ブログトップ

EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

「HPVV(子宮頸癌ワクチン)で脳障害」の根拠となる動物実験に捏造疑惑

■2016年6月20日付発売のWedgeに村中璃子氏の記事が掲載された.内容は,HPVV(ヒトパピローマウイルスワクチン,子宮頸がんワクチン)を投与されたマウスに脳障害が出たとする信州大学の池田修一氏らの研究に捏造疑惑,というものである.この不正が事実であれば,HPVVが脳障害を起こすという根拠はなく,日本だけで騒がれているHPVV薬害の根拠が崩壊し,まさに「日本版Wakefield[1]」ともいえるべき事態となる.スポンサーは厚生労働省であるが,今後どう対応をするのであろうか.

■詳細はWedge誌をご覧いただきたいが,この研究の内容は見れば見るほどおかしい.まず,研究デザインの時点で意味不明である.本研究では,NF-κB p50欠損マウスをHPVV(サーバリックスのみでガーダシルは検証せず),インフルエンザワクチン,B型肝炎ワクチン,生理食塩水の4種類の接種に割り付けて比較を行っているが,具体的には以下の方法となっている.
・研究で用いたNF-κB p50欠損マウスは放置していても脳障害を起こすモデル
・実際に用いたマウスは欠損マウスと正常マウスの交雑種
・マウスに投与したワクチンの量はヒトに換算すれば通常のワクチン接種の100倍以上の量
・各群のマウスの数は3-5匹ずつしかいない
■ここまではlimitationの範疇とも言える.たが,実際に行われた研究や解析は以下の通りとのことで,これは許容されるものではない(そもそも3月の発表ではHPVVワクチン接種マウスの脳に障害が生じたとしかとらえられない発表であった).
・発表された解析マウスの写真は,ワクチンを接種したマウスではなく,接種マウスの血清を脳にふりかけられた別のマウスのものであり,マウスが異なる上に血液脳関門(BBB)を無視している
・HPVV群以外のマウスでも脳に障害がでていた(どのマウスも自己抗体があるので当然の結果)
・HPVV群だけ緑色に染色(脳に抗体沈着があることを示す結果)された写真をチョイスし,その他の群では染色されていない写真を池田氏がチョイスした
・解析データはすべて1匹のものである(N=1,すなわちチャンピオンデータ)
■これではHPVV接種が脳障害を起こす根拠などまったく示せていないに等しい.子宮頸がんという人命がかかる疾患,あるいはHPVV副作用,その両方にとって重要な研究であるにもかかわらずこのようなことをやっているとしたらSTAP騒動どころではなく,罪は重い.

[1]DrMagicianEARL. 【文献】ワクチンやそれに含まれるチメロサール,水銀は自閉症と関連しない.メタ解析(Wakefieldの論文捏造の詳細含む) 2014年5月21日 http://drmagician.exblog.jp/22025386/
[PR]
by DrMagicianEARL | 2016-06-20 11:52 | Comments(0)

by DrMagicianEARL