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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:文献( 65 )

さあ,今年もついにこの季節がやってまいりました.明日からの臨床に役立たない(一部役に立つかも?)論文を私の独断と偏見で40報選んできました.小ネタとして使うもよし,抄読会に使うもよしです.

ドリップコーヒーは慢性C型肝炎患者の肝機能を改善させるが,他のコーヒーではダメ
Sasaki Y, et al. Effect of caffeine-containing beverage consumption on serum alanine aminotransferase levels in patients with chronic hepatitis C virus infection: a hospital-based cohort study. PLoS One 2013; 8: e83382
C型肝炎ウイルスRNA陽性患者376例においてALTとコーヒー消費量を調査.毎日のドリップコーヒーは用量依存性にALTを低下or正常値を維持させる効果がある.缶コーヒー,インスタントコーヒー,ノンカフェインコーヒーでは効果乏しい.

お香もタバコと同様に体に毒?
Cohen R, et al. Hazard assessment of United Arab Emirates (UAE) incense smoke. Sci Total Environ 2013; 458-460: 176-86
ヒト肺細胞をお香の煙に曝露させるとタバコの煙と同様の炎症反応が生じた.
※お香は必ずしもいいわけではないようです.喫煙者がお香に曝露されると発癌リスクが増加するという論文もあります→Environ Health Perspect 2011; 119: 1641-6

トラベルミンで背が伸びる?
Matsushita M, et al. Meclozine facilitates proliferation and differentiation of chondrocytes by attenuating abnormally activated FGFR3 signaling in achondroplasia. PLoS One 2013; 8: e81569
メクロジン(トラベルミン)に骨の伸長促進作用があることが判明.
※人間で実証はされてませんよ.

怒りっぽい人は心血管疾患再発リスクが少ない?
Nakamura S, et al. Prognostic value of depression, anxiety, and anger in hospitalized cardiovascular disease patients for predicting adverse cardiac outcomes. Am J Cardiol 2013; 111: 1432-6
心血管疾患で入院した患者414例の追跡調査.心血管疾患再発および死亡リスクは,怒りやすい性格の患者で66%有意に少なく,抑うつ患者では2.62倍に増加する.
※意外な結果でした.すぐ怒る人はストレスをためこまないということでしょうか?

虫垂は無用の長物ではなく,残せるなら残した方がよい?
Masahata K, et al. Generation of colonic IgA-secreting cells in the caecal patch. Nat Commun 2014; 5: 3704
虫垂のリンパ組織が粘膜免疫で重要な免疫グロブリンIgAを産生しており,腸内細菌叢の制御に関与している.マウスモデル研究.

夫婦円満の秘訣は血糖値?
Bushman BJ, et al. Low glucose relates to greater aggression in married couples. Proc Natl Acad Sci U S A 2014; 111: 6254-7
血糖値が低いと怒りの感情や攻撃性が増すため,幸せな結婚生活を送りたい夫婦にとっては好ましいことではない.107組夫婦の朝食前と就寝前の血糖値を21日間測定した前向き観察研究.
※「恋人を怒らせたらスイーツを」の原則ですね.

論文のWikipediaからの引用
Bould MD, et al. References that anyone can edit: review of Wikipedia citations in peer reviewed health science literature. BMJ 2014; 348: g1585
インパクトファクターが高い主要医学誌も含め,論文にWikipediaからの引用がみられた.Wikipediaから引用した記事を出版する際,エディターやレビュアーは注意すべきである.1008医学誌1433報告の検討.

若い血液を輸血すると若返る?
Villeda SA, et al. Young blood reverses age-related impairments in cognitive function and synaptic plasticity in mice. Nat Med 2014; 20: 659-63
ヒトの年齢で20~30歳に相当する生後3か月のマウスから輸血を複数回行ったところ,同56~69歳に相当する生後18か月のマウスの脳の構造に変化がみられ,また機能的な改善もみられた.
※ドラキュラ理論でしょうか.実は類似する研究がさらに2つ報告されています.人身売買に利用されなければいいですが・・・

動物実験と研究者の性別
Sorge RE, et al. Olfactory exposure to males, including men, causes stress and related analgesia in rodents. Nat Methods 2014; 11: 629-32
男性や男性が着たTシャツが存在するとき,マウスは無痛覚,ストレスホルモンの増加,体温の上昇,脱糞など恐怖の兆候を示した.実験動物は男性研究者の匂いでストレスを感じる可能性.
※研究者の性別がバイアスになってくる時代がくるのでしょうか

変わった人が異性に魅力的にうつることもある
Janif ZJ, et al. Negative frequency-dependent preferences and variation in male facial hair. Biol Lett 2014; 10: 20130958
異性の注目を引く上で変わった人に見えることは最悪の結果をもたらすと思われがちだが,実際には異性にとって魅力的に映る場合もある.ある種の特徴が少人数にのみ備わっている場合は魅力になる.
※変人がモテることもあるということでしょう.

かゆいところをかく意義
Kardon AP, et al. Dynorphin acts as a neuromodulator to inhibit itch in the dorsal horn of the spinal cord. Neuron 2014; 82: 573-86
脊髄から分泌されるダイノルフィンは掻痒感を抑える.掻痒部をひっかいたり冷やしたりする行為はダイノルフィン分泌を促進させることで掻痒感を抑制する.マウスモデル研究.
※かゆいところをかく行為にはちゃんと意味があったんですね.

携帯電話使用は脳腫瘍発生リスクを増加させる
Coureau G, et al. Mobile phone use and brain tumours in the CERENAT case-control study. Occup Environ Med 2014; 71: 514-22
携帯電話通話時間の合計が896時間以上で神経膠腫発生リスクが2.89倍,髄膜腫発生リスクが2.57倍に有意に増加する.また,携帯電話に18360回以上コールがあると神経膠腫発生リスクが2.10倍有意に増加する.携帯電話の頻回使用は脳腫瘍の危険因子である.脳腫瘍患者447例と対照群892例を比較した症例対照研究.
※院内PHSはどうなんでしょうね?

夢を見ながらこれは夢だと気づく明瞭夢
Voss U, et al. Induction of self awareness in dreams through frontal low current stimulation of gamma activity. Nat Neurosci 2014; 17: 810-2
明瞭夢(夢の最中に「あ,これは夢だ」と気がつく夢)の経験がない成人27例で,レム睡眠に入ってから2分後に前頭葉に微弱電を30秒間与えると77%が明瞭夢を見た.
※明瞭夢は私もよく経験するんですが,見れる人って意外に少数派なんですね.

他人への不信と認知症
Neuvonen E, et al. Late-life cynical distrust, risk of incident dementia, and mortality in a population-based cohort. Neurology 2014; 82: 2205-12
他人への不信が重度の人は認知症リスクが3.13倍に増加する.死亡リスクも統計学的に有意ではないが増加する傾向がみられた.1449例解析

脳と筋肉のバランス進化論
Bozek K, et al. Exceptional evolutionary divergence of human muscle and brain metabolomes parallels human cognitive and physical uniqueness. PLoS Biol 2014; 12: e1001871
人間の脳は全エネルギーの20%を消費する高い基礎代謝率が必要となり,筋肉の退化と引き換えに脳が進化し,高い認知能力を得た.人間,チンパンジー,マカクザル,マウスの比較研究.
※進化論の観点からも,文武両道ってすごいと思うんです.

チンパンジーの短期記憶,パターン認識能力,視覚的判断は人間より優れている
Martin CF, et al. Chimpanzee choice rates in competitive games match equilibrium game theory predictions. Sci Rep 2014; 4: 5182
かくれんぼのコンピュータゲームをヒトとチンパンジーにプレイさせたところチンパンジーが勝った.チンパンジーは優れた短期記憶,パターン認識の能力,素早い視覚的判断によりゲーム理論の理解でヒトより優れている.
※自然の中で生き抜く力としての情報の単純化把握はヒトよりチンパンジーの方が優れているということでしょうか.

なぜ舌を噛まずに食物を摂取できるのか?
Stanek E 4th, et al. Monosynaptic premotor circuit tracing reveals neural substrates for oro-motor coordination. Elife 2014; 3: e02511
舌を噛まずに食物を摂取できるメカニズム解明.
※蛍光する遺伝的に無毒化したバージョンの狂犬病ウイルスでタグづけして筋と神経の作用を観察しています.狂犬病ウイルスが神経をたどっていく性質を利用しているようです.

背が低い男性の方が長生きする?
He Q, et al. Shorter Men Live Longer: Association of Height with Longevity and FOXO3 Genotype in American Men of Japanese Ancestry. PLoS One 2014; 9: e94385
背の低い男性は長寿と関連性があるFOXO3遺伝子を持つ傾向がある.ハワイのオアフ島に住む8006人の日系アメリカ人男性を対象とした観察研究.

アメフトは脳海馬減少と関連する
Singh R, et al. Relationship of collegiate football experience and concussion with hippocampal volume and cognitive outcomes. JAMA 2014; 311: 1883-8
アメフトでの脳震盪は脳海馬の減少と関連していた.アメフトの経験年数は反応速度低下と関連していた.アメフト選手50例と背景因子でマッチした非アメフト選手対照25例の横断研究.
※米国やカナダではアメフトやアイスホッケーでの脳機能の研究がさかんです.

記憶の回復
Parra-Damas A, et al. Crtc1 activates a transcriptional program deregulated at early Alzheimer's disease-related stages. J Neurosci 2014; 34: 5776-87
記憶に関係する脳の海馬にアルツハイマー病で阻害されるタンパク質を生成する遺伝子Crtc1を注入すると失われた記憶が回復する.アルツハイマー病マウスモデル研究.

カフェイン摂取で記憶力向上
Borota D, et al. Post-study caffeine administration enhances memory consolidation in humans. Nat Neurosci 2014; 17: 201-3
カフェイン摂取で記憶力が向上する.健常ボランティア73例での二重盲検RCT.
※カフェインが海馬に作用するようです.私は論文読んでるときはよくブラックガムをかんでいるですが,正解?

電気ショックは不愉快な記憶を消す?
Kroes MC, et al. An electroconvulsive therapy procedure impairs reconsolidation of episodic memories in humans. Nat Neurosci 2014; 17: 204-6
重症うつ病患者42例に2枚の写真を見せ,その後そのうち1枚の写真を思い出してもらう瞬間に脳に電気ショックを与えるとその1枚を思い出せなくなった.もう1枚は明確に思い出せた.脳電気ショックは不愉快な記憶を消す可能性がある.

早漏症の定義変更
Serefoglu EC, et al. An evidence-based unified definition of lifelong and acquired premature ejaculation: report of the second international society for sexual medicine ad hoc committee for the definition of premature ejaculation. J Sex Med 2014;11:1423-41
国際性医学学会による科学的根拠に基づいた早漏の定義と診療ガイドラインの改訂.先天性なら1分以内,後天性なら3分以内と定義された.
※国際性医学学会は不妊や夫婦間問題など様々な性の問題をまじめに研究している学会で,早漏症はかなり重要な問題だそうです.治療薬にはSSRIが有効とされている他,スプレー製剤もあります.

アダルトビデオを見る人は脳の一部が小さい
Kühn S, et al. Brain Structure and Functional Connectivity Associated With Pornography Consumption: The Brain on Porn. JAMA Psychiatry 2014 May 28
ポルノ鑑賞頻度が高くなるにつれて線条体右尾状核の灰白質体積が小さくなる.64例観察研究.
※考察では,脳線条体体積が小さいと快楽を経験するための外部刺激をより多く必要とするの可能性があり,そのためにより多くの報酬としてポルノ鑑賞を経験している可能性がある,とのことです.

女性名がつけられたハリケーンだと死亡リスク3倍?
Jung K, et al. Female hurricanes are deadlier than male hurricanes. Proc Natl Acad Sci U S A 2014; 111: 8782-7
女性名がつけられたハリケーンは,男性名のハリケーンに比べ人々が脅威を感じにくいため,死者の数が3倍になっている.1950-2012年のコホート研究.
※日本も台風に「初○ミ○」とか女性名つけたら死亡リスク上がっちゃうんでしょうか?

牛肉より鶏肉を食べた方が乳癌になりにくい?
Farvid MS, et al. Dietary protein sources in early adulthood and breast cancer incidence: prospective cohort study. BMJ 2014; 348: g3437
成人早期の赤肉を多く摂取すると乳癌発生リスクを22%増加,家禽類を多く摂取すると乳癌発生リスクを27%減少させる.閉経前女性88803例前向きコホート研究.
※若い女性のみなさん,牛肉より鶏肉の方が乳癌になりにくいかもですよ

早食いは太る
Hamada Y, et al. The number of chews and meal duration affect diet-induced thermogenesis and splanchnic circulation. Obesity 2014; 22: E62-9
健常若年男性10例を早食い群と遅食い(よくかむ)群で比較.遅食い群の方が消化管血流が増加し,消化吸収活動が増え,エネルギー消費量も高くなる.
※「早食いが太る原因」「よくかんで食べよ」の実証.データを見ると遅食いの方がエネルギー消費量が25倍です.

肉を炭火で焼くと発癌物質が発生するが,ビール漬けしてから焼くと発生しにくくなる
Viegas O, et al. Effect of beer marinades on formation of polycyclic aromatic hydrocarbons in charcoal-grilled pork. J Agric Food Chem 2014; 62: 2638-43
肉を炭火で焼くと発癌物質であるPAHが発生する.豚肉を4時間ビール漬けし炭火で焼くとPAHが減少する.ビール別ではブラックエールなら53%,ピルスナーなら13%,ノンアルコールのピルスナーなら25%減少する.

うがいの水は飲み込まない方がよい
Arimatsu K, et al. Oral pathobiont induces systemic inflammation and metabolic changes associated with alteration of gut microbiota. Sci Rep 2014; 4: 4828
歯周病の原因菌を飲み込むと腸内細菌が変化して様々な臓器や組織に炎症を引き起こす.これは歯周病が糖尿病や動脈硬化を進行させる原因である.Porphyromonas gingivalisを用いたマウスモデル研究.
※一時期飲み込んだ方がいいなんてテレビで言ってた方がおられましたが,よくないようです.ちなみにPorphyromonas gingivalisは今では関節リウマチの原因菌として知られています.

飲酒時のウコンは肝臓によくない
Zhao HL, et al. Negative effects of curcumin on liver injury induced by alcohol. Phytother Res 2012; 26: 1857-63
クルクミン(ウコンの成分)はアルコールと同時に投与されると,濃度依存的にアルコール性肝障害を増悪させる.マウスモデル研究.
※なお,ついでにヘパリーゼについても.ヘパリーゼは副作用はほとんどないけど人間での有用性を検討した論文が実は1個もありません.動物実験結果からはアルコール摂取に対する有効量は体重1kgあたりヘパリーゼW1本ぶんに相当しますので,体重50kgなら50本一気呑みしなきゃいけないですね.

「赤ワインはポリフェノールが入っているので体にいい」は嘘?
Semba RD, et al. Resveratrol Levels and All-Cause Mortality in Older Community-Dwelling Adults. JAMA Intern Med 2014 May 12
赤ワインに豊富に含まれているポリフェノールであるレスベラトロールは,炎症マーカー,心血管疾患,癌,死亡率を減らさず,人を長生きさせる効果はない.783例前向きコホート研究.
※ついに赤ワイン健康説が人間を対象とした研究で否定されました.フランス人が脂肪食をよく摂取するのに心臓病が少ないというフレンチパラドックスを赤ワインが説明しうるPMID:11373252)というのを御存知の方もおられるでしょうが,その後,実際の心臓病発生率は他国と変わらないことをWHOが指摘しています(PMID:19364995).なお,赤ワイン100mLあたりのレスベラトロール量は0.3mgです.過去に人間においてレスベラトロールが脂肪関連にいい影響を与えたとする二重盲検RCTで最も投与量が少なかった研究では1日250mg.赤ワイン換算で毎日83リットル呑めば効きます.呑めますか?

肉類・油ものを摂取したときは赤ワインよりもビールやお茶?
Nekohashi M, et al. Luteolin and quercetin affect the cholesterol absorption mediated by epithelial cholesterol transporter niemann-pick c1-like 1 in caco-2 cells and rats. PLoS One 2014; 9: e97901
ポリフェノールの一種であるルテオリンとケルセチンは腸管からコレステロール吸収とコレステロール輸送を阻害する.マウスモデル研究.
※赤ワインのポリフェノールはレスベラトロールだから別です.ビールとお茶にはケルセチンが入っています.

緑茶は認知症リスクを減少させる
Noguchi-Shinohara M, et al. Consumption of green tea, but not black tea or coffee, is associated with reduced risk of cognitive decline. PLoS ONE 2014; 9: e96013
緑茶は認知症や軽度認知機能障害の発症リスクを,毎日飲むことで68%減少,週に1-6日飲むことで53%減少させる.認知症発症リスクに限定すると74%減少させる.コーヒーや紅茶では効果なし.60歳以上の日本人490例コホート研究.

レモンでダイエット?
Hiramitsu M, et al. Eriocitrin ameliorates diet-induced hepatic steatosis with activation of mitochondrial biogenesis. Sci Rep 2014; 4: 3708
ヒトと遺伝子配列や肥満のメカニズムが似る小型熱帯魚ゼブラフィッシュを太らせ,レモンに多く含まれるエリオシトリンを投与すると,肝臓脂肪が減少した.また,ヒトから取り出した肝細胞にエリオシトリンを添加すると脂肪蓄積が抑制された.

断食は免疫を活性化する?
Cheng CW, et al. Prolonged Fasting Reduces IGF-1/PKA to Promote Hematopoietic-Stem-Cell-Based Regeneration and Reverse Immunosuppression. Cell Stem Cell 2014; 14: 810-23
6カ月毎に2-4日間の断食を行うことで老化や腫瘍成長のリスクと関連するプロテインキナーゼAが減
少する.断食が幹細胞を活性化し,免疫細胞を再生する.
※癌患者への有用性は…?

ウォッカ飲みすぎは早死にする
Zaridze D, et al. Alcohol and mortality in Russia: prospective observational study of 151,000 adults. Lancet 2014; 383: 1465-73
ロシアの成人20万人の前向きコホート研究.ウォッカはロシア成人の早死にリスクの主要原因.
※まあ当たり前な結果ではあるんですが,論文見ると,飲んでる量が桁違いです.週何本とかいうレベルですので.

ウォッカ一気飲みでエンドトキシン血症に
Bala S, et al. Acute binge drinking increases serum endotoxin and bacterial DNA levels in healthy individuals. PLoS One 2014; 9: e96864
体重あたり2mL/kgの40%ウォッカを一気飲みすると,腸粘膜の透過性亢進により血中エンドトキシン濃度が上昇する.得られた濃度上昇では理論上,TNFα,IL-6,ケモカイン,MCP-1の濃度上昇をきたしうる.健常成人25例観察研究.
※ウォッカのショットグラス2杯一気飲みでエンドトキシン血症になるようです.お酒による末梢血管拡張も伴うため,一種の敗血症性ショックモデルになるかもですね.

毎日の多量飲酒で精神機能,認知機能が低下する
Sabia S, et al. Alcohol consumption and cognitive decline in early old age. Neurology 2014; 82: 332-9
多量飲酒を毎日続ける人の精神機能はアルコール摂取量が少ない人に比べて1年半から6年間分ほど衰えが早い.36g/日以上アルコールを摂取する人は記憶や脳機能が急激に低下した.7153例コホート研究.
※毎日飲むなら1日1杯までにしておいた方がよいようです.

脱法ハーブは脳細胞を死滅させる
Tomiyama K, et al. Cytotoxicity of synthetic cannabinoids on primary neuronal cells of the forebrain: the involvement of cannabinoid CB1 receptors and apoptotic cell death. Toxicol Appl Pharmacol 2014; 274: 17-23
脱法ハーブで確認された合成カンナビノイド系化合物のうち8種類の成分をマウスの脳神経細胞に与えたところ,脳神経細胞のアポトーシス誘導するなど強い毒性が示された.
※国立精神・神経医療研究センターからの報告です.脱法ハーブは救急医療においてはかなり深刻な問題になってきています.法律上の対策が急務です.
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by DrMagicianEARL | 2014-07-02 21:30 | 文献 | Comments(0)
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■「First, Do No harm !」「Avobe All, Do No Harm !」(まず/何よりも,害を与えてはならない)という言葉は頻繁に使われており,ラテン語ではPrimum Non Nocereである.PubMedで「Do no harm」または「Primum non nocere」で検索すると1000を超える文献がヒットしており,この短く分かりやすい言葉がいかに引用されているかが分かる.ではこの言葉の由来についてはみなさんは御存知だろうか?

■「"First, Do No Harm"はヒポクラテス(Hippocrates)の誓いのひとつである」と由来を答える人がほとんどと思われる.しかし,ヒポクラテスの誓いにはこのような短文はない.ヒポクラテスの誓いの中には,英訳で「I will prescribe regimens for the good of my patients according to my ability and my judgment and never do harm to anyone.(自身の能力と判断に従って,患者に利すると思う治療法を選択し,害と知る治療法を決して選択しない.)」とあり,ここが類似している点である.確かにこの文章の一部としてDo No Harmを取り出したと考えることもできるかもしれない.しかしながら,意味がわずかながら異なってくること,ラテン語としては合わないことも指摘されている.そもそも頭につく「First」や「Above all」はいったいどこから来たのか?

■実は近年の由来の調査[1]では,この「Do No Harm」はヒポクラテスの言葉ではないとされている.弟子のガレン(Galen)という説もあったが,それも否定的であり,この言葉の由来は実はヒポクラテスの誓いにつながらない可能性が高いとされている.「First, Do No Harm」という言葉をヒポクラテスの言葉として引用すべきではなく,用いるならヒポクラテスの誓いからそのまま文章を引用すべきである.

■多くの人がこの言葉の由来を勘違いしている上に,教育現場でも不適切な引用が非常に多い.この言葉を批評というよりは象徴として用いていること[2]や,この言葉そのものに対する批判もでてきている.短い言葉ゆえに,しかも「First」や「Above all」が前に付いた結果,害を与えないことが前面に出すぎてしまいヒポクラテスの誓いが意図する意味と乖離し[3],害を過剰評価することで患者が得られるであろう利益とのバランスを考えなくなってしまうリスクがある[4].それゆえ「First, Do No Harmという短い言葉だけを示すのは不適切である」と指摘されている.
※私はこの「First, Do No Harm」という言葉は,原稿や講演会では使わないようにしています.

■話がやや脱線するが,私はエビデンスネガティブデータの扱いについて,とりわけ感染症・集中治療領域でここ1-2年間で感じていた,うまく言葉では言い表せない違和感をネット上で感じていた.これはFirst, Do No Harmというフレーズ(この言葉が出てきたわけではないが)の負の面を知らないうちに反映されていた心理的バイアスを感じ取っていたのではないかと考えている.

■たとえば薬剤の批判的吟味の際,有効性に関する報告は厳しく査読しつつ,ネガティブデータに関してはConclusionsだけに飛びついたかのような極端な発言がネット上で見受けられるのも事実である(仮にその先生がちゃんと読んで吟味していても,ネット上の発言はそう見えてしまうということ).私自身,2年くらい前はネガティブデータの論文の吟味が今よりかなり甘かったのも事実で,すぐに飛びついて過剰反応していた.リスクとベネフィットのバランスまでを深く考えていなかった部分もあった.そしてあるときに,「あれ?できる限りニュートラルに,と思っていたのに自分にバイアスがかかってる」と感じるようになり,ふとネットで周囲を見ると,そんなバイアスが全体的にかかっているようにも見えることに気がついた(私自身もそのバイアスが完全に消えたわけではなく,なかなか難しいところがある).

■要は,情報発信があったら,その元となる論文をちゃんと自分で確認し,自分で判断する,ということをちゃんと行うべきである.しかし,医療従事者全員がそうともいかず,理想がなかなか達成できない部分はある.英語を読むのが苦手な人もいれば,論文の吟味がまだ苦手な人や論文を読もうにも時間がない人も多い.自分の専門外領域の論文であれば読む優先順位が下がって後回しになることもあるかもしれない.そこに声が大きい先生の解釈等が提示されると,その通りに流れてしまう人もいて,おそらくその数は決して少なくない.そして,その傾向が特にネガティブデータ論文がでたときによく見られる.

■情報の受け取り側は相当ヘテロな集団である.「そんなことをいちいち気にしてたら情報発信もできなくなる」,と言われそうだが,情報発信と受け取りにおいてできる限り注意しておきたい部分である.
※と書きつつなんですが,このブログのこれまで書いてきた記事すべては極力ニュートラルな視点を心がけようとはしていますが,私の考えのフィルターがかかっているというバイアスリスクがあることが前提として読んでください.最近,いろんな病院の先生から「研修医が抄読会で先生のブログから記事を引っ張ってきてました(笑)」と言われることもあってちょっと気がかりにはなっているのですが,ちゃんと元論文を熟読・吟味してくださいね.

■First, Do No Harmについての由来等を検証した詳しい論文について読まれたい方は,ややマニアックな内容ではあるが以下の文献[1]がおすすめである.

[1] Smith MC. Origin and Uses of Primum Non Nocere - Above All, Do No Harm. J Clin Pharmacol 2005; 45: 371-7
[2] Brewin T. Primum non nocere ? Lancet 1994; 344: 1487-8
[3] Touhey JF. Balancing benefit and burden: merely avoiding harm does not carry out the intent of the Hippocratic oath. Health Prog 1989; 70: 77-9
[4] Lasagna L. The therapist and the researcher. Science 1967; 158: 246-7
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by DrMagicianEARL | 2014-06-25 20:30 | 文献 | Comments(0)
■慢性腰痛(Modic type 1)の原因がニキビの原因であるPropionibacterium acnes(アクネ菌)であったという報告[1,2]や,関節リウマチの原因が口腔内常在菌のPorphyromonas gingivalisであったという報告[3]など,予想外の疾患が感染症であるという報告が相次いでいます.今では常識となっている,胃潰瘍・胃癌とHelicobacter pylori(ピロリ菌)の関係も30年前の発見当時[4]はかなりの衝撃だったようです.今回紹介する論文は動脈硬化の進展にピロリ菌と同じHelicobacter属のHelicobacter cinaedi(シナディ菌)が関与していることを発見したものです.
マクロファージにおける向炎症反応促進するHelicobacter cinaediによる動脈硬化の進行
Khan S, Rahman HN, Okamoto T, et al. Promotion of atherosclerosis by Helicobacter cinaedi infection that involves macrophage-driven proinflammatory responses. Sci Rep 2014; 4: 4680
PMID:24732347

Abstract
Helicobacter cinaediはヒトの菌血症の原因となる最も一般的な腸肝Helicobacter属であるが,その病原性は明らかではなかった.我々は動脈硬化におけるH. cinaediの関連性をin vivoおよびin vitroで検討した.我々は高脂血症マウスにおいてH. cinaedi感染が動脈硬化を有意に増強させることを発見した.感染したマウスの大動脈部では,少なくとも局所的に細菌介在性の向炎症性遺伝子発現によって好中球とF4/80発現泡沫細胞の集積増加が認められた.感染が無症候性であるにもかかわらず,H. cinaediのCytolethal Distending Toxin RNAの検出が大動脈感染で生じた.培養したマクロファージでのH. cinaedi感染はコレステロール受容体の発現に変化をもたらし,泡沫細胞化を引き起こした.また,感染はTHP-1単球の分化も誘導した.これらのデータは経験的モデルでの動脈硬化におけるH. cinaediの病原的役割としての初めてのエビデンスを示しており,それによって動脈硬化や心血管疾患における腸肝Helicobacter属の果たしうる役割のさらなる研究を正当化するものである.
■ようするに,感染細胞ではコレステロールの取り込みが増え,かつコレステロールが細胞外に排出されにくくなるため,動脈硬化が進行するということである.

Helicobacter cinaedi(シネディ菌)は腸に多い菌であり,感染者は1-2割存在するとも言われている.1984年に初めてヒトへの感染が判明したが,分離や培養が難しいとされている[5-9].また,血流に入るにもかかわらず無症候性感染が多い[10-13].抗菌薬は奏功しやすいものの再発も多いことが特徴で,簡単には除菌とはいかないと思われる.

[1] Rahme R, Moussa R. The modic vertebral endplate and marrow changes: pathologic significance and relation to low back pain and segmental instability of the lumbar spine. AJNR Am J Neuroradiol 2008; 29: 838-42
[2] Albert HB, Sorensen JS, Christensen BS, et al. Antibiotic treatment in patients with chronic low back pain and vertebral bone edema (Modic type 1 changes): a double-blind randomized clinical controlled trial of efficacy. Eur Spine J 2013; 22: 697-707
[3] Scher JU, Abramson SB. Periodontal disease, Porphyromonas gingivalis, and rheumatoid arthritis: what triggers autoimmunity and clinical disease? Arthritis Res Ther 2013; 15: 122
[4] Unidentified curved bacilli on gastric epithelium in active chronic gastritis.
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[5] Kitamura T, Kawamura Y, Ohkusu K, et al. Helicobacter cinaedi cellulitis and bacteremia in immunocompetent hosts after orthopedic surgery. J Clin Microbiol 2007; 45: 31-8
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[10] Fernandez KR, Hansen LM, Vandamme P, et al. Captive rhesus monkeys (Macaca mulatta) are commonly infected with Helicobacter cinaedi. J Clin Microbiol 2002; 40: 1908-12
[11] Fennell CL, Totten PA, Quinn TC, et al. Characterization of Campylobacter-like organisms isolated from homosexual men. J Infect Dis 1984; 149: 58-66
[12] Khan S, Okamoto T, Enomoto K, et al. Potential association of Helicobacter cinaedi with atrial arrhythmias and atherosclerosis. Microbiol Immunol. 2012; 56: 145-54
[13] Totten PA, Fennell CL, Tenover FC, et al. Campylobacter cinaedi (sp. nov.) and Campylobacter fennelliae (sp. nov.): two new Campylobacter species associated with enteric disease in homosexual men. J Infect Dis 1985; 151: 131-9
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by DrMagicianEARL | 2014-05-01 19:07 | 文献 | Comments(0)
2014年1月31日掲載
2014年3月10日追記・改訂
この記事は鳥取大学の研究について紹介したものですが,ちょうどSTAP細胞論文がNature誌からpublishされたニュースがでた頃と重なったため,Abstractの下にちょっとだけ言及しました.しかし,この1ヶ月ちょっとで事態がいろいろと変わり,STAP細胞論文そのものに疑いがもたれている状況にあるため,今回追記改訂しました.


■iPS細胞理論(というより体細胞の再プログラミング(初期化)による多能性獲得の理論)の応用で,癌細胞を正常細胞に戻すという,一般的抗癌剤や分子標的治療薬ではなしえなかった,これまでにない癌根絶治療のパラダイムシフトともいえる夢の治療法が見えてきたのかもしれません.しかも,この研究は日本(鳥取大学)からの報告です.
Hsa-miR-520dは幹性誘導により肝癌細胞を正常な肝組織に誘導する
Tsuno S, Wang X, Shomori K, et al. Hsa-miR-520d induces hepatoma cells to form normal liver tissues via a stemness-mediated process. Sci Rep 2014; 4: 3852
PMID:24458129

Abstract
【目的・方法】
ヒトncRNA遺伝子RGM249は癌細胞の分化度の範囲を制御し,293FT細胞をhiPSCsに転換する.この過程にある因子を特定するため,我々はin vitroで293FT細胞およびHLF細胞におけるレンチウイルスから誘導したmiR-520d発現の効果を検討した.続いて,我々は異種移植モデルにおいて腫瘍の形態を評価した.

【結 果】
移植されたHLF細胞は24時間以内にOct4およびNanogが陽性となり,p53のアップレギュレーションとヒトテロメレース逆転写酵素遺伝子(hTERT)のダウンレギュレーションを示し,ほとんどは移動能を失っていた.レンチウイルス感染後,細胞はマウス腹腔内に注入され,1ヶ月後の注入部位において,成熟(良性)奇形腫(6%),腫瘍なし(87%),成熟肝組織内の分化(7%)がみられた.

【結 論】
我々は単一のマイクロRNA(miRNA)の発現によってin vivoで癌細胞の悪性度を消失させることを初めて示した.このmiRNAは293FT細胞と肝臓癌細胞をhiPSC様細胞に転換させることに成功した.miR-520dによる悪性度の制御は,p53のアップレギュレーションを維持しつつ癌細胞を正常幹細胞に転換する.
■ここで登場している293FT細胞は京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞に使用した細胞である.この293FT細胞や未分化癌を幹細胞に変化させると,癌抑制遺伝子であるp53を高発現している.それまではmiR-302 familyやmiR-369,200cなど多数種のマイクロRNA併用による幹細胞への初期化が検討されているが,単一マイクロRNAでこのような結果が得られたことはこれまでなかった.この研究では未分化癌細胞にmiR-520dを導入すると,わずか12時間で細胞が変化し,癌細胞とはまったく異なる細胞に転換している.この検討は高分化の癌細胞でも検討されており,1ヶ月の期間を要して同様の変化がみられている.よって,悪性度が高い低分化の癌細胞ほど容易に良性化に転換しやすい特徴があることが分かる.このmiR-520dは極めて小さい分子であり,癌細胞への感受性が高い.

■本研究ではレンチウイルス(遺伝子導入ツールとしてよく用いられる)を使用しており,このウイルスを用いずに可能な技術なのかは考慮しておく必要があるかもしれない(レンチウイルスには癌化リスクもある).また,miR-520Rがどのように作用しているのかの機序の解明がまだ不明確なようである(8000以上の遺伝子を標的にしているようで,解明は困難を極めるかもしれない).

----- STAP細胞に関する内容ここから.文字がグレーの部分は1月31日の記事-----
■先日報道され話題になっているSTAP細胞(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cell;刺激惹起性多能性獲得)[1,2]についても少しとりあげておく.STAP細胞は理研発生・再生科学総合研究センター細胞リプログラミング研究ユニットの小保方晴子研究ユニットリーダーを中心とする研究ユニットと,同研究センターの若山照彦元チームリーダー,および米国ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授らの共同研究グループによる成果である.

■iPS細胞は遺伝子を導入することで初期化し,多能性をそなえた幹細胞であり,簡便に作製できるが,ES細胞ほどの能力を有さない.STAP細胞は遺伝子導入が不要で,刺激を与えるのみで作製が可能で,iPS細胞よりも作製効率が向上しているようである.さらに,STAP細胞は,試験管の中では細胞分裂増殖が生じない(iPS細胞やES細胞は試験管内増殖が可能).しかし,ACTH培養下,あるいはFGF4培養下ではSTAP細胞は細胞分裂による増殖が可能であった.興味深いことに,ACTH培養下では体の細胞を造る能力はあるが胎盤や羊膜を造る能力はなく,逆にFGF4培養下では体の細胞は造れず,胎盤や羊膜を造れる能力を有していた.胎盤や羊膜の細胞への変化はiPS細胞やES細胞では不可能であり,それゆえ今回のSTAP細胞は全能性の可能性があるとされている.

■このSTAP細胞研究のlimitationとしては,生後1週間のマウスを用いている点であり,実際には,大人のマウスでは成功率が極端に低くなってしまうとのことで(加齢による細胞劣化が原因とのこと),ここをクリアすることが1つの大きな検討課題となると思われる.また,試験管内では増殖できないゆえに大量調整ができないことも課題となっている.

■理研とSTAP細胞の共同研究を行ったハーバード大学研究チームは,脊髄損傷で下半身が不自由になったサルをSTAP細胞による治療実験を進めている.STAP細胞を作製し,これをサルの背中に移植したところ,サルが足や尻尾を動かせるようになっている(論文化予定とのこと).


以下追記

■このSTAP細胞論文について,Guo Jianliらの論文からの文章の剽窃や,Robert Blellochらの論文からの文章剽窃が指摘されているが,それ以上に,画像において疑義がでていることから捏造の疑いがもたれている.まず,この研究では生後1週マウスの脾臓由来のTリンパ球を用いており,TCR再構成をもって初期化を証明するものであったが,それを示すDNA電気泳動写真のレーン3の部分に切り貼りを行った形跡があり,GLバンドないことが指摘された.その後の理研のプロトコル発表ではTCR再構成がなくともSTAP細胞と呼んでよいという定義に変わっており,初期化ではなく単に元からあった幹細胞を選択(スクリーニング)しただけの可能性がある(そうであれば生後1週マウスでなければ成功しにくいことも納得がいくため,limitationが致命傷となりうる).これによりそもそもの初期化あってこその大発見という意義が失われてしまう.

■さらに3月9日に小保方博士の博士論文に使われた画像がSTAP細胞論文の画像と酷似していることが発見され,流用の疑いがもたれている.具体的には,博士論文の骨髄sphere由来のテラトーマ/Mesoderm免疫染色画像とSTAP細胞由来のテラトーマ/Mesoderm免疫染色画像が同一写真ではないかと指摘されている.この部分はSTAP細胞の多能性を示す重要な部分となるが,この2つの論文の研究はまったく関係がないものであり,もし画像流用であれば多能性すら示せておらず,捏造が確定ということになる.なお,理研で作ったSTAP細胞をハーバード大学に送ってテラトーマの写真を撮影したことになっており,テラトーマの写真についてはハーバード大学のバカンティ教授も把握しているはずである.この件についてバカンティ教授からの説明を求めることも必要であろう.

■なお,小保方博士の過去の論文においても多数の実験画像において不適切なデータ処理・加工・流用が疑われている状況にあるほか,脊髄損傷のサルをSTAP細胞移植で治療したと発表したバカンティ教授のグループの小島宏司氏の論文における不適切な画像流用が2件発覚しており,事態は予想以上に深刻な可能性がでてきている.

■現在,Nature誌のSTAP細胞論文はオープンとなり,理研およびハーバード大学が調査中であるが,第3者の詳細調査が必要であろう.なお,小保方博士とその共同執筆者からは現時点で説明はない.

[1] Obokata H, Wakayama T, Sasai Y, et al. Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 2014; 505: 641-7
[2] Obokata H,1Sasai Y, Niwa H, et al. Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Nature 2014; 505: 676-80
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by DrMagicianEARL | 2014-03-10 16:13 | 文献 | Comments(0)
■ICSと感染症に関するメタ解析がChest誌に報告されたので紹介します.
COPD患者における吸入コルチコステロイドの使用と結核およびインフルエンザのリスク:無作為化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析
Dong YH, Chang CH, Wu FL, et al. Use of Inhaled Corticosteroids in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease and the Risk of Tuberculosis and Influenza: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Chest 2014 Feb.6
PMID:24504044

Abstract
【背 景】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者において,吸入コルチコステロイド(ICS)の使用は肺炎リスクの増加と関連している.しかし,結核やインフルエンザといった,その他の呼吸器感染症におけるリスクはまだ明らかではない.

【方 法】
2013年7月から開始したMEDLINE,EMBASE,CINAHL,Cochrane Library,ClinicalTrials.govでの包括的文献検索によって,我々は少なくとも6ヶ月間ICSを継続した無作為化比較試験を抽出した.結核およびインフルエンザリスクをICS治療群と非ICS治療群を比較した推定の統合を行うため,Peto,Mantel-Haenszel,Bayesianのアプローチによるメタ解析を行った.

【結 果】
結核で25報(22898例),インフルエンザで26報(23616例)が登録された.ICS治療は,非ICS治療と比較して,結核の高いリスクと有意に関連していた(Peto OR 2.29; 95%CI 1.04-5.03)が,インフルエンザのリスク増加とは有意には関連していなかった(Peto OR 1.24; 95%CI 0.94-1.63).この結果は他の各メタ解析アプローチでも同様であった.さらに,COPD患者をICSで治療すると,1つの結核発生事象の要因におけるNumber Needed-to-Harm(NNH)は,非流行地域に比較して(NNH=1667)流行地域の患者ではより低かった(NNH=909).

【結 論】
我々の研究は,COPD患者において,さらなる検討を行うに値する,ICS使用と関連する結核とインフルエンザのリスクについての安全性の懸念を示すものである.
■私はCOPD患者に対しては,LAMA(長時間作用型抗コリン薬),LABA(長時間作用型β刺激薬)でもコントロール不良なケースか喘息合併のケースでない限り絶対にICS(吸入ステロイド)を処方しない方針にしていいる.理由はICSで感染リスク,血栓リスク,糖尿病悪化リスク等が報告されているためであり,特定の患者でない限りは有害性が有益性を上回る可能性が高いからである.このため,COPD患者に対してアドエアやシムビコートを第一選択とすべきではない.また,COPDを喘息と誤診するとICSが投与されてしまう懸念もあり,ましてやシムビコートの喘息に対する適応があるSMARTによって発作時も吸入などされてしまっては高用量ICS投与になる,初期診断は重要である.咳喘息疑い例でも,胸部X線撮影なしにICSによる診断的治療は行うべきでない.COPDに対する吸入薬の第一選択はあくまでもLAMAかLABAであり,ICSを含むシムビコートやアドエアではない.

■気管支喘息においてはICSが肺炎を増加させるか否かについては議論の余地があるが,COPD患者に対するICSが肺炎リスクとなることはコンセンサスが得られていると思われる.その原因として,COPD患者では気道クリアランスが低下しており,下気道に細菌が定着しやすいことが考えられている[1]

■Drummondら[2]は,COPD患者におけるICSを評価した二重盲検RCT11報14426例のメタ解析を行い,ICSが肺炎リスクを1.34倍有意に増加させると報告している(RR 1.34; 95%CI 1.03-1.75; p=0.03; I(2)=72%).サブグループ解析では,肺炎リスクは高用量のICSで1.46倍(RR 1.46; 95%CI 1.10-1.92; p=0.008; I(2)=78%),ICS使用開始早期で2.12倍(RR 2.12; 95%CI 1.47-3.05; p<0.001; I(2)=0%),ベースラインの呼気量が低いと1.90倍(RR 1.90; 95%CI 1.26-2.85; p=0.002; I(2)=0%),ICSと気管支拡張薬の併用で1.57倍(RR 1.57; 95%CI 1.35-1.82; P<0.001; I(2)=24%)有意に増加していた.

■Singhら[3]も無作為化比較試験18報16996例のメタ解析を行い,ICSが肺炎リスクを1.60倍有意に増加させ(RR 1.60; 95%CI 1.33-1.92; p<0.001; I(2)=16%),深刻な肺炎リスクを1.70倍増加させる(RR 1.71; 95%CI 1.46-1.99; p<0.001; I(2)=0%)と報告している.肺炎関連死亡リスクに関しても増加傾向がみられたが,統計学的有意差はなかった(RR 1.27; 95%CI 0.80-2.03 ; p=0.31; I(2)=0%).また,ICSはプラセボ群と比較すると,深刻な肺炎リスクが1.81倍有意に増加していた(RR 1.81; 95%CI 1.44-2.29; p<0.001).さらに,ICSとLABAの併用はLABA単独と比較して深刻な肺炎リスクが1.68倍有意に増加した(RR 1.68; 95%CI 1.20-2.34; p=0.002).さらにSinghらはこのメタ解析を24報23096例まで増やしてup-dateし[4],ICSで肺炎リスクが1.57倍(RR 1.57; 95%CI 1.41-1.75; p<0.0001)増加すると報告している.

■その他感染症として,14報の二重盲検RCT,11794例のコクランレビューによるメタ解析[5]では,COPD患者に対するICSでカンジダ感染症リスクが3.75倍,上気道感染リスクが1.32倍有意に増加すると報告されている.また,COPDではなく気管支喘息の研究であるが,気管支喘息小児192例でICS使用群と非使用群を比較したところ,咽頭への肺炎球菌の定着率は使用群で有意に高く(27.1% vs 8.3%),ICSは肺炎球菌定着リスクが3.75倍有意に増加した(RR 3.75; 95%CI 1.72-8.18; p=0.001)と報告されている[6]

■これらのICSによる感染症増加はステロイドの気道における免疫低下のみならず,ステロイドが体内に吸収されることによる,全身性ステロイド投与と同様の免疫力低下が生じている可能性がある.実際に,van Bovenら[7]のコホート研究では,ICSで静脈血栓症リスクは2.21倍(95%CI 1.72-2.86)有意に増加することが報告されており,この数値は全身ステロイド投与とほぼ同等である.5.5年間フォローアップされた388584例のコホート研究(糖尿病患者は30167例)[8]でも,ICSは糖尿病発症リスクを1.34倍(95%CI 1.29-1.39)に増加させると報告されている.ICSに関する16報RCT,17513例のメタ解析[9]でも,骨折リスクが1.27倍(Peto OR 1.27; 95% CI 1.01 to 1.58; p=0.04; I(2)=0%)増加することが報告されている.Kellyら[10]は,小児喘息患者943例をブデゾニド400mcg/日群,ネドクロミル16mg/日群,プラセボ群にランダムに割り付け,4-6年間投与したRCTを行い,ブデゾニド群で1.2cm有意に平均成人身長が低かったと報告している.Cossetteら[11]は,ICS単独またはICS+LABAを使用している妊婦7376例コホート研究を行い,低出生体重児(LBW),早産(PB),胎児発育遅延(SGA)の発生リスクを増加させなかったが,平均ICS用量が増えると,統計学的に有意ではないがこれらのリスクが増加する傾向がみられたと報告している.

■これらの結果から考えても,ICS使用によってそれなりの量が気道から体内に吸収され,全身性ステロイドと同様の作用を発現している可能性はおおいに考えられ,全身免疫系への影響の懸念もでてくるわけである.ここにCOPD患者の気道クリアランス低下という非特異的かつ物理的免疫機能低下という特徴があわされば,結核がICSを使用するCOPD患者で増加することは納得がいくところではある.

■Kimら[12]は,COPD患者616例の後ろ向きコホート研究で,結核発生リスクは,胸部X線写真上での陳旧性肺結核陰影のない患者で9.079倍(95%CI 1.012-81.431; p=0.049),陳旧性肺結核陰影がある患者で24.946倍(95%CI 3.090-201.365; p=0.003)有意に増加すると報告している.より大規模なN数での853439例症例対照研究[13]でも,喘息・COPD患者においてICSは結核リスクを1.20倍(95%CI 1.08-1.34)有意に増加(用量依存的)させると報告している.Leeら[14]は台湾国民健康保険データベース70782例の解析を行い,高齢,男性,糖尿病,終末期腎疾患,肝硬変とともに,COPDは結核発生の有意な独立危険因子であった(HR 2.468; 95%CI 2.205-2.762).

[1] Ernst P, Gonzalez AV, Brassard P, et al. Inhaled corticosteroid use in chronic obstructive pulmonary disease and the risk of hospitalization for pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2007; 176: 162-6
[2] Drummond MB, Dasenbrook EC, Pitz MW, et al. Inhaled corticosteroids in patients with stable chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA 2008; 300: 2407-16
[3] Singh S, Amin AV, Loke YK. Long-term use of inhaled corticosteroids and the risk of pneumonia in chronic obstructive pulmonary disease: a meta-analysis. Arch Intern Med 2009; 169: 219-29
[4] Singh S, Loke YK. Risk of pneumonia associated with long-term use of inhaled corticosteroids in chronic obstructive pulmonary disease: a critical review and update. Curr Opin Pulm Med 2010; 16: 118-22
[5] Nannini LJ, Lasserson TJ, Poole P. Combined corticosteroid and long-acting beta(2)-agonist in one inhaler versus long-acting beta(2)-agonists for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD006829
[6] Zhang L, Prietsch SO, Mendes AP, et al. Inhaled corticosteroids increase the risk of oropharyngeal colonization by Streptococcus pneumoniae in children with asthma. Respirology 2013; 18: 272-7
[7] van Boven JF, de Jong-van den Berg LT, Vegter S. Inhaled corticosteroids and the occurrence of oral candidiasis: a prescription sequence symmetry analysis. Drug Saf 2013; 36: 231-6
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[9] Loke YK, Cavallazzi R, Singh S. Risk of fractures with inhaled corticosteroids in COPD: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and observational studies. Thorax 2011; 66: 699-708
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[12] Kim JH, Park JS, Kim KH, et al. Inhaled corticosteroid is associated with an increased risk of TB in patients with COPD. Chest 2013; 143: 1018-24
[13] Lee CH, Kim K, Hyun MK, et al. Use of inhaled corticosteroids and the risk of tuberculosis. Thorax 2013; 68: 1105-13
[14] Lee CH, Lee MC, Shu CC, et al. Risk factors for pulmonary tuberculosis in patients with chronic obstructive airway disease in Taiwan: a nationwide cohort study. BMC Infect Dis 2013; 13: 194
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by DrMagicianEARL | 2014-02-09 15:22 | 文献 | Comments(0)
エビデンスレベルは高くないですが,集中治療領域でのスタチンについてブルージャーナルに面白い報告があったので紹介します.
重症疾患におけるスタチンの使用とせん妄リスク
Page VJ, Davis D, Zhao XB, et al. Statin Use and Risk of Delirium in the Critically Ill. Am J Respir Crit Care Med 2014 Jan 13
PMID:24417431

Abstract
【背 景】
集中治療室(ICU)の患者におけるせん妄はよく知られており,予後不良予測因子であり,神経炎症が機序と考えられている.スタチンの抗炎症作用はせん妄を減じるかもしれない.

【目 的】
スタチン療法を受ける重症疾患患者がスタチン療法を受けない患者よりもせん妄リスクが減少するかについて検討する.

【方 法】
2011年8月から2012年2月まで英国の内科外科混合ICUに入室した連続したICU患者データの前向きコホート解析を行った.ICUに入室中のせん妄のない日数を各患者ごとにCAM-ICUを用いて評価した.せん妄のない日数,毎日のスタチン投与とC反応性蛋白(CRP)を記録した.

【結 果】
2011年8月から2012年2月まで,スタチン投与を受けた患者151例を含む417例の連続的ICU患者が観察された.ランダムエフェクト多変量ロジスティック回帰を用いると,前日夕のスタチン投与はその後のせん妄無発症(OR 2.28; 95%CI 1.01-5.13; p<0.05)と低いCRP(β=-0.52; p<0.01)に関連していた.スタチンとせん妄無発症をCRPで調整すると,エフェクトサイズは有意ではなくなった(OR 1.56; 95%CI 0.64-3.79; p=0.32).

【結 論】
重症患者において,スタチン療法継続は毎日の低いせん妄リスクと関連していた.本研究を受けて,現在進行中の臨床試験でスタチンが重症疾患におけるせん妄の潜在的治療になるかについて検討している.
■集中治療領域においてスタチンの抗炎症作用[1]が注目されており,また,炎症とせん妄の関連については近年多数の報告がでている[2]ことから,スタチンの抗炎症作用がせん妄を減じるという仮説が三段論法で成り立つわけで,この仮説を検証したのが今回のコホート研究であり,共同著者にはICUせん妄の第一人者でもあるEly先生が名を連ねている.せん妄を抑制するならば,長期予後において差がでるかもしれない.

■CRPとせん妄については,ZhangらがICU患者223例の前向き観察研究を行っている[3].単変量解析ではせん妄発症患者の方が非発症患者よりCRPが有意に高かった(12.05 vs 5.75 mg/dL; P=0.0001).背景因子で調整した多変量ロジスティック回帰においても,CRPはせん妄と有意に関連していた(OR 1.07; 95%CI 1.01-1.15).24時間以内のCRP>8.1mg/dLはせん妄リスクを有意に増加させた(OR 4.47; 95%CI 1.28-15.60).

■ステロイドも抗炎症作用を有するが,ステロイドの場合は中枢神経系に対する直接作用を有し,レム睡眠を短縮させてしまい,むしろせん妄の要因となってしまう.他の抗炎症作用が期待されているマクロライド系抗菌薬,リコンビナント・トロンボモデュリン,β遮断薬については現時点ではせん妄リスクに与える影響についてのエビデンスがない.

■敗血症へのスタチンを検討したRCTで,死亡率を改善したとする報告はまだなく[4],人工呼吸器関連肺炎でのRCTではスタチン群で死亡率の悪化傾向が見られたため試験が中止されている[5].その一方で,コホート研究においては,スタチンを以前から内服している患者では死亡率が低いことが複数報告されている[4].おそらくスタチンを内服していない患者が感染症罹患と同時にスタチンを開始すると,脂質代謝系で悪影響がでる可能性があるのかもしれない.血管内皮細胞ではエネルギー源の70%を脂質に依存しており[6],重症病態下においてミトコンドリア機能不全による糖質代謝系の障害が起こりうることも考慮すると,脂質系への新規のスタチン介入は血管内皮細胞にとって決していいことばかりではないということも理論上考えられる.よって,脂質低下作用をもたないスタチン製剤の創薬が必要なのかもしれない(もしくはまもなく本邦にも登場するα-リノレン酸を主体とした脂質製剤をスタチンに併用するのがbetter?).

[1] Kouroumichakis I, Papanas N, Proikaki S, et al. Statins in prevention and treatment of severe sepsis and septic shock. Eur J Intern Med 2011; 22: 125-33
[2] DrMagicianEARL. 敗血症とせん妄(1) ~定義と評価,予後との関連~. EARLの医学ノート 2013 Nov.12 http://drmagician.exblog.jp/21312727/
[3] Zhang Z, Pan L, Deng H, et al. Prediction of delirium in critically ill patients with elevated C-reactive protein. J Crit Care 2014; 29: 88-92
[4] DrMagicianEARL. 【文献+レビュー】スタチンは敗血症の予後を改善するか? EARLの医学ノート 2014 Jan.15 http://drmagician.exblog.jp/21555736/
[5] Papazian L, Roch A, Charles PE, et al; STATIN-VAP Study Group. Effect of statin therapy on mortality in patients with ventilator-associated pneumonia: a randomized clinical trial. JAMA 2013; 310: 1692-700
[6] Dagher Z, Ruderman N, Tornheim K, et al. Acute regulation of fatty acid oxidation and amp-activated protein kinase in human umbilical vein endothelial cells. Circ Res 2001; 88: 1276-82
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by DrMagicianEARL | 2014-01-27 17:23 | 文献 | Comments(0)
 新年明けましておめでとう御座います.今年も宜しく御願い申し上げます.

 今年の最初の記事は,まだ論文化されていない研究内容として,2014年1月9日から13日まで米国サンフランシスコで開催される米国集中治療医学会の抄録集から(個人的に)興味深い内容のピックアップです.

The 43rd Critical Care Congress
January 9-13, 2014
Moscone Center South, San Francisco, California, USA
President: Carol L. Thompson, PhD, ACNP, CCRN, FCCM
Crit Care Med 2013; 41 Suppl
e0255123_0482650.png
集中治療室入室が必要ではない可能性がある患者の検出モデル
Sadaka F, Cytron M, Fowler K, et al. A model for identifying patients who may not need intensive care unit admission. SCCM Congress 2014 Oral 1
ICUに入室した全患者を後ろ向きに解析し,APACHEアウトカムデータベースを用いて,day1に1つ以上の生命維持のための積極的加療を受けた患者を検出し,低リスク群(初日に積極的加療を要さず,その後も積極的加療を要するリスクが10%以下の患者)2293例と積極的加療群(ICU入室中に1つ以上の積極的加療を受けた患者)を比較.APACHEⅣスコアは低リスク群34.3±13.4,積極的加療群58.7±25(p<0.0001).ICU在室日数は低リスク群1.6±1.7日,積極的加療群4.3±5.3日(p<0.0001).ICU死亡率は低リスク群0.7%,積極的加療群9.6%(OR 15.0; 95%CI 9.2-24.8; p<0.0001).院内死亡率は低リスク群1.8%,積極的加療群15.2%(OR 9.8; 95%CI 7.1-13.4; p<0.0001).
 米国でも集中治療コストは年間800億ドルに達しており,今後も増加することが見込まれている.限られた医療資源,ベッド,スタッフでICUを運営するためにもICUが必要でない患者を抽出していくシステムは必要で,本研究でもICU全入室患者の29.7%に及ぶ患者が低リスク群に該当している.
外傷性脳損傷におけるHMGB-1トランスロケーションと小膠細胞活性化はミノサイクリンによって減少する
Simon D, Aneja R, Lewis J, et al. HMGB1 translocation and microglial activation after pediatric TBI attenuated by minocycline. SCCM Congress 2014 Oral 10
重症外傷性脳損傷モデルラット17例での動物実験で,ミノサイクリンがHMGB-1トランスロケーションと小膠細胞活性化を阻害した.
 第2世代テトラサイクリン系抗菌薬のミノサイクリンには抗菌作用以外に神経保護作用が知られている.本研究でも指摘された小膠細胞阻害作用については実は早稲田大学の研究で男性の浮気防止効果としてプラセボ対照RCTで有用性が示されている(Watabe M, et al. Sci Rep 2013; 3: 1685).
早期リハビリテーション(mobilization)は脳神経外科ICU患者のアウトカムを改善するか?
Klein K, Mulkey M, Bena J, et al. Does early mobilization improve neuroscience ICU patient outcomes? SCCM Congress 2014 Oral 11
Neurosurgical ICUに入室した637例で,看護師始動の早期リハビリテーション開始プロトコル介入を検討した前向き前後比較研究.介入後は有意に歩行障害,人工呼吸器装着日数,血流感染,圧迫潰瘍,不安,抑うつが減少した.多変量解析では,早期リハビリテーショの方がより運動能があり,ICU在室期間や入院期間が短縮し,自宅退院が多く,不安が少なかった.死亡率,深部静脈血栓症,その他臨床アウトカムには有意差はみられなかった.
 今流行のnurse drivenの早期リハビリテーションプロトコルの有用性研究.血流感染症まで減少したのは意外.死亡率については長期予後でみると有意差がつくのかもしれない.
蘇生後心筋機能におけるβ遮断薬,β遮断+α1遮断薬の効果
Yang M, Hu X, Lu X, et al. The effects of β- and β-, α1- adrenergic blocking agents on post-resuscitation myocardial function. SCCM Congress 2014 Oral 18
心室細動蘇生後モデルラット24例での動物実験.β遮断薬(プロプラノロール),あるいはβ遮断薬とα1遮断薬(プラゾシン)の併用は蘇生後心筋機能障害を減少させ,心筋傷害バイオマーカー放出を減少させた.
 敗血症性ショックでのβ遮断薬については既にPhaseⅡまで有用性が示されているが,心肺蘇生後にもβ遮断薬の研究がでてきた.
ECMOを受ける重症心不全の成人患者において高体重は死亡率を増加させる
Ryan K, Lynch W, Wypij D, et al. Higher body weight increases mortality in adults with severe cardiac failure supported with ECMO. SCCM Congress 2014 Oral 25
米国の2005年から2011年までの多施設ECMOレジストリデータから,体重分布80%タイル以上の肥満群(男性100kg以上,女性90kg以上)と40-60%タイルの非肥満群(男性75-85kg,女性65-75kg)を比較した1611例後ろ向きコホート研究.調整前の死亡率は54% vs 51%(p=0.4)で有意差なし.サブ解析では,心原性(68% vs 54%, p=0.002)と心肺蘇生(84% vs 60%, p=0.03)においては肥満群の方が有意に死亡率が高かった.多変量解析では,肥満が死亡に関連した有意な独立危険因子であった(OR 1.4; 95%CI 1.1-1.7).
 近年の肥満パラドックスとは間逆の結果.ただ,日本人からしてみると40-60%タイル群でもかなり高体重な印象.
重症疾患における血清鉄レベルと血流感染症の関連性
Christopher K, Hajifathalian K, Chanchani S, et al. The association of serum iron levels and bloodstream infections in the critical ill. SCCM Congress 2014 Oral 42
2施設ICUの18歳以上の成人患者4703例の観察研究.血流感染症は18.4%に生じ,そのうち35.2%が敗血症と診断された.30日全死亡率は23.5%.入院前の血清鉄レベル>170μg/dLは60-169.9μg/dLの集団と比して血流感染症リスクが1.38倍(95%CI 1.00-1.92; p=0.050),調整後で1.41倍(95%CI 1.01-1.97; p=0.041),調整後敗血症リスクが1.39倍(95%CI 1.05-1.84; p=0.022),30日死亡リスクが1.42倍(95%CI 1.02-1.96; p=0.035)であった.
 鉄剤静注による感染症増悪は有名だが,入院前の血清鉄濃度で血流感染症発生率のみならず30日死亡率まで増加するとの結果.過剰な鉄剤投与は控えるべきであろう.
重症疾患患者の初期ビタミンD濃度と90日死亡リスク
Quraishi S, Bittner E, Blum L, et al. Vitamin D status at innitiation of care in critically ill patients and risk of 90-day mortality. SCCM Congress 2014 Oral 49
2施設の外科ICU患者100例を前向きに登録したビタミンDについての観察研究.平均血清total 25(OH)Dは17±8ng/mL,total 1,25(OH)2Dは32±19ng/mL.平均生体利用25(OH)Dは2.5±2.0ng/mL,1,25(OH)2Dは6.6±5.3ng/mL.90日再入院率は24%,90日死亡率は22%.Poisson回帰解析では,total 25(OH)Dが1ng/mL増加するごとに入院期間は2%短縮する(OR 0.98; 95%CI 0.97-0.98).共変量調整後,total 25(OH)Dが1ng/mL増加するごとに,90日再入院リスクは16%減少(OR 0.84; 95%CI 0.74-0.95),90日死亡リスクは16%減少(OR 0.84; 95%CI 0.73-0.95).外科ICU患者においてビタミンD補充が予後を改善するかについて無作為化比較試験が必要である.
 ビタミンDが低いと予後悪化に関連するとの結果.
重症疾患生存者におけるICU入院中のせん妄の長期予後
Wolters A, van Dijk D, Pasma W, et al. Long-term outcome of delirium during ICU admission in survivors of critical illness. SCCM Congress 2014 Oral 50
内科外科混合ICUに入室した1101例前向き観察コホート研究.412例(37%)がICU入室期間中にせん妄エピソードを有した.そのうち198例(18%)がICU入室から12ヶ月以内に死亡している.12ヶ月後の調査回答率は64%であった.ICU入室期間中の疾患重症度を含む共変量で調整すると,せん妄と12ヶ月死亡率に有意な関連性はみられなかった(HR 1.25; 95%CI 0.92-1.69).同様に調整するとせん妄は12ヶ月健康関連QOLとも関連性はみられなかった(β -0.04; 95%CI -0.10 to 0.01).しかし,中等度から重度の認知機能障害は共変量調整後でも有意に関連性がみられた(中等度認知機能障害OR 2.41; 95%CI 1.57-3.69,重度認知機能障害OR 3.10; 95%CI 1.10-8,74).
 PICS関連研究.せん妄が長期死亡率を悪化させる報告が近年複数でており,この研究では有意な増加はみられないものの,HR 1.25であり注意が必要.
敗血症性ショックにおける蘇生バンドル遵守:遅くとも行わないよりはよい
Sadaka F, Tannehill D, Trottier S, et al. Resuscitation bundle compliance in septic shock: better late than never. SCCM Congress 2014 Oral 57
2011年7月から2013年1月までの大学病院における敗血症性ショック395例を,6時間以内にSSCGに順じた蘇生プロトコルを施行した群(C6群)95例,6時間以上18時間以内に蘇生プロトコルを遵守した群(C18群)85例,18時間時点で蘇生プロトコルが達成されていない群(NC群)215例を比較した前向き観察コホート研究.3群間で年齢,体重,SOFAスコアに有意差なし.疾患重症度とベースラインで調整したCoxハザード解析では,NC群と比較した院内死亡リスクはC6群で55%減少(HR 0.45; 95%CI 0.24-0.85; p=0.01),C18群で88%減少(HR 0.12; 95%CI 0.04-0.39; p<0.001)した.
 たとえ6時間以内に達成できなくともプロトコルを行わないよりはマシ,という結果.
妊婦における重症敗血症―全国解析
Kumar G, Ahmad S, Dagar G, et al. Severe sepsis in pregnancy - A national analysis. SCCM Congress 2014 Oral 58
米国の2000-2009年までの18歳以上の妊婦の入院患者データを用いた解析.45107956例の妊婦データが得られ,そのうち19351例(0.04%)が重症敗血症であった.年間の重症敗血症発生率は2000年の21/100000から2009年の74/100000に増加していた.重症敗血症の原因の50%は出産時の感染であった.妊婦の重症敗血症の院内死亡率は6.8%であり,2000年から2009年まで変化していない.その一方で,妊婦でない女性の院内死亡率は30.3%であった.重症敗血症は妊婦の全死亡原因のうち23%であった.敗血症のない妊婦の入院期間が2.6日間であったのに対し,重症敗血症発症妊婦は12.9日間であった.
 妊婦の敗血症発生率と死亡率は低いが,死亡率はこの9年間で変わっておらず,死亡原因の1/4を重症敗血症が占めるという結果.
小児における重症敗血症:小児医療情報システムデータベースでみた傾向と予後
Ruth A, McCracken C, Hall M, et al. Severe sepsis in children: trands and outcomes from the pediatric health information system database. SCCM Congress 2014 Oral 59
2004-2012年の小児病院関連小児医療情報システムのデータベースからPICSに入室した新生児でない小児の重症敗血症の解析.全561937例の入室のうち,重症敗血症は7.0%(39372例)であった.併存疾患は76%にみられた.全死亡率は15.1%であった.小児重症敗血症患者のうち,心血管疾患の合併が最も多かった(28.3%,死亡率19.8%).多変量解析では,悪性新生物を有する小児重症敗血症が最も死亡リスクが高かった(OR 2.2; 95%CI 2.1-2.4; p<0.001).血流感染が最も多い感染巣であった(61.2%).PICU在室日数中央値は7日(IQR 3-19),入院日数中央値は18日(IQR 9-39).10-19歳と比較すると,1歳未満が最も死亡リスクが高かった(死亡率19.5%,OR 1.24; p<0.001).ブドウ球菌属は最も多い原因菌であり(10.8%),次いで連鎖球菌属が多かった(5.8%).真菌感染症は多くなかったが(0.6%, n=239),死亡率は16.7%と高かった.3つ以上の臓器障害は死亡のハイリスクであった(死亡率47%; OR 13.4; 95%CI 12.1-14.9; p<0.01).2004年から2012年で小児重症敗血症発生率は有意に増加し(5.1% vs 5.8%; p<0.001),コストも$211784から$232138に有意に増加した(p=0.002).しかし,死亡率は有意に低下していた(19.2% vs 13.2%; p<0.001).
 近年の小児敗血症のデータを知るための重要な研究である.おおむね成人データと同様の傾向が示されている.
敗血症診断日の低体温は低リンパ球血症遷延を予測する
Drewry A, Skrupsky L, Fuller B, et al. Hypothermia on the day of sepsis diagnosis predicts persistent lymophopenia. SCCM Congress 2014 Oral 63
敗血症または菌血症の成人患者445例の後ろ向きコホート研究.免疫疾患既往や免疫抑制薬使用歴のある患者は除外とした.24時間以内の体温で分類し,低体温は36.0℃未満,発熱は38.3℃と定義した.低リンパ球血症は培養後4日目でリンパ球数<1.2細胞/μL×1000と定義した.183例(41.1%)が正常体温,58例(13.0%)が低体温,204例(45.8%)が発熱であった.正常体温群と比較して,28日死亡率は低体温群で有意に高く(48.3% vs 30.6%; p=0.015),高体温群で有意に低かった(21.1% vs 30.6%; p=0.03).診断日の低体温は正常体温と比較して低リンパ球血症遷延と有意に関連していた(調整後OR 2.42; 95%CI 1.03-5.69; p=0.028).生存退院した患者においては,各群で二次感染発症率に有意差はないが,発熱群で低い傾向がみられた.
 敗血症において低体温が最も予後が悪いことはこれまで複数のコホート研究で示されており,今回低体温とリンパ球減少の関連性が示唆された.低体温による免疫力低下は心肺蘇生後の低体温療法の合併症としても知られている.
夜間騒音減少バンドルとアラーム設定調整によるICUの騒音と夜間のアラームの減少
Mattingly AM, Valcin EK. Reduction of ICU noise and alarms with a night-time noise reduction bundle and modified alarm profile. SCCM Congress 2014 Poster 111
内科ICUにおいて,夜間騒音減少バンドルとアラームの調整を組み合わせた介入による前後比較研究.バンドル構成要素は,時間アラームを小さくし,患者の個室を閉じ,輸液ポンプとモニターの音を小さくし,アラームを鳴らすようなワークフローを調整し,テレビやラジオを消し,スタッフの声を小さくすることである.新しいアラーム設定は,アラーム基準を最も厳しくすることで迷惑なアラーム音を減少させるよう調整した.24時間での音の強さは有意に減少し(中央値54.3 to 53.0 dB; p<0.0005),夜間の音の強さも有意に減少した(中央値52.8 to 51.3; p<0.0005).非不整脈によるレッドアラームが増加したにもかかわらず,全アラーム,全イエローアラーム,不整脈によるレッドアラームは有意に減少した.モニター音量,輸液ポンプ音量,時間音量は有意に改善したが,テレビはつけられることが多くなった.ラジオとドア閉めは変化がなかった.
 音による睡眠障害はICUせん妄の大きな要因であるにもかかわらず,多くの施設においては基準をはるかに上回る音量がなっており,睡眠障害が生じていることが報告されてきている.本研究ではなんとかしてICUの騒音を減少させようとする取り組みを提示し,ある程度の統計学的に有意な減少を示したが,臨床的に意味のある減少量かは判断しづらい.また,患者への有用性,安全性についての検討がなされていないところが問題点と思われる.
日本の集中治療におけるFCCSコースの評価
Atagi K, Fujitani S, Ishikawa J, et al. Evaluation the Fundamental Critical Care Support course in critical care education in Japan. SCCM Congress Poster 131
米国でICUをローテーションするレジデントのための訓練コースを日本の臨床に合わせたFCCSコース(2日間のoff-the-jobトレーニング,プレテスト・ポストテストによる評価)の評価.4年間で受講者は増加し,1804名に達した.70%近くの参加者は医師であり,それ以外で最も多かったのは看護師であった.創設した最初の年は臨床経験年数が5年を上回る医師は50%を超えていたが,徐々に減少した.その一方で,レジデントと看護師が増加した.半数近くの参加者が人工呼吸器について有益なセッションと考えていた.プレテストで既に平均点は高かったが(78.8±14.1点),ポストテストでは有意に改善していた(82.0±6.6点; p<0.01).集中治療管理のいかなる分野においても受講者の信頼度は5ポイントスケールでほぼ4ポイントであった.
 日本各地で開催されているFCCSの評価である.私自身も参加したいのだが,いろいろな日程と重なっていまだに1度も参加できずにいる(ただし呑み会だけは1度参加した(^^;)).このコースの特徴は集中治療医というより,むしろそれ以外の医療スタッフを対象にしていることである.集中治療医でなくとも是非一度は受講しておきたいコースである.
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by DrMagicianEARL | 2014-01-03 00:37 | 文献 | Comments(0)
夏休みに引き続き,明日からの臨床に役立たない(一部役に立つ?)「へぇ~」的論文特集第2弾です.小ネタにどうぞ.

メタボリックシンドローム神話崩壊?
Thomsen M, et al. JAMA Intern Med 2013
メタボリックシンドローム有無にかかわらず過剰体重や肥満は心筋梗塞や虚血性心疾患のリスクであり,リスク検出の上でメタボリックシンドロームはBMIを上回る価値はない.デンマーク71527例コホート研究

ナッツで寿命が延びる?
Bao Y, et al. N Engl J Med 2013; 369: 2001-11
118962例コホート研究.ナッツを食べない人と比較して,死亡リスクは週1回食べると7%減少,週2-4回で11%減少,週5-6回で15%減少,週7回以上で20%減少.ナッツは癌・心疾患・呼吸器疾患による死亡リスク減少と有意に関連.

喫煙者が多い室内のPM2.5濃度は北京市のひどい日の4倍
呼吸 2013;32:1028-35
日本の喫煙者が多い室内において,PM2.5濃度は3000μg/m3に達しており,北京市のPM2.5濃度が高い日の約4倍の劣悪な環境であった.
※なお,国立癌研究センターでは日本での受動喫煙死亡者数は6800人と推定している.

医師は敗血症で死亡しにくい
Shen HN, et al. Crit Care Med 2013 Nov.13
医師29697人と非医療者をマッチさせたコホート研究.医師は重症敗血症発生率になりにくく,重症敗血症に罹患しても死亡リスクが18%低い.医学知識を有し,疾患認識力が高く,病院を早く受診しやすいのが原因かもしれない.

バイリンガルは認知症になりにくい
Alladi S, et al. Neurology 2013; 81: 1938-44
インド在住の648人(平均年齢66歳)を対象に調査を実施し,2言語話せる群と1言語のみの群で認知症発症を比較.2言語群は,たとえ読み書きができなくとも,1言語しか話さない人と比べて認知症の発症が4年半遅かった.
※英語論文を読む医師は読まない医師より認知症になりにくい,なんて研究はでないでしょうか

スーパーマリオで知能アップ?
Kühn S, et al. Mol Psychiatry 2013 Oct.29
テレビゲームのスーパーマリオ64を2ヶ月間プレイする群としない群を比較したRCT.プレイ群は右脳の海馬,前頭前野皮質,小脳の脳体積が増加し,知能増加が見られた.PTSD,統合失調症に有用かもしれない.

大豆で放射線治療副作用を予防?
Hillman GG, et al. J Thorac Oncol 2013;8:1356-64
大豆のイソフラボンは,放射線による皮膚障害,脱毛,呼吸数増加,肺炎,線維化に対して保護的に作用する.マウスモデル研究.

アリはアカシアの奴隷
Heil M, et al. Ecol Lett 2013 Nov.4
アカシアとアリの共生がこれまで知られていたが,アカシアの樹液が含む酵素によってアリがほかの糖源を摂取できなくなる樹液中毒によりアリがアカシアの奴隷となっていることが判明.

刑務所釈放者の死亡原因と麻薬
Binswanger IA, et al. Ann Intern Med 2013; 159: 592-600
刑務所釈放後の全死亡率737/10万人/年.死亡原因の14.8%は麻薬であり,また薬物大量服用死は167/10万人/年.女性は薬物大量服用と麻薬関連死のリスク因子.米国76208例コホート研究.

男性は女性のどこを見ているか
Gervais SJ, et al. Sex Roles 2013 Oct
大学生65名を対象としたアイトラッキング技術を用いた研究.男性が女性を見る際には顔よりもセクシャルなボディーパーツを見て判断していた.男性が女性を物として見ていることが示唆された.

喫煙は老ける
Okada HC, et al. Plast Reconstr Surg 2013;132:1085-92
双子79組の比較研究.喫煙者と非喫煙者の組み合わせの双子では喫煙者の方が老けて見える確率が57%,いずれも喫煙者だが喫煙歴に5年以上差があると喫煙歴が長い方が老けて見える確率が63%.

甘い飲料水に課税すると肥満者が減少
Briggs AD, et al. BMJ 2013; 347: f6189
イギリスで砂糖の入った甘い飲料水に20%の税金を課税したところ肥満者が1.3%減少した.

新たな脱毛治療の可能性
Higgins CA, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2013
毛包形成に必要な毛乳頭細胞を成人男性の脱毛症患者の後頭部から採取し,試験管内で立体的に培養した後でヒト皮膚組織に移植したところ毛を生やすことに成功.

アメフト選手の脳
Hampshire A, et al. Sci Rep 2013; 3: 2972
引退したアメフト選手13例の脳MRI解析研究で,前頭葉が過反応を起こしていた.損傷を受けた脳がより活発に活動しなければこれまでと同じ機能を果たせなくなっており,脳の活動場所を増やすことで対応していると結論.

睡眠は脳の老廃物を排出する
Xie L, et al. Science 2013; 342: 373-7
グリンパティック系循環による脳内老廃物の排出の睡眠時活動量は覚醒時の約10倍になり,脳細胞が約60%収縮するため,脳脊髄液がより速くより自由に脳内を流れることで脳内老廃物の排出が睡眠時に促進される.マウスモデル研究.

皮膚細胞から直接別の細胞を作り出す手法
Outani H, et al. PLoS ONE 2013; 8: e77365
皮膚の細胞に遺伝子を導入し,別の細胞を直接作製するダイレクト・リプログラミングを用い,皮膚細胞から軟骨細胞を,iPS細胞を経ることなく直接作成することに成功.iPS細胞の半分の期間で作成可能に
※京都大学.もはやiPS細胞すら使わないという手法

バソプレシン受容体の遮断は時差ボケ防止に有用?
Yamaguchi Y, et al. Science 2013; 342: 85-90
バソプレシン受容体ノックアウトマウスモデルで周囲の明るさなどの環境に適応しやすくなることが判明.時差ボケ防止薬開発に期待.

バレリーナの平衡感覚の秘密
Nigmatullina Y, et al. Cerebral Cortex 2013 Sep.27
バレリーナは内耳にある平衡器官からの信号を処理する小脳の部位が健常人より小さく眩暈を感じないため,身体を回転させてもバランスを崩さない.49例のMRI解析.
※トリビアの泉で,フィギュアスケーター(安藤美姫選手)を何分間回転させても目が回らないというのがありましたね.

高齢者にテレビゲームで認知力改善
Nature 2013; 501: 97-101
車を運転するテレビゲームを高齢者にさせたところ脳の認知力が改善した.

生きたマウスの体内でiPS細胞の作製に成功
Nature 2013, PMID:24025773
生体内で再プログラム.しかもiPS細胞よりもむしろES細胞に近い性質を持つ高い万能性.「採取→培養→移植」の過程を省いてリアルタイムで組織再生ができるようになる?

台風災害とPTSD
Aust N Z J Psychiatry 2013, PMID:23975696
小児~若者262例の解析.台風災害から18ヶ月後に中等症から重症のPTSDが遷延していたのは小児で5人に1人,若者で12人に1人であった.

銃の所持率上昇は銃器殺人発生率を増加させる
Am J Public Health 2013, PMID:24028252
1981-2010年の全米50州の調査解析.銃の所持率が1%上がるごとに,銃器による殺人の発生率は0.9%上昇する.
※銃の所持率の上昇は銃犯罪増加につながらないとする全米ライフル協会の主張を否定する結果となりました

ダウン症患者の血管内皮細胞で作られるたんぱく質は癌を抑制する
Cell Rep 2013; 4: 709-23
ダウン症患者の血管内皮細胞で大量に産生されるたんぱく質を特定し,このたんぱく質ができないようにマウスの遺伝子を操作すると,癌細胞転移が促進される.
※以前からダウン症患者は癌になりにくいことが指摘されていました.

ヒトの脳のGPS機能
Nat Neurosci 2013; 16: 1188-90
人間の脳にGPS機能のような細胞があり,稼働していることを実験的に証明.

肥満と腸内細菌
Science 2013; 341: 1241214
肥満患者の腸内細菌をマウスの腸に移植すると脂肪がたまりやすくなってマウスが太り,やせた患者の腸内細菌を移植した場合はマウスの体形が維持された.ただし,脂質の多い餌を摂取するマウスはやせ形の腸内細菌による体質改善効果がみられない.

睾丸の大きさと子育て
Mascaro JS, et al. Proc Nat Acad Sci 2013 Sep.9
子供をもつ男性70例の生殖器をMRI撮影し解析.生物学的に睾丸の小さな父親の方が子育てに気持ちが傾きやすい.

性格のよくない男性のみがアダルトビデオの影響で女性に偏見を抱く
J Commun 2013; 63: 638-60
デンマーク男性200例での前向き観察研究.アダルトビデオの卑猥な映像により女性に偏見を抱くのは元から性格がよくない男性(事前のテストで分類)のみで,その他の男性がアダルトビデオから影響を受けることは少ない.

カジノでの喫煙禁止で救急車出動要請が減少
Circulation 2013; 128: 811-3
米国コロラド州で2008年にカジノでの喫煙を禁止する法律を施行したところ,カジノからの救急車出動要請が19.1%減少.
※同州では2006年に職場,レストラン,バー等の公共の場での喫煙を禁止する法律施行で救急車出動要請が22.8%減少

右脳・左脳の使用に差はない
PLoS One 2013; 8: e71275
1011名の安静時の脳の機能的結合状態を7266の関心領域に分けてMRIで分析.脳の機能が左右いずれの半球でより多く使用されるということはない.
※右脳派・左脳派の分け方は都市伝説だった?

恋愛パートナーの成功に対する心理変化
J Pers Soc Psychol 2013, PMID:23915040
恋愛パートナーの成功に対して男性は自尊心ゆえに否定的な影響を受ける(素直に喜ばない).一方,女性にはそのような傾向がみられず
※男ってちっちゃいね,という研究.あくまで学生が対象ですが

日本の公立病院での医師への給料の支払いは適切か?
Pediatr Int 2013; 55: 90-5
夜と休暇中の任務を労働時間と考えられていないため,多くの公立病院は医師に必ずしも増加した労働時間の給料を支払っていない.日本369病院調査
※日本の医師の労働はボランティア扱いが含まれているのでしょうねぇ.私自身,当直明けの日勤は無給扱いです.

Facebookで不幸になる?
PLoS One 2013; 8: e69841
Facebookは表面的には貴重な情報を提供するが,その使用は幸福を高めるわけではなく,むしろ幸福を減少させる可能性が示唆された.82例報告.

コーヒーの消費と全死亡および心血管疾患の関連性
Mayo Clin Proc 2013; 88: 1066-74
43727例解析.1週間に28杯以上コーヒーを飲む男性は全死亡リスクが1.21倍に有意に増加.年齢,55歳未満の男女に層別化すると,週28杯以上のコーヒー消費は全死亡リスクを男性で1.56倍,女性で2.13倍に有意に増加させる.1日4杯以上コーヒー飲む人は早死にするかもしれない.
※2012年には1日6杯コーヒー飲む人は死亡リスクが1割少ないという報告がNEJM誌にあったのですが・・・(NEJM 2012;366:1891-904)

食物添加物の臨床試験と利益相反
JAMAIM 2013, PMID:23925593
食物添加物で,試験により安全の認識されているものはCOIに偏りがあり,米国FDAはこの懸念に対処すべきである.システマティックレビュー.

飼い主のあくびは犬にうつる
PLoS ONE 2013;8:e71365
見知らぬ人のあくびよりも,飼い主のあくびの方が犬にうつりやすい.犬にとって,あくびがうつるには相手との感情の結びつきが重要な可能性.一般家庭で暮らすプードルやパピヨン,ゴールデンレトリバーなど25匹での実験.

兄弟がいると離婚リスクが減少する
Downey D, et al. 108th American Sociological Association, NY, 2013 Aug.13
米国570000例調査の解析.兄弟が1人増えるごとに将来の離婚する可能性が2%低下する.
※一人っ子は離婚リスク?

心停止から30秒間は精神状態が非常に高まる
Proc Natl Acad Sci U S A 2013, PMID:23940340
心停止モデルのラット9匹の脳電図の解析.心臓が停止してから30秒間にわたり脳の活動は急増し,精神状態が非常に高揚していており,この結果は心停止後蘇生患者の臨死体験を説明しうる可能性がある.

頭部冷却法は抗癌剤ドセタキセルによる脱毛を予防する
Support Care Cancer 2013;21:2565-73
固形癌患者238例においてドセタキセル点滴後45分の短期間の頭部冷却法を検討した前向き非ランダム化比較試験.頭部冷却法は脱毛の予防的な効果をもたらし,特にドセタキセル3週ごとの投与で効果的であった.

睡眠不足で太るメカニズム
Nat Commun 2013; 4: 2259
MRIによる23例解析で睡眠不足で太るに至る脳のメカニズムを検討.睡眠不足では大脳皮質の食欲・満腹感評価領域に活動性低下が見られ,同時に渇望に関連する領域に活動性上昇があり,睡眠不足の被験者は高カロリー食品により強い食欲を感じていた.

情けは人のためならずの実証
PLoS ONE 2013: 8: e70915
大阪府内保育園の5-6歳児70例を観察し,親切児が親切をした場合としなかった場合を約250回比較.親切をした場合の方が周りの園児が親切児を手伝ったりする頻度が高くなり,他者を好ましく思う言動も増えた.情けは人のためならずを実証

遠距離恋愛の方が心理的な結びつきが強い
J Commun 2013; 63: 556-77
カップル63組(約半数が遠距離恋愛)の解析.平均恋愛期間は2年未満,遠距離恋愛群は平均1年5カ月の間遠距離.長距離恋愛群は非長距離恋愛群よりも有意に,自分自身のことについて打ち明け,より親密な結びつきを感じていた.

動物との性交渉は陰茎癌を増加させる
J Sex Med 2012; 9: 1860-7
ブラジル農村地域の18-80歳の男性492例症例対照研究.35%(陰茎癌患者に限定すると44.9%)が馬,牛,豚,ニワトリ等の動物と性交渉経験あり.そのうち39.5%は週1回以上の頻度.動物との性交渉は陰茎癌を有意に増加させる.

Twitterは癌患者の心理的サポートとなる
BMC Res Notes 2012; 5: 699
フォロワーを500人以上有するTwitterアカウントをもつ癌患者51例のツイートの解析.Twitterは癌コミュニティーにおける患者の心理的サポートとなっている.山形大学の研究

オペラ「椿姫」を聞くことによる延命効果
J Cardiothorac Surg 2012; 7: 26
心臓移植したマウスを術後7日間聴かせる音楽として,オペラ「椿姫」群,モーツァルト群,音楽聴かせない群に割り付け.平均生存期間は26日,20日,7日.オペラには延命効果があるかもしれない.今年のイグノーベル賞受賞論文.日本から

セクハラされる看護師の特徴
Med J Malaysia 2012; 67: 506-17
看護師455名の解析.51.2%がセクハラ経験があり,内容は言葉46.6%,視覚的24.8%,心理的20.9%,身体的20.7%.美人,魅力的体型,親しみやすい,楽観的な看護師で多く,厳格で激しい性格の看護師には少ない.

病棟におけるチョコレート生存期間
BMJ 2013; 347: f7198
チョコレートを入れた箱を各病棟に設置し,継続的に観察してそれぞれのチョコレートが食べられた時間を記録した多施設共同前向き観察研究.チョコレート258個中191個が食べられた.平均観察期間は254分(95%CI 179-329分),チョコレートの生存期間中央値は51分(95%CI 39-63分).チョコレート消費モデルは非線形で,初期に急速に消費され,その後消費スピードは緩徐となった.指数関数的減衰モデルがこれらの結果に最も合致した.50%のチョコレートが食べられる時間(半減期)は99分であった.また,チョコレートの箱が病棟で開けられるまでの平均時間は12分(95%CI 0-24分)であった.最も高い頻度で摂取した医療従事者は,看護助手(28%),看護師(28%)であり,医師は15%であった.

ブラディという名前の人は徐脈でペースメーカーを挿入されやすい
BMJ 2013; 347: f6627
ブラディ(Brady)という人の名前が徐脈(bradycardia)の頻度を増加させるかどうか調査し,人の名前が健康に及ぼす影響を検討した後ろ向きコホート研究.161967例のうち,名前がブラディである579人(0.36%)が登録された.ブラディ群と非ブラディ群の年齢に差はなかった.ペースメーカー挿入頻度はブラディという名前の人の方が有意に高かった(1.38%vs0.61%, p=0.03).非ブラディと比較して,ブラディという名前によるペースメーカー挿入の非調整ORは2.27 (95%CI 1.13-4.57)だった.

ジェームズ・ボンドのアルコール摂取量の定量
BMJ 2013; 347: f7255
007のジェームズ・ボンドのアルコール消費量を定量する後ろ向き文献レビュー.ボンドが飲酒できなかった日数の除外後,彼のアルコール消費量は92単位/週であり,推奨適正量の4倍以上であった.彼の1日最大消費量は49.8単位であった.ジェームズ・ボンドのアルコール摂取レベルは早期死亡につながる多数のアルコール関連疾患のハイリスクの状態になっている.小説で示されている機能レベルは,この多量のアルコール摂取者において予測される身体的,精神的,性的機能と矛盾する.我々は更なる評価と治療(安全なレベルへのアルコール摂取の縮小)のために直ちに被照会者に忠告する.「ステアではなくシェイクで」という有名なキャッチフレーズは,アルコールによって誘発された手の振戦の原因であると推察される.ジェームズ・ボンドがウォツカ・マティーニをあおってからボンドガールと性行為ベッドインすることが多いのに,性行為後のボンドガールはみんな“大満足”の表情を見せるのはおかしい.

米国麻酔科レジデントと薬物依存
JAMA 2013;310:2289-96
米国で麻酔研修プログラムを受けたレジデント44612例の後ろ向きコホート研究.384例が研修中に薬物依存.発生リスクは2.16/1000人/年.28名(7.3%)が研修期間中に死亡し,全て薬物依存に関連していた.

細胞老化の進行を逆戻りさせる薬
Cell 2013; 155: 1624-38
マウスモデル研究.2歳のマウスにNMN投与で1週間後,筋肉が生後半年のマウスの筋肉とまったく変わらなかった.
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by DrMagicianEARL | 2013-12-24 18:41 | 文献 | Comments(0)
■低体温療法について大規模RCTがはじめて報告されましたので紹介します.2002年にNEJM誌に報告された低体温療法の有用性のエビデンスが11年たって同じNEJM誌上でくつがえされました.これまでの推奨に大きな影響を与えることは間違いないでしょう.
心停止後の目標体温管理33℃ vs 36℃(TTM study)
Nielsen N, Wetterslev J, Cronberg T, et al; the TTM Trial Investigators. Targeted Temperature Management at 33℃ versus 36℃ after Cardiac Arrest. N Engl J Med.2013 Nov 17. [Epub ahead of print]
PMID:24237006

Abstract
【背 景】
院外心停止で意識のない生存者は高い死亡リスクや神経学的予後不良リスクを有する.低体温療法は国際ガイドラインで推奨されているが,支持するエビデンスは限られており,最良の予後に関連する目標体温は知られていない.我々の目的は,発熱防止を目的とした2つの目標体温を比較することである.

【方 法】
この国際的試験では,心原性の院外心停止後の意識のない950例の成人患者を33℃または36℃を目標とした体温管理に無作為に割り付けた.一次評価項目は試験終了までの全死亡率とした.二次評価項目は,Cerebral Performance Category(CPC)scaleとmodified Rankin scaleで評価による180日での神経学的機能予後不良または死亡とした.

【結 果】
全体で939例の患者が一次解析に組み込まれた.試験終了時点で,36℃群の患者の死亡率が48%(225/466例)であったのに対し,33℃群では50%(235/473例)の患者が死亡した(HR 1.06; 95%CI 0.89-1.28; p=0.51).180日の追跡で,死亡またはCPCで評価した神経学的予後不良は,36℃群の患者で52%であったのに対し,33℃群では54%であった(RR 1.02; 95%CI 0.88-1.16; p=0.78).modified Rankin scaleを用いた解析では,両群とも52%であった(RR 1.01; 95%CI 0.89-1.14; p=0.87).既知の予後規定因子で調整した解析結果でも同等であった.

【結 論】
心原性院外心停止で意識のない生存者においては,33℃を目標とした低体温は,36℃を目標とした場合と比較して有益性は認められなかった.
■本研究はこれまでの報告より規模・質ともに高く,これまでのエビデンスをくつがえす結果であり,低体温療法の推奨度が下げられることは避けられないと思われる.低体温療法が有益性を示せなかった理由としては,集中治療管理の進歩により死亡率が改善し潜在的有益性が減少してしまったこと,集団選択性が低いこと(このためサンプルサイズを大きくしえたともいえる)などが考えられ,安直に低体温療法を完全否定すべきではなく,低体温療法の恩恵を受けうる集団を特定し,評価する研究が必要である.また,心停止蘇生後患者の体温管理に関する研究は,管理法がバラバラであり,本研究で目標とした33℃と維持期間,復音等のプロトコルがベストな低体温療法であったのかも明らかではない.この研究で重要なのは常温療法の有益性なのかもしれない.

■救急医学2013年9月号は体温特集であり,心停止後症候群の体温管理の項で「低体温療法を考慮することは今や当たり前のオプション」「本治療のプロトコルを成し遂げることが患者の機能的予後の改善につながることを忘れてはならない」と強く低体温療法を推奨する書き方であったのが記憶に新しい.しかし,臨床的根拠は2002年のNEJMに報告された小~中規模のRCT2報のみであり,やはりサンプルサイズや過去の報告の問題点を加味した研究で再検討された場合,エビデンスはくつがえることがあるといういい一例であろう.また,いかに優れたエビデンスであっても,年数がたてば他の治療の進歩,社会的背景の変化などでエビデンスの妥当性も揺らぎうるため,ある一定年数がたてば再度検証するという姿勢は必要なのかもしれない.質の高いシステマティックレビューによるエビデンスでも賞味期限1年以内が15%,2年以内が23%,賞味期限の平均期間はわずか5.5年(95%CI 4.6-7.6)しかなく,心血管領域のエビデンスの賞味期限はもっと短い[1]質の高いエビデンスといえどもその妥当性はTPO(Time Place Occasion)の影響を免れない(私の持論です).

■また,本研究では,延命治療を中止のプロトコルを採用していることが特徴である.ほとんどの先行研究では神経学的予後不良のため生命維持を中止することが最も多い死因であり,長期的予測を行う上で確実な方法がないという問題点をかかえていた.本研究では治療の中止された患者へのアプローチが詳細に記載されている.

■近年,重症患者における解熱薬を含めた体温管理に関する研究がさかんであるが,低体温に関する研究は依然として少ない.病的低体温と治療的低体温を同列に扱うことはできないが,低体温が予後不良に関連しうる報告があることも事実である.実際には重症患者では正常体温~高熱が一般的であり,低体温の患者は多くないため,発熱時に比して低体温が生体に与える有益性・有害性等の影響の知見はまだまだ少ないといえ,今後さらなる解明が必要である.

1.これまでの低体温療法のエビデンス
■まず,用語について整理する.低体温で管理を行う治療法は以前まで低体温療法(therapeutic hypothermia)とされ,また,これに対して35-37℃の常温にコントロールする治療法は常温療法(induced normothermia)とされていた.常温療法は発熱を回避するという意味でanti-hyperthermia,fever controlとも表現されていた.2009年にATS,SCCM,ERS,ESICM,SELFの5学会によるコンセンサスカンファレンスが開催され,低体温療法(therapeitic hypothermia)という言葉を使用せず,目標体温管理(targeted temperature management:TTM)に統一し,導入induction,維持maintenance,復温reversionについてのプロファイル記載が推奨された[2].これは,目標体温設定,冷却方法,維持期間,復温速度などがこれまでの研究ではバラバラで評価が困難であったことへの対策である.

■心停止蘇生後患者に対する低体温での脳保護効果の知見は1958年のWilliamsらの報告までさかのぼる.この報告で低体温療法(therapeutic thpothermia)に関心がもたれるも,技術的問題により普及することはなかった.しかし,1990年代に入って技術向上により低体温療法が再び注目され,2002年に報告された2つのRCT[3,4]が低体温療法の有効性を示したことから,心肺停止後の脳障害に対して低体温療法がガイドラインで推奨されるに至った[2,5]

■Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group[3]は,心室細動による院外心停止患者273例に対する低体温療法を検討した欧州9施設共同RCTを行った.低体温群は膀胱温32-34℃を24時間維持するプロトコルと用いており,6ヶ月後の神経学的予後が良好であったのは低体温群55% vs 常温群39%(p=0.009; RR 1.40; 95%CI 1.08-1.81),死亡率は低体温群41% vs 常温群55%(RR 0.74; 95%CI 0.58-0.95)であり,低体温療法が有意に予後を改善していた.

■Bernardら[4]は,心室細動による院外心停止患者77例に対する低体温療法を検討した豪州4施設共同RCTを行った.低体温群は自己心拍再開から2時間以内に深部温度を33℃に冷却し,12時間維持するプロトコルを用いており,退院時の神経学的予後が良好であったのは低体温群49% vs 常温群26%(p=0.046),調整後オッズ比は5.25(95%CI 1.47-18.76; p=0.011)であり,低体温療法が有意に神経学的予後を改善していた.

■一方,初期調律が心室細動でない心停止患者では低体温療法が有用であるとする明確なエビデンスはなく,PEAや心静止においては2つの小規模RCT[6,7]では有用性は示されず,Dumasら[8]の1145例多施設共同後ろ向きコホート研究においても初期調律がVF/VTであれば低体温療法が神経学的予後良好と関連したが,PEA/心静止では関連しなかった.本邦14施設452例の低体温療法の解析(J-PULSE-HYPO)[9]でも初期調律がPEA/心静止の症例では予後は不良であった(ただし,発症から16分以内に蘇生できた症例では初期調律がVF/VTであった患者群と有意差はない).除細動非適応の心停止患者387例の単施設前向き観察研究[10]では,低体温療法の神経学的予後や生存率への有効性は認められなかった.これらの結果から,PEA/心静止患者では心原性心停止の割合が少なく,脳虚血時間が長く,心停止の原因が多様であるために低体温療法が奏功せず,むしろ有害となる可能性もあることが分かる.

2.低体温療法の目的と有害事象
■心停止後症候群(PCAS)では83%に(脳障害で神経学的予後悪化と関連しているとされる)72時間以内の38℃以上の発熱が認められると報告されており[11],PCASにおいて脳障害の増悪と発熱が関連しているとの報告もある[12].脳障害は発熱を誘発し[13],発熱は脳障害を増悪させる[14,15]とする悪循環に陥ってしまうため,体温管理が必要であるという考えが現在では主流となっている.

■体温を常温にコントロールするのか,より低い体温にコントロールするのかについてこの10年で議論がなされてきた.低体温では脳血流と代謝が低下し,PCASでの脳の障害が軽減するとされている.すなわち,侵襲直後の脳障害ではなく,侵襲後に緩徐に心呼応していく脳障害を防止するのが低体温療法である.この脳障害は,神経細胞の代謝によるATP枯渇から細胞外毒素であるグルタミン酸が放出,フリーラジカルやアポトーシスによって生じてくる.低体温療法はこれらを抑制する[16-18]

■低体温療法による合併症には,感染症,血小板減少,血液凝固異常,高血糖,過冷却,脱水,不整脈や血圧低下,低カリウム血症,シバリング,低二酸化炭素などがある.特に感染症リスク増加は報告が多く,注意が必要である.低体温療法について検討した23報RCT,2820例のメタ解析[19]では,低体温療法は全感染症リスクを増加させない(RR 1.21; 95%CI 0.95-1.54)が,肺炎リスクは1.44倍(95%CI 1.10-1.90),敗血症リスクは1.80倍(95%CI 1.04-3.10)に有意に増加したと報告されている.

[1] Shojania KG, Sampson M, Ansari MT, et al. How quickly do systematic reviews go out of date? A survival analysis. Ann Intern Med 2007; 147: 224-33
[2] Nunnally ME, Jaeschke R, Bellingan GJ, et al. Targeted temperature management in critical care: a report and recommendations from five professional societies. Crit Care Med 2011; 39: 1113-25
[3] Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group. Mild therapeutic hypothermia to improve the neurologic outcome after cardiac arrest. N Engl J Med 2002; 346: 549-56
[4] Bernard SA, Gray TW, Buist MD, et al. Treatment of comatose survivors of out-of-hospital cardiac arrest with induced hypothermia. N Engl J Med 2002; 346: 557-63
[5] Nolan JP, Hazinski MF, Billi JE, et al. Part 1: Executive summary: 2010 International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science With Treatment Recommendations. Resuscitation 2010; 81 Suppl 1: e1-25
[6] Hachimi-Idrissi S, Corne L, Ebinger G, et al. Mild hypothermia induced by a helmet device: a clinical feasibility study. Resuscitation 2001; 51: 275-81
[7] Kim F, Olsufka M, Longstreth WT Jr, et al. Pilot randomized clinical trial of prehospital induction of mild hypothermia in out-of-hospital cardiac arrest patients with a rapid infusion of 4 degrees C normal saline. Circulation 2007; 115: 3064-70
[8] Dumas F, Grimaldi D, Zuber B, et al. Is hypothermia after cardiac arrest effective in both shockable and nonshockable patients?: insights from a large registry. Circulation 2011; 123: 877-86
[9] Yokoyama H, Nagao K, Hase M, et al; J-PULSE-Hypo Investigators. Impact of therapeutic hypothermia in the treatment of patients with out-of-hospital cardiac arrest from the J-PULSE-HYPO study registry. Circ J 2011; 75: 1063-70
[10] Storm C, Nee J, Roser M, et al. Mild hypothermia treatment in patients resuscitated from non-shockable cardiac arrest. Emerg Med J 2012; 29: 100-3
[11] Albrecht RF 2nd, Wass CT, Lanier WL. Occurrence of potentially detrimental temperature alterations in hospitalized patients at risk for brain injury. Mayo Clin Proc 1998; 73: 629-35
[12] Corbett D, Thornhill J. Temperature modulation (hypothermic and hyperthermic conditions) and its influence on histological and behavioral outcomes following cerebral ischemia. Brain Pathol 2000; 10: 145-52
[13] Hayashi N, Hirayama T, Udagawa A, et al. Systemic management of cerebral edema based on a new concept in severe head injury patients. Acta Neurochir Suppl (Wien) 1994; 60: 541-3
[14] Azzimondi G, Bassein L, Nonino F, et al. Fever in acute stroke worsens prognosis. A prospective study. Stroke 1995; 26: 2040-3
[15] Castillo J, Dávalos A, Marrugat J, et al. Timing for fever-related brain damage in acute ischemic stroke. Stroke 1998; 29: 2455-60
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[18] Yenari M, Kitagawa K, Lyden P, et al. Metabolic downregulation: a key to successful neuroprotection? Stroke 2008; 39: 2910-7
[19] Geurts M, Macleod MR, Kollmar R, et al. Therapeutic Hypothermia and the Risk of Infection: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med 2013 Oct 7
[20] Shojania KG, Sampson M, Ansari MT, et al. How quickly do systematic reviews go out of date? A survival analysis. Ann Intern Med 2007; 147: 224-33
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by DrMagicianEARL | 2013-11-21 21:46 | 文献 | Comments(0)
■みなさんの施設では輸血製剤投与の適正使用ガイドラインを作成しているでしょうか?輸血開始基準としてのヘモグロビン濃度は7.0未満がよいとするエビデンスが多数出始めて久しいですが,今回,RCT pilot studyでの報告がでましたので,文献紹介とレビューを行いました.
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高齢の人工呼吸器を装着した重篤患者における制限vs非制限輸血戦略:無作為化予備試験
Walsh TS, Boyd JA, Watson D, et al. Restrictive Versus Liberal Transfusion Strategies for Older Mechanically Ventilated Critically Ill Patients: A Randomized Pilot Trial. Crit Care Med 2013; 41: 2354-63

Abstract
【目 的】
ICUで4日以上人工呼吸器を装着している55歳以上でHb<9.0 g/dLの貧血を有する重篤患者赤血球輸血制限戦略と非制限戦略でのモグロビン濃度,赤血球輸血の使用,患者の予後を比較する.

【デザイン】
並行群間無作為化多施設共同予備試験

【研究の場】
2009年8月から2010年12月までの英国の6つのICU

【患 者】
100例(制限群51例,非制限群49例)

【介 入】
患者は,14日間もしくはICU在室期間のいずれか長期の方で,輸血制限戦略群(Hb<7.0 g/dLで輸血開始し,7.1-9.0 g/dLを目標)と非制限戦略群(Hb<9.0 g/dLで輸血開始し,9.1-11.0 g/dLを目標)に無作為に割り付けた.

【結 果】
ベースラインの並存疾患率と重症度は高く,特に虚血性心疾患が多かった(32%).Hb濃度は両群間で1.38g/dL(95%CI 1.15-1.60g/dL)異なっており(p<0.0001),介入中の平均Hb濃度は8.19g.dL(標準偏差5.1)vs 9.57 g/dL(標準偏差6.3)であった.登録後に輸血を受けた患者は制限群の方が21.6%少なく(p<0.001),中央値で赤血球輸血1単位(95%CI 1-2, p=0.002)少なかった.プロトコル遵守率は高かった.ICUや院内での観察中の臓器障害,人工呼吸器装着期間,感染症,心血管合併症等に差はなかった.無作為化後180日死亡率は非制限群(55%)の方が,制限群(37%)よりも高い傾向が見られた(RR 0.68, 95%CI 0.44-1.05, p=0.073).この傾向は,ベースラインの年齢,性別,虚血性心疾患,APACHEⅡスコア,SOFAスコア(神経項目除く)で調整した生存モデルにおいても維持されていた(HR 0.54, 95%CI 0.28-1.03, p=0. 0.54, 95%CI 0.28-1.03, p=0.061).

【結 論】
高齢の人工呼吸器装着患者における輸血戦略の大規模試験が行われることが望ましい.この予備試験は統計学的に有意ではないが輸血制限の死亡率が低い傾向を示した.
1.赤血球輸血基準としてHb<7.0 g/dLが推奨されるまでの経緯
■内科,周術期などのさまざまな重症疾患において,ヘモグロビンの輸血開始基準が低い方が予後がよく合併症が少ないとする報告が近年多数でてきている.「急性貧血ではHb<7.0 g/dLで輸血を開始し,7.0-9.0 g/dLを保つ」という内容は医師国家試験でも出題されており,year noteにも掲載されているにもかかわらず,医療現場では依然としてHb>7 g/dLでも赤血球輸血を施行する医師は多く,Hbが10を切った時点で輸血を行う医師も多数いる.確かに,多発外傷での出血患者におけるHb濃度は必ずしもリアルタイムの出血度を反映するとは限らないことに注意は必要であり,この場合は総合判断で輸血を行わなければならない.しかしながら,内科や周術期ではルーティンでHbが比較的高い段階から輸血を開始するのは避けるべきであろう.今回の予備試験のデータから,より大規模のRCTを組めば統計学的有意差がつくであろうことは容易に想像できる.

■ICUで治療される重症患者は,輸液による血液希釈,出血,赤血球寿命や産生能低下,溶血,エリスロポエチン産生低下・作用阻害[1],活性化マクロファージによる赤血球貪食,TNF-αによる赤芽球アポトーシス[2],鉄代謝異常,栄養障害などの理由,頻回採血[3-7]により貧血となる頻度が高く,輸血が必要となりやすい[8].Fickの原理から,全身の酸素消費量(VO2)は一回心拍出量(CO),ヘモグロビン濃度(Hb),動脈血酸素飽和度(SaO2),静脈血酸素飽和度(SvO2)で規定され,その関係は以下の式で表される.
 VO2 = CO × 1.34 × Hb × (SaO2-SvO2)
よって,酸素需給バランスの破綻に伴う臓器障害を防ぐならば赤血球輸血を行ってHb濃度を高めて酸素供給量を増加させるとする考えは理論的には正しい.しかし,実際には輸血を行っても酸素消費量は増大しないことが敗血症患者における複数の研究[9-11]で示されており,酸素供給を上げる目的での輸血には意味がないことが分かっている.

■1990年代までICU患者においては赤血球輸血の開始基準はHb<10 g/dLまたはHt<30%とされてきた.実際に,心筋梗塞患者を中心として,貧血の重症度と死亡率に相関関係があることは多数報告されている.Wuらは,65歳以上の心筋梗塞患者78794例の後ろ向き研究で,入院時のヘマトクリット値(Ht)が低いほど30日死亡率が高く,入院時のHt<30%では輸血施行群で30日死亡率が低下したと報告している[12].ところが,その後のRaoらの24112例の研究では,輸血患者群で死亡率が高く,最低Ht値が25%以上では輸血患者群で30日死亡率が高いと報告された[13].他にも,輸血を行っても必ずしも予後が改善しないとの報告がでていた[14,15]

■Hébertらは輸血制限群(開始基準Hb<7 g/dL,7-9 g/dLを目標)と非制限群(開始基準Hb<10 g/dL,10-12 g/dLを目標)を比較した多施設共同838例RCT(TRICC study[16]を行い,院内死亡率が制限群で有意に低い(22.2% vs 28.1%, p<0.05)しており,55歳以下の患者とAPACHEⅡスコア20点以下の患者では30日後の死亡率も有意に低いという結果であった(p=0.02).この1999年に発表された研究を皮切りに,輸血開始基準のHb濃度をより低くすることで予後が改善するのではないかという推測のもと,様々な研究が開始され,内科,外科,術後等で同様の結果が多数報告され,輸血開始基準となるHb濃度はぐっと下げられることになる.

■これまでの知見から,現在の推奨としては,急性経過での貧血では赤血球輸血開始基準はHb<7.0 g/dLとすべきで,Hb>7.0 g/dLでの投与は控えるべきであり,また,赤血球輸血でHb>9.0まで回復過剰な補正は避けるべきである.各病院には輸血管理委員会が存在するが,このようなHb値に基づいた開始基準を設定して輸血適正使用を行っている病院はまだ少ない.今後はこれらの適正使用の基準も推奨していく必要があるだろう.Gutscheらは,心臓手術における輸血ガイドラインの作成,教育,コンプライアンスの監査/フィードバックを利用した臨床ガイドラインの実施により,不必要な輸血が14.7%から8.1%まで有意に減少したと報告している(p=0.016)[17].また,米国17施設において冠動脈バイパス手術を行った14259例について,赤血球輸血を減らすガイドライン導入前後で比較を行い,術中,術後の輸血が減少し,肺炎,長期の人工呼吸,腎傷害,医療コストが有意に減少し,死亡リスクも43%減少したと報告している[18]

2.赤血球輸血の有害事象とその機序
■輸血製剤の副作用を聞くと,アレルギー反応,TRALI(輸血関連急性肺傷害),TACO(輸血関連循環過剰負荷),製剤汚染による感染症を想定する医師は多いが,重症患者においてはその他の機序による予後悪化や合併症も非常に多いことは知っておかなければならない.

■動脈血酸素分圧が低い組織においては赤血球に蓄えられたNOが放出されることで血管拡張を起こす.ところが,保存赤血球ではNOが枯渇しているため,輸血の結果,体内のNOが希釈されてしまい,血管攣縮を引き起こす.くも膜下出血では術後輸血が脳動脈攣縮を引き起こすことが知られており[19],このNO希釈が原因の1つと考えられている[20,21].くも膜下出血以外でもこの機序が臓器血管拡張障害による虚血を引き起こす可能性が想定される.

■赤血球内の2,3-DPG(diphosphoglycerate)が採血から48時間で減少し始め,酸素飽和曲線の左方移動により組織への酸素供給が障害されてしまう[22].また,貯蔵鉄中の炎症性サイトカインが炎症反応を惹起する[22]

■外傷,虚血による赤血球の損傷で遊離したヘムが細胞膜蛋白のSlo1 BK(large conductance calcium-dependent)チャネル機能を障害して血管壁の弛緩を阻害する[23]

■貯蔵赤血球は形態変化を引き起こし,微小循環を通過しにくくなり,多臓器障害の原因となりうる[24]

■貯蔵された赤血球はFe2+を含有するため,酸化ストレスによる細胞障害を引き起こす[25]

■貯蔵赤血球は血管内皮に粘着し,血流や酸素供給に影響を及ぼす[26].輸血によって受血患者の免疫能がdown-regulationをきたすTRIM(transfusion-related immunomodulation)が起こり,これが周術期や重症患者における感染症を増加させる可能性がある[27](機序は不明[28]).

■人工呼吸器患者124例のコホート研究二次解析では,人工呼吸器患者での赤血球輸血は,疾患重症度と臓器機能不全で調整後,筋力低下と有意に関連していたと報告されており(ICUAWとは関連性はなかった)[29],輸血がPICS(Post-Intensive Care Syndrome)の原因となりうることも示唆されている.

3.近年の赤血球輸血開始基準と予後に関する報告
■赤血球輸血開始基準としてのHb濃度高値群と低値群を比較したRCT19報6264例のコクランレビューによるメタ解析[30]では,低値群の方が輸血必要度が39%減少し,院内死亡リスクも有意に減少するが(RR 0.77, 95% CI 0.62-0.95),30日死亡リスクは有意差がなかった(RR 0.85, 95% CI 0.70 to 1.03).

■Chatterjeeらは,心筋梗塞に対する赤血球輸血の影響を検討した観察研究10報のメタ解析[31]を行い,赤血球輸血により全死亡リスクは2.91倍,その後の心筋梗塞再発リスクは2.04倍と報告している.

■Villanuevaらは,重症急性上部消化管出血患者921例において,赤血球輸血開始基準をHb<7.0 g/dLとする制限群とHb<9.0 g/dLとする非制限群で比較したRCTを行っている[32].輸血非投与率は51% vs 15%(p<0.001)で,制限群が有意に輸血を受けた患者が少なく,6週後生存率は制限群が有意に高かった(95% vs 91%, HR 0.55, 95%CI 0.33-0.92, p=0.02).再出血率は制限群で有意に少なく(40% vs 48%, p=0.02),サブ解析でも,肝硬変Child-Pugh class A,Bでは制限群で生存率が有意に高く(HR 0.30, 95%CI 0.11-0.85),消化性潰瘍出血でも統計学的に有意ではないが,生存率は高い傾向がみられた(HR 0.70, 95%CI 0.26-1.25).

■Leal-Novalらは428例の後ろ向きペアマッチングコホート研究[33]を行い,非出血性の中等度貧血(Hb 7.0-9.5 g/dL)がある重症患者で赤血球輸血群は非輸血群より院内死亡率(21% vs 13%),ICU再入室率(7.4% vs 1.9%),院内感染症(12.9% vs 6.7%)が有意に高く,中等度貧血に対する赤血球輸血は予後を改善しないと報告している.

■Liuらは,肝細胞癌の周術期の輸血が予後に与える影響を検討した22報5635例のメタ解析[34]を行い,輸血により3年死亡リスクは1.92倍,5年死亡リスクは1.60倍であり,癌再発リスク,術後合併症リスクも有意に増加すると報告している.

■Blumらは,一般外科手術患者50367例のコホート研究[35]を行い,術中の赤血球輸血が術後ARDS発症リスクを5.36倍有意に増加させたと報告している.

■Horvathらは,心臓外科手術患者5158例での術後の輸血と60日以内の感染症の発生との関連の調査を行い[36],赤血球輸血は1単位あたり感染の発生リスクが29%増加し,多変量解析でも,赤血球輸血が感染の増加と関連していたと報告している.Turanらの非心臓手術5143例の後ろ向きコホート研究[37]でも,大量輸血が呼吸器系や感染性合併症および死亡の相当なリスクと関連していることが報告されている.

■Kumarらは,クモ膜下出血205例の後ろ向き解析[38]を行い,赤血球輸血は血栓リスクを2.4倍,深部静脈血栓症リスクを5.0倍有意に増加させており,血栓形成リスクは輸血1単位につき55%増加したと報告している.

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by DrMagicianEARL | 2013-10-09 18:56 | 文献 | Comments(0)

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