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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:研究会・講演会・学会( 3 )

更新履歴
2017年1月16日「神奈川麻酔科医会第48回学術大会(2017年2月4日横浜)」更新
2017年1月16日「第21回エンドトキシン救命治療研究会(2017年2月10日~11日東京)」更新
2016年12月13日「第28回日本臨床微生物学会総会・学術集会(2017年1月20~22日長崎)」追加
2016年12月13日「第9回東北セプシスセミナー(2017年1月28日岩手)」追加
2016年12月13日「第53回日本腹部救急医学会総会(2017年3月2~3日横浜)」追加
2016年12月13日「第44回日本集中治療医学会学術集会(2017年3月9~11日)」追加


研究会,講演会,学会日程
※学会総会に加え,主に敗血症,救急集中治療,感染症の研究会,講演会を適宜掲載していきます(本記事を更新していきます).あくまでも私の知る範囲でのものだけです.これまで研究会については関西圏ばかりでしたが,2016年4月以降私が関西を離れますので,開催地制限ははずします.私自身は東北に移るためそちらの案内が増えるかもしれません.

※ここに掲載されていない研究会・講演会で掲載希望等あればコメント欄に記入するか,以下までメールで御連絡下さい.開催場所に制限はありませんが,内容は本ブログの内容の関係上,敗血症,感染症,救急/集中治療に関連するものに限ります.日時,演題名,会の主な対象や主旨等を記載して下さい.
⇒メールはこちらcum_earl@yahoo.co.jp
第28回日本臨床微生物学会総会・学術集会
日時:2017年1月20日(金)~ 22日(日)
会場:
 長崎ブリックホール(〒852-8104 長崎市茂里町2-38)
 長崎新聞文化ホール(〒852-8104 長崎市茂里町3-1)
 長崎県医師会館(〒852-8532 長崎市茂里町3-27)

テーマ:「感染症診断、次世代への挑戦~従来検査法と遺伝子・プロテオーム解析の融合~」
第9回東北セプシスセミナー
日時:2017年1月28日(土)15:50~18:00
会場:ホテルメトロポリタン盛岡本館 4階「岩手」
岩手県盛岡市盛岡駅前通1-4

15:40-15:50
情報提供:帝人ファーマ株式会社

15:50-16:00
開会の辞:中永 士師明先生(秋田大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学講座教授)

16:00-17:00
座長:川前 金幸先生(山形大学医学部麻酔科学講座教授)
特別講演Ⅰ:「敗血症治療におけるIVIG療法」
鈴木 泰先生(岩手医科大学救急・災害・総合医学講座救急医学分野講師)

17:00-18:00
座長:中永 士師明先生(秋田大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学講座教授)
特別講演Ⅱ:「敗血症性DICの病態と診断・治療」
丸藤 哲先生(北海道大学大学院医学研究科侵襲制御医学講座救急医学分野教授)

閉会の辞:川前 金幸先生(山形大学医学部麻酔科学講座教授)

主催:帝人ファーマ株式会社
神奈川麻酔科医会第48回学術大会
日時:2017年2月4日(土)
横浜シンポジア8階
横浜市中区山下町2番地 貿易センタービル

13:05~14:05
座長:津崎 晃一先生(医療法人社団こうかん会日本鋼管病院副院長)
教育講演1:「ICUから始まるPICSの予防・治療 ~日本版敗血症診療ガイドライン2016をふまえて~」
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)
 神奈川で開催されている麻酔科医会で講演させていただくことになりました.現在ICUにおいてトピックスとなっているPICSについて,ガイドラインもふまえて解説させていただきます.
第21回エンドトキシン救命治療研究会
日時:2017年2月10日(金)・11日(土・祝)
会場:コングレスクエア日本橋
 東京都中央区日本橋1-3-13 東京建物日本橋ビル

テーマ:敗血症新時代


一般演題44題

2月10日(金)

17:00-18:30
シンポジウム(Ⅰ):「敗血症新定義と血液浄化療法」
司会:
 織田 成人先生(千葉大学大学院)
 佐藤 浩一先生(順天堂大学医学部附属静岡病院)
演題1:「敗血症診断基準とPMX施行のタイミング:quick SOFA scoreを用いた検討」
吉本 広平(東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部)
演題2:「敗血症性ショックの救命のために,まず導入すべき急性血液浄化療法はPMX-DHPかCHDFか―敗血症新定義をふまえて—」
望月 勝徳先生(信州大学医学部救急集中治療医学教室)
演題3:「大腸穿孔症例における予後因子と急性血液浄化療法の検討」
清水 智治先生(滋賀医科大学外科学講座消化器外科)
演題4:「敗血症新定義をふまえた有効性の評価ー敗血症患者における急性血液浄化法の観点からー」
上野 琢哉先生(東京医科大学八王子医療センター特定集中治療部)

13:30-14:10
司会:西田 修先生(藤田保健衛生大学)
教育講演(Ⅰ):「日本版敗血症診療ガイドライン2016:作成過程と推奨内容」
小倉 裕司先生(日本版敗血症診療ガイドライン2016作成委員会)

14:20-15:00
司会:今泉 均先生(東京医科大学病院)
教育講演(Ⅱ):「ARDSの人工呼吸器管理ー肺保護戦略のその後ー」
時岡 宏明先生(岡山赤十字病院麻酔科)

15:10-15:50
司会:松本 尚先生(日本医科大学千葉北総病院)
教育講演(Ⅲ):「ECMOは集中治療のパラダイムシフトをもたらすか?」
市場 晋吾先生(日本医科大学付属病院外科系集中治療科)

16:00-16:40
司会:小谷 穣治先生(兵庫医科大学)
教育講演(Ⅳ):「敗血症と栄養管理」
長野 修先生(高知大学医学部災害・救急医療学講座)

2月11日(土)

12:10-13:00
司会:片山 浩先生(川崎医科大学)
ランチョンセミナー:「敗血症における凝固線溶異常の病態生理」
伊藤 隆史先生(鹿児島大学病院救命救急センター)

13:10-15:10
シンポジウム(Ⅱ):「敗血症新定義をふまえた有効性の評価」
司会:
 横田 裕行先生(日本医科大学付属病院)
 志賀 英敏先生(帝京大学ちば総合医療センター)
演題1:「救急医・集中治療医不在の施設におけるICT主導の敗血症性ショック治療プロジェクト;単施設89例後ろ向き観察研究」
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)
演題2:「敗血症の新定義(Sepsis-3)に基づいたバイオマーカーの有用性の検討」
川野 恭雅先生(福岡大学病院救命救急センター)
演題3:「敗血症新定義をふまえた敗血症性ショックへの治療戦略」
倭 成史先生(国立病院機構大阪医療センター腎臓内科)
演題4:「Sepsis-3を用いた病棟とICUでの敗血症診断とバイオマーカーの敗血症補助診断に及ぼす影響」
升田 好樹先生(札幌医科大学医学部集中治療医学)
演題5:「敗血症新定義をふまえた有効性の評価」
遠藤 重厚先生(盛岡友愛病院)
 ほぼ敗血症学会と言っていいような学会ですが,今回はやはりSepsis-3がトピックス.私自身は昨年4月から新しい病院に移ってで,現在ネタ切れで出す演題がなかったのですが,ぜひにと言われ,大阪の前職場でのデータを引っ張り出してきました.前職場での7年間の集大成みたいなものです.
第53回日本腹部救急医学会総会
日時:2017年3月2日(木)・ 3日(金)
会場:パシフィコ横浜

テーマ:「他を知り、多くを学ぶ-よりよいチーム医療のために-」

学会ホームページ:http://www.congre.co.jp/jsaem53/contents/outline.html
第44回日本集中治療医学会学術集会
日時:2016年3月9日(木)〜11日(土)
会場:
 ロイトン札幌(札幌市中央区北1条西11丁目)
 さっぽろ芸文館(札幌市中央区北1条西12丁目)
 札幌市教育文化会館(札幌市中央区北1条西13丁目)
 札幌プリンスホテル国際館パミール(札幌市中央区南2条西11丁目)

テーマ:「集中治療と集中治療医学」

学会ホームページ:http://44jsicm.gakkai.me/sammury.html

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by DrMagicianEARL | 2017-01-16 19:08 | 研究会・講演会・学会 | Comments(8)
2014年3月2日作成
2014年3月11日一部訂正
「2.日本版栄養管理ガイドライン」の部分について間違っている部分があると御指摘をいただきましたので訂正しました.誤解を招いてしまったことをお詫び申し上げます.訂正箇所については打ち消し線を入れて直す形式とさせていただきました.


■京都国際会館とプリンスホテル京都で開催された第41回日本集中治療医学会学術集会の2日目と3日目に参加してきました.2月があまりに多忙だったことによる疲労蓄積もあってあまり精力的にいろいろ聴講したり面白そうなポスター演題を探しにいったり,といったことができませんでした.ちなみにランチョンセミナーの弁当が大変なことになってましたがあれはいったい・・・?

1.ポスター発表してきました

■私自身は『集中治療医が不在のopen ICUで敗血症性ショックの治療成績はどこまで改善できるか?』というタイトルで2日目の午前中にポスター発表を行いました(DP-75-3).本ブログ内でも何度か触れた内容です.2011年8月から11月にかけて,院内独自の敗血症診療ガイドライン/バンドル/プロトコル作成・配布による導入,3回にわたる院内スタッフへの敗血症勉強会等による教育によって治療成績がどう改善したかを報告させていただきました.当院ICUに入室した敗血症性ショック患者52例を対象として,ガイドライン遵守群と非遵守群を院内死亡率で比較した後ろ向きコホート研究です.患者背景に有意差はなく,院内死亡率は30% vs 75%(OR 0.14; 95%CI 0.04-0.50; p=0.003)で,ガイドライン遵守群の方が有意に院内死亡率が低い結果となりました.多変量ロジスティック回帰解析でもガイドライン遵守は死亡リスク減少に関連した独立因子でした(OR 0.004; 95%CI 0.000-0.073).ガイドライン遵守群の死亡率は,重症度(平均APACHE II score 22.0,平均SOFA score 10.4),近年の敗血症性ショックの死亡率の報告,挿管拒否患者が3割含まれていたことも考慮すると妥当であると考えています.

■非遵守群の死亡率が75%なのは高すぎる,と思われるかもしれません(特に救急集中治療医の先生方にとっては).ですが,これが集中治療医不在の病院の現実です.近年日本の重症敗血症の治療成績は20%以下にまで改善してきているとされていますが,これはあくまでも三次病院の成績であり,二次救急施設では以前として高い死亡率のままです.また,質疑応答では,「遵守しない医師の特徴は?」という質問がありました.これは医師年数が長いほど遵守しない傾向があります.ベテランの先生方は自らの経験を信じて,なかなか新しい治療方針に切り替えられない,ということの一傍証かと思われます.

■また,今回,初めてEZRという解析ソフトを使ってみました.それまでは私は無料解析ソフトRを使用していたのですが,EZRはこのRをより使いやすく,日本語表示でワンクリックで解析可能にした無料ダウンロードソフトです.SPSSなどは非常に高価ですので,解析ソフトを購入できない場合はこのEZRをおすすめします.

2.日本版栄養管理ガイドライン

■今回個人的に目玉にしていたのはシンポジウム4『日本版ICUにおける栄養管理ガイドライン作成』です.ドラフト発表かと思っていたのですが,どうやらまだまだ時間がかかるようで,作成途中の状況の発表でした.日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)との合同作成で,ガイドラインの正式名称は『日本版重症患者の栄養管理ガイドライン』になるようです.これは汎用性を重視してあえて「ICU」をガイドライン名にいれないようにしたとのことです.

※訂正について:JSPENとの合同作成ではなく,日本集中治療医学会単独での作成とのことです.シンポジウムではJSPEN理事長が参加されてましたが,あくまでもコメンテーターとのことでした.

■本ガイドラインは2012年10月にキックオフミーティングが開かれ,現在も作成中です.SCCM/ASPEN,ESPEN,CCPGの3つのガイドラインをベースにし,さらに①病態別の推奨,②看護師の行う処置の推奨,③小児での推奨,④現場で使用しやすくするためエビデンスの低いものにも言及する,というガイドラインになっています.7つの大項目,53のClinical Questionを設け,RCTやメタ解析のシステマティックレビューを行って推奨を決定していくことになっていますが,各委員が日常業務を行いながらの膨大な量の文献を精読していくため著しく時間がかかることから,システマティックレビューを行う項目を制限する方針となっています.具体的には,SCCM/ASPEN,ESPEN,CCPGにおいて推奨が一致して,かつその後新しいRCTの報告がなければシステマティックレビューは行わず,海外ガイドラインの推奨をそのまま踏襲する方針となりました.

推奨レベルはGrade 1Bというように,日本版敗血症診療ガイドラインと同じ手法でつけています.しかしこれはSSCGに見られるような海外のGRADEシステムとは表記が同じだけで全く異なるものです.日本の推奨レベルの決定は,研究ごとに評価していくのに対し,GRADEシステムはアウトカムごとに評価を行っていきます.この点は日本版敗血症診療ガイドライン案がドラフト発表された2011年3月の時点でGRADEシステムじゃないことの問題点を指摘されていたはずなんですが(海外からも「そんなものをGRADEシステムと呼ぶな」と忠告があった),残念ながら今回の日本版重症患者の栄養管理ガイドラインでもGRADEシステムではありませんでした.

※訂正について:推奨度についてはシンポジウム直前に表記を変えることになったとのこですが,一部の先生方はスライドを変更する時間がなく,今回の発表になったとのことです.日本版敗血症診療ガイドラインについては海外からの指摘ではなく,パブリックコメントからの指摘とのことです.

■現在作成中のガイドラインのClinical QuestionとAnswer,根拠が一部お披露目となりました.だいたいは既存のガイドライン通りですが,看護師が行う処置についてはエビデンスがないことだらけで,まとめるのがかなり大変そうでした(エビデンスレベルはほとんどがDになるんじゃないでしょうか).

■ひとつ引っかかったのは,「近年の報告では中心静脈カテーテルは鎖骨下静脈,頸静脈,大腿静脈のいずれでも感染率に差がないのでどこから行ってもよい」とする推奨です.今後パブリックコメントの募集が始まった段階でこの推奨が変わっていないのであれば,正直ここはツッコまざるを得ません.確かに近年のRCT,メタ解析において,中心静脈カテーテル挿入が大腿静脈か頸静脈かで感染率に有意差がないとの報告がでていますが,これはRCTのきっちりしたプロトコル,施設の感染対策レベルの高さに支えられたエビデンスであり,外的妥当性については注意しなければいけない内容です.おそらくこのエビデンスは日本のどの施設でも一般化できるような内容ではないと考えます.感染対策に従事している立場上,この推奨は危険と考えます.

■この項目を見て,RCTのエビデンスだけでガイドラインを作成するリスクが垣間見えた気がします.臨床現場に近い生々しいデータは実はRCTよりも観察研究です.RCTの問題点の1つに,限られた患者しか対象に含まないということがあります.例えばオセルタミビルが成人のインフルエンザに有効かを検討したRCTにおいては,もともと死亡リスクの高い患者は含まれずに評価を行いますから,死亡率に差がでるということは考えにくいわけです.しかしながらコクランレビューはそれらのRCTを集めたメタ解析を行い,オセルタミビルに死亡率改善効果はないという結論をだしてしまい,米国CDCから猛反論を受けることになったわけです.さらに,RCTには厳格なプロトコルが組まれるために融通性がきかない,という問題点もあり,RCTのプロトコルが患者によっては日常診療とはかけ離れた治療になってしまうこともあります.例えば抗菌薬の臨床効果を比較したRCTでは,投与期間が全患者で一定であり,症状が改善した時点で終了するということができません.患者状態に合わせて早期終了あるいは投与期間を延長してしまった場合は,アウトカム評価対象から脱落とみなされてしまうわけです.

■観察研究はRCTよりも広い患者集団を対象としますから,臨床現場の現状を反映しやすい研究といえます.もちろん観察研究データ内で介入・非介入の比較を行う場合,患者の背景因子が同等でないことが多くバイアスリスクは回避できませんし,その解析は重回帰を用いなければアウトカムのより正確な評価はできません.重回帰を行う以上はそのアウトカムに関連しうるであろう変数を用いますが,この変数選択も解析者のバイアスリスクがあります.しかし,これらのバイアスリスクに注意した上で大規模かつ質の高い観察研究であれば,ガイドラインの根拠対象とすべきで,実際にGRADEシステムではRCTと同様に観察研究も根拠対象に含まれています.RCTのみを根拠としたガイドラインでは,臨床現場の認識と乖離が生まれるのは避けられないと思われます.

■栄養素ではグルタミンとセレンについて言及がありました.昨年,多臓器不全を有する人工呼吸器患者においてグルタミンは死亡率を悪化,セレンは効果なし,という大規模RCTであるREDOXが報告されたことは記憶に新しく,それを反映しての推奨がなされるようです.もっともREDOXをはじめとする海外の栄養素の研究は,本邦の日常診療では考えられない高用量であるほか,本邦にはない注射製剤も用いられており,海外のエビデンスをそっくりそのまま日本のガイドラインに移植,なんてことはできず,評価が難しいものになりそうです.セレンの注射製剤についてはすでに日本でPhaseIIIにまで治験が進んでいるとのことでした(ただし,あまりにも安価で,メーカーが製造するかは不明とのこと).

3.ECMO,iLA
■2日目,3日目とECMO関係のランチョンセミナーに参加してきました.エビデンスは乏しいですが,この領域はどんどん進んできています.2009年のインフルエンザA/H1N1pdm2009によるARDSに対するECMOで惨憺たる治療成績だった本邦も,厚生労働省までまきこんだ日本呼吸療法医学会によるECMO projectが進行中です.

■ECMOで極めて良好な治療成績をだしているカロリンスカ大学ECMOセンターのKenneth Palle Palmer先生からは,いかにしてECMO患者の管理を行うかの講演がありました.要点を以下にまとめます.
(1) ECMO患者は早期に気管切開を行い,CVVHFを使用しつつ,low PEEP(4cmH2O),モルヒネ(±デクスメデトミジンorクロニジン)を用い,原則として覚醒状態で管理する.
(2) 超重症難治性ARDSでは肺胞内にまで細胞が入り込み,肺が硬くなる.こうなってはhigh PEEPもオープンラングリクルートメント手技も無効であり,原則有効な治療法はないため,ECMO管理下であきらめずにひたすら待つ.30日くらい待つと,肺胞内細胞の50%がapoptosisとなり,肺胞がようやく開通するようになる.
(3) ECMO患者には特定の場合を除き,胸郭に侵襲的処置は一切与えず,何もすべきではない.気胸が生じても胸腔ドレーンを挿入せず,人工呼吸器を2-3日はずす.胸水が生じても放置でよい.ドレーン処置は逆に出血を招き,患者を失うことになりかねない.血胸の場合は外科による血腫除去(4日間連続手術が必要になるかもしれない)が必要であり,ECMOのヘパリンは使用せず,高いflowとACT 120-150で管理する.
(4) 40日たっても改善がみられない場合は肺生検を行う.その際,出血により外科手術と大量輸血が必要となるが,それでも肺生検は行うべきである.
(5) 「ポンプは友であり,ポンプが動いていれば大丈夫,ECMOを信じ,余計なことはせずひたすら待つ」.この感覚を身につけるためにはかなりの症例経験が必要である.
(6) 敗血症に対するECMOはこれまで禁忌とされてきたが,近年ではECMOが使用されるようになってきた.機序は不明だがVV-ECMOであっても昇圧剤投与量を減じることができる.カロリンスカECMOセンターでは平均SAPS III score 90点(予測死亡率81%)の敗血症性ショック患者の死亡率は18%,NNTは約1.5であった.
(7) VA-ECMO脱血は右房から行う.脱血カニューラには等間隔に穴があるが,MRI撮影すると実際に脱血するのは装置側の穴2-3個であり,先端側からは脱血されない.よって大腿静脈から右房に先端を留置しても実際には下大静脈から脱血することになり,頸静脈にも25Frのカニュレーションが必要.
(8) ECMO患者の酸素代謝をSpO2のみで判断してはならない.必ず酸素含有量(Hb×1.34×SpO2×CO)で評価する.
■ドイツのレゲンスバーグ病院からはThomas Bein先生がドイツで開発されたiLA(商品名NovaLung,Talheim社)について講演された.通常のECMOはポンプを用い,2-3L/分のhigh flowです.一方,ポンプは使わず動静脈圧較差を使い1-2L/分という中等度のflowでガス交換を行うのがiLA(interventional lung assist)です.このiLAは日本ではすでに治験が行われ,承認がおりれば東レ・メディカルから販売予定です.

■iLAは非常にコンパクトで,膜の耐用性も高く,将来的には救急車やドクターヘリによる搬送中の人口肺として使用できるのではないかと期待されています.カニューレと膜がヘパリンコーティングされているため,血栓予防のヘパリンは低用量(100IU/kg/day)ですむ.(AV-)iLAは大腿動脈から脱血し,低抵抗ガス交換膜を通し,大腿静脈に送血します(動静脈圧較差は60-80mmHgは必要).CO2除去能に優れますが,酸素化能はVV-ECMOほどではありません.AV-iLA導入は2人の医師でスピーディーに行う必要があり,セルジンガー法で動脈には13-15Fr,静脈には17Frを挿入します.また,ミニポンプがついたiLA activeの登場で,23Frを大腿静脈1箇所に挿入するだけのVV-iLAも可能になっています.

■iLAの適応は,重度の高炭酸ガス血症とアシドーシスを有し,重度の低酸素血症がないこととされています.レビュー論文では,iLAの目的は,①超肺保護換気の施行(6mL/kgよりもさらに少ない低1回換気療法),②重症ARDSの補助,③重症気管支喘息またはCOPD急性増悪によるCO2蓄積解除,とされている.禁忌はショック,重度の凝固障害,多臓器不全などです.

■Bein先生が用いているプロトコルでは,急性呼吸不全患者においてまず肺保護換気を行い,pH<7.25ならば呼吸数を30以上に変更し,それでもpH<7.25かつMODSであればiLAを導入するとしています.NPPV失敗患者においては挿管人工呼吸にするよりもiLAを施行した方が死亡率が低いとのことです.

4.ひっかかった講演

■とあるセッションで,「さすがにこれは・・・」と思う講演に2つ遭遇しました.

■大学教授の先生がデータも示さずに「○○は不要」という,ほぼゴールデンスタンダードになっている治療を否定する口調を繰り返していました(この先生はいつものことではありますが).アカデミックな学会でこのような講演が許されていいんでしょうか?既存の治療法の有効性を疑う姿勢は必要ですが,データを見せていただかなければまったく説得力もありません.

■また,別の先生,この方も大学教授なんですが,統計解析が不適切と思われる講演がありました.症例数が少ない検討での死亡率評価でχ2乗検定は行うべきではありません.この場合はFisher正確確率検定を行わなければ不正確で,結論そのものが変わってしまうことがあります.また,介入群と非介入群のマーカー変化の比較で,t検定とMann-Whitney検定の区別がなされずに解析が行われていたほか,減少幅の比較もなしに絶対値比較だけで有意に減少と結論づけるのは平均への回帰を無視しており,この様なやり方で有用性評価をすべきではありません.

■まだ若い未熟な先生がこういう講演をしてしまうことはあるかもしれませんが,大学教授が,それも学会という場でこんなことをやっていては・・・,と感じました.
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by DrMagicianEARL | 2014-03-02 16:54 | 研究会・講演会・学会 | Comments(0)
※個人的意見もかなり入っているため,異論等はいろいろあるかと思いますので,御意見,御批判等があればコメント御願いします.

■昨年から各製薬メーカーの研究会が急激に増えている.その結果,多数の医療従事者が学会以外で発表を行う機会が増えているが,「メーカに頼まれたのでとりあえず1例報告でも出そう」という流れで発表されるケースもあり,最近の研究会を見るに一般演題の質が落ちてきているのではないかと感じることがある.

※1例報告のタイトルで「~の一例」と漢数字を用いている発表を見かけることがあるが,「~の1例」と算用数字にするのが一般的である.

■1例報告の意義が何であるかが全く考慮されていないような1例報告は,結局何が言いたいのかよく分からないまま終わってしまい,聞いている側としても質問する以前の問題になってしまう.メーカー主催の研究会では,メーカーに頼まれて無理やり症例報告を出してくるケースもあるが,症例提示だけして考察は文献提示のみのような,“メーカーのための1例報告”にしか見えないような発表では聞いている側は全く興味もわかない.そのような発表は,演者が1例報告の意義を軽視しているのではないか,と勘ぐってしまう.

■1例報告を発表するのは若手医師が多く,1症例をまとめあげてプレゼンテーションするスキルを磨くための教育的手段としても有用である[1]にもかかわらず,その価値を失わせてしまうような発表をさせるのは当然ながら好ましくなく,1例報告を殺しているに等しい.その点を指導医も考慮しておく必要がある.たとえメーカー主催の研究会であっても,1例報告はアカデミックなものとして発表し,ディスカッションを惹起する内容にすることを心がけたい.

■1例報告は主に導入,症例提示,考察および文献レビュー,結論で構成されるのが一般的であり[2,3],単なる観察報告ではない.導入部では,観察対象,目的,その報告のメリットを提示する.とりわけ,その1例報告がなぜ目新しいのか,あるいはメリットレビューであるのかについて説明する必要があり,そのために発表者は自身の主張を補強する包括的な文献レビューを行う必要もある.症例提示では,時系列に沿って詳細な説明を行っていく.そして考察は最も重要なセクションであり,既知の文献を踏まえ,正確で,時には独創性もふまえた評価を行い,新しい知識を引き出し,その報告の重要な特徴をまとめることになる.そして,結論は簡潔に,かつ根拠に基づく推奨と妥当性を提示する.

※これに対して,症例集積等の研究ではIMRAD format(導入introduction,方法methods,結果results,議論discussion)と呼ぶ.

■1例報告は「たかがn=1だから」という理由で軽視されがちではあるが,「1例を笑う者は結局1例に泣く」と言われている通り,1例報告は全く無駄ではない.我々が日常的に知っている確立された疾患とその治療法なども最初は1例報告から始まって発見・確立されたものが数多く存在する[4].また,多数の症例を集めた抽象的な報告とは異なり,1例報告では1例に対する深い考察が可能である(具象的).1例報告では珍しい症例,教訓となる症例,これまでに報告がなかった症例,といった貴重な症例の知見が報告され[5],それを個人や一施設の経験に終わらせることなくオープンにすることで,他施設での診療や研究に活かすことが可能となる.いわゆる経験(tacit knowledge)の明確化(externalization)による情報共有である.

■症例集積報告に比較すれば1例報告のエビデンスレベルが低いのは確かであり,これが1例報告を軽視する最大の要因になっていると思われる.これは医学雑誌でも同様である.1例報告は他の研究論文と比較して引用されにくいため,1例報告を数多く掲載すればその医学雑誌のインパクトファクターは下がることになる[6].このため,一流誌はインパクトファクターが下がるのを回避するため,1例報告は掲載せずレビューを多く掲載する,1例報告をregular articleではなくletter等で受理して掲載する,といった操作によりインパクトファクターを上げているという事実がある.しかし,上述の通り,症例集積では抽象的内容にとどまるのがlimitationであり,1例報告は深く踏み込んだ議論が可能となる.研究会のパネルディスカッションがいい例であろう.また,1例報告から仮説を導き出し,そこから症例集積につなげる,といったプロセスも可能である.

■また,1例報告はベンチマーキングの一種でもある.自分の仕事を外在化させ,他の医療従事者から厳しい評価を受けることで自分の臨床(clinical practice)の質を高める(Quality Improvement)ことができる.研究会での1例報告に対する質疑応答は疑問点を聞くためだけのものではなく,批判的吟味やディスカッションもあってしかるべきである.

■さらに,1例報告は,その1例を詳細に至るまで正確に把握し,限られた発表時間で報告するために特に重要な情報を選択し,文献的考察もふまえて提示するプロセスを培うことができる.1例報告はCase-Based Teachingであり,実症例からの医学的情報を通して批判的思考(critical thinking)と意思決定(decision making)のスキルを学ぶ手法として重要であり,初心者の医学論文執筆に必要なベーシックスキルを磨く手段でもある[7]

■1例報告はEBM(Evidence-Based Medicine;科学的根拠に基づいた医療)に必ずしも従うものではない.EBMは多数の集約データから導かれたアウトカムをもとに提示されるものであり,最大多数患者にとっての最大公約数的利益を与えるものである.当然ながらEBMがカバーし得ない事例も数多く存在する(むしろカバーしていない事例の方が多い領域もあるかもしれない).1例報告はこのようなEBM時代の中でも新しい観察を我々に伝えうるものである[8].同時に,1例を通して,その患者にとっての最大利益を目指すHBM(Human-Based Medicine;患者本位の医療)を議論するものでもある.
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■本記事を書こうと思ったのは,ここ2年間の研究会を見てである.とりわけ私の場合はDIC(播種性血管内凝固)の研究会に参加することが多く,DIC関連の研究会で違和感を覚える1例報告を散見する.DICという疾患は単一で生じる病態ではなく,必ず原疾患が存在する.そのせいもあってなのか,DICの研究会でよく目にするのは「ある疾患が重症化し,DICも併発した.原疾患も治療し,ついでにDIC治療薬も投与してDICが治った」という1例報告である.

■もちろんこれがよくないというわけではない.凝固線溶マーカーをはじめとしてラボデータがどのように変動し,原疾患や患者の状態にどのように影響し,過去知見との矛盾有無や自身の考察と批判的吟味等をふまえ,新しい観察・教訓的推奨を提示することでまとまった報告になる.あるいは,DIC治療の報告で過去にその原疾患での報告がないケースなどでは有用な報告になるだろう.しかし実際には,考察において,その1例における深い考察がなく,さながら“メーカーの宣伝そのまま”のように見える治療薬の一般論と文献を並べるだけに終始している発表が目に付く(そういう発表に限って薬剤名が一般名ではなく商品名になっていることが多い印象がある).これでは症例集積検討ではなく1例報告にした意義が感じられない.既にPhaseⅢでDICに対する効果が示され,その後も多数の症例対照研究等でDIC治療効果が示されている薬剤をもってきて,1例報告で「DICにDIC治療薬を投与したら治った」だけしか言わないような報告はそろそろやめてはどうだろうか?

※こういう発表がでてくるそもそもの原因は,DICの病態そのものが理解されていない部分も影響していると思われる.原疾患ありきのDICではあるが,「ついでに合併したのでついでに治療しておく」というような単純な付けたし病態では決してない.

※後援メーカーへのリップサービスをするために,提示された症例の結果と異なる結論を無理やり述べるケースも見ることがある.先日,とあるメーカー主催の研究会で,各大学の教授・講師陣が症例提示していくパネルディスカッションがあったが,4症例中3症例でそのようなプレゼンテーションが見られ,さすがにめまいがした.明らかにやりすぎである.

※当院では,研修医のスキルアップの目的で,年2回,院内で研修医による学術発表が行われている.文字が多く図が少ない等ビジュアル的な問題や時間内にプレゼンテーションしきれないといった問題はまだあるものの,内容としては症例提示から考察に至るまで毎回非常によくまとまった1例報告を見せてもらい関心している.ただし,実務以外の,こういった1例報告や論文の書き方や論文の読み方を体系的に教える指導システムがあるわけではないので(抄読会すらないのは問題・・・),これが今後の当院の1つの課題であろう.


[1] Iles RL, Piepho RW. Presenting and publishing case reports. J Clin Pharmacol 1996; 36: 573-9
[2] Cohen H. How to write a patient case report. Am J Health Syst Pharm 2006; 63: 1888-92
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[4] Senapati A. The clinical section--a special case for case reports. J R Soc Med 1996; 89: 95P
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by DrMagicianEARL | 2013-08-19 00:01 | 研究会・講演会・学会 | Comments(0)

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