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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】ICU患者への生食と他の晶質液でAKI発症率,死亡率に有意差なし(SPLIT study)

■ANZICSが行っていたICU患者での輸液における生食vs混合晶質液を比較した多施設大規模二重盲検RCTであるSPLIT studyが報告されました.なぜこんなに広い患者集団を対象にしてしまったのかプロトコル見たときから疑問で,こんな軽症群を大量に含むデザインでは有意差も何もつかないだろうと予想してましたが(輸液量も少ないですし),案の定結果はドローでした.終わってみれば院内死亡率は10%を切る患者集団.晶質液の種類を変えたくらいでアウトカムが変わるとはとうてい思えません.pilot studyだからだそうですが,最近サンプル数を集めるためにこんなデザインのRCT多いですね・・・.なんかもったいないです.今後8300例を登録するPLUS studyが予定されているのでそれに期待しましょう.

■もともとクロライド(Cl)を多く含む輸液製剤は,クロライドにより糸球体細動脈を収縮させるためGFRが落ちることが知られており,これまでの複数の観察研究でクロライド負荷が死亡リスクを増加させるとの結果が出ていました.今回の結果は,クロライドをより多く含む生理食塩水とその他の晶質液を比較しても差はなかったということですが,より重症例に絞った患者で検討されないと安全とは言えないと思われます.
ICU患者の急性腎傷害における混合晶質液と生理食塩水の効果:SPLIT無作為化臨床試験
Young P, Bailey M, Beasley R, ; SPLIT Investigators and the ANZICS CTG. Effect of a Buffered Crystalloid Solution vs Saline on Acute Kidney Injury Among Patients in the Intensive Care Unit: The SPLIT Randomized Clinical Trial. JAMA 2015 Oct.7 [Epub ahead of print]
PMID:26444692

Abstract
【背 景】
生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)は静脈内投与される輸液において最もよく使用されているが,その使用は急性腎傷害(AKI)と関連し,死亡率を増加させる可能性がある.

【目 的】
集中治療室(ICU)に入室した患者において,生理食塩水と比較した混合晶質液の腎合併症への効果を検討する.

【方 法】
本試験は2014年4月から2014年10月までニュージーランドの4つのICUで行われた二重盲検,クラスター無作為化,二重クロスオーバー試験である.3つのICUは内科外科混合ICUであり,1つのICUは胸部心臓血管外科患者が多かった.晶質液輸液療法を必要としてICUに入室した全患者を登録した.腎代替療法(RRT)を要するAKIを発症していた患者は除外とした.全2278例の患者が登録され,混合晶質液投与を受けた1162例中1152例(99.1%)と生理食塩水投与を受けた1116例中1110例の患者(99.5%)が解析された.参加したICUはマスクされた研究試液として,生理食塩水か混合晶質液に7週間の治療ブロックごとに割り付けられた.2つのICUは1つの輸液の使用を開始し,他の2つのICUでは他の輸液の使用を開始した.各ICUは研究の28週間にわたって2回輸液製剤を使用するように2つのクロスオーバーを行った.主要評価呼応目はAKI(血清クレアチニンレベルが少なくとも2倍,または血清クレアチニンレベルが0.5mg/dL以上の上昇を伴いかつ3.96mg/dL以上と定義)の患者の比率とした.副次評価項目はRRT使用発生率と院内死亡とした.

【結 果】
混合晶質液群では1067例中102例(9.6%)が登録から90日以内にAKIを発症し,生理食塩水群では1025例中94例(9.2%)であった(絶対差 0.4% [95%CI -2.1% to 2.9%]; RR 1.04 [95%CI 0.80 to 1.36]; p =0 .77).混合晶質液群では,RRTは1152例中38例(3.3%)で使用され,生理食塩水群では1110例中38例(3.4%)であった(絶対差 -0.1% [95%CI -1.6% to 1.4%]; RR 0.96 [95%CI 0.62 to 1.50]; p =0.91).全体においては,混合晶質液群では1152例中87例(7.6%),生理食塩水群では1110例中95例(8.6%)が院内で死亡した(絶対差 -1.0% [95%CI -3.3% to 1.2%]; RR 0.88 [95%CI 0.67 to 1.17]; p=0.40).

【結 論】
ICUにおいて晶質液の輸液療法を受ける患者では,生理食塩水に比して混合晶質液の塩生はAKIリスクを減少させなかった.より高いリスクを有する集団における効果の評価や死亡率といった臨床アウトカム評価のためにさらなる大規模無作為化臨床試験が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2015-10-13 18:23 | 敗血症性AKI | Comments(0)

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