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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】感染巣不明の敗血症性ショック疑いの予後は?

■敗血症性ショックを疑ったけど,感染巣が不明で感染症かどうかも分からない,なんて患者に遭遇することは珍しくないと思いますし,ICTもそのような状況でコンサルトを受けることがあると思います.そのような患者は予後が悪いのかなと思ってましたが,そうでもないようです.今回紹介する論文はフランスのICUから,多施設共同前向き観察研究です.発症から敗血症性ショックが疑われてICUに入室し,24時間以内に感染巣や病原微生物の根拠が得られたか否かで患者を評価しています.

■結果は,予後に有意差なし.早期に感染症の根拠が得られなかった患者は26%,そのうち別疾患と診断したものが44%(全体の11%),あとで敗血症性ショックと診断できたものが28%(全体の7%)でした.また早期診断群の方が,糖尿病患者が少なく,発熱がより高く,意識レベルが高く,CRPやプロカルシトニンが高いという患者背景でした.24時間以降に診断がついた敗血症性ショックの感染巣は何か特殊なのかなと思ったら,通常の敗血症の疫学とほぼ変わらない結果でした.敗血症性ショックもどきを呈した薬剤副作用としては,ビグアナイド系経口血糖降下薬(メトホルミン)が最多で,次いでレニンアンギオテンシン系降圧薬,β遮断薬,プロポフォールが続いていました.

■これを見るに,感染巣が特定できようができまいが,やはり初期の循環管理をしっかり適切に行うことが要であろうと思われます.私自身は敗血症に対して抗菌薬投与を1時間以内に投与することをpracticeとしていますが,本心ではおそらく1時間以内じゃなくてもいいと思っています.抗菌薬の早期投与がいいという過去の研究はすべて観察研究であり,いかに多変量解析を行っているとはいえ,抗菌薬投与が全治療のスタートラインとなっていて循環管理が遅れているのを反映しているだけ,という可能性がそれなりにあるからです.実際に予後に影響を与えるのは抗菌薬早期投与よりも早期のショック治療だと思います(かといって抗菌薬投与が遅すぎるのもよくないでしょうけど).まあこのあたり,いろいろ思うところがあるなと感じながらも1時間以内に適切な抗菌薬を選択して投与をすべくやってます.
24時間時点で診断がついていない敗血症性ショック:実際的多施設前向きコホート研究
Contou D, Roux D, Jochmans S, et al. Septic shock with no diagnosis at 24 hours: a pragmatic multicenter prospective cohort study. Crit Care. 2016 Nov 6;20(1):360
PMID:27816060

Abstract
【背 景】
敗血症と考えられたショック管理の24時間後の明らかな感染巣の欠如はよく見られ,シナリオの妨げになる.我々の目的は,発症から24時後に未診断のショックの頻度と原因を検討し,早期に診断された敗血症性ショック患者の予後と比較することである.

【方 法】
我々はフランスの10の集中治療室(ICU)において,実際的前向き多施設共同観察コホート研究を行った.抗菌薬処方につながる感染症が臨床的に疑われ,循環作動薬を要する循環不全があると定義された敗血症性ショック疑いでICUに入室した患者を全例連続的に登録した.

【結 果】
計508例の患者が敗血症性ショックの疑いでICU入室となった.それらのうち,374例(74%)が早期に敗血症性ショックと診断され,一方で134例(26%)がショック発症から24時間の検索で感染巣も微生物学的根拠も同定できなかった.これらのうち,37/134例(28%)は24時間移行に敗血症性ショックと診断され,59/134例(44%)は敗血症を模倣した状態(敗血症性ショック様.ほとんどは薬剤有害反応,急性腸間膜虚血,悪性疾患に関連)であり,38/134例(28%)はICU在室終了まで原因不明のショックであった.早期に診断された敗血症性ショック患者とそうでない患者では,ICU死亡,ICU在室期間,気管挿管期間,循環作動薬使用期間に差はなかった.多変量Coxモデルでは,敗血症性ショックの早期診断有無で60日死亡リスクに差はみられなかった.Sepsis-3の定義による基準に合致した患者のサブグループ(369/508例)における感度解析でも同様の結果であった.

【結 論】
敗血症性ショック疑いでICUに入室した患者の1/4は発症から24時間以内に感染症の根拠が検出できず,そのうちのほぼ半数は最終的に敗血症性ショック模倣疾患と診断された.早期診断の敗血症性ショックとそれ以外の患者で予後に差はみられなかった.

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by DrMagicianEARL | 2016-12-12 20:10 | 敗血症 | Comments(0)

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