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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

2012年敗血症関連文献集(5) ~予後関連因子,解熱処置,プロトコル遵守~

5.敗血症の予後関連因子,解熱処置,プロトコル遵守

1991年のACCP/SCCMの敗血症定義(SIRS基準)及び2001年のSCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISによる敗血症定義の診断精度の評価:ほぼ同等
Zhao H, Heard SO, Mullen MT, et al. An evaluation of the diagnostic accuracy of the 1991 American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine and the 2001 Society of Critical Care Medicine/European Society of Intensive Care Medicine/American College of Chest Physicians/American Thoracic Society/Surgical Infection Society sepsis definition. Crit Care Med 2012; 40: 1700-6
PMID:22610176
ポイント:1991年のACCP/SCCMの敗血症定義(SIRS基準)及び2001年のSCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISによる敗血症定義の診断精度を2007-2008年にICUに入室したサンプルデータ960例で評価.ACCP/SCCM定義は感度94.6%,特異度61.0%であった,SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISは感度96.9%,特異度58.3%であった.

スペインにおける重症市中菌血症患者の臨床的特徴と予後の15年間の推移
Vallés J, Palomar M, Alvárez-Lerma F, et al; for the GTEISEMICYUC Working Group on Bacteremia. Evolution Over a 15-Year Period of Clinical Characteristics and Outcomes of Critically Ill Patients With Community-Acquired Bacteremia. Crit Care Med 2013; 41: 76-83
PMID:23222266
ポイント:93~07年までのスペイン47のICUに入室し入院後48時間以内に血液培養が陽性となった市中菌血症患者829名の解析.市中関連菌血症患者比率は93年の9/1000ICU入院から07年に24.4/1000に有意に増加した.敗血症性ショックも4.6/1000から14.6/1000に有意に増加していた.菌血症患者は有意に高齢でより多くの合併症を有していた.グラム陽性菌・グラム陰性菌検出率は93年・98年・07年で有意差なし.死亡率は93年42%→98年32.2%→07年22.9%で有意に低下した.敗血症性ショックと合併症の数は予後不良の独立した関連因子であった.適切な抗菌薬治療とその進展は予後改善に関連していた.

敗血症性ショック患者の凝固能低下遷延は院内死亡を予測する
Massion PB, Peters P, Ledoux D, et al. Persistent hypocoagulability in patients with septic shock predicts greater hospital mortality: impact of impaired thrombin generation. Intensive Care Med 2012; 38: 1326-35
PMID:22735856
ポイント:敗血症性ショック患者39名の前向き研究.敗血症性ショック患者はICU入室時に凝固能低下を呈している.3日目のAPTT延長と解消されないトロンビン生成欠乏によって評価される凝固能低下の持続は病院死亡率の増大と関連.

初期の適切な抗菌薬治療を受けた敗血症性ショック患者の死亡リスク因子
The determinants of hospital mortality among patients with septic shock receiving appropriate initial antibiotic treatment. Crit Care Med 2012; 40: 2016-21
PMID:22584765
ポイント:血液培養陽性の敗血症性ショック患者436例の後向きコホート研究.初期の適切な抗菌薬療法を受けた敗血症性ショック患者で,ICUでの感染獲得(OR 1.99)とAPACHEⅡscoreの増加(OR 1.11)が院内死亡の決定因子であった.一方でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染は低い院内死亡リスク(OR 0.32)と関連していた.

BNPは敗血症患者の死亡を予測する:システマティックレビュー&メタ解析
Wang F, Wu Y, Tang L, et al. Brain natriuretic peptide for prediction of mortality in patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis. Crit Care 2012; 16: R74
PMID:22559153
ポイント:12報1865例のメタ解析.BNP上昇は死亡リスクを8.65倍に有意に上昇させた(BNP 10.44倍,NT-pBNP 6.62倍).死亡予測においては感度79%,特異度60%,陽性尤度比2.27,陰性尤度比0.32であり,敗血症でBNPまたはNT-proBNPの高値は強力な死亡予測因子となる可能性が示唆された.

重症外傷患者におけるプロカルシトニンの有用性
Sakran JV, Michetti CP, Sheridan MJ, et al. The utility of procalcitonin in critically ill trauma patients. J Trauma Acute Care Surg 2012; 73: 413-8
PMID:22846948
ポイント:ICUに入室した外傷患者102名(院内死亡率13%),856計測値の解析.プロカルシトニン値は外傷・敗血症のICU患者で有意に高く,重症疾患で敗血症とSIRSを区別する一助となるかもしれない.高いプロカルシトニン値は死亡率増加と関連しており,カットオフ値を5ng/mLとすると死亡リスクは3.65倍であった.また,プロカルシトニンは敗血症の有意な予測因子(OR 2.37)であった.

大腸菌菌血症における臨床像,予後,ESBL産生と血液培養陽性までの時間の関連
Álvarez R, Viñas-Castillo L, Lepe-Jiménez JA, et al. Time to positivity of blood culture association with clinical presentation, prognosis and ESBL-production in Escherichia coli bacteremia. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2012; 31: 2191-5
PMID:22298241
ポイント:大腸菌菌血症患者226例の後ろ向き観察研究.大腸菌菌血症における血液培養陽性検出までの時間の短さは敗血症性ショックと予後不良の独立危険因子であった.ESBL産生株であることは血液培養陽性までの時間に有意な影響を与えない.

重症患者の敗血症予測における未熟血小板分画
De Blasi RA, Cardelli P, Costante A, et al. Immature platelet fraction in predicting sepsis in critically ill patients. Intensive Care Med 2012 Oct.24
PMID:23093245
ポイント:ICU入室時点で敗血症がない患者では,敗血症が明らかになる前に未熟血小板分画(IPF%)が増加する.IPF%の測定は敗血症の発症を予測する早期細胞性マーカーとなりうる.感度56.2%,特異度90.0%.なお,IPF%は急性冠症候群の予測マーカーにもなることが報告されている(Lopez-Jimenez RA, et al. Rev Esp Cardiol 2012 Sep.4).

赤血球容積粒度分布幅(RDW)はグラム陰性桿菌菌血症患者の死亡予測マーカー
Ku NS, Kim HW, Oh HJ, et al. Red blood cell distribution width is an independent predictor of mortality in patients with gram-negative bacteremia. Shock 2012; 38: 123-7
PMID:22683729
ポイント:グラム陰性桿菌菌血症患者161名の後顧的解析:赤血球容積粒度分布幅(RDW)高値はRDW正常より28日死亡率が有意に高く,グラム陰性桿菌菌血症における死亡の独立した予測因子であり,特に72時間時点でのRDWは全死亡を予測しうる.RDWは日本ではあまり測られないが,CBCとは独立したパラメータで欧米では重視されている.

集中治療を受けるSIRSもしくはショック患者において高感度トロポニンTは心臓超音波検査よりも1年死亡率予測に優れている
Bergenzaun L, Ohlin H, Gudmundsson P, et al. High-sensitive cardiac Troponin T is superior to echocardiography in predicting 1-year mortality in patients with SIRS and shock in intensive care. BMC Anesthesiology 2012; 12: 25
PMID:23006477,Free Full Text
ポイント:49例の前向き観察コホート研究.非生存者の高感度トロポニンTは生存者と比較して有意に高く(169ng/L vs 60 ng/L),高感度トロポニンTはショック患者の1年死亡率の独立予測因子(OR 2.0)であり,BNP,心エコーパラメータは予後予測的価値を有さなかった.

敗血症合併菌血症において発症前90日以内の抗菌薬曝露は予後不良
Micek S, Johnson MT, Reichley R, Kollef MH. An institutional perspective on the impact of recent antibiotic exposure on length of stay and hospital costs for patients with gram-negative sepsis. BMC Infect Dis 2012; 12: 56
PMID:22414209,Free Full Text
ポイント:米国Barnes-Jewish病院における2007年のコホートデータから抽出した重症敗血症・敗血症性ショックを合併したグラム陰性菌菌血症754例の解析.大腸菌30.8%,肺炎桿菌23.2%,緑膿菌17.6%であった.41.1%が発症前90日以内に抗菌薬曝露があり,非曝露群と比較して不適切な抗菌薬初期投与が有意に多く(45.4% vs 21.2%),院内死亡率も有意に高く(51.3% vs 34.0%),入院期間も有意に長く(13.0日間 vs 8.0日間),コストも有意に高かった(94737$ vs 21329$).

重症敗血症/敗血症性ショック患者において赤血球輸血は低い死亡率と関連する
Park DW, Chun BC, Kwon SS, et al. Red blood cell transfusions are associated with lower mortality in patients with severe sepsis and septic shock: a propensity-matched analysis. Crit Care Med 2012; 40: 3140-5
PMID:22975891
ポイント:2005年から2009年までの韓国22施設ICUの1450名,propensity matching解析.低リスクの重症敗血症/敗血症性ショック患者に対する輸血で死亡率が7日間,28日間,院内全てで約50%低下した.

集中治療における入院時または入院前のアニオンギャップは死亡率を予測する
Lipnick MS, Braun AB, Cheung JT, et al. The Difference Between Critical Care Initiation Anion Gap and Prehospital Admission Anion Gap is Predictive of Mortality in Critical Illness. Crit Care Med 2013; 41: 49-59
PMID:23190721
ポイント:ボストン2施設のICU患者8985名における重症化初期アニオンギャップ(AG)-入院前AG=ΔAGと予後の関係の研究.30日死亡リスクは,ΔAG 0-5mEq/Lと比較して,<0mEq/Lで0.75倍増加,5-10mEq/Lで1.56倍増加,>10mEq/Lで2.18倍増加していた.

臓器不全前のSIRSの期間は敗血症の有意な予後予測因子である
Sugita H, Kinoshita Y, Baba H. The duration of SIRS before organ failure is a significant prognostic factor of sepsis. Int J Emerg Med 2012; 5: 44
PMID:23273374,Free Full Text
ポイント:日本からの報告.重症敗血症患者110例の後ろ向き解析.臓器不全前SIRS期間(DSOF)≦24hは>24hより死亡率が有意に高く(52% vs 25%),死亡リスク5.89倍.DSOFは重症敗血症の予後予測因子であった.

敗血症,非敗血症における重症患者の死亡率と体温,解熱薬の関連性:日韓共同多施設前向き観察研究FACE study
Lee BH, Inui D, Tada K, Tanaka K, et al; Fever and Antipyretic in Critically ill patients Evaluation (FACE) Study Group. Association of body temperature and antipyretic treatments with mortality of critically ill patients with and without sepsis: multi-centered prospective observational study. Crit Care 2012; 16: R33
PMID:22373120,Free Full Text
ポイント:日韓の25施設ICUにおける48時間以上ICUに入院している患者1425例の解析.解熱処置を受けた患者は737例(51.7%)であり,解熱薬は計4863回投与された.敗血症における発熱は予後に影響しないが,敗血症患者への解熱薬の投与は28日死亡リスクをNSAIDsで2.61倍,アセトアミノフェンで2.05倍有意に増加させた.一方,敗血症でない場合は,高熱(>39.5℃)で28日死亡リスクは8.14倍に有意に上昇した(36.5-37.4℃と比較).現在FACE-Ⅱ studyが進行中.

敗血症性ショックにおける外部からのクーリングによる発熱のコントロール:RCT
Schortgen F, Clabault K, Katsahian S, et al. Fever control using external cooling in septic shock: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2012; 185: 1088-95
PMID:22366046
ポイント:敗血症性ショック患者200名を外部からのクーリングによる発熱コントロールを行う群と対照群とで比較したRCT.敗血症性ショック早期の患者において,クーリングは血管作動薬の必要性を有意に減少させ,14日死亡も有意に減少させた(19% vs 34%, p=0.013).

ICU看護師の冷罨法に関する意識調査;適用に際して知識と判断が不十分な可能性
野口綾子,細川康二,志馬伸朗,他.ICU看護師の冷罨法に関する意識調査.日集中医誌 2012; 19: 273-6
ポイント:ICUに限らず冷罨法を行うことのある看護師は必読文献と思われる.7施設ICUに勤務する看護師197名へのアンケートで,発熱は37.15-38.0℃,冷罨法の開始体温は38.0℃と回答.看護師の99%が冷罨法の手法に氷枕・氷嚢を選択し,85.1%が解熱効果があると回答.冷罨法開始基準は,患者の希望(78.6%)と体温の上昇(84.2%)であり,70.7%が感染症の有無によって適応基準を変えないと回答していた.冷罨法の適用に際して知識と判断が不十分な可能性が示唆された.

アジアにおけるEGDTとSSC蘇生バンドルの実施
Na S, Kuan WS, Mahadevan M, Li CH, et al; ATLAS Investigators. Implementation of early goal-directed therapy and the surviving sepsis campaign resuscitation bundle in Asia. Int J Qual Health Care 2012; 24: 452-62
PMID:22899698
ポイント:アジア5カ国8施設の成人重症敗血症・敗血症性ショック患者556名の解析.死亡率は29.9%であった.蘇生バンドル実施は死亡率を33%有意に低下していた(調整因子補整で有意差は消失).実施コンプライアンスはチームの方が良好であった.

重症敗血症・敗血症性ショック管理における早期蘇生バンドルのコンプライアンスへの影響因子
Kang MJ, Shin TG, Jo IJ, et al. Factors influencing compliance with early resuscitation bundle in the management of severe sepsis and septic shock. Shock 2012; 38: 474-9
PMID:23042195
重症敗血症・敗血症性ショック患者317名の蘇生バンドルコンプライアンスの上昇因子・低下因子の多変量解析.高熱,臨床経験3年以上の看護師によるケア,シニアレジデントや救急認定医による治療がコンプライアンス上昇因子であった.一方,神秘的ショック,高乳酸血症がコンプライアンス低下因子であった.

韓国ICUにおける重症敗血症バンドルの施行におけるフルタイムの集中治療医と看護師/患者比率の影響
Kim JH, Hong SK, Kim KC, et al. Influence of full-time intensivist and the nurse-to-patient ratio on the implementation of severe sepsis bundles in Korean intensive care units. J Crit Care 2012; 414: e11-21
PMID:22591568
ポイント:韓国28施設ICUの251例の解析.集中治療医の24時間常駐と看護師対患者比率1:2は重症敗血症患者の蘇生バンドルの実施のコンプライアンスと死亡率低下に有意に関連しており,死亡リスクをそれぞれ54.4%,54.1%減少させていた.

重症敗血症患者における脳血管オートレギュレーションと敗血症関連譫妄
Schramm P, Klein KU, Falkenberg L, et al. Impaired cerebrovascular autoregulation in patients with severe sepsis and sepsis-associated delirium. Crit Care 2012; 16: R181
PMID:23036135
ポイント:30例の解析.重症敗血症患者における脳血管オートレギュレーションはday1 60%,day2 59%,day3 41%,day 4 46%であり,最初の2日間は脳血管の自動制御機能が障害されており,CAM-ICUにより敗血症関連譫妄は76%の患者でみられ,特にday1の脳血管オートレギュレーションはday4の敗血症関連譫妄発症と有意に関連していた.

肺炎マウスにおける腸内細菌叢の役割
Fox AC, McConnell KW, Yoseph BP, et al. The endogenous bacteria alter gut epithelial apoptosis and decrease mortality following Pseudomonas aeruginosa pneumonia. Shock 2012; 38: 508-14
PMID:23042193
ポイント:緑膿菌肺炎モデルの無菌マウスを用いた基礎研究.腸内の内因性細菌は,腸管細胞アポトーシスや局所的炎症促進反応を調整することで肺炎からの敗血症による死亡率を減少させる.

肺炎球菌のαエノラーゼはNETsを増加させる
Mori Y, Yamaguchi M, Terao Y, et al. α-Enolase of Streptococcus pneumoniae induces formation of neutrophil extracellular traps. J Biol Chem 2012; 287: 10472-81
PMID:22262863
ポイント:日本からのin vitro研究.重症感染症では血小板が好中球に結合し,好中球自らが犠牲となり(NETosis),核を分解して殺菌力のあるNETsを細胞外に放出し,菌を絡めとる.しかしながらエラスターゼやヒストンなど,一部生体に悪影響を及ぼす可能性があるものも放出されうる.肺炎球菌がこのNETs放出を促進することが本報告で分かる.なお,肺炎球菌はカプセル化とリポテイコ酸により正電荷を帯び,NETsを回避できることが知られており(Cell Microbiol 2007; 9: 1162-71),NETsが関与するalarminsによる生体への侵襲とNETsで駆除できない肺炎球菌の特徴が重症化の一因であることが推察される.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-25 00:00 | 敗血症 | Comments(0)

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