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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

2017年 03月 02日 ( 1 )

■集中治療領域においては,非外傷性の貧血に対しては制限輸血と非制限輸血でアウトカムは同等,もしくは制限輸血の方が好ましいという結果が各RCTで得られており,その結果の目安として,Hb<7.0 g/dL(心疾患を有する患者では<8.0 g/dL)を輸血開始指標とすることが望ましく,ガイドラインでもそのように推奨されています.今回紹介する研究は,敗血症性ショックを発症した癌患者での輸血制限戦略の検討です.結果は,死亡率において制限戦略の方が予後不良の傾向がみられたというものです.

■ただし,こういう結果となった要因やlimitationは多数あると思います.ただでさえ敗血症にも感染巣による治療戦略の違いなどの要因があることに加え,癌患者という集団を対象にする以上,StageやPS,癌の種類も多彩で,敗血症で救命しても癌で死亡しうる(実際に90日死亡率は6~7割と非常に高い数字),癌患者集団はベースラインのHb濃度が低い,ということを考慮すると,単施設での300例では検討不十分となると思われます.また,輸血開始基準に関係なく,組織低灌流(高乳酸血症,低ScvO2)であるほど輸血で有意な改善が得られるという報告(Rev Bras Ter Intensiva 2015; 27: 36-43)もあり,敗血症病態でもこれが関与している可能性もあり,詳細な検討が必要です.

■もっとも,これまで制限群が非制限群よりも好ましい結果が得られていた根拠の大きな部分として白血球除去製剤の普及率が低さがあり,これは近年大きく変わっています.ABC study(JAMA 2002; 288: 1499-507)とSOAP study(Anesthesiology 2008; 108: 31-9)では白血球除去製剤の普及率は19%から76%に向上しており,それに伴って輸血を行うことによる有効性が増加しています.また,輸血製剤による感染症リスクも製剤管理の改善により大きく減少しました.よって,輸血の安全性が向上していくと,推奨されるHb閾値も変わる(上がっていく)可能性は否定できません.
重症疾患(敗血症性ショック)に罹患した癌患者における非制限vs制限輸血戦略:重症疾患癌患者における輸血必要性の無作為化比較試験
Bergamin FS, Almeida JP, Landoni G, et al. Liberal Versus Restrictive Transfusion Strategy in Critically Ill Oncologic Patients: The Transfusion Requirements in Critically Ill Oncologic Patients Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2017 Feb 24. [Epub ahead of print]
PMID: 28240687

Abstract
【目 的】
敗血症性ショックの癌患者において,赤血球輸血の非制限戦略と比較して,制限戦略が28日死亡率を減少させるかについて評価した.

【方 法】
本研究は大学病院で行われた単施設二重盲検無作為化比較試験である.対象はICU入室から6時間以内の敗血症性ショックの成人癌患者とした.患者はICU在室中に赤血球輸血の非制限群(ヘモグロビン濃度<9g/dLで輸血)または制限群(Hb<7g/dL)に無作為化に割り付けされた.

【結 果】
患者は149例が非制限群に,151例が制限群に無作為割り付けされた.非制限群の患者は制限群の患者よりもより多くの赤血球輸血単位を受けていた(1[0-3] vs 0[0-2] 単位; p<0.001).無作為化から28日後の時点でICU在室期間や入院期間に差がなく,非制限群の死亡率(本研究の主要評価項目)は45%(67例),制限群は56%(84例)であった(HR 0.74; 95%CI 0.53-1.04; p=0.08).無作為化から90日後の時点で死亡率は非制限群の方が制限群よりも低かった(59% vs 70%,HR 0.72; 95%CI 0.53-0.97; p=0.03).

【結 論】
敗血症性ショックの癌患者においては,輸血制限戦略よりも非制限戦略の方が生存において好ましい結果が観察された.本結果は,既知の仮説および他の研究とは反対の結果であり,確認する必要がある.

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by DrMagicianEARL | 2017-03-02 15:57 | 敗血症 | Comments(0)

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