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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】代謝性アルカローシスを伴うCOPD挿管患者へのアセタゾラミド(DIABOLO study)

■アセタゾラミド(ダイアモックス®)を集中治療領域で使用したことのある先生はかなり少ないのではないでしょうか.この薬剤が挿管人工呼吸管理下にあるCOPD患者の代謝性アルカローシスに対して使用することで早く離脱できるのではないかとするRCTが報告されましたので紹介します.結果は,主要評価項目を含めてほとんどのアウトカムに有意差なしです.執筆者は結論で「統計学的には有意差はないけれど差の数値は臨床的に無視できない」と言いたげな書き方をしていますが,臨床的にも有意とは言い難い差と私は思います.確かにベクトルはいい方向に向いてはいますが,使うほどの差かと言うと微妙です.

■この薬剤の機序はNa利尿と尿中HCO3-の排泄増加ですので,機序的には代謝性アルカローシスを改善させることになります.代謝性アルカローシスは代償反応として低換気が起こりますので,アセタゾラミドで換気刺激を促してやろうというものです.なお,本邦においては「肺気腫における呼吸性アシドーシス」に保険適用があります.どちらかというと呼吸性アシドーシスで私は使用することがごくたまにあって,NPPVでも治療しきれず,挿管拒否されているCO2ナルコーシスと高度の呼吸性アシドーシスの場合に苦し紛れの一手で投与をtryします.ただ,この研究のデータを見るにPaCO2もたいして下がらないようですね.
慢性閉塞性肺疾患患者における侵襲的人工呼吸器装着期間におけるアセタゾラミドvsプラセボの効果:無作為化比較試験(DIABOLO study)
Faisy C, Meziani F, Planquette B, et al; DIABOLO Investigators. Effect of Acetazolamide vs Placebo on Duration of Invasive Mechanical Ventilation Among Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2016 Feb 2;315(5):480-8
PMID:26836730

Abstract
【背 景】
アセタゾラミドは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と代謝性アルカローシスの患者において呼吸刺激薬として数十年使用されてきているが,この使用における大規模なプラセボ対照比較試験はない.

【目 的】
COPDで代謝性アルカローシスの重症患者における人工呼吸器装着期間をアセタゾラミドが減少させるかについて検討する.

【方 法】
本DIABOLO studyは,フランスの15の集中治療室(ICU)で2011年10月から2014年7月まで行われた無作為化二重盲検多施設共同試験である.24時間以上の人工呼吸管理を受けることが予想されたCOPD患者計382例をアセタゾラミド群とプラセボ群に無作為に割り付け,380例がintention-to-treat解析に組み込まれた.アセタゾラミド(500-1000mgを2回/日)とプラセボは代謝性アルカローシスの症例において静脈内投与することとし,ICU入室48時間以内に導入され,最大28日間までICU在室中継続した.主要評価項目は気管挿管もしくは気管切開による侵襲的人工呼吸器装着期間とした.副次評価項目は動脈血ガスと呼吸パラメーター,weaning期間,有害事象,抜管後の非侵襲的人工呼吸器の使用,weaning成功率,ICU在室期間,ICU死亡率とした.

【結 果】
無作為化された382例の患者のうち,380例(平均年齢69歳,男性272例[71.6%],気管挿管379例[99.7%])が試験を完遂した.プラセボ群(193例)に比して,アセタゾラミド群(187例)は人工呼吸器装着期間中央値(-16.0時間; 95%CI -36.5 to 4.0時間; p=0.17),人工呼吸器からのweaning期間(-0.9時間; 95% CI -4.3 to 1.3時間; p=0.36),分時換気量の毎日の変化(-0.0L/min; 95%CI -0.2 to 0.2 L/min; p=0.72),動脈血二酸化炭素分圧(-0.3mmHg; 95%CI -0.8 to 0.2 mmHg; p =0.25)に有意差はみられなかったが,血清重炭酸濃度の変化(群間差 -0.8mEq/L; 95%CI -1.2 to -0.5mEq/L; p<0.001),代謝性アルカローシスの日数(群間差 -1; 95%CI -2 to -1日間; p<0.001)はアセタゾラミド群で有意に減少した.他の副次評価項目では両群間に有意差はみられなかった.

【結 論】
侵襲的人工呼吸管理を受けるCOPD患者において,アセタゾラミドの使用はプラセボに比して侵襲的人工呼吸器装着期間を統計学的有意には減少させない結果であった.しかしながら,差の大きさは臨床的に重要であり,本研究は統計学的有意性を検出する上で検出力不足であった可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-08 18:27 | 文献 | Comments(0)

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