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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献+α】重症患者の初期投与カロリー量は目標の1/3~2/3がよい?メタ解析

■重症患者の栄養管理では,経腸栄養にせよ経静脈栄養にせよpermissive underfeeding(安静時エネルギー消費量よりも少ないエネルギー摂取の許容)の方がアウトカムがいい可能性があるとして現在では主流となっているが,初期の至適エネルギー投与量をどの程度にするかについてはまだ不明確な状況にあります.今回,ベースに栄養失調のない重症患者でどの程度の初期エネルギー摂取量が良好なアウトカムを示すのかについてのメタ解析が報告されたので紹介します.本結果からは,目標エネルギー量の33.3-66.6%程度で開始するのがいいようです.

■なお,メタ解析に登録された8報のうち7報が80-200例程度であるのに対して,Riceらの報告が1000例あるため,そちらに引っ張られている部分はあるかもしれません.
重症患者における経腸栄養での初期カロリー摂取量の効果:無作為化比較試験のメタ解析
Tian F, Wang X, Gao X, et al. Effect of initial calorie intake via enteral nutrition in critical illness: a meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 2015; 19:180

Abstract
【背 景】
重症患者において,臨床アウトカムを改善させるため,経腸栄養の使用が支持されているが,至適なカロリーおよび蛋白の摂取量については不明確である.

【目 的】
本メタ解析の目的は,重症成人患者において変化するカロリー量や蛋白量の投与量に関連した臨床アウトカムに関する無作為化比較試験(RCT)の定量的解析を行うことである.

【方 法】
我々は重症患者における初期のカロリーや蛋白の摂取量の違いによる効果を比較したRCTを検出するため,Medline,EMBASE,Cochrane databaseから検索した.危険率(RR)および95%信頼区間(CI)による加重平均差はランダム効果モデルを用いて算出した.主要評価項目は死亡率,副次評価項目は感染症,肺炎,消化管不耐性,入院期間およびICU在室期間,人工呼吸器装着日数とした.

【結 果】
1895例を登録した計8報のRCTにおいて,低エネルギー群と高エネルギー群とで死亡率死亡率(RR 0.90; 95%CI 0.71-1.15; p=0.40), 感染症(RR 1.09; 95%CI 0.92-1.29; p=0.32),消化管不耐性リスク(RR 0.84; 95%CI 0.59-1.19; p=0.33)に統計学的有意差はみられなかった.サブグループ解析では,目標エネルギー量の33.3-66.6%である低エネルギー群サブグループでは高エネルギー群よりも死亡率が低かった(RR 0.68; 95%CI 0.51-0.92; p=0.01).低エネルギー群でカロリー摂取量が目標エネルギーの66.6%超過である場合は死亡率および消化管不耐性の改善は見られなかった.高蛋白と高エネルギー摂取の併用は感染症を減少させるが(RR 1.25; 95%CI 1.04-1.52; p=0.02),両群で毎日の蛋白摂取量が同等の場合は,高エネルギー摂取では感染症を減少させなかった.他の副次評価項目に統計学的有意差はみられなかった.

【結 論】
本メタ解析では,栄養失調のない重症患者において,高エネルギー摂取は臨床アウトカムを改善させず,合併症を増加させる可能性がある.高エネルギーと比較して,初期の中等量の栄養摂取(目標エネルギーの33.3-66.6%)は死亡率を減少させる可能性があり,高エネルギー(≧0.85g/kg/day)と高蛋白摂取の併用は感染症発生率を減少させる可能性がある.しかし,エネルギーとタンパク質の摂取量のアウトカムへの寄与は不明である.
■高度侵襲にさらされる重症患者では内因性エネルギーが発生する.安静時エネルギー消費量(REE)を正確に算出する方法は現時点では存在せず,内因性エネルギーも算出することは不可能なため,至適カロリー投与量(外因性エネルギー)を算出することはできない.REEよりカロリー量が多いoverfeedingはglucose toxicity(ミトコンドリア内部の過度の酸化ストレス,炎症反応の増幅),nutritional stress(REE増加,CO2産生増加,骨格筋タンパク分解増加,水分貯留・浮腫増悪)といった有害性があり,現在は推奨されておらず,REEより少ないカロリー量を許容するpermissive underfeedingが現在ではゴールデンスタンダードとなっている(BMI<18等のベースの栄養状態不良の患者は除く).

■2011年に報告された7施設共同の4640例RCTであるEPaNIC trial[1]では,早期経腸栄養に早期経静脈栄養を併用しない方が,平均ICU滞在日数,感染症発生率,腎代替療法施行日数,2日以上の人工呼吸器使用率,医療コストといったアウトカムが優れており,「ENが可能であれば,早期PNによる補助で投与エネルギーゴールを目指す管理は一利もなく推奨されない」と結論づけ,ESPENの推奨を否定,ASPEN/SCCMの推奨を支持するものであった.

■このEPaNIC trialのpost hoc解析では,経腸栄養か経静脈栄養かといった投与経路は問題ではなくoverfeedingが問題であるととらえられている.EPaNIC trialのvan den Burgheは2013年のCritical Care誌でのレビュー[2]において,このoverfeedingがautophagyの抑制を引き起こし,免疫低下を起こすことに言及しており,これが感染症増加の原因のひとつと考えているようである.さらに,重症度は早期静脈栄養の有害性とは関連がなく,投与カロリーは少ないほど予後が良く,糖よりもアミノ酸/蛋白の投与量の方が予後と関連したとしている[3]

■これを支持するかのように,2014年に経腸栄養と経静脈栄養を比較した2400例の大規模RCTであるCALORIES trial[4]が報告された.この報告では,overfeedingを回避し,NICE-SUGAR study[5]に基づいた中等度の血糖管理を行うことで死亡率は同等であった.

■重症患者における投与カロリー量,permissive underfeedingについては以下にまとめているので参照されたい.
敗血症と栄養管理(2) 投与カロリー,静脈栄養併用
http://drmagician.exblog.jp/21625275/


[1] Casaer MP, Mesotten D, Hermans G, et al. Early versus late parenteral nutrition in critically ill adults. N Engl J Med 2011; 365: 506-17
[2] Schetz M, Casaer MP, Van den Berghe G. Does artificial nutrition improve outcome of critical illness? Crit Care 2013; 17: 302
[3] Casaer MP, Wilmer A, Hermans G, et al. Role of disease and macronutrient dose in the randomized controlled EPaNIC trial: a post hoc analysis. Am J Respir Crit Care Med 2013; 187: 247-55
[4] Harvey SE, Parrott F, Harrison DA, et al; the CALORIES Trial Investigators. Trial of the Route of Early Nutritional Support in Critically Ill Adults. N Engl J Med 2014; 371: 1673-84
[5] NICE-SUGAR Study Investigators, Finfer S, Chittock DR, Su SY, et al. Intensive versus conventional glucose control in critically ill patients. N Engl J Med 2009;360:1283-97
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by DrMagicianEARL | 2015-04-22 18:07 | 文献 | Comments(0)

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