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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【感想】第43回日本集中治療医学会に参加してきました(JSEPTIC DIC studyを中心に)

 2016年2月11日から14日まで神戸国際会議場および神戸ポートピアホテルで開催された第43回日本集中治療医学会総会学術集会に参加してきました.私自身は12日にワークショップセッションでPost-Intensive Care Syndromeについて発表させていただきましたが,今回の学会の個人的なメインはJSEPTIC-DIC studyの結果報告を見に行くことと言っても過言ではありません.以下,感想などを.

1.JSEPTIC-DIC study
■これまで本邦では日本集中治療医学会や日本救急医学会がSepsis Registry委員会を立ち上げて敗血症症例のデータ集積を行ってきているが,どれも数百例レベルで,今回のJSEPTIC-DIC studyは桁が1桁違う過去最大規模かつ最新の国内敗血症データベースとなる.
【対 象】
本研究は,敗血症性DICに対する治療を積極的に施行している施設と施行しない施設の両方を含めた本邦40施設42ICU共同後ろ向き観察研究である.対象は2011年1月から2013年12月の3年間に重症敗血症/敗血症性ショックが原因でICUに入室した3195例.

【参加施設】
参加施設は院内ICUが57%,救急ICUが43%であり,ICU管理方針はClosedが41%,Openが43%であった.

【患者背景】
患者背景は,平均年齢70歳,男性が60%,平均APACHEⅡスコアは23,感染源は腹腔が32%で最多,次いで肺26%,尿路16%,血液培養陽性は44%,陰性は50%,DIC合併率は71%であった.DIC治療薬はATが31%,rTMが27%,プロテアーゼ阻害薬12%であった(重複あり).ICU入室から退院までは平均41日間,院内死亡率は33%であった.

【結果1】DIC治療方針の転帰への影響
 DIC治療薬を50%以上の患者に投与した施設の患者を積極群(23施設1670例),50%未満の患者に投与した施設の患者を非積極群(19施設1525例)とした.
 ICU生存率は80.7% vs 79.6%,p=0.46,院内生存率は67.1% vs 67.3%,p=0.90で有意差はみられなかった.多変量ロジスティック回帰解析では,積極群はICU生存退室においてOR 1.34[95%CI 1.08-1.65],p=0.007,病院生存退院においてOR 1.34[95%CI 1.11-1.60],p=0.002であり,独立した予測因子であった.
 敗血症DICを積極的に治療した施設では生存率良好と関連があり,DIC治療薬投与が転帰を改善する可能性がある.

【結果2】敗血症性DICに対する遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤(rTM)の効果
 3195例中,DIC患者1847例が対象,このうち645例にrTMが投与され(rTM群),1202例にはrTMが投与されていなかった(対照群).施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity scoreを算出し,propensity score matching解析を実施し,466組のペアが作成された.
 院内死亡においてはrTMはOR 0,717,95%CI 0.547-0.940,p=0.0161であった.生存期間の比較では,HR 0.762,95%CI 0.615-0.943,p=0.0125であった.rTM群での輸血量の増加は認めていなかった.処置を要する出血は対照群1.3%に対してrTM群2.8%と増加していたが,統計学的有意差は認めなかった.
 敗血症性DICに対するrTMの投与は死亡率の低下と関連していた.

【結果3】敗血症性DICに対するアンチトロンビン製剤(AT)の効果
 3195例から以下の3段階のサブグループで施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity score matching解析を実施した.
(1)DIC患者1875例中,715例にATが投与され(AT群),1132例には投与されていなかった(対照群).
(2)AT値をday1に測定しているDIC患者1041例中,AT群509例,対照群532例
(3)day1のAT値が70%以下のDIC患者815例中,AT群450例,対照群365例
 マッチしたペアはそれぞれ(1)428組,(2)275組,(3)212組作成された.AT群は院内死亡において(1)OR 0.906,95%CI 0.69-1.19,(2)OR 0.94,95%CI 0.65-1.34,(3)OR 1.09,95%CI 0.73-1.64,p=0.68であった.
敗血症性DICに対するATの投与は死亡率の低下と関係を認めなかった.
■この他にも,乳酸値,PMX-DHP,vv-ECMO,Open vs Closedなど多数の解析が発表されている.本研究の主旨である敗血症性DICに関しては,DIC治療薬,とりわけrTMにおいて生存率改善の可能性が示唆されているものの,施設どうしの比較にも近く,またDICを治療しない施設におけるDICパラメータの測定欠損など後ろ向き観察研究特有の限界もあるとも言える.また,先日の第22回大阪DIC研究会においては本JSEPTIC-DIC studyデータを用いたDIC治療プロトコル採用可否での死亡率比較で,APACHEⅡスコア20以上において生存率改善を示唆する結果が報告されており,過去の知見も合わせればやはりAPACHEⅡスコア20~25以上のpoppulationでなければ死亡率改善は得られない可能性があり,rTMの海外PhaseⅢ studyに登録された患者の重症度しだいで結果は決まるかもしれない.

2.TPTD study
■敗血症性ショックのEGDTにおいて,輸液指標にCVPを用いることについては懐疑的見解が相次いでいる.しかしながら,CVPに代わる確立された輸液反応性指標がないことも事実で,それではTPTDはどうかということで本研究がRCTデザインで日本で行れている.今回その中間解析結果が報告された.
敗血症治療における経肺熱希釈法の併用に関する多施設共同研究・中間報告 TPTD-study Group
【背 景】
敗血症の初期治療においては十分な輸液が必要だが,中心静脈圧を指標とした従来のEGDTについては有効性を疑問視する報告が相次いでいる.経肺熱希釈法(TPTD)は心臓の拡張終期容量と肺外の水分量を測定することが可能であり,中心静脈圧に代わる輸液の指標として期待される.

【目 的】
敗血症におけるTPTDを用いた輸液管理の有用性を検討する.

【方 法】
2013年11月から2015年8月に当研究(多施設前向き比較対照試験;UMIN000011493)に参加した16施設のICUに入院し,48時間以上の人工呼吸器管理を必要とした敗血症患者105例を対象とした.無作為に割り付けたTPTDによる輸液管理を行ったTPTD群(50症例;GEDI 650-850,SVV<15%目標)と中心静脈圧を用いたCVP群(55症例;CVP 12-15cmH2O目標)を比較した.

【結 果】
生存例について,人工呼吸器管理日数はTPTD群で有意に短縮された(Kaplan-Meier法;p=0.041,5.5±7.2 vs 7.0 vs±6.4).ICU滞在期間(6.8±6.4 vs 8.8±7.0),カテコラミン投与期間(2.3±1.8 vs 3.6±4.1)についても,TPTD群ではCVP群と比較して日数が短縮される傾向にあった.72時間の輸液バランスには有意差を認めなかった(4.8±5.9L vs 4.8±5.3L).
※輸液バランスは実際の発表では24時間で3075mL vs 3646mL,72時間トータルでは3106mL vs 4650mLという数字であった.

【結 論】
TPTDを用いた輸液管理によって,十分量の輸液とカテコラミンの必要期間の制限が可能であり,人工呼吸器管理期間を短縮できる.
■Rivers' EGDTのCVPをTPTDにしたらどうなるかというRCTですが,主要評価項目で人工呼吸器管理日数で有意差がついたほか,輸液バランスもTPTD群の方が少ない傾向で好ましく見えるのだが,問題は28日生存率である.100例ちょっとでの検討になるため微妙ではあるが,発表での28日生存率は67% vs 78%で有意差はないもののTPTD群の方が高い傾向がみられている.その絶対差は11%もあり無視できる大きさではない.本研究は最終的に200例を予定しており,この差は200例では有意差はつかないが,500例ほどになれば有意差がつく数字であるため,注意してみていく必要はあるだろう.

3.Global Sepsis Alliance委員会報告
■最終日にGlobal Sepsis Alliance委員会の報告があり,その中で市民への情報発信のためのホームページ作成について報告がなされた.「敗血症安心プラネット」というホームページ名であり昨年より開設されているが,アクセス数が伸び悩んでいた状況にあった.検索についても,「敗血症 安心」という検索ワードにしなければ上位に表示されない.業者に依頼するなどしてアクセス数を増やすことも検討されていたが,コストがかかる上に上位にいく保障がないのが問題であった.

■そこで,救急・ICU系のブロガーにリンクを貼ってもらい,アクセス数を増やすことで検索上位にひっかかることが期待された.実際に本ブログ「EARLの医学ノート」や「ER×ICU~救急医の日常~」で敗血症安心プラネットの紹介とリンクを学会期間中に貼ったところ,アクセス数が劇的に伸びたことが報告された.

■というわけで,まさかとは思ったが,依頼されたこともあり,このブログが学会デビューしてしまった.実際に委員会報告のスライドで私のブログが顔写真本名付きでの紹介という大変恐縮な状況.それはいいとして,一般市民への啓蒙手段,なかなかに難しいようである.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-19 11:30 | 敗血症 | Comments(0)

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