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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:文献( 70 )

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■今回は宣伝です.INTENSIVIST最新号「PICS」が発刊となりました.私は2014年末頃からPICSについて興味を持ちはじめ,2015年の学会主催の敗血症セミナーin大阪でPICSについてショートレクチャーで講演させていただきましたが,当時はまだ概念が全然浸透しておらず,集中治療医学会でもシンポジウムや教育講演でPICSを見かけることはほとんどありませんでした.それが気が付けば日本版敗血症診療ガイドライン2016の一項目となり,学会,さらには地方の研究会レベルでもPICSの演題が増えてきました(ただし,残念ながら日本から原著論文はまだほぼ出ていません).JSEPTICセミナーに参加した時はアンケートの「今後取り上げてほしいトピックス」で私は毎回PICSと書き続けてきたので,実際にこうしてINTENSIVIST誌で特集が組まれ,自分も執筆陣の一員となれたことは非常に感慨深いものがあります(ただやっぱりINTENSIVISTの執筆は他の執筆よりもはるかに大変です.3回目ですがまだ慣れないというか毎回ヒットポイントゼロになります).

■実はINTENSIVISTからの執筆依頼が来たとき,他の書籍等も同時に依頼がきたため,夏から秋にかけてPICSの原稿を4つ平行して抱える状態にありました.PICSに関する講演依頼も増えて,日本でもだいぶhot topicsになったなと思っています.なお,今回もそうなんですが,PICSに対して「集中治療後症候群」という日本語訳をあてているケースがだいぶ増えてきましたが,学会等が公式に認定している日本語名ではありませんのでご注意ください(別に執筆した書籍でそのことを書きました).ちなみにネットで調べてみると,集中治療後症候群という言葉で一番古いソースはどうもこの私のブログのようです(汗).私のブログが見られていたからかどうかは分かりませんが,つい先日のGoogle検索仕様が変更されるまではPICSのネット検索では最上位にこのブログが来ていたので,それなりにこの言葉が露出していたようです.単に「直訳すれば」で書いただけなのですが・・・

■さて,今回の特集,日本版敗血症診療ガイドライン2016のPICS/ICUAWワーキンググループメンバーとJSEPTICの豪華メンバーによる執筆陣の力作で,PICSの初の日本語教科書を目指すべく250ページにわたり解説をしております.私は敗血症とPICSについて解説させていただきましたが,PICSの原因の代表格である敗血症は死亡率こそ大きく改善はしたものの,完全な社会復帰をとげられる患者は入院前にADLが自立していた患者に限定してもたったの1/3に過ぎません.それだけPICS患者が増加しているということです.ぜひ,PICSを知り,その予防とケアを臨床現場に活かすべく本書を手に取っていただければと思います.
INTENSIVIST 2018 Vol.10 No.1「PICS」

内容紹介
ICUにおける補助循環・呼吸装置の技術革新やガイドラインによる診療レベルの向上と標準化などにより,この20年で集中治療医学は劇的な進化を遂げ,ICU死亡率や28日生存率などICU患者の短期的なアウトカムは飛躍的に改善しました。しかし,ICU患者の長期予後やQOLはいまだ改善していません。ICU患者の多くは身体的および精神的な障害を抱え,それらが社会復帰や長期予後の障壁となり,集中治療後症候群Post−Intensive Care Syndrome(PICS)は世界中で進行する超高齢社会とICU患者の高齢化を背景に浮かび上がった,21世紀の集中治療医学の新たな問題点であるといえます。近年,このPICSやICU−AWなどの亜急性期から慢性期の病態がICUにおける重症敗血症患者にも密接に関与しているという報告がなされました。本邦でも世界的にも注目されつつあるPICSですが,いまだ最新知見がまとまった書籍がなく,医療従事者の多くがその最新知見を手に入れることが困難な状況です。本特集では,PICSおよびICU−AWの新しい病態の概要・診断・予防に関する最新の知見について,エキスパートが解説します。

Part 1 PICSとは何か

1. なぜ今PICSなのか:高齢社会のなかで重症患者救命後の長期予後改善を目指して
井上 茂亮(東海大学医学部付属八王子病院 救命救急医学)

Part 2 PICSの危険因子

2. PICSの疫学:発症率,予後と予防法
一二三 亨(香川大学医学部附属病院 救命救急センター)

3. 敗血症とPICS:生存率は改善した,次の目標は?
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

4. ARDSとPICS:PICSを防ぐ急性期治療とは
三反田 拓志・則末 泰博(東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門)

5. ICUケア・環境とPICS:環境因子と治療介入因子の調整によるPICS予防
和田 剛志(北海道大学病院 先進急性期医療センター 救急科/Department of Surgery, Brigham & Women's Hospital/Harvard Medical School)

6. 鎮痛・鎮静による譫妄予防とPICS:浅い鎮静と譫妄予防の薬物療法
矢田部 智昭(高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座)

Part 3 PICS 3要素

7.ICU−AW,運動機能・筋力低下
武居 哲洋 横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部

8.認知機能障害
近藤 豊(ハーバード大学 外科)

9.精神障害
竹内 崇(東京医科歯科大学医学部附属病院 精神科)

【コラム】PICS−F(family)とは何か?
新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学/北里大学病院 集中治療センター)

Part 4 PICSは予防できるのか?

10.ABCDEFGHバンドル:患者のQOL改善のためにICU在室中から行うべきこと
森川 大樹(聖マリアンナ医科大学 救急医学)
藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 救急医学/東京ベイ・浦安市川医療センター)

11.身体リハビリテーション:PICSの予防に有効か?
對東 俊介(広島大学病院 診療支援部 リハビリテーション部門)
志馬 伸朗(広島大学大学院医歯薬保健学研究科 救急集中治療医学)

12.呼吸リハビリテーション:長期予後の改善を見据えて
原 嘉孝・西田 修(藤田保健衛生大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

13.神経筋電気刺激:PICS/ICU−AW予防に有効か
畠山 淳司(横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部)

14.栄養管理:ICU患者の長期予後,PICS予防との関係
佐藤 格夫・安念 優・森山 直紀(愛媛大学大学院医学系研究科 救急航空医療学)

15.環境管理:日記,耳栓,メンタルケア,音楽療法
長友 香苗(自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部)

Part 5 コメディカル・地域におけるPICS

【コラム】PICS予防のための看護ケア実践:東海大学医学部付属八王子病院と自治医科大学附属病院における取り組み
剱持 雄二(東海大学医学部付属八王子病院 看護部)
井上 茂亮(東海大学医学部付属八王子病院 救命救急医学)

16.理学療法士から見たPICS:PICSの評価とリハビリテーションの可能性
神谷 健太郎(北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻)

【コラム】ICUフォローアップ外来:歴史と現状藤内 まゆ子・林 淑朗(鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科)

17.多職種連携とPICS:各職種と患者・家族も含めた連携の重要性
櫻本 秀明(筑波大学附属病院 ICU/ER)

後書き:PICS:全人的そして家族も含めた究極的な予防医療への第一歩
藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 救急医学/東京ベイ・浦安市川医療センター)

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by DrMagicianEARL | 2018-02-01 18:21 | 文献 | Comments(0)
■東日本大震災時の福島第一原発事故の関係で,いまだに福島県をはじめとする東北に対する風評がネット等で続いています.現時点では福島県において小児の甲状腺癌は見た目の数字は多くても,それだけでは増えたと結論づけれない状況です.その理由としてスクリーニング効果,過剰診断が挙げられます.以前に津田論文がEpidemiology誌にpublishされてますが,循環論法に陥っている内容で,あの内容では増加したかどうかはまったく分かりません.今回紹介する論文は,実際に甲状腺の腫瘍径を調べたものです.

■もともと成人の甲状腺癌のほとんどは癌と呼ぶには予後がかなりいいことが知られており,小児においてもその傾向が示唆される結果です.甲状腺癌発生初期の小さな結節は成長速度が速いが,一定の大きさになると増殖が止まるため,これからの患者の長いであろう人生を考えれば,過剰診断を防ぐ上で,すぐに細胞学的診断はやりにいくべきではないとしています.
原子力発電所事故後の日本における超音波検査でスクリーニングされた若年患者の甲状腺癌発育パターンの比較解析:福島健康管理調査
Midorikawa S, Ohtsuru A, Murakami M, et al. Comparative Analysis of the Growth Pattern of Thyroid Cancer in Young Patients Screened by Ultrasonography in Japan After a Nuclear Accident: The Fukushima Health Management Survey. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2017 Nov 16 [Epub ahead of print]
PMID: 29145557

Abstract
【背 景】
成人では,甲状腺癌は一般的に非常に遅い速度で成長し,過剰診断が世界的問題となっている.しかしながら,若年患者でのスクリーニングによる早期のステージの甲状腺癌同定に関しては十分には知られていない.過剰診断を防ぐため,若年患者の超音波検査スクリーニングによる甲状腺癌の成長の自然経過を理解することが不可欠である.

【目 的】
若年患者での甲状腺癌の自然進行を評価する.

【方 法】
本観察研究では,悪性または悪性疑いの甲状腺腫瘍の直径の変化を2回評価した.悪性甲状腺腫瘍の直径の変化は,福島県の原子力発電所事故後で,21歳未満の患者の福島健康管理調査の第1回甲状腺超音波検査でのスクリーニングと確認検査の間の観察期間中に,悪性甲状腺腫瘍径の変化を推定した.甲状腺癌またはその疑いと細胞学的に診断された計116例の患者を,10%超の直径減少,-10%~+10%の直径変化,10%超の直径増加の3群に分類した.腫瘍成長率と主要径の関連性について解析を行った.本研究は2016年3月1日から2017年8月6日までの期間に行った.評価項目は,腫瘍径変化,若年患者における甲状腺癌の成長係数,観察期間または腫瘍径とそれらの関連性とした.

【結 果】
116例の患者のうち,77例が女性であり,平均年齢は16.9歳(中央値17.5歳)であった.平均観察期間は0.488年(範囲 0.077-1.632)であった.3群間で年齢,性別,腫瘍径,観察期間,甲状腺刺激ホルモン,サイログロブリンに有意差はみられなかった.腫瘍径変化は観察期間と直線的には相関していなかったが(Pearson R=0.121; 95%CI -0.062 to 0.297),スクリーニング検査では増殖係数は腫瘍径と有意に負の相関がみられており(Spearman ρ=-0.183; 95%CI -0.354 to -0.001),初期増殖後の増殖停止を示唆していた.

【結 論】
超音波検査によるスクリーニングは,多くの若年患者において成長が停止するパターンになっている無症候性の甲状腺癌を同定しうる.患者の予測される長い人生を考慮すると,過剰診断の予防のためには,非浸潤性甲状腺癌疑いをすぐに診断することなく,慎重に長期間観察していくことが必要である.

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by DrMagicianEARL | 2018-01-22 18:14 | 文献 | Comments(0)
■2017年最後の論文紹介はこちら.まさに明日から日本中の病院が直面することになりますが,餅と窒息の疫学研究です.PubMed収載されている医学雑誌にPublishされた餅窒息の原著論文て私が探した限り今までなかったんですよね.まあほぼ日本でしか起こりませんので当然かもしれませんが.本研究はウツタイン大阪のデータベースでの解析になります.ざっくりと結果を述べると,「窒息による院外心停止の1割が餅が原因であり,その1/4は正月三が日に発生し,1カ月生存率は20%弱」です.正月三が日に集中していますが,1月1日に絞っても14%という高さです.

■ボランティアで1人暮らしの高齢者に餅を配って回ることをやっている団体もあるようですが,食べやすく小さく切っているとはいえやはり気が気でなりません.嚥下機能低下の程度しだいでは切っていても窒息するものは窒息します.本論文では餅窒息による院外心停止例の7割は目撃者なしです.窒息が生じて目撃者がいなければ予後は極めて厳しいものになりますので(本論文では目撃がなければ1カ月生存率は4.8%)
餅による窒息に焦点を当てた窒息による院外心停止の疫学:ウツタイン大阪プロジェクトの集団ベース観察研究
Kiyohara K, Sakai T, Nishiyama C, et al. Epidemiology of Out-of-Hospital Cardiac Arrest Due to Suffocation Focusing on Suffocation Due to Japanese Rice Cake: A Population-Based Observational Study From the Utstein Osaka Project. J Epidemiol. 2017 Oct 28[Epub ahead of print]
PMID: 29093354

Abstract
【背 景】
日本において餅は食物による窒息の主要な原因である.しかしながら,餅での窒息による院外心停止の疫学データは乏しい.

【方 法】
大阪府の集団ベース院外心停止レジストリより2005年から2012年までの院外心停止データを抽出した.救急隊到着前に生じた窒息による院外心停止となった20歳以上の患者を登録した.患者特性,病院前介入,予後を窒息の原因(餅かそれ以外)で比較した.主要評価項目は院外心停止後からの1カ月生存率とした.

【結 果】
研究期間で計46911例の成人院外心停止例があった.それらのうち,7.0%(3294/46911例)が窒息が原因であり,餅による窒息はそのうちの9.5%(314/3294例)を占め,それらのうち24.5%(77/314例)が正月三が日の間に発生していた.租分析では,1カ月生存率は餅による窒息が17.2%(54/314例),餅以外の窒息が13.4%(400/2980)であった.全原因による窒息の多変量解析では,若年,目撃のある心停止,早期の救急隊の対応時間が良好な1カ月生存に有意に関連していた.

【結 論】
窒息による院外心停止の約10%は餅が原因であり,そのうちの25%は正月三が日に発生していた.予防策を確立し,窒息を早期に認識し,目撃者が早急に救急隊に電話するよう促すためのさらなる努力が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-31 12:38 | 文献 | Comments(0)
■腸内細菌叢移植(糞便微生物移植:FMT)の研究が近年さかん,重篤なCDIに対して有効との報告が出てきた後に様々な疾患でも臨床応用を検討すべく研究が行われています.まあある意味最強のprobioticsと言えますかね.今回は肝性脳症に有効だったというRCTが報告されましたので紹介します.事前に5日間の広域抗菌薬投与後にFMTを行うというプロトコルで,対照群と比較して安全性が高く,肝性脳症は150日間もの間ゼロに抑えたとのことです(対照群では50%に発生).効くもんですねぇ・・・
合理的に選択された便の提供者からの糞便微生物移植は肝性脳症を改善させる:無作為化臨床試験
Bajaj JS, Kassam Z, Fagan A, et al. Fecal microbiota transplant from a rational stool donor improves hepatic encephalopathy: A randomized clinical trial. Hepatology 2017; 66: 1727-38
PMID: 28586116

Abstract
【背 景】
近年,肝性脳症は微生物叢の異常(dysbiosis)に関連した標準ケアがあるにもかかわらず再入院の原因となっている.糞便微生物移植(Fecal microbiota transplantation :FMT)は細菌叢異常を改善させる可能性があるが,肝性脳症での研究はなされていない.

【目 的】
本研究の目的は,便提供者から合理的に選択され用いられるFMTが標準ケア単独と比較して肝性脳症再発において安全かどうかを検討することである.

【方 法】
標準ケアで肝性脳症の再発を有した肝硬変の男性外来患者を対象とした5ヶ月間の観察期間の本非盲検無作為化臨床試験は1:1に無作為化された.FMTに割り付けられた患者は5日間の広域スペクトラムの抗菌薬の事前投与を受け,肝性脳症のない適切な微生物叢の同じドナーからのFMT単回注腸を受けた.観察は無作為化から5,6,12,35,150日目に行った.主要評価項目はFMT関連重篤有害事象を用いた,標準ケアと比較したFMTの安全性とした.副次評価項目は有害事象,認知機能,微生物叢,代謝の変化とした.

【結 果】
両群の患者は全ての背景因子が同等であり,研究終了まで観察された.抗菌薬の事前投与を行ったFMTは良好な忍容性であった.FMT患者の重篤な有害事象は2例(20%)であったのに対し,8例(80%)の標準ケア患者は計11の重篤な有害事象を有していた(p=0.02)標準ケア群で5例,FMT群で0例の患者で肝性脳症の再発があった(p=0.03).認知機能はFMTで改善したが,標準ケアでは改善しなかった.Model for End-Stage Liver Disease (MELD) スコアは抗菌薬事前投与で一時的に悪化したが,FMT後はベースラインまで改善した.抗菌薬投与後,有益な微生物群や微生物多様性の減少によりProteobacteriaの増加が生じた.しかし,FMTは多様性と有益な微生物群を増加させた.標準ケア群の微生物叢とMELDスコアは全体にわたって同様であった.

【結 論】
再発性肝性脳症を伴う肝硬変患者において,合理的に選択されたドナーからのFMTは入院を減少させ,認知機能や微生物叢異常を改善させる.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-07 15:55 | 文献 | Comments(0)
■原稿執筆に追われて話題の論文を紹介するのがだいぶ遅れてしまいましたが,NUTRIREA-2 studyがLancetにonline publishされました.この研究は人工呼吸器を装着したショック患者において,早期経腸栄養と早期静脈栄養をガチンコ勝負させたものです.結果は死亡率,感染症発生率に有意差なし,消化管合併症は早期経腸栄養群の方が有意に多かったということで,安全監視委員会の勧告により2410例を登録した時点で研究中止となっています.これだけ見ると早期静脈栄養の時代到来か?と一瞬思いましたが,研究デザインを見ると首をかしげたくなります.少なくとも私は本研究結果を見て早期経腸栄養をやめる気はまったくありません.

■死亡率が高めなのは気になりますがそれ以上に気になることがあります.2ヶ月前にpublishされたEAT-ICU trial(Intensive Care Med 2017; 43: 1637-47)の時もそうだったんですが,実臨床においてpermissive underfeedingが主流のこの時代になぜフルカロリー量の栄養投与設計でRCTを行うんでしょうかね・・・?そりゃいきなりそんな量入れたら消化管合併症増えるに決まってるでしょうとしか言いようがありません.この投与設計ではネガティヴな結果になるのは当然だろうなというのが率直な感想です.

■2012年に報告されたEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)ではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.おそらく今回のNUTRIREA-2 trialもEAT-ICU trialもoverfeeding傾向かと思われ,必要とするインスリン量も多くなります.全体の死亡率がやや高めなのはそれが関連しているのかなとも思ってます.
ショックを伴う人工呼吸患者における早期経腸栄養vs早期静脈栄養:無作為化多施設共同オープンラベル並行群間研究(NUTRIREA-2 trial)
Reignier J, Boisramé-Helms J, Brisard L, et al; NUTRIREA-2 Trial Investigators; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis (CRICS) group. Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: a randomised, controlled, multicentre, open-label, parallel-group study (NUTRIREA-2). Lancet 2017 Nov 8 [Epub ahead of print]

Abstract
【背 景】
早期栄養投与ルートが重症疾患患者の予後に影響を与えるかについては議論の余地がある.我々は早期静脈栄養を第一選択とするよりも早期経腸栄養を第一選択とする方が予後良好であると仮説をたてた.

【方 法】
フランスの44施設の集中治療室(ICU)で行われた本無作為化多施設共同オープンラベル並行群間研究(NUTRIREA-2 trial)では,侵襲的人工呼吸管理とショックに対して血管作動薬投与を受けている成人(18歳以上)を,標準カロリー(20-25kcal/kg/日)を目標として挿管から24時間以内に静脈栄養群と経腸栄養群に1:1に無作為に割り付けた.無作為化は可変サイズの順列ブロックを用いてセンターで層別化された.栄養投与ルートはマスクできないため,医師と看護師の盲検化はできなかった.ショックが改善した場合(24時間連続して血管作動薬投与がなく,動脈血乳酸値<2mmol/L)に,静脈栄養を受けている患者は少なくとも72時間後には経腸栄養に変更できた.主要評価項目はIntention-to-treat集団で無作為化から28日後の死亡率とした.本研究はClinicalTrials.govの番号NCT01802099で登録されている.

【結 果】
2回目の中間解析で,独立したデータ安全監視委員会が,患者の登録を完了することが試験結果を大きく変える可能性は低いと判断し,患者登録を中止することを勧告した.2013年3月22日から2015年6月30日までで2410例の患者が登録され,1202例が経腸栄養群に,1208例が静脈栄養群に無作為に割り付けられた.28日目までに,経腸栄養群で1202例中の443例(37%),静脈栄養群で1208例中422例(35%)が死亡した(絶対差推定 2.0%; 95%CI -1.9 to 5.8; p=0.33).ICU関連感染症の発生率は経腸栄養群(173例[14%])と静脈栄養群(194例[16%]; HR 0.89; 95%CI 0.72 to 1.09; p=0.25)で差はみられなかった.静脈栄養群と比較して,経腸栄養群は嘔吐(406例[34%] vs 246例[20%]; HR 1.89; 95%CI 1.62-2.20; p<0.0001),下痢(432例[36%] vs 393例[33%]; HR 1.20; 95%CI 1.05 to 1.37; p=0.009),腸管虚血(19例[2%] vs 5例[<1%]; HR 3.84; 95%CI 1.43-10.3; p=0.007),急性腸管偽性閉塞(11例[1%] vs 3例[<1%]; HR 3.7; 95%CI 1.03-13.2; p=0.04)の発生率が高かった.

【結 論】
ショックを伴う成人重症患者において,早期静脈栄養と比較して,早期経腸栄養は死亡率や二次感染を減少させず,消化管合併症リスクの増加に関連していた.

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by DrMagicianEARL | 2017-12-01 16:41 | 文献 | Comments(0)
■機械的心肺蘇生が日本でも普及していっていますが,実際の効果は?というと,徒手的CPRと比較して良好とは言い難いです.5報RCT,12206例のメタ解析(Ann Emerg Med 2016; 67: 349-60)でも生存入院・生存退院・神経予後などの臨床アウトカムを改善しなかったと報告されています.

■今回紹介する論文は,日本のデータでの院外心停止症例に対する機械的CPRの有効性を検討した多施設共同前向き研究です(林田先生,JAHA publishおめでとうございます).結果は,交絡因子で調整すると,機械的CPRは生存退院をむしろ減少させてしまうリスクがあるとのことです.こうなってくるとなかなか導入しづらくなってきますね.
救急部門に搬送された非外傷性院外心停止の成人患者における機械的心肺蘇生と生存退院:日本における前向き多施設共同観察研究(SOS-KANTO[Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study)
Hayashida K, Tagami T, Fukuda T, et al. Mechanical Cardiopulmonary Resuscitation and Hospital Survival Among Adult Patients With Nontraumatic Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest Attending the Emergency Department: A Prospective, Multicenter, Observational Study in Japan (SOS‐KANTO [Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study). J Am heart Assoc 2017; 6: e007430

Abstract
【背 景】
日本では,救急部に搬送される院外心停止患者の機械的心肺蘇生(mCPR)が広く普及している.本研究の目的は,救急部門におけるmCPRと臨床アウトカムの関連性を検討することである.

【方 法】
本前向き多施設共同観察研究では,搬入時に心停止が持続している院外心停止の成人患者が登録された.主要評価項目は退院時生存率とした.副次評価項目は.自己心拍再開と入院の成功とした.mCPRとアウトカムの関連性を分析するため,一般的な推定式を使用して潜在的交絡因子および施設内のクラスタリング効果を調整した多変量解析を使用した.

【結 果】
2012年1月1日から2013年3月31日までで6537例の院外停止患者が登録され,5619例(86.0%)が徒手的CPR群,918例(14.0%)がmCPR群であった.救急部門においてこれらの患者のうち28.1%(1801/6419)で自己心拍再開が見られ,20.4%(1175/5754)が入院となり,2.6%(168/6504)が生存退院し,1.2%(75/6419)は入院から1ヶ月時点で良好な神経学的予後であった.多変量解析ではmCPRは生存退院(調整後OR 0.40; 95%CI 0.20-0.78; p=0.005),自己心拍再開(調整後OR 0,71; 95%CI 0.53-0.94; p=0.018),入院(調整後OR 0.57; 95%CI 0.40-0.80; p=0.001)の減少に関連していた.

【結 論】
潜在的交絡因子で調整すると,成人の非外傷性院外心停止後の救急部門でのmCPRは良好な臨床アウトカムの減少に関連していた.mCPRがこれらの患者において有益となる可能性がある状況を明らかにするためにさらなる検討が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-11-02 13:58 | 文献 | Comments(0)
■世界に先駆けてハイブリッドER(外傷初療室でIVRやCTも可能)を導入した大阪急性期・総合医療センターからその成果となる論文が発表されました.前後比較研究になりますが素晴らしい治療成績です.患者移送リスクを排除し,迅速なdamage control resuscitationを実現した影響は大きいと思います.現在日本各地の施設でハイブリッドERが導入されつつあり,海外からも日本式ERとして注目が集まっています.
迅速な全身CT,手術,IVRをすべて1つの外傷蘇生室で行う最新のワークフローによる生存利益:後ろ向き歴史的対照研究
Kinoshita T, Yamakawa K, Matsuda H, et al. The Survival Benefit of a Novel Trauma Workflow that Includes Immediate Whole-body Computed Tomography, Surgery, and Interventional Radiology, All in One Trauma Resuscitation Room: A Retrospective Historical Control Study. Ann Surg 2017 Sep 26[Epub ahead of print]
PMID: 28953551

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,重症外傷におけるIVR(interventional radiology)-CT(computed tomography)システムを用いた新しい外傷ワークフローの影響を評価することである.

【背 景】
2011年8月に我々の外傷蘇生室においてIVR-CTシステムを導入した.我々はこれを,1つの場所で外傷で必要な全検査と治療が行えるものとして,ハイブリッド救命救急室(ER)と名付けた.

【方 法】
日本で行われた本後ろ向き歴史的対照研究では,重症(外傷重症度スコア≧16)鈍的外傷患者を連続的に登録した.患者は,標準群(2007年8月から2011年7月)とハイブリッドER群(2011年8月から2015年7月)の2つに分類した.主要評価項目は28日死亡率に設定した.副次評価項目は,死亡原因と到着からCTおよび手術までの時間とした.臨床的に重要な変数で調整した多変量ロジスティック回帰解析を臨床アウトカムを評価するために行った.

【結 果】
696例の患者が登録され,360例が標準群,336例がハイブリッドER群に登録された.ハイブリッドER群は死亡リスク減少に有意に関連し(調整後OR 0.50; 95%CI 0.29-0.85; p=0.011),出血による死亡を減少させた(調整後OR 0.17; 95%CI 0.06-0.47; p=0.001).CT導入までの時間(標準群26分(21-32) vs ハイブリッドER群11分(8-16); p<0.0001),緊急処置までの時間(68分(51-85) vs 47分(37-57);p<0.0001)はいずれもハイブリッドER群の方が短かった.

【結 論】
ハイブリッドERで実現される,患者の移動なしでの迅速なCT診断と出血コントロールを含むこの新しい外傷ワークフローは重症外傷の死亡率を改善させる可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2017-10-06 11:09 | 文献 | Comments(0)
■ICU患者の終末期と考えられる状況でのwithdrawal(ECMOや人工呼吸器,投与中の薬剤中止)やwithholding(これ以上の積極的な治療を行わない)はどのようにされているでしょうか?これらのEnd-of-Lifeケアについては3学会合同の指針が示されており,(1)人工呼吸器,ペースメーカー(ICDの設定変更を含む),補助循環装置などの生命維持装置を終了する,(2)血液透析などの血液浄化を終了する,(3)人工呼吸器の設定や昇圧薬,輸液,血液製剤などの投与量など呼吸や循環の管理方法を変更する,(4)心停止時に心肺蘇生を行わない,が提示されており,いずれを行うにしても患者や家族らに十分説明して合意を得て進め,同時に緩和ケアを行う(筋弛緩薬投与などの手段により死期を早めるようなことは行わない),としています.終末期の定義は日本救急医学会の「救急医療における終末期医療に関する提言」で以下のように定められています(ただし,実臨床ではこの判断が難しいことは当然ながらしばしばある).
①不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認後なども含む)と診断された場合
②生命が新たに開始された人工的な装置に依存し,生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆的であり,移植などの代替手段もない場合
③その時点で行われている治療に加えて,さらに行うべき治療方法がなく,現状の治療を継続しても数日以内に死亡することが予測される場合
④悪性疾患や回復不可能な疾病の末期であることが,積極的な治療の開始後に判明した場合

■では実際にはどのように家族に説明するかですが,ICU患者である場合,癌患者や超高齢者と比較してなかなか説明のハードルが高いと感じる医師も多いです.その結果,治る見込みがほぼない状況にある患者にずるずると侵襲的治療が継続されてしまうケースもあります.どのように説明するかの正解となるようなものがあるわけではないですが,私自身は,毎日家族に病状の詳しい説明を行い(時には1日に2回),ベッドサイドでもモニターを含め一緒に状態を見てもらい,徐々に助からないであろう状況を受け入れてもらうようにしています.この過程で,緩和ケアとwithholdingは最初の段階で同意を得て開始します.そして日々の家族への説明等で受け入れ具合を見てwithdrawalの話を出します.このようなEnd-of-Lifeケアを行っていく上で,日本緩和医療学会が行っている緩和ケア研修会(PEACE)は参考になりますので,ぜひ受けられた方がいいと思います.

■ただし,これまでの経験で,私も抜管を行ったことはまだありません.ここに踏み込むにはかなり勇気がいりますし,まさに「withdrawalよりもwithholdingの方が医療者の心理的負担は少ない」というエビデンスをダイレクトに痛感します(Am J Public Health 1993; 83: 14-23).実際に,人工呼吸器のwithdrawalは日本ではほぼ行われていないに等しい行為です.終末期で抜管すれば患者は平均して1時間で確実に死に至るため(Chest 2010; 138: 289-97)躊躇するのは当然のことかと思われます.仮にもし行うにしても倫理委員会にお伺いをたてるなどする必要があるでしょう.今回紹介する論文はそのICU患者の人工呼吸管理の中止について検討した報告です.

■このARREVE studyでは,前向き観察研究で,終末期のICU人工呼吸患者のwithdrawの手段としてimmediate extubation(即時抜管)とterminal weaning(終末期weaning) を比較しています.即時抜管では,口腔内の分泌物や喀痰を十分に吸引した後に抜管し,すぐに加湿された酸素をマスクで投与して経過をみます.一方,終末期weaningは,呼吸回数やPEEP,酸素濃度を30~60分ごとに低下させていき,最終的にチューブを残した状態で維持できるのであればTピースで過ごすなどします.結果は,即時抜管の方が気道閉塞や喘ぎ呼吸,疼痛のBPSスコアが高いなどが生じやすいが,ICUスタッフの仕事量は少なく,複雑な悲嘆・PTSD・不安・抑うつは同等という結果でした.これらの結果から,緩和ケアの観点からいけば私自身は終末期weaningを選びたいところですが,海外では即時抜管もそれなりにあるようです.抜管すれば家族と肉声で会話できるというメリットがあるのかもしれません.
重症疾患患者の人工呼吸換気の中止(withdraw)における終末期weaningまたは即時抜管(ARREVE study)
Robert R, Le Gouge A, Kentish-Barnes N, et al. Terminal weaning or immediate extubation for withdrawing mechanical ventilation in critically ill patients (the ARREVE observational study). Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936597

【目 的】
人工呼吸器の中止(withdrawal)において,即時抜管か終末期weaningかの相対的なメリットは,特に患者や近親者においては議論の余地がある.

【方 法】
本前向き観察多施設共同研究(ARREVE)は,ICUチームによる選択での終末期weaningと即時抜管を比較するためフランスの43のICUにおいて行われた.終末期weaningは換気補助の量の漸減とし,即時抜管は換気補助の事前の減量なしの抜管とした.主要評価項目は,死後3ヶ月後の近親者の心的外傷後ストレス症状(Impact of Event Scale Revised, IES-R)とした.副次評価項目は,近親者の複雑な悲嘆(complocated grief),不安,抑うつ症状,死までの経過における患者の快適さ,スタッフの仕事量とした.

【結 果】
我々は終末期weaningした248例の患者の近親者212名(85.5%),即時抜管した210例の患者の近親者190名(90.5%)を登録した.即時抜管は,終末期weaningと比較して,気道閉塞や高い平均Behavioural Pain Scaleスコアと関連していた.近親者において,3ヶ月後のIES-Rスコアは両群間で有意差はみられず(31.9±18.1 vs 30.5±16.2; 調整差 −1.9; 95%CI −5.9 to 2.1; p=0.36),複雑な悲嘆,不安,抑うつスコアにおいても差はみられなかった.ナースは,即時抜管群の方が仕事量スコアが低かった.

【結 論】
終末期weaningと比較して,即時抜管は,それぞれの方法が適用されたICUにおいて標準的な診療を構成する場合,近親者の心理的状態の差異と関連していなかった.患者は即時抜管の方が気道閉塞と喘ぎ呼吸が多かった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-28 00:00 | 文献 | Comments(0)
■ICUでの栄養管理では至適投与カロリーはいまだにわかっておらず,初期は予想される目標エネルギー量より少ないpermissive underfeedingが主流になっています.その目標エネルギー量の一定の指標として,間接熱量計での測定結果でも推算式(Harris-Benedictの式や25-30kcal/kg/日の簡易式)でもよいとガイドライン(日集中医誌 2016; 23: 185-281)で推奨されています.しかし,間接熱量計を用いた上での個々のICU患者へのエネルギーおよびカロリー必要量の投与を検討したRCTはこれまでありませんでした.

■今回紹介する論文は,ICUの人工呼吸器患者に対する間接熱量計と24時間畜尿(尿素窒素)を用いて必要栄養量を投与する栄養管理(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)の有効性を,従来の標準的な25kcal/kg/dayでの栄養管理と比較したRCTであるEAT-ICU trialです.

■ただ,このEGDN群,Methodを見たら明らかに投与エネルギー量が多いんですよね.実際の結果を見ると,EGDN群と標準ケア群の投与エネルギー量はまるでEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)のエネルギー投与量を見ているかのようです.EDENではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.これらから普通に考えればEAT-ICU trialのEGDN群は分が悪いです(なのでなんでこんな研究デザインにしたのか首をかしげたくなります).

■血糖値を見てみると,15mmol/L(270mg/dL)以上になった患者の割合は52% vs 25%でEGDN群がほぼ倍(RR 2.06, 95%CI 1.40-3.03)で,当然ながらインスリン使用量も中央値で86 vs 0(RR 262, 95%CI 71-453)でEGDN群の方が多いという結果でした.高血糖はICUAWのリスク因子でもありますし(Lancet 2013; 381: 1715),インスリン投与量が増えたぶん筋肉の質も落ちやすくなります(Crit Care Med 2013; 41: 2298-309)

■案の定,結果はネガティブでした.まああくまでも間接熱量計が有効かどうかを見る研究ですので,この結果から,あえて間接熱量計を院内に導入する必要はないかなというのが感想です.
成人集中治療患者における早期目標到達型栄養vs標準ケア:単施設無作為化評価者盲検EAT-ICU trial
Allingstrup MJ, Kondrup J, Wiis J, et al. Early goal-directed nutrition versus standard of care in adult intensive care patients: the single-centre, randomised, outcome assessor-blinded EAT-ICU trial. Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936712

Abstract
【目 的】
成人ICU患者における早期目標到達型栄養(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)vs標準栄養ケアの効果を評価する.

【方 法】
我々は,緊急入院で3日間を超えてICUに在室することが予測された人工呼吸器を装着したICU患者を無作為化した.EGDN群では,経腸と静脈栄養を用いて最初の試験日から100%の必要度をカバーすることを目的として間接熱量計と24時間畜尿により栄養必要度を推定した.標準ケア群では,経腸栄養で25kcal/kg/日を投与することを目標とし,もし7日目までに満たさなければ患者は静脈栄養による補充を受けた.主要評価項目は6ヶ月時点でのSF-36の身体的サマリー(PCS:physical component summart)スコアとした.非回答者のデータについては複数の代用を行った.

【結 果】
203例の患者が無作為化され,Intention-to-Treat解析に199例が登録された.ベースラインの変数は両群間で合理的にバランスがとれていた.標準ケア群と比較して,EGDN群ではICUにおけるエネルギーや蛋白の不足が少なかった.6ヶ月時点でのPCSスコアは二群間で差がなく(平均差 0.0; 95%CI -5.9 to 5.8; p=0.99),死亡率,臓器不全,ICUにおける重篤な有害反応や感染症,ICU在室期間や入院期間,90日時点での生命維持装置なしの生存期間も有意差がみられなかった.

【結 論】
急性期に入院し,人工呼吸器を装着した成人ICU患者において,標準栄養ケアと比較してEGDNは6ヶ月時点での身体的QOLや他の重要なアウトカムに影響を与えなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-26 00:00 | 文献 | Comments(0)
■近年,重症患者の高酸素血症の有害性が多数報告されており,急性心筋梗塞(AMI)でもその懸念が指摘されてきました.低酸素血症のないAMIに酸素投与を行うとどうなるかですが,これまでの報告では,冠動脈血流量を7.9-28.9%有意に減少させたとする研究(Am Heart J 2009; 158: 371-7)や梗塞範囲,不整脈,心筋梗塞再発を有意に増加させたとするRCTであるAVOID trial(Circulation 2015; 131: 2143-50)などが有害性を報告しています.2013年のコクランのメタ解析(CDSR 2013; 8: CD007160)では,統計学的に有意ではないものの,死亡リスクが2.05倍(95%CI 0.75 to 5.58)増加すると報告され,低酸素血症のないAMIへの酸素投与は有害なのではということが話題になりました.一方,2016年のコクランメタ解析のアップデート(CDSR 2016; 12: CD007160)では,RRは0.99(95%CI 0.50 to 1.95)となりましたが,ルーチンでの酸素投与は支持しないというコクランの結論は変わっていません.

■今回紹介する論文は,同内容の研究としてはこれまでにない6629例を登録した大規模RCT(DETO2X-AMI trial)です.結果は,低酸素血症のないAMIに酸素を投与してもしなくても,死亡率,心筋梗塞再発,トロポニン最高値に有意差はない,という結果で,ルーチンでの酸素投与に有益性は見られなかったと結論づけています.これを見るに,ルーチンでの酸素投与は,有害ではないが,あえてする必要もないということになるでしょうか(一応,酸素も医療資源ですし).AMIのリスク因子である喫煙を考慮するならば,COPDを基礎疾患に持っている患者もそれなりの割合で存在しますから,やはりSpO2を見て酸素投与するかどうか判断する,が一番安全かと思われます.

■このDETO2X-AMI trialと,有害性を報告したAVOID trialの違いについて触れておきます.
・DETO2X-AMIの方がN数が15倍
・「低酸素血症のない」のカットオフが異なる(DETO2X-AMIはSpO2≧90%,AVOIDはSpO2≧94%)
・酸素投与群はDETO2X-AMIが6L/分の開放型マスク,AVOIDが8L/分の閉鎖型マスク
・DETO2X-AMIは,病院前および院内発症のnonSTEMI(STが上昇していないAMI)を含むAMI疑い患者を登録しているのに対し,AVOIDは救急車を要請したSTEMI患者を登録している
N数の違いは大きいですが,それ以外の違いを見ていくと,酸素の有害性を示したAVOIDの方が,低酸素になりにくく,かつ酸素投与群はDETO2X-AMIよりも高酸素になりやすい,登録された患者はAVOIDの方がSTEMIが多い,ということが言えるかと思いますし,そういうセッティングだと酸素の有害性が出やすくなる,とも考えられるかもしれません.
急性心筋梗塞疑いへの酸素療法(DETO2X-AMI trial)
Hofmann R, James SK, Jernberg T, et al; for the DETO2X-SWEDEHEART Investigators. Oxygen Therapy in Suspected Acute Myocardial Infarction. N Engl J Med 2017 Aug.28 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
ベースラインで低酸素血症がない急性心筋梗塞疑いの患者におけるルーチンの酸素療法の臨床効果は明確ではない.

【方 法】
レジストリーに基づいた本無作為化臨床試験は,患者登録とデータ収集が行われたスウェーデン全国レジストリーを用いた.心筋梗塞疑いで,酸素飽和度が90%以上の患者を酸素投与群(オープンフェイスマスクで6L/分を6~12時間)と室内気群に無作為に割り付けた.

【結 果】
計6629例の患者が登録された.酸素療法の中央期間は11.6時間で,治療期間終了時の酸素飽和度中央値は酸素投与群で99%,室内気群で97%であった.低酸素血症に進展した患者は酸素投与群で62例(1.9%),室内気群で254例(7.7%)であった.入院中のトロポニン値最高値の中央値は,酸素投与群で946.5ng/L,室内気群で983.0ng/Lであった.主要評価項目である無作為化から1年以内全原因死亡率は,酸素投与群で5.0%(166/3311),室内気群で5.1%(168/3318)であった(HR 0.97; 95%CI 0.79-1.21; p=0.80).1年以内の心筋梗塞再入院は酸素投与群で126例(3.8%),室内気群で111例(3.3%)であった(HR 1.13; 95%CI 0.88-1.46; p=0.33).本結果は事前に定められたすべてのサブグループにおいても一貫していた.

【結 論】
低酸素血症のない心筋梗塞疑いの患者におけるルーチンの酸素投与は1年全死亡率を減少させなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-01 11:15 | 文献 | Comments(0)

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