-100
ポイント:下部消化管疾患による敗血症性ショック患者28例の治療は,心臓超音波検査による適切な前負荷の維持とノルアドレナリンとバソプレシンの使用により,PMX-DHPを用いなくても院内死亡率は17.9%(APACHEⅡから算出した予測死亡率63.3%),大腸穿孔患者15例では院内死亡率は0%(予測死亡率57.7%)と良好な成績を示した.本文献には岡山赤十字病院麻酔科の独自の敗血症治療プロトコルも掲載されており,非常に興味深い.

大腸穿孔患者におけるPMX-DHP(エンドトキシン吸着カラム)
Sugimoto K, Sato K, Maekawa H, et al. Analysis of the efficacy of direct hemoperfusion with polymyxin B-immobilized fiber (PMX-DHP) according to the prognostic factors in patients with colorectal perforation. Surg Today 2012 Nov.6
PMID:23129028
ポイント:日本からの報告.大腸穿孔への手術を受けた156名の解析で,術後28日死亡率は17.9%であり,APACHEⅡscore≧17が独立危険因子であった.≧17でPMX-DHPを受けた患者でも≦16の患者より有意に死亡率が高い.PMX-DHPは重症例では効果に限界があることが示唆された.

シベレスタットの使用を中止してもARDS患者の予後は悪化せず
小林秀嗣, 内野滋彦, 遠藤新大, 他.シベレスタット使用中止による敗血症性急性肺傷害症例の予後変化.日集中医誌 2012; 19: 609-15
ポイント:東京慈恵医大からの報告.シベレスタット(エラスポール)の使用を原則中止して予後を比較したbefore-after研究.シベレスタット使用中止後も敗血症性急性肺傷害の予後は悪化しなかった.中止後は人工呼吸器期間が有意に短く,院内死亡率は73.1%有意に減少した.

リコンビナント・ヒト・可溶性トロンボモデュリン(rTM)は重症敗血症患者の死亡率と呼吸機能障害を改善する
Ogawa Y, Yamakawa K, Ogura H, et al. Recombinant human soluble thrombomodulin improves mortality and respiratory dysfunction in patients with severe sepsis. J Trauma Acute Care Surg 2012; 72: 1150-7
PMID:22673239
ポイント:大阪大学からの報告.敗血症性DICに対してrTM群41例とコントロール群45例を後方視的に前後比較した研究.rTMは28日,60日,90日目(90日死亡率:rTM群37% vs コントロール群58%)の転帰,SOFA score,肺傷害スコアを有意に改善した.

DICに対するアンチトロンビン(AT)とメシル酸ガベキサート(GM):preliminary study
Nishiyama T, Kohno Y, Koishi K. Effects of antithrombin and gabexate mesilate on disseminated intravascular coagulation: a preliminary study. Am J Emerg Med 2012; 30: 1219-23
PMID:22204993
ポイント:日本からの報告.感染症によるDICを発症したICU患者16名でATとGMを比較したRCT.ATは有意ではないが凝固線溶系の治療効果がGMより強い傾向が見られた.28日死亡率に有意差はみられなかった.

成人敗血症性ショックにおける活性化プロテインC(APC):PROWESS-SHOCK study
Ranieri VM, Thompson BT, Barie PS, et al; PROWESS-SHOCK Study Group. Drotrecogin alfa (activated) in adults with septic shock. N Engl J Med 2012; 366: 2055-64
PMID:22616830,Free Full Text
ポイント:敗血症性ショック患者1697例におけるリコンビナントAPC製剤投与群とプラセボ群を比較した多施設共同二重盲検RCT.28日死亡率は26.4% vs 24.2%で有意差は認められなかった(RR 1.09, 95%CI 0.92-1.28, p=0.31).90日死亡率でも34.1% vs 32.7%で有意差は認められなかった(RR 1.04, 95%CI 0.90-1.19, p=0.56).この報告をもってイーライ・リリー社はリコンビナントAPC製剤を市場撤退させるに至った.

成人重症敗血症におけるリコンビナント・ヒト活性化プロテインC(rAPC製剤)の評価:Surviving Sepsis Campaignの結果
Casserly B, Gerlach H, Phillips GS, et al. Evaluating the use of recombinant human activated protein C in adult severe sepsis: results of the Surviving Sepsis Campaign. Crit Care Med 2012; 40: 1417-26
PMID:22430247
ポイント:165地域15022例(8%がrAPC投与)の解析.敗血症診断の24時間以内に投与を開始した症例では死亡率は45%減少させていた.PROWESS-SHOCK trialで市場撤退が決まってからpublishされた「やっぱり効いていたのでは?」という報告であるが,あくまでも後ろ向き解析であり,二重盲検RCTで否定された以上は復活の根拠とはならないだろう.

重症敗血症におけるリコンビナント活性化プロテインC(rAPC)の効果と安全性:メタ解析
Kalil AC, LaRosa SP. Effectiveness and safety of drotrecogin alfa (activated) for severe sepsis: a meta-analysis and metaregression. Lancet Infect Dis 2012; 12: 678-86
PMID:22809883
ポイント:リコンビナント活性化プロテインC(rAPC)製剤に関する有効性を評価した9報RCT(41401例),16報観察研究(5822例)と,安全性を評価した20報(8245名)のメタ解析で,rAPC製剤を販売中止に追い込んだPROWESS-SHOCK試験を加えても有意に死亡率は低下していた.重篤な出血は5.6%でみられ,PROWESS試験の3.5%より有意に多かった.Crit Care Med 2012; 40: 1417-26につづくrAPC製剤を支持する報告であるが,質の悪い報告も多数含まれており,2012年末にコクランレビューにを含む2つのメタ解析で効果は否定されることになる.

重症敗血症,敗血症性ショックにおけるリコンビナント活性化プロテインCのメタ解析
Lai PS, Matteau A, Iddriss A, et al. An updated meta-analysis to understand the variable efficacy of drotrecogin alfa (activated) in severe sepsis and septic shock. Minerva Anestesiol 2013; 79: 33-43
PMID:23174922,Free Full Text
ポイント:rAPC製剤は重症敗血症,敗血症性ショックにおける28日死亡率を改善せず,重度の出血と関連.rAPC製剤に関するRCT5報のメタ解析のupdate.

成人および小児の重症敗血症・敗血症性ショックにおけるリコンビナント活性化プロテインC(rAPC)
Martí-Carvajal AJ, Solà I, Gluud C, et al. Human recombinant protein C for severe sepsis and septic shock in adult and paediatric patients. Cochrane Database Syst Rev 2012; 12: CD004388
PMID:23235609
ポイント:コクランレビュー,6報(小児1報含む)RCTメタ解析.重症敗血症・敗血症性ショックでrAPC製剤に死亡率改善エビデンスはなく,使用すべきではない.重症出血リスクは1.45倍.

外来患者におけるスタチン使用と感染症関連死減少との関連性についてのシステマティックレビュー&メタ解析
Ma Y, Wen X, Peng J, et al. Systematic Review and Meta-Analysis on the Association between Outpatient Statins Use and Infectious Disease-Related Mortality. PLoS One 2012; 7: e51548
PMID:23284711,Free Full Text
スタチンと感染症死亡リスク減少についての41報のメタ解析.全報告での解析では,29%減少.ケースコントロールスタディは42%減,後ろ向きコホートは34%減,前向きコホートは29%減,RCTでは有意な減少認めなかった.全死亡リスクは,菌血症では60%減少,敗血症では39%減少,肺炎では31%減少しており,他の感染症では有意な減少を認めなかった.30日死亡リスクは38%減少,90日死亡リスクは32%減少,院内死亡リスクは29%減少,1年以上の長期死亡リスクは有意な減少を認めなかった.

アトルバスタチン40mg/dayは敗血症患者の重症度を減じる:二重盲検プラセボ対照RCT
Patel JM, Snaith C, Thickett DR, et al. Randomized double-blind placebo-controlled trial of 40 mg/day of atorvastatin in reducing the severity of sepsis in ward patients (ASEPSIS Trial). Crit Care 2012; 16: R231
PMID:23232151
ポイント:敗血症患者においてアトルバスタチン40mg/日投与群49名とプラセボ群51名を比較した単施設二重盲検RCT,ASEPSIS trial,PhaseⅡ報告.アトルバスタチン投与群はプラセボ群と比較して重症敗血症進展率(4%vs24%,p=0.007,NNT 5),血漿コレステロール値(p<0.0001),Alb/Cr比(p=0.049)が有意に低下した.ICU入室,入院期間,死亡率,再入院率,有害事象に有意差はみられなかった.

敗血症ラットにおける肝細胞機能と炎症におけるスタチンの効果
Stolf AM, Lívero Fdos R, Dreifuss AA, et al. Effects of statins on liver cell function and inflammation in septic rats. J Surg Res 2012; 178: 888-97
PMID:22954522
ポイント:敗血症になる前にスタチン製剤を投与すると肝ミトコンドリアの活動性が改善する.CLPマウスモデルでの研究.この機序はインフルエンザ重症化をスタチンが防ぐメカニズムとしても知られる.

市中肺炎におけるスタチン使用は急性腎傷害を減じるか?
Murugan R, Weissfeld L, Yende S, et al; Genetic and Inflammatory Markers of Sepsis (GenIMS) Investigators. Association of statin use with risk and outcome of acute kidney injury in community-acquired pneumonia. Clin J Am Soc Nephrol 2012; 7: 895-905
PMID:22461537
ポイント:1836例前向きコホート研究.市中肺炎で入院した患者においてスタチン使用は急性腎傷害リスクを減じず,1年死亡の低いリスクとも関連はなかった.

成人のSIRSおよび敗血症におけるN-acetylcysteine
Szakmany T, Hauser B, Radermacher P. N-acetylcysteine for sepsis and systemic inflammatory response in adults. Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD006616
PMID:22972094
ポイント:RCT41報2768名のコクランレビューメタ解析.N-acetylcysteine注射製剤はSIRSや敗血症においては死亡率や合併症発生率を減じず,発症24時間以降の投与では心血管に悪影響.本剤をSIRSや敗血症に使用すべきではない.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-23 00:00 | 敗血症 | Comments(0)

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