ブログトップ

EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

日本版敗血症診療ガイドライン2016(5) 初期蘇生・循環作動薬

CQ7.初期蘇生・循環作動薬
 敗血症性ショック治療のコアとなる部分である.30mL/kg以上の初期急速輸液負荷とノルアドレナリンをベースとして,第2選択薬はアドレナリン,バソプレシン,ドブタミンのいずれかを選択,モニタリングは既知の指標をいずれか用いて総合的に評価する,という内容である.治療に不慣れな施設であれば,やはりEGDTプロトコルが無難だとは思うが・・・
CQ7-1.初期蘇生にEGDTを用いるか?

A.敗血症,敗血症性ショックの初期蘇生にEGDTを実施しないことを弱く推奨する(2A)

※ここでのEGDTはRiver'sらのEGDTであり,modified EGDTは含めない.
 2014年から2015年にかけてNEJM誌に相次いでProCESS,ProMISe,ARISEの3つの大規模RCTでは,River's EGDTは標準ケアと比して死亡率に有意差なしという結果であったことからこのような推奨となっている.おそらく,まもなく発表になるSSCG 2016でも同様の推奨になると思われる.

 ただし,繰り返す通り,ここでのEGDTとは2001年に報告されたRiver'sらのEGDTプロトコルのことである.近年,CVPやScvO2の有用性が疑問視され乳酸値が重要視されて以降,River’sらのプロトコルをそのまま用いている三次施設はあまりなく,modifyしたEGDT,もしくは心エコー等適宜モニタリングした上での主治医の循環管理スキルで診療にあたっていることが多い.特に前者のmodified EGDTについては本ガイドラインは含めていない.

 また,3つの大規模RCTやそれ以前の報告を見て分かる通り,River's EGDTはあくまでも標準ケアと死亡率に有意差がなかっただけで,死亡率が悪化したわけではない.ここでの標準ケアとは循環管理に長けた集中治療医のスキルに担保された管理であり,ガイドラインではその状況下でRiver's EGDTは害が益を上回る可能性があると判断している.だがこれは,循環管理に長けていなくともRiver's EGDTを行えば集中治療医と同等の治療成績を出すことが可能ともとらえることもできる.

 実際に,これまで数多くの観察研究でRiver's EGDTにより死亡率が改善したとの報告が上がっている.River's EGDTに関してRCTも観察研究も共通して言えるのは,「対照群の死亡率が高い研究ほど有意な死亡率の改善が得られている」である.本来,ガイドラインは専門医以外の,その疾患に不慣れな医師等に標準レベルで診療にあたれるように作られるべきものである.そしてそのようなガイドラインが対象とする医師とは,「対照群の死亡率が高い研究」の方が近い集団であると考えるのが妥当であろう.そういう意味では,そのような医師がRiver's EGDTのプロトコル通りに敗血症性ショック患者の治療を行っていくのは,他にいいモニタリングが確立されていない以上,理に適っているものである.もし,その施設において,敗血症性ショックの死亡率が本邦で報告される死亡率よりも高い(目安として40%以上)のであれば,安易にRiver's EGDTを行わないという選択はすべきではないと思われる.

 どのような循環管理を行うにせよ,血管内容量充填,尿量確保,血圧維持,酸素代謝異常解除をクリアするという目標という意味ではRiver's EGDTと変わらないと言える.
CQ7-2.敗血症性ショックにおいて初期蘇生における輸液量はどうするか?

A.敗血症性ショックにおいて血管内容量減少のある患者の初期輸液は,細胞外液補充液を30 mL/kg以上投与することを推奨する(EC)

※血管内容量減少を評価した後に細胞外液を30 mL/kg以上投与する.
 River's EGDTがRCTで死亡率を改善できなかったことや近年の過剰輸液が予後悪化リスクとなりうるとの指摘がでてきたことで「敗血症性ショックに大量輸液はダメ」と勘違いする人がここ2~3年間SNSでは続出していた.言うまでもなく初期大量輸液は必要なものである.以前に輸液量と死亡の関連性を自施設で後ろ向きに検討したことがあるが,敗血症性ショック疑いで初期大量輸液を行わなかった症例は死亡率100%であった.敗血症性ショック疑いに初期の急速輸液負荷をまったく行わずにカテコラミンだけ流すという対応はほぼ禁忌と言っていい.

 血管透過性亢進と末梢血管拡張による血流分布異常を伴う敗血症性ショックにおいてはある程度の血管内容量充填が必須となる.本ガイドラインでもその根拠論文が提示されている.初期急速輸液負荷なしor少量しか輸液負荷しない,というやり方のままノルアドレナリンを開始すると確かに血圧は上がることもあるが,血管内容量がないまま末梢血管をしめることになり,諸臓器は急速に虚血状態に陥り,臓器障害が進展する.心不全や腎不全がベースにあって初期急速輸液負荷をしないという選択は避けるべきである.また,うっ血を恐れてなのか「200mL/時で輸液」という中途半端な速度で指示する医師を見かけることがあるが,脱水状態であれば有効であっても敗血症性ショックにおいてはほぼ無意味であり,初期急速輸液はあくまでも全開滴下以上の速度(ボーラスと言ってもよい)に近い方がいいだろう.

 なお,急速輸液負荷は中心静脈カテーテルよりも末梢サーフローの方がよいとする考え方がある.これは流体力学(ベルヌーイの法則)によるもので,管腔が短い方が輸液が早く入りやすいという理論である.敗血症性ショック患者は血管が虚脱しており,CV挿入に時間を要することはよくある.よって,末梢2ライン確保して急速輸液を行いつつICUに搬送してからCV挿入でいいものと思われる.
CQ7-3.敗血症の初期蘇生の開始時において心エコーを用いた心機能評価を行うか?

A.敗血症の初期蘇生では,エコーを用いた心機能評価を行うことを推奨する(EC)

※ここで示す「エコーを用いた心機能評価」とは,循環器専門医による詳細な心機能検査ではなく,ベッドサイドで簡易的に行うエコー検査で,心機能(心臓の動き),血管内容量(下大静脈径,心腔内容量)を大まかに測定して初期蘇生の治療方針の決定に役立てることを目的とするものを指す.循環器専門医に限らず,敗血症診療に関わるすべての医師がその手技を習得することが望ましい.
 敗血症性ショックにおける心エコーに関してはRCTによるエビデンスはなく,エキスパートオピニオンとなっている.心エコーが扱えればリアルタイムかつ低侵襲の指標が増えるメリットは大きいと思われる.また,本ガイドライン解説に記載されているように,血管拡張による相対的血管内容量減少によるショックのみならず,敗血症性心筋障害も起こりうることから,心エコーが推奨されるとしている.

 しかしながら,実臨床で「敗血症診療に関わりうるすべての医師がその手技を習得すること」は,たとえ循環器専門医による詳細な心機能検査ではなくともハードルは高いと思われる(それが二次病院の現実である).また,敗血症性心筋障害は重要な概念であるものの,これに対する介入が確立されているわけではない.循環器でも救急・集中治療・麻酔科でもない医師がこの推奨によって突然心エコーを使いこなせるかというと話はまた別である.臨床検査技師に依頼するのもありではあるが,夜間では難しいであろう.また,個人の手技の違いを受けるモニタリング方法でもあるため再現性の問題を有する.個人的には「推奨する」よりも「使用してもよい」くらいのニュアンスでよかったのではないだろうかと考えている.
CQ7-4.初期輸液として,晶質液,人工膠質液のどちらを用いるか?

A.敗血症,敗血症性ショックの初期蘇生に人工膠質液を投与しないことを弱く推奨する(2B)
 ここでの人工膠質液とはヒドロキシエチルスターチ(HES)のことを指す.HESには凝固・止血機能障害,アナフィラキシー様反応,腎障害の懸念があり,特に腎障害が有意に増加したとする報告は多い.また,HESを有効とした報告の多くにかかわっていたのがBoldt J氏であるが,2009年に同氏が報告した論文が捏造であったことが発覚している(Anesth Analg 2011; 112: 498-500).本製剤投与により血管内容量充填が理論上は容易とは考えられるが,RCTではさんざんな結果となっており,本ガイドラインにおけるメタ解析でも,HESによってICU死亡率は減少するものの,90日死亡率,AKI発症率,RRT使用率,RBC輸血投与率は有意に増加する結果となり,害が益を上回るという判定となる.SSCG 2012でも「HESを用いないことを推奨する(Grade 1B)」とより強く否定している.

 ただし,HESに関するほとんどの報告が6% HES(130/0.4)であり(本邦ではボルベン®),本邦で従来から使用されてきたヘスパンダー®,サリンヘス®は海外の報告で使用されたものより低分子の6% HES(70/0.5)であり,報告もなく腎障害の有無などは不明の状態にあり,現時点では本邦では禁忌までとはいかず,慎重投与の状態にある.

 ここでひとつ指摘しておきたい.血管内容量減少の状態では投与したHESの90%は血管内にとどまるが,循環血液量が正常のときは40%しかとどまらないことが知られている(Anesthesiology 2008; 109: 723-40).この違いは,循環血液量が正常の場合,HES投与により血管内容量が増加して血管内皮のglycocalyx構造を弱めることにより血管透過性をむしろ亢進させてしまうためと考えられている.これまでのHESを用いた複数の主要なRCTは,介入群はずっとHESを投与し続けるという,実臨床から見れば非現実的なプロトコルである.当然ながら血管内容量は急速に増大し,血管内充填のレベルを簡単に超えてしまうことは容易に想像でき,益が害を上回る結果となりかねない.実際には,晶質液とHESをうまく組み合わせ,どのタイミングでHESを投与するかまで考慮して投与されるべきものであるが,残念ながらそのようなプロトコルを検討した良質はRCTは存在せず有効性は不明,実際に行われたRCTは両極端な比較を行っていたという経緯がある.
CQ7-5.敗血症性ショックの初期輸液療法としてアルブミンを用いるか?

A.敗血症の初期蘇生における標準的輸液としてアルブミンを用いないことを弱く推奨する(2C).大量の晶質液を必要とする場合や,低アルブミン血症がある場合には,アルブミン製剤の投与を考慮してもよい(EC)
 本ガイドラインのメタ解析では効果推定値として死亡率はRR 0.87であったが,95%信頼区間は1をまたいでいるため益は否定的となっている.ただし,信頼区間の上限は1.02であることから,簡単に効果なしとはとらえられない.GRADEシステム評価であれば,1をまたぐことは不精確性でのマイナスはつくものの,それそのものが推奨ベクトルを決定づけるものではない(p値を考慮しない解釈であるため).本ガイドラインはMINDs2014を採用しているためGRADEとはやや手法が異なる.このあたりを考慮して数値を読み取っていただきたい.

 絶対死亡率に関しては39.3% vs 36.6%であり,絶対差は2.7%.NNTが37であるというのは集中治療領域ではそこまで悪くはない数値と思われ,少なくともある程度の益が存在するだろう.問題は,害が益を上回るかであるが,これまでのRCTの評価ではアルブミン製剤による害が不明であるとしている.これをもって「害が益を上回る」との判定は妥当であるか難しいところであると考える.ここにコストの問題も加わるため,実際に使用するしないは各医師の価値観にゆだねられるところではないかと思われる.エキスパートコンセンサスとして,特定状況下で使用することを考慮してもよいとしており,この一文がある程度のバランスをとっているのかもしれない.
CQ7-6.初期蘇生における輸液反応性のモニタリング方法として何を用いるか?

A.敗血症,敗血症性ショックの初期蘇生においては,用いる指標の限界を考慮して,必要に応じて複数のモニタリングを組み合わせて輸液反応性を評価することを推奨する(EC)

※敗血症の初期蘇生において,特定のモニタリングを推奨するには十分な根拠がなかった.
 CVPがアテにならないと烙印を押された現在,輸液モニタリング方法は戦国時代にある(といっても,初日だけならCVPはアテになる可能性は残されており,そのようなエビデンスもある).本ガイドラインで示すように,SVV,受動的下肢挙上,経肺熱希釈法があるが,比較する対照群がバラバラ等,非直接性に深刻な問題を抱えるほか,各RCTは小規模研究である.これらの結果から上記推奨文になるのは致し方ないことと思われる.

 ただ,私個人では受動的下肢挙上(PLR)テストがどの施設でもやりやすくてオススメではあると考えている.21研究のメタ解析(Intensive Care Med 2016; 42: 1935-47)では,PLRによる心拍出量の変化は,統合感度0.85,統合特異度0.91,AUROCは0.95と高精度であり,PLRによる心拍出量変化の最良閾値は≧10±2%であったとしている.下記も参照されたい.
【文献+レビュー】循環不全における受動的下肢挙上(PLR)による輸液反応性予測(メタ解析)
http://drmagician.exblog.jp/24106425/
CQ7-7.敗血症の初期蘇生の指標に乳酸値を用いるか?

A.敗血症の初期蘇生には,乳酸値を用いた継時的な評価を行うことを推奨する(EC)
 現在既に乳酸値を指標としたEGDTを行っている施設は多いだろう.実際,乳酸値がScvO2より重要と考えている救急集中治療医は多いことが報告されている.また,乳酸クリアランスが大きいほど予後改善に寄与するという報告は複数でてきている.本ガイドラインではPICOに合致するRCTはなかったためエキスパートコンセンサスとしている.ただし,JonesらのLACTATE study(Am J Repir Crit Care Med 2010; 182: 752-61)はRCTであり,サブ解析であれば敗血症患者(4割が該当)での有効性を見ることは可能であり,死亡率改善傾向がみられている.その他の研究も考慮して,乳酸値の継時的評価は益が害を上回ると判断している.SSCG 2012でも「組織低灌流のマーカーとしての乳酸値上昇を伴う患者では乳酸値を正常化させることを目標とした蘇生を提案する(Grade 2C).」としている.

 なお,本ガイドラインでも注意書きがあるが,静脈血で血液ガス分析を行うのは注意が必要である.一般的に動脈血より静脈血の方が乳酸値が高めにでることが知られ,「動脈血乳酸値=静脈血乳酸値ー0.25mmol/L」という計算式もあるが(Eur J Emerg Med 2014; 21: 81-8),差の95%信頼区間は-0.35 to -0.15であり,下限値は決して小さくはなく,また基準値から外れるほどこの差が大きくなることが知られているため,特に敗血症性ショックのような重症患者においては用いるべきではないものと思われる.
CQ7-8.初期蘇生の指標としてScvO2と乳酸クリアランスのどちらが有用か?

A.初期蘇生の指標としてScvO2と乳酸クリアランスのいずれを使用してもよい(EC)
 Jonesらが重症敗血症,敗血症性ショックの患者300例を対象として,EGDTでの初期蘇生目標をScvO2≧70%とする群と乳酸クリアランス≧10%/2hrを目標にする群で比較したRCTを報告しており,院内死亡率は23% vs 17%で統計学的有意差はみられなかったとしている.ただし,その絶対差は6%と開きがあり,乳酸クリアランス群の方が低い傾向である.エビデンスレベルの弱いたった1報のRCTから推奨を出すことは難しいため,エキスパートコンセンサスでいずれでもよいとはなっているが,ScvO2の持続モニタリングはPreSepカテーテルが必要であり,ポイントで計測するならCVから血液採取をしなければならない.実臨床では乳酸クリアランスを用いる方がbetterかもしれない.
CQ7-9.初期輸液に反応しない敗血症性ショックに対する昇圧薬の第一選択としてノルアドレナリン,ドパミンのどちらを使用するか?

A.初期輸液に反応しない敗血症性ショックに対して第一選択薬としてノルアドレナリンを投与することを推奨する(1B)
 これはもうほぼ決着がついた事項といえ,1Bという高い推奨がついている.敗血症性ショック初期は末梢血管拡張を特徴としたwarm shockであり,血管トーヌスを戻す目的でのα1受容体刺激が原則とすべきであり,一方のドパミン(DOA)でα1受容体刺激を期待するためには10γを越える高用量が必要となり,β受容体という不必要な受容体刺激を起こし,不整脈等各種害をきたしうることも考慮すればNAを用いることが病態生理学的に理にかなっており,2012年に報告された敗血症性ショックにおけるNAとドパミン(DOA)を比較したメタ解析(Crit Care Med 2012; 40: 725-30をはじめいくつものメタ解析があり,いずれにおいてもDOAはNAに比して死亡リスクが有意に高い結果となっており,SSCG 2012ではノルアドレナリンが第一選択となっている.
CQ7-10.ノルアドレナリンの昇圧効果が十分でない場合,敗血症性ショックに対してアドレナリンを使用するか?

A.十分な輸液とノルアドレナリン投与を行っても循環動態の維持が困難な敗血症性ショックにはアドレナリンを使用することを弱く推奨する(EC)
 敗血症性ショックにおいてノルアドレナリンとアドレナリンを比較した研究はCATS study(Lancet 2007; 370: 676-84),CAT study(Intensive Care Med 2008; 34: 2226-34)があり,いずれも死亡率等に有意差はみられなかったが,CAT studyのサブ解析では,敗血症性ショック患者においてアドレナリン投与群で有意に頻脈や乳酸アシドーシスが多かったと報告されている.これらを考慮するとノルアドレナリンと比して第一選択として使用すべきではないが,ノルアドレナリンに不応性(0.3~0.5γでも血圧が維持できない)の場合,第二選択薬の候補となりうる(ノルアドレナリン不応性の場合に限定したRCTはない).本ガイドラインでは,心機能が低下した敗血症性心筋症が敗血症性ショックにおいて20-40%合併し,これらがノルアドレナリンに不応性となる可能性があることからもアドレナリン投与が有用な可能性を述べている.

 私自身は頻脈が嫌なのでアドレナリンよりもバソプレシンを優先している.施設によってはアドレナリンを投与しつつ頻脈に対してはβ遮断薬のオノアクト®を使用しているところもあるようである(血圧より先に心拍数を下げる作用があるため).
CQ7-11.ノルアドレナリンの昇圧効果が不十分な敗血症性ショックに対して,バソプレシンを使用するか?

A.十分な輸液とノルアドレナリン投与によっても昇圧効果が不十分な敗血症性ショックに対して,バソプレシンを追加で使用することを弱く推奨する(EC/B)
 血管をかなり強力にしめあげるバソプレシンは(ステロイド等に比して)どうも日本では好まれないようであるが(私自身は経験がないが,四肢疎血で痛い目にあったことがある施設がそこそこあるようである),RCTは存在する.

 敗血症罹患初期は血中バソプレシン濃度は一過性に上昇し,その後徐々に低下することが知られている(Crit Care Med 2007; 35: 33-40).NAとバソプレシンを比較したVASST study(N Engl J Med 2006; 354: 2564-75)では,28日死亡率に有意差がでなかったが,サブ解析で低用量ステロイド療法を施行しなければならないような難治性warm shockにおいては,バソプレシンはNAより28日死亡率を有意に低下させたと報告している(Crit Care Med 2009; 37: 811-8).実際,カテコラミン抵抗性の患者にNA単独とNA+バソプレシン併用を施行・比較検討したところ,併用した方が頻脈は減少し,平均動脈圧や心拍出量が増加,腸管血流が維持できたと報告している(Circulation 2003; 107: 2313-9).また,バソプレシンには尿量とクレアチニンクリアランスを増加させることが報告されている(Anesthesiology 2002; 96: 576-82)

 本ガイドラインでは2報のメタ解析を行っており,死亡率,合併症発症率に有意差ないがバソプレシン投与群が優位な傾向,ICU在室日数は有意に約1日短縮という結果であり,おそらく益が害を上回ると判定されている.SSCG 2012では「平均動脈圧(MAP)を上昇させる,またはノルアドレナリンを減量する目的で,ノルアドレナリンにバソプレシン(0.03U/min)を追加してもよい(Ungraded).」敗血症による血圧低下に対して初期に選択される昇圧剤としては低用量バソプレシンは推奨されず,0.03-0.04 U/min以上のバソプレシンは(他の昇圧剤で適切な平均動脈圧が得られない場合の)代替療法として温存すべきである(Ungraded).」とされている.
CQ7-12.敗血症性ショックの心機能不全に対して,ドブタミンを使用するか?

A.十分な輸液とノルアドレナリン投与を行っても循環動態の維持が困難であり,心機能が低下している敗血症性ショックにおいては,ドブタミンを使用することを弱く推奨する(EC/C)

※本CQは敗血症によって心機能が低下した状態を想定しており,基礎疾患に心不全や不整脈が存在する場合は,個別の評価,対応が必要である.また,心機能が低下している敗血症性ショックの患者では,循環管理が複雑になるため,集中治療や循環管理に慣れた施設で治療することが望ましい.
 River's EGDTにおいてドブタミンは推奨薬に君臨し続けてきたが,ノルアドレナリン(NA)不応性の際にドブタミン(DOB)使用が妥当か否かを検討したRCTは存在しないまま今日まできている.本ガイドラインで採用したRCTは2報あるが,アドレナリン(AD)がからんでおり,「AD vs NA+DOB」と「AD+NA vs DOB+NA」となっており,ややPICOとは異なるが,検討を行っている.これらの結果は,各アウトカムに有意差はないもののDOBがある群の方が優れている傾向がみられている.さらに,難治例であるが死亡率が40%前後にとどまっていることも考慮し,ドブタミンを条件つきで弱く推奨するとしている.また,ここでも敗血症性心筋症について触れている.

 なお,SSCG 2012では「以下の場合,ドブタミンを投与開始または(使用しているなら)昇圧剤に追加して20μg/kg/minまで投与することを推奨する.(a) 心充満圧は上昇しているが低心拍出状態が疑われる心筋機能障害,(b) 適切な血管内容量と適切な平均動脈圧であるにもかかわらず,組織低灌流徴候が持続している場合(Grade 1C)」とやはり条件付きとなっている.

←日本版敗血症診療ガイドライン2016(4) 抗菌薬,免疫グロブリン
日本版敗血症診療ガイドライン2016(6) ステロイド

[PR]
by DrMagicianEARL | 2017-01-11 20:38 | 敗血症 | Comments(0)

by DrMagicianEARL