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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】飲酒パラドックス?ICU患者は血中アルコール検出される方が死亡や敗血症リスクが低い

■ICU患者における肥満パラドックス(BMIが高い方が死亡率が低い)は有名ですが,今回紹介する論文は飲酒パラドックスとも言うべきもので,お酒をよく飲む私としても朗報?もっとも,評価されているのは死亡率であって,飲酒患者の方が重症疾患に罹患しやすい可能性が否定されたわけではありません.また,日本で言うDPCデータのようなデータベースを用いていますから,重症度などがちゃんと加味できませんので注意が必要ではあります.

■一応,アルコールが臓器虚血再灌流傷害を抑制するという動物実験はあるようですので,何の因果関係もない偶然,とは言えないようです.ちなみに余談ですが,先日神戸で開催された第30回日本救命医療学会において,外傷患者に発生した難治性重症ARDSに対してエチルアルコールによる肺胞洗浄を行ったところ劇的に改善したという1例報告があり話題になりました.実際にこれまでアルコールのネブライザー吸入を行った経験があるという先生も複数おられ,特に検証もなされずにいつの間にか消え去ってしまった治療法のようです.動物実験されませんかね?
重症疾患における血中アルコール濃度と死亡の関連性
Stehman CR, Moromizato T, Caitlin K. McKane CK, et al. Association between Blood Alcohol Concentration and Mortality in Critical Illness. J Crit Care 2015 Sep.2 [Epub ahead of print]

Abstract
【目 的】
腎,肝,心,脳の虚血の動物モデルにおいて,アルコール曝露は虚血再灌流傷害を減少させることが示されている.外傷患者の院内死亡は,入院時の血中アルコール濃度に対して用量依存的に減少することが示されている.本研究において,我々は,重症患者における入院時血中アルコール濃度(BAC)と30日死亡リスクの関連性について検討した.

【方 法】
我々はボストン,マサチューセッツの内科および外科ICUにおいて治療を受ける患者での2施設共同観察研究を行った.研究の場はボストンおよびマサチューセッツの2つの教育病院の209の内科および外科ICU病床とした.1997年から2007年まで集中治療を受けた18歳以上の11850例の患者を対象とした.曝露対象は,入院から24時間以内にBACが測定された患者とし,BAC<10mg/dL(検出レベル未満),10-80mg/dL,80-160mg/dL,>160mg/dLに分類した.主要評価項目は集中治療開始から30日間での全死亡とした.副次評価項目は集中治療開始から90日および365日死亡とした.死亡率は米国社会保障庁死亡マスターファイルを用いて決定し,365日間の追跡が全コホート患者で存在した.調整後オッズ比は,BACと死亡の両方に相互作用すると考えられた共変量を含んだ多変量ロジスティック回帰モデルにより推定した.調整因子は,年齢,性別,人種(白人,非白人),領域(外科,内科),Deyo-Charlson指数,敗血症,急性臓器不全,外傷,慢性肝疾患とした.

【結 果】
コホートの30日死亡率は13.7%であった.BAC<10mg/dLの患者と比較して,≧10mg/dLの患者は30日死亡リスクが低く,BAC 10-79.9mg/dLではOR 0.53(95%CI 0.40-0.70),BAC 80-159.9mg/dLではOR 0.36(95%CI 0.26-0.49),BAC≧160mg/dLではOR 0.35(95%CI 0.27-0.44)であった.多変量で調整すると,30日死亡リスクはそれぞれ0.97(0.72-1.31),0.79(0.57-1.10),0.69(0.54-0.90)であった.敗血症を評価対象としてコホートの解析を行うと,BAC<10 mg/dLと比較したBAC 80-160mg/dLまたは>160 mg/dLの患者の敗血症の多変量調整オッズはそれぞれ0.72(0.50-1.04),0.68(0.51-0.90)であった.血液培養を採取したサブグループ集団(n=4065)において,BAC<10 mg/dLと比較したBAC 80-160mg/dLまたは>160 mg/dLの患者の血流感染の多変量調整オッズはそれぞれ0.53(0.27-1.01),0.49(0.29-0.83)であった.

【結 論】
11850例の成人患者の解析では,入院時の検出可能なBACは集中治療開始から30日死亡のオッズの有意な減少に関連していた.さらに,BAC>160mg/dLは敗血症や血流感染への進展のオッズの有意な減少に関連していた.

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by DrMagicianEARL | 2015-09-15 16:12 | 敗血症 | Comments(0)

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