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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

2012年肺炎関連文献集(2) ~医療介護ケア関連肺炎,院内肺炎,人工呼吸器関連肺炎~

2012年肺炎関連文献集(2) ~医療介護ケア関連肺炎(NHCAP/HCAP),院内肺炎(HAP),人工呼吸器関連肺炎(VAP)~

医療介護ケア関連肺炎においてなぜ死亡率は増えるのか?肺炎球菌肺炎の教訓
Rello J, Luján M, Gallego M, et al; PROCORNEU Study Group. Why mortality is increased in health-care-associated pneumonia: lessons from pneumococcal bacteremic pneumonia. Chest 2012; 137: 1138-44
PMID:19952058
ポイント:診断しやすく,適切な抗菌薬が投与されやすい肺炎球菌肺炎での背景因子の違いを検討した研究.市中肺炎(CAP)184例と医療介護ケア関連肺炎(HCAP)44例を比較したところ,死亡率は7.6%vs29.5%とHCAPが有意に高かった.HCAP群はCAP群と比較して年齢,Charson index,入院時重症度が有意に高く,また,ICU入院率は有意に低かった.人工呼吸器装着率や循環作動薬の使用率は有意ではないもののHCAP群が低い傾向であった.HCAPであることそのものが死亡率増加に関連していた(OR 5.56).肺炎においては適切な抗菌薬治療よりも宿主状態の影響が大きいのかもしれない.

透析以外に医療介護ケア関連肺炎(HCAP)の要素を有さない透析患者における肺炎は,HCAPとして抗菌薬治療を行うべきか?
Taylor SP, Taylor BT. Healthcare-associated pneumonia in hemodialysis patients: Clinical outcomes in patients treated with narrow versus broad spectrum antibiotic therapy. Respirology 2013; 18: 364-8
PMID:23066809
ポイント:透析患者の肺炎はATS/IDSAガイドライン2005では医療ケア関連肺炎(HCAP)として扱い,広域抗菌薬を投与することが推奨されている(本邦でも医療介護関連肺炎(NHCAP)の扱い).しかし,この分類を支持するデータは少ない.透析を受けている肺炎患者125名について,市中肺炎(CAP)として扱い狭域抗菌薬を投与した患者群とHCAPとして扱い広域抗菌薬を投与した患者群をbefore-afterで比較を行った.患者背景では重症度PSI,CCIに有意差なし.広域抗菌薬群は狭域抗菌薬群に比して経口抗菌薬スイッチまでに要した期間,臨床的安定化後の抗菌薬注射製剤投与期間,入院期間が有意に長かった.臨床的に安定化するまでの期間も有意ではないが長い傾向がみられた.

MRSAによる医療ケア関連肺炎(HCAP)患者における経験的バンコマイシンの中断の試験
Boyce JM, Pop OF, Abreu-Lanfranco O, et al. A Trial of Discontinuation of Empiric Vancomycin Therapy in Patients with Suspected Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Healthcare-Associated Pneumonia. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 1163-8
PMID:23254432
ポイント:91例の後ろ向き解析.MRSA疑いの医療ケア関連肺炎(HCAP)においては,十分な下気道検体による培養が得られない場合は鼻腔・咽頭でMRSAが陰性化すること,臨床肺感染スコア(CPIS)<6をもって経験的バンコマイシン投与を中止することが合理的である.

スタチン,アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)の肺炎関連予後
Mortensen EM, Nakashima B, Cornell J, et al. Population-based study of statins, angiotensin II receptor blockers, and angiotensin-converting enzyme inhibitors on pneumonia-related outcomes. Clin Infect Dis 2012; 55: 1466-73
PMID:22918991
ポイント:65歳以上の肺炎入院患者50119名のコホートデータを用いて,propensity score matchingを行い11498例(対照群も同数)を解析し,スタチン,ACEi,ARBの効果を検討した報告.スタチン内服歴は死亡リスクを26%低下,人工呼吸器装着リスクを32%有意に低下.ACEi内服歴は死亡率を12%有意に低下,ARBは死亡率を27%有意に低下させた.

脳卒中患者におけるアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi),アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と肺炎リスク
Liu CL, Shau WY, Wu CS, Lai MS. Angiotensin-converting enzyme inhibitor/angiotensin II receptor blockers and pneumonia risk among stroke patients. J Hypertens 2012; 30: 2223-9
PMID:22929610
ポイント:脳卒中既往がありその後肺炎をきたした患者13832例の解析.ACEiは肺炎リスクを30%有意に低下させ,その効果は用量と有意に相関した.ARBの肺炎リスク低下作用はみられなかった.台湾からの報告.

アンギオテンシン変換酵素阻害薬による脳卒中後肺炎の予防:メタ解析
Shinohara Y, Origasa H. Post-stroke pneumonia prevention by angiotensin-converting enzyme inhibitors: results of a meta-analysis of five studies in Asians. Adv Ther 2012; 29: 900-12
PMID:22983755
ポイント:6カ月以上追跡しており,100名以上の患者を登録しており,高血圧と脳卒中・TIA既往のある患者を対象とした5つの研究のメタ解析で,ACEiは肺炎リスクを49%有意に減じる.アジア人に絞ると58%低下,日本人に限定すると62%低下していた.

ICU発症肺炎における全身ステロイド投与と予後の関連性:前向き観察研究
Ranzani OT, Ferrer M, Esperatti M, et al. Association between systemic corticosteroids and outcomes of intensive care unit-acquired pneumonia. Crit Care Med 2012; 40: 2552-61
PMID:22732293
ポイント:ICUで肺炎を発症した360名において40%の患者がステロイド投与を受けていた.ステロイドの投与は28日生存率の低下,全身炎症反応の低下に関連しており,propensity scoreと死亡率予測で調整すると死亡リスクは2.503倍有意に増加していた.

MRSA院内肺炎におけるリネゾリド:RCT(ZEPHyR trial)
Wunderink RG, Niederman MS, Kollef MH, et al. Linezolid in methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: a randomized, controlled study. Clin Infect Dis 2012; 54: 621-9
PMID:22247123
ポイント:MRSA肺炎患者(ITT 448例,per-protocol 348例)を患者をLZD 600mg 12時間毎投与群とVCM 15mg/kg 12時間毎投与群に無作為割付し,7-14日間(菌血症確認された場合は21日間)連日投与して効果を比較した.トラフ・腎機能障害に基づいてVCMの投与量は調節している.臨床効果がリネゾリドが有意に良好という結果であるが,試験デザインには非常に問題点が多く,査読の練習にもオススメの文献.

MRSA院内肺炎におけるバンコマイシンとリネゾリド:ZEPHyR trialをふまえて
Alaniz C, Pogue JM. Vancomycin versus linezolid in the treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: implications of the ZEPHyR trial. Ann Pharmacother 2012; 46: 1432-5
PMID:22947593
ポイント:MRSA肺炎に対するリネゾリドとバンコマイシンの効果を比較したRCTであるZEPHyR trialに関する批判的吟味.ZEPHyR trialの結果をもってMRSA肺炎に対してリネゾリドをルーティンで使用することは支持しないとしている.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)におけるドリペネム(DRPM)7日間投与とイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)10日間投与を比較したRCT
Kollef MH, Chastre J, Clavel M, et al. A randomized trial of 7-day doripenem versus 10-day imipenem-cilastatin for ventilator-associated pneumonia. Crit Care 2012; 16: R218
PMID:23148736
ポイント:VAPに対するDRPM 1gを静注時間4時間として8時間毎に計7日間投与する群と,IPM/CSを1gを静注時間1時間として8時間毎に計10日間投与する対照群を比較した二重盲検RCT.28日死亡率はDRPM群21.5%,対照群(IPM/CS)14.8%であり,DRPM群で死亡率悪化傾向を認めたため試験中止勧告がだされた.この結果を受け,米国ではVAPのみならず肺炎においてDRPMを使用しないことを勧告しているが,投与日数が異なること,本邦と米国でantibiogramが大きく異なることなどがあり,VAP以外でも検討がなされていないことを考慮すると,このFDAの勧告をそのまま適応させることにはおおいに疑問が残る.

アジスロマイシン(AZM)はクオラムセンシング阻害作用により緑膿菌による人工呼吸器関連肺炎(VAP)を予防する:RCT
van Delden C, Köhler T, Brunner-Ferber F, et al. Azithromycin to prevent Pseudomonas aeruginosa ventilator-associated pneumonia by inhibition of quorum sensing: a randomized controlled trial. Intensive Care Med 2012; 38: 1118-25
PMID:22527075
ポイント:人工呼吸器患者92名でAZM群とプラセボ群を比較したRCT.AZM群で緑膿菌によるVAPは4.7%vs14.3%(p=0.156)で有意ではないが減少傾向がみられた.ハイリスク群のVAP発生率で見たサブ解析では有意に減少していた.ただし,この解析はper-protocol解析である.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)の微生物学的診断にグラム染色は有用か?:メタ解析
O'Horo JC, Thompson D, Safdar N. Is the gram stain useful in the microbiologic diagnosis of VAP? A meta-analysis. Clin Infect Dis 2012; 55: 551-61
PMID:22677711
ポイント:21報のメタ解析.VAPにおけるグラム染色の感度79%,特異度75%,陰性予測率91%,陽性予測率40%.グラム染色が陽性の場合は中等度の特異性しかないが,陰性所見の場合にはVAPは考えにくいと思われる.培養結果が出るまでの間抗菌薬を狭域のものに変更する場合,グラム染色の陽性結果は用いるべきではない.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)早期におけるプロカルシトニン
Zielińska-Borkowska U, Skirecki T, Złotorowicz M, Czarnocka B. Procalcitonin in early onset ventilator-associated pneumonia. J Hosp Infect 2012; 81: 92-7
PMID:22552164
ポイント:PCT濃度と抗菌薬療法の妥当性またはVAPの原因菌との間に関連は認められず,またPCTと不良な転帰との有意な相関はみられなかった.非生存者および敗血症性ショックではPCTは高かったが,PCTはこれらの転帰の強力な予測因子ではない.

口腔ケアにおける歯磨きの人工呼吸器関連肺炎の予防効果:システマティック・レビュー&メタ解析
Gu WJ, Gong YZ, Pan L, et al. Impact of oral care with versus without toothbrushing on the prevention of ventilator-associated pneumonia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 2012; 16: R190
PMID:23062250
ポイント:4報RCT,828名のメタ解析.人工呼吸患者で,歯磨きなしの口腔ケアに比べて歯磨きありの口腔ケアは,有意にVAP発生率を減少させず,他の重要な臨床転帰も有意差なし.

人工呼吸器を装着した重症患者の口腔ケアにおける歯磨きの有効性:システマティックレビュー&メタ解析
Alhazzani W, Smith O, Muscedere J, et al. Toothbrushing for Critically Ill Mechanically Ventilated Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials Evaluating Ventilator-Associated Pneumonia. Crit Care Med 2012 Dec.19
PMID:23263588
ポイント:人工呼吸器を装着した重症患者の口腔ケアにおける歯磨きの有効性を検証した6報のRCT,計1408例のメタ解析.4報で歯磨き群は有意差ないがVAPリスクが低い傾向(RR 0.77, 95%CI 0.50-1.21, p=0.26)であった.バイアスリスクが低い報告に限定すると歯磨き群のVAPリスクは有意に低下した(RR 0.26, 95%CI 0.10-0.67, p=0.006).クロルヘキシジン消毒薬の使用はVAP予防における歯磨きの効果を有意に低下させていた.電動歯磨きと手動歯磨きでは有意差なし.歯磨きはICU滞在期間,ICU死亡率,院内死亡率には影響を与えなかった.

小児における口腔ケアとグラム陰性桿菌の咽頭・気道定着
Kusahara DM, Friedlander LT, Peterlini MA, Pedreira ML. Oral care and oropharyngeal and tracheal colonization by Gram-negative pathogens in children. Nurs Crit Care 2012; 17: 115-22
PMID:22497915
ポイント:PICUに入室した小児74名を0.12%クロルヘキシジン口腔ケア群とプラセボ群で比較した二重盲検RCT.咽頭・気道でのグラム陰性菌定着率に有意差はみられなかった.

ICU入院患者における口腔洗浄においてクロルヘキシジンとハーブ洗口液を比較したRCT
Baradari AG, Khezri HD, Arabi S. Comparison of antibacterial effects of oral rinses chlorhexidine and herbal mouth wash in patients admitted to intensive care unit. Bratisl Lek Listy 2012; 113: 556
PMID:22979913
ポイント:ICU患者60名におけるハーブ洗口液と2%クロルヘキシジンの口腔ケア効果を比較した二重盲検RCT:両製剤とも黄ブ菌と肺炎球菌に対して有意に抗菌効果があったが,製剤間比較ではクロルヘキシジンの方がより有意に効果的であった.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)ガイドラインの実施:多施設共同前向き研究
Sinuff T, Muscedere J, Cook DJ, et al; Canadian Critical Care Trials Group. Implementation of Clinical Practice Guidelines for Ventilator-Associated Pneumonia: A Multicenter Prospective Study. Crit Care Med 2013; 41: 15-23
PMID:23222254
ポイント:VAPガイドラインの実行による成果:カナダ10施設,米国1施設の48時間以上人工呼吸器を装着している患者を4期に分けて評価(各330名).実行率上昇とともにVAP発生率は14.2%から8.8%まで有意に低下した.

ICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防改善を維持するプログラムの実践
Caserta RA, Marra AR, Durão MS, et al. A program for sustained improvement in preventing ventilator associated pneumonia in an intensive care setting. BMC infect dis 2012; 12: 234
PMID:23020101,Free Full Text
ポイント:ICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防改善を維持するプログラムの実践を行い,21894患者日数を解析.VAP予防バンドルの遵守率が90%以上をキープすることにより観察期間の間に数回発生率ゼロを達成しえた.
by DrMagicianEARL | 2013-02-22 12:30 | 肺炎

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