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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは心血管ハイリスクの2型糖尿病の死亡率を改善する

■驚異的な論文がでました.糖尿病の研究ですが,専門外の私でもすごいと分かるくらいの結果をたたきだしており,今後の糖尿病治療の優先順位が大きく変わるかもしれません.9月17日にonline publishされましたが,スウェーデンはストックホルムで開催されている欧州糖尿病研究学会議(EASD 2015)においても発表され,会場が興奮に包まれたようです.

■数多くの糖尿病治療薬が発売されていますが,死亡率を有意に改善させたRCTはまずありません.せいぜいメトホルミンくらいで,それでもかなりの年数をかけてわずかな差を検出するのがやっとでした.しかし,今回のSGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)を用いたEMPA-REG OUTCOME trialはわずか4年で心血管死亡,全死亡で有意差をつけており,NNT 39という驚異的治療成績です.しかも,Kaplan-Meier生存曲線を見るとかなり早い段階から死亡率に開きが見られます.おそらく,血圧と利尿の効果も加わったものではないかと推察されます.

■販売メーカーのベーリンガー社とイーライリリー社が主導で行っていること,心血管イベントハイリスクの2型糖尿病患者で基礎疾患がよくコントロールされていて,かつコンプライアンスが良好な患者集団であることは考慮しておく必要があります.また,他のSGLT2阻害薬ではここまでの効果を示した報告はなく,類似薬でここまでの違いが本当に出るのかという疑問はあります.また,安易な拡大解釈はせず,これまでのSGLT2阻害薬の適応患者範囲は守り続ける必要があります.
2型糖尿病におけるエンパグリフロジン,心血管予後,死亡率(EMPA-REG OUTCOME trial)
Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al; for the EMPA-REG OUTCOME Investigators. Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med 2015, Sep 17 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
心血管リスクの高い2型糖尿病患者での心血管罹患および死亡において,ナトリウム-グルコース共役輸送体-2阻害薬(SGLT2阻害薬)のエンパグリフロジンの標準治療への上乗せ効果は知られていない.

【方 法】
患者は1日1回のエンパグリフロジンの10mg,25mgまたはプラセボに無作為に割り付けられた.主要複合評価項目は,エンパグリフロジン群対プラセボ群でプールされた解析としての心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中とした.副次複合評価項目は,主要評価項目に不安定狭心症による入院を追加したものとした.

【結 果】
計7020例の患者が治療を受けた(観察期間中央値3.1年).主要評価項目はエンパグリフロジン群で4687例中490例(10.5%),プラセボ群で2333例中282例(12.1%)であった(HR 0.86; 95.02%CI 0.74-0.99; p=0.04).心筋梗塞や脳卒中の発生率は両群間で有意差はみられなかったが,エンパグリフロジン群で,心血管死亡率(3.7% vs 5.9%; 38%の相対リスク減少),心不全による入院率(2.7% vs 4.1%; 35%の相対リスク減少),全死亡率(5.7% vs 8.3%; 32%の相対リスク減少)が有意に低かった.両群間で副次評価項目に有意差はみられなかった(p=0.08).エンパグリフロジンを投与された患者において,生殖器感染症発生率の増加がみられたが,他の有害事象については有意差がみられなかった.

【結 論】
標準治療に試験薬を追加する設定において,エンパグリフロジンの投与を受けた,心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者は,プラセボ群と比較して,主要複合心血管評価項目と全死亡率が低かった.

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by DrMagicianEARL | 2015-09-18 12:22 | 文献 | Comments(2)
Commented by kotoko at 2015-09-25 15:26 x
10mg,25mgそれぞれの群では有意差なく、合算群でも95%CI 0.74-0.99とのことですので微妙な値ですね
Commented by DrMagicianEARL at 2015-09-26 14:22
ぎりぎりと言えばぎりぎりなんですが,ここまでの数値は他の糖尿病治療薬ではとても出せません

by DrMagicianEARL