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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】敗血症性ショックに対するEGDTは死亡率を改善せず.ARISE study

■欧州集中治療医学会がドイツで開催されていますが,それにあわせてNEJM誌やJAMA誌に集中治療系のRCTが多数online publishされており,随時当ブログでも紹介していきます.まず最初はARISE studyから.2014年3月の米国ProCESS studyから半年たって再度EGDTが死亡率を改善せずという結果がANZICSからでました.ただし,外的妥当性等,結果は慎重にとらえるべきと思われます.
早期の敗血症性ショックの患者における目標指向型蘇生(ARISE study)
The ARISE Investigators and the ANZICS Clinical Trials Group. Goal-Directed Resuscitation for Patients with Early Septic Shock. N Engl J Med. 2014 Oct 1. [Epub ahead of print]
PMID:25272316

Abstrct
【背 景】
早期目標指向型治療(EGDT)は救急で敗血症性ショックを呈した患者において死亡率を減少させる重要な戦略としてSurviving Sepsis Campaign Guidelinesで支持されている.しかし,その有効性は不明確である.

【方 法】
51施設(ほとんどはオーストラリアまたはニュージランド)で行われた本研究において,我々は救急で早期の敗血症性ショックを呈した患者をEGDTまたは通常治療のいずれかに無作為に割り付けた.主要評価項目は無作為化から90日後の全死亡率とした.

【結 果】
登録された患者1600例のうち,796例はEGDT群に,804例は通常治療群に割り付けられた.主要評価データは99%超過の患者で利用可能であった.EHDT群の患者は通常治療群に比して,無作為化から最初の6時間での平均輸液量(±標準偏差)が多く(1964±1415mL vs 1713±1401mL),循環作動薬投与が多く(66.6% vs 57.8%),赤血球輸血が多く(13.6% vs 7.0%),ドブタミン投与も多かった(15.4% vs 2.6%)(すべての比較においてp<0.001).無作為化後90日の時点で,EGDT群は147例,通常治療群は150例の死亡があり,死亡率はそれぞれ18.6%,18.8%であった(絶対リスク差は-0.3%; 95%CI -4.1 to 3.6; p=0.90).生存期間,院内死亡,臓器支持療法期間,入院期間に差はなかった.

【結 論】
救急で早期の敗血症性ショックを呈した重症患者において,EGDTは90日時点での全死亡率を減少させなかった.

1.本結果の解釈における注意

■本ブログではProCESS study[1]発表後,繰り返しEGDTを否定すべきではないと主張しており,今回のARISE studyがでてもその姿勢は変わらない.その理由は外的妥当性である.
EGDT,ProCESS studyについては当ブログのこちらの記事も参照
→EGDT:http://drmagician.exblog.jp/16904162/
→ProCESS study:http://drmagician.exblog.jp/21799999/

■ProCESSもARISEも以前までの敗血症性ショックのRCTに比して非常に低い死亡率となっており,対照群である通常治療の死亡率の低さは循環管理に長けた救急集中治療医のスキルによって担保されている.この対照群と同等以上の医療介入が可能ならばEGDTは行わずともよいが,集中治療医がいない施設ではそうはいかないと思われる(そういう施設ではPiCCOやEV1000などの便利なモニターを持っていることはむしろ稀であり,乳酸値すら計測できない施設も多い).いずれの研究もEGDTが死亡率を改善させなかっただけで悪化させたわけではなく,逆に考えればEGDTプロトコルを用いることで救急集中治療医管理による通常治療と同等の治療成績が出せるととらえることもできる.EGDTの採用をやめるか継続するかは施設の治療レベル,主治医やスタッフのスキルに合わせて慎重に判断すべきである.

■EBMの世界ではEGDTは推奨されない,という方向に向かうかもしれないが,かといってプロトコルなしで敗血症性ショックの循環管理を行うことは救急集中治療医がいない施設においては非常に酷であり,現実的ではない推奨である.現時点で代替案なしにSSCGや日本版重症敗血症診療ガイドラインが今後の改訂でEGDTを非推奨とする方向に向かうのであれば,非常に好ましくないと思われる.

■また,今回のARISE studyは有害事象についてはEGDT群7.1% vs 通常治療群5.3%で有意差なし(p=0.15)であり,予想通り中心静脈カテーテル挿入に伴う合併症は2.0% vs 0.1%(p=0.00013),肺水腫は1.8% vs 0.8%(p=0.076)でEGDT群の方が多く,これは納得がいく結果ではあるが,不整脈に関しては4.3% vs 5.1%(p=0.478)と有意差はないものの循環作動薬投与が少ない通常治療群の方が多い傾向がみられた.また,重篤な有害事象は実は0.5% vs 1.9%(p=0.019)で通常治療群の方が有意に多かった(データは本文には書いておらず,Supplementary Appendix見ないと分からない).この差は臨床的には有意ではないかもしれないが注意が必要かもしれない.

2.ProCESSとARISEの比較


■ProCESS studyはEGDT群と通常治療群以外に標準プロトコル群というアームがあったが,ARISEにはないため,標準プロトコル群を除いて比較した.
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■見ても分かる通り,ARISE studyではProCESS studyよりさらに重症度が低くなっており,それを反映してか死亡率も低く輸液量も少なくなっている.また,いずれの研究においても通常治療群の方が輸液量は少ない.近年,敗血症性ショック治療に伴う過剰輸液が予後を悪化させる可能性が指摘されており[2,3],Kelmら[3]は,第1病日で,患者の67%に過剰輸液がみられ,48%が第3病日まで輸液過剰が遷延したと報告している.通常治療群の輸液量は,EGDTによって生じる過剰輸液リスクを減じる可能性がある.

■ただし,そもそも「通常治療(usual-care)」が具体的にどのような管理であったのかはProCESSと同様,今回も分からなかった.おそらく心臓超音波検査,SVV等を用いたモニタリング,Passive Leg Raising testなどであろうが,特に治療介入方法に統一がなされていない患者集団である.EGDTに代わる治療プロトコルの検証が望まれる.

3.EGDTのメタ解析

■River's RCT[4],ProCESS,ARISEの3試験のメタ解析を行った結果は以下の通りである(統計解析はRを用いています).
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■また,River's RCTを除き,ProCESSとARISEのみでのメタ解析は以下の通りである.
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[1] ProCESS Investigators, Yealy DM, Kellum JA, Huang DT, et al. A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med 2014; 370: 1683-93
[2] Boyd JH, Forbes J, Nakada TA, et al. Fluid resuscitation in septic shock: a positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality. Crit Care Med 2011; 39: 259-65
[3] Kelm DJ, Perrin JT, Cartin-Ceba R, et al. Fluid Overload in Patients with Severe Sepsis and Septic Shock Treated with Early-Goal Directed Therapy is Associated with Increased Acute Need for Fluid-Related Medical Interventions and Hospital Death. Shock 2014 Sep 22 [Epub ahead of print]
[4] Rivers E, Nguyen B, Havstad S, et al; Early Goal-Directed Therapy Collaborative Group. Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 2001; 345: 1368-77
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by DrMagicianEARL | 2014-10-03 00:00 | 敗血症 | Comments(0)

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