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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:文献( 59 )

■院外心停止症例における低体温療法やアドレナリン投与は最近次々とネガティブな結果がでてきていますが,今度はアミオダロン(+リドカイン)ときました.救急隊が投与してますので,病院搬入されてからのケースよりも早く対応されているのですが,それでも生存退院や神経学的予後の改善が示されませんでした.しかも二重盲検RCTです.サブ解析では,目撃のある心停止であれば改善効果はあるようですが,目撃のない心停止では有意差なし.やはりこういうケースでは厳しいですね.
院外心停止におけるアミオダロン,リドカイン,プラセボ
Kudenchuk PJ, Brown SP, Daya M, et al; Resuscitation Outcomes Consortium Investigators. Amiodarone, Lidocaine, or Placebo in Out-of-Hospital Cardiac Arrest. N Engl J Med. 2016 Apr 4. [Epub ahead of print]
PMID: 27043165

Abstract
【背 景】
電気ショック抵抗性の心室細動や無脈性心室頻拍において抗不整脈薬は一般的に使用されているが,
生存有益性は示されていない.

【方 法】
本無作為化,二重盲検試験において,我々は非外傷性の院外心停止,少なくとも1回の電気ショックおよび血管確保後の電気ショック抵抗性の心室細動または無脈性心室頻拍を有する成人において,標準的ケアの下で注射のアミオダロン,リドカイン,生食プラセボを比較した.救急隊が10の北米地域において患者を登録した.主要評価項目は退院時の生存,副次評価項目は退院時の良好な神経学的機能とした.per-protocol(主要解析)集団は,適格基準を満たし,任意用量の試験薬投与を受け,心室細動や無脈性心室頻拍の初期の心停止リズムが電気ショックに抵抗性であった,すべて無作為に割り付けられた患者が含まれた.

【結 果】
per-protocol集団において,3026例の患者がアミオダロン(974例),リドカイン(993例),プラセボ(1059例)に無作為に割り付けられ,それぞれの退院時生存率は24.4%,23.7%,21.0%であった.生存率の差は,アミオダロンとプラセボで3.2%(95%CI -0.4 to 7.0; p=0.08),リドカインとプラセボで2.6%(95%CI -3.2 to 4.7; p=0.16),アミオダロンとリドカインで0.7%(95%CI -3.2 to 4.7; p=0.70)であった.退院時の神経学的予後は3群間で同等であった.心停止が目撃されたか否かについて治療効果に不均一性がみられ(p=0.05),バイスタンダーの目撃のある心停止の患者においては抗不整脈薬はプラセボよりも有意に高い生存率に関連していたが,目撃のない心停止では関連していなかった.もっとアミオダロンの投与を受けた患者は,リドカインまたはプラセボの投与を受けた患者よりもより多く一時的心臓ペーシングを必要とした.

【結 論】
電気ショック抵抗性の心室細動または無脈性心室頻拍による院外心停止患者において,アミオダロンやリドカインは生存率や良好な神経学的予後においてプラセボよりも有意に高い結果とはならなかった.

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by DrMagicianEARL | 2016-04-07 17:47 | 文献 | Comments(0)
東日本大震災の津波による肺炎死・高齢者の障害に関する大規模調査
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■2011年3月11日の東日本大震災から5年が経ちました.21年前の阪神淡路大震災では死者6434名,東日本大震災ではその2倍以上の15894名が亡くなっています.阪神淡路大震災では家屋倒壊と火災による被害が主で,その後の耐震強化等の防災策が日本各地でとられ,その後の数多くの地震でも被害がおさえられてきました.しかしながら東日本大震災では津波による被害が甚大でした.さかのぼれば1993年の北海道南西沖地震では230名が死亡しましたが,そのほとんどは奥尻島による津波被害でした.

■津波に流されて溺死したケースがほとんどですが,救出されて救命救急センター等に搬送されるも激烈な肺炎で死亡した患者も多く知られています.津波肺の患者の救命率は著しく低く,Pseudallescheria boydiiScedosporidium apiospermumといった真菌に病院はかなり苦しめられたとのことです.

■今回紹介する2つの論文は東日本大震災における津波に関する疫学的な調査結果です.1つ目は津波による肺炎死亡の増加について,2つ目は津波による高齢者の長期機能障害についての調査結果です.今回の地震でいかに津波の影響が大きいかを物語るデータになります.震災からまだ5年.建物の復興は進みましたが,医療・福祉はまだまだ大変です.医師不足も深刻な東北地方ですが,このたび私も生まれてからずっと住んできた大阪を離れ,2016年4月より東北の病院に勤務することになりました.津波被害の影響を受けた地域の患者さんの診療にもあたることになるでしょう.少しでもお役に立てればと思います。
地震と津波の後の肺炎による死亡の特性:日本の131の市町村における570万人の生態学的研究
Shibata Y, Ojima T, Tomata Y, et al. Characteristics of pneumonia deaths after an earthquake and tsunami: an ecological study of 5.7 million participants in 131 municipalities, Japan. BMJ Open. 2016 Feb 23;6(2):e009190
PMID:26908515

Abstract
【背 景】
2011年3月11日,東日本大地震が日本を襲った.いくつかの研究では,地震は肺炎による死亡リスクを増加させることが示されているが,津波がそのリスクを増加させるか否か,どれくらい増加させるかについて報告した研究はない.我々は地震/津波後の肺炎死亡リスクを検討した.

【方 法】
本研究は生態学的研究である.日本の人口動態統計2010および2012,国勢調査2010,住民基本台帳2010と2012から集団および肺炎死のデータを得た.震災後1年の間に宮城県,岩手県,福島県に居住する約570万人を対象とした.全市町村(n=131)は,地震の影響を受けた地区である内陸部(n=93),地震と津波の影響を受けた沿岸部(n=38)に分類された.週あたりの肺炎死亡数は2010年3月12日から2012年3月9日までを集計した.観察された肺炎死亡数(O)と,性別および年齢ごとの予想される肺炎死亡数を乗じて観察集団における性別と年齢の群の合計数(E)を算出した.予想される肺炎死亡率は,前年の肺炎死亡率とした.標準化死亡比(SMRs)は,間接的な方法を用いて性別と年齢を調整し,肺炎死亡(O/E)により算出した.そして,SMRsは沿岸部と内陸部の市町村ごとで算出した.

【結 論】
地震後の1年間で6603例が肺炎で死亡した.SMRsは第1週から第12週目までの間に有意に増加した.第2週では,沿岸部と内陸部の市町村のSMRsはそれぞれ2.49(95%CI 2.02-7.64)と1.48(95%CI 1.24-2.61)であった.沿岸部の市町村のSMRsは内陸部の市町村よりも高かった.

【結 論】
地震は肺炎死亡リスクを増加させ,津波はそのリスクをさらに増加させる.
高齢者の機能障害における2011年の東日本大地震および津波の影響:日本の自治体おける障害有病率の縦断的比較
Tomata Y, Kakizaki M, Suzuki Y, et al. Impact of the 2011 Great East Japan Earthquake and Tsunami on functional disability among older people: a longitudinal comparison of disability prevalence among Japanese municipalities. J Epidemiol Community Health. 2014 Jun;68(6):530-3
PMID:24570399

Abstract
【目 的】
2011年3月11日の地震と津波による深刻な影響を受けた地域は他の地域に比して障害有病率がより大きく増加しているという仮説を検討する.

【方 法】
日本の厚生労働省の公共統計データを用いた縦断的解析を行った.解析は,介護保険(LTCI)システムによってカバーされている1549の自治体が登録された.「災害地域」は3県(岩手,宮城,福島)と定義した.評価項目は,LTCI障害者認定を受けた高齢者(65歳以上)の数とした.2011年2月から2012年2月までの障害有病率における変化率は主要アウトカム変数として使用し,「沿岸被災地」「内陸被災地」「非被災地」との間の共分散分析によって比較した.

【結 果】
すべてのレベルにおける障害有病率では,沿岸被災地の増加率の平均値(7.1%)は,内陸被災地(3.7%),非被災地(2.8%)に比して高かった(p<0.001)

【結 論】
地震と津波による深刻な影響を受けた地域では,地震災害後の1年間における障害有病率が他の地域よりも有意に高い増加率であった.

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by DrMagicianEARL | 2016-03-11 00:00 | 文献 | Comments(0)
■もう既に話題になっていますが,ICM誌に当直後の認知機能悪化が報告されました.まあ経験的にみなさんも体感していることだと思います.私も当直後はそのまま日勤に連続して突入しますが,その日勤では極力検査・処置が入らないようにはしています.

■じゃあ実際に医療過誤が起こるか?というのが気になるところですが,カナダの1448名の外科医の調査では,処置・手術が日中と夜間で患者の死亡・再入院・合併症の複合アウトカムに差はないと報告しています(N Engl J Med 2015; 373: 845-53).差がつかなかった理由については経験でカバーしている,安全かどうか自分で判断している,という考察がなされています.ただし,夜間に複数回の処置・手術があると合併症頻度は1.14倍に有意に増加してはいます.また,夜勤明けの運転では37.5%が急ブレーキを使用し,半数近くが車を制御しきれず,その運転能力の低下は運転開始から15分以内に出現していたとの報告もあります(Proc Natl Acad Sci U S A 2016;113:176-81)
ICUの医師の夜勤は認知機能を低下させる
Maltese F, Adda M, Bablon A, et al. Night shift decreases cognitive performance of ICU physicians. Intensive Care Med. 2016 Mar;42(3):393-400
PMID:26556616

Abstract
【背 景】
疲労と医療過誤のリスクとの関係は一般的に知られている.本研究の主な目的は,集中治療医の集団の認知機能における集中治療室(ICU)夜間シフトの影響を評価することである.認知機能における専門的経験と睡眠量の影響も検討した.

【方 法】
3つのICU(シニア24名,研修医27名)から全51名の集中治療医が登録された.研究参加者は休みの夜の後と夜勤後を無作為に割り付けて評価した.Wechsler Adult Intelligence ScaleとWisconsin Card Sorting Testに基づいて4つの認知能をテストした.

【結 果】
作業記憶能力(11.3±0.3 vs 9.4±0.3; p<0.001),情報処理能力(13.5±0.4 vs 10.9±0.3; p<0.001),知覚推理能力(10.6±0.3 vs 9.3±0.3; p<0.002),認知柔軟性(41.2±1.2 vs 44.2±1.3; p=0.063)のすべての認知能が夜勤後で悪化していた.研修医とICU医師の間で認知機能障害のレベルでは有意差はみられなかった.認知柔軟性のみが2時間の睡眠後に回復していた.他の3つの認知能は夜勤中の睡眠量が十分でも低下していた.

【結 論】
集中治療医の認知能は,専門的経験量や夜勤中の睡眠時間に関係なくICUの夜勤後に有意に低下していた.患者の安全性と医師の健康への影響についてさらなる評価がなされるべきである.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-18 17:42 | 文献 | Comments(0)
■アセタゾラミド(ダイアモックス®)を集中治療領域で使用したことのある先生はかなり少ないのではないでしょうか.この薬剤が挿管人工呼吸管理下にあるCOPD患者の代謝性アルカローシスに対して使用することで早く離脱できるのではないかとするRCTが報告されましたので紹介します.結果は,主要評価項目を含めてほとんどのアウトカムに有意差なしです.執筆者は結論で「統計学的には有意差はないけれど差の数値は臨床的に無視できない」と言いたげな書き方をしていますが,臨床的にも有意とは言い難い差と私は思います.確かにベクトルはいい方向に向いてはいますが,使うほどの差かと言うと微妙です.

■この薬剤の機序はNa利尿と尿中HCO3-の排泄増加ですので,機序的には代謝性アルカローシスを改善させることになります.代謝性アルカローシスは代償反応として低換気が起こりますので,アセタゾラミドで換気刺激を促してやろうというものです.なお,本邦においては「肺気腫における呼吸性アシドーシス」に保険適用があります.どちらかというと呼吸性アシドーシスで私は使用することがごくたまにあって,NPPVでも治療しきれず,挿管拒否されているCO2ナルコーシスと高度の呼吸性アシドーシスの場合に苦し紛れの一手で投与をtryします.ただ,この研究のデータを見るにPaCO2もたいして下がらないようですね.
慢性閉塞性肺疾患患者における侵襲的人工呼吸器装着期間におけるアセタゾラミドvsプラセボの効果:無作為化比較試験(DIABOLO study)
Faisy C, Meziani F, Planquette B, et al; DIABOLO Investigators. Effect of Acetazolamide vs Placebo on Duration of Invasive Mechanical Ventilation Among Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2016 Feb 2;315(5):480-8
PMID:26836730

Abstract
【背 景】
アセタゾラミドは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と代謝性アルカローシスの患者において呼吸刺激薬として数十年使用されてきているが,この使用における大規模なプラセボ対照比較試験はない.

【目 的】
COPDで代謝性アルカローシスの重症患者における人工呼吸器装着期間をアセタゾラミドが減少させるかについて検討する.

【方 法】
本DIABOLO studyは,フランスの15の集中治療室(ICU)で2011年10月から2014年7月まで行われた無作為化二重盲検多施設共同試験である.24時間以上の人工呼吸管理を受けることが予想されたCOPD患者計382例をアセタゾラミド群とプラセボ群に無作為に割り付け,380例がintention-to-treat解析に組み込まれた.アセタゾラミド(500-1000mgを2回/日)とプラセボは代謝性アルカローシスの症例において静脈内投与することとし,ICU入室48時間以内に導入され,最大28日間までICU在室中継続した.主要評価項目は気管挿管もしくは気管切開による侵襲的人工呼吸器装着期間とした.副次評価項目は動脈血ガスと呼吸パラメーター,weaning期間,有害事象,抜管後の非侵襲的人工呼吸器の使用,weaning成功率,ICU在室期間,ICU死亡率とした.

【結 果】
無作為化された382例の患者のうち,380例(平均年齢69歳,男性272例[71.6%],気管挿管379例[99.7%])が試験を完遂した.プラセボ群(193例)に比して,アセタゾラミド群(187例)は人工呼吸器装着期間中央値(-16.0時間; 95%CI -36.5 to 4.0時間; p=0.17),人工呼吸器からのweaning期間(-0.9時間; 95% CI -4.3 to 1.3時間; p=0.36),分時換気量の毎日の変化(-0.0L/min; 95%CI -0.2 to 0.2 L/min; p=0.72),動脈血二酸化炭素分圧(-0.3mmHg; 95%CI -0.8 to 0.2 mmHg; p =0.25)に有意差はみられなかったが,血清重炭酸濃度の変化(群間差 -0.8mEq/L; 95%CI -1.2 to -0.5mEq/L; p<0.001),代謝性アルカローシスの日数(群間差 -1; 95%CI -2 to -1日間; p<0.001)はアセタゾラミド群で有意に減少した.他の副次評価項目では両群間に有意差はみられなかった.

【結 論】
侵襲的人工呼吸管理を受けるCOPD患者において,アセタゾラミドの使用はプラセボに比して侵襲的人工呼吸器装着期間を統計学的有意には減少させない結果であった.しかしながら,差の大きさは臨床的に重要であり,本研究は統計学的有意性を検出する上で検出力不足であった可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-08 18:27 | 文献 | Comments(0)
■ICU患者での栄養管理の論文はよく読みますが,より広い範囲の「急性期の患者」というくくりでの論文はあまり読んだことがなく,今回そのRCTのメタ解析が出たので紹介します.ただでさえICU患者でも栄養療法で有意差をつけることが難しい上に,ICU患者に比して重症度がかなり低くなりますから,当然ながら臨床ハードアウトカムに差はつかないだろうなと思いながら読んでみたらやはり死亡率を含めほとんどのアウトカムで有意差なし.ただし,副次評価項目ではあるものの再入院では有意差がついているので,長期アウトカムの設定にするといろいろ差が見えてくるんじゃないかなと.
低栄養の入院患者における栄養サポートと予後:システマティックレビューとメタ解析
Bally MR, Blaser Yildirim PZ, Bounoure L, et al. Nutritional Support and Outcomes in Malnourished Medical Inpatients: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2016 Jan 1;176(1):43-53
PMID:26720894

Abstract
【背 景】
急性疾患において,栄養療法は低栄養状態あるいはそのリスクのある内科入院患者において広く行われている.しかし,我々の知る範囲では,この介入が患者に対して有効性および有益性を示した包括的な研究はない.

【目 的】
無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューにおいて低栄養あるいはそのリスクを有する内科入院患者の予後における栄養療法の効果を検討する.

【方 法】
Cochrane Library,MEDLINE,EMBASEを用いた.研究期間は1982年10月5日から2014年4月30日までに各国で行われたもの(ほとんどは欧州)を登録した.我々の解析は2015年3月10日から2015年9月16日にかけて行った.予め指定されたコクランプロトコルに基づいて,我々は入院患者における対照群と比較した栄養療法(カウンセリングや経口摂取・経腸栄養を含む)の効果を検討したRCTを体系的に検索した.2人のレビュワーが研究の背景,方法,結果のデータを抽出した.意見の不一致は合意により解決した.主要評価項目は死亡率とした.副次評価項目は医療関連感染,あらゆる原因での再入院,機能予後,入院期間,毎日のカロリーおよび蛋白の摂取量,体重変化とした.

【結 果】
計3736例の患者を含む22報のRCTを登録した.全体的に研究の質は低く,バイアスリスクが不明確なものがほとんどであり,RCT間の異質性は高かった.介入群は対照群に比して有意に体重(平均差0.72 kg; 95%CI 0.23-1.21 kg),カロリー接種量(平均差397 kcal; 95%CI, 279-515 kcal),蛋白接種量(平均差20.0 g/d; 95%CI 12.5-27.1 g/d)が増加した.死亡率(9.8% vs 10.3%; OR 0.96; 95%CI 0.72-1.27),医療関連感染(6.0% vs 7.6%; OR 0.75; 95%CI 0.50-1.11),機能予後(平均Barthel指数差 0.33ポイント; 95%CI -0.88 to 1.55ポイント),入院期間(平均差 -0.42日; 95%CI -1.09 to 0.24日)は介入群と対照群間で有意差がみられなかった.再入院は介入群で有意に減少させた(20.5% vs 29.6%; RR 0.71; 95%CI 0.57-0.87).

【結 論】
内科入院患者において,栄養療法はカロリーと蛋白の摂取量,体重を増加させる.しかしながら,再入院を除き,臨床アウトカムにおいてはわずか効果しかみられなかった.このギャップを満たすため,より質の高いRCTが必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-01-05 16:31 | 文献 | Comments(0)
■ガイドライン作成や原稿執筆(+忘年会ラッシュ)に圧迫されてなかなかブログが更新できない状態が続いており,紹介したいけどできない論文が多数・・・なんとかできる範囲でアップしていきます.

■今回紹介するのはICU患者の気管切開のタイミングを検討したRCTのメタ解析です.Authorの最後には泣く子も黙るProf.Vincentの名前が.おそらく気管切開は早い方がいいだろうという流れの中,意外にそうではないという報告も散見され,議論されている内容です.今回の12報メタ解析では,早期に気管切開を行う方が良好なアウトカムが得られるという結果.ただし,気管切開率が有意に高まるという結果も同時に得られており,早期に気管切開を行うべき患者を抽出するためのリスク因子の検討が今後の課題になりそうです.
ICU患者の気管切開のタイミング:無作為化比較試験のシステマティックレビュー
Hosokawa K, Nishimura M, Egi M, et al. Timing of tracheotomy in ICU patients: a systematic review of randomized controlled trials. Crit Care. 2015 Dec 4;19:424
PMID:26635016

Abstract
【背 景】
重症患者の気管切開の適切なタイミングは議論されるトピックとなっている.我々は早期と晩期の気管切開の潜在的有益性を明らかにするためにシステマティックレビューを行った.

【方 法】
我々は早期および晩期気管切開で管理された患者のアウトカムを比較した無作為化比較試験をPubMedとCENTRALで検索を行った.平均差(WMD)またはオッズ比(OR)の推定のため,気管切開のタイミングを3つの期間で定義した分類(4日以内vs10日以降,4日以内vs5日,10日以内vs10日以降)によるデータとして結合したランダム効果モデルのメタ解析を行った.

【結 果】
検索によって142の研究が抽出され,計2689例の患者を含む12報が登録基準を満たした.気管切開率は早期の方が晩期より有意に高かった(87% vs 53%, OR 16.1 (5.7 to 45.7); p<0.01).早期気管切開はより長い人工呼吸器free days(装着していない日数)(WMD 2.12 (0.94 to 3.03), p<0.01),より短いICU滞在日数(WMD -5.14 (-9.99 to -0.28), p=0.04),より短い鎮静期間(WMD -5.07 (-10.03 to -0.10), p<0.05)に関連しており,長期死亡率を晩期気管切開よりも減少させた.

【結 論】
本メタ解析のアップデートは,晩期気管切開に比して早期気管切開が,より高い気管切開施行率と,より長い人工呼吸器free days,より短いICU在室期間,より少ない鎮静,長期死亡率の減少を含む良好なアウトカムを示した.

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by DrMagicianEARL | 2015-12-09 16:29 | 文献 | Comments(0)
■これまでにない抗癌剤として登場したイレッサは,マスコミによって「夢の新薬」という誇張表現を用いて紹介され,その後のイレッサ訴訟においてマスコミは手の平を返したかのように国と製薬企業を叩いていたのは御承知の通りです.もっともマスコミは情報の正確性より視聴率を最重視しているとしか思えない医療情報の提供の仕方をしますし,そこに登場する医療ジャーナリストもまた,情報ソースが脆弱であることが既に報告されています(下記参照).
【文献】医療ジャーナリストの報道の情報ソースは?
http://drmagician.exblog.jp/22809339/
■JAMA Oncology誌に,マスコミによる癌研究の誇張表現をまとめた報告が出たので御紹介します.実際にはこの言葉に踊らされてしまうのは一般市民であり患者です.医療提供者は決してこれらに乗ってはいけないのですが,医療ジャーナリストがこういう表現を多用してしまうようですね.現在話題になっている抗PD-1阻害薬も日本でいよいよメラノーマだけでなく肺癌で製造販売承認がおりますが,はたしてどうなることか.
癌研究の誇張
Abola MV, Prasad V. The Use of Superlatives in Cancer Research. JAMA Oncol 2015 Oct 29:1-2 [Epub ahead of print]
PMID:26512913

要 約

 癌の治療や研究で用いられている言葉重要な暗示を惹起する可能性がある.多くの癌新薬はわずかな有益性しか示されていないにもかかわらず,認可された医薬品や開発中の医薬品は一般紙では「ゲームチェンジャー」や「革新的」と持ち上げられる.そのようなニュースは医学雑誌よりも多くの一般市民に届き,患者や一般市民や投資家にとっては重要な情報源である.しかし,医学という文脈を無視した,あるいは誇大な修飾語を用いることは読者に誤解を招きうる.

 ここでは一般紙の抗癌剤についてのニュースの記述用語の使用状況を調査した.誰が誇張表現を用い,どのクラスの薬が最も持ち上げられているかも調査した.

 2015年6月21-25日の間にGoogleニュースで「抗癌剤」と一緒に使用され10の誇張表現「breakthrough(画期的な)」「game changer(ゲームチェンジャー)」「miracle(奇跡的な)」「cure(治る)」「home run(ホームラン)」「revolutionary(革命的な)」「transformative(革新的な)」「life saver(命を救うもの)」「groundbreaking(画期的な)」「marvel(驚異的な)」を検索した.

 すべての記事は1人のレビュワーによって読まれた.次の情報が抽出された:薬剤の説明,作用機序,薬剤分類,既に米国FDAから承認を受けたものかどうか,臨床試験によって得られたデータかそれとも臨床前のデータ(マウスや細胞培養など)か,引用元(医師,ジャーナリスト,業界専門家,患者など).学術的な血液腫瘍医が全薬剤の作用機序と,細胞毒性,標的,免疫チェックポイント阻害,治療的ワクチンによる免疫療法,放射線治療,遺伝子治療,その他に分類した.

 94の記事を抽出し,そのうちの39は標的を絞った治療,37は免疫チェックポイント阻害薬,10は細胞毒性薬物であった.半数はFDAの認可を得ていない薬物であり,14%は臨床データがない薬物であった.

 誇張表現で称賛される医薬品は研究が盛んな分野のもので実際に使われているものではない.誇張表現を使用するのは医学のことをよく分かっていないであろうジャーナリストが55%で最も多かった.

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by DrMagicianEARL | 2015-11-06 18:07 | 文献 | Comments(0)
■基本的に私はサプリメントの摂取を推奨していません.サプリメントの多くが効果をRCTによって検証されていないにもかかわらず,一般市民が盲目的に購入し,摂取しているのが現状です.百歩譲って害がなければ問題ないとしてもいいかもしれませんが,有害との報告が実は多数でています.しかしながらマスコミはスポンサーの関係もあるのかなぜかこの事実を報道しません.

■閉経後女性のサプリメント内服で死亡率が上昇することが知られており(Arch Intern Med 2011; 171: 1625-33),38772名の調査による多変量解析で,マルチビタミンで2.4%増加,ビタミンB6で4.1%増加,葉酸で5.9%増加,鉄で3.9%増加,マグネシウムで3.6%増加,亜鉛で3.0%増加,銅で18.0%増加という結果でした.バイアスが低いRCT47報180938名のメタ解析(JAMA 2007; 297: 842-57)でも,ビタミンCをはじめとする抗酸化サプリメントは有意に死亡リスクが増加していた(RR 1.05; 95%CI 1.02-1.08).最近では,抗酸化物質がむしろ癌の遠隔転移を促進してしまうという報告も出ています(Nature 2015, PMID:26466563).サプリメントは決して安全なものではありません.

■今回,サプリメントに関連した有害事象により救急受診した患者の調査結果が方向されたので紹介します.掲載誌は医療系では最もメジャーなthe New England Journal of Medicineであり,それだけeditorが重要視したのでしょう.人口で単純計算すると日本でも年間1万人弱がサプリメントによる副作用で救急受診していることになります.
サプリメントに関連した有害事象による救急受診
Geller AI, Shehab N, Weidle NJ, et al. Emergency Department Visits for Adverse Events Related to Dietary Supplements. N Engl J Med 2015; 373: 1531-40
PMID:26465986

Abstract
【背 景】
漢方や補完的な栄養製品といったサプリメントや微量栄養素(ビタミンやミネラル)は米国において一般的に使用されているが,有害事象の全国データは限られている.

【方 法】
サプリメントに関連する有害事象を原因とする米国内の救急部受診の状況を明らかにするため,2004から2013 年にかけて63の救急部から得た米国を代表するサーベイランスデータを利用した.

【結 果】
3667例が同定され,1年あたり23005件(95%CI 18611-27398)の救急受診がサプリメントに関連する有害事象に起因するものと推定された.これらの受診において,年間2154件(95% CI 1342-2967)の入院が生じたと推定された.このような受診の頻度は,20-34歳の若年成人(受診の28.0%,95%CI 25.1-30.8)と,監督下になかった小児(受診の21.2%,95%CI 18.4-24.0)で高かった.監督下にない状況で小児がサプリメントを摂取した場合を除くと,1種類のサプリメントに関連する有害事象による救急受診の65.9%(95% CI 63.2-68.5)は,ハーブ系製品または栄養補助製品に関連するものであり,31.8%(95% CI 29.2-34.3)は微量栄養素に関連していた.ハーブ系製品または栄養補助製品のうち,減量用(25.5%,95%CI 23.1-27.9),体力増強用(10.0%,95%CI 8.0-11.9)が関連している割合が高かった.動悸,胸痛,頻拍といったサプリメントに関連する有害事象の71.8%(95% CI 67.6-76.1)は減量用製品または体力増強用製品が原因であり,これらの心症状による受診の58.0%(95%CI 52.2-63.7)は 20-34 歳の人によるものであった.65歳以上の成人では,サプリメントに関連する有害事象による救急受診全体の37.6%(95%CI 29.1-46.2)が,窒息,錠剤による嚥下障害または咽頭異物感によるものであり,これらの症状による受診の83.1%(95% CI 73.3-92.9)には微量栄養素が関連していた.

【結 論】
米国では毎年23000件の救急受診がサプリメントに関連する有害事象に起因するものと推定される.このような受診は,若年成人では減量用製品または体力増強用製品を原因とする心血管症状,高齢成人では嚥下障害によるものが多く,嚥下障害は微量栄養素の摂取に関連していることが多い.

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by DrMagicianEARL | 2015-10-19 14:35 | 文献 | Comments(0)
■動物モデルの研究ではありますが,興味深い論文なので紹介します.気管挿管時は低酸素に陥るリスクが高まりますが,血管内用量減少によるショック状態においては低酸素に陥るまでの時間が非ショック時よりも長くかかるという結果が得られています.ある意味これはショック時の生体の防御反応システムなのかなという印象を受けました.これらの知見から,ショック患者に挿管する際に,先に血圧安定化をはかると低酸素に陥るまでの時間が短縮する可能性があるため,安定化を待たずにさっさと挿管してしまった方がいいかもしれません.
豚モデルにおける酸素化後の無呼吸酸素飽和度の低下における出血性ショック時の血管内用量減少と輸液蘇生の影響
Kurita T, Morita K, Sato S. The Influence of Hypovolemia and Fluid Resuscitation During Hemorrhagic Shock on Apneic Oxygen Desaturation After Preoxygenation in a Swine Model. Anesth Analg. 2015 Sep 24. [Epub ahead of print]
PMID:26414602

Abstract
【背 景】
重大な出血患者においては積極的な輸液蘇生と速やかな気管挿管の両方がしばしば必要となる.致命的な酸素飽和度に低下するまでの時間における出血による血管内用量減少,かつ/または輸液蘇生の影響はよく知られていない.我々は,出血性ショックの豚モデルにおける酸素飽和度低下の時間と膠質液蘇生を検討した.

【方 法】
イスフルレンによる麻酔導入後,9頭の豚(平均±標準偏差=25.3±0.6kg)で,600mLの出血,600mLのヒドロキシエチルスターチ(HES)投与,さらに600mL出血,2回目の600mLヒドロキシエチルスターチ投与の連続した4ステージによる段階的な出血と輸液蘇生モデルを用いて研究を行った.各ステージにおいて,100%酸素による人工呼吸を5分間行った後,無呼吸を誘発させ,酸素飽和度低下(酸素飽和度[SpO2]<70%)までの時間を計測した.血行動態と血液ガスの数値を記録し,脳および末梢組織の酸素化指数は近赤外線分光法で記録した.

【結 果】
各ステージにおいて,SpO2<70%になるまでの時間±標準偏差は,136±41秒(ベースライン), 147±41秒(出血時),131±38秒(蘇生時),147±38(再出血),134±36秒(再蘇生)であった.出血前後の時間の平均差はそれぞれ11.2秒(6.5-16.0,p=0.0052)と16.0(11.0-21.0,p<0.0001)であった.無呼吸による酸素飽和度低下(SpO2<70%)前後のPaO2はステージ間で差はみられなかった.組織酸素指数の所見において,血管内用量減少は酸素消費量を減少させ,輸液蘇生はこのパラメータを回復させた.

【結 論】
急性出血性ショックの患者において,血管内用量低下状態は致命的な酸素飽和度低下に至るまでの時間が延長する.臨床家は,このような患者に気管挿管を行う際は,輸液蘇生と酸素飽和度低下に要する時間の関連性を考慮すべきである.

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by DrMagicianEARL | 2015-10-19 13:18 | 文献 | Comments(0)
■2007年に東北大の出澤真理教授のグループが多能性幹細胞のMuse細胞を発見しました.2014年に小保方らが報告したSTAP細胞も一時はMuse細胞ではないかとする疑惑もありました.Muse細胞自体は発見以降そこまで目立った進展の報道はありませんでしたが,2014年にヒトMuse細胞由来のメラニン産生細胞を組み込んだ3次元培養皮膚の安定化製造に成功し,医薬品や化粧品の開発で効果や副作用の検証を動物実験を介さずに検証が可能となり,2015年1月15日よりこの皮膚モデルが販売開始となっています.

■このMuse細胞は間葉系幹細胞に類似した特徴を持ち,かつ,事前の分化誘導を必要としないこと,静脈内投与するだけで傷害臓器にホーミングで生着し分化すること,腫瘍形成性が非常に低いことが大きな特徴とされています.

■脳梗塞では,これまで骨髄から分離した間葉系幹細胞や単核球を脳梗塞後に移植した臨床試験が行われていますが,安全性を示すに留まり,その有効性は限定的でした.以下に紹介する論文は,ラットの脳梗塞モデルにMuse細胞を移植することにより,梗塞で傷害された神経細胞や運動機能の回復を示した世界初の報告です.結果を見ると,移植後2カ月半頃から急速な回復が見られており,これまでほぼリハビリテーションしか治療手段がかなった脳梗塞後遺症(近年は経頭蓋刺激のrTMSが脳梗塞領域で非常に期待されていますが)に対して非常に有効な治療法となります.臨床応用も時間の問題で,東北大は2018年からの臨床試験を検討しているようです.
※私個人的にはこの細胞の発見はノーベル賞級だと思ってます.しかし,Muse細胞発見時も特に大きな報道はなく,今回の脳梗塞モデルの改善効果の報告に関しても,ニュースではローカルの仙台放送が報道したのみのようです.かといってSTAP細胞発見のときのマスコミ騒ぎのようなことにはなってほしくはありませんが.
線維芽細胞に含まれる特異的な細胞集団Muse細胞の移植は確固とした神経分化を介して実験的脳梗塞を改善させる
Uchida H, Morita T, Niizuma K, et al. Transplantation of Unique Subpopulation of Fibroblasts, Muse Cells, Ameliorates Experimental Stroke Possibly Via Robust Neuronal Differentiation. Stem Cells 2015 Sep 21 [Epub ahead of print]
PMID:26388204

Abstract
【目 的】
線維芽細胞内の既存の多能性様幹細胞として存在しているMuse細胞は,腫瘍性を持たず,三胚葉系細胞への分化能を示し,傷害モデルに移植されることで失われた細胞を補充する.細胞死およびヒト皮膚線維芽細胞由来Muse細胞の機能をラット脳梗塞モデルで評価した.

【方 法】
多能性幹細胞表面マーカーstage-specific embryonic antigen-3(SSEA-3)を用いて採取されたMuse細胞(30000細胞)を,中大脳動脈閉塞後2日目の脳梗塞ラットに対して脳の3か所に打ち込み,細胞の生物学的効果を84日間以上評価した.

【結 果】
梗塞脳のスライスを共培養すると,Muse細胞は自発的かつ速やかに神経/神経系細胞に分化していた.Muse細胞移植脳梗塞ラットは,対照群に比して,梗塞範囲の減少なしに70および84日目の神経学的機能と運動機能の有意な改善を示した.Muse細胞は84日間宿主の脳で生存し,脳皮質内でNeuN(成熟神経:~65%),MAP-2(~32%),カルビンディン(~28%),GST-π(希突起膠細胞:~25%)陽性細胞に分化したが,グリア線維性酸性タンパク質陽性細胞は稀であった.腫瘍形成は見られなかった.感覚運動皮質に生着分化したMuse細胞は,神経線維をを脊髄まで伸ばし,後肢の体性感覚誘発電位を示した.

【結 論】
Muse細胞は,宿主の脳環境下で生着後の神経細胞への高率な分化を示し,脳梗塞症状を緩和する神経回路の再構築が可能である点において,他の幹細胞よりも特異的である.ヒト線維芽細胞由来Muse細胞は,特に脳梗塞における自家細胞療法を検討する際に,遺伝子操作の必要性を回避する,幹細胞移植の新たなソースとなる.
■出澤らは,成人の皮膚,骨髄,脂肪組織の中に,多様な細胞になる能力を持つ多能性幹細胞があることを発見し,Multilineage-differentiatingStress Enduring(Muse)cellと名付けた[1].Muse細胞は,間葉系マーカーのCD105と多能性マーカーのSSEA(stage-specific embryonic antigen)-3を用いて分離でき,間葉系幹細胞分画中に混在する.間葉系幹細胞は,同じ中胚葉系の骨,軟骨,脂肪のみならず,内胚葉系にも分化でき,肝硬変や心筋梗塞でもある程度の組織修復が見られることが分かっており,これらの現象が間葉系幹細胞中に存在するMuse細胞によって説明できる可能性があるとされている.

■Muse細胞は骨髄,皮膚,脂肪から採取でき,胚葉を超えて様々な細胞へと分化する多能性を有するが,iPS細胞に見られたような腫瘍形成性がほぼ見られない.また,回収し,そのまま静脈へ投与するだけで傷害組織にホーミング・生着し,その組織に特異的な細胞へと分化することで組織修復と機能回復をもたらす.すなわち,Muse細胞は生体に移植する前のcell processing centerにおいて事前の分化誘導を必ずしも必要としない,という点でiPS細胞とは大きく異なり,静脈内投与するだけで再生治療が可能である.

■Muse細胞は結合組織中や接着培養などの環境では間葉系幹細胞として振る舞う一方,血液中や浮遊培養などの懸濁状態においては多能性を発現するという二重性を有する.細胞懸濁液においてMuse細胞は増殖を開始し,懸濁状態でES細胞が形成する胚様体に酷似したES細胞を単独の細胞から形成できる点も他の幹細胞と異なる特徴である.

■山中らが発見したiPS細胞は,ヒトの線維芽細胞に山中因子(Oct34,Sox2,Klf4,c-Myc)を導入することにより得られる.出澤らは,ヒト線維芽細胞をMuse細胞と非Muse細胞の分画に分けて山中因子を導入したところ,Muse細胞はiPS細胞に変化したが,非Muse細胞分画からはiPS細胞は得られなかったと報告している[2]

■近年,集中治療領域において,急性炎症性の臓器傷害が生じた際に,傷害臓器細胞からのシグナルにより骨髄から幹細胞様の細胞が出てきて傷害部位に集積し,その部位の細胞へと分化することが近年分かってきており,この分化細胞はMuse細胞なのではないかとする説が出てきている.重症病態の多臓器不全,低酸素脳症,Post-Intensive Care Syndrome(PICS)において,このMuse細胞が治療の一手段となる日がくるかもしれない.

[1] Kuroda Y, Kitada M, Wakao S, et al. Unique multipotent cells in adult human mesenchymal cell populations. Proc Natl Acad Sci U S A 2010; 107: 8639-43
[2] Wakao S, Kitada M, Kuroda Y, et al. Multilineage differentiating stress-enduring (Muse) cells are a primary source of induced pluripotent stem cells in human fibroblasts. Proc Natl Acad Sci U S A 2011; 108: 9875-80
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by DrMagicianEARL | 2015-10-12 12:23 | 文献 | Comments(0)

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