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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】リンパ球数で見た免疫抑制状態とICUせん妄の関連性は?

■ガイドラインで一緒にお仕事&ご指導をさせていただいている井上茂亮先生の論文がpublishされたので紹介します.研究内容は,BRAIN-ICU studyのデータを用いて,どの施設でも簡便に計測できるベッドサイドマーカーであるリンパ球数でせん妄発生を予測できるか?というものです.Authorの中にはICUせん妄の権威でもあるEly先生の名前があります.Ely先生といえば,最近スタチンでICUせん妄を抑制しうるとする観察研究を報告されておられます.確かに,炎症とせん妄の関連性はかなりコモンになってきていますが,では免疫抑制ならどうか?と見たこの研究,もしポジティブであれば簡単に計測できるリンパ球数ですので便利ではあったのですが,結果はネガティブでそう簡単にはせん妄は予測できないようです.
ICU患者のせん妄におけるリンパ球減少症の影響
Inoue S, Vasilevskis EE, Pandharipande PP, et al. The impact of lymphopenia on delirium in ICU patients. PLoS One. 2015 May 20;10(5):e0126216
PMID:25992641

Abstract
【背 景】
免疫抑制状態は重症疾患の期間において,患者を急性脳傷害に進展させやすくする可能性がある.リンパ球減少症は,免疫抑制状態の非特異的な一般的に使用されているベッドサイドマーカーである.

【方 法】
我々は,大学病院三次救急で行われたthe Bringing to Light the Risk Factors and Incidence of Neuropsychological Dysfunction in ICU Survivors(BRAIN-ICU study)に登録された518例の患者において,リンパ球減少症が急性脳傷害(せん妄または昏睡)進展を予測するかについて検討した.比例オッズをロジスティック回帰およびCox比例ハザード生存解析を利用し,登録前のリンパ球数とせん妄/昏睡のない日数(DCFDs)を含む連続的な認知アウトカムの関連性,30日死亡について解析した.

【結 果】
リンパ球数とDCFDsに統計学的に有意な関連性はみられなかった(p=0.17).加えて,リンパ球数と死亡についても統計学的有意差はみられなかった(p=0.71).癌や糖尿病の既往を有さない259例の患者においても,リンパ球数とDCFDsに統計学的に有意な関連性はみられなかった(p-0.07).

【結 論】
内科/外科ICU患者において,免疫抑制の一般的に使用されているベッドサイドマーカーであるリンパ球数は急性脳傷害(せん妄/昏睡)や30日死亡におけるリスクのマーカーを示さなかった.

by DrMagicianEARL | 2015-05-28 00:00 | 文献

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