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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:文献( 61 )

■ICSと感染症に関するメタ解析がChest誌に報告されたので紹介します.
COPD患者における吸入コルチコステロイドの使用と結核およびインフルエンザのリスク:無作為化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析
Dong YH, Chang CH, Wu FL, et al. Use of Inhaled Corticosteroids in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease and the Risk of Tuberculosis and Influenza: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Chest 2014 Feb.6
PMID:24504044

Abstract
【背 景】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者において,吸入コルチコステロイド(ICS)の使用は肺炎リスクの増加と関連している.しかし,結核やインフルエンザといった,その他の呼吸器感染症におけるリスクはまだ明らかではない.

【方 法】
2013年7月から開始したMEDLINE,EMBASE,CINAHL,Cochrane Library,ClinicalTrials.govでの包括的文献検索によって,我々は少なくとも6ヶ月間ICSを継続した無作為化比較試験を抽出した.結核およびインフルエンザリスクをICS治療群と非ICS治療群を比較した推定の統合を行うため,Peto,Mantel-Haenszel,Bayesianのアプローチによるメタ解析を行った.

【結 果】
結核で25報(22898例),インフルエンザで26報(23616例)が登録された.ICS治療は,非ICS治療と比較して,結核の高いリスクと有意に関連していた(Peto OR 2.29; 95%CI 1.04-5.03)が,インフルエンザのリスク増加とは有意には関連していなかった(Peto OR 1.24; 95%CI 0.94-1.63).この結果は他の各メタ解析アプローチでも同様であった.さらに,COPD患者をICSで治療すると,1つの結核発生事象の要因におけるNumber Needed-to-Harm(NNH)は,非流行地域に比較して(NNH=1667)流行地域の患者ではより低かった(NNH=909).

【結 論】
我々の研究は,COPD患者において,さらなる検討を行うに値する,ICS使用と関連する結核とインフルエンザのリスクについての安全性の懸念を示すものである.
■私はCOPD患者に対しては,LAMA(長時間作用型抗コリン薬),LABA(長時間作用型β刺激薬)でもコントロール不良なケースか喘息合併のケースでない限り絶対にICS(吸入ステロイド)を処方しない方針にしていいる.理由はICSで感染リスク,血栓リスク,糖尿病悪化リスク等が報告されているためであり,特定の患者でない限りは有害性が有益性を上回る可能性が高いからである.このため,COPD患者に対してアドエアやシムビコートを第一選択とすべきではない.また,COPDを喘息と誤診するとICSが投与されてしまう懸念もあり,ましてやシムビコートの喘息に対する適応があるSMARTによって発作時も吸入などされてしまっては高用量ICS投与になる,初期診断は重要である.咳喘息疑い例でも,胸部X線撮影なしにICSによる診断的治療は行うべきでない.COPDに対する吸入薬の第一選択はあくまでもLAMAかLABAであり,ICSを含むシムビコートやアドエアではない.

■気管支喘息においてはICSが肺炎を増加させるか否かについては議論の余地があるが,COPD患者に対するICSが肺炎リスクとなることはコンセンサスが得られていると思われる.その原因として,COPD患者では気道クリアランスが低下しており,下気道に細菌が定着しやすいことが考えられている[1]

■Drummondら[2]は,COPD患者におけるICSを評価した二重盲検RCT11報14426例のメタ解析を行い,ICSが肺炎リスクを1.34倍有意に増加させると報告している(RR 1.34; 95%CI 1.03-1.75; p=0.03; I(2)=72%).サブグループ解析では,肺炎リスクは高用量のICSで1.46倍(RR 1.46; 95%CI 1.10-1.92; p=0.008; I(2)=78%),ICS使用開始早期で2.12倍(RR 2.12; 95%CI 1.47-3.05; p<0.001; I(2)=0%),ベースラインの呼気量が低いと1.90倍(RR 1.90; 95%CI 1.26-2.85; p=0.002; I(2)=0%),ICSと気管支拡張薬の併用で1.57倍(RR 1.57; 95%CI 1.35-1.82; P<0.001; I(2)=24%)有意に増加していた.

■Singhら[3]も無作為化比較試験18報16996例のメタ解析を行い,ICSが肺炎リスクを1.60倍有意に増加させ(RR 1.60; 95%CI 1.33-1.92; p<0.001; I(2)=16%),深刻な肺炎リスクを1.70倍増加させる(RR 1.71; 95%CI 1.46-1.99; p<0.001; I(2)=0%)と報告している.肺炎関連死亡リスクに関しても増加傾向がみられたが,統計学的有意差はなかった(RR 1.27; 95%CI 0.80-2.03 ; p=0.31; I(2)=0%).また,ICSはプラセボ群と比較すると,深刻な肺炎リスクが1.81倍有意に増加していた(RR 1.81; 95%CI 1.44-2.29; p<0.001).さらに,ICSとLABAの併用はLABA単独と比較して深刻な肺炎リスクが1.68倍有意に増加した(RR 1.68; 95%CI 1.20-2.34; p=0.002).さらにSinghらはこのメタ解析を24報23096例まで増やしてup-dateし[4],ICSで肺炎リスクが1.57倍(RR 1.57; 95%CI 1.41-1.75; p<0.0001)増加すると報告している.

■その他感染症として,14報の二重盲検RCT,11794例のコクランレビューによるメタ解析[5]では,COPD患者に対するICSでカンジダ感染症リスクが3.75倍,上気道感染リスクが1.32倍有意に増加すると報告されている.また,COPDではなく気管支喘息の研究であるが,気管支喘息小児192例でICS使用群と非使用群を比較したところ,咽頭への肺炎球菌の定着率は使用群で有意に高く(27.1% vs 8.3%),ICSは肺炎球菌定着リスクが3.75倍有意に増加した(RR 3.75; 95%CI 1.72-8.18; p=0.001)と報告されている[6]

■これらのICSによる感染症増加はステロイドの気道における免疫低下のみならず,ステロイドが体内に吸収されることによる,全身性ステロイド投与と同様の免疫力低下が生じている可能性がある.実際に,van Bovenら[7]のコホート研究では,ICSで静脈血栓症リスクは2.21倍(95%CI 1.72-2.86)有意に増加することが報告されており,この数値は全身ステロイド投与とほぼ同等である.5.5年間フォローアップされた388584例のコホート研究(糖尿病患者は30167例)[8]でも,ICSは糖尿病発症リスクを1.34倍(95%CI 1.29-1.39)に増加させると報告されている.ICSに関する16報RCT,17513例のメタ解析[9]でも,骨折リスクが1.27倍(Peto OR 1.27; 95% CI 1.01 to 1.58; p=0.04; I(2)=0%)増加することが報告されている.Kellyら[10]は,小児喘息患者943例をブデゾニド400mcg/日群,ネドクロミル16mg/日群,プラセボ群にランダムに割り付け,4-6年間投与したRCTを行い,ブデゾニド群で1.2cm有意に平均成人身長が低かったと報告している.Cossetteら[11]は,ICS単独またはICS+LABAを使用している妊婦7376例コホート研究を行い,低出生体重児(LBW),早産(PB),胎児発育遅延(SGA)の発生リスクを増加させなかったが,平均ICS用量が増えると,統計学的に有意ではないがこれらのリスクが増加する傾向がみられたと報告している.

■これらの結果から考えても,ICS使用によってそれなりの量が気道から体内に吸収され,全身性ステロイドと同様の作用を発現している可能性はおおいに考えられ,全身免疫系への影響の懸念もでてくるわけである.ここにCOPD患者の気道クリアランス低下という非特異的かつ物理的免疫機能低下という特徴があわされば,結核がICSを使用するCOPD患者で増加することは納得がいくところではある.

■Kimら[12]は,COPD患者616例の後ろ向きコホート研究で,結核発生リスクは,胸部X線写真上での陳旧性肺結核陰影のない患者で9.079倍(95%CI 1.012-81.431; p=0.049),陳旧性肺結核陰影がある患者で24.946倍(95%CI 3.090-201.365; p=0.003)有意に増加すると報告している.より大規模なN数での853439例症例対照研究[13]でも,喘息・COPD患者においてICSは結核リスクを1.20倍(95%CI 1.08-1.34)有意に増加(用量依存的)させると報告している.Leeら[14]は台湾国民健康保険データベース70782例の解析を行い,高齢,男性,糖尿病,終末期腎疾患,肝硬変とともに,COPDは結核発生の有意な独立危険因子であった(HR 2.468; 95%CI 2.205-2.762).

[1] Ernst P, Gonzalez AV, Brassard P, et al. Inhaled corticosteroid use in chronic obstructive pulmonary disease and the risk of hospitalization for pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2007; 176: 162-6
[2] Drummond MB, Dasenbrook EC, Pitz MW, et al. Inhaled corticosteroids in patients with stable chronic obstructive pulmonary disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA 2008; 300: 2407-16
[3] Singh S, Amin AV, Loke YK. Long-term use of inhaled corticosteroids and the risk of pneumonia in chronic obstructive pulmonary disease: a meta-analysis. Arch Intern Med 2009; 169: 219-29
[4] Singh S, Loke YK. Risk of pneumonia associated with long-term use of inhaled corticosteroids in chronic obstructive pulmonary disease: a critical review and update. Curr Opin Pulm Med 2010; 16: 118-22
[5] Nannini LJ, Lasserson TJ, Poole P. Combined corticosteroid and long-acting beta(2)-agonist in one inhaler versus long-acting beta(2)-agonists for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD006829
[6] Zhang L, Prietsch SO, Mendes AP, et al. Inhaled corticosteroids increase the risk of oropharyngeal colonization by Streptococcus pneumoniae in children with asthma. Respirology 2013; 18: 272-7
[7] van Boven JF, de Jong-van den Berg LT, Vegter S. Inhaled corticosteroids and the occurrence of oral candidiasis: a prescription sequence symmetry analysis. Drug Saf 2013; 36: 231-6
[8] Suissa S, Kezouh A, Ernst P. Inhaled corticosteroids and the risks of diabetes onset and progression. Am J Med 2010; 123: 1001-6
[9] Loke YK, Cavallazzi R, Singh S. Risk of fractures with inhaled corticosteroids in COPD: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials and observational studies. Thorax 2011; 66: 699-708
[10] Kelly HW, Sternberg AL, Lescher R, et al; CAMP Research Group. Effect of inhaled glucocorticoids in childhood on adult height. N Engl J Med 2012; 367: 904-12
[11] Cossette B, Forget A, Beauchesne MF, et al. Impact of maternal use of asthma-controller therapy on perinatal outcomes. Thorax 2013; 68: 724-30]
[12] Kim JH, Park JS, Kim KH, et al. Inhaled corticosteroid is associated with an increased risk of TB in patients with COPD. Chest 2013; 143: 1018-24
[13] Lee CH, Kim K, Hyun MK, et al. Use of inhaled corticosteroids and the risk of tuberculosis. Thorax 2013; 68: 1105-13
[14] Lee CH, Lee MC, Shu CC, et al. Risk factors for pulmonary tuberculosis in patients with chronic obstructive airway disease in Taiwan: a nationwide cohort study. BMC Infect Dis 2013; 13: 194
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by DrMagicianEARL | 2014-02-09 15:22 | 文献 | Comments(0)
エビデンスレベルは高くないですが,集中治療領域でのスタチンについてブルージャーナルに面白い報告があったので紹介します.
重症疾患におけるスタチンの使用とせん妄リスク
Page VJ, Davis D, Zhao XB, et al. Statin Use and Risk of Delirium in the Critically Ill. Am J Respir Crit Care Med 2014 Jan 13
PMID:24417431

Abstract
【背 景】
集中治療室(ICU)の患者におけるせん妄はよく知られており,予後不良予測因子であり,神経炎症が機序と考えられている.スタチンの抗炎症作用はせん妄を減じるかもしれない.

【目 的】
スタチン療法を受ける重症疾患患者がスタチン療法を受けない患者よりもせん妄リスクが減少するかについて検討する.

【方 法】
2011年8月から2012年2月まで英国の内科外科混合ICUに入室した連続したICU患者データの前向きコホート解析を行った.ICUに入室中のせん妄のない日数を各患者ごとにCAM-ICUを用いて評価した.せん妄のない日数,毎日のスタチン投与とC反応性蛋白(CRP)を記録した.

【結 果】
2011年8月から2012年2月まで,スタチン投与を受けた患者151例を含む417例の連続的ICU患者が観察された.ランダムエフェクト多変量ロジスティック回帰を用いると,前日夕のスタチン投与はその後のせん妄無発症(OR 2.28; 95%CI 1.01-5.13; p<0.05)と低いCRP(β=-0.52; p<0.01)に関連していた.スタチンとせん妄無発症をCRPで調整すると,エフェクトサイズは有意ではなくなった(OR 1.56; 95%CI 0.64-3.79; p=0.32).

【結 論】
重症患者において,スタチン療法継続は毎日の低いせん妄リスクと関連していた.本研究を受けて,現在進行中の臨床試験でスタチンが重症疾患におけるせん妄の潜在的治療になるかについて検討している.
■集中治療領域においてスタチンの抗炎症作用[1]が注目されており,また,炎症とせん妄の関連については近年多数の報告がでている[2]ことから,スタチンの抗炎症作用がせん妄を減じるという仮説が三段論法で成り立つわけで,この仮説を検証したのが今回のコホート研究であり,共同著者にはICUせん妄の第一人者でもあるEly先生が名を連ねている.せん妄を抑制するならば,長期予後において差がでるかもしれない.

■CRPとせん妄については,ZhangらがICU患者223例の前向き観察研究を行っている[3].単変量解析ではせん妄発症患者の方が非発症患者よりCRPが有意に高かった(12.05 vs 5.75 mg/dL; P=0.0001).背景因子で調整した多変量ロジスティック回帰においても,CRPはせん妄と有意に関連していた(OR 1.07; 95%CI 1.01-1.15).24時間以内のCRP>8.1mg/dLはせん妄リスクを有意に増加させた(OR 4.47; 95%CI 1.28-15.60).

■ステロイドも抗炎症作用を有するが,ステロイドの場合は中枢神経系に対する直接作用を有し,レム睡眠を短縮させてしまい,むしろせん妄の要因となってしまう.他の抗炎症作用が期待されているマクロライド系抗菌薬,リコンビナント・トロンボモデュリン,β遮断薬については現時点ではせん妄リスクに与える影響についてのエビデンスがない.

■敗血症へのスタチンを検討したRCTで,死亡率を改善したとする報告はまだなく[4],人工呼吸器関連肺炎でのRCTではスタチン群で死亡率の悪化傾向が見られたため試験が中止されている[5].その一方で,コホート研究においては,スタチンを以前から内服している患者では死亡率が低いことが複数報告されている[4].おそらくスタチンを内服していない患者が感染症罹患と同時にスタチンを開始すると,脂質代謝系で悪影響がでる可能性があるのかもしれない.血管内皮細胞ではエネルギー源の70%を脂質に依存しており[6],重症病態下においてミトコンドリア機能不全による糖質代謝系の障害が起こりうることも考慮すると,脂質系への新規のスタチン介入は血管内皮細胞にとって決していいことばかりではないということも理論上考えられる.よって,脂質低下作用をもたないスタチン製剤の創薬が必要なのかもしれない(もしくはまもなく本邦にも登場するα-リノレン酸を主体とした脂質製剤をスタチンに併用するのがbetter?).

[1] Kouroumichakis I, Papanas N, Proikaki S, et al. Statins in prevention and treatment of severe sepsis and septic shock. Eur J Intern Med 2011; 22: 125-33
[2] DrMagicianEARL. 敗血症とせん妄(1) ~定義と評価,予後との関連~. EARLの医学ノート 2013 Nov.12 http://drmagician.exblog.jp/21312727/
[3] Zhang Z, Pan L, Deng H, et al. Prediction of delirium in critically ill patients with elevated C-reactive protein. J Crit Care 2014; 29: 88-92
[4] DrMagicianEARL. 【文献+レビュー】スタチンは敗血症の予後を改善するか? EARLの医学ノート 2014 Jan.15 http://drmagician.exblog.jp/21555736/
[5] Papazian L, Roch A, Charles PE, et al; STATIN-VAP Study Group. Effect of statin therapy on mortality in patients with ventilator-associated pneumonia: a randomized clinical trial. JAMA 2013; 310: 1692-700
[6] Dagher Z, Ruderman N, Tornheim K, et al. Acute regulation of fatty acid oxidation and amp-activated protein kinase in human umbilical vein endothelial cells. Circ Res 2001; 88: 1276-82
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by DrMagicianEARL | 2014-01-27 17:23 | 文献 | Comments(0)
 新年明けましておめでとう御座います.今年も宜しく御願い申し上げます.

 今年の最初の記事は,まだ論文化されていない研究内容として,2014年1月9日から13日まで米国サンフランシスコで開催される米国集中治療医学会の抄録集から(個人的に)興味深い内容のピックアップです.

The 43rd Critical Care Congress
January 9-13, 2014
Moscone Center South, San Francisco, California, USA
President: Carol L. Thompson, PhD, ACNP, CCRN, FCCM
Crit Care Med 2013; 41 Suppl
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集中治療室入室が必要ではない可能性がある患者の検出モデル
Sadaka F, Cytron M, Fowler K, et al. A model for identifying patients who may not need intensive care unit admission. SCCM Congress 2014 Oral 1
ICUに入室した全患者を後ろ向きに解析し,APACHEアウトカムデータベースを用いて,day1に1つ以上の生命維持のための積極的加療を受けた患者を検出し,低リスク群(初日に積極的加療を要さず,その後も積極的加療を要するリスクが10%以下の患者)2293例と積極的加療群(ICU入室中に1つ以上の積極的加療を受けた患者)を比較.APACHEⅣスコアは低リスク群34.3±13.4,積極的加療群58.7±25(p<0.0001).ICU在室日数は低リスク群1.6±1.7日,積極的加療群4.3±5.3日(p<0.0001).ICU死亡率は低リスク群0.7%,積極的加療群9.6%(OR 15.0; 95%CI 9.2-24.8; p<0.0001).院内死亡率は低リスク群1.8%,積極的加療群15.2%(OR 9.8; 95%CI 7.1-13.4; p<0.0001).
 米国でも集中治療コストは年間800億ドルに達しており,今後も増加することが見込まれている.限られた医療資源,ベッド,スタッフでICUを運営するためにもICUが必要でない患者を抽出していくシステムは必要で,本研究でもICU全入室患者の29.7%に及ぶ患者が低リスク群に該当している.
外傷性脳損傷におけるHMGB-1トランスロケーションと小膠細胞活性化はミノサイクリンによって減少する
Simon D, Aneja R, Lewis J, et al. HMGB1 translocation and microglial activation after pediatric TBI attenuated by minocycline. SCCM Congress 2014 Oral 10
重症外傷性脳損傷モデルラット17例での動物実験で,ミノサイクリンがHMGB-1トランスロケーションと小膠細胞活性化を阻害した.
 第2世代テトラサイクリン系抗菌薬のミノサイクリンには抗菌作用以外に神経保護作用が知られている.本研究でも指摘された小膠細胞阻害作用については実は早稲田大学の研究で男性の浮気防止効果としてプラセボ対照RCTで有用性が示されている(Watabe M, et al. Sci Rep 2013; 3: 1685).
早期リハビリテーション(mobilization)は脳神経外科ICU患者のアウトカムを改善するか?
Klein K, Mulkey M, Bena J, et al. Does early mobilization improve neuroscience ICU patient outcomes? SCCM Congress 2014 Oral 11
Neurosurgical ICUに入室した637例で,看護師始動の早期リハビリテーション開始プロトコル介入を検討した前向き前後比較研究.介入後は有意に歩行障害,人工呼吸器装着日数,血流感染,圧迫潰瘍,不安,抑うつが減少した.多変量解析では,早期リハビリテーショの方がより運動能があり,ICU在室期間や入院期間が短縮し,自宅退院が多く,不安が少なかった.死亡率,深部静脈血栓症,その他臨床アウトカムには有意差はみられなかった.
 今流行のnurse drivenの早期リハビリテーションプロトコルの有用性研究.血流感染症まで減少したのは意外.死亡率については長期予後でみると有意差がつくのかもしれない.
蘇生後心筋機能におけるβ遮断薬,β遮断+α1遮断薬の効果
Yang M, Hu X, Lu X, et al. The effects of β- and β-, α1- adrenergic blocking agents on post-resuscitation myocardial function. SCCM Congress 2014 Oral 18
心室細動蘇生後モデルラット24例での動物実験.β遮断薬(プロプラノロール),あるいはβ遮断薬とα1遮断薬(プラゾシン)の併用は蘇生後心筋機能障害を減少させ,心筋傷害バイオマーカー放出を減少させた.
 敗血症性ショックでのβ遮断薬については既にPhaseⅡまで有用性が示されているが,心肺蘇生後にもβ遮断薬の研究がでてきた.
ECMOを受ける重症心不全の成人患者において高体重は死亡率を増加させる
Ryan K, Lynch W, Wypij D, et al. Higher body weight increases mortality in adults with severe cardiac failure supported with ECMO. SCCM Congress 2014 Oral 25
米国の2005年から2011年までの多施設ECMOレジストリデータから,体重分布80%タイル以上の肥満群(男性100kg以上,女性90kg以上)と40-60%タイルの非肥満群(男性75-85kg,女性65-75kg)を比較した1611例後ろ向きコホート研究.調整前の死亡率は54% vs 51%(p=0.4)で有意差なし.サブ解析では,心原性(68% vs 54%, p=0.002)と心肺蘇生(84% vs 60%, p=0.03)においては肥満群の方が有意に死亡率が高かった.多変量解析では,肥満が死亡に関連した有意な独立危険因子であった(OR 1.4; 95%CI 1.1-1.7).
 近年の肥満パラドックスとは間逆の結果.ただ,日本人からしてみると40-60%タイル群でもかなり高体重な印象.
重症疾患における血清鉄レベルと血流感染症の関連性
Christopher K, Hajifathalian K, Chanchani S, et al. The association of serum iron levels and bloodstream infections in the critical ill. SCCM Congress 2014 Oral 42
2施設ICUの18歳以上の成人患者4703例の観察研究.血流感染症は18.4%に生じ,そのうち35.2%が敗血症と診断された.30日全死亡率は23.5%.入院前の血清鉄レベル>170μg/dLは60-169.9μg/dLの集団と比して血流感染症リスクが1.38倍(95%CI 1.00-1.92; p=0.050),調整後で1.41倍(95%CI 1.01-1.97; p=0.041),調整後敗血症リスクが1.39倍(95%CI 1.05-1.84; p=0.022),30日死亡リスクが1.42倍(95%CI 1.02-1.96; p=0.035)であった.
 鉄剤静注による感染症増悪は有名だが,入院前の血清鉄濃度で血流感染症発生率のみならず30日死亡率まで増加するとの結果.過剰な鉄剤投与は控えるべきであろう.
重症疾患患者の初期ビタミンD濃度と90日死亡リスク
Quraishi S, Bittner E, Blum L, et al. Vitamin D status at innitiation of care in critically ill patients and risk of 90-day mortality. SCCM Congress 2014 Oral 49
2施設の外科ICU患者100例を前向きに登録したビタミンDについての観察研究.平均血清total 25(OH)Dは17±8ng/mL,total 1,25(OH)2Dは32±19ng/mL.平均生体利用25(OH)Dは2.5±2.0ng/mL,1,25(OH)2Dは6.6±5.3ng/mL.90日再入院率は24%,90日死亡率は22%.Poisson回帰解析では,total 25(OH)Dが1ng/mL増加するごとに入院期間は2%短縮する(OR 0.98; 95%CI 0.97-0.98).共変量調整後,total 25(OH)Dが1ng/mL増加するごとに,90日再入院リスクは16%減少(OR 0.84; 95%CI 0.74-0.95),90日死亡リスクは16%減少(OR 0.84; 95%CI 0.73-0.95).外科ICU患者においてビタミンD補充が予後を改善するかについて無作為化比較試験が必要である.
 ビタミンDが低いと予後悪化に関連するとの結果.
重症疾患生存者におけるICU入院中のせん妄の長期予後
Wolters A, van Dijk D, Pasma W, et al. Long-term outcome of delirium during ICU admission in survivors of critical illness. SCCM Congress 2014 Oral 50
内科外科混合ICUに入室した1101例前向き観察コホート研究.412例(37%)がICU入室期間中にせん妄エピソードを有した.そのうち198例(18%)がICU入室から12ヶ月以内に死亡している.12ヶ月後の調査回答率は64%であった.ICU入室期間中の疾患重症度を含む共変量で調整すると,せん妄と12ヶ月死亡率に有意な関連性はみられなかった(HR 1.25; 95%CI 0.92-1.69).同様に調整するとせん妄は12ヶ月健康関連QOLとも関連性はみられなかった(β -0.04; 95%CI -0.10 to 0.01).しかし,中等度から重度の認知機能障害は共変量調整後でも有意に関連性がみられた(中等度認知機能障害OR 2.41; 95%CI 1.57-3.69,重度認知機能障害OR 3.10; 95%CI 1.10-8,74).
 PICS関連研究.せん妄が長期死亡率を悪化させる報告が近年複数でており,この研究では有意な増加はみられないものの,HR 1.25であり注意が必要.
敗血症性ショックにおける蘇生バンドル遵守:遅くとも行わないよりはよい
Sadaka F, Tannehill D, Trottier S, et al. Resuscitation bundle compliance in septic shock: better late than never. SCCM Congress 2014 Oral 57
2011年7月から2013年1月までの大学病院における敗血症性ショック395例を,6時間以内にSSCGに順じた蘇生プロトコルを施行した群(C6群)95例,6時間以上18時間以内に蘇生プロトコルを遵守した群(C18群)85例,18時間時点で蘇生プロトコルが達成されていない群(NC群)215例を比較した前向き観察コホート研究.3群間で年齢,体重,SOFAスコアに有意差なし.疾患重症度とベースラインで調整したCoxハザード解析では,NC群と比較した院内死亡リスクはC6群で55%減少(HR 0.45; 95%CI 0.24-0.85; p=0.01),C18群で88%減少(HR 0.12; 95%CI 0.04-0.39; p<0.001)した.
 たとえ6時間以内に達成できなくともプロトコルを行わないよりはマシ,という結果.
妊婦における重症敗血症―全国解析
Kumar G, Ahmad S, Dagar G, et al. Severe sepsis in pregnancy - A national analysis. SCCM Congress 2014 Oral 58
米国の2000-2009年までの18歳以上の妊婦の入院患者データを用いた解析.45107956例の妊婦データが得られ,そのうち19351例(0.04%)が重症敗血症であった.年間の重症敗血症発生率は2000年の21/100000から2009年の74/100000に増加していた.重症敗血症の原因の50%は出産時の感染であった.妊婦の重症敗血症の院内死亡率は6.8%であり,2000年から2009年まで変化していない.その一方で,妊婦でない女性の院内死亡率は30.3%であった.重症敗血症は妊婦の全死亡原因のうち23%であった.敗血症のない妊婦の入院期間が2.6日間であったのに対し,重症敗血症発症妊婦は12.9日間であった.
 妊婦の敗血症発生率と死亡率は低いが,死亡率はこの9年間で変わっておらず,死亡原因の1/4を重症敗血症が占めるという結果.
小児における重症敗血症:小児医療情報システムデータベースでみた傾向と予後
Ruth A, McCracken C, Hall M, et al. Severe sepsis in children: trands and outcomes from the pediatric health information system database. SCCM Congress 2014 Oral 59
2004-2012年の小児病院関連小児医療情報システムのデータベースからPICSに入室した新生児でない小児の重症敗血症の解析.全561937例の入室のうち,重症敗血症は7.0%(39372例)であった.併存疾患は76%にみられた.全死亡率は15.1%であった.小児重症敗血症患者のうち,心血管疾患の合併が最も多かった(28.3%,死亡率19.8%).多変量解析では,悪性新生物を有する小児重症敗血症が最も死亡リスクが高かった(OR 2.2; 95%CI 2.1-2.4; p<0.001).血流感染が最も多い感染巣であった(61.2%).PICU在室日数中央値は7日(IQR 3-19),入院日数中央値は18日(IQR 9-39).10-19歳と比較すると,1歳未満が最も死亡リスクが高かった(死亡率19.5%,OR 1.24; p<0.001).ブドウ球菌属は最も多い原因菌であり(10.8%),次いで連鎖球菌属が多かった(5.8%).真菌感染症は多くなかったが(0.6%, n=239),死亡率は16.7%と高かった.3つ以上の臓器障害は死亡のハイリスクであった(死亡率47%; OR 13.4; 95%CI 12.1-14.9; p<0.01).2004年から2012年で小児重症敗血症発生率は有意に増加し(5.1% vs 5.8%; p<0.001),コストも$211784から$232138に有意に増加した(p=0.002).しかし,死亡率は有意に低下していた(19.2% vs 13.2%; p<0.001).
 近年の小児敗血症のデータを知るための重要な研究である.おおむね成人データと同様の傾向が示されている.
敗血症診断日の低体温は低リンパ球血症遷延を予測する
Drewry A, Skrupsky L, Fuller B, et al. Hypothermia on the day of sepsis diagnosis predicts persistent lymophopenia. SCCM Congress 2014 Oral 63
敗血症または菌血症の成人患者445例の後ろ向きコホート研究.免疫疾患既往や免疫抑制薬使用歴のある患者は除外とした.24時間以内の体温で分類し,低体温は36.0℃未満,発熱は38.3℃と定義した.低リンパ球血症は培養後4日目でリンパ球数<1.2細胞/μL×1000と定義した.183例(41.1%)が正常体温,58例(13.0%)が低体温,204例(45.8%)が発熱であった.正常体温群と比較して,28日死亡率は低体温群で有意に高く(48.3% vs 30.6%; p=0.015),高体温群で有意に低かった(21.1% vs 30.6%; p=0.03).診断日の低体温は正常体温と比較して低リンパ球血症遷延と有意に関連していた(調整後OR 2.42; 95%CI 1.03-5.69; p=0.028).生存退院した患者においては,各群で二次感染発症率に有意差はないが,発熱群で低い傾向がみられた.
 敗血症において低体温が最も予後が悪いことはこれまで複数のコホート研究で示されており,今回低体温とリンパ球減少の関連性が示唆された.低体温による免疫力低下は心肺蘇生後の低体温療法の合併症としても知られている.
夜間騒音減少バンドルとアラーム設定調整によるICUの騒音と夜間のアラームの減少
Mattingly AM, Valcin EK. Reduction of ICU noise and alarms with a night-time noise reduction bundle and modified alarm profile. SCCM Congress 2014 Poster 111
内科ICUにおいて,夜間騒音減少バンドルとアラームの調整を組み合わせた介入による前後比較研究.バンドル構成要素は,時間アラームを小さくし,患者の個室を閉じ,輸液ポンプとモニターの音を小さくし,アラームを鳴らすようなワークフローを調整し,テレビやラジオを消し,スタッフの声を小さくすることである.新しいアラーム設定は,アラーム基準を最も厳しくすることで迷惑なアラーム音を減少させるよう調整した.24時間での音の強さは有意に減少し(中央値54.3 to 53.0 dB; p<0.0005),夜間の音の強さも有意に減少した(中央値52.8 to 51.3; p<0.0005).非不整脈によるレッドアラームが増加したにもかかわらず,全アラーム,全イエローアラーム,不整脈によるレッドアラームは有意に減少した.モニター音量,輸液ポンプ音量,時間音量は有意に改善したが,テレビはつけられることが多くなった.ラジオとドア閉めは変化がなかった.
 音による睡眠障害はICUせん妄の大きな要因であるにもかかわらず,多くの施設においては基準をはるかに上回る音量がなっており,睡眠障害が生じていることが報告されてきている.本研究ではなんとかしてICUの騒音を減少させようとする取り組みを提示し,ある程度の統計学的に有意な減少を示したが,臨床的に意味のある減少量かは判断しづらい.また,患者への有用性,安全性についての検討がなされていないところが問題点と思われる.
日本の集中治療におけるFCCSコースの評価
Atagi K, Fujitani S, Ishikawa J, et al. Evaluation the Fundamental Critical Care Support course in critical care education in Japan. SCCM Congress Poster 131
米国でICUをローテーションするレジデントのための訓練コースを日本の臨床に合わせたFCCSコース(2日間のoff-the-jobトレーニング,プレテスト・ポストテストによる評価)の評価.4年間で受講者は増加し,1804名に達した.70%近くの参加者は医師であり,それ以外で最も多かったのは看護師であった.創設した最初の年は臨床経験年数が5年を上回る医師は50%を超えていたが,徐々に減少した.その一方で,レジデントと看護師が増加した.半数近くの参加者が人工呼吸器について有益なセッションと考えていた.プレテストで既に平均点は高かったが(78.8±14.1点),ポストテストでは有意に改善していた(82.0±6.6点; p<0.01).集中治療管理のいかなる分野においても受講者の信頼度は5ポイントスケールでほぼ4ポイントであった.
 日本各地で開催されているFCCSの評価である.私自身も参加したいのだが,いろいろな日程と重なっていまだに1度も参加できずにいる(ただし呑み会だけは1度参加した(^^;)).このコースの特徴は集中治療医というより,むしろそれ以外の医療スタッフを対象にしていることである.集中治療医でなくとも是非一度は受講しておきたいコースである.
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by DrMagicianEARL | 2014-01-03 00:37 | 文献 | Comments(0)
夏休みに引き続き,明日からの臨床に役立たない(一部役に立つ?)「へぇ~」的論文特集第2弾です.小ネタにどうぞ.

メタボリックシンドローム神話崩壊?
Thomsen M, et al. JAMA Intern Med 2013
メタボリックシンドローム有無にかかわらず過剰体重や肥満は心筋梗塞や虚血性心疾患のリスクであり,リスク検出の上でメタボリックシンドロームはBMIを上回る価値はない.デンマーク71527例コホート研究

ナッツで寿命が延びる?
Bao Y, et al. N Engl J Med 2013; 369: 2001-11
118962例コホート研究.ナッツを食べない人と比較して,死亡リスクは週1回食べると7%減少,週2-4回で11%減少,週5-6回で15%減少,週7回以上で20%減少.ナッツは癌・心疾患・呼吸器疾患による死亡リスク減少と有意に関連.

喫煙者が多い室内のPM2.5濃度は北京市のひどい日の4倍
呼吸 2013;32:1028-35
日本の喫煙者が多い室内において,PM2.5濃度は3000μg/m3に達しており,北京市のPM2.5濃度が高い日の約4倍の劣悪な環境であった.
※なお,国立癌研究センターでは日本での受動喫煙死亡者数は6800人と推定している.

医師は敗血症で死亡しにくい
Shen HN, et al. Crit Care Med 2013 Nov.13
医師29697人と非医療者をマッチさせたコホート研究.医師は重症敗血症発生率になりにくく,重症敗血症に罹患しても死亡リスクが18%低い.医学知識を有し,疾患認識力が高く,病院を早く受診しやすいのが原因かもしれない.

バイリンガルは認知症になりにくい
Alladi S, et al. Neurology 2013; 81: 1938-44
インド在住の648人(平均年齢66歳)を対象に調査を実施し,2言語話せる群と1言語のみの群で認知症発症を比較.2言語群は,たとえ読み書きができなくとも,1言語しか話さない人と比べて認知症の発症が4年半遅かった.
※英語論文を読む医師は読まない医師より認知症になりにくい,なんて研究はでないでしょうか

スーパーマリオで知能アップ?
Kühn S, et al. Mol Psychiatry 2013 Oct.29
テレビゲームのスーパーマリオ64を2ヶ月間プレイする群としない群を比較したRCT.プレイ群は右脳の海馬,前頭前野皮質,小脳の脳体積が増加し,知能増加が見られた.PTSD,統合失調症に有用かもしれない.

大豆で放射線治療副作用を予防?
Hillman GG, et al. J Thorac Oncol 2013;8:1356-64
大豆のイソフラボンは,放射線による皮膚障害,脱毛,呼吸数増加,肺炎,線維化に対して保護的に作用する.マウスモデル研究.

アリはアカシアの奴隷
Heil M, et al. Ecol Lett 2013 Nov.4
アカシアとアリの共生がこれまで知られていたが,アカシアの樹液が含む酵素によってアリがほかの糖源を摂取できなくなる樹液中毒によりアリがアカシアの奴隷となっていることが判明.

刑務所釈放者の死亡原因と麻薬
Binswanger IA, et al. Ann Intern Med 2013; 159: 592-600
刑務所釈放後の全死亡率737/10万人/年.死亡原因の14.8%は麻薬であり,また薬物大量服用死は167/10万人/年.女性は薬物大量服用と麻薬関連死のリスク因子.米国76208例コホート研究.

男性は女性のどこを見ているか
Gervais SJ, et al. Sex Roles 2013 Oct
大学生65名を対象としたアイトラッキング技術を用いた研究.男性が女性を見る際には顔よりもセクシャルなボディーパーツを見て判断していた.男性が女性を物として見ていることが示唆された.

喫煙は老ける
Okada HC, et al. Plast Reconstr Surg 2013;132:1085-92
双子79組の比較研究.喫煙者と非喫煙者の組み合わせの双子では喫煙者の方が老けて見える確率が57%,いずれも喫煙者だが喫煙歴に5年以上差があると喫煙歴が長い方が老けて見える確率が63%.

甘い飲料水に課税すると肥満者が減少
Briggs AD, et al. BMJ 2013; 347: f6189
イギリスで砂糖の入った甘い飲料水に20%の税金を課税したところ肥満者が1.3%減少した.

新たな脱毛治療の可能性
Higgins CA, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2013
毛包形成に必要な毛乳頭細胞を成人男性の脱毛症患者の後頭部から採取し,試験管内で立体的に培養した後でヒト皮膚組織に移植したところ毛を生やすことに成功.

アメフト選手の脳
Hampshire A, et al. Sci Rep 2013; 3: 2972
引退したアメフト選手13例の脳MRI解析研究で,前頭葉が過反応を起こしていた.損傷を受けた脳がより活発に活動しなければこれまでと同じ機能を果たせなくなっており,脳の活動場所を増やすことで対応していると結論.

睡眠は脳の老廃物を排出する
Xie L, et al. Science 2013; 342: 373-7
グリンパティック系循環による脳内老廃物の排出の睡眠時活動量は覚醒時の約10倍になり,脳細胞が約60%収縮するため,脳脊髄液がより速くより自由に脳内を流れることで脳内老廃物の排出が睡眠時に促進される.マウスモデル研究.

皮膚細胞から直接別の細胞を作り出す手法
Outani H, et al. PLoS ONE 2013; 8: e77365
皮膚の細胞に遺伝子を導入し,別の細胞を直接作製するダイレクト・リプログラミングを用い,皮膚細胞から軟骨細胞を,iPS細胞を経ることなく直接作成することに成功.iPS細胞の半分の期間で作成可能に
※京都大学.もはやiPS細胞すら使わないという手法

バソプレシン受容体の遮断は時差ボケ防止に有用?
Yamaguchi Y, et al. Science 2013; 342: 85-90
バソプレシン受容体ノックアウトマウスモデルで周囲の明るさなどの環境に適応しやすくなることが判明.時差ボケ防止薬開発に期待.

バレリーナの平衡感覚の秘密
Nigmatullina Y, et al. Cerebral Cortex 2013 Sep.27
バレリーナは内耳にある平衡器官からの信号を処理する小脳の部位が健常人より小さく眩暈を感じないため,身体を回転させてもバランスを崩さない.49例のMRI解析.
※トリビアの泉で,フィギュアスケーター(安藤美姫選手)を何分間回転させても目が回らないというのがありましたね.

高齢者にテレビゲームで認知力改善
Nature 2013; 501: 97-101
車を運転するテレビゲームを高齢者にさせたところ脳の認知力が改善した.

生きたマウスの体内でiPS細胞の作製に成功
Nature 2013, PMID:24025773
生体内で再プログラム.しかもiPS細胞よりもむしろES細胞に近い性質を持つ高い万能性.「採取→培養→移植」の過程を省いてリアルタイムで組織再生ができるようになる?

台風災害とPTSD
Aust N Z J Psychiatry 2013, PMID:23975696
小児~若者262例の解析.台風災害から18ヶ月後に中等症から重症のPTSDが遷延していたのは小児で5人に1人,若者で12人に1人であった.

銃の所持率上昇は銃器殺人発生率を増加させる
Am J Public Health 2013, PMID:24028252
1981-2010年の全米50州の調査解析.銃の所持率が1%上がるごとに,銃器による殺人の発生率は0.9%上昇する.
※銃の所持率の上昇は銃犯罪増加につながらないとする全米ライフル協会の主張を否定する結果となりました

ダウン症患者の血管内皮細胞で作られるたんぱく質は癌を抑制する
Cell Rep 2013; 4: 709-23
ダウン症患者の血管内皮細胞で大量に産生されるたんぱく質を特定し,このたんぱく質ができないようにマウスの遺伝子を操作すると,癌細胞転移が促進される.
※以前からダウン症患者は癌になりにくいことが指摘されていました.

ヒトの脳のGPS機能
Nat Neurosci 2013; 16: 1188-90
人間の脳にGPS機能のような細胞があり,稼働していることを実験的に証明.

肥満と腸内細菌
Science 2013; 341: 1241214
肥満患者の腸内細菌をマウスの腸に移植すると脂肪がたまりやすくなってマウスが太り,やせた患者の腸内細菌を移植した場合はマウスの体形が維持された.ただし,脂質の多い餌を摂取するマウスはやせ形の腸内細菌による体質改善効果がみられない.

睾丸の大きさと子育て
Mascaro JS, et al. Proc Nat Acad Sci 2013 Sep.9
子供をもつ男性70例の生殖器をMRI撮影し解析.生物学的に睾丸の小さな父親の方が子育てに気持ちが傾きやすい.

性格のよくない男性のみがアダルトビデオの影響で女性に偏見を抱く
J Commun 2013; 63: 638-60
デンマーク男性200例での前向き観察研究.アダルトビデオの卑猥な映像により女性に偏見を抱くのは元から性格がよくない男性(事前のテストで分類)のみで,その他の男性がアダルトビデオから影響を受けることは少ない.

カジノでの喫煙禁止で救急車出動要請が減少
Circulation 2013; 128: 811-3
米国コロラド州で2008年にカジノでの喫煙を禁止する法律を施行したところ,カジノからの救急車出動要請が19.1%減少.
※同州では2006年に職場,レストラン,バー等の公共の場での喫煙を禁止する法律施行で救急車出動要請が22.8%減少

右脳・左脳の使用に差はない
PLoS One 2013; 8: e71275
1011名の安静時の脳の機能的結合状態を7266の関心領域に分けてMRIで分析.脳の機能が左右いずれの半球でより多く使用されるということはない.
※右脳派・左脳派の分け方は都市伝説だった?

恋愛パートナーの成功に対する心理変化
J Pers Soc Psychol 2013, PMID:23915040
恋愛パートナーの成功に対して男性は自尊心ゆえに否定的な影響を受ける(素直に喜ばない).一方,女性にはそのような傾向がみられず
※男ってちっちゃいね,という研究.あくまで学生が対象ですが

日本の公立病院での医師への給料の支払いは適切か?
Pediatr Int 2013; 55: 90-5
夜と休暇中の任務を労働時間と考えられていないため,多くの公立病院は医師に必ずしも増加した労働時間の給料を支払っていない.日本369病院調査
※日本の医師の労働はボランティア扱いが含まれているのでしょうねぇ.私自身,当直明けの日勤は無給扱いです.

Facebookで不幸になる?
PLoS One 2013; 8: e69841
Facebookは表面的には貴重な情報を提供するが,その使用は幸福を高めるわけではなく,むしろ幸福を減少させる可能性が示唆された.82例報告.

コーヒーの消費と全死亡および心血管疾患の関連性
Mayo Clin Proc 2013; 88: 1066-74
43727例解析.1週間に28杯以上コーヒーを飲む男性は全死亡リスクが1.21倍に有意に増加.年齢,55歳未満の男女に層別化すると,週28杯以上のコーヒー消費は全死亡リスクを男性で1.56倍,女性で2.13倍に有意に増加させる.1日4杯以上コーヒー飲む人は早死にするかもしれない.
※2012年には1日6杯コーヒー飲む人は死亡リスクが1割少ないという報告がNEJM誌にあったのですが・・・(NEJM 2012;366:1891-904)

食物添加物の臨床試験と利益相反
JAMAIM 2013, PMID:23925593
食物添加物で,試験により安全の認識されているものはCOIに偏りがあり,米国FDAはこの懸念に対処すべきである.システマティックレビュー.

飼い主のあくびは犬にうつる
PLoS ONE 2013;8:e71365
見知らぬ人のあくびよりも,飼い主のあくびの方が犬にうつりやすい.犬にとって,あくびがうつるには相手との感情の結びつきが重要な可能性.一般家庭で暮らすプードルやパピヨン,ゴールデンレトリバーなど25匹での実験.

兄弟がいると離婚リスクが減少する
Downey D, et al. 108th American Sociological Association, NY, 2013 Aug.13
米国570000例調査の解析.兄弟が1人増えるごとに将来の離婚する可能性が2%低下する.
※一人っ子は離婚リスク?

心停止から30秒間は精神状態が非常に高まる
Proc Natl Acad Sci U S A 2013, PMID:23940340
心停止モデルのラット9匹の脳電図の解析.心臓が停止してから30秒間にわたり脳の活動は急増し,精神状態が非常に高揚していており,この結果は心停止後蘇生患者の臨死体験を説明しうる可能性がある.

頭部冷却法は抗癌剤ドセタキセルによる脱毛を予防する
Support Care Cancer 2013;21:2565-73
固形癌患者238例においてドセタキセル点滴後45分の短期間の頭部冷却法を検討した前向き非ランダム化比較試験.頭部冷却法は脱毛の予防的な効果をもたらし,特にドセタキセル3週ごとの投与で効果的であった.

睡眠不足で太るメカニズム
Nat Commun 2013; 4: 2259
MRIによる23例解析で睡眠不足で太るに至る脳のメカニズムを検討.睡眠不足では大脳皮質の食欲・満腹感評価領域に活動性低下が見られ,同時に渇望に関連する領域に活動性上昇があり,睡眠不足の被験者は高カロリー食品により強い食欲を感じていた.

情けは人のためならずの実証
PLoS ONE 2013: 8: e70915
大阪府内保育園の5-6歳児70例を観察し,親切児が親切をした場合としなかった場合を約250回比較.親切をした場合の方が周りの園児が親切児を手伝ったりする頻度が高くなり,他者を好ましく思う言動も増えた.情けは人のためならずを実証

遠距離恋愛の方が心理的な結びつきが強い
J Commun 2013; 63: 556-77
カップル63組(約半数が遠距離恋愛)の解析.平均恋愛期間は2年未満,遠距離恋愛群は平均1年5カ月の間遠距離.長距離恋愛群は非長距離恋愛群よりも有意に,自分自身のことについて打ち明け,より親密な結びつきを感じていた.

動物との性交渉は陰茎癌を増加させる
J Sex Med 2012; 9: 1860-7
ブラジル農村地域の18-80歳の男性492例症例対照研究.35%(陰茎癌患者に限定すると44.9%)が馬,牛,豚,ニワトリ等の動物と性交渉経験あり.そのうち39.5%は週1回以上の頻度.動物との性交渉は陰茎癌を有意に増加させる.

Twitterは癌患者の心理的サポートとなる
BMC Res Notes 2012; 5: 699
フォロワーを500人以上有するTwitterアカウントをもつ癌患者51例のツイートの解析.Twitterは癌コミュニティーにおける患者の心理的サポートとなっている.山形大学の研究

オペラ「椿姫」を聞くことによる延命効果
J Cardiothorac Surg 2012; 7: 26
心臓移植したマウスを術後7日間聴かせる音楽として,オペラ「椿姫」群,モーツァルト群,音楽聴かせない群に割り付け.平均生存期間は26日,20日,7日.オペラには延命効果があるかもしれない.今年のイグノーベル賞受賞論文.日本から

セクハラされる看護師の特徴
Med J Malaysia 2012; 67: 506-17
看護師455名の解析.51.2%がセクハラ経験があり,内容は言葉46.6%,視覚的24.8%,心理的20.9%,身体的20.7%.美人,魅力的体型,親しみやすい,楽観的な看護師で多く,厳格で激しい性格の看護師には少ない.

病棟におけるチョコレート生存期間
BMJ 2013; 347: f7198
チョコレートを入れた箱を各病棟に設置し,継続的に観察してそれぞれのチョコレートが食べられた時間を記録した多施設共同前向き観察研究.チョコレート258個中191個が食べられた.平均観察期間は254分(95%CI 179-329分),チョコレートの生存期間中央値は51分(95%CI 39-63分).チョコレート消費モデルは非線形で,初期に急速に消費され,その後消費スピードは緩徐となった.指数関数的減衰モデルがこれらの結果に最も合致した.50%のチョコレートが食べられる時間(半減期)は99分であった.また,チョコレートの箱が病棟で開けられるまでの平均時間は12分(95%CI 0-24分)であった.最も高い頻度で摂取した医療従事者は,看護助手(28%),看護師(28%)であり,医師は15%であった.

ブラディという名前の人は徐脈でペースメーカーを挿入されやすい
BMJ 2013; 347: f6627
ブラディ(Brady)という人の名前が徐脈(bradycardia)の頻度を増加させるかどうか調査し,人の名前が健康に及ぼす影響を検討した後ろ向きコホート研究.161967例のうち,名前がブラディである579人(0.36%)が登録された.ブラディ群と非ブラディ群の年齢に差はなかった.ペースメーカー挿入頻度はブラディという名前の人の方が有意に高かった(1.38%vs0.61%, p=0.03).非ブラディと比較して,ブラディという名前によるペースメーカー挿入の非調整ORは2.27 (95%CI 1.13-4.57)だった.

ジェームズ・ボンドのアルコール摂取量の定量
BMJ 2013; 347: f7255
007のジェームズ・ボンドのアルコール消費量を定量する後ろ向き文献レビュー.ボンドが飲酒できなかった日数の除外後,彼のアルコール消費量は92単位/週であり,推奨適正量の4倍以上であった.彼の1日最大消費量は49.8単位であった.ジェームズ・ボンドのアルコール摂取レベルは早期死亡につながる多数のアルコール関連疾患のハイリスクの状態になっている.小説で示されている機能レベルは,この多量のアルコール摂取者において予測される身体的,精神的,性的機能と矛盾する.我々は更なる評価と治療(安全なレベルへのアルコール摂取の縮小)のために直ちに被照会者に忠告する.「ステアではなくシェイクで」という有名なキャッチフレーズは,アルコールによって誘発された手の振戦の原因であると推察される.ジェームズ・ボンドがウォツカ・マティーニをあおってからボンドガールと性行為ベッドインすることが多いのに,性行為後のボンドガールはみんな“大満足”の表情を見せるのはおかしい.

米国麻酔科レジデントと薬物依存
JAMA 2013;310:2289-96
米国で麻酔研修プログラムを受けたレジデント44612例の後ろ向きコホート研究.384例が研修中に薬物依存.発生リスクは2.16/1000人/年.28名(7.3%)が研修期間中に死亡し,全て薬物依存に関連していた.

細胞老化の進行を逆戻りさせる薬
Cell 2013; 155: 1624-38
マウスモデル研究.2歳のマウスにNMN投与で1週間後,筋肉が生後半年のマウスの筋肉とまったく変わらなかった.
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by DrMagicianEARL | 2013-12-24 18:41 | 文献 | Comments(0)
■低体温療法について大規模RCTがはじめて報告されましたので紹介します.2002年にNEJM誌に報告された低体温療法の有用性のエビデンスが11年たって同じNEJM誌上でくつがえされました.これまでの推奨に大きな影響を与えることは間違いないでしょう.
心停止後の目標体温管理33℃ vs 36℃(TTM study)
Nielsen N, Wetterslev J, Cronberg T, et al; the TTM Trial Investigators. Targeted Temperature Management at 33℃ versus 36℃ after Cardiac Arrest. N Engl J Med.2013 Nov 17. [Epub ahead of print]
PMID:24237006

Abstract
【背 景】
院外心停止で意識のない生存者は高い死亡リスクや神経学的予後不良リスクを有する.低体温療法は国際ガイドラインで推奨されているが,支持するエビデンスは限られており,最良の予後に関連する目標体温は知られていない.我々の目的は,発熱防止を目的とした2つの目標体温を比較することである.

【方 法】
この国際的試験では,心原性の院外心停止後の意識のない950例の成人患者を33℃または36℃を目標とした体温管理に無作為に割り付けた.一次評価項目は試験終了までの全死亡率とした.二次評価項目は,Cerebral Performance Category(CPC)scaleとmodified Rankin scaleで評価による180日での神経学的機能予後不良または死亡とした.

【結 果】
全体で939例の患者が一次解析に組み込まれた.試験終了時点で,36℃群の患者の死亡率が48%(225/466例)であったのに対し,33℃群では50%(235/473例)の患者が死亡した(HR 1.06; 95%CI 0.89-1.28; p=0.51).180日の追跡で,死亡またはCPCで評価した神経学的予後不良は,36℃群の患者で52%であったのに対し,33℃群では54%であった(RR 1.02; 95%CI 0.88-1.16; p=0.78).modified Rankin scaleを用いた解析では,両群とも52%であった(RR 1.01; 95%CI 0.89-1.14; p=0.87).既知の予後規定因子で調整した解析結果でも同等であった.

【結 論】
心原性院外心停止で意識のない生存者においては,33℃を目標とした低体温は,36℃を目標とした場合と比較して有益性は認められなかった.
■本研究はこれまでの報告より規模・質ともに高く,これまでのエビデンスをくつがえす結果であり,低体温療法の推奨度が下げられることは避けられないと思われる.低体温療法が有益性を示せなかった理由としては,集中治療管理の進歩により死亡率が改善し潜在的有益性が減少してしまったこと,集団選択性が低いこと(このためサンプルサイズを大きくしえたともいえる)などが考えられ,安直に低体温療法を完全否定すべきではなく,低体温療法の恩恵を受けうる集団を特定し,評価する研究が必要である.また,心停止蘇生後患者の体温管理に関する研究は,管理法がバラバラであり,本研究で目標とした33℃と維持期間,復音等のプロトコルがベストな低体温療法であったのかも明らかではない.この研究で重要なのは常温療法の有益性なのかもしれない.

■救急医学2013年9月号は体温特集であり,心停止後症候群の体温管理の項で「低体温療法を考慮することは今や当たり前のオプション」「本治療のプロトコルを成し遂げることが患者の機能的予後の改善につながることを忘れてはならない」と強く低体温療法を推奨する書き方であったのが記憶に新しい.しかし,臨床的根拠は2002年のNEJMに報告された小~中規模のRCT2報のみであり,やはりサンプルサイズや過去の報告の問題点を加味した研究で再検討された場合,エビデンスはくつがえることがあるといういい一例であろう.また,いかに優れたエビデンスであっても,年数がたてば他の治療の進歩,社会的背景の変化などでエビデンスの妥当性も揺らぎうるため,ある一定年数がたてば再度検証するという姿勢は必要なのかもしれない.質の高いシステマティックレビューによるエビデンスでも賞味期限1年以内が15%,2年以内が23%,賞味期限の平均期間はわずか5.5年(95%CI 4.6-7.6)しかなく,心血管領域のエビデンスの賞味期限はもっと短い[1]質の高いエビデンスといえどもその妥当性はTPO(Time Place Occasion)の影響を免れない(私の持論です).

■また,本研究では,延命治療を中止のプロトコルを採用していることが特徴である.ほとんどの先行研究では神経学的予後不良のため生命維持を中止することが最も多い死因であり,長期的予測を行う上で確実な方法がないという問題点をかかえていた.本研究では治療の中止された患者へのアプローチが詳細に記載されている.

■近年,重症患者における解熱薬を含めた体温管理に関する研究がさかんであるが,低体温に関する研究は依然として少ない.病的低体温と治療的低体温を同列に扱うことはできないが,低体温が予後不良に関連しうる報告があることも事実である.実際には重症患者では正常体温~高熱が一般的であり,低体温の患者は多くないため,発熱時に比して低体温が生体に与える有益性・有害性等の影響の知見はまだまだ少ないといえ,今後さらなる解明が必要である.

1.これまでの低体温療法のエビデンス
■まず,用語について整理する.低体温で管理を行う治療法は以前まで低体温療法(therapeutic hypothermia)とされ,また,これに対して35-37℃の常温にコントロールする治療法は常温療法(induced normothermia)とされていた.常温療法は発熱を回避するという意味でanti-hyperthermia,fever controlとも表現されていた.2009年にATS,SCCM,ERS,ESICM,SELFの5学会によるコンセンサスカンファレンスが開催され,低体温療法(therapeitic hypothermia)という言葉を使用せず,目標体温管理(targeted temperature management:TTM)に統一し,導入induction,維持maintenance,復温reversionについてのプロファイル記載が推奨された[2].これは,目標体温設定,冷却方法,維持期間,復温速度などがこれまでの研究ではバラバラで評価が困難であったことへの対策である.

■心停止蘇生後患者に対する低体温での脳保護効果の知見は1958年のWilliamsらの報告までさかのぼる.この報告で低体温療法(therapeutic thpothermia)に関心がもたれるも,技術的問題により普及することはなかった.しかし,1990年代に入って技術向上により低体温療法が再び注目され,2002年に報告された2つのRCT[3,4]が低体温療法の有効性を示したことから,心肺停止後の脳障害に対して低体温療法がガイドラインで推奨されるに至った[2,5]

■Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group[3]は,心室細動による院外心停止患者273例に対する低体温療法を検討した欧州9施設共同RCTを行った.低体温群は膀胱温32-34℃を24時間維持するプロトコルと用いており,6ヶ月後の神経学的予後が良好であったのは低体温群55% vs 常温群39%(p=0.009; RR 1.40; 95%CI 1.08-1.81),死亡率は低体温群41% vs 常温群55%(RR 0.74; 95%CI 0.58-0.95)であり,低体温療法が有意に予後を改善していた.

■Bernardら[4]は,心室細動による院外心停止患者77例に対する低体温療法を検討した豪州4施設共同RCTを行った.低体温群は自己心拍再開から2時間以内に深部温度を33℃に冷却し,12時間維持するプロトコルを用いており,退院時の神経学的予後が良好であったのは低体温群49% vs 常温群26%(p=0.046),調整後オッズ比は5.25(95%CI 1.47-18.76; p=0.011)であり,低体温療法が有意に神経学的予後を改善していた.

■一方,初期調律が心室細動でない心停止患者では低体温療法が有用であるとする明確なエビデンスはなく,PEAや心静止においては2つの小規模RCT[6,7]では有用性は示されず,Dumasら[8]の1145例多施設共同後ろ向きコホート研究においても初期調律がVF/VTであれば低体温療法が神経学的予後良好と関連したが,PEA/心静止では関連しなかった.本邦14施設452例の低体温療法の解析(J-PULSE-HYPO)[9]でも初期調律がPEA/心静止の症例では予後は不良であった(ただし,発症から16分以内に蘇生できた症例では初期調律がVF/VTであった患者群と有意差はない).除細動非適応の心停止患者387例の単施設前向き観察研究[10]では,低体温療法の神経学的予後や生存率への有効性は認められなかった.これらの結果から,PEA/心静止患者では心原性心停止の割合が少なく,脳虚血時間が長く,心停止の原因が多様であるために低体温療法が奏功せず,むしろ有害となる可能性もあることが分かる.

2.低体温療法の目的と有害事象
■心停止後症候群(PCAS)では83%に(脳障害で神経学的予後悪化と関連しているとされる)72時間以内の38℃以上の発熱が認められると報告されており[11],PCASにおいて脳障害の増悪と発熱が関連しているとの報告もある[12].脳障害は発熱を誘発し[13],発熱は脳障害を増悪させる[14,15]とする悪循環に陥ってしまうため,体温管理が必要であるという考えが現在では主流となっている.

■体温を常温にコントロールするのか,より低い体温にコントロールするのかについてこの10年で議論がなされてきた.低体温では脳血流と代謝が低下し,PCASでの脳の障害が軽減するとされている.すなわち,侵襲直後の脳障害ではなく,侵襲後に緩徐に心呼応していく脳障害を防止するのが低体温療法である.この脳障害は,神経細胞の代謝によるATP枯渇から細胞外毒素であるグルタミン酸が放出,フリーラジカルやアポトーシスによって生じてくる.低体温療法はこれらを抑制する[16-18]

■低体温療法による合併症には,感染症,血小板減少,血液凝固異常,高血糖,過冷却,脱水,不整脈や血圧低下,低カリウム血症,シバリング,低二酸化炭素などがある.特に感染症リスク増加は報告が多く,注意が必要である.低体温療法について検討した23報RCT,2820例のメタ解析[19]では,低体温療法は全感染症リスクを増加させない(RR 1.21; 95%CI 0.95-1.54)が,肺炎リスクは1.44倍(95%CI 1.10-1.90),敗血症リスクは1.80倍(95%CI 1.04-3.10)に有意に増加したと報告されている.

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by DrMagicianEARL | 2013-11-21 21:46 | 文献 | Comments(0)
■みなさんの施設では輸血製剤投与の適正使用ガイドラインを作成しているでしょうか?輸血開始基準としてのヘモグロビン濃度は7.0未満がよいとするエビデンスが多数出始めて久しいですが,今回,RCT pilot studyでの報告がでましたので,文献紹介とレビューを行いました.
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高齢の人工呼吸器を装着した重篤患者における制限vs非制限輸血戦略:無作為化予備試験
Walsh TS, Boyd JA, Watson D, et al. Restrictive Versus Liberal Transfusion Strategies for Older Mechanically Ventilated Critically Ill Patients: A Randomized Pilot Trial. Crit Care Med 2013; 41: 2354-63

Abstract
【目 的】
ICUで4日以上人工呼吸器を装着している55歳以上でHb<9.0 g/dLの貧血を有する重篤患者赤血球輸血制限戦略と非制限戦略でのモグロビン濃度,赤血球輸血の使用,患者の予後を比較する.

【デザイン】
並行群間無作為化多施設共同予備試験

【研究の場】
2009年8月から2010年12月までの英国の6つのICU

【患 者】
100例(制限群51例,非制限群49例)

【介 入】
患者は,14日間もしくはICU在室期間のいずれか長期の方で,輸血制限戦略群(Hb<7.0 g/dLで輸血開始し,7.1-9.0 g/dLを目標)と非制限戦略群(Hb<9.0 g/dLで輸血開始し,9.1-11.0 g/dLを目標)に無作為に割り付けた.

【結 果】
ベースラインの並存疾患率と重症度は高く,特に虚血性心疾患が多かった(32%).Hb濃度は両群間で1.38g/dL(95%CI 1.15-1.60g/dL)異なっており(p<0.0001),介入中の平均Hb濃度は8.19g.dL(標準偏差5.1)vs 9.57 g/dL(標準偏差6.3)であった.登録後に輸血を受けた患者は制限群の方が21.6%少なく(p<0.001),中央値で赤血球輸血1単位(95%CI 1-2, p=0.002)少なかった.プロトコル遵守率は高かった.ICUや院内での観察中の臓器障害,人工呼吸器装着期間,感染症,心血管合併症等に差はなかった.無作為化後180日死亡率は非制限群(55%)の方が,制限群(37%)よりも高い傾向が見られた(RR 0.68, 95%CI 0.44-1.05, p=0.073).この傾向は,ベースラインの年齢,性別,虚血性心疾患,APACHEⅡスコア,SOFAスコア(神経項目除く)で調整した生存モデルにおいても維持されていた(HR 0.54, 95%CI 0.28-1.03, p=0. 0.54, 95%CI 0.28-1.03, p=0.061).

【結 論】
高齢の人工呼吸器装着患者における輸血戦略の大規模試験が行われることが望ましい.この予備試験は統計学的に有意ではないが輸血制限の死亡率が低い傾向を示した.
1.赤血球輸血基準としてHb<7.0 g/dLが推奨されるまでの経緯
■内科,周術期などのさまざまな重症疾患において,ヘモグロビンの輸血開始基準が低い方が予後がよく合併症が少ないとする報告が近年多数でてきている.「急性貧血ではHb<7.0 g/dLで輸血を開始し,7.0-9.0 g/dLを保つ」という内容は医師国家試験でも出題されており,year noteにも掲載されているにもかかわらず,医療現場では依然としてHb>7 g/dLでも赤血球輸血を施行する医師は多く,Hbが10を切った時点で輸血を行う医師も多数いる.確かに,多発外傷での出血患者におけるHb濃度は必ずしもリアルタイムの出血度を反映するとは限らないことに注意は必要であり,この場合は総合判断で輸血を行わなければならない.しかしながら,内科や周術期ではルーティンでHbが比較的高い段階から輸血を開始するのは避けるべきであろう.今回の予備試験のデータから,より大規模のRCTを組めば統計学的有意差がつくであろうことは容易に想像できる.

■ICUで治療される重症患者は,輸液による血液希釈,出血,赤血球寿命や産生能低下,溶血,エリスロポエチン産生低下・作用阻害[1],活性化マクロファージによる赤血球貪食,TNF-αによる赤芽球アポトーシス[2],鉄代謝異常,栄養障害などの理由,頻回採血[3-7]により貧血となる頻度が高く,輸血が必要となりやすい[8].Fickの原理から,全身の酸素消費量(VO2)は一回心拍出量(CO),ヘモグロビン濃度(Hb),動脈血酸素飽和度(SaO2),静脈血酸素飽和度(SvO2)で規定され,その関係は以下の式で表される.
 VO2 = CO × 1.34 × Hb × (SaO2-SvO2)
よって,酸素需給バランスの破綻に伴う臓器障害を防ぐならば赤血球輸血を行ってHb濃度を高めて酸素供給量を増加させるとする考えは理論的には正しい.しかし,実際には輸血を行っても酸素消費量は増大しないことが敗血症患者における複数の研究[9-11]で示されており,酸素供給を上げる目的での輸血には意味がないことが分かっている.

■1990年代までICU患者においては赤血球輸血の開始基準はHb<10 g/dLまたはHt<30%とされてきた.実際に,心筋梗塞患者を中心として,貧血の重症度と死亡率に相関関係があることは多数報告されている.Wuらは,65歳以上の心筋梗塞患者78794例の後ろ向き研究で,入院時のヘマトクリット値(Ht)が低いほど30日死亡率が高く,入院時のHt<30%では輸血施行群で30日死亡率が低下したと報告している[12].ところが,その後のRaoらの24112例の研究では,輸血患者群で死亡率が高く,最低Ht値が25%以上では輸血患者群で30日死亡率が高いと報告された[13].他にも,輸血を行っても必ずしも予後が改善しないとの報告がでていた[14,15]

■Hébertらは輸血制限群(開始基準Hb<7 g/dL,7-9 g/dLを目標)と非制限群(開始基準Hb<10 g/dL,10-12 g/dLを目標)を比較した多施設共同838例RCT(TRICC study[16]を行い,院内死亡率が制限群で有意に低い(22.2% vs 28.1%, p<0.05)しており,55歳以下の患者とAPACHEⅡスコア20点以下の患者では30日後の死亡率も有意に低いという結果であった(p=0.02).この1999年に発表された研究を皮切りに,輸血開始基準のHb濃度をより低くすることで予後が改善するのではないかという推測のもと,様々な研究が開始され,内科,外科,術後等で同様の結果が多数報告され,輸血開始基準となるHb濃度はぐっと下げられることになる.

■これまでの知見から,現在の推奨としては,急性経過での貧血では赤血球輸血開始基準はHb<7.0 g/dLとすべきで,Hb>7.0 g/dLでの投与は控えるべきであり,また,赤血球輸血でHb>9.0まで回復過剰な補正は避けるべきである.各病院には輸血管理委員会が存在するが,このようなHb値に基づいた開始基準を設定して輸血適正使用を行っている病院はまだ少ない.今後はこれらの適正使用の基準も推奨していく必要があるだろう.Gutscheらは,心臓手術における輸血ガイドラインの作成,教育,コンプライアンスの監査/フィードバックを利用した臨床ガイドラインの実施により,不必要な輸血が14.7%から8.1%まで有意に減少したと報告している(p=0.016)[17].また,米国17施設において冠動脈バイパス手術を行った14259例について,赤血球輸血を減らすガイドライン導入前後で比較を行い,術中,術後の輸血が減少し,肺炎,長期の人工呼吸,腎傷害,医療コストが有意に減少し,死亡リスクも43%減少したと報告している[18]

2.赤血球輸血の有害事象とその機序
■輸血製剤の副作用を聞くと,アレルギー反応,TRALI(輸血関連急性肺傷害),TACO(輸血関連循環過剰負荷),製剤汚染による感染症を想定する医師は多いが,重症患者においてはその他の機序による予後悪化や合併症も非常に多いことは知っておかなければならない.

■動脈血酸素分圧が低い組織においては赤血球に蓄えられたNOが放出されることで血管拡張を起こす.ところが,保存赤血球ではNOが枯渇しているため,輸血の結果,体内のNOが希釈されてしまい,血管攣縮を引き起こす.くも膜下出血では術後輸血が脳動脈攣縮を引き起こすことが知られており[19],このNO希釈が原因の1つと考えられている[20,21].くも膜下出血以外でもこの機序が臓器血管拡張障害による虚血を引き起こす可能性が想定される.

■赤血球内の2,3-DPG(diphosphoglycerate)が採血から48時間で減少し始め,酸素飽和曲線の左方移動により組織への酸素供給が障害されてしまう[22].また,貯蔵鉄中の炎症性サイトカインが炎症反応を惹起する[22]

■外傷,虚血による赤血球の損傷で遊離したヘムが細胞膜蛋白のSlo1 BK(large conductance calcium-dependent)チャネル機能を障害して血管壁の弛緩を阻害する[23]

■貯蔵赤血球は形態変化を引き起こし,微小循環を通過しにくくなり,多臓器障害の原因となりうる[24]

■貯蔵された赤血球はFe2+を含有するため,酸化ストレスによる細胞障害を引き起こす[25]

■貯蔵赤血球は血管内皮に粘着し,血流や酸素供給に影響を及ぼす[26].輸血によって受血患者の免疫能がdown-regulationをきたすTRIM(transfusion-related immunomodulation)が起こり,これが周術期や重症患者における感染症を増加させる可能性がある[27](機序は不明[28]).

■人工呼吸器患者124例のコホート研究二次解析では,人工呼吸器患者での赤血球輸血は,疾患重症度と臓器機能不全で調整後,筋力低下と有意に関連していたと報告されており(ICUAWとは関連性はなかった)[29],輸血がPICS(Post-Intensive Care Syndrome)の原因となりうることも示唆されている.

3.近年の赤血球輸血開始基準と予後に関する報告
■赤血球輸血開始基準としてのHb濃度高値群と低値群を比較したRCT19報6264例のコクランレビューによるメタ解析[30]では,低値群の方が輸血必要度が39%減少し,院内死亡リスクも有意に減少するが(RR 0.77, 95% CI 0.62-0.95),30日死亡リスクは有意差がなかった(RR 0.85, 95% CI 0.70 to 1.03).

■Chatterjeeらは,心筋梗塞に対する赤血球輸血の影響を検討した観察研究10報のメタ解析[31]を行い,赤血球輸血により全死亡リスクは2.91倍,その後の心筋梗塞再発リスクは2.04倍と報告している.

■Villanuevaらは,重症急性上部消化管出血患者921例において,赤血球輸血開始基準をHb<7.0 g/dLとする制限群とHb<9.0 g/dLとする非制限群で比較したRCTを行っている[32].輸血非投与率は51% vs 15%(p<0.001)で,制限群が有意に輸血を受けた患者が少なく,6週後生存率は制限群が有意に高かった(95% vs 91%, HR 0.55, 95%CI 0.33-0.92, p=0.02).再出血率は制限群で有意に少なく(40% vs 48%, p=0.02),サブ解析でも,肝硬変Child-Pugh class A,Bでは制限群で生存率が有意に高く(HR 0.30, 95%CI 0.11-0.85),消化性潰瘍出血でも統計学的に有意ではないが,生存率は高い傾向がみられた(HR 0.70, 95%CI 0.26-1.25).

■Leal-Novalらは428例の後ろ向きペアマッチングコホート研究[33]を行い,非出血性の中等度貧血(Hb 7.0-9.5 g/dL)がある重症患者で赤血球輸血群は非輸血群より院内死亡率(21% vs 13%),ICU再入室率(7.4% vs 1.9%),院内感染症(12.9% vs 6.7%)が有意に高く,中等度貧血に対する赤血球輸血は予後を改善しないと報告している.

■Liuらは,肝細胞癌の周術期の輸血が予後に与える影響を検討した22報5635例のメタ解析[34]を行い,輸血により3年死亡リスクは1.92倍,5年死亡リスクは1.60倍であり,癌再発リスク,術後合併症リスクも有意に増加すると報告している.

■Blumらは,一般外科手術患者50367例のコホート研究[35]を行い,術中の赤血球輸血が術後ARDS発症リスクを5.36倍有意に増加させたと報告している.

■Horvathらは,心臓外科手術患者5158例での術後の輸血と60日以内の感染症の発生との関連の調査を行い[36],赤血球輸血は1単位あたり感染の発生リスクが29%増加し,多変量解析でも,赤血球輸血が感染の増加と関連していたと報告している.Turanらの非心臓手術5143例の後ろ向きコホート研究[37]でも,大量輸血が呼吸器系や感染性合併症および死亡の相当なリスクと関連していることが報告されている.

■Kumarらは,クモ膜下出血205例の後ろ向き解析[38]を行い,赤血球輸血は血栓リスクを2.4倍,深部静脈血栓症リスクを5.0倍有意に増加させており,血栓形成リスクは輸血1単位につき55%増加したと報告している.

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by DrMagicianEARL | 2013-10-09 18:56 | 文献 | Comments(0)
■COPD治療薬の1つ,長時間作用型抗コリン薬スピリーバ®レスピマット製剤で死亡リスク増加の報告が3年連続ででていた[1-3]中,大規模安全性試験TIOSPIR trialの結果がNew England Journal of Medicineに報告された.現時点ではabstractしか閲覧できないため,詳細については後日,本記事改訂で検証するが,ClinicalTrials.govを見る限り,ハイリスク集団を除外した研究デザインであり,安全性の担保とはならないため,私はまだ処方しない方針は変えない予定である.なお,本試験結果は欧州呼吸器学会(ERS)でも報告される模様である.
COPDにおけるチオトロピウム(スピリーバ®)レスピマット吸入と死亡リスク,TIOSPIR trial
Robert WA, Antonio A, Daniel C, et al; the TIOSPIR Investigatros. Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD. N Engl J Med 2013 Aug.31
Epub ahead of print

Abstract
【背 景】
 COPD患者のプラセボ対照比較試験において,チオトロピウムレスピマット吸入での5μg用量は,チオトロピウムハンディヘラー18μgと効果は同等であった.プラセボに比して,ハンディヘラーは死亡率減少に関連していたが,レスピマットでは死亡率増加が報告されていた.

【方 法】
 COPD患者17135例(40歳以上)を登録したこの1191施設共同無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間試験において,我々はチオトロピウムレスピマット2.5μg/日,5μg/日の安全性および有効性をチオトロピウムハンディヘラー18μg/日と比較した.一次評価項目は死亡リスク(非劣勢試験,レスピマット2.5μgまたは5μg用量 vs ハンディヘラー)と初回のCOPD急性増悪リスク(優越性試験,レスピマット5μg vs ハンディヘラー)とした.また,心疾患が安定している患者の安全性を含む心血管安全性も評価した.

【結 果】
 平均観察期間2.3年で,レスピマットはハンディへラーに比して死亡リスクは非劣性でり(レスピマット5μg vs ハンディヘラー:HR 0.96, 95%CI 0.84-1.09;レスピマット2.5μg vs ハンディヘラー:HR 1.00, 95%CI 0.87-1.14),初回増悪リスクは非優越性であった(レスピマット5μg vs ハンディヘラー:HR 0.98, 95%CI 0.93-1.03).死亡原因や主要な心血管有害事象発生は3群間で同等であった.

【結 論】
 COPD患者において,チオトロピウムレスピマット5μgと2.5μgは,ハンディヘラーと比較して安全性,有効性で同等であった(Boeringer Ingelheim社より基金を受けた;TIOSPIR ClinicalTrials.gov number, NCT01126437).
■2011年6月,British Medical Journalに,スピリーバ・レスピマットにより死亡率が52%増加したという衝撃の報告がなされた[1].5報のRCTのメタ解析で,レスピマット群vsプラセボ群の死亡率は90/3686 vs 47/2836であり,相対リスク1.52,95%信頼区間1.06-2.16 (p=0.02)という結果であった.それまでのUPLIFT試験や他のメタ解析を見ても,ハンディへラー製剤で死亡率が増加したという報告はなく,レスピマット製剤そのものによる死亡率増加と考えられた.この報告において,Singhらは,スピリーバ・レスピマットによってtiotropiumが予期せぬ血中濃度に達する可能性を指摘している.実際,スピリーバ・レスピマットで吸入されたtiotropiumの約3割が血中に移行するとされており,この血中移行性が死亡率に関与している可能性もある.ただし,このメタ解析は,患者が重複している問題点も指摘されている.

■Singhらの報告から送れること1ヶ月,Boeringer Ingelheim社とPfizer社はSinghらの報告に対する見解を発表.この2社の見解は以下の通り.
(1) Singhらの報告とは見解を異にしている.
(2) Singhらの報告の結論は新しい臨床的エビデンスに基づいたものではない.このメタ解析に使用された5つの臨床試験データはスピリーバ・レスピマットの添付文書にも反映されており,Boeringer Ingelheim社とPfizer社は臨床データを分析する際はSinghらと違い,詳細な患者データを使用して行っている.この解析結果では,スピリーバの致死的事象のリスクは数字上では不均衡だが有意差はなかった.
(3) 5つの臨床試験において見られた死亡率は,他の大規模なCOPDに関する試験と同様の範囲内であった.
この見解における(2)の2社による解析結果は明示されておらず,安全性への説明があいまいと言わざるを得ない.一方の日本呼吸器学会も何ら見解を示さなかった.

■さらに,2012年10月,今度はThorax誌から42のRCT,52516名のメタ解析でスピリーバ・レスピマットによる死亡率増加がDongらより報告された[2].この報告によると,スピリーバ・レスピマットは,死亡リスクがプラセボ群と比較して1.51倍(95%CI 1.06-2.19),スピリーバ・ハンディヘラー群と比較して1.65倍(95%CI 1.13-2.43),長時間作用型β2刺激薬群と比較して1.63倍(95%CI 1.10-2.44),長時間作用型β2刺激薬+吸入ステロイド群と比較して1.90倍(95%CI 1.28-2.86)有意に増加していた.

■そして2013年に入って,レスピマットとハンディヘラーの有害事象に関する初めてのhead-to-headの比較試験が報告された[3].本試験はオランダのコホートデータから40歳以上で少なくとも1年間情報を得られる患者を登録し,死亡リスクをCox比例ハザード回帰分析で算出した.共変量として喫煙歴,基礎疾患(気管支喘息,狭心症,虚血性心疾患,末梢動脈疾患,心筋梗塞,脳卒中あるいは一過性脳虚血発作,心不全,心室性不整脈,高血圧,脂質異常症,癌,肺炎,パーキンソン症候群,抑うつ,認知症,糖尿病,腎不全),併用薬剤を想定した.11287例が23422のチオトロピウム使用エピソードを有していた.496例がチオトロピウム使用中に死亡した.レスピマットはハンディヘラーと比較して死亡リスクは1.27倍(95%CI 1.03-1.57)有意に増加した.死因としては,心血管系・脳血管系の死亡リスクが最も高かった(HR 1.56, 95%CI 1.08-2.25).心血管系疾患を有する患者では死亡リスクは1.36倍(95%CI 1.07-1.73)有意に増加した.心血管系疾患を有さない患者では死亡リスクの増加は認められなかった(HR 1.02, 95%CI 0.61-1.71).

■これらの経緯があり,チオトロピウムレスピマット製剤の使用をストップさせた医師も多い.その中で今回のTIOSPIR trialをどうとらえるかが問題となる.
(1) 本試験は安全性を一次評価項目とした大規模二重盲検RCTであり,エビデンスレベルは高い.
(2) 製造・販売メーカーであるベーリンガー社とのCOIがある(というよりメーカー主導の試験である).
(3) 6ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある患者,不安定または致死的不整脈を有し,治療介入・変更が必要な患者,心不全(NYHA ⅢorⅣ)入院既往のある患者は除外されている
(4) レスピマットとハンディヘラーの安全性に有意差はないが,この試験の一次評価項目・二次評価項目では心血管リスクを有する患者での安全性は不明である.心血管リスクがこれまで危惧されてきたこと,Verhammeらの報告[3]で心血管リスク患者において特にリスクが高まることが示されていることから,TIOSPIR trialのデータでの心血管リスク患者に限定したサブ解析は行われるべきであろう.
■以上から,レスピマットは吸入力が弱い高齢者ではハンディヘラーより有利かもしれないが,心血管リスク患者ではやはり使用は回避すべきというsuggestionは変えるべきではないであろう.有効性はレスピマットもハンディヘラーも同等であり,COPDでは心疾患合併率もそれなりに高いことから,あえてレスピマットを選択するメリットは乏しいと思われる.

■なお,まだ結果未掲載であるが,二次評価項目は以下の通りである.
・120週でのFEV1
・COPD急性増悪による初回入院までの期間
・COPD急性増悪による入院回数
・最初の心血管有害事象までの期間
・COPD急性増悪回数
・中等症から重症のCOPD急性増悪までの期間
・主要な心血管有害事象による死亡までの期間

■長時間作用型抗コリン薬のtiotropium(商品名:スピリーバ®)はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)においてガイドラインでは第一選択薬に位置づけられている.

■抗コリン薬がCOPD患者にもたらす最も重要な作用は,ムスカリン受容体でのアセチルコリン阻害作用と考えられている.短時間作用型抗コリン薬はM2受容体とM3受容体を阻害し,節前神経終末における情報伝達を社団するが,この作用はCOPD患者では重要でないと考えられている[4].長時間作用型抗コリン薬は,薬物動態的にM1受容体とM3受容体に選択的に作用し[5],その作用持続時間は24時間以上である[6]

■tiotropiumはCOPD増悪および関連する入院を抑制させ,症状および健康状態を改善し[7],呼吸リハビリテーション効果を向上させる[8].COPD患者を対象とした大規模な長期臨床試験では,その他の標準的治療にtiotropiumを追加しても肺機能低下率に対して効果はなく,心血管系リスクに関するエビデンスも認められなかった[9].他の大規模試験では増悪の抑制に関して差は小さいもののtiotropiumの方がsalmeterolに比べて優れていたと報告されている[10]

■tiotropiumはBoeringer Ingelheim社でスピリーバ®として発売されており,Pfizer社が販売提携をしている.デバイスは当初ハンディへラーのみであったが,さらに効果を上げるべく,噴射ガスを使わずに細かい霧状に噴霧する新世代のソフトミスト吸入器であるレスピマットを開発し,販売開始となった.このレスピマットにより,より肺全体にtiotropiumが行き渡るようになり,さらなる治療効果が期待された.現在,米国を除く55カ国で使用されるに至る.

■抗コリン薬は吸収性が低く,アトロピンにみられるような全身性の副作用は少ない[11].主な副作用は口渇である.前立腺症状については報告例があるものの,因果関係を証明するデータは報告されていない.一方で,短時間作用型抗コリン薬ipratropiumを連用しているCOPD患者において,心血管疾患が若干増加するという予期されていなかった副作用が報告されている[12,13]

[1] Singh S, loke YK, et al. Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2011; 342: d3215
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[13] Anthonisen NR, Connett JE, et al. Hospitalizations and mortality in the Lung Health Study. Am J Respir Crit Care Med 2002; 166: 333-9
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by DrMagicianEARL | 2013-09-03 12:00 | 文献 | Comments(0)
■今回紹介する論文は救急蘇生と移植医療の分野から,Critical Care Medicine誌の報告です.今回は特にレビューはしません(というよりこれまでこのような報告は全くなく,PubMedでもRelated Citationsが表示されません).結論を読んでちょっと感動した論文です.心肺蘇生でたとえその患者が助からなくても,その心肺蘇生が実は他の誰かを助けているのかもしれない,心肺蘇生の決して報告されることのなかった一面で,移植の敷居が高い日本ではこのような報告はなかなか出せないでしょう.
心肺蘇生の認識されていない有益性:臓器移植
An Under-Recognized Benefit of Cardiopulmonary Resuscitation: Organ Transplantation.

Orioles A, Morrison WE, Rossano JW, Shore PM, Hasz RD, Martiner AC, Berg RA, Nadkarni VM.
Crit Care Med. 2013 Aug 14. [Epub ahead of print]
PMID:23949474

【目 的】
 多くの心停止患者において,心肺蘇生は長期生存に終わらない.これらの患者の一部においては,臓器提供がオプションとなる.心肺蘇生後の臓器移植は心肺蘇生のアウトカムとして報告されることなく,見向きもされていない.我々は米国で心停止の後に心肺蘇生を受けた臓器提供者から異色される臓器の数と割合を算出し,心肺蘇生を受けた提供者(心肺蘇生臓器)と受けなかった提供者(非心肺蘇生臓器)の臓器の生存を比較検討した.

【方 法】
 1999年7月から2011年6月までの米国臓器共有ネットワークから,全臓器の提供者および受容者の人口ベースのデータベースを全国規模で後ろ向きに解析した.

 1999年7月から2011年6月までの亡くなった提供者からの全臓器のデータベースを確認した.生存提供者からの臓器(76015例),心肺蘇生データが欠落した全臓器(59例),循環停止後の死亡患者からの臓器(12030例)は除外した.

 心肺蘇生を受けた提供者からの臓器(心肺蘇生臓器)および心肺蘇生を受けなかった臓器(非心肺蘇生臓器)に関する,提供者の過去のデータと臓器生存アウトカムを報告する.心肺蘇生臓器と非心肺蘇生臓器の移植片生存はKaplan-Meier推定・層別log-rank検定を用いて比較した.

【結 果】
 米国では,1999年から2011年の間に神経学的基準によって死亡と認定された提供者から提供された224076臓器のうち,少なくとも12351臓器(5.5%)が心肺蘇生を受けた提供者からのものであった.心肺蘇生臓器の移植片の生存は非心肺蘇生臓器と比較して有意な差は認められなかった.

【結 論】
 米国では,年間に少なくとも1000臓器(神経学的死亡患者から移植される全臓器の5%超)が心肺蘇生を受けた患者から提供されていた.臓器回復と移植成功は,心肺蘇生における,報告されることのない有益なアウトカムである.

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by DrMagicianEARL | 2013-08-24 00:00 | 文献 | Comments(0)
夏休みなので,救急集中治療・感染症・呼吸器から離れて,明日からの診療に役立たない(一部役立つかも?),小ネタで使える「へぇ~」と言いたくなる文献集.

朝食を抜くと冠動脈疾患リスク増加
Cahill LE, Chiuve SE, Mekary RA, et al. Prospective Study of Breakfast Eating and Incident Coronary Heart Disease in a Cohort of Male US Health Professionals. Circulation 2013; 128: 337-43
PMID:23877060
米国の45-82歳男性26902例を16年間追跡調査.冠動脈疾患リスクは,朝食を抜くと1.27倍,夜遅くに夕食をとると1.55倍有意に増加する.

β遮断薬プロプラノロールは人種差別を減少させる
Terbeck S, Kahane G, McTavish S, et al. Propranolol reduces implicit negative racial bias. Psychopharmacology (Berl). 2012; 222: 419-24
PMID:22371301
英国の白人36人をβ遮断薬プロプラノロール40mg投与群とプラセボ投与群に無作為割付した二重盲検RCT.服用から1-2時間後に人種に関する潜在連想テスト(IAT)を受け,コンピュータの画面で黒人と白人の写真を見せ,即座に好意的区分か,否定的区分かに分類させた.その結果,プロプラノロール服用群の1/3以上が非人種差別主義の方に偏っていた.一方でプラセボ群は誰1人としてそうした傾向が表れなかった.無意識にとっている人種差別的態度は薬で調節できるという可能性がある.

夜勤は乳癌のリスク
Grundy A, Richardson H, Burstyn I, et al. Increased risk of breast cancer associated with long-term shift work in Canada. Occup Environ Med 2013 Jul 1
PMID:23817841
夜勤と乳癌の関連性について検討したカナダ2313例解析.夜勤歴29年以下は乳癌とは関連がみられなかった.30年以上の夜勤シフトは乳癌リスクが2.21倍有意に増加する.この傾向は看護師等の医療従事者以外でも同様であった.

発癌リスクとなる10の習慣
Yang G, Wang Y, Zeng Y, et al. Rapid health transition in China, 1990-2010: findings from the Global Burden of Disease Study 2010. Lancet 2013; 381: 1987-2015
PMID:23746901
中国での調査.癌になりやすい10の習慣:①熱いお茶好み,②野菜や果物を摂らない,③大便我慢,④夜眠らない,⑤長時間座り動かない,⑥小さなことに首を突っ込んでいらぬ苦労する,⑦コンドーム非使用,⑧一旦吸い終わった煙草をまた吸う,⑨豪華すぎる室内装飾(建材に発癌性物質),⑩家族に癌患者

遠距離恋愛のエビデンス
Jiang LC, Hancock JT. Absence Makes the Communication Grow Fonder: Geographic Separation, Interpersonal Media, and Intimacy in Dating Relationships. J Communication 2013; 63: 556-77
カップル63組(約半数が遠距離恋愛)の解析.平均恋愛期間は2年未満,遠距離恋愛群は平均1年5カ月の間遠距離.長距離恋愛群は非長距離恋愛群よりも有意に,自分自身のことについて打ち明け,より親密な結びつきを感じていた.

顔の魅力と生理機能
Rantala MJ, Coetzee V, Moore FR, et al. Facial attractiveness is related to women's cortisol and body fat, but not with immune responsiveness. Biol Lett 2013; 9: 20130255
PMID:23697641
男性ではイケメンで免疫力が高いが,女性では顔面の魅力は免疫力と相関せず,生殖能力と寿命に関連していた.
PMID:23697641

日本人女性における煙草と皮膚
Tamai Y, Tsuji M, Wada K, et al. Association of cigarette smoking with skin colour in Japanese women. Tob Control 2013 Jan 26
PMID:23355625
日本人女性の喫煙者では,非喫煙者と比較して皮膚が約2倍黒ずむ.岐阜県の女性939例の観察研究.

抗菌薬ミノサイクリンによる浮気防止効果
Watabe M, Kato TA, Tsuboi S, et al. Minocycline, a microglial inhibitor, reduces 'honey trap' risk in human economic exchange. Sci Rep 2013; 3: 1685
PMID:23595250
ミノサイクリンには女性の魅力に関する男性のイメージを変える作用があり,投与されると男性の浮気心に変化が生じ,男性は魅力的な女性からセックスを求められても心が揺れることもなく勧めを断わる.ミクログリア阻害作用により男性のハニートラップにかかるリスクを減少させる.プラセボ対照RCT.
※浮気防止薬としてはオキシトシン鼻スプレーもあり,RCTで効果が示されている(J Neurosci 2012; 32: 16074-9).

男性の心理的ストレスが女性の体格の好みに与える影響
Swami V, Tovée MJ. The impact of psychological stress on men's judgements of female body size. PLoS One 2012; 7: e42593
PMID:22905153
ポイント:ストレスを受けている男性はふくよかな女性への好みが増し,有意に高体重女性に最大の魅力を感じる.

ダイエットソーダに含まれる人工甘味料製剤は逆効果
Swithers SE. Artificial Sweeteners Produce the Counter-Intuitive Effect of Inducing Metabolic Derangements. Am J Physiol Endocrinol Metab 2013, Epub ahead of print
過去5年間の人工甘味料に関する研究のシステマティックレビュー.ダイエットソーダに使用されている人工甘味料は体内や脳内の仕組みを混乱させる作用がある.ダイエットソーダばかりを摂取している人が本物の糖分を摂取すると血糖値や血圧を調整するホルモンが分泌されなくなる.さらに,人工甘味料は空腹感を感じさせ,甘いものが食べたくなる衝動も起こさせ,普通のソーダよりもダイエットソーダを飲んだ方が太りやすい傾向がみられた.ダイエットソーダでたとえ太らなかったとしても,糖尿病,心疾患,脳卒中リスクは増加する.

長期間無職と自殺:システマティックレビュー&メタ解析
Milner A, Page A, LaMontagne AD. Long-term unemployment and suicide: a systematic review and meta-analysis. PLoS One 2013; 8: e51333
PMID:23341881
長期間の無職は自殺リスクを1.70倍有意に増加させる.特に無職の期間5年以内が最も自殺リスクが高く,2.50倍であった.16報メタ解析.

精神疾患患者の殺人被害者リスク
Crump C, Sundquist K, Winkleby MA, et al. Mental disorders and vulnerability to homicidal death: Swedish nationwide cohort study. BMJ 2013; 346: f557
PMID:23462204
スウェーデン7253516例のコホート研究.精神疾患患者は精神疾患を持たない患者に比べて殺人被害者となるリスクが4.9倍有意に増加する.リスクは薬物使用で9倍,人格障害で3.2倍,うつ病で2.6倍,不安障害で2.2倍,統合失調症で1.8倍有意に増加した.

満月の夜は眠れない?月の満ち欠けがヒトの睡眠に与える影響のエビデンス
Cajochen C, Altanay-Ekici S, Munch M, et al. Evidence that the Lunar Cycle Influences Human Sleep. Curr Biol 2013 Jul 23
PMID:23891110
20-74歳の33例を対象とし,夜間の脳波,眼球運動,睡眠ホルモンのメラトニン分泌量を計測.満月頃の夜は新月頃の夜に比べ,睡眠に入るのに5分多く時間を要し,睡眠時間が20分少なく,深い睡眠が3割減少した.

日焼け止めクリームと皮膚年齢
Hughes MC, Williams GM, Baker P, et al. Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med 2013; 158: 781-90
PMID:23732711
豪州で55歳以下の白人903例を,日焼け止め(+15)を毎日塗るか,塗りたい時に塗るか,ベータカロチンを毎日飲むか、プラセボを飲むか,で施行した2x2RCT.日焼け止めを毎日塗ると4.5年後の皮膚の老化を24%抑制した.ベータカロチンは効果がみられなかった.
※あくまでもオゾン層破壊が著しいオーストラリアでの検討なので日本にあてはまるかは「?」

術前の音楽による効果
Bradt J, Dileo C, Shim M. Music interventions for preoperative anxiety. Cochrane Database Syst Rev 2013; 6: CD006908
PMID:23740695
術前患者の不安に対する音楽療法は有益な効果をもたらす.音楽療法は術前の鎮静薬や抗不安薬の代替となるかもしれない.26報RCT,2051例コクランメタ解析.

変形性膝関節症に対するヒアルロン酸関節内注射:システマティック・レビュー&メタ解析
Rutjes AW, Juni P, da Costa BR, et al. Viscosupplementation for osteoarthritis of the knee: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med 2012; 157: 180-91
PMID:22868835
変形性膝関節症に対するヒアルロン酸関節内注射の有効性を検討した89報12667例のメタ解析.ヒアルロン酸は関節内注射は有効性が乏しく,重大な有害事象リスクが1.41倍有意に増加した.
※この報告もあってか,2013年6月に行われた米国整形外科学会の変形性膝関節症ガイドライン改訂でヒアルロン酸関注は非推奨に切り替わった.なお,ヒアルロン酸関注の有効性を検討したRCTにおいてCOI(利益相反)と結論との関連性を指摘する報告もある(J Arthroplasty 2013 Jul 23, PMID:23890521).

グラスの形は飲酒速度に影響する
Attwood AS, Scott-Samuel NE, Stothart G, Munafò MR. Glass shape influences consumption rate for alcoholic beverages. PLoS ONE 2012; 7: e43007
PMID:22912776,Free Full Text
ポイント:フルグラスにおいて,カーブドグラス(海外のサワーグラスの大きい版)よりストレートグラス(コリンズグラス)でお酒を呑む方がアルコール摂取速度が60%遅い.非アルコール飲料やハーフサイズではこの傾向はなかった.この傾向は非アルコール飲料では見られなかった.アルコール呑みながらだとグラスの形を錯覚するとのこと.

嘘の記憶の創造
Ramirez S, Liu X, Lin PA, et al. Creating a false memory in the hippocampus. Science 2013: 341; 387-91
PMID:23888038
海馬に光を当てることで過誤記憶を人為的に作り出すことに成功.マウスモデル研究.
※ノーベル賞受賞者である利根川進先生の研究グループの報告.昨年もマウスの記憶に書き込み報告があったが違う手法の模様(Nat Neurosci 2012; 15: 1430-8).映画「トータルリコール」の世界が現実に?

記憶の転送
Pais-Vieira M, Lebedev M, Kunicki C, et al. A brain-to-brain interface for real-time sharing of sensorimotor information. Sci Rep 2013; 3: 1319
PMID:23448946
複数の頭脳をつなぎ合わせて「スーパー脳」を創造する試みとして,遠く離れた北米と南米の実験室にいるラットの脳を電極でつなぎ,片方のラットが覚えたことを別のラットに伝えることに成功.

男性の好みと女性の閉経
Morton RA, Stone JR, Singh RS. Mate choice and the origin of menopause. PLoS Comput Biol 2013; 9: e1003092
PMID:23785268
女性が閉経する原因は,男性がパートナーとして若い女性を好む傾向があり,それにより女性が遺伝子変異を起こすからとする仮説.コンピューターシミュレーションモデル研究.

癌組織と正常組織を見分ける外科用ナイフiKnife
Balog J, Sasi-Szabo L, Kinross J, et al. Intraoperative tissue identification using rapid evaporative ionization mass spectrometry. Sci Transl Med 2013; 5: 194ra93
PMID:23863833
組織切除に使用する電流によって発生する蒸気を分析し,その組織が正常組織か癌組織かを数秒で医師に報告する新しい機能を持つ外科用ナイフiKnifeの81例臨床試験で,判別率100%と高い精度を確認.

週末に手術すると死亡率増加
Aylin P, Alexandrescu R, Jen MH, et al. Day of week of procedure and 30 day mortality for elective surgery: retrospective analysis of hospital episode statistics. BMJ 2013; 346: f2424
PMID:23716356
英国4133346例の解析.月曜日と比較して,金曜日に手術された患者の死亡リスクは1.44倍有意に増加し,週末だと1.82倍有意に増加した.

経胃的虫垂切除術
Kaehler G, Schoenberg MB, Kienle P, et al. Transgastric appendicectomy. Br J Surg 2013; 100: 911-5
PMID:23575528
虫垂炎14例に対する経胃的虫垂切除(口から内視鏡→胃壁に針を刺して管を貫通させる→胃液が漏れないようにバルーンでブロック→腹腔内から虫垂切除)の経過は良好.

患者は麻酔科医についてどれだけ知っている?
Gottschalk A, Seelen S, Tivey S, et al. What do patients know about anesthesiologists? Results of a comparative survey in an U.S., Australian, and German university hospital. J Clin Anesth 2013; 25: 85-91
PMID:23333789
米独豪の3つの大学病院で待機的手術を受ける900例(各施設300例)を対象に,術前アンケートを施行した.麻酔科医が医師であることを知っていた患者はそれぞれ米国58%,独83%,豪71%.大多数(>75%)は麻酔科医になるために必要なトレーニング量を過小評価していた.患者は,麻酔科医が患者を眠らせ,覚醒させるという役割を認識していた.多くの患者は術中の医学的問題を治療する上での麻酔科医の役割を理解していなかった.患者は,感染,術中覚醒,目が覚めないことなどの多様な不安を抱えているが,これらの問題を治療する責任は誰にあるのかについてはよく知らなかった.ドイツの大学病院では,患者の71%は集中治療室での治療を麻酔科医の職務であると評価したが,米国(42%)と豪州(49%)ではドイツよりも有意に少なかった.手術室外での職務(蘇生,医学生教育や慢性疼痛の治療)への理解は全ての施設で非常に低かった(<50%).

優秀な麻酔科医は手術室でどう振舞うのか: 非技術的熟練についての質的研究
Larsson J, Holmstrom IK. How excellent anaesthetists perform in the operating theatre: a qualitative study on non-technical skills. Br J Anaesth 2013; 110: 115-21
PMID:23048067
熟練麻酔看護師から見て、優れた麻酔科医は手術室でどう行動するのか明らかにするための記述的・質的研究.熟練麻酔看護師の面接による解析.熟練した麻酔科医の特徴として以下のことが見いだされた.①課せられた業務に対する体系的,確実な,集中的アプローチ法.②導入前に行動計画について明瞭に,有益な要約を行なうこと.③自身の誤りやすさを認めつつ,麻酔の複雑さに謙虚である.】④患者中心で,導入前に患者と個人的接触をする.⑤全体を見落とすことなく診療行為によどみがない.⑥危機的状況においても沈着冷静であり,強い主導姿勢にも変わりがない

米国医師の年収の性別による差の調査
Jagsi R, Griffith KA, Stewart A, et al. Gender differences in the salaries of physician researchers. JAMA 2012; 307: 2410-7
PMID:22692173
米国の医師800名の年収調査で,男性医師200433$vs女性医師167669$で有意に男性医師の方が年収が高かった.男性医師は最終的スペシャリティーアカデミックランク,指導的地位,出版,研究機関補正後も高年収と相関していた(+13399$).

禁煙成功後に体重は増加する:メタ解析
Aubin HJ, Farley A, Lycett D, et al. Weight gain in smokers after quitting cigarettes: meta-analysis. BMJ 2012; 345: e4439
PMID:22782848
ポイント:62報のメタ解析.禁煙成功の後12ヶ月時にはおよそ4-5㎏の体重増加が起こる.また多くの場合,禁煙開始3ヶ月以内から体重増加はみられている.

クロピドグレルの効果と喫煙
Gurbel PA, Nolin TD, Tantry US. Clopidogrel efficacy and cigarette smoking status. JAMA 2012; 307: 2495-6
PMID:22797448
ポイント:プラビックスは非喫煙者では効果が得られにくい可能性.
※同様の報告が他にもある(J Am Coll Cardiol 2008; 52: 531-3).

長期間の中等量アルコール摂取は関節リウマチリスクを減少させる
Di Giuseppe D, Alfredsson L, Bottai M, et al. Long term alcohol intake and risk of rheumatoid arthritis in women: a population based cohort study. BMJ 2012; 345: e4230
PMID:22782847
ポイント:226032例のコホート研究.女性において,アルコール中等量(4杯以上)摂取は少量(1杯以下)摂取と比較して関節リウマチリスクを37%減少させる.アルコールの種類(ビール,ワイン,リキュール)は有意差なし.

米国外科医のアルコール乱用・依存
Oreskovich MR, Kaups KL, Balch CM, et al. Prevalence of alcohol use disorders among American surgeons. Arch Surg 2012; 147: 168-74
PMID:22351913
ポイント:米国外科医7197名の解析.15.4%(男性13.9%,女性25.6%)がアルコール乱用・依存であり,医療ミスのリスクは1.45倍で有意に関連していた.燃え尽き(OR 1.25),抑うつ(OR 1.48)がアルコール乱用・依存の外科医に特に見られた.

30-59歳の日本人男性の職業別死亡率
Wada K, Kondo N, Gilmour S, et al. Trends in cause specific mortality across occupations in Japanese men of working age during period of economic stagnation, 1980-2005: retrospective cohort study. BMJ 2012; 344: e1191
PMID:22396155
ポイント:30-59歳の日本人男性の職業別死亡率の傾向を1980年から2005年にかけてコホート研究で調査.全死因および4大死因による年齢標準化死亡率は減少したが,管理職と専門職では90年代後半から増加した.死亡率は生産,事務,販売従事者で最も低かった.90年代後半からは自殺が急増していた.

LSD単独投与はアルコール乱用を減少させる:メタ解析
Krebs TS, Johansen PO. Lysergic acid diethylamide (LSD) for alcoholism: meta-analysis of randomized controlled trials. J Psychopharmacol 2012; 26: 994-1002
PMID:22406913
ポイント:6報のRCT,536例の解析で,アルコール乱用者に対するLysergic acid diethylamide(LSD)単剤投与はアルコール乱用を減少させる(OR 1.96).

メンソール煙草と心血管・肺疾患
Vozoris NT. Mentholated cigarettes and cardiovascular and pulmonary diseases: a population-based study. Arch Intern Med 2012; 172: 590-1
ポイント:メンソール系煙草は非メンソール系煙草に比べ2.25倍脳卒中リスクが高い.女性においては3.28倍とさらに高い.

米国医師の自殺
Gold KJ, Sen A, Schwenk TL. Details on suicide among US physicians: data from the National Violent Death Reporting System. Gen Hosp Psychiatry 2013; 35: 45-9
PMID:23123101
ポイント:米国自殺者31636名の解析で,医師は非医師に比べて自殺リスクは3倍,向精神薬,ベンゾジアゼピン,バルビタール酸服用が有意に多く,アルコール・薬物乱用は有意に少なかった.

チョコレート消費量が多い国はノーベル賞受賞者が多い
Messerli FH. Chocolate consumption, cognitive function, and Nobel laureates. N Engl J Med 2012; 367: 1562-4
PMID:23050509
23カ国のチョコレート摂取量とノーベル賞受賞者数の人口比の研究で,チョコレートの消費量が多い国はノーベル賞受賞者を輩出する確率が高い.

オリンピックメダリストは一般市民より長寿
Clarke PM, Walter SJ, Hayen A, et al. Survival of the fittest: retrospective cohort study of the longevity of Olympic medallists in the modern era. BMJ 2012; 345: e8308
PMID:23241272
後ろ向きコホート試験.15174人のオリンピックアスリートで1896年のアテネから2010年のバンクーバーまで(27の夏季,21の冬季)にメダルを獲得した人を解析.メダリストは国,年齢,性別,出生年度によって調整された一般市民とマッチングを行った.メダリストはメダル獲得後30年の生存が一般市民に比べて有意に1.08倍長かった.メダリストは一般市民と比べて平均2.8年長生きしていた.

女性の脳MRIによる統合失調症とうつ病の鑑別
Ota M, Ishikawa M, Sato N, et al. Discrimination between schizophrenia and major depressive disorder by magnetic resonance imaging of the female brain. J Psychiatr Res 2013 Jul 3
PMID:23830450
女性統合失調症患者25例と女性うつ病患者25例の脳の形態の違いをMRIを用いて測定.感度約80%の精度で2つの疾患を鑑別できた.

胃酸抑制薬と胃癌:メタ解析
Ahn JS, Eom CS, Jeon CY, et al. Acid suppressive drugs and gastric cancer: a meta-analysis of observational studies. World J Gastroenterol 2013; 19: 2560-8
PMID:23674860
胃酸抑制薬と胃癌の関連を検討した観察研究11報94558例のメタ解析.胃酸抑制薬は胃癌リスクを1.42倍有意に増加させる.薬剤別では,H2RAで1.40倍,PPIで1.39倍であった.
※ピロリ菌については考慮されておらず,胃癌リスクがもともとある患者が胃炎・胃潰瘍症状で胃酸抑制薬を内服することが多いからこのような結果になっている可能性もある.とはいえ,PPIで胃癌が発生する機序について触れている論文もある(Curr Gastroenterol Rep 2008; 10: 543-7).

アトピー性皮膚炎患者において汗に含まれる真菌蛋白MGL 1304はアレルゲンである
Hiragun T, Ishii K, Hiragun M, et al. Fungal protein MGL_1304 in sweat is an allergen for atopic dermatitis patients. J Allergy Clin Immunol 2013 May 28
PMID:23726042
アトピー性皮膚炎患者のかゆみなどのアレルギー反応は,真菌Malassezia globosa由来のタンパク質MGL1304が汗に溶け皮膚に浸潤して皮膚細胞と反応することが原因と判明した.

耳鳴りの脳の関係
Ueyama T, Donishi T, Ukai S, et al. Brain regions responsible for tinnitus distress and loudness: a resting-state FMRI study. PLoS One 2013; 8: e67778
PMID:23825684
重度の耳鳴患者24例の脳MRI解析.重症患者ほど脳の特定部位のネットワークに異常があり,耳鳴音は聴覚とは関係なく脳で作り出されていた.耳鳴の強さは尾状核や海馬が関連し,耳鳴の不快感は前頭葉の一部が関与していた.
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by DrMagicianEARL | 2013-08-14 00:01 | 文献 | Comments(0)
2012年救急集中治療関連文献
敗血症,ARDS,人工呼吸管理以外の救急集中治療関連の文献集.レビューというよりは単に私が読んだものだけです.

1.栄養
ベッドサイドでの超音波による胃内容物評価
Cubillos J, Tse C, et al. Bedside ultrasound assessment of gastric content: an observational study. Can J Anaesth 2012; 59: 416-23
PMID:22215523
ポイント:ベッドサイドの超音波検査で胃内容の性状(無,清透液,粘性液体,固形物)が分かり,誤嚥リスク評価に有用であり,特に摂食状況が不明,あるいは不明確な場合には有用である.

甲状腺機能とICU死亡率の関係:前向き観察研究
Wang F, Pan W, Wang H, et al. Relationship between thyroid function and ICU mortality: a prospective observation study. Crit Care. 2012; 16: R11
PMID:22257427,Free Full Text
ポイント:低栄養患者ではlow T3 syndromeが生じることは有名だが,これとICU死亡率の関連を480例で解析した観察研究.ICU患者で甲状腺ホルモン指標の中ではfT3は最も強力で独立したICU死亡率の予想因子であった.APACHEⅡ scoreにfT3を加えると有意にICU死亡予測能を改善した.

ARDS患者における初期の栄養投与量の比較:EDEN試験
National Heart, Lung, and Blood Institute Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS) Clinical Trials Network, Rice TW, Wheeler AP, Thompson BT, et al. Initial trophic vs full enteral feeding in patients with acute lung injury: the EDEN randomized trial. JAMA 2012; 307: 795-803
PMID:22307571
ポイント:ARDS患者1000名の治療開始後6日間の栄養管理で,400kcal/日と1300kcal/日で予後を比較したRCTで,1300kcal/日群で有意に嘔吐(2.2%vs1.7%,p=0.05),胃内残量上昇(4.9%vs2.2%,p<0.001),便秘(3.1%vs2.1%,p=0.003)が増加した.人工呼吸器離脱期間,感染症合併率,60日死亡率は有意差なし.

重症患者における早期経鼻十二指腸栄養と経鼻胃栄養を比較した多施設共同RCT
Davies AR, Morrison SS, Bailey MJ, et al; ENTERIC Study Investigators; ANZICS Clinical Trials Group. A multicenter, randomized controlled trial comparing early nasojejunal with nasogastric nutrition in critical illness. Crit Care Med 2012; 40: 2342-8
PMID:22809907
ポイント:人工呼吸器患者において胃管栄養で胃内残存量が多くなる場合,早期に十二指腸へ留置をおこなってもエネルギー効率に差はみられず,肺炎の頻度も減少せず,微小な消化管出血のリスクが増加する.こういった患者ではルーチンの経鼻十二指腸栄養は推奨されない.

胃内残量における腹部マッサージの効果:RCT
Uysal N, Eşer İ, Akpinar H. The effect of abdominal massage on gastric residual volume: a randomized controlled trial. Gastroenterol Nurs 2012; 35: 117-23
PMID:22472671
ポイント:経鼻胃管栄養を受ける患者80例を腹部マッサージ群40例,対照群40例に割り付けたRCTで,多量のGRV発生率は2.5% vs 30.0%,腹部膨満は2.5% vs 20%,嘔吐は0% vs 10%であった.腹部マッサージは有効なprokinetic療法の可能性.

2.蘇生
長距離走間の心停止
Kim JH, Malhotra R, Chiampas G, et al, Race Associated Cardiac Arrest Event Registry (RACER) Study Group. Cardiac arrest during long-distance running races. N Engl J Med 2012; 366: 130-40
PMID:22236223,Free Full Text
ポイント:長距離走間の心停止の検討によると,突然死の起こる確率は1/259000人,大学のアスリートでは1/43770人,競技アスリートは1/52630人.

院外心肺停止患者における病院到着前のエピネフリン使用
Hagihara A, Hasegawa M, Abe T, et al. Prehospital epinephrine use and survival among patients with out-of-hospital cardiac arrest. JAMA 2012; 307: 1161-8
PMID:22436956
ポイント:日本における院外心肺停止患者において末梢エピネフリン投与は有意に病院到着前の自己心拍再開と関連していたが,心肺停止後1ヶ月の機能アウトカムには負の相関がみられた.2005~2008年の院外心停止例417188例の解析

院内心停止後の蘇生時間と生存:観察研究
Goldberger ZD, Chan PS, Berg RA, et al; American Heart Association Get With The Guidelines—Resuscitation (formerly National Registry of Cardiopulmonary Resuscitation) Investigators. Duration of resuscitation efforts and survival after in-hospital cardiac arrest: an observational study. Lancet 2012; 380: 1473-81
PMID:22958912
ポイント:2000年から2008年までの院内心肺停止64339例に対する心肺蘇生の時間の観察研究.蘇生時間中央値12分(IQR 6-21),非生存例は20分(IQR 14-30)であった.蘇生時間が長いほど高リスク状況では生存率改善の可能性あり,20分以上は必要.

心肺蘇生における胸部外傷:前向きCT評価
Kim MJ, Park YS, Kim SW, et al. Chest injury following cardiopulmonary resuscitation: A prospective computed tomography evaluation. Resuscitation 2013; 84: 361-4
PMID:22819881
ポイント:韓国からの報告.CPR後(胸骨圧迫)の肋骨骨折発生に関連する要因は,女性患者であること(p=0.036),医師以外のスタッフが胸骨圧迫を行うこと(p=0.048)であった.CPR継続時間と胸骨圧迫を行う人の数は関連なし

3.その他
脳卒中後の早期リハビリテーションにおける転倒リスク(LEAPS trial)
Tilson JK, Wu SS, Cen SY, et al. Characterizing and identifying risk for falls in the LEAPS study: a randomized clinical trial of interventions to improve walking poststroke. Stroke 2012; 43: 446-52
PMID:22246687
ポイント:早期リハビリテーションは有用だが,歩行・起立に十分な機能を回復させないまま促進すると転倒リスクが増加する.多くの転倒は評価後3ヶ月以内の自宅で生じていた.

重度の低体温はICU関連感染症のリスクを増加させる
Laupland KB, Zahar JR, Adrie C, et al. Severe hypothermia increases the risk for intensive care unit-acquired infection. Clin Infect Dis 2012; 54: 1064-70
PMID:22291110
ポイント:フランスの,外科患者を除いたICU患者6237名の検討.重度の低体温(<32℃)はICUでの感染リスクの増加につながる.

重症患者の予後と性別の関連性
Mahmood K, Eldeirawi K, Wahidi MM. Association of gender with outcomes in critically ill patients. Crit Care 2012; 16: R92
PMID:22617003
ポイント:2004年から2008年までの米国の成人ICU患者261255名のコホート研究.重症患者の中で50歳未満の女性は男性と比較してICU死亡リスクが27%低い,50歳以上の女性は男性と比較して有意差はなかった.CABG後は女性は男性より死亡率が高いが,COPD増悪に関しては死亡率が低い.ACS,敗血症,外傷では死亡率に有意差なし.

夜間の譫妄と睡眠障害における耳栓の効果:ICU患者におけるRCT
Van Rompaey B, Elseviers MM, Van Drom W, et al. The effect of earplugs during the night on the onset of delirium and sleep perception: a randomized controlled trial in intensive care patients. Crit Care 2012; 16: R73
PMID:22559080
ポイント:ICUに入室した患者136名を耳栓群と対照群で比較したRCT.耳栓群は夜間譫妄・睡眠障害を53%有意に減少させた.

中心静脈血乳酸値と動脈血乳酸値は代替可能か?
Réminiac F, Saint-Etienne C, Runge I, et al. Are central venous lactate and arterial lactate interchangeable? A human retrospective study. Anesth Analg 2012; 115: 605-10
PMID:22745117
ポイント:動脈ラインとCVラインから採取した血液の乳酸値の比較を188名の患者の673ペアで試行した後ろ向き研究.動脈中乳酸値は中心静脈中乳酸値よりやや高い.中心静脈血乳酸値による動脈血中乳酸値>2mmol/Lまたは>4mmol/Lの予測におけるAUCはそれぞれ0.98,0.98であった.中心静脈血乳酸値2mmol/Lは動脈中乳酸値>2mmol/Lを感度92%,特異度90%で予測した.中心静脈血乳酸クリアランスによる動脈血乳酸クリアランスの<10%,>10%の予測におけるAUCはそれぞれ0.93,0.94であった.

パルスオキシメトリと高用量血管収縮薬:前額反射センサーと指先伝送センサーとの比較
Nesseler N, Frénel JV, Launey Y, et al. Pulse oximetry and high-dose vasopressors: a comparison between forehead reflectance and finger transmission sensors. Intensive Care Med 2012; 38: 1718-22
PMID:22868275
ポイント:32例前向き観察研究.高用量の血管収縮薬を必要としている重症患者では,SaO2を比較した場合,前額SpO2測定値は指先SpO2測定値よりも正確である.異常値(SaO2-SpO2>±3%)頻度は前額15% vs 指先32%,p<0.001.高用量血管収縮薬を必要とする重症患者では指先よりも前額SpO2の測定が好ましいかもしれない.
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by DrMagicianEARL | 2013-03-23 14:24 | 文献 | Comments(0)

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