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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献×2】敗血症性ショックにおける循環作動薬の有害事象

■敗血症性ショックにおける循環作動薬(ノルアドレナリン,バソプレシン,ドパミンなど)の有害事象に関する文献2つを紹介します.「ノルアドレナリンorバソプレシンで臓器虚血/腸管虚血/四肢末梢疎血が起こって痛い目にあった」というのを学会・研究会等で耳にするのですが,なぜそんなことが起こるのかと個人的にずっと不思議に思っていました.当然ながら末梢血管をしめる作用ですから機序的には理解できます.しかし,私自身はこれまでの敗血症性ショック治療経験においてそのような有害事象は経験したことはなく,血管内容量が十分充填されてないのに循環作動薬を始めちゃったからそういう有害事象が起こっちゃったのでは?と推測しています.

■私はある程度急速輸液をした後でないとノルアドレナリンは開始しませんし,バソプレシンを開始するときもやや多めに輸液を入れてから行います(研修医には「最初は循環作動薬をすぐに入れたくなるけどちょっと我慢した方がいい」と教えています.).末梢まで血管内容量を充填してから血管をしめあげる方が効果的であるし虚血も生じにくいと考えています(実はこの考えは医師国家試験受験前にTECOMの三苫先生の講義で聴講して以来変わってません).輸液は少なすぎても多すぎてもダメで,循環作動薬にも早すぎても遅すぎてもダメという適切なタイミングがあるんじゃないかと思います.そもそもEGDTモデルも1つのゴールを達成したら次のゴールを目指す,というスタンスなので,初期蘇生輸液と循環作動薬を同時開始はまずいんじゃないかなと.1つ目の文献の結果はそれを暗に示唆しているものかと思います(結論ではそれがすべてではないと述べていますが).
敗血症性ショックの死亡率における輸液と循環作動薬の相互作用:多施設共同観察研究
Waechter J, Kumar A, Lapinsky SE, et al; Cooperative Antimicrobial Therapy of Septic Shock Database Research Group. Interaction between fluids and vasoactive agents on mortality in septic shock: a multicenter, observational study. Crit Care Med 2014; 42: 2158-68
PMID: 25072761

Abstract
【目 的】
輸液と循環作動薬はいずれも敗血症性ショックの治療に用いられるが,これらの投与においてどのように相互作用が生じるのか,どのような投与方法が適切かについてはあまり知られていない.我々はこれらの2つの治療の併用が院内死亡にどのように影響を与えるかについて検討した.

【方 法】
本研究は,院内死亡と,循環作動薬導入および発症から0-1時間後,1-6時間後,6-24時間後の輸液量による分類について,相互作用を含め,潜在的共変量で調整した多変量ロジスティック回帰を用いた後ろ向き観察研究である.研究の場は3か国24病院のICUとした.患者は1989年から2007年に入院した,敗血症性ショック発症後から24時間以上生存した患者2849例である.

【結 果】
輸液と循環作動薬のには死亡と関連した強い相互作用がみられた(p<0.0001).死亡率は発症後1-6時間に循環作動薬を開始され,かつ輸液量がショック発症から最初の1時間において1L以上,1-6時間後で2.4L,6-24時間で1.6-3.5Lであると最も低かった.循環作動薬を発症から1-6時間後に開始することは最も低い死亡率と関連していた.

【結 論】
敗血症性ショックの蘇生の最初の1時間は積極的な輸液投与を行い,循環作動薬はその後に積極的輸液を継続しながら行うべきである.循環作動薬を最初の1時間で開始することは有害な可能性があり,その関連性のすべてが循環作動薬の早期導入による体液不足によるものであるわけではない.
敗血症性ショックにおけるバソプレシンとノルアドレナリンの注射による重篤な有害事象
Anantasit N, Boyd JH, Walley KR, et al. Serious adverse events associated with vasopressin and norepinephrine infusion in septic shock. Crit Care Med 2014; 42: 1812-20
PMID:24919159

Abstract
【目 的】
バソプレシンとノルアドレナリンの使用に関連した重篤な有害事象の頻度,危険因子,死亡率に関しては明らかではない.本研究の目的は,敗血症性ショック患者における重篤な有害事象の頻度,危険因子(遺伝子多型の同定を含む),予後について検討することである.

【方 法】
本研究は,大学病院ICUでの多施設データと単施設データを用いた後ろ向きコホート研究である.患者は,Vasopressin and Septic Shock Trial(VASST)データの敗血症性ショック597例とSt.Paul病院の533例である.介入は敗血症性ショックに対するバソプレシンとノルアドレナリンである.主要評価項目は重篤な有害事象有無での90日死亡率とした.副次評価項目は循環作動薬の遺伝子多型や血清バソプレシン濃度と重篤な有害事象との関連性とした.血清バソプレシン濃度はベースライン,循環作動薬投与開始から6時間後,24時間後,72時間後,7日後とした.敗血症性ショック患者は268の循環作動薬経路の一塩基多型に分類された.

【結 果】
重篤な有害事象はVASSTコホート,St. Paul病院コホートでそれぞれ10.5%,9.7%であった.重篤な有害事象が生じた患者ではそれがない患者よりも死亡率が高かった(p<0.01;年齢,乳酸値,APACHE IIスコア,第1病日でのノルアドレナリンの最大量で調整後で,VASSTコホートではHR 2.97; 95%CI 2.20-4.00, p<0.001,St. Paul病院コホートでHR 1.89; 95%CI 1.26-2.85, p=0.002).重篤な有害事象有無で血清バソプレシン濃度曲線下面積に差はなかった(p=0.1).AA遺伝子型rs28418396一塩基遺伝子多型(アルギニン・バソプレシン受容体1b遺伝子近傍)はいずれのコホートにおいても重篤な有害事象に有意に関連していた(それぞれp=0.001, p=0.04).

【結 果】
敗血症性ショック患者におけるバソプレシンとノルアドレナリンが関連した重篤な有害事象は死亡率と有病率増加に関連していた.アルギニン・バソプレシン受容体1b遺伝子近傍のAA遺伝子型rs28418396一塩基遺伝子多型は重篤な有害事象と関連していた.この関連性の機序については検討を要する.

※本文から:多かった有害事象は腸間膜虚血,心筋虚血,頻脈が上位にあがっていました

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by DrMagicianEARL | 2014-09-30 19:19 | 敗血症 | Comments(0)

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