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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】スタチンはICUせん妄や長期認知機能障害を改善せず(SAILS trial二次解析)

■これまで2回,コホート研究でHMG-CoA還元酵素阻害薬のスタチンがICUせん妄を有意に抑制するという報告をEly先生らのグループが報告しています(Am J Respir Crit Care Med 2014; 189: 666-73,Crit Care Med 2014; 42: 1899-909).これは,集中治療領域においてスタチンの抗炎症作用が注目されており,また,炎症とせん妄の関連については近年多数の報告がでていることから,スタチンの抗炎症作用がせん妄を減じるという仮説が三段論法で成り立つわけで,この仮説を検証したことになります.

■そして今回,RCTの二次解析にはなりますが,敗血症性ARDS症例におけるスタチンを検討したSAILS trialのデータを用いてICUせん妄をスタチンが抑制するかを検討した報告がLancet Respiratory Medicineに報告されました.結果は見事なまでにネガティブ.集中治療領域でいろいろ期待されてきたスタチンですが,ARDSでむしろ予後が悪化した報告を見たあたりからかなり懐疑的です.おそらく重症急性炎症病態で脂質系に影響を与えるのはよくないのではと思います.
敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者におけるICUでのせん妄と認知機能障害遷延におけるロスバスタチンvsプラセボ
Needham DM, Colantuoni E, Dinglas VD, et al. Rosuvastatin versus placebo for delirium in intensive care and subsequent cognitive impairment in patients with sepsis-associated acute respiratory distress syndrome: an ancillary study to a randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2016 Jan 28 [Epub ahead of print]
PMID:26832963

Abstract
【背 景】
せん妄は人工呼吸患者においてよく見られ,退院後少なくとも1年の認知機能障害と関連している.臨床前観察研究においてはICUにおけるスタチンの使用はせん妄を減少させる可能性が示唆された.我々はスタチンの多面的な効果がICUにおけるせん妄を減少させ,認知機能障害遷延を減少させるかについて無作為化比較試験で評価した.

【方 法】
我々は,敗血症性急性呼吸窮迫症候群患者におけるロスバスタチンvsプラセボの死亡率と人工呼吸器非装着日数を評価した無作為化比較試験であるSAILS trialにおいて本補助的研究を行った.本研究は米国の35病院で行われた.患者は8例のブロック無作為化で割り付けられ,ロスバスタチン(40mgローディングを行い,ICU退室後3日間または試験開始から28日後または死亡まで20mg/日)またはプラセボに病院ごとに割り付けた.患者と研究者は治療割り付けを盲検化された.せん妄はConfusion Assessment Method for intensive care(CAM-ICU)で評価した.認知機能は実行機能,言語,口頭推論と概念形成,動作,迅速性,記憶遅延のテストで評価した.認知機能障害はこれらの項目の1つが正常集団の少なくとも2SD以下または2つが1.5SD以下である場合と定義した.主要評価項目はintention-to-treat集団における28日までのICUにおける毎日のせん妄状態,副次評価項目は6ヵ月および12ヵ月の認知機能とした.本試験はClinicalTrials.govに登録した(NCT00979121 and NCT00719446).

【結 果】
272例の患者がICUにおける毎日のせん妄を評価された.せん妄の日数の平均比率は,ロスバスタチン群で34%(SD 30%),プラセボ群は36%(29%),HR 1.14, 95%CI 0.92-1.41, p=0.22であった.6カ月時点では,ロスバスタチン群で53例中19例(36%),プラセボ群で77例中29例(38%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 0.93, 95%CI 0.39-2.22; p=0.87).12カ月時点では,ロスバスタチン群で67例中20例(30%),プラセボ群で81例中23例(28%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 1.1, 95%CI 0.5-2.6; p=0.87).

【結 論】
ほとんどの患者はせん妄を有し,生存者の1/3が1年以上の追跡で認知機能障害を有していた.前臨床試験および観察研究は好ましい結果であったにもかかわらず,本試験は,優位性の検出には不十分ではあるが,ICUにおけるせん妄あるいは12ヵ月の追跡における認知機能障害を減少させる上でロスバスタチンの有益性は何ら示されなかった.よって,本集団でよく観察されたICUおよびICU後の認知機能障害を減じる目的での介入の評価が引き続き必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-09 18:55 | 敗血症 | Comments(0)

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