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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】敗血症性ショック蘇生輸液の制限は臨床アウトカムを改善する可能性(CLASSIC trial)

■敗血症性ショックに大量輸液は必要だが,過剰輸液も死亡リスクに悪影響を与える,ということがずっと言われてきましたが,あくまでも観察研究によって提唱されていた仮説であり,試験ごとに比較すると,やはり重症度が高まるほど輸液量が多いことが避けられず,過剰輸液のせいで死亡リスクが悪化するのか因果関係は不明,というのも事実です.

■今回,敗血症性ショックの大量輸液においてプロトコルを組んで輸液制限が可能かを検討したRCTが報告されたので紹介します.結果は,輸液制限群の方が好ましいという結果.非常に興味深い内容・・・ですが,除外基準として重度の呼吸不全や腎代替療法の患者を除外している,無作為化時点で既に両群とも中央値にして4000mL以上の輸液が既に入っており初期輸液にしては多すぎですし,患者背景を見るに治療する際の難治性因子となる不利な項目が標準ケア群の方が多い,輸液制限群にプロトコル違反が3割もいる,などなど,limitationは非常に多く,素直には受け取れない結果と私はみていますので,現時点でこのプロトコルをリアルワールドで使う気にはなれません.まあサンプル数がそれほど多くないfeasibility trialですので,今後のさらなる検討を期待します.
初期管理後の成人敗血症性ショックにおける蘇生輸液量の制限:CLASSIC無作為化並行群間多施設共同実現可能性試験
Hjortrup PB, Haase N, Bundgaard H, et al; CLASSIC Trial Group; Scandinavian Critical Care Trials Group. Restricting volumes of resuscitation fluid in adults with septic shock after initial management: the CLASSIC randomised, parallel-group, multicentre feasibility trial. Intensive Care Med. 2016 Nov;42(11):1695-1705
PMID:27686349

Abstract
【目 的】
敗血症性ショックで集中治療室(ICU)に入室した患者における初期蘇生後の蘇生輸液制限プロトコルと標準ケアプロトコルの効果を評価する.

【方 法】
スカンジナビアの9つのICUにおいて,初期輸液蘇生を受けた151例の敗血症性ショック成人患者を無作為化した.輸液制限群では,輸液ボーラス投与は重度の低灌流のサインが生じたときのみ許可し,標準ケア群では循環指標が改善し続ける限り許可した.
※本文より
低灌流のサイン:乳酸値≧4mmol/L,ノルアドレナリン投与下で平均動脈圧≦50,皮膚のまだら模様が膝蓋部からさらに拡大,尿量≦0.1mL/kg/hr(無作為化から2時間以内限定)


【結 果】
主要評価項目である第5病日時点およびICU在室中の蘇生輸液量は,輸液制限群の方が標準ケア群よりも少なかった[第5病日平均差-1.2L(95%CI -2.0 to -4.0); p<0.001,ICU在室中平均差-1.4L(-2.4 to -0.4); p<0.001].全輸液量およびバランスまたは重篤な有害反応は両群間で統計学的有意差はみられなかった.輸液制限群で主要なプロトコル違反が27/75例に行われていた.虚血性イベントは,輸液制限群で3/75例,標準ケア群で9/76例(OR 0.32; 95%CI 0.08-1.27; p=0.11),急性腎傷害の悪化は27/73例 vs 39/72例(OR 0.46; 95%CI 0.23-0.92; p=0.03),90日死亡は25/75例 vs 31/76例(OR 0.71; 95%CI 0.36-1.40; p=0.32)生じていた.

【結 論】
敗血症性ショックの成人ICU患者において,蘇生輸液を制限するプロトコルは標準ケアプロトコルと比して蘇生輸液量を減少させることができた.臨床的アウトカムは輸液制限群ですべての項目で有益な傾向がみられたが,本試験はこれらの探索的結果において差を示すには検出力不足であった.

by DrMagicianEARL | 2016-12-08 16:12 | 敗血症

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