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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】EGDTによる敗血症での過剰輸液は輸液関連医療介入の増加や院内死亡と関連する

敗血症治療のEGDTに伴う輸液過剰に関して,死亡リスクが上昇することを示した後ろ向き観察研究を紹介します.最近このようなレビュー等がでてきて,初期蘇生における大量輸液がダメと勘違いしている医療従事者もたまにおられるようですが,そういうわけではありません.初期急速輸液は必要で,これを怠れば虚血により不可逆な臓器不全に進展します.問題は,どの程度の量まで輸液負荷をかけるべきかがまだ分かっていないことで,結果的に過剰輸液に至ってしまう患者群が存在します.CVPはもはやあてにはならず,PiCCOやEV1000などでの評価や,Passive Leg Raising Testが主流になりつつありますが,検証はまだまだ不十分で,大規模RCTがなされていない状況です.
Early-Goal Directed Therapyで治療された重症敗血症および敗血症性ショックの患者における輸液過剰は輸液関連医療介入の必要性や院内死亡の増加と関連している
Kelm DJ, Perrin JT, Cartin-Ceba R, et al. Fluid Overload in Patients with Severe Sepsis and Septic Shock Treated with Early-Goal Directed Therapy is Associated with Increased Acute Need for Fluid-Related Medical Interventions and Hospital Death. Shock 2014 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 25247784

Abstract
【背 景】
早期目標指向型治療(EGDT)は早期の積極的輸液蘇生からなり,敗血症の生存率を改善させることが知られている.EGDTがどれくらい過剰輸液を引き起こしているか,EGDT後の輸液過剰が患者の予後に影響を与えるかについては知られていない.我々は,EGDTで治療を受けた敗血症患者が輸液過剰リスクに曝されており,輸液過剰が有害なアウトカムに関連していると仮説を立てた.

【方 法】
2008年1月から2009年12月まで1つの三次救急施設の内科ICUに重症敗血症または敗血症性ショックで入院した患者405例の後ろ向きコホートを行った.患者背景,毎日の体重,輸液状態,輸液過剰の臨床的または画像的根拠,医療介入(胸水穿刺,利尿剤使用,限外濾過)がまとめられ,単変量,多変量ロジスティック,線形回帰解析で関連性を検討した.

【結 果】
第1病日で,患者の67%に過剰輸液がみられ,48%が第3病日まで輸液過剰が遷延した.輸液過剰についての評価者間の合意は十分であった(κ=0.7).輸液過剰遷延の臨床的・画像的根拠を有するが体液バランスが正と記録されていない患者においては体重の増加傾向がみられた.ベースラインの疾患重症度で調整すると,輸液過剰は輸液関連医療介入(胸水穿刺と利尿剤)の使用増加や院内死亡(OR 1.92; 95%CI 1.16-3.22)と関連していた.

【結 論】
重症敗血症,敗血症性ショックの患者において,臨床的に輸液過剰遷延はよく見られ,医療介入や院内死亡と関連していた.

by DrMagicianEARL | 2014-09-26 16:53 | 敗血症

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