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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【未論文化研究先取り】米国集中治療医学会学術集会2014抄録集より(1)

 新年明けましておめでとう御座います.今年も宜しく御願い申し上げます.

 今年の最初の記事は,まだ論文化されていない研究内容として,2014年1月9日から13日まで米国サンフランシスコで開催される米国集中治療医学会の抄録集から(個人的に)興味深い内容のピックアップです.

The 43rd Critical Care Congress
January 9-13, 2014
Moscone Center South, San Francisco, California, USA
President: Carol L. Thompson, PhD, ACNP, CCRN, FCCM
Crit Care Med 2013; 41 Suppl
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集中治療室入室が必要ではない可能性がある患者の検出モデル
Sadaka F, Cytron M, Fowler K, et al. A model for identifying patients who may not need intensive care unit admission. SCCM Congress 2014 Oral 1
ICUに入室した全患者を後ろ向きに解析し,APACHEアウトカムデータベースを用いて,day1に1つ以上の生命維持のための積極的加療を受けた患者を検出し,低リスク群(初日に積極的加療を要さず,その後も積極的加療を要するリスクが10%以下の患者)2293例と積極的加療群(ICU入室中に1つ以上の積極的加療を受けた患者)を比較.APACHEⅣスコアは低リスク群34.3±13.4,積極的加療群58.7±25(p<0.0001).ICU在室日数は低リスク群1.6±1.7日,積極的加療群4.3±5.3日(p<0.0001).ICU死亡率は低リスク群0.7%,積極的加療群9.6%(OR 15.0; 95%CI 9.2-24.8; p<0.0001).院内死亡率は低リスク群1.8%,積極的加療群15.2%(OR 9.8; 95%CI 7.1-13.4; p<0.0001).
 米国でも集中治療コストは年間800億ドルに達しており,今後も増加することが見込まれている.限られた医療資源,ベッド,スタッフでICUを運営するためにもICUが必要でない患者を抽出していくシステムは必要で,本研究でもICU全入室患者の29.7%に及ぶ患者が低リスク群に該当している.
外傷性脳損傷におけるHMGB-1トランスロケーションと小膠細胞活性化はミノサイクリンによって減少する
Simon D, Aneja R, Lewis J, et al. HMGB1 translocation and microglial activation after pediatric TBI attenuated by minocycline. SCCM Congress 2014 Oral 10
重症外傷性脳損傷モデルラット17例での動物実験で,ミノサイクリンがHMGB-1トランスロケーションと小膠細胞活性化を阻害した.
 第2世代テトラサイクリン系抗菌薬のミノサイクリンには抗菌作用以外に神経保護作用が知られている.本研究でも指摘された小膠細胞阻害作用については実は早稲田大学の研究で男性の浮気防止効果としてプラセボ対照RCTで有用性が示されている(Watabe M, et al. Sci Rep 2013; 3: 1685).
早期リハビリテーション(mobilization)は脳神経外科ICU患者のアウトカムを改善するか?
Klein K, Mulkey M, Bena J, et al. Does early mobilization improve neuroscience ICU patient outcomes? SCCM Congress 2014 Oral 11
Neurosurgical ICUに入室した637例で,看護師始動の早期リハビリテーション開始プロトコル介入を検討した前向き前後比較研究.介入後は有意に歩行障害,人工呼吸器装着日数,血流感染,圧迫潰瘍,不安,抑うつが減少した.多変量解析では,早期リハビリテーショの方がより運動能があり,ICU在室期間や入院期間が短縮し,自宅退院が多く,不安が少なかった.死亡率,深部静脈血栓症,その他臨床アウトカムには有意差はみられなかった.
 今流行のnurse drivenの早期リハビリテーションプロトコルの有用性研究.血流感染症まで減少したのは意外.死亡率については長期予後でみると有意差がつくのかもしれない.
蘇生後心筋機能におけるβ遮断薬,β遮断+α1遮断薬の効果
Yang M, Hu X, Lu X, et al. The effects of β- and β-, α1- adrenergic blocking agents on post-resuscitation myocardial function. SCCM Congress 2014 Oral 18
心室細動蘇生後モデルラット24例での動物実験.β遮断薬(プロプラノロール),あるいはβ遮断薬とα1遮断薬(プラゾシン)の併用は蘇生後心筋機能障害を減少させ,心筋傷害バイオマーカー放出を減少させた.
 敗血症性ショックでのβ遮断薬については既にPhaseⅡまで有用性が示されているが,心肺蘇生後にもβ遮断薬の研究がでてきた.
ECMOを受ける重症心不全の成人患者において高体重は死亡率を増加させる
Ryan K, Lynch W, Wypij D, et al. Higher body weight increases mortality in adults with severe cardiac failure supported with ECMO. SCCM Congress 2014 Oral 25
米国の2005年から2011年までの多施設ECMOレジストリデータから,体重分布80%タイル以上の肥満群(男性100kg以上,女性90kg以上)と40-60%タイルの非肥満群(男性75-85kg,女性65-75kg)を比較した1611例後ろ向きコホート研究.調整前の死亡率は54% vs 51%(p=0.4)で有意差なし.サブ解析では,心原性(68% vs 54%, p=0.002)と心肺蘇生(84% vs 60%, p=0.03)においては肥満群の方が有意に死亡率が高かった.多変量解析では,肥満が死亡に関連した有意な独立危険因子であった(OR 1.4; 95%CI 1.1-1.7).
 近年の肥満パラドックスとは間逆の結果.ただ,日本人からしてみると40-60%タイル群でもかなり高体重な印象.
重症疾患における血清鉄レベルと血流感染症の関連性
Christopher K, Hajifathalian K, Chanchani S, et al. The association of serum iron levels and bloodstream infections in the critical ill. SCCM Congress 2014 Oral 42
2施設ICUの18歳以上の成人患者4703例の観察研究.血流感染症は18.4%に生じ,そのうち35.2%が敗血症と診断された.30日全死亡率は23.5%.入院前の血清鉄レベル>170μg/dLは60-169.9μg/dLの集団と比して血流感染症リスクが1.38倍(95%CI 1.00-1.92; p=0.050),調整後で1.41倍(95%CI 1.01-1.97; p=0.041),調整後敗血症リスクが1.39倍(95%CI 1.05-1.84; p=0.022),30日死亡リスクが1.42倍(95%CI 1.02-1.96; p=0.035)であった.
 鉄剤静注による感染症増悪は有名だが,入院前の血清鉄濃度で血流感染症発生率のみならず30日死亡率まで増加するとの結果.過剰な鉄剤投与は控えるべきであろう.
重症疾患患者の初期ビタミンD濃度と90日死亡リスク
Quraishi S, Bittner E, Blum L, et al. Vitamin D status at innitiation of care in critically ill patients and risk of 90-day mortality. SCCM Congress 2014 Oral 49
2施設の外科ICU患者100例を前向きに登録したビタミンDについての観察研究.平均血清total 25(OH)Dは17±8ng/mL,total 1,25(OH)2Dは32±19ng/mL.平均生体利用25(OH)Dは2.5±2.0ng/mL,1,25(OH)2Dは6.6±5.3ng/mL.90日再入院率は24%,90日死亡率は22%.Poisson回帰解析では,total 25(OH)Dが1ng/mL増加するごとに入院期間は2%短縮する(OR 0.98; 95%CI 0.97-0.98).共変量調整後,total 25(OH)Dが1ng/mL増加するごとに,90日再入院リスクは16%減少(OR 0.84; 95%CI 0.74-0.95),90日死亡リスクは16%減少(OR 0.84; 95%CI 0.73-0.95).外科ICU患者においてビタミンD補充が予後を改善するかについて無作為化比較試験が必要である.
 ビタミンDが低いと予後悪化に関連するとの結果.
重症疾患生存者におけるICU入院中のせん妄の長期予後
Wolters A, van Dijk D, Pasma W, et al. Long-term outcome of delirium during ICU admission in survivors of critical illness. SCCM Congress 2014 Oral 50
内科外科混合ICUに入室した1101例前向き観察コホート研究.412例(37%)がICU入室期間中にせん妄エピソードを有した.そのうち198例(18%)がICU入室から12ヶ月以内に死亡している.12ヶ月後の調査回答率は64%であった.ICU入室期間中の疾患重症度を含む共変量で調整すると,せん妄と12ヶ月死亡率に有意な関連性はみられなかった(HR 1.25; 95%CI 0.92-1.69).同様に調整するとせん妄は12ヶ月健康関連QOLとも関連性はみられなかった(β -0.04; 95%CI -0.10 to 0.01).しかし,中等度から重度の認知機能障害は共変量調整後でも有意に関連性がみられた(中等度認知機能障害OR 2.41; 95%CI 1.57-3.69,重度認知機能障害OR 3.10; 95%CI 1.10-8,74).
 PICS関連研究.せん妄が長期死亡率を悪化させる報告が近年複数でており,この研究では有意な増加はみられないものの,HR 1.25であり注意が必要.
敗血症性ショックにおける蘇生バンドル遵守:遅くとも行わないよりはよい
Sadaka F, Tannehill D, Trottier S, et al. Resuscitation bundle compliance in septic shock: better late than never. SCCM Congress 2014 Oral 57
2011年7月から2013年1月までの大学病院における敗血症性ショック395例を,6時間以内にSSCGに順じた蘇生プロトコルを施行した群(C6群)95例,6時間以上18時間以内に蘇生プロトコルを遵守した群(C18群)85例,18時間時点で蘇生プロトコルが達成されていない群(NC群)215例を比較した前向き観察コホート研究.3群間で年齢,体重,SOFAスコアに有意差なし.疾患重症度とベースラインで調整したCoxハザード解析では,NC群と比較した院内死亡リスクはC6群で55%減少(HR 0.45; 95%CI 0.24-0.85; p=0.01),C18群で88%減少(HR 0.12; 95%CI 0.04-0.39; p<0.001)した.
 たとえ6時間以内に達成できなくともプロトコルを行わないよりはマシ,という結果.
妊婦における重症敗血症―全国解析
Kumar G, Ahmad S, Dagar G, et al. Severe sepsis in pregnancy - A national analysis. SCCM Congress 2014 Oral 58
米国の2000-2009年までの18歳以上の妊婦の入院患者データを用いた解析.45107956例の妊婦データが得られ,そのうち19351例(0.04%)が重症敗血症であった.年間の重症敗血症発生率は2000年の21/100000から2009年の74/100000に増加していた.重症敗血症の原因の50%は出産時の感染であった.妊婦の重症敗血症の院内死亡率は6.8%であり,2000年から2009年まで変化していない.その一方で,妊婦でない女性の院内死亡率は30.3%であった.重症敗血症は妊婦の全死亡原因のうち23%であった.敗血症のない妊婦の入院期間が2.6日間であったのに対し,重症敗血症発症妊婦は12.9日間であった.
 妊婦の敗血症発生率と死亡率は低いが,死亡率はこの9年間で変わっておらず,死亡原因の1/4を重症敗血症が占めるという結果.
小児における重症敗血症:小児医療情報システムデータベースでみた傾向と予後
Ruth A, McCracken C, Hall M, et al. Severe sepsis in children: trands and outcomes from the pediatric health information system database. SCCM Congress 2014 Oral 59
2004-2012年の小児病院関連小児医療情報システムのデータベースからPICSに入室した新生児でない小児の重症敗血症の解析.全561937例の入室のうち,重症敗血症は7.0%(39372例)であった.併存疾患は76%にみられた.全死亡率は15.1%であった.小児重症敗血症患者のうち,心血管疾患の合併が最も多かった(28.3%,死亡率19.8%).多変量解析では,悪性新生物を有する小児重症敗血症が最も死亡リスクが高かった(OR 2.2; 95%CI 2.1-2.4; p<0.001).血流感染が最も多い感染巣であった(61.2%).PICU在室日数中央値は7日(IQR 3-19),入院日数中央値は18日(IQR 9-39).10-19歳と比較すると,1歳未満が最も死亡リスクが高かった(死亡率19.5%,OR 1.24; p<0.001).ブドウ球菌属は最も多い原因菌であり(10.8%),次いで連鎖球菌属が多かった(5.8%).真菌感染症は多くなかったが(0.6%, n=239),死亡率は16.7%と高かった.3つ以上の臓器障害は死亡のハイリスクであった(死亡率47%; OR 13.4; 95%CI 12.1-14.9; p<0.01).2004年から2012年で小児重症敗血症発生率は有意に増加し(5.1% vs 5.8%; p<0.001),コストも$211784から$232138に有意に増加した(p=0.002).しかし,死亡率は有意に低下していた(19.2% vs 13.2%; p<0.001).
 近年の小児敗血症のデータを知るための重要な研究である.おおむね成人データと同様の傾向が示されている.
敗血症診断日の低体温は低リンパ球血症遷延を予測する
Drewry A, Skrupsky L, Fuller B, et al. Hypothermia on the day of sepsis diagnosis predicts persistent lymophopenia. SCCM Congress 2014 Oral 63
敗血症または菌血症の成人患者445例の後ろ向きコホート研究.免疫疾患既往や免疫抑制薬使用歴のある患者は除外とした.24時間以内の体温で分類し,低体温は36.0℃未満,発熱は38.3℃と定義した.低リンパ球血症は培養後4日目でリンパ球数<1.2細胞/μL×1000と定義した.183例(41.1%)が正常体温,58例(13.0%)が低体温,204例(45.8%)が発熱であった.正常体温群と比較して,28日死亡率は低体温群で有意に高く(48.3% vs 30.6%; p=0.015),高体温群で有意に低かった(21.1% vs 30.6%; p=0.03).診断日の低体温は正常体温と比較して低リンパ球血症遷延と有意に関連していた(調整後OR 2.42; 95%CI 1.03-5.69; p=0.028).生存退院した患者においては,各群で二次感染発症率に有意差はないが,発熱群で低い傾向がみられた.
 敗血症において低体温が最も予後が悪いことはこれまで複数のコホート研究で示されており,今回低体温とリンパ球減少の関連性が示唆された.低体温による免疫力低下は心肺蘇生後の低体温療法の合併症としても知られている.
夜間騒音減少バンドルとアラーム設定調整によるICUの騒音と夜間のアラームの減少
Mattingly AM, Valcin EK. Reduction of ICU noise and alarms with a night-time noise reduction bundle and modified alarm profile. SCCM Congress 2014 Poster 111
内科ICUにおいて,夜間騒音減少バンドルとアラームの調整を組み合わせた介入による前後比較研究.バンドル構成要素は,時間アラームを小さくし,患者の個室を閉じ,輸液ポンプとモニターの音を小さくし,アラームを鳴らすようなワークフローを調整し,テレビやラジオを消し,スタッフの声を小さくすることである.新しいアラーム設定は,アラーム基準を最も厳しくすることで迷惑なアラーム音を減少させるよう調整した.24時間での音の強さは有意に減少し(中央値54.3 to 53.0 dB; p<0.0005),夜間の音の強さも有意に減少した(中央値52.8 to 51.3; p<0.0005).非不整脈によるレッドアラームが増加したにもかかわらず,全アラーム,全イエローアラーム,不整脈によるレッドアラームは有意に減少した.モニター音量,輸液ポンプ音量,時間音量は有意に改善したが,テレビはつけられることが多くなった.ラジオとドア閉めは変化がなかった.
 音による睡眠障害はICUせん妄の大きな要因であるにもかかわらず,多くの施設においては基準をはるかに上回る音量がなっており,睡眠障害が生じていることが報告されてきている.本研究ではなんとかしてICUの騒音を減少させようとする取り組みを提示し,ある程度の統計学的に有意な減少を示したが,臨床的に意味のある減少量かは判断しづらい.また,患者への有用性,安全性についての検討がなされていないところが問題点と思われる.
日本の集中治療におけるFCCSコースの評価
Atagi K, Fujitani S, Ishikawa J, et al. Evaluation the Fundamental Critical Care Support course in critical care education in Japan. SCCM Congress Poster 131
米国でICUをローテーションするレジデントのための訓練コースを日本の臨床に合わせたFCCSコース(2日間のoff-the-jobトレーニング,プレテスト・ポストテストによる評価)の評価.4年間で受講者は増加し,1804名に達した.70%近くの参加者は医師であり,それ以外で最も多かったのは看護師であった.創設した最初の年は臨床経験年数が5年を上回る医師は50%を超えていたが,徐々に減少した.その一方で,レジデントと看護師が増加した.半数近くの参加者が人工呼吸器について有益なセッションと考えていた.プレテストで既に平均点は高かったが(78.8±14.1点),ポストテストでは有意に改善していた(82.0±6.6点; p<0.01).集中治療管理のいかなる分野においても受講者の信頼度は5ポイントスケールでほぼ4ポイントであった.
 日本各地で開催されているFCCSの評価である.私自身も参加したいのだが,いろいろな日程と重なっていまだに1度も参加できずにいる(ただし呑み会だけは1度参加した(^^;)).このコースの特徴は集中治療医というより,むしろそれ以外の医療スタッフを対象にしていることである.集中治療医でなくとも是非一度は受講しておきたいコースである.
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by DrMagicianEARL | 2014-01-03 00:37 | 文献 | Comments(0)

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