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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】脳卒中に対する超早期からの積極的リハビリテーションは神経学的予後を悪化させる(AVERT trial)

■昨年,COPD急性増悪患者へのICUにおける早期からの先進的リハビリテーションが死亡率を悪化させるという衝撃的なRCTが報告されました.あれからちょうど1年,今度はLancet誌に,脳卒中患者への超早期からの積極的リハビリテーションが神経学的予後を悪化させるという報告が今年4月にonline publishされていました(全然気が付かず・・・).

■これまで急性期での早期リハビリテーションを検討したRCTは様々なアウトカムを改善させるものの,死亡率を改善させたという報告はありませんでした.そこにきて,早期からより強度を強めたリハビリテーションを行えば死亡率が改善するのではないか?という考えの下RCTが組まれたわけですが,COPD急性増悪も脳卒中もむしろよくないという結果.早期リハビリテーションについては根本から考え直す必要があるかもしれません.過ぎたるは猶及ばざるが如しです.

■薬剤等と比較してリハビリテーションや栄養は「おそらく患者にとっていいものだろう」というバイアスが医療従事者にはあって,私もそういうバイアスがありました(以下の論文の研究者もそういうバイアスがあるせいなのか分かりませんが結論は控えめになっています).でもそれはRCTで答えが出ていなかった推測だったわけで,いざRCTをやると真逆の結果になる,という教訓だったのかもしれません.抗菌薬のde-escalationをRCTで検討すると(研究デザインが悪かったですが)むしろアウトカムが悪化したのもそういう面があるのかもしれません.
脳卒中発症から24時間以内の超早期のリハビリテーションの有効性と安全性(AVERT trial):無作為化比較試験
AVERT Trial Collaboration group. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial. Lancet 2015 Apr 16 [Epub ahead of print]
PMID:25892679

Abstract
【背 景】
脳卒中後の早期リハビリテーションは脳卒中ユニットでのケアの効果に寄与すると考えられている.しかし,その介入は定義が不十分であり,強固なエビデンスで支持されているわけではない.本研究の目的は,脳卒中後の標準的ケアと頻回で高強度の超早期リハビリーションを比較することである.

【方 法】
5ヶ国の56の急性期脳卒中ユニットにおいて行われた並行群間単盲検無作為化比較試験を行った.医学基準に該当した,虚血性または出血性の脳卒中で,初回または再発の患者(年齢≧18歳)を,Web-basedのコンピューターによるブロック無作為化手法(ブロックサイズは6例)により,標準的脳卒中ケアのみを受ける群と標準的ケアに超早期リハビリテーションを加える群に1:1に無作為に割り付けた.遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)による治療も許可した.無作為化は試験部位と脳卒中重症度によって層別化された.患者,アウトカム評価者,試験の研究者,データ管理者は治療割り付けをマスクされた.主要評価項目は,修正Rankin Scaleスコア0-2で定義された,脳卒中後3か月の良好なアウトカムとした.解析はintention-to-treat(ITT)で行った.試験は豪州・ニュージーランド臨床試験レジストリーにACTRN12606000185561で登録した.
※ICU入室例や緊急手術例などの重症例は除外されています

【結 果】
2006年7月18日から2014年10月16日までに,2104例の患者が,超早期リハビリテーション群(n=1054)と標準ケア群(n=1050)に無作為に割り付けられ,2083例(99%)の患者が3か月間の追跡評価に登録された.標準ケア群で24時間以内にリハビリテーションを開始されたのが623例(59%)であったのに対して,超早期リハビリテーション群では965例(92%)が開始されていた.超早期リハビリテーション群の患者は標準ケア群よりも良好なアウトカムが得られた患者が少なかった(n=480 [46%] vs n=525 [50%]; adjusted OR 0.73, 95%CI 0.59-0.90; p=0.004).標準ケア群の患者の死亡は72例(7%)であったのに対して,超早期リハビリテーション群は88例(8%)であった(OR 1.34, 95%CI 0.93-1.93, p=0.113).超早期リハビリテーション群の201例(19%)と標準ケア群の208例(20%)が非致死的な重篤な有害事象を発生し,超早期リハビリテーション群で不動関連合併症を減少させていなかった.

【結 論】
本試験のほとんどの患者は24時間以内に初回のリハビリテーションを受けていた.強化された超早期のリハビリテーションプロトコルは3ヶ月時点における良好なアウトカムのオッズの減少に関連していた.脳卒中後の早期リハビリテーションは世界中の多くの臨床ガイドラインで推奨されており,我々の知見は精錬されたガイドラインによる実臨床に影響を与えるものである.しかし,臨床的推奨は,さらなる用量反応関連性の解析によってだされるべきである.

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by DrMagicianEARL | 2015-07-10 11:11 | 文献 | Comments(0)

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