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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献×2】東日本大震災の津波による肺炎死・高齢者の障害に関する大規模調査

東日本大震災の津波による肺炎死・高齢者の障害に関する大規模調査
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■2011年3月11日の東日本大震災から5年が経ちました.21年前の阪神淡路大震災では死者6434名,東日本大震災ではその2倍以上の15894名が亡くなっています.阪神淡路大震災では家屋倒壊と火災による被害が主で,その後の耐震強化等の防災策が日本各地でとられ,その後の数多くの地震でも被害がおさえられてきました.しかしながら東日本大震災では津波による被害が甚大でした.さかのぼれば1993年の北海道南西沖地震では230名が死亡しましたが,そのほとんどは奥尻島による津波被害でした.

■津波に流されて溺死したケースがほとんどですが,救出されて救命救急センター等に搬送されるも激烈な肺炎で死亡した患者も多く知られています.津波肺の患者の救命率は著しく低く,Pseudallescheria boydiiScedosporidium apiospermumといった真菌に病院はかなり苦しめられたとのことです.

■今回紹介する2つの論文は東日本大震災における津波に関する疫学的な調査結果です.1つ目は津波による肺炎死亡の増加について,2つ目は津波による高齢者の長期機能障害についての調査結果です.今回の地震でいかに津波の影響が大きいかを物語るデータになります.震災からまだ5年.建物の復興は進みましたが,医療・福祉はまだまだ大変です.医師不足も深刻な東北地方ですが,このたび私も生まれてからずっと住んできた大阪を離れ,2016年4月より東北の病院に勤務することになりました.津波被害の影響を受けた地域の患者さんの診療にもあたることになるでしょう.少しでもお役に立てればと思います。
地震と津波の後の肺炎による死亡の特性:日本の131の市町村における570万人の生態学的研究
Shibata Y, Ojima T, Tomata Y, et al. Characteristics of pneumonia deaths after an earthquake and tsunami: an ecological study of 5.7 million participants in 131 municipalities, Japan. BMJ Open. 2016 Feb 23;6(2):e009190
PMID:26908515

Abstract
【背 景】
2011年3月11日,東日本大地震が日本を襲った.いくつかの研究では,地震は肺炎による死亡リスクを増加させることが示されているが,津波がそのリスクを増加させるか否か,どれくらい増加させるかについて報告した研究はない.我々は地震/津波後の肺炎死亡リスクを検討した.

【方 法】
本研究は生態学的研究である.日本の人口動態統計2010および2012,国勢調査2010,住民基本台帳2010と2012から集団および肺炎死のデータを得た.震災後1年の間に宮城県,岩手県,福島県に居住する約570万人を対象とした.全市町村(n=131)は,地震の影響を受けた地区である内陸部(n=93),地震と津波の影響を受けた沿岸部(n=38)に分類された.週あたりの肺炎死亡数は2010年3月12日から2012年3月9日までを集計した.観察された肺炎死亡数(O)と,性別および年齢ごとの予想される肺炎死亡数を乗じて観察集団における性別と年齢の群の合計数(E)を算出した.予想される肺炎死亡率は,前年の肺炎死亡率とした.標準化死亡比(SMRs)は,間接的な方法を用いて性別と年齢を調整し,肺炎死亡(O/E)により算出した.そして,SMRsは沿岸部と内陸部の市町村ごとで算出した.

【結 論】
地震後の1年間で6603例が肺炎で死亡した.SMRsは第1週から第12週目までの間に有意に増加した.第2週では,沿岸部と内陸部の市町村のSMRsはそれぞれ2.49(95%CI 2.02-7.64)と1.48(95%CI 1.24-2.61)であった.沿岸部の市町村のSMRsは内陸部の市町村よりも高かった.

【結 論】
地震は肺炎死亡リスクを増加させ,津波はそのリスクをさらに増加させる.
高齢者の機能障害における2011年の東日本大地震および津波の影響:日本の自治体おける障害有病率の縦断的比較
Tomata Y, Kakizaki M, Suzuki Y, et al. Impact of the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami on functional disability among older people: a longitudinal comparison of disability prevalence among Japanese municipalities. J Epidemiol Community Health. 2014 Jun;68(6):530-3
PMID:24570399

Abstract
【目 的】
2011年3月11日の地震と津波による深刻な影響を受けた地域は他の地域に比して障害有病率がより大きく増加しているという仮説を検討する.

【方 法】
日本の厚生労働省の公共統計データを用いた縦断的解析を行った.解析は,介護保険(LTCI)システムによってカバーされている1549の自治体が登録された.「災害地域」は3県(岩手,宮城,福島)と定義した.評価項目は,LTCI障害者認定を受けた高齢者(65歳以上)の数とした.2011年2月から2012年2月までの障害有病率における変化率は主要アウトカム変数として使用し,「沿岸被災地」「内陸被災地」「非被災地」との間の共分散分析によって比較した.

【結 果】
すべてのレベルにおける障害有病率では,沿岸被災地の増加率の平均値(7.1%)は,内陸被災地(3.7%),非被災地(2.8%)に比して高かった(p<0.001)

【結 論】
地震と津波による深刻な影響を受けた地域では,地震災害後の1年間における障害有病率が他の地域よりも有意に高い増加率であった.

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by DrMagicianEARL | 2016-03-11 00:00 | 文献 | Comments(0)

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