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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】ICU終末期患者の人工呼吸管理の中止方法と患者・家族・医療スタッフのアウトカム(ARREVE study)

■ICU患者の終末期と考えられる状況でのwithdrawal(ECMOや人工呼吸器,投与中の薬剤中止)やwithholding(これ以上の積極的な治療を行わない)はどのようにされているでしょうか?これらのEnd-of-Lifeケアについては3学会合同の指針が示されており,(1)人工呼吸器,ペースメーカー(ICDの設定変更を含む),補助循環装置などの生命維持装置を終了する,(2)血液透析などの血液浄化を終了する,(3)人工呼吸器の設定や昇圧薬,輸液,血液製剤などの投与量など呼吸や循環の管理方法を変更する,(4)心停止時に心肺蘇生を行わない,が提示されており,いずれを行うにしても患者や家族らに十分説明して合意を得て進め,同時に緩和ケアを行う(筋弛緩薬投与などの手段により死期を早めるようなことは行わない),としています.終末期の定義は日本救急医学会の「救急医療における終末期医療に関する提言」で以下のように定められています(ただし,実臨床ではこの判断が難しいことは当然ながらしばしばある).
①不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認後なども含む)と診断された場合
②生命が新たに開始された人工的な装置に依存し,生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆的であり,移植などの代替手段もない場合
③その時点で行われている治療に加えて,さらに行うべき治療方法がなく,現状の治療を継続しても数日以内に死亡することが予測される場合
④悪性疾患や回復不可能な疾病の末期であることが,積極的な治療の開始後に判明した場合

■では実際にはどのように家族に説明するかですが,ICU患者である場合,癌患者や超高齢者と比較してなかなか説明のハードルが高いと感じる医師も多いです.その結果,治る見込みがほぼない状況にある患者にずるずると侵襲的治療が継続されてしまうケースもあります.どのように説明するかの正解となるようなものがあるわけではないですが,私自身は,毎日家族に病状の詳しい説明を行い(時には1日に2回),ベッドサイドでもモニターを含め一緒に状態を見てもらい,徐々に助からないであろう状況を受け入れてもらうようにしています.この過程で,緩和ケアとwithholdingは最初の段階で同意を得て開始します.そして日々の家族への説明等で受け入れ具合を見てwithdrawalの話を出します.このようなEnd-of-Lifeケアを行っていく上で,日本緩和医療学会が行っている緩和ケア研修会(PEACE)は参考になりますので,ぜひ受けられた方がいいと思います.

■ただし,これまでの経験で,私も抜管を行ったことはまだありません.ここに踏み込むにはかなり勇気がいりますし,まさに「withdrawalよりもwithholdingの方が医療者の心理的負担は少ない」というエビデンスをダイレクトに痛感します(Am J Public Health 1993; 83: 14-23).実際に,人工呼吸器のwithdrawalは日本ではほぼ行われていないに等しい行為です.終末期で抜管すれば患者は平均して1時間で確実に死に至るため(Chest 2010; 138: 289-97)躊躇するのは当然のことかと思われます.仮にもし行うにしても倫理委員会にお伺いをたてるなどする必要があるでしょう.今回紹介する論文はそのICU患者の人工呼吸管理の中止について検討した報告です.

■このARREVE studyでは,前向き観察研究で,終末期のICU人工呼吸患者のwithdrawの手段としてimmediate extubation(即時抜管)とterminal weaning(終末期weaning) を比較しています.即時抜管では,口腔内の分泌物や喀痰を十分に吸引した後に抜管し,すぐに加湿された酸素をマスクで投与して経過をみます.一方,終末期weaningは,呼吸回数やPEEP,酸素濃度を30~60分ごとに低下させていき,最終的にチューブを残した状態で維持できるのであればTピースで過ごすなどします.結果は,即時抜管の方が気道閉塞や喘ぎ呼吸,疼痛のBPSスコアが高いなどが生じやすいが,ICUスタッフの仕事量は少なく,複雑な悲嘆・PTSD・不安・抑うつは同等という結果でした.これらの結果から,緩和ケアの観点からいけば私自身は終末期weaningを選びたいところですが,海外では即時抜管もそれなりにあるようです.抜管すれば家族と肉声で会話できるというメリットがあるのかもしれません.
重症疾患患者の人工呼吸換気の中止(withdraw)における終末期weaningまたは即時抜管(ARREVE study)
Robert R, Le Gouge A, Kentish-Barnes N, et al. Terminal weaning or immediate extubation for withdrawing mechanical ventilation in critically ill patients (the ARREVE observational study). Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936597

【目 的】
人工呼吸器の中止(withdrawal)において,即時抜管か終末期weaningかの相対的なメリットは,特に患者や近親者においては議論の余地がある.

【方 法】
本前向き観察多施設共同研究(ARREVE)は,ICUチームによる選択での終末期weaningと即時抜管を比較するためフランスの43のICUにおいて行われた.終末期weaningは換気補助の量の漸減とし,即時抜管は換気補助の事前の減量なしの抜管とした.主要評価項目は,死後3ヶ月後の近親者の心的外傷後ストレス症状(Impact of Event Scale Revised, IES-R)とした.副次評価項目は,近親者の複雑な悲嘆(complocated grief),不安,抑うつ症状,死までの経過における患者の快適さ,スタッフの仕事量とした.

【結 果】
我々は終末期weaningした248例の患者の近親者212名(85.5%),即時抜管した210例の患者の近親者190名(90.5%)を登録した.即時抜管は,終末期weaningと比較して,気道閉塞や高い平均Behavioural Pain Scaleスコアと関連していた.近親者において,3ヶ月後のIES-Rスコアは両群間で有意差はみられず(31.9±18.1 vs 30.5±16.2; 調整差 −1.9; 95%CI −5.9 to 2.1; p=0.36),複雑な悲嘆,不安,抑うつスコアにおいても差はみられなかった.ナースは,即時抜管群の方が仕事量スコアが低かった.

【結 論】
終末期weaningと比較して,即時抜管は,それぞれの方法が適用されたICUにおいて標準的な診療を構成する場合,近親者の心理的状態の差異と関連していなかった.患者は即時抜管の方が気道閉塞と喘ぎ呼吸が多かった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-28 00:00 | 文献 | Comments(0)

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