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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】急性呼吸器感染症では抗菌薬はすぐに処方せず一旦待つのがいい?(RCT,DAP study)

■感冒症状のみの患者に抗菌薬処方すべきでないという推奨がこれまでなされてきているものの,実臨床ではなかなか浸透していません.急性呼吸器感染症1531019例のコホート研究(Ann Fam Med 2013; 11: 165-72)では,肺炎入院は抗菌薬投与群で18例/100000回受診,非投与群で22例/100000回受診であり,1人の入院を予防するために12255人に抗菌薬を投与する必要があるとの結果であり,ようするに肺炎でない限り抗菌薬を一律に処方するのは無駄に等しいわけです.

■さらに言えば,「抗菌薬を投与せず待つ」という選択肢がとれない医師が多数いることも事実です.このあたりは実際にそういう経験をしなければなかなかそういう選択に踏み切れないようです.当院でも私のいる呼吸器内科をローテートした研修医は,ローテート前後で抗菌薬処方の考え方が大きく変わったと言っており,とりわけ「抗菌薬を投与せず様子を見る」というやり方が安全かつ有効に行うことができるのが一番の驚きだったとの感想をもらっています.

■私自身,感冒に抗菌薬は全く使用しないというわけではありません.あくまでも「いきなり最初から処方はしない」というスタンスであり,その後に増悪してきた場合は,基礎疾患,重症度,肺炎への進展有無などを考慮して再診時に抗菌薬処方有無を決定します.といってもほとんど処方したケースはありませんが・・・.今回紹介する文献は,このような急性非複雑性呼吸器感染症に対して,いつ抗菌薬を処方するのか(or処方しないか)について4群間で比較したものです.この研究結果を見る限り,「増悪したら処方検討」というスタンスが安全かつ抗菌薬処方を減じることができるということで一番無難な結果だと思われます.
急性非複雑性呼吸器感染症における処方戦略:無作為化比較試験(DAP study)
de la Poza Abad M, Dalmau GM, Bakedano MM, et al; for the Delayed Antibiotic Prescription (DAP) Group. Prescription Strategies in Acute Uncomplicated Respiratory Infections: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med 2015 Dec.21 [Epub ahead-of-print]

【背 景】
抗菌薬の遅延処方は症状コントロールにおける抗菌薬使用減少に寄与する.遅延処方の異なる戦略があるが,どれが最も効果的なのかは明らかではない.

【目 的】
急性非複雑性呼吸器感染症において,2つの遅延戦略の効果と安全性を検討する.

【方 法】
我々は,実際的オープンラベル無作為化比較試験において,スペインの23のプライマリケアセンターから急性非複雑性呼吸器感染症の成人405例を登録した.患者は,(1)患者主導の遅延処方戦略(=増悪したら抗菌薬内服を指示)(2)プライマリケアセンターからの処方を受けるために患者が必要時に処方を受ける遅延処方戦略(=増悪したら再診指示),(3)直ちに抗菌薬処方,(4)抗菌薬を処方しない,の4つの処方戦略に無作為に割り付けられた.遅延処方戦略は,症状が増悪した,あるいは受診から数日たっても改善がない場合のみに抗菌薬を内服するようにした.主要評価項目は症状の期間と症状の重症度とした.各症状は6ポイントLikertスケール(スコアが3~4点は中等度,5~6点は重症)を用いてスコアリングした.副次評価項目は抗菌薬使用,患者満足度,抗菌薬効果の患者信用度とした.

【結 果】
405例の患者が登録され,398例が解析に含まれた.136例(34.2%)は男性,平均年齢(標準偏差)は45歳(17)であった.症状平均重症度はLikertスケールで1.8から3.5点まで幅があり,有症状平均期間は初回受診から6日間であった.初診時の平均全身健康状態(標準偏差)は,0を最悪,100を最良の健康状態として,54(20)であった.全体を通して,314例(80.1%)が非喫煙者であり,372例(93.5%)が呼吸器合併症を有していなかった.初診時の愁訴は4群間で同等であった.重症症状を有した平均期間(標準偏差)は,直ちに処方する群で3.6(3.3)日間,処方しない群で4.7(3.6)日間であった.重症症状期間の中央値(四分位範囲)は増悪したら再診する群で3(1-4)日間,増悪したら抗菌薬内服を指示する群で3(2-6)日間であった.あらゆる症状の最も高い重症度の中央値(四分位範囲)は直ちに処方する群と増悪したら再診指示する群で5(3-5)日間,増悪したら内服指示する群で5(4-5)日間,処方しない群で5(4-6)日間であった.抗菌薬を処方しない戦略または各遅延戦略に割り付けられた患者は抗菌薬使用量が少なく,抗菌薬の効果をあまり信頼していなかった.患者満足度は各群で同等であった.

【結 論】
抗菌薬の遅延処方戦略は直ちに処方する戦略と比較して,症状の重症度や有症状期間はわずかに大きいが臨床的には同等であり,抗菌薬使用量も実質的に減少していた.

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by DrMagicianEARL | 2015-12-24 18:50 | 抗菌薬 | Comments(0)

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