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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献+レビュー】重症敗血症へのβラクタム系抗菌薬持続投与は予後を改善せず(RCT)

■PK/PD理論から時間依存性抗菌薬では間歇投与よりも長時間or持続投与の方がいいだろう,ということで多数の研究が行われていてRCTも複数あります.今回重症敗血症において持続投与が有効かどうかを検討したANZICSのRCTが報告されたので紹介します.重症敗血症を対象としたものでは最大規模です.また,現在別の多施設共同RCT(BLISS study)を行っています.
重症敗血症におけるβラクタムの持続的投与vs間歇的投与の多施設共同無作為化試験(BLINGⅡstudy)
Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. A Multicenter Randomized Trial of Continuous versus Intermittent β-Lactam Infusion in Severe Sepsis. Am J Respir Crit Care Med. 2015 Jul 22. [Epub ahead of print]
PMID:26200166

Abstract
【背 景】
βラクタム系抗菌薬の持続静注は間歇的投与に比して,時間依存性抗菌活性により予後を改善する可能性がある.

【目 的】
重症敗血症患者において持続投与と間歇投与の効果を検討する.

【方 法】
25のICUにおいて無作為化比較試験を行った.ピペラシリン-タゾバクタム,チカルシリン-クラブラン酸,メロペネムの投与を開始された患者を,治療コースが終わるかICU退室まで,持続投与か30分間の間歇投与かを無作為に割り付けられた.主要評価項目は28日時点での生存ICU非入室日数とした.副次評価項目は,90日生存,抗菌薬中断後14日間の臨床的治癒,14日時点での臓器不全のない生存日数,菌血症の期間とした.

【結 果】
年齢中央値64歳で,APACHEⅡスコア中央値20の患者432例を登録した.ICU非入室日数は,持続投与群18日間(IQR 2-24),間歇投与群20日間(IQR 3-24)で有意差は見られなかった.90日生存は,74.3%(156/210)vs 72.5%(158/218); HR 0.91(95%CI 0.63-1.31, p=0.61)で有意差はみられなかった.臨床的治癒は52.4%(111/212)vs 49.5%(109/220); OR 1.12 (95%CI 0.77-1.63, p=0.56)であった.臓器不全のない日数(6日間, p=0.24),菌血症の日数に有意差は見られなかった(0日間,p=0.24).

【結 論】
重症敗血症を伴う重症患者において,βラクタム系抗菌薬の持続投与,間歇投与において予後に差はみられなかった.
■時間依存性の抗菌薬はPK/PD理論から,時間依存性抗菌薬の投与時間を延ばし,TAM(Time Above MIC)を増やせば治療効果が増すのではないか,という仮説が生まれた.ここからさらに派生して,バッグに1日分の抗菌薬を詰めて,24時間持続点滴をする方がPK/PD的には理にかなっている,という発想も生まれた.抗菌薬の持続投与は,間欠的な投与に比べて少ない投与量で同等の血中濃度とTAMを獲得するため,理論上では持続点滴の方が間欠的投与に比べると有利である.

■ただし,抗菌薬のクリアランスには個人差があり,必ずしも個々の患者で期待されるような薬物動態を示すという保証はない.また,24時間容器に入れた抗菌薬の安全性も問題である.実際,PCGに関しては,特に高温環境下では失活しやすい特徴をもっており,通常よりも長時間点滴バッグの中に入れたままの抗菌薬が失活するおそれもある.

■また,PK/PD理論には問題点もあることが指摘されている[1].①血中濃度は蛋白に結合したものも含む全濃度を使用するのか遊離した薬剤濃度を使用するのか,②PKのパラメータは血中でのパラメータでよいのか,③PDパラメータとしてMICを用いているが,MBCやMPCとの関係はどうなのか,である.また,PK/PD理論に基づく投与法と有効性についての報告がされるようになっているが,副作用,耐性菌の出現との関連性についてはほとんどない.

■加えて重症敗血症の病態では,クリアランスや分布容積が治療経過中にめまぐるしく変化することも予想され,理論通りにはいかない可能性もある.このため,持続投与による抗菌薬濃度が不十分となったり過剰となったりするリスクもある.

■これまでの報告では,持続投与は間欠投与に比して同等もしくは優位であるとする結果が多いが,敗血症のような重症病態でない限りはそこまで効果に差はないようであることから,少なくとも非重症例においてはわざわざ持続投与を行う必要性は低いと思われる.Falagasら[2]による最新(2013年)のメタ解析(敗血症以外も含む)では,14報が登録され,カルバペネム系抗菌薬またはTAZ/PIPCの持続投与は死亡リスクを41%有意にする(RR 0.59; 95%CI, 0.41-0.83)と報告しているが,登録された報告のうちRCTはわずか3報であった.

■PubMedを用いて,以下の検索式で文献検索を行ったところ,253文献がhitした.これらを通読し,敗血症患者を対象とし,ハードアウトカムをメインに報告しているRCTは,上に紹介したRCT以外では2報[3,4]であった.
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■Roberts[3]らは,敗血症患者57例を対象として,CTRX 2gを1日1回ボーラス投与する群と24時間持続投与する群に割り付けたオープンラベルRCTを行った.臨床的治癒率(持続投与群13/29 vs 5/28ボーラス群; 調整後OR 3.74; 95%CI 1.11-12.57; p=0.06),細菌学的治癒率(18/29 vs 14/28; 調整後OR 1.64; 95%CI 0.57-4.70; p=0.52)に統計学的有意差はみられなかったが,ロジスティック回帰解析では,持続投与(OR 22.8; 95%CI 2.24-232.3; p=0.008)とAPACHEⅡスコア(調整後OR 0.70; 95%CI 0.54-0.91; p=0.008)が良好な臨床アウトカムの関連因子であった.死亡率(3/29 vs 0/28; p=0.52)に有意差はみられなかった.

■Dulhuntyら[4]は,豪州および香港の5施設において,重症敗血症患者60例において,TAZ/PIPC,MEPM,CVA/ticarcillinを持続投与群とボーラス間欠投与群に割り付けた二重盲検RCTを行った.抗菌薬濃度がMICを超えていた時間の占める率は,持続投与群で82%,間欠投与群で29%(p=0.001)であった.臨床的治癒率は持続投与群で有意に高かったが(70% vs 43%, p=0.037),ICU-free days(19.5 vs 17, p=0.14),院内生存率(90% vs 80%, p=0.47)に有意差はみられなかった.

■上に紹介したRCTとこれら2つのRCTの計3報を統合したRでのメタ解析結果は以下の通りである.random effects modelでは死亡をアウトカムとして22.3% vs 23.9%; OR 0.90, 95%CI 0.39-2.03; I(2)=28.3%であり,αエラー0.05,検出力0.80で計算すると有意差を得るための必要サンプル数は21818例であった.
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■臨床的治癒をアウトカムとすると,53.5% vs 43.7%; OR 2.02, 95%CI 0.86-4.76; I(2)=66.2%であり,αエラー0.05,検出力0.80で計算すると有意差を得るための必要サンプル数は1332例であった.
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■以上から,敗血症においては,抗菌薬持続投与は死亡率に影響を与えるほどの有効性はない.臨床的治癒率を改善する可能性は,傾向としてはあるかもしれず,これをもって持続投与を行うのもいいかもしれないが,臨床的にはそれほどの有益性がある治療方法とは言いがたく,強い推奨をもって選択すべき治療ではないと思われる.

[1] 堀 誠治.PK-PD解析からみた効果的かつ安全な抗菌薬適正使用.薬学雑誌 2007; 127: 931-7
[2] Falagas ME, Tansarli GS, Ikawa K, et al. Clinical outcomes with extended or continuous versus short-term intravenous infusion of carbapenems and piperacillin/tazobactam: a systematic review and meta-analysis. Clin Infect Dis 2013; 56: 272-82
[3] Roberts JA, Boots R, Rickard CM, et al. Is continuous infusion ceftriaxone better than once-a-day dosing in intensive care? A randomized controlled pilot study. J Antimicrob Chemother 2007; 59: 285-91
[4] Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Continuous infusion of beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Clin Infect Dis 2013; 56: 236-44
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by DrMagicianEARL | 2015-08-05 20:53 | 敗血症 | Comments(0)

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