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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】多臓器不全を呈したARDSにおけるステロイド胸腔内投与

■ARDSにおいて,エビデンスによる推奨レベルが高い有効な治療薬はいまだに存在しない中,腹臥位療法がPROSEVA studyによってNNT 6という驚異的治療成績を残したことは記憶に新しいですが,今回,ECMOにも反応しない難治例においてPROSEVA studyを上回るNNT 1.69という治療法が報告されました.症例数の少ない後ろ向き観察研究のためエビデンスレベルは非常に低いですが,今後前向きRCTで研究されるべき治療法と思われます.

多臓器不全を呈したARDSにおけるステロイド胸腔内投与
Huang PM, Lin TH, Tsai PR, et al. Intrapleural Steroid Instillation for Multiple Organ Failure with Acute Respiratory Distress Syndrome. Shock. 2013 Oct 1. [Epub ahead of print]
PMID:24088995

Abstract
【目 的】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は多臓器障害(MODS)患者の死亡率を増加させる.本研究では,標準的な体外式膜型人工肺(ECMO)に反応しないARDSおよびMODSの患者に対する胸腔内ステロイド投与(IPSI)の有用性を評価した.

【方 法】
本研究では2005年から2009年にECMOを施行された患者467例のうち92例がARDSであり,これらの重症ARDSとMODSの患者92例のうち30例の成人患者を後ろ向きに解析した.治療に反応せず状態が悪化した30例のうち9例はIPSIを施行された.全患者は,高用量のカテコラミンを必要とする循環動態不安定性と人工呼吸での100%酸素投与とECMO使用の基準を満たしていた.

【結 果】
ARDS診断時の予後予測スコアは,標準治療群21例とIPSI群9例で差異はみられなかった.血液酸素化,1回換気量,胸部X線所見の変化,生存率が解析された.一次評価項目は退院までの生存とした.3日後の胸部X線所見はIPSI群で有意に改善し(p=0.008),5日後のPaO2/FiO2比もIPSI群で有意に増加した(p=0.028).さらに,28日死亡率(p=0.017),60日死亡率(p=0.003),生存率(78% vs 19%, p=0.003)は有意にIPSI群で改善していた.

【結 論】
IPSIは,MODSを合併した重症ARDS患者,特に標準治療に反応しない患者において,簡便に施行でき,高い有効性が認められた.
■計算してみるとオッズ比0.07,95%信頼区間0.01-0.45であり,死亡リスクを93%有意に減少させていることになる.ARDSに対するステロイド全身投与は2報のメタ解析結果で推奨にはなっているがエビデンスレベルが低いことや,死亡率が悪化した報告もあることから,推奨度は高くない.ステロイド胸腔内注入は関節リウマチや悪性腫瘍などにおいて臨床研究されているが,ARDSでは今回が初めてであり,今後のさらなる研究が待たれる.
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by DrMagicianEARL | 2013-10-04 19:23 | 敗血症性ARDS | Comments(0)

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