【文献】敗血症でのβラクタマーゼ阻害剤配合βラクタム系vsカルバペネム,RCTのメタ解析
■敗血症におけるβラクタマーゼ阻害剤配合βラクタム系抗菌薬(BL/BLIs)とカルバペネム系抗菌薬を直接比較したRCTのメタ解析がJACにでたので紹介します.ESBL産生菌を含んだ患者集団ですが,死亡率に差はなく,下痢はBL/BLIsで多いけどCDIはカルバペネムで多いという結果.抗菌薬適正使用も上乗せすればBL/BLIsに軍配が上がりそうです.本邦ではTAZ/PIPC,ということになるでしょうか(SBT/CPZやSBT/ABPCはカバー不十分となる可能性もありあまり敗血症では用いられません).とはいえ,TAZ/PIPCがペニシリン系だからという理由でカルバペネム系より推奨されるとする考えには私は賛同していませんが(カルバペネムに匹敵する広域スペクトラムですので).
敗血症治療におけるβラクタマーゼ阻害剤配合βラクタム系抗菌薬vsカルバペネム系抗菌薬:無作為化比較試験のシステマティックレビューとメタ解析
Shiber S, Yahav D, Avni T, et al. β-Lactam/β-lactamase inhibitors versus carbapenems for the treatment of sepsis: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Antimicrob Chemother 2014 Sep 25 [Epub ahead of print]
PMID:25261419
Abstract
【背 景】
βラクタマーゼ阻害剤配合βラクタム系抗菌薬(BL/BLIs)とカルバペネム系抗菌薬の効果を比較したデータは乏しい.
【方 法】
本研究は敗血症治療において,あらゆるBL/BLIsとあらゆるカルバペネムを比較した無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューとメタ解析である.主要評価項目は全死亡率とした.文献検索は,言語,出版状態や日の制限なしで行った.2人のレビュアーが独立して登録基準を適応し,データを抽出した.バイアスリスクの評価はドメインに基づいたアプローチを用いて行った.サブグループ解析は異質性の検討を用いて,ESBL産生菌疑いを検出した患者集団で行った.
【結 果】
31報のRCTを登録した.BL/BLIsとカルバペネムでは,死亡率に有意差はなく,異質性はみられなかった(RR 0.98, 95%CI 0.79-1.20).臨床的または細菌学的治療失敗や重複感染に差はなかった.この結果はバイアスリスクの影響を受けていなかった.院内感染,グラム陰性菌感染,発熱性好中球減少の患者のサブグループにおいても差は見られなかった.投与中断を必要とした有害事象は下痢発生率の増加によりBL/BLIsで多かった.しかし,Clostridium difficile関連下痢症はカルバペネムの方が頻度が高く(RR 0.29, 95%CI 0.10-0.87),痙攣はイミペネムでより多かった(RR 0.21, 95%CI 0.05-0.93).
【結 論】
起因菌であるESBL産生菌の(未知であるが)特定の発生率を有する患者集団を含むRCTにおいて,BL/BLIsとカルバペネムに効果の差はみられなかった.