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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:文献( 67 )

■腸内細菌叢移植(糞便微生物移植:FMT)の研究が近年さかん,重篤なCDIに対して有効との報告が出てきた後に様々な疾患でも臨床応用を検討すべく研究が行われています.まあある意味最強のprobioticsと言えますかね.今回は肝性脳症に有効だったというRCTが報告されましたので紹介します.事前に5日間の広域抗菌薬投与後にFMTを行うというプロトコルで,対照群と比較して安全性が高く,肝性脳症は150日間もの間ゼロに抑えたとのことです(対照群では50%に発生).効くもんですねぇ・・・
合理的に選択された便の提供者からの糞便微生物移植は肝性脳症を改善させる:無作為化臨床試験
Bajaj JS, Kassam Z, Fagan A, et al. Fecal microbiota transplant from a rational stool donor improves hepatic encephalopathy: A randomized clinical trial. Hepatology 2017; 66: 1727-38
PMID: 28586116

Abstract
【背 景】
近年,肝性脳症は微生物叢の異常(dysbiosis)に関連した標準ケアがあるにもかかわらず再入院の原因となっている.糞便微生物移植(Fecal microbiota transplantation :FMT)は細菌叢異常を改善させる可能性があるが,肝性脳症での研究はなされていない.

【目 的】
本研究の目的は,便提供者から合理的に選択され用いられるFMTが標準ケア単独と比較して肝性脳症再発において安全かどうかを検討することである.

【方 法】
標準ケアで肝性脳症の再発を有した肝硬変の男性外来患者を対象とした5ヶ月間の観察期間の本非盲検無作為化臨床試験は1:1に無作為化された.FMTに割り付けられた患者は5日間の広域スペクトラムの抗菌薬の事前投与を受け,肝性脳症のない適切な微生物叢の同じドナーからのFMT単回注腸を受けた.観察は無作為化から5,6,12,35,150日目に行った.主要評価項目はFMT関連重篤有害事象を用いた,標準ケアと比較したFMTの安全性とした.副次評価項目は有害事象,認知機能,微生物叢,代謝の変化とした.

【結 果】
両群の患者は全ての背景因子が同等であり,研究終了まで観察された.抗菌薬の事前投与を行ったFMTは良好な忍容性であった.FMT患者の重篤な有害事象は2例(20%)であったのに対し,8例(80%)の標準ケア患者は計11の重篤な有害事象を有していた(p=0.02)標準ケア群で5例,FMT群で0例の患者で肝性脳症の再発があった(p=0.03).認知機能はFMTで改善したが,標準ケアでは改善しなかった.Model for End-Stage Liver Disease (MELD) スコアは抗菌薬事前投与で一時的に悪化したが,FMT後はベースラインまで改善した.抗菌薬投与後,有益な微生物群や微生物多様性の減少によりProteobacteriaの増加が生じた.しかし,FMTは多様性と有益な微生物群を増加させた.標準ケア群の微生物叢とMELDスコアは全体にわたって同様であった.

【結 論】
再発性肝性脳症を伴う肝硬変患者において,合理的に選択されたドナーからのFMTは入院を減少させ,認知機能や微生物叢異常を改善させる.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-07 15:55 | 文献 | Comments(0)
■原稿執筆に追われて話題の論文を紹介するのがだいぶ遅れてしまいましたが,NUTRIREA-2 studyがLancetにonline publishされました.この研究は人工呼吸器を装着したショック患者において,早期経腸栄養と早期静脈栄養をガチンコ勝負させたものです.結果は死亡率,感染症発生率に有意差なし,消化管合併症は早期経腸栄養群の方が有意に多かったということで,安全監視委員会の勧告により2410例を登録した時点で研究中止となっています.これだけ見ると早期静脈栄養の時代到来か?と一瞬思いましたが,研究デザインを見ると首をかしげたくなります.少なくとも私は本研究結果を見て早期経腸栄養をやめる気はまったくありません.

■死亡率が高めなのは気になりますがそれ以上に気になることがあります.2ヶ月前にpublishされたEAT-ICU trial(Intensive Care Med 2017; 43: 1637-47)の時もそうだったんですが,実臨床においてpermissive underfeedingが主流のこの時代になぜフルカロリー量の栄養投与設計でRCTを行うんでしょうかね・・・?そりゃいきなりそんな量入れたら消化管合併症増えるに決まってるでしょうとしか言いようがありません.この投与設計ではネガティヴな結果になるのは当然だろうなというのが率直な感想です.

■2012年に報告されたEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)ではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.おそらく今回のNUTRIREA-2 trialもEAT-ICU trialもoverfeeding傾向かと思われ,必要とするインスリン量も多くなります.全体の死亡率がやや高めなのはそれが関連しているのかなとも思ってます.
ショックを伴う人工呼吸患者における早期経腸栄養vs早期静脈栄養:無作為化多施設共同オープンラベル並行群間研究(NUTRIREA-2 trial)
Reignier J, Boisramé-Helms J, Brisard L, et al; NUTRIREA-2 Trial Investigators; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) group. Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallel-group study (NUTRIREA-2). Lancet 2017 Nov 8 [Epub ahead of print]

Abstract
【背 景】
早期栄養投与ルートが重症疾患患者の予後に影響を与えるかについては議論の余地がある.我々は早期静脈栄養を第一選択とするよりも早期経腸栄養を第一選択とする方が予後良好であると仮説をたてた.

【方 法】
フランスの44施設の集中治療室(ICU)で行われた本無作為化多施設共同オープンラベル並行群間研究(NUTRIREA-2 trial)では,侵襲的人工呼吸管理とショックに対して血管作動薬投与を受けている成人(18歳以上)を,標準カロリー(20-25kcal/kg/日)を目標として挿管から24時間以内に静脈栄養群と経腸栄養群に1:1に無作為に割り付けた.無作為化は可変サイズの順列ブロックを用いてセンターで層別化された.栄養投与ルートはマスクできないため,医師と看護師の盲検化はできなかった.ショックが改善した場合(24時間連続して血管作動薬投与がなく,動脈血乳酸値<2mmol/L)に,静脈栄養を受けている患者は少なくとも72時間後には経腸栄養に変更できた.主要評価項目はIntention-to-treat集団で無作為化から28日後の死亡率とした.本研究はClinicalTrials.govの番号NCT01802099で登録されている.

【結 果】
2回目の中間解析で,独立したデータ安全監視委員会が,患者の登録を完了することが試験結果を大きく変える可能性は低いと判断し,患者登録を中止することを勧告した.2013年3月22日から2015年6月30日までで2410例の患者が登録され,1202例が経腸栄養群に,1208例が静脈栄養群に無作為に割り付けられた.28日目までに,経腸栄養群で1202例中の443例(37%),静脈栄養群で1208例中422例(35%)が死亡した(絶対差推定 2.0%; 95%CI -1.9 to 5.8; p=0.33).ICU関連感染症の発生率は経腸栄養群(173例[14%])と静脈栄養群(194例[16%]; HR 0.89; 95%CI 0.72 to 1.09; p=0.25)で差はみられなかった.静脈栄養群と比較して,経腸栄養群は嘔吐(406例[34%] vs 246例[20%]; HR 1.89; 95%CI 1.62-2.20; p<0.0001),下痢(432例[36%] vs 393例[33%]; HR 1.20; 95%CI 1.05 to 1.37; p=0.009),腸管虚血(19例[2%] vs 5例[<1%]; HR 3.84; 95%CI 1.43-10.3; p=0.007),急性腸管偽性閉塞(11例[1%] vs 3例[<1%]; HR 3.7; 95%CI 1.03-13.2; p=0.04)の発生率が高かった.

【結 論】
ショックを伴う成人重症患者において,早期静脈栄養と比較して,早期経腸栄養は死亡率や二次感染を減少させず,消化管合併症リスクの増加に関連していた.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-01 16:41 | 文献 | Comments(0)
■機械的心肺蘇生が日本でも普及していっていますが,実際の効果は?というと,徒手的CPRと比較して良好とは言い難いです.5報RCT,12206例のメタ解析(Ann Emerg Med 2016; 67: 349-60)でも生存入院・生存退院・神経予後などの臨床アウトカムを改善しなかったと報告されています.

■今回紹介する論文は,日本のデータでの院外心停止症例に対する機械的CPRの有効性を検討した多施設共同前向き研究です(林田先生,JAHA publishおめでとうございます).結果は,交絡因子で調整すると,機械的CPRは生存退院をむしろ減少させてしまうリスクがあるとのことです.こうなってくるとなかなか導入しづらくなってきますね.
救急部門に搬送された非外傷性院外心停止の成人患者における機械的心肺蘇生と生存退院:日本における前向き多施設共同観察研究(SOS-KANTO[Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study)
Hayashida K, Tagami T, Fukuda T, et al. Mechanical Cardiopulmonary Resuscitation and Hospital Survival Among Adult Patients With Nontraumatic Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest Attending the Emergency Department: A Prospective, Multicenter, Observational Study in Japan (SOS‐KANTO [Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study). J Am heart Assoc 2017; 6: e007430

Abstract
【背 景】
日本では,救急部に搬送される院外心停止患者の機械的心肺蘇生(mCPR)が広く普及している.本研究の目的は,救急部門におけるmCPRと臨床アウトカムの関連性を検討することである.

【方 法】
本前向き多施設共同観察研究では,搬入時に心停止が持続している院外心停止の成人患者が登録された.主要評価項目は退院時生存率とした.副次評価項目は.自己心拍再開と入院の成功とした.mCPRとアウトカムの関連性を分析するため,一般的な推定式を使用して潜在的交絡因子および施設内のクラスタリング効果を調整した多変量解析を使用した.

【結 果】
2012年1月1日から2013年3月31日までで6537例の院外停止患者が登録され,5619例(86.0%)が徒手的CPR群,918例(14.0%)がmCPR群であった.救急部門においてこれらの患者のうち28.1%(1801/6419)で自己心拍再開が見られ,20.4%(1175/5754)が入院となり,2.6%(168/6504)が生存退院し,1.2%(75/6419)は入院から1ヶ月時点で良好な神経学的予後であった.多変量解析ではmCPRは生存退院(調整後OR 0.40; 95%CI 0.20-0.78; p=0.005),自己心拍再開(調整後OR 0,71; 95%CI 0.53-0.94; p=0.018),入院(調整後OR 0.57; 95%CI 0.40-0.80; p=0.001)の減少に関連していた.

【結 論】
潜在的交絡因子で調整すると,成人の非外傷性院外心停止後の救急部門でのmCPRは良好な臨床アウトカムの減少に関連していた.mCPRがこれらの患者において有益となる可能性がある状況を明らかにするためにさらなる検討が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-11-02 13:58 | 文献 | Comments(0)
■世界に先駆けてハイブリッドER(外傷初療室でIVRやCTも可能)を導入した大阪急性期・総合医療センターからその成果となる論文が発表されました.前後比較研究になりますが素晴らしい治療成績です.患者移送リスクを排除し,迅速なdamage control resuscitationを実現した影響は大きいと思います.現在日本各地の施設でハイブリッドERが導入されつつあり,海外からも日本式ERとして注目が集まっています.
迅速な全身CT,手術,IVRをすべて1つの外傷蘇生室で行う最新のワークフローによる生存利益:後ろ向き歴史的対照研究
Kinoshita T, Yamakawa K, Matsuda H, et al. The Survival Benefit of a Novel Trauma Workflow that Includes Immediate Whole-body Computed Tomography, Surgery, and Interventional Radiology, All in One Trauma Resuscitation Room: A Retrospective Historical Control Study. Ann Surg 2017 Sep 26[Epub ahead of print]
PMID: 28953551

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,重症外傷におけるIVR(interventional radiology)-CT(computed tomography)システムを用いた新しい外傷ワークフローの影響を評価することである.

【背 景】
2011年8月に我々の外傷蘇生室においてIVR-CTシステムを導入した.我々はこれを,1つの場所で外傷で必要な全検査と治療が行えるものとして,ハイブリッド救命救急室(ER)と名付けた.

【方 法】
日本で行われた本後ろ向き歴史的対照研究では,重症(外傷重症度スコア≧16)鈍的外傷患者を連続的に登録した.患者は,標準群(2007年8月から2011年7月)とハイブリッドER群(2011年8月から2015年7月)の2つに分類した.主要評価項目は28日死亡率に設定した.副次評価項目は,死亡原因と到着からCTおよび手術までの時間とした.臨床的に重要な変数で調整した多変量ロジスティック回帰解析を臨床アウトカムを評価するために行った.

【結 果】
696例の患者が登録され,360例が標準群,336例がハイブリッドER群に登録された.ハイブリッドER群は死亡リスク減少に有意に関連し(調整後OR 0.50; 95%CI 0.29-0.85; p=0.011),出血による死亡を減少させた(調整後OR 0.17; 95%CI 0.06-0.47; p=0.001).CT導入までの時間(標準群26分(21-32) vs ハイブリッドER群11分(8-16); p<0.0001),緊急処置までの時間(68分(51-85) vs 47分(37-57);p<0.0001)はいずれもハイブリッドER群の方が短かった.

【結 論】
ハイブリッドERで実現される,患者の移動なしでの迅速なCT診断と出血コントロールを含むこの新しい外傷ワークフローは重症外傷の死亡率を改善させる可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2017-10-06 11:09 | 文献 | Comments(0)
■ICU患者の終末期と考えられる状況でのwithdrawal(ECMOや人工呼吸器,投与中の薬剤中止)やwithholding(これ以上の積極的な治療を行わない)はどのようにされているでしょうか?これらのEnd-of-Lifeケアについては3学会合同の指針が示されており,(1)人工呼吸器,ペースメーカー(ICDの設定変更を含む),補助循環装置などの生命維持装置を終了する,(2)血液透析などの血液浄化を終了する,(3)人工呼吸器の設定や昇圧薬,輸液,血液製剤などの投与量など呼吸や循環の管理方法を変更する,(4)心停止時に心肺蘇生を行わない,が提示されており,いずれを行うにしても患者や家族らに十分説明して合意を得て進め,同時に緩和ケアを行う(筋弛緩薬投与などの手段により死期を早めるようなことは行わない),としています.終末期の定義は日本救急医学会の「救急医療における終末期医療に関する提言」で以下のように定められています(ただし,実臨床ではこの判断が難しいことは当然ながらしばしばある).
①不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認後なども含む)と診断された場合
②生命が新たに開始された人工的な装置に依存し,生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆的であり,移植などの代替手段もない場合
③その時点で行われている治療に加えて,さらに行うべき治療方法がなく,現状の治療を継続しても数日以内に死亡することが予測される場合
④悪性疾患や回復不可能な疾病の末期であることが,積極的な治療の開始後に判明した場合

■では実際にはどのように家族に説明するかですが,ICU患者である場合,癌患者や超高齢者と比較してなかなか説明のハードルが高いと感じる医師も多いです.その結果,治る見込みがほぼない状況にある患者にずるずると侵襲的治療が継続されてしまうケースもあります.どのように説明するかの正解となるようなものがあるわけではないですが,私自身は,毎日家族に病状の詳しい説明を行い(時には1日に2回),ベッドサイドでもモニターを含め一緒に状態を見てもらい,徐々に助からないであろう状況を受け入れてもらうようにしています.この過程で,緩和ケアとwithholdingは最初の段階で同意を得て開始します.そして日々の家族への説明等で受け入れ具合を見てwithdrawalの話を出します.このようなEnd-of-Lifeケアを行っていく上で,日本緩和医療学会が行っている緩和ケア研修会(PEACE)は参考になりますので,ぜひ受けられた方がいいと思います.

■ただし,これまでの経験で,私も抜管を行ったことはまだありません.ここに踏み込むにはかなり勇気がいりますし,まさに「withdrawalよりもwithholdingの方が医療者の心理的負担は少ない」というエビデンスをダイレクトに痛感します(Am J Public Health 1993; 83: 14-23).実際に,人工呼吸器のwithdrawalは日本ではほぼ行われていないに等しい行為です.終末期で抜管すれば患者は平均して1時間で確実に死に至るため(Chest 2010; 138: 289-97)躊躇するのは当然のことかと思われます.仮にもし行うにしても倫理委員会にお伺いをたてるなどする必要があるでしょう.今回紹介する論文はそのICU患者の人工呼吸管理の中止について検討した報告です.

■このARREVE studyでは,前向き観察研究で,終末期のICU人工呼吸患者のwithdrawの手段としてimmediate extubation(即時抜管)とterminal weaning(終末期weaning) を比較しています.即時抜管では,口腔内の分泌物や喀痰を十分に吸引した後に抜管し,すぐに加湿された酸素をマスクで投与して経過をみます.一方,終末期weaningは,呼吸回数やPEEP,酸素濃度を30~60分ごとに低下させていき,最終的にチューブを残した状態で維持できるのであればTピースで過ごすなどします.結果は,即時抜管の方が気道閉塞や喘ぎ呼吸,疼痛のBPSスコアが高いなどが生じやすいが,ICUスタッフの仕事量は少なく,複雑な悲嘆・PTSD・不安・抑うつは同等という結果でした.これらの結果から,緩和ケアの観点からいけば私自身は終末期weaningを選びたいところですが,海外では即時抜管もそれなりにあるようです.抜管すれば家族と肉声で会話できるというメリットがあるのかもしれません.
重症疾患患者の人工呼吸換気の中止(withdraw)における終末期weaningまたは即時抜管(ARREVE study)
Robert R, Le Gouge A, Kentish-Barnes N, et al. Terminal weaning or immediate extubation for withdrawing mechanical ventilation in critically ill patients (the ARREVE observational study). Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936597

【目 的】
人工呼吸器の中止(withdrawal)において,即時抜管か終末期weaningかの相対的なメリットは,特に患者や近親者においては議論の余地がある.

【方 法】
本前向き観察多施設共同研究(ARREVE)は,ICUチームによる選択での終末期weaningと即時抜管を比較するためフランスの43のICUにおいて行われた.終末期weaningは換気補助の量の漸減とし,即時抜管は換気補助の事前の減量なしの抜管とした.主要評価項目は,死後3ヶ月後の近親者の心的外傷後ストレス症状(Impact of Event Scale Revised, IES-R)とした.副次評価項目は,近親者の複雑な悲嘆(complocated grief),不安,抑うつ症状,死までの経過における患者の快適さ,スタッフの仕事量とした.

【結 果】
我々は終末期weaningした248例の患者の近親者212名(85.5%),即時抜管した210例の患者の近親者190名(90.5%)を登録した.即時抜管は,終末期weaningと比較して,気道閉塞や高い平均Behavioural Pain Scaleスコアと関連していた.近親者において,3ヶ月後のIES-Rスコアは両群間で有意差はみられず(31.9±18.1 vs 30.5±16.2; 調整差 −1.9; 95%CI −5.9 to 2.1; p=0.36),複雑な悲嘆,不安,抑うつスコアにおいても差はみられなかった.ナースは,即時抜管群の方が仕事量スコアが低かった.

【結 論】
終末期weaningと比較して,即時抜管は,それぞれの方法が適用されたICUにおいて標準的な診療を構成する場合,近親者の心理的状態の差異と関連していなかった.患者は即時抜管の方が気道閉塞と喘ぎ呼吸が多かった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-28 00:00 | 文献 | Comments(0)
■ICUでの栄養管理では至適投与カロリーはいまだにわかっておらず,初期は予想される目標エネルギー量より少ないpermissive underfeedingが主流になっています.その目標エネルギー量の一定の指標として,間接熱量計での測定結果でも推算式(Harris-Benedictの式や25-30kcal/kg/日の簡易式)でもよいとガイドライン(日集中医誌 2016; 23: 185-281)で推奨されています.しかし,間接熱量計を用いた上での個々のICU患者へのエネルギーおよびカロリー必要量の投与を検討したRCTはこれまでありませんでした.

■今回紹介する論文は,ICUの人工呼吸器患者に対する間接熱量計と24時間畜尿(尿素窒素)を用いて必要栄養量を投与する栄養管理(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)の有効性を,従来の標準的な25kcal/kg/dayでの栄養管理と比較したRCTであるEAT-ICU trialです.

■ただ,このEGDN群,Methodを見たら明らかに投与エネルギー量が多いんですよね.実際の結果を見ると,EGDN群と標準ケア群の投与エネルギー量はまるでEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)のエネルギー投与量を見ているかのようです.EDENではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.これらから普通に考えればEAT-ICU trialのEGDN群は分が悪いです(なのでなんでこんな研究デザインにしたのか首をかしげたくなります).

■血糖値を見てみると,15mmol/L(270mg/dL)以上になった患者の割合は52% vs 25%でEGDN群がほぼ倍(RR 2.06, 95%CI 1.40-3.03)で,当然ながらインスリン使用量も中央値で86 vs 0(RR 262, 95%CI 71-453)でEGDN群の方が多いという結果でした.高血糖はICUAWのリスク因子でもありますし(Lancet 2013; 381: 1715),インスリン投与量が増えたぶん筋肉の質も落ちやすくなります(Crit Care Med 2013; 41: 2298-309)

■案の定,結果はネガティブでした.まああくまでも間接熱量計が有効かどうかを見る研究ですので,この結果から,あえて間接熱量計を院内に導入する必要はないかなというのが感想です.
成人集中治療患者における早期目標到達型栄養vs標準ケア:単施設無作為化評価者盲検EAT-ICU trial
Allingstrup MJ, Kondrup J, Wiis J, et al. Early goal-directed nutrition versus standard of care in adult intensive care patients: the single-centre, randomised, outcome assessor-blinded EAT-ICU trial. Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936712

Abstract
【目 的】
成人ICU患者における早期目標到達型栄養(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)vs標準栄養ケアの効果を評価する.

【方 法】
我々は,緊急入院で3日間を超えてICUに在室することが予測された人工呼吸器を装着したICU患者を無作為化した.EGDN群では,経腸と静脈栄養を用いて最初の試験日から100%の必要度をカバーすることを目的として間接熱量計と24時間畜尿により栄養必要度を推定した.標準ケア群では,経腸栄養で25kcal/kg/日を投与することを目標とし,もし7日目までに満たさなければ患者は静脈栄養による補充を受けた.主要評価項目は6ヶ月時点でのSF-36の身体的サマリー(PCS:physical component summart)スコアとした.非回答者のデータについては複数の代用を行った.

【結 果】
203例の患者が無作為化され,Intention-to-Treat解析に199例が登録された.ベースラインの変数は両群間で合理的にバランスがとれていた.標準ケア群と比較して,EGDN群ではICUにおけるエネルギーや蛋白の不足が少なかった.6ヶ月時点でのPCSスコアは二群間で差がなく(平均差 0.0; 95%CI -5.9 to 5.8; p=0.99),死亡率,臓器不全,ICUにおける重篤な有害反応や感染症,ICU在室期間や入院期間,90日時点での生命維持装置なしの生存期間も有意差がみられなかった.

【結 論】
急性期に入院し,人工呼吸器を装着した成人ICU患者において,標準栄養ケアと比較してEGDNは6ヶ月時点での身体的QOLや他の重要なアウトカムに影響を与えなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-26 00:00 | 文献 | Comments(0)
■近年,重症患者の高酸素血症の有害性が多数報告されており,急性心筋梗塞(AMI)でもその懸念が指摘されてきました.低酸素血症のないAMIに酸素投与を行うとどうなるかですが,これまでの報告では,冠動脈血流量を7.9-28.9%有意に減少させたとする研究(Am Heart J 2009; 158: 371-7)や梗塞範囲,不整脈,心筋梗塞再発を有意に増加させたとするRCTであるAVOID trial(Circulation 2015; 131: 2143-50)などが有害性を報告しています.2013年のコクランのメタ解析(CDSR 2013; 8: CD007160)では,統計学的に有意ではないものの,死亡リスクが2.05倍(95%CI 0.75 to 5.58)増加すると報告され,低酸素血症のないAMIへの酸素投与は有害なのではということが話題になりました.一方,2016年のコクランメタ解析のアップデート(CDSR 2016; 12: CD007160)では,RRは0.99(95%CI 0.50 to 1.95)となりましたが,ルーチンでの酸素投与は支持しないというコクランの結論は変わっていません.

■今回紹介する論文は,同内容の研究としてはこれまでにない6629例を登録した大規模RCT(DETO2X-AMI trial)です.結果は,低酸素血症のないAMIに酸素を投与してもしなくても,死亡率,心筋梗塞再発,トロポニン最高値に有意差はない,という結果で,ルーチンでの酸素投与に有益性は見られなかったと結論づけています.これを見るに,ルーチンでの酸素投与は,有害ではないが,あえてする必要もないということになるでしょうか(一応,酸素も医療資源ですし).AMIのリスク因子である喫煙を考慮するならば,COPDを基礎疾患に持っている患者もそれなりの割合で存在しますから,やはりSpO2を見て酸素投与するかどうか判断する,が一番安全かと思われます.

■このDETO2X-AMI trialと,有害性を報告したAVOID trialの違いについて触れておきます.
・DETO2X-AMIの方がN数が15倍
・「低酸素血症のない」のカットオフが異なる(DETO2X-AMIはSpO2≧90%,AVOIDはSpO2≧94%)
・酸素投与群はDETO2X-AMIが6L/分の開放型マスク,AVOIDが8L/分の閉鎖型マスク
・DETO2X-AMIは,病院前および院内発症のnonSTEMI(STが上昇していないAMI)を含むAMI疑い患者を登録しているのに対し,AVOIDは救急車を要請したSTEMI患者を登録している
N数の違いは大きいですが,それ以外の違いを見ていくと,酸素の有害性を示したAVOIDの方が,低酸素になりにくく,かつ酸素投与群はDETO2X-AMIよりも高酸素になりやすい,登録された患者はAVOIDの方がSTEMIが多い,ということが言えるかと思いますし,そういうセッティングだと酸素の有害性が出やすくなる,とも考えられるかもしれません.
急性心筋梗塞疑いへの酸素療法(DETO2X-AMI trial)
Hofmann R, James SK, Jernberg T, et al; for the DETO2X-SWEDEHEART Investigators. Oxygen Therapy in Suspected Acute Myocardial Infarction. N Engl J Med 2017 Aug.28 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
ベースラインで低酸素血症がない急性心筋梗塞疑いの患者におけるルーチンの酸素療法の臨床効果は明確ではない.

【方 法】
レジストリーに基づいた本無作為化臨床試験は,患者登録とデータ収集が行われたスウェーデン全国レジストリーを用いた.心筋梗塞疑いで,酸素飽和度が90%以上の患者を酸素投与群(オープンフェイスマスクで6L/分を6~12時間)と室内気群に無作為に割り付けた.

【結 果】
計6629例の患者が登録された.酸素療法の中央期間は11.6時間で,治療期間終了時の酸素飽和度中央値は酸素投与群で99%,室内気群で97%であった.低酸素血症に進展した患者は酸素投与群で62例(1.9%),室内気群で254例(7.7%)であった.入院中のトロポニン値最高値の中央値は,酸素投与群で946.5ng/L,室内気群で983.0ng/Lであった.主要評価項目である無作為化から1年以内全原因死亡率は,酸素投与群で5.0%(166/3311),室内気群で5.1%(168/3318)であった(HR 0.97; 95%CI 0.79-1.21; p=0.80).1年以内の心筋梗塞再入院は酸素投与群で126例(3.8%),室内気群で111例(3.3%)であった(HR 1.13; 95%CI 0.88-1.46; p=0.33).本結果は事前に定められたすべてのサブグループにおいても一貫していた.

【結 論】
低酸素血症のない心筋梗塞疑いの患者におけるルーチンの酸素投与は1年全死亡率を減少させなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-01 11:15 | 文献 | Comments(0)
■ICUにおける鎮痛鎮静管理は近年,睡眠の領域にまで研究が進んでいます.おそらく今後PADとまとめて略語になっていたところに睡眠が入っていくだろうと言われており,今後の重要なトピックスになるでしょう.睡眠薬には多数の薬剤が知られていますが,多くはむしろせん妄リスクになる可能性があるベンゾジアゼピン系であり,非ベンゾジアゼピン系でもせん妄を減じた研究はこれまでほとんどありません.

■2014年に順天堂大学を中心とするDELIRIA-Jグループが,65-89歳の重症患者に対するメラトニン受容体作動薬ラメルテオン(ロゼレム®)がせん妄を減少させるとする67例RCTを報告しています(JAMA Psychiatry 2014; 71: 397-403).このラメルテオンの後に新しい作用機序である選択的オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ®)が上市されました.ICUでの不眠やせん妄の予防で既に使用している施設があると聞いていますが,私自身は,まだそのようなエビデンスがないことと,入眠時幻覚や悪夢,睡眠時麻痺,自殺企図,ナルコレプシー様症状などの懸念があったことからICU患者には使用していません.

■今回紹介する論文はラメルテオンのRCTを行ったDELIRIA-Jグループがスボレキサントでせん妄予防効果を検討した三重盲検RCTです.同グループは,ラメルテオンはせん妄予防効果があったものの,ラメルテオンだけでは不十分なケースがあったとして,今度はスボレキサントに着目して研究を行いました.結果は,スボレキサントがプラセボに比して有意にせん妄を予防,それもスボレキサント群のせん妄発生例はゼロでした.小規模研究ですが,これは大規模RCTでの検証がおおいに期待できそうです.ただ,このRCT,対象は「内服可能」な患者です.より重症な,人工呼吸器を装着して経管栄養しているせん妄ハイリスク患者だとスボレキサントでどれだけ抑え込めるかは分かりません.
せん妄に対するスボレキサントの予防効果:プラセボ対照無作為化比較試験
Hatta K, Kishi Y, Wada K, et al; DELIRIA-J Group. Preventive Effects of Suvorexant on Delirium: A Randomized Placebo-Controlled Trial. J Clin Psychiatry. 2017 Aug 1[Epub ahead of print]
PMID: 28767209

Abstract
【背 景】
せん妄予防に高い効果を示す薬物学的介入はまだ見つかっていない.我々は選択的オレキシン受容体遮断薬であるスボレキサントがせん妄予防に効果的かどうかについて検討した.

【方 法】
我々は,多施設共同評価者盲検プラセボ対照無作為化比較試験を2015年4月から2016年3月まで集中治療室よび急性期病棟で行った.新規に救急入院となった65-89歳で内服がk能な48時間以上滞在が見込まれる患者を対象とした.72例が封筒法でスボレキサント(15mg/日;36例)またはプラセボ(36例)に無作為に割り付けられて3日間夜間に服用した.主要評価項目はDSM-5に基づくせん妄発生率とした.

【結 果】
スボレキサント内服患者はプラセボ内服患者に比して有意にせん妄が少なかった(0%[n/N=0/36] vs 17%[6/36], p=0.025).log-rank検定による比較においても,スボレキサント内服群の方がプラセボ内服群よりも有意にせん妄が少なかった(χ²=6.46, p=0.011).分散分析により,日本版せん妄評価尺度-98(DRS-R-98-J)の睡眠覚醒サイクル障害スコア(項目#1)における治療の主要な効果の傾向が示された(F=3.79,p=0.053).有害事象に有意差はみられなかった.

【結 論】
急性期ケアでの高齢患者に対する夜間のスボレキサント内服はせん妄に対する保護作用を与える可能性がある.せん妄の概日核ドメインを改善するためのスボレキサントの潜在性を示すためにはより大きな研究が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-08-22 12:14 | 文献 | Comments(0)
■近年,日本で大麻使用者の逮捕が急増しており,中には高校生まで書類送検されたケースも見受けられます.SNSを見ると,日本でも「医療用大麻を合法化すべきだ」と叫んでいるアカウント(典型例は逮捕前の高樹沙耶氏)をよく見かけますが,科学的根拠をすっ飛ばしてしまっているどころかデマまで流している始末です.大麻による有害性を過少評価・歪曲して「害が少ないからやっても大丈夫」という主張する方もおられるのですが,このような問題性否認(病的な心理的防衛機制)を多用するのは依存症患者の特徴でもあるので,なんだか危険だなと感じています.

■米国では約30もの州で大麻が合法化されていますが,これはあくまでも州法です.まず,米国連邦政府や米国FDAは大麻使用を認めておらず,米国全体での連邦法よりも州法(一般市民による投票)が優先されるため広まっているに過ぎません.要するに科学的に安全性や有効性等の十分な検討をしなければならないはずのところをすっとばして州法が先走っているわけで,州法があるからといってそれが安全かつ有効という根拠にはまったくなりません.むしろ,大麻の効果は限定的で,若年者においては一定の健康への有害事象が認められると報告されています(JAMA 2015; 313: 2456-73,JAMA 2016; 316: 1765-6).また,WHOが大麻を容認しているというデマも流れていますが,WHOは大麻を容認しておらず(http://www.who.int/substance_abuse/facts/cannabis/en/),主に有害事象の懸念を述べており,使用については治療に使用できないか研究段階であるとしか述べていません.

■今回,JAMA Psychiatry誌に,大麻を合法化した州で違法な大麻使用と大麻による有害事象が増加しているとの報告が出ましたので紹介します.やはり日本では研究は進めるにしても臨床導入するの時期尚早すぎるなと思います(日本では大麻そのものの研究はできませんが,特区を作るなどして研究を行える体制をつくるべく日本臨床カンナビノイド学会が発足しています).なお,文中に登場する「医療用大麻」という言葉はおかしいのですが,論文中に使用されているためそのまま記載しています.実際のところは,医師が処方箋を出し,その処方箋をもって大麻販売所で購入するというもので,「医療用」と明確に区切られているわけではないのが現状です.
米国成人の違法大麻使用,大麻使用による障害,医療マリファナ法:1991-1992年から2012-2013年
Hasin DS, Sarvet AL, Cerdá M, et al. US Adult Illicit Cannabis Use, Cannabis Use Disorder, and Medical Marijuana Laws: 1991-1992 to 2012-2013. JAMA Psychiatry. 2017 Apr 26 [Epub ahead of print]
PMID: 28445557

Abstract
【背 景】
過去25年間に,違法な大麻使用と大麻使用による障害が米国の成人に増加しており,また28の州が医療マリファナ法(MML)を制定した.MMLおよび成人の違法な大麻使用または大麻使用により経時的に考えうる障害についてはほとんど知られていない.

【目 的】
州のMMLおよび大麻の使用および障害の有病率における変化の程度に関する米国データを提示する.

【方 法】
MMLを定めた州と他の州の居住者の変化の程度の差異を3つの横断的な米国成人サーベランス(the National Longitudinal Alcohol Epidemiologic Survey (NLAES; 1991-1992), the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC; 2001-2002), and the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions-III (NESARC-Ⅲ; 2012-2013))を用いて検討する.早期MML州はNLAESとNESARCの間にMMLが制定された州とした(前期).後期MML州はNESARCとNESARC-Ⅲの間にMMLが制定された州とした(後期).過去の違法な大麻使用とDSM-Ⅳでの大麻使用による障害を計測した.

【結 果】
1991-1992年から2012-2013年にかけて,MMLが定められた州において違法な大麻使用は他の州よりも有意に増加し(1.4%増加; 標準誤差 0.5; p=0.004),同様に大麻使用による障害も増加した(0.7%増加; 標準誤差 0.3; p=0.03).前期では,違法な大麻使用と大麻使用による障害はMMLがない州とカリフォルニア州(最初から有病率が非常に高かった)において同等に減少していた.一方で,早期からMMLを制定した州においては,大麻の使用や障害の頻度は増加していた.早期にMMLを制定した州とMMLを制定していない州とで大麻使用(2.5%; 標準誤差 0.9; p=0.004)と障害(1.1%; 標準誤差 0.5; p=0.02)に有意な差が見られた.後期では,違法な大麻使用は,MMLを制定していない州で3.5%(標準誤差 0.5),カリフォルニア州で5.3%(標準誤差 1.0),コロラド州で7.0%(標準誤差 1.6),他の早期MML制定州で2.6%(標準誤差 0.9),後期MML制定州で5.1%(標準誤差 0.8)増加した.MMLを制定していない州と比較して,後期MML制定州(1.6%増加; 標準誤差 0.6; p=0.01),カリフォルニア州(1.8%増加; 標準誤差 0.9; p=0.04),コロラド州(3.5%; 標準誤差 1.5; p=0.03)では違法な大麻使用の増加が有意に大きかった.大麻使用による障害の増加はカリフォルニア州(1.0%増加; 標準誤差 0.5; p=0.06)とコロラド州(1.6%増加; 標準誤差 0.8; p=0.04)においては,有病率が少なかった大麻使用による障害の増加は小さいものの,同様のパターンを記述的に追っており,その変化はMMLを制定していない州よりも大きかった.

【結 論】
医療用マリファナ法は,違法な大麻使用および大麻使用による障害の頻度の増加に寄与していた.州独自の政策変更もまた重要な要因となっている可能性がある.医療マリファナは幾許かの有益性があるかもしれないが,マリファナの州法変更に関連した大麻による健康への影響について医療従事者や一般市民の両方が考慮すべきである.

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by DrMagicianEARL | 2017-05-29 10:34 | 文献 | Comments(0)
■心肺停止患者へのアドレナリンは心拍再開には寄与するけど神経学的予後が悪いといった報告がよくなされるようになり,先日はアンカロンも予後改善しないなんて研究がありましたが,今度は院内心停止で早期の気管挿管はよくないという論文です.そのうち胸骨圧迫以外何もするなって推奨がでるようになるんでしょうか?

■もっともこれは救急集中治療領域でのビッグデータでのpropensity score matching解析ですので,多数の重要な説明変数の欠落が想定されますから(結論でも潜在的交絡についてlimitationとして述べていますが,交絡が大きすぎる気もします),信憑性に関してはまだ何とも言えませんが・・・.こういう研究デザインでガイドラインの推奨に影響を与えるってどうなんでしょうね?普通に考えれば,挿管するか否かはその場での患者状況等に左右されますし,ビッグデータではそういったデータは含まれてきません.挿管した患者の方がベースが重症な可能性がある以上,予後が悪いというのは当然の話とも言えます.なので一概に気管挿管が悪いこととはとらえない方がいいかと思います.関連性と因果関係は別の話ですし.
成人の院内心停止における気管挿管と生存との関連
Andersen LW, Granfeldt A, Callaway CW, et al; American Heart Association’s Get With The Guidelines–Resuscitation Investigators. Association Between Tracheal Intubation During Adult In-Hospital Cardiac Arrest and Survival. JAMA. 2017 Feb 7;317(5):494-506
PMID: 28118660

Abstract
【背 景】
気管挿管は成人の院内心停止の際に一般的に行われているが,このような状況での気管挿管と生存の関連性については知見が少ない.

【目 的】
成人の院内心停止において気管挿管が退院時生存に関連しているかについて検討する.

【方 法】
本研究は,2000年1月から2014年12月まで米国の院内心停止の多施設レジストリであるGet With The Guidelines-Resuscitationレジストリに登録された院内心停止をきたした成人患者の観察コホート研究である.心停止時に侵襲的気道確保がなされていた患者は除外した.任意の時間(0-15分)に挿管された患者は,複数の患者,イベント,病院の特性から計算された時間依存性傾向スコアに基づいて,同じ時間以内(すなわち,まだ蘇生を受けている)に挿管されるリスクのある患者とマッチさせた.曝露(介入)は心停止の気管挿管とした.主要評価項目は退院時生存とした.副次評価項目は心拍再開(ROSC)と良好な機能予後を含めた.脳機能カテゴリースコア(CPCスコア)1点(神経学的欠落が軽度もしくはなし)または2点(中等度の脳機能障害)を良好な機能予後とした.

【結 果】
傾向スコアマッチングコホートは668病院の成人患者108079例が抽出された.年齢中央値は69歳(四分位範囲58-79歳)で,45073例(42%)が女性であり,24256例(22.4%)が生存退院した.71615例(66.3%)は最初の15分以内に挿管され,43314例(60.5%)は同じ時間で挿管されなかった患者とマッチした.生存率は,43314例中7052例(16.3%) vs 43314例中8407例(19.4%)(RR  0.84; 95%CI 0.81-0.87; P<0.001)で,挿管された患者の方が挿管されなかった患者よりも低かった.ROSCが得られた患者の比率は,43311例中25022例(57.8%) vs 43310例中25680例(59.3%)(RR 0.97; 95%CI 0.96-0.99; P<0.001)で,非挿管患者よりも挿管患者の方が低かった.良好な機能予後も,41868例中4439例(10.6%) vs 41733例中5672例(13.6%)(RR 0.78; 95%CI 0.75-0.81; P<0.001)で,非挿管患者よりも挿管患者の方が低かった.事前に規定されたサブグループ解析で差が見られたが,いかなるサブグループでも挿管は予後改善と関連していなかった.

【結 論】
院内心停止の成人患者において,蘇生の最初の15分間での任意の時間での気管挿管は,同じ時間での非挿管に比して,退院時生存の減少に関連していた.研究デザインは潜在的な交絡が除外していないが,本知見は成人の院内心停止において早期の気管挿管を支持しない.

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by DrMagicianEARL | 2017-02-14 10:17 | 文献 | Comments(0)

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