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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:敗血症( 136 )

2011年10月17日作成
2012年10月29日改訂
2016年3月7日改訂
Summary
・敗血症において菌血症は必要条件でもなければ十分条件でもない.
・敗血症の診断基準としては1991年基準(SIRS),2001年の基準があるが,感度・特異度の問題があり,2016年2月に第3の定義・診断基準が定められた.
・新しい定義・診断基準ではより重症度が高い患者集団に限定された.
・SIRS基準が消え,従来の重症敗血症以上が敗血症と定義された.
・新基準ではICU発症とICU以外での発症で診断基準が異なることに注意が必要である.ICU発症では感染症が疑われSOFAスコアの2点以上の増加,ICU以外ではqSOFAスコア2点以上で敗血症疑い(かつSOFAスコア2点以上で敗血症)と診断される.
・qSOFAは呼吸数22回以上,収縮期血圧100mmHg以下,意識障害(GCS<15)で規定される.
・感染症診断,スコアリングの間隔,臓器障害が慢性か急性か,アウトカム設定の問題,日本と米国のICU環境の違いなどの問題点を考慮する必要がある.
・敗血症性ショックは急速輸液負荷でも反応しない平均血圧65mmHg未満かつ乳酸値2mmol/L以上で診断される.
■本記事では,過去の敗血症の定義も含めた解説であり,SIRS基準等も掲載している.新しい定義・基準は後半に記載があり,そちらを参照されたい.

1.SIRSに始まる敗血症の定義・診断基準の変遷

■sepsisの語源はギリシャ語のseptikosであり,「崩壊」「腐敗」の意味
※sepsisの発音は英語なら「セプシス」,ドイツ語なら「ゼプシス」になる模様.

■古い敗血症の概念は1914年にSchottmullerらが定義した「敗血症は,微生物が局所から血流に侵入し,病気の原因となっている状態」であるが[1],これは現在の敗血症とは異なる.よく勘違いされるが,敗血症は「細菌(真菌)が血液中に侵入して生じるもの」ではない.菌血症は敗血症の必要条件でもなければ十分条件でもない.その後の敗血症の定義は生体反応である炎症を主体とするもに変遷していき,Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012[2]では「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」とされた.

■1989年にBoneらは“sepsis syndrome”という概念を提唱した[3].これをもとに米国集中医療学会(SCCM)と米国胸部医学会(ACCP)が合同で発表したものが敗血症の定義の定義として十数年にわたって使用されてきたものである[4].ここで,感染症は微生物の存在,もしくは本来は無菌である組織への微生物の侵入に対する炎症反応と定義され,全身性炎症反応症候群Systemic Inflammatory response syndrome(SIRS)の概念が生まれた.SIRSについてのまとめはこちら

■SIRSは以下の4項目のうち2項目以上該当すれば診断される[3]
(1) BT >38℃ or <36℃
(2) HR >90 bpm/min
(3) RR >20 bpm/min or PaCO2<32mmHg
(4) WBC >12000/mm^3 or <4000/mm^3 or immature leukocyte > 10%
このときの敗血症の定義は感染によって発症した全身性炎症反応症候群(SIRS),すなわちinfection-induced SIRSである.

■severe sepsis(重症敗血症)の診断基準[4]
Sepsisの中でも以下の項目を1つでも満たす.
(1) 臓器障害
(2) 臓器灌流障害
  乳酸アシドーシス:lactate>2mmol/L
  乏尿:1時間以上の尿量低下(<0.5mL/kg/H)
  意識混濁
(3) 低血圧(収縮期血圧<90mmHgまたは通常血圧から40mmHg以上の低下)

■septic shock(敗血症性ショック)の診断基準[4]
severe sepsisの中で,血圧低下があり,十分な急速輸液負荷を行っても血圧が回復しないもの

■その後,2001年にSCCM,ACCP,ヨーロッパ集中医療学会(ESICM),米国胸部疾患学会(ATS),外科感染症学会(SIS)で集まったInternational Sepsis Definitions Conferenceで定義の再検討が行われ,SIRSは有用な概念であるが,感度過剰かつ非特異的だとして,生体反応を細かく評価する方法が提唱され,以下の新しい診断基準[5]が発表された.
感染症の存在が確定もしくは疑いであり,かつ下記のいくつかを満たす(項目数規定なし)
(1) 全身所見
・発熱:深部体温>38.3℃
・低体温:深部体温<36℃
・頻脈:心拍数>90回/分,もしくは>年齢平均の2SD
・頻呼吸
・精神状態の変化
・明らかな浮腫または体液過剰:24時間以内でのプラスバランス20mL/kg
・高血糖:糖尿病の既往が無い症例で血糖値>120mg/dL
(2) 炎症所見
・白血球上昇>12000/μL
・白血球低下<4000/μL
・白血球正常で>10%の幼若白血球を認める
・CRP>基準値の2SD
・プロカルシトニン>基準値の2SD
(3) 循環所見
・血圧低下:収縮期血圧<90mmHg,平均血圧<70mmHg,もしくは成人で正常値より>40mmHgの低下,小児で正常値より>2SDの低下
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)<70%
・心係数(CI)>3.5L/min/m^2
(4) 臓器障害所見
・低酸素血症:P/F(PaO2/FiO2)<300
・急性の乏尿:尿量<0.5mL/kg/hrが少なくとも2時間持続
・クレアチニンの増加:>0.5mg/dL
・凝固異常:PT-INR>1.5,もしくはAPTT>60秒
・イレウス:腸蠕動音の消失
・血小板減少<10万/μL
・総ビリルビン上昇>4mg/dL
(5) 組織灌流所見
・高乳酸血症>1mmol/L
・毛細血管の再灌流減少,もしくはmottled skin(斑状皮膚)

■しかしながら,この2001年の診断基準は1991年の診断基準(SIRS基準)より精度が特段向上したわけでもなく[6,7],24項目におよぶ上に項目数の規定がないなど非常に使いづらいものであり,精度報告も少ない.一方でSIRS基準は敗血症の疫学や治療介入を研究するためのentry criteriaの役割が主体で提唱されてはいるものの,そのスクリーニングツールとしての簡便さからSIRS基準は現場では用いられ,敗血症診療における中心的概念であり続けた.

2.Sepsis-3/敗血症の再定義と新しい診断基準

■敗血症の病理生物学的研究が進み,敗血症を単なる炎症だけでは説明できなくなってきている.実際にはSIRSという炎症過剰に引き続き,CARSという免疫抑制も生じることが分かっており,敗血症ではより複雑な免疫の多様な変化が生じていることから,炎症を過剰に重視しすぎることが問題視され,その視点をより臓器障害に向ける必要性が指摘されていた.

■また,EGDTをはじめとする多くの治療法が検討されていく中で,敗血症の死亡率は減少してきている[8-15].この中で,最重症病態である敗血症性ショックの近年の死亡率は20-30%まで低下しており,さまざまな治療介入をRCTで検証しても有意差はつかないということが相次いでいる.また,敗血症死亡率の疫学的推移を異とする主張もある.疫学研究においてはコーディング化された病名を拾いあげていくが,その際に過剰診断によるアップコーディングがあると敗血症患者が増えることになる[16].結果的にこれまでの基準では軽症例まで拾い上げていることもあり,死亡率をアウトカムとする場合,今後の治療介入の検証の妨げとなる.ならばより重症度の高い集団を敗血症と定義しなおす必要もあった.

■2016年2月22日,米国フロリダ州はオーランドで開催された第45回米国集中治療医学会(SCCM;Society of Critical Care Medicine)において,米国集中治療医学会・欧州集中治療医学会合同セッションで敗血症の新しい定義が発表され,同時にJAMA誌に新定義の論文1報[17]とその検証論文2報[18,19]がpublishされた.Sepsis-3と名付けられた新定義はこれまでの内容から大幅に変更となっている.
Sepsis-3新定義・新診断基準の概略

・敗血症の新定義:「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」
旧敗血症(SIRS+感染症)→敗血症から除外
旧重症敗血症(敗血症+臓器障害)→敗血症(重症はつけない)

・敗血症の新診断基準:ICU患者とそれ以外(院外,ER,一般病棟)で区別
(1) ICU患者:感染症が疑われSOFAスコアが2点以上増加
(2) 非ICU患者:quick SOFAスコア(qSOFA)で2点以上(疑い)→SOFAスコア2点で敗血症
qSOFAスコア:「呼吸数22回/分以上」「意識障害(GCS<15)」「収縮期血圧100mmHg以下」が各1点ずつ

・敗血症性ショックの定義・診断基準
新定義:「実質的に死亡率を増加させるに十分に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセット」
新診断基準:適切な輸液負荷を行ったにもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬を必要としかつ血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過
■これまでのSIRS基準は消え,SIRS+感染症で敗血症としていたのが,重症敗血症以上で敗血症とし,なおかつ重症敗血症という用語が消滅した.これにより,敗血症(Sepsis)と敗血症性ショック(Septic shock)の2つになりシンプルになったと言える.
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■新しい診断基準はICUとそれ以外で診断基準が異なるというややトリッキーな内容となった.大規模検証研究において,ICU患者ではSOFAスコアがqSOFAやSIRSよりも院内死亡予測妥当性(AUROC)が有意に高かったのに対し,それ以外の患者ではqSOFAがSOFAスコアよりも有意に高かったことによる[18].ICUではSOFAスコアをルーティンでつけている施設も多いと思われるが,ICU以外では通常評価されないものであり,ICU以外で迅速に認知して対応する上でqSOFAがシンプルな3項目になっており,かつ採血が不要でベッドサイドですぐに評価できる因子で構成されているのは非常に実用的かと思われる.これは,ICUに比して,特に一般病棟や院外のプライマリケアの現場において敗血症が見逃され治療開始が遅れていることが顕著であることにも起因する.

■加えて,ICU患者では既に何らかの重症疾患で入院しており,qSOFAでみられるような異常は敗血症でなくとも頻繁にみられる.そこで,SOFAスコアの2点以上の増加という臓器障害度の変化をもってICU発症の敗血症を拾い上げることになる.

■しかし,この改良された診断基準にも問題点はまだまだあるため,以下の問題点を把握して判断する必要がある.
(1) 本検証が既に感染症と診断,あるいはその疑いがもたれた患者を対象に行っていることであり,感染症であることをどのように診断もしくは疑うとするのかは定められていない.このため,まずは感染症の見逃しを事前に防ぐ必要がある.
(2) SOFAスコアの変化をどの程度の変化をもって判断すべきかが示されていない.さらに採血を毎日行うわけでもない以上はSOFAスコアで2日以上は評価できないこともある.
(3) 検証研究において,臓器障害が慢性か急性かの区別が評価されていない(たとえば,認知症患者ではベースラインを知らな得ればqSOFAで1点と数えられてしまう過剰診断リスクが生じる).
(4) 本検証研究のアウトカムは院内死亡率またはICU在室日数3日以上としており,敗血症診断の感度特異度を評価した精度解析ではないことである(そういう意味ではSIRSより本当に優れているのかは評価しづらい).これらの指標は敗血症ではよく使用されるものの,あくまでも代替指標に過ぎない.もっとも敗血症に絶対指標がないためこの問題点を解決することは不可能とも言えるが,本診断基準が何を見ているのかは常に頭に置いておく必要がある.また,院内死亡率は全死亡率であり,その死亡原因は時期によってもかなり異なり[20],敗血症が原因でない場合も含まれるため,必要な治療介入が敗血症治療でない患者集団を含んでしまう.
(5) qSOFAで敗血症と診断したとしてもICUに入室させるかはその病院環境によって異なる.とりわけ回転が速く病床数の多い米国ICUと日本のICUを比較したとき,qSOFAをもって全例をICU入室適応とするのは妥当とは言いにくく,よりつっこんだ評価が必要であろう.

■敗血症性ショックの基準についても検証研究がなされている[19].収縮期血圧ではなく平均血圧を見ていること,乳酸値をより重要視することが推奨されており,これは血圧の下がったショック(Overt Shock)のみならず潜在的ショック(Cryptic Shock)もカバーする上で重要である.収縮期血圧は左室後負荷と動脈性出血リスクに関与する一方,平均血圧は心臓以外の臓器灌流の決定因子である.敗血症において血圧が低いことが問題になるのは臓器血流量が減少するからであり,それを決定するのは冠血流を除いては平均血圧である.平均血圧は以下の式から推測する.
 MAP=DBP+(SBP-DBP)/3=SBP/3 + DBP×2/3
 MAP:平均血圧
 DBP:拡張期血圧
 SBP:収縮期血圧
実際に敗血症においてはMAPが60mmHgと28日死亡率の関連が強く,SBPと死亡率の関連閾値は見出せなかったと報告されている[21]

[1] Budelmann G. Hugo Schottmüller, 1867-1936. The problem of sepsis. Internist (Berl) 1969; 10: 92-101
[2] Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al. Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock: 2012. Crit Care Med 2013; 41: 580-637
[3] Bone RC, et al. Sepsis syndrome: a valid clinical entity. Methylprednisolone Severe Sepsis Study Group. Crit Care Med 1989; 17: 389-93
[4] American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20: 864-74
[5] Levy MM, et al. 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit Care Med 2003; 31: 1250-6
[6] Weiss M, Huber-Lang M, Taenzer M, et al. Different patient case mix by applying
the 2003 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS sepsis definitions instead of the 1992 ACCP/SCCM sepsis definitions in surgical patients: a retrospective observational study. BMC Med Inform Decis Mak 2009; 9: 25
[7] Zhao H, Heard SO, Mullen MT, et al. An evaluation of the diagnostic accuracy of the 1991 American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine and the 2001 Society of Critical Care Medicine/European Society of Intensive Care Medicine/American College of Chest Physicians/American Thoracic Society/Surgical Infection Society sepsis definition. Crit Care Med 2012; 40: 1700-6
[8] Martin GS, Mannino DM, Eaton S, et al. The epidemiology of sepsis in the United States from 1979 through 2000. N Engl J Med 2003; 348: 1546-54
[9] Kaukonen KM, Bailey M, Suzuki S, et al. Mortality related to severe sepsis and septic shock among critically ill patients in Australia and New Zealand, 2000-2012. JAMA 2014; 311: 1308-16
[10] Levy MM, Dellinger RP, Townsend SR, et al. The Surviving Sepsis Campaign: results of an international guideline-based performance improvement program targeting severe sepsis. Intensive Care Med 2010; 36: 222-31
[11] Kumar G, Kumar N, Taneja A, et al; Milwaukee Initiative in Critical Care Outcomes Research Group of Investigators. Nationwide trends of severe sepsis in the 21st century (2000-2007). Chest 2011; 140: 1223-31
[12] Ferrer R, Artigas A, Levy MM, et al; Edusepsis Study Group. Improvement in process of care and outcome after a multicenter severe sepsis educational program in Spain. JAMA 2008; 299: 2294-303
[13] Li ZQ, Xi XM, Luo X, et al. Implementing surviving sepsis campaign bundles in China: a prospective cohort study. Chin Med J (Engl) 2013; 126: 1819-25
[14] 日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会.日本集中治療医学会第1回Sepsis Registry調査 —2007年の重症敗血症および敗血症性ショックの診療結果報告— .日集中医誌 2013; 20: 329-34
[15] Barochia AV, Cui X, Vitberg D, et al. Bundled care for septic shock: an analysis of clinical trials. Crit Care Med 2010; 38: 668-78
[16] Rhee C, Gohil S, Klompas M. Regulatory mandates for sepsis care--reasons for caution. N Engl J Med 2014; 370: 1673-6
[17] Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016; 315: 801-10
[18] Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ, et al. Assessment of Clinical Criteria for Sepsis: For the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016; 315: 762-74
[19] Shankar-Hari M, Phillips GS, Levy ML, et al; Sepsis Definitions Task Force. Developing a New Definition and Assessing New Clinical Criteria for Septic Shock: For the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016; 315: 775-87
[20] Daviaud F, Grimaldi D, Dechartres A, et al. Timing and causes of death in septic shock. Ann Intensive Care 2015; 5: 58
[21] Dünser MW, Takala J, Ulmer H, et al. Arterial blood pressure during early sepsis and outcome. Intensive Care Med 2009; 35: 1225-33
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by DrMagicianEARL | 2016-03-07 18:32 | 敗血症 | Comments(0)
敗血症の新定義・新診断基準(2016年2月22日のSCCM/ESICMによる大幅改訂)
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■米国フロリダ州はオーランドで開催されている第45回米国集中治療医学会(SCCM;Society of Critical Care Medicine)において,3日目の2月22日(日本時間23日午前5時)の米国集中治療医学会・欧州集中治療医学会合同セッションにおいて敗血症の新しい定義が発表されました.同時に,JAMA誌に新定義の論文1報とその検証論文2報がpublishされましたので紹介します.以下概略です.
新定義・新診断基準の概略

・敗血症の定義
旧定義:「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」(SSCG 2012)
新定義:「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」
旧敗血症(SIRS+感染症)→敗血症から除外
旧重症敗血症(敗血症+臓器障害)→敗血症(重症はつけない)

※これまでのSIRS基準は消え,SIRS+感染症で敗血症としていたのが,重症敗血症以上で敗血症とし,なおかつ重症敗血症という用語が消滅しました.これにより,敗血症(Sepsis)と敗血症性ショック(Septic shock)の2つになりシンプルになったと言えます.

・敗血症の診断基準
旧基準:SIRS基準または2001年基準
新基準:ICU患者とそれ以外(院外,ER,一般病棟)で区別
 ICU患者:感染症が疑われSOFAスコアが2点以上増加
 非ICU患者:quick SOFAスコア(qSOFA)で2点以上でスクリーニング陽性(敗血症疑い)→精査でSOFAスコアが2点以上ならば敗血症診断
qSOFAスコア:「呼吸数22回/分以上」「意識障害(GCS<15)」「収縮期血圧100mmHg以下」が各1点ずつ


※大規模検証研究において,ICU患者ではSOFAスコアがqSOFAやSIRSよりも院内死亡予測妥当性(AUROC)が有意に高かったのに対し,それ以外の患者ではqSOFAがSOFAスコアよりも有意に高かったことによります(JAMA 2016; 315: 762-74).迅速に認知して対応する上でqSOFAがシンプルな3項目になっているのは非常に実用的かと思われます.同時にSIRS基準にも入っていた呼吸数が基準に入っており,いかにベッドサイドで呼吸数が重要であるかの証左と思われます.

・敗血症性ショックの定義・診断基準
新定義:「実質的に死亡率を増加させるに十分に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセット」
旧診断基準:敗血症で輸液負荷にも反応しない低血圧(収縮期血圧で評価)
新診断基準:適切な輸液負荷を行ったにもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬を必要としかつ血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過

※こちらも検証研究がなされています(JAMA 2016; 315: 775-87).収縮期血圧ではなく平均血圧を見ていること,乳酸値をより重要視することが推奨されており,これは血圧の下がったショック(Overt Shock)のみならず潜在的ショック(Cryptic Shock)もカバーする上で重要です.
■今回の改訂により,既知の敗血症研究の多くが再検証が必要になります.特にバイオマーカーの検討はすべてやり直しです.臨床試験においては,敗血症の死亡率が年々減少してきており,新たな治療介入を検討しても有意差が出にくい状態です.より重症で死亡率が高い患者層になったことでeffect sizeがより大きくなり有効な治療法が検出されやすくなるかもしれません.
敗血症および敗血症性ショックの第3の国際コンセンサス定義(Sepsis-3)
Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016 Feb.23; 315(8): 801-10

【背 景】
敗血症および敗血症性ショックは2001年に最終改訂されている.敗血症の病理生物学(臓器機能,形態,細胞生物学,生化学,免疫学,循環の変化),管理,疫学は進歩していており,再検証の必要性が示唆されている.

【目 的】
敗血症および敗血症性ショックの定義を評価し,必要に応じて改訂を行う.

【方 法】
敗血症の病理生物学,臨床試験,疫学の専門家によるタスクフォース(19名)が米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会で招集された.定義と臨床診断基準は,査読と賛同を求めた国際的な専門学会(謝辞に記載された31学会)による補助のもと,会議,Delphiプロセス,電子カルテデータベース解析,投票を通じて作成された.

【結 果】
以前の定義の問題点として,炎症に過度の焦点を置いていること,敗血症が重症敗血症からショックへの連続体に続くという誤ったモデル,全身性炎症反応症候群(SIRS)の不適切な感度と特異度がある.敗血症,敗血症性ショック,臓器障害において,近年,多数の定義や用語の使用が,報告される発生率や観察される死亡率において不一致を招いている.タスクフォースは重症敗血症という用語が余計であると結論づけた.

【推 奨】
敗血症は,感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害として定義されるべきである.臨床的運用において,臓器障害は,院内死亡率10%超に関連するものとして,Sequential [敗血症に関連した] Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの2点以上の増加により表現しうる.敗血症性ショックは,敗血症単独よりも高い死亡リスクに関連する特に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセットと定義すべきである.敗血症性ショックの患者は体液量減少がない状態でも平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬の必要性と血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過によって臨床的に検出できる.この併用は院内死亡率40%超過に関連している.院外,救急部門,一般病棟においては,感染症が疑われた成人患者は,quick SOFA(qSOFA)と称する新しいベッドサイドの臨床スコアで構成される臨床診断基準(呼吸数22回/分以上,精神状態の変化,収縮期血圧100mmHg以下)で少なくとも2点を有するのであれば,予後不良の典型的な敗血症の可能性があると迅速に認識することができる.

【結 論】
これらの定義と臨床診断基準の更新は以前の定義と置き換え,疫学研究や臨床試験においてより大きな一貫性を提供し,敗血症や敗血症への進展リスクを有する患者のより早い認知とよりタイムリーな治療を促進するべきである.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-23 12:19 | 敗血症 | Comments(3)
 2016年2月11日から14日まで神戸国際会議場および神戸ポートピアホテルで開催された第43回日本集中治療医学会総会学術集会に参加してきました.私自身は12日にワークショップセッションでPost-Intensive Care Syndromeについて発表させていただきましたが,今回の学会の個人的なメインはJSEPTIC-DIC studyの結果報告を見に行くことと言っても過言ではありません.以下,感想などを.

1.JSEPTIC-DIC study
■これまで本邦では日本集中治療医学会や日本救急医学会がSepsis Registry委員会を立ち上げて敗血症症例のデータ集積を行ってきているが,どれも数百例レベルで,今回のJSEPTIC-DIC studyは桁が1桁違う過去最大規模かつ最新の国内敗血症データベースとなる.
【対 象】
本研究は,敗血症性DICに対する治療を積極的に施行している施設と施行しない施設の両方を含めた本邦40施設42ICU共同後ろ向き観察研究である.対象は2011年1月から2013年12月の3年間に重症敗血症/敗血症性ショックが原因でICUに入室した3195例.

【参加施設】
参加施設は院内ICUが57%,救急ICUが43%であり,ICU管理方針はClosedが41%,Openが43%であった.

【患者背景】
患者背景は,平均年齢70歳,男性が60%,平均APACHEⅡスコアは23,感染源は腹腔が32%で最多,次いで肺26%,尿路16%,血液培養陽性は44%,陰性は50%,DIC合併率は71%であった.DIC治療薬はATが31%,rTMが27%,プロテアーゼ阻害薬12%であった(重複あり).ICU入室から退院までは平均41日間,院内死亡率は33%であった.

【結果1】DIC治療方針の転帰への影響
 DIC治療薬を50%以上の患者に投与した施設の患者を積極群(23施設1670例),50%未満の患者に投与した施設の患者を非積極群(19施設1525例)とした.
 ICU生存率は80.7% vs 79.6%,p=0.46,院内生存率は67.1% vs 67.3%,p=0.90で有意差はみられなかった.多変量ロジスティック回帰解析では,積極群はICU生存退室においてOR 1.34[95%CI 1.08-1.65],p=0.007,病院生存退院においてOR 1.34[95%CI 1.11-1.60],p=0.002であり,独立した予測因子であった.
 敗血症DICを積極的に治療した施設では生存率良好と関連があり,DIC治療薬投与が転帰を改善する可能性がある.

【結果2】敗血症性DICに対する遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤(rTM)の効果
 3195例中,DIC患者1847例が対象,このうち645例にrTMが投与され(rTM群),1202例にはrTMが投与されていなかった(対照群).施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity scoreを算出し,propensity score matching解析を実施し,466組のペアが作成された.
 院内死亡においてはrTMはOR 0,717,95%CI 0.547-0.940,p=0.0161であった.生存期間の比較では,HR 0.762,95%CI 0.615-0.943,p=0.0125であった.rTM群での輸血量の増加は認めていなかった.処置を要する出血は対照群1.3%に対してrTM群2.8%と増加していたが,統計学的有意差は認めなかった.
 敗血症性DICに対するrTMの投与は死亡率の低下と関連していた.

【結果3】敗血症性DICに対するアンチトロンビン製剤(AT)の効果
 3195例から以下の3段階のサブグループで施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity score matching解析を実施した.
(1)DIC患者1875例中,715例にATが投与され(AT群),1132例には投与されていなかった(対照群).
(2)AT値をday1に測定しているDIC患者1041例中,AT群509例,対照群532例
(3)day1のAT値が70%以下のDIC患者815例中,AT群450例,対照群365例
 マッチしたペアはそれぞれ(1)428組,(2)275組,(3)212組作成された.AT群は院内死亡において(1)OR 0.906,95%CI 0.69-1.19,(2)OR 0.94,95%CI 0.65-1.34,(3)OR 1.09,95%CI 0.73-1.64,p=0.68であった.
敗血症性DICに対するATの投与は死亡率の低下と関係を認めなかった.
■この他にも,乳酸値,PMX-DHP,vv-ECMO,Open vs Closedなど多数の解析が発表されている.本研究の主旨である敗血症性DICに関しては,DIC治療薬,とりわけrTMにおいて生存率改善の可能性が示唆されているものの,施設どうしの比較にも近く,またDICを治療しない施設におけるDICパラメータの測定欠損など後ろ向き観察研究特有の限界もあるとも言える.また,先日の第22回大阪DIC研究会においては本JSEPTIC-DIC studyデータを用いたDIC治療プロトコル採用可否での死亡率比較で,APACHEⅡスコア20以上において生存率改善を示唆する結果が報告されており,過去の知見も合わせればやはりAPACHEⅡスコア20~25以上のpoppulationでなければ死亡率改善は得られない可能性があり,rTMの海外PhaseⅢ studyに登録された患者の重症度しだいで結果は決まるかもしれない.

2.TPTD study
■敗血症性ショックのEGDTにおいて,輸液指標にCVPを用いることについては懐疑的見解が相次いでいる.しかしながら,CVPに代わる確立された輸液反応性指標がないことも事実で,それではTPTDはどうかということで本研究がRCTデザインで日本で行れている.今回その中間解析結果が報告された.
敗血症治療における経肺熱希釈法の併用に関する多施設共同研究・中間報告 TPTD-study Group
【背 景】
敗血症の初期治療においては十分な輸液が必要だが,中心静脈圧を指標とした従来のEGDTについては有効性を疑問視する報告が相次いでいる.経肺熱希釈法(TPTD)は心臓の拡張終期容量と肺外の水分量を測定することが可能であり,中心静脈圧に代わる輸液の指標として期待される.

【目 的】
敗血症におけるTPTDを用いた輸液管理の有用性を検討する.

【方 法】
2013年11月から2015年8月に当研究(多施設前向き比較対照試験;UMIN000011493)に参加した16施設のICUに入院し,48時間以上の人工呼吸器管理を必要とした敗血症患者105例を対象とした.無作為に割り付けたTPTDによる輸液管理を行ったTPTD群(50症例;GEDI 650-850,SVV<15%目標)と中心静脈圧を用いたCVP群(55症例;CVP 12-15cmH2O目標)を比較した.

【結 果】
生存例について,人工呼吸器管理日数はTPTD群で有意に短縮された(Kaplan-Meier法;p=0.041,5.5±7.2 vs 7.0 vs±6.4).ICU滞在期間(6.8±6.4 vs 8.8±7.0),カテコラミン投与期間(2.3±1.8 vs 3.6±4.1)についても,TPTD群ではCVP群と比較して日数が短縮される傾向にあった.72時間の輸液バランスには有意差を認めなかった(4.8±5.9L vs 4.8±5.3L).
※輸液バランスは実際の発表では24時間で3075mL vs 3646mL,72時間トータルでは3106mL vs 4650mLという数字であった.

【結 論】
TPTDを用いた輸液管理によって,十分量の輸液とカテコラミンの必要期間の制限が可能であり,人工呼吸器管理期間を短縮できる.
■Rivers' EGDTのCVPをTPTDにしたらどうなるかというRCTですが,主要評価項目で人工呼吸器管理日数で有意差がついたほか,輸液バランスもTPTD群の方が少ない傾向で好ましく見えるのだが,問題は28日生存率である.100例ちょっとでの検討になるため微妙ではあるが,発表での28日生存率は67% vs 78%で有意差はないもののTPTD群の方が高い傾向がみられている.その絶対差は11%もあり無視できる大きさではない.本研究は最終的に200例を予定しており,この差は200例では有意差はつかないが,500例ほどになれば有意差がつく数字であるため,注意してみていく必要はあるだろう.

3.Global Sepsis Alliance委員会報告
■最終日にGlobal Sepsis Alliance委員会の報告があり,その中で市民への情報発信のためのホームページ作成について報告がなされた.「敗血症安心プラネット」というホームページ名であり昨年より開設されているが,アクセス数が伸び悩んでいた状況にあった.検索についても,「敗血症 安心」という検索ワードにしなければ上位に表示されない.業者に依頼するなどしてアクセス数を増やすことも検討されていたが,コストがかかる上に上位にいく保障がないのが問題であった.

■そこで,救急・ICU系のブロガーにリンクを貼ってもらい,アクセス数を増やすことで検索上位にひっかかることが期待された.実際に本ブログ「EARLの医学ノート」や「ER×ICU~救急医の日常~」で敗血症安心プラネットの紹介とリンクを学会期間中に貼ったところ,アクセス数が劇的に伸びたことが報告された.

■というわけで,まさかとは思ったが,依頼されたこともあり,このブログが学会デビューしてしまった.実際に委員会報告のスライドで私のブログが顔写真本名付きでの紹介という大変恐縮な状況.それはいいとして,一般市民への啓蒙手段,なかなかに難しいようである.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-19 11:30 | 敗血症 | Comments(0)
※本記事は一般市民向けでもあります.

敗血症安心プラネット~Global Sepsis Alliance JAPAN~の御紹介
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1.敗血症という病気

■敗血症(英語でSepsis)という病気を知っていますか?敗血症は医学的には「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」とされています.あらゆる感染症も重症化すると敗血症になります.一般的な肺炎や尿路感染症などの細菌感染症のみならず,インフルエンザやエボラ,MERSコロナウイルス,さらには寄生虫なども重症化すれば敗血症に至ります.この敗血症によって臓器不全,あるいはショック状態になると死亡率は著しく増加します.
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■世界では年間約2700万人の敗血症が発生しており,そのうち,約800万人が死亡しており,2-3秒に1人が世界のどこかで敗血症により死亡している計算になります.このため「Around every 3rd heartbeat, someone dies of sepsis.(心臓が3回鼓動を打つごとに誰かが敗血症で亡くなっている)」とも言われています.これは発展途上国だけの問題ではなく,日本を含む先進国でも深刻です.2002年から2008年にかけての10年間で,敗血症発生率は2倍以上と劇的に増加しており,心臓発作よりも多くの患者が敗血症に罹患しています.そして,敗血症患者の20-40%は集中治療室(ICU)での治療を必要としています.

■米国7州にある847病院の重症敗血症患者192980例の死亡統計データから日本にあてはめると,日本では年間38万4千人が重症敗血症に罹患していることになります.2011年の厚生労働省死亡統計では,敗血症が死因とされている死亡は11170例であり,全死亡の0.9%でした(2001年時は6179例であり1.8倍に増加).しかし,この数字は癌など他の病気がある患者が敗血症にかかり死亡した場合などが含まれていない可能性が高く,実際の死亡数はもっと多いものと考えられており,米国モデルにあてはめるならば,おそらく日本の実際の敗血症死亡例は死亡統計の約10倍(年間10-20万人)と予想されます.また,高齢者ほど罹患率,死亡率が高いことも示されており,超高齢化社会を迎えている日本ではさらに敗血症患者は増加すると思われます.

2.世界敗血症同盟(Global Sepsis Alliance)の設立

■この敗血症の世界的な危機的状況を改善させるため,「Stop Sepsis, Save Lives(ストップ敗血症,命を救え)」をスローガンに,非営利団体である世界敗血症同盟(GSA;Global Sepsis Alliance)設立され,敗血症患者のためにより良い管理体制を整えることを目的とし,致死性疾患である敗血症に対する認識を深めるための世界的活動の一貫として,2012年に毎年9月13日をWorld Sepsis Day(世界敗血症デー)と定め,世界各地で各種イベントが開催され,世界敗血症宣言が発表されています.日本でも東京や横浜でイベントが開催されました.
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■日本集中治療医学会では,2012年3月のブリュッセルにおける世界敗血症同盟の準備会議に参加し,World Sepsis Dayの趣旨に賛同し,8月には日本GSA委員会(中川聡委員長)を発足させ,活動を開始しています.活動としては,専門家による敗血症の早期診断,早期治療介入,集中治療,リハビリテーションの知識の普及啓発を医療者および一般市民に対して行うことを計画しています.

■2015年にGSA Japanのホームページが開設されています.敗血症がどのような病気か,どのような症状があれば病院を受診すべきか,どのようにして敗血症を予防するかなどが解説されていますので以下のリンクから是非ご覧ください.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-13 19:38 | 敗血症 | Comments(0)
■これまで2回,コホート研究でHMG-CoA還元酵素阻害薬のスタチンがICUせん妄を有意に抑制するという報告をEly先生らのグループが報告しています(Am J Respir Crit Care Med 2014; 189: 666-73,Crit Care Med 2014; 42: 1899-909).これは,集中治療領域においてスタチンの抗炎症作用が注目されており,また,炎症とせん妄の関連については近年多数の報告がでていることから,スタチンの抗炎症作用がせん妄を減じるという仮説が三段論法で成り立つわけで,この仮説を検証したことになります.

■そして今回,RCTの二次解析にはなりますが,敗血症性ARDS症例におけるスタチンを検討したSAILS trialのデータを用いてICUせん妄をスタチンが抑制するかを検討した報告がLancet Respiratory Medicineに報告されました.結果は見事なまでにネガティブ.集中治療領域でいろいろ期待されてきたスタチンですが,ARDSでむしろ予後が悪化した報告を見たあたりからかなり懐疑的です.おそらく重症急性炎症病態で脂質系に影響を与えるのはよくないのではと思います.
敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者におけるICUでのせん妄と認知機能障害遷延におけるロスバスタチンvsプラセボ
Needham DM, Colantuoni E, Dinglas VD, et al. Rosuvastatin versus placebo for delirium in intensive care and subsequent cognitive impairment in patients with sepsis-associated acute respiratory distress syndrome: an ancillary study to a randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2016 Jan 28 [Epub ahead of print]
PMID:26832963

Abstract
【背 景】
せん妄は人工呼吸患者においてよく見られ,退院後少なくとも1年の認知機能障害と関連している.臨床前観察研究においてはICUにおけるスタチンの使用はせん妄を減少させる可能性が示唆された.我々はスタチンの多面的な効果がICUにおけるせん妄を減少させ,認知機能障害遷延を減少させるかについて無作為化比較試験で評価した.

【方 法】
我々は,敗血症性急性呼吸窮迫症候群患者におけるロスバスタチンvsプラセボの死亡率と人工呼吸器非装着日数を評価した無作為化比較試験であるSAILS trialにおいて本補助的研究を行った.本研究は米国の35病院で行われた.患者は8例のブロック無作為化で割り付けられ,ロスバスタチン(40mgローディングを行い,ICU退室後3日間または試験開始から28日後または死亡まで20mg/日)またはプラセボに病院ごとに割り付けた.患者と研究者は治療割り付けを盲検化された.せん妄はConfusion Assessment Method for intensive care(CAM-ICU)で評価した.認知機能は実行機能,言語,口頭推論と概念形成,動作,迅速性,記憶遅延のテストで評価した.認知機能障害はこれらの項目の1つが正常集団の少なくとも2SD以下または2つが1.5SD以下である場合と定義した.主要評価項目はintention-to-treat集団における28日までのICUにおける毎日のせん妄状態,副次評価項目は6ヵ月および12ヵ月の認知機能とした.本試験はClinicalTrials.govに登録した(NCT00979121 and NCT00719446).

【結 果】
272例の患者がICUにおける毎日のせん妄を評価された.せん妄の日数の平均比率は,ロスバスタチン群で34%(SD 30%),プラセボ群は36%(29%),HR 1.14, 95%CI 0.92-1.41, p=0.22であった.6カ月時点では,ロスバスタチン群で53例中19例(36%),プラセボ群で77例中29例(38%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 0.93, 95%CI 0.39-2.22; p=0.87).12カ月時点では,ロスバスタチン群で67例中20例(30%),プラセボ群で81例中23例(28%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 1.1, 95%CI 0.5-2.6; p=0.87).

【結 論】
ほとんどの患者はせん妄を有し,生存者の1/3が1年以上の追跡で認知機能障害を有していた.前臨床試験および観察研究は好ましい結果であったにもかかわらず,本試験は,優位性の検出には不十分ではあるが,ICUにおけるせん妄あるいは12ヵ月の追跡における認知機能障害を減少させる上でロスバスタチンの有益性は何ら示されなかった.よって,本集団でよく観察されたICUおよびICU後の認知機能障害を減じる目的での介入の評価が引き続き必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-09 18:55 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症性ショックをはじめとする循環不全に対する輸液反応性の指標として受動的下肢挙上(PLR:Passive Leg Raising)を検討した研究のメタ解析がでましたので紹介します.PLRは当院でもカスタマイズEGDTプロトコルに組み込んでいます.今回のメタ解析では,心拍出量増加で見た反応性はかなりの高精度ですが,血圧増加でみるのはあまりあてにはならないようです(特異度が比較的高いので,PLRで血圧が上がれば反応性ありと見てもいいとは思いますが).少なくともEV1000やPiCCOなどといった特殊デバイスがない施設では非侵襲的かつ簡便に行えるものとして推奨されるのではないでしょうか.今回はレビューもつけました.
輸液反応性予測における受動的下肢挙上:システマティックレビューおよびメタ解析
Monnet X, Marik P, Teboul JL. Passive leg raising for predicting fluid responsiveness: a systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2016 Jan 29. [Epub ahead of print]
PMID:26825952

Abstract
【目 的】
成人の輸液反応性予測因子としての,受動的下肢挙上(PLR)による心拍出量(CO)と動脈血圧(PP)の変化を検討した研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った.

【方 法】
関連する原著論文およびレビュー論文をMEDLINE,EMBASE,Cochrane Databaseでスクリーニングした.COおよびPPを評価したROC曲線下面積,感度,特異度,PLRテストの閾値を統合してメタ解析を行った.

【結 果】
21研究(成人患者991例,輸液チャレンジ995例)を登録した.COは,6研究で心臓超音波検査で,6研究で較正脈波輪郭分析で,4研究でバイオリアクタンスで,3研究で経食道ドップラーで,1研究で経肺熱希釈法または肺動脈カテーテルで,1研究で胸骨ドップラーで計測された.PLRと輸液負荷間でのCOの変化の統合相関は0.76(0.73-0.80)であった.PLRによるCOの変化は,統合感度0.85(0.81-0.88),統合特異度0.91(0.88-0.93)であった.ROC曲線下面積は0.95±0.01であった.PLRによるCO変化の最良閾値は≧10±2%であった.PPのPLRによる変化においては(8研究,輸液チャレンジ432例),統合感度は0.56(0.49-0.53),統合特異度は0.83(0.77-0.88),統合ROC曲線下面積は0.77±0.05であった.感度分析およびサブグループ解析は一次解析と一致していた.

【結 論】
急性循環不全の成人において,PLRによるCOの変化は,容量負荷によるCOの反応性を非常に正確に予測する.PLRによるPPの変化の効果を評価すると,PLRテストの特異度は許容できるが,感度は乏しかった.
1.CVP計測の衰退

■Riversらが敗血症性ショックに対するEGDTの有効性をthe New England Journal of Medicineに報告[1]してから十数年,Surviving Sepsis Campaign GuidelinesでRivers’ EGDTが推奨され続けてきたが,その後3つの大規模RCTであるProCESS[2],ARISE[3],ProMISe[4]が相次いで報告され,Rivers' EGDTは集中治療医による標準ケアと同等という結果であった.この結果の解釈は様々であり,一概にRivers' EGDTを否定できるものではないが,EGDTを構成する各種モニタリングを再考する時期にきているとも言える.

■敗血症性ショック治療において急速輸液負荷が必要であることは疑う余地はない.しかしながら,どの程度の量を入れたらよいのかについては未解決の課題であり,現時点で至適投与量の目安は確立されていない.このため,実臨床においては輸液過剰も起こりうる.近年,敗血症性ショック治療に伴う過剰輸液が予後を悪化させる可能性が指摘されており[5,6],Kelmら[6]は,第1病日で,患者の67%に過剰輸液がみられ,48%が第3病日まで輸液過剰が遷延したと報告している.

■輸液反応性の指標については,Rivers' EGDTにも組み込まれている中心静脈圧(CVP)が半世紀にわたって使用されてきたが,近年はその有用性を否定する研究が相次いでいる.Marikら[7]は,CVPの輸液反応性を検討した研究43報のメタ解析を行っており,ROC曲線下面積は0.56[95%CI 0.54-0.58]という結果であり,以前にMarikが揶揄した通り,CVPを指標とするのはまさに「コイントスで決めるのと同じ」という結果であった.もっとも,各種の研究の詳細を紐解けば,CVPが使用できる状況はまだあると思われるが,少なくともCVP単独で判断することは危険かもしれない.

2.Frank-Starling曲線の理論とPassive Leg Raising test

■敗血症性ショック病態に伴う末梢循環不全による虚血が生じている場合,その部位への血液灌流と酸素運搬を要する.酸素運搬量(DO2)の規定因子は,ヘモグロビン濃度(Hb),血中酸素濃度(PaO2),そして心拍出量(CO)である.そしてこの心拍出量の構成要素は心拍数,前負荷,後負荷,交感神経,心収縮性である.一回心拍出量は心室拡張末期容積に依存しており,これは静脈環流によって決定される.この拡張末期容積に相当するものが前負荷であるが,Frank-Starling曲線の理論に基づくならば,前負荷の増加に応じて一回心拍出量が増加する.また前負荷がある一定レベルを超えるとむしろ一回拍出量は減少することも知られている.よって,一回心拍出量の増大が得られる前負荷の上限が輸液量の目安となってくる.

■前述のCVPは,確かに敗血症性ショック病態においては低下しやすい.しかし,CVPは交感神経系と心機能の影響を容易に受けうるものであることに注意が必要であり,交感神経興奮が続くと循環系の中心化が生じ,低下したCVPが上昇することがある.このため,CVPが目安になったとしてもそれはショックの初期の段階のみであるとする報告が複数ある.

■Frank-Starling曲線の理論に基づくならば,輸液反応性を見るための最良の方法は実際に輸液して前負荷をかけることであるが,当然ながらこれは過剰輸液リスクに曝される.体液総量を増加させずにあたかも急速輸液負荷をしたかのような効果を見ることができれば輸液反応性を安全に見ることができるといえる.

■そこで,輸液反応性の指標として多数報告されているのが受動的下肢挙上(PLR:Passive Leg Raising)を用いた試験である.一般的に下肢を挙上することでおよそ150-200mLの輸液負荷に相当することが古くから知られており[8],PLRはその応用である.PLRの方法は,45度ヘッドアップの状態からスタートし,その後頭部フラット+45度下肢挙上状態にすることで心拍出量や血圧が増加するかどうかを評価するものであり[9],この手法では300-500mLの輸液ボーラス投与に相当するとされる.これいより心拍出量増大をもって輸液反応性ありと判定することは実に理にかなっているものと思われる.上記のメタ解析において血圧においては感度が低かった理由は,血圧の規定因子が心拍出量と末梢血管抵抗の2つであることを考慮すると,ノルアドレナリン等で十分な末梢血管抵抗増大が得られていない患者をincludeすることにより輸液反応性判定の感度が下がることは容易に想像できる.
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■このPLRのメリットは非侵襲的(新たにカテーテル挿入が不要)であり再現性が高いことにある.また,人工呼吸器患者と自発呼吸患者では下大静脈等の圧モニタリングが異なる,カテーテルを用いたモニタリングでは心房細動等の不整脈患者では使用できないなどの問題点があるが,Cavallaroら[10]の9報メタ解析では,PLR testでは自発呼吸か人工呼吸器装着,洞調律か不整脈かで差がないことも大きなメリットといえる.

■Xiao-Tingら[11]は,ICUで人工呼吸器を装着している敗血症性ショック患者48例においてPLR testとETCO2(呼気終末炭酸ガス濃度)を用いて輸液反応性を前向きに検討している.この検討では,PLR testによって輸液反応性があると予測された患者では反応性がないと判定された患者よりもETCO2が有意に増加しており(3.0±3.0 vs 0.5±2.5mmHg; p<0.05),PLR testによるETCO2の5%以上の増加は輸液反応性を感度93.4%,特異度75.8%,AUROC 0.849(95%CI 0.739-0.930)で予測するとしている.

■現時点では敗血症性ショックに対してPLR testを用いたプロトコルを検討したRCTは報告されていないため,PLR testによるeffect sizeを知ることはできない.しかし,これまでの観察研究やそのメタ解析結果から,心拍出量増大を目安とした場合の輸液反応性を高精度に予測し,かつ非侵襲的で簡便に行えるものとしてPLR testは今後積極的に検証されるべき手法であると思われる.

[1] Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 2001; 345: 1368-77
[2] ProCESS Investigators; Yealy DM, Kellum JA, Huang DT, et al. A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med 2014; 370: 1683-93
[3] ARISE Investigators; ANZICS Clinical Trials Group; Peake SL, Delaney A, Bailey M, et al. Goal-directed resuscitation for patients with early septic shock. N Engl J Med 2014; 371: 1496-506
[4] Mouncey PR, Osborn TM, Power GS, et al; ProMISe Trial Investigators. Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock. N Engl J Med 2015; 372: 1301-11
[5] Boyd JH, Forbes J, Nakada TA, et al. Fluid resuscitation in septic shock: a positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality. Crit Care Med 2011; 39: 259-65
[6] Kelm DJ, Perrin JT, Cartin-Ceba R, et al. Fluid Overload in Patients with Severe Sepsis and Septic Shock Treated with Early-Goal Directed Therapy is Associated with Increased Acute Need for Fluid-Related Medical Interventions and Hospital Death. Shock 2015; 43: 68-73
[7] Marik PE, Cavallazzi R. Does the central venous pressure predict fluid responsiveness? An updated meta-analysis and a plea for some common sense. Crit Care Med 2013; 41: 1774-81
[8] Rutlen DL, Wackers FJ, Zaret BL. Radionuclide assessment of peripheral intravascular capacity: a technique to measure intravascular volume changes in the capacitance circulation in man. Circulation 1981; 64: 146-52
[9] Thiel SW1, Kollef MH, Isakow W. Non-invasive stroke volume measurement and passive leg raising predict volume responsiveness in medical ICU patients: an observational cohort study. Crit Care 2009; 13: R111
[10] Cavallaro F, Sandroni C, Marano C, et al. Diagnostic accuracy of passive leg raising for prediction of fluid responsiveness in adults: systematic review and meta-analysis of clinical studies. Intensive Care Med 2010; 36: 1475-83
[11] Xiao-Ting W, Hua Z, Da-Wei L, et al. Changes in end-tidal CO2 could predict fluid responsiveness in the passive leg raising test but not in the mini-fluid challenge test: A prospective and observational study. J Crit Care 2015 Jun 1 [Epub ahead of print]
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by DrMagicianEARL | 2016-02-04 18:51 | 敗血症 | Comments(0)
■発熱があると解熱薬でついつい下げたくなってしまう医療従事者は多いと思いますが,その弊害も近年知られるようになってきています.多施設共同コホート研究のFACE studyでは,敗血症患者において発熱が予後に影響しないが,解熱薬使用は予後を悪化させるとする報告が出て話題となりました.

■敗血症患者では高体温よりも低体温の方が予後が悪いことも既にいくつもの観察研究で示されており,重症感染症における解熱薬使用はあまりよくないのではないか?ととらえられるようになってきています.私自身,ICUで発熱を呈した敗血症患者に対しては,発熱による患者自身の不快感がかなり強くクーリングで解決しないとき,人工呼吸器装着中でFiO2 1.0でも酸素化が得られにくいとき,CO2貯留が過剰となりすぎているとき,高熱で中枢神経症状がでるとき,といった場合を除けば解熱薬は基本的に使用しません.

■今回,感染症が疑われたICU患者に対するアセトアミノフェンの効果を見たANZICSのRCTであるHEAT trialが報告されましたので,以下に紹介するとともに簡単なレビューをつけました.結果はアウトカムに影響なし,ということでルーチンでアセトアミノフェンを使用する必要性はないという推奨になるでしょうか.もっとも,この研究はあくまでもICU入室患者が感染症に罹患した場合であって,敗血症患者ではありませんから,敗血症と解熱薬に関してはまた別に評価が必要と思われます.(このあたりはよく混同されますが,感染症が原因でICUに入室した患者と,ICU入室中に感染症を発症した患者では重症度が異なります.当然後者の方が感染症の重症度は低いことがほとんどなのですが,これを全く同等と扱ってエビデンスを述べるとおかしなことになってきます).
感染症が疑われた重症患者の発熱に対するアセトアミノフェン(HEAT trial)
Young P, Saxena M, Bellomo R, et al; for the HEAT Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group. Acetaminophen for Fever in Critically Ill Patients with Suspected Infection. N Engl J Med 2015, October 5 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
アセトアミノフェンは,感染症が疑われた集中治療室(ICU)の患者の発熱に対する一般的な治療であるが,その効果は知られていない.

【方 法】
我々は,発熱(体温≧38℃)かつ感染症あるいはその疑いのあるICU患者700例を,ICU退室,解熱,抗菌薬治療中止あるいは死亡となるまで,6時間ごとにアセトアミノフェン1g静脈内投与を受ける群とプラセボ群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,無作為化から28日までのICUに在室しない日数(生存かつ集中治療の必要性がない日数)とした.

【結 果】
28日時点でICUに在室しない日数はアセトアミノフェン群とプラセボ群とで有意差がなく,アセトアミノフェン群で23日間(四分位範囲13-25),プラセボ群で22日間(四分位範囲12-25)であった(Hodges–Lehmann推定絶対差 0日間; 96.2%CI 0-1; p=0.07).アセトアミノフェン群で345例中55例が,プラセボ群で344例中16.6%が90日までに死亡した(RR 0.96; 95%CI 0.66-1.39; p=0.84).

【結 論】
感染症疑いによる発熱の治療のためのアセトアミノフェンの早期導入はICUに在室しない日数に影響を与えなかった.
1.ICU患者の発熱

■発熱は集中治療を要する重症患者に頻繁に生じる症状の1つであり[1],集中治療患者の20-70%に発熱が生じることが知られている[2-4].発熱を契機に新たな診察,検査,治療が開始されることは稀ではない[5].また,発熱は,手術,輸血,薬剤,急性拒絶など感染症以外の要因でも生じる.

■SIRSにおける体温上昇は,脳血液関門(BBB)がない視床下部に炎症性メディエータ受容体が発現しており,誘導型シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の転写段階からの産生亢進によるプロスタグランディンE2(PGE2)の産生により発熱反応が誘導される[6]

■発熱は,患者不快感,呼吸需要および心筋酸素需要の増大[7],中枢神経障害[8,9]などを生じるため,これらの改善を期待して,外表冷却や解熱薬による解熱処置が行われる[10]

■感染症による体温上昇は,抗体産生増加,T細胞活性化,サイトカイン合成,好中球およびマクロファージの活性化等の免疫系を惹起させる自己防衛反応であり[11,12],解熱処置によりこれらの防衛反応が抑制されてしまう可能性もある.また,解熱薬には胃腸障害,肝障害,腎障害などの副作用もある[13]

■重症度など患者情報を調整した多変量解析を行った上で,発熱と患者死亡率増加との関連性を示した報告が存在する[1,14].しかし,これらの結果は全て発熱と患者死亡率との関係を調査した観察研究から得られたものであり,あくまでも前後関係であって,その因果関係を結論付けることはできない.敗血症患者においては,発熱は予後に影響せず,その一方で低体温が予後を悪化させるとする報告が複数ある[15-18]

2.ICU患者への解熱薬

■発熱と患者死亡の関係を観察した研究は多数あるが,この中に解熱処置を含めての研究はこれまでほとんどない.また,解熱治療の有効性を評価したRCTは3つ[19-21]ある.2つはクーリングの効果をみており[19,20],クーリング施行群が死亡率が低い傾向[19]もしくは有意に低い[20]であった.もう1つはアセトアミノフェン+クーリング評価をみたもので[21],死亡率は積極的解熱群16%,非解熱群2.6%と有意に積極的解熱群の死亡率が高かった.

■RCTではないが,日韓共同のFACE study(Fever and Antipyretic in Critical ill Evaluation study)という研究がある[22].本研究の目的は,①ICU患者の発熱発生頻度・解熱処置の施行頻度とそれに伴うコスト,②ICU患者の発熱が患者予後に与える影響,③ICU患者に対する解熱処置が患者予後に与える影響,を調べることである.対象患者は2009年9月1日から11月30日までに登録された25施設の48時間以上ICUに滞在する脳損傷の疑いのない成人患者1425例であり,基礎疾患が敗血症の場合,発熱自体は予後に影響しないが,解熱剤(NSAIDsおよびアセトアミノフェン)の投与は28日死亡率悪化の独立因子であった(NSAIds補正OR 2.61, p=0.028,アセトアミノフェン補正OR 2.05, p=0.01).なお,非感染症での発熱は39.5℃以上で予後が悪化する(補正OR 8.14. p=0.01).現在,この関連性を実証するためにFACE II studyが進行中である.なお,FACE studyにおいてクーリング処置は施行されていない.

■ただし,合併症しだいでは感染症の発熱に対して例外的に解熱薬を使用すべき状況があるかもしれない.重度の呼吸不全患者においては体温が1℃上昇すると体内酸素消費量が13%増加するため,呼吸不全や心筋虚血の悪化を招く恐れがあるため,とりわけFiO2がかなり高用量となっているケースでは解熱薬をオプションとして考えてもいいのではないかと思われる.また,中枢神経系においても,体温管理の重要性は周知されており,解熱薬が有効な発熱であれば使用を考慮してもよいと思われる(逆に言えば熱中症での解熱薬は使用すべきではない).

■以上と今回のHEAT trialの報告を以下にまとめる.
・感染症(敗血症)における発熱は予後を悪化させうるものではない.
・感染症患者の発熱に対する解熱薬が予後を改善するエビデンスはなく,ICU患者が感染症疑いによる発熱を呈してもルーチンで解熱薬を使用することは推奨されない.
・敗血症などの重症感染症の発熱においては解熱薬が予後を悪化させうる懸念があるため,特定の状況(中枢神経症状,呼吸不全,心筋虚血病態などの合併)を除いては原則として推奨されるものではない.


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by DrMagicianEARL | 2015-10-06 15:12 | 敗血症 | Comments(0)
■ICU患者における肥満パラドックス(BMIが高い方が死亡率が低い)は有名ですが,今回紹介する論文は飲酒パラドックスとも言うべきもので,お酒をよく飲む私としても朗報?もっとも,評価されているのは死亡率であって,飲酒患者の方が重症疾患に罹患しやすい可能性が否定されたわけではありません.また,日本で言うDPCデータのようなデータベースを用いていますから,重症度などがちゃんと加味できませんので注意が必要ではあります.

■一応,アルコールが臓器虚血再灌流傷害を抑制するという動物実験はあるようですので,何の因果関係もない偶然,とは言えないようです.ちなみに余談ですが,先日神戸で開催された第30回日本救命医療学会において,外傷患者に発生した難治性重症ARDSに対してエチルアルコールによる肺胞洗浄を行ったところ劇的に改善したという1例報告があり話題になりました.実際にこれまでアルコールのネブライザー吸入を行った経験があるという先生も複数おられ,特に検証もなされずにいつの間にか消え去ってしまった治療法のようです.動物実験されませんかね?
重症疾患における血中アルコール濃度と死亡の関連性
Stehman CR, Moromizato T, Caitlin K. McKane CK, et al. Association between Blood Alcohol Concentration and Mortality in Critical Illness. J Crit Care 2015 Sep.2 [Epub ahead of print]

Abstract
【目 的】
腎,肝,心,脳の虚血の動物モデルにおいて,アルコール曝露は虚血再灌流傷害を減少させることが示されている.外傷患者の院内死亡は,入院時の血中アルコール濃度に対して用量依存的に減少することが示されている.本研究において,我々は,重症患者における入院時血中アルコール濃度(BAC)と30日死亡リスクの関連性について検討した.

【方 法】
我々はボストン,マサチューセッツの内科および外科ICUにおいて治療を受ける患者での2施設共同観察研究を行った.研究の場はボストンおよびマサチューセッツの2つの教育病院の209の内科および外科ICU病床とした.1997年から2007年まで集中治療を受けた18歳以上の11850例の患者を対象とした.曝露対象は,入院から24時間以内にBACが測定された患者とし,BAC<10mg/dL(検出レベル未満),10-80mg/dL,80-160mg/dL,>160mg/dLに分類した.主要評価項目は集中治療開始から30日間での全死亡とした.副次評価項目は集中治療開始から90日および365日死亡とした.死亡率は米国社会保障庁死亡マスターファイルを用いて決定し,365日間の追跡が全コホート患者で存在した.調整後オッズ比は,BACと死亡の両方に相互作用すると考えられた共変量を含んだ多変量ロジスティック回帰モデルにより推定した.調整因子は,年齢,性別,人種(白人,非白人),領域(外科,内科),Deyo-Charlson指数,敗血症,急性臓器不全,外傷,慢性肝疾患とした.

【結 果】
コホートの30日死亡率は13.7%であった.BAC<10mg/dLの患者と比較して,≧10mg/dLの患者は30日死亡リスクが低く,BAC 10-79.9mg/dLではOR 0.53(95%CI 0.40-0.70),BAC 80-159.9mg/dLではOR 0.36(95%CI 0.26-0.49),BAC≧160mg/dLではOR 0.35(95%CI 0.27-0.44)であった.多変量で調整すると,30日死亡リスクはそれぞれ0.97(0.72-1.31),0.79(0.57-1.10),0.69(0.54-0.90)であった.敗血症を評価対象としてコホートの解析を行うと,BAC<10 mg/dLと比較したBAC 80-160mg/dLまたは>160 mg/dLの患者の敗血症の多変量調整オッズはそれぞれ0.72(0.50-1.04),0.68(0.51-0.90)であった.血液培養を採取したサブグループ集団(n=4065)において,BAC<10 mg/dLと比較したBAC 80-160mg/dLまたは>160 mg/dLの患者の血流感染の多変量調整オッズはそれぞれ0.53(0.27-1.01),0.49(0.29-0.83)であった.

【結 論】
11850例の成人患者の解析では,入院時の検出可能なBACは集中治療開始から30日死亡のオッズの有意な減少に関連していた.さらに,BAC>160mg/dLは敗血症や血流感染への進展のオッズの有意な減少に関連していた.

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by DrMagicianEARL | 2015-09-15 16:12 | 敗血症 | Comments(0)
■PK/PD理論から時間依存性抗菌薬では間歇投与よりも長時間or持続投与の方がいいだろう,ということで多数の研究が行われていてRCTも複数あります.今回重症敗血症において持続投与が有効かどうかを検討したANZICSのRCTが報告されたので紹介します.重症敗血症を対象としたものでは最大規模です.また,現在別の多施設共同RCT(BLISS study)を行っています.
重症敗血症におけるβラクタムの持続的投与vs間歇的投与の多施設共同無作為化試験(BLINGⅡstudy)
Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. A Multicenter Randomized Trial of Continuous versus Intermittent β-Lactam Infusion in Severe Sepsis. Am J Respir Crit Care Med. 2015 Jul 22. [Epub ahead of print]
PMID:26200166

Abstract
【背 景】
βラクタム系抗菌薬の持続静注は間歇的投与に比して,時間依存性抗菌活性により予後を改善する可能性がある.

【目 的】
重症敗血症患者において持続投与と間歇投与の効果を検討する.

【方 法】
25のICUにおいて無作為化比較試験を行った.ピペラシリン-タゾバクタム,チカルシリン-クラブラン酸,メロペネムの投与を開始された患者を,治療コースが終わるかICU退室まで,持続投与か30分間の間歇投与かを無作為に割り付けられた.主要評価項目は28日時点での生存ICU非入室日数とした.副次評価項目は,90日生存,抗菌薬中断後14日間の臨床的治癒,14日時点での臓器不全のない生存日数,菌血症の期間とした.

【結 果】
年齢中央値64歳で,APACHEⅡスコア中央値20の患者432例を登録した.ICU非入室日数は,持続投与群18日間(IQR 2-24),間歇投与群20日間(IQR 3-24)で有意差は見られなかった.90日生存は,74.3%(156/210)vs 72.5%(158/218); HR 0.91(95%CI 0.63-1.31, p=0.61)で有意差はみられなかった.臨床的治癒は52.4%(111/212)vs 49.5%(109/220); OR 1.12 (95%CI 0.77-1.63, p=0.56)であった.臓器不全のない日数(6日間, p=0.24),菌血症の日数に有意差は見られなかった(0日間,p=0.24).

【結 論】
重症敗血症を伴う重症患者において,βラクタム系抗菌薬の持続投与,間歇投与において予後に差はみられなかった.
■時間依存性の抗菌薬はPK/PD理論から,時間依存性抗菌薬の投与時間を延ばし,TAM(Time Above MIC)を増やせば治療効果が増すのではないか,という仮説が生まれた.ここからさらに派生して,バッグに1日分の抗菌薬を詰めて,24時間持続点滴をする方がPK/PD的には理にかなっている,という発想も生まれた.抗菌薬の持続投与は,間欠的な投与に比べて少ない投与量で同等の血中濃度とTAMを獲得するため,理論上では持続点滴の方が間欠的投与に比べると有利である.

■ただし,抗菌薬のクリアランスには個人差があり,必ずしも個々の患者で期待されるような薬物動態を示すという保証はない.また,24時間容器に入れた抗菌薬の安全性も問題である.実際,PCGに関しては,特に高温環境下では失活しやすい特徴をもっており,通常よりも長時間点滴バッグの中に入れたままの抗菌薬が失活するおそれもある.

■また,PK/PD理論には問題点もあることが指摘されている[1].①血中濃度は蛋白に結合したものも含む全濃度を使用するのか遊離した薬剤濃度を使用するのか,②PKのパラメータは血中でのパラメータでよいのか,③PDパラメータとしてMICを用いているが,MBCやMPCとの関係はどうなのか,である.また,PK/PD理論に基づく投与法と有効性についての報告がされるようになっているが,副作用,耐性菌の出現との関連性についてはほとんどない.

■加えて重症敗血症の病態では,クリアランスや分布容積が治療経過中にめまぐるしく変化することも予想され,理論通りにはいかない可能性もある.このため,持続投与による抗菌薬濃度が不十分となったり過剰となったりするリスクもある.

■これまでの報告では,持続投与は間欠投与に比して同等もしくは優位であるとする結果が多いが,敗血症のような重症病態でない限りはそこまで効果に差はないようであることから,少なくとも非重症例においてはわざわざ持続投与を行う必要性は低いと思われる.Falagasら[2]による最新(2013年)のメタ解析(敗血症以外も含む)では,14報が登録され,カルバペネム系抗菌薬またはTAZ/PIPCの持続投与は死亡リスクを41%有意にする(RR 0.59; 95%CI, 0.41-0.83)と報告しているが,登録された報告のうちRCTはわずか3報であった.

■PubMedを用いて,以下の検索式で文献検索を行ったところ,253文献がhitした.これらを通読し,敗血症患者を対象とし,ハードアウトカムをメインに報告しているRCTは,上に紹介したRCT以外では2報[3,4]であった.
(("sepsis"[MeSH Terms] OR "sepsis"[All Fields]) OR ("shock, septic"[MeSH Terms] OR ("shock"[All Fields] AND "septic"[All Fields]) OR "septic shock"[All Fields] OR ("septic"[All Fields] AND "shock"[All Fields]))) AND (extended[All Fields] OR prolonged[All Fields] OR continuous[All Fields] OR discontinuous[All Fields] OR intermittent[All Fields] OR short[All Fields] OR bolus[All Fields]) AND (("anti-infective agents"[Pharmacological Action] OR "anti-infective agents"[MeSH Terms] OR ("anti-infective"[All Fields] AND "agents"[All Fields]) OR "anti-infective agents"[All Fields] OR "antimicrobial"[All Fields]) OR ("anti-bacterial agents"[Pharmacological Action] OR "anti-bacterial agents"[MeSH Terms] OR ("anti-bacterial"[All Fields] AND "agents"[All Fields]) OR "anti-bacterial agents"[All Fields] OR "antibiotics"[All Fields]) OR "anti-bacterial agents"[All Fields] OR "anti-infective agents"[All Fields] OR "antifungal agents"[All Fields] OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactams"[All Fields]) OR "beta lactams"[All Fields]) OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactam"[All Fields]) OR "beta lactam"[All Fields]) OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactams"[All Fields]) OR "beta lactams"[All Fields]) OR "beta Lactam"[All Fields] OR "beta Lactams"[All Fields] OR "beta lactams"[All Fields] OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactam"[All Fields]) OR "beta lactam"[All Fields]) OR "beta lactam"[All Fields]) AND randomized controlled trial[ptyp]
■Roberts[3]らは,敗血症患者57例を対象として,CTRX 2gを1日1回ボーラス投与する群と24時間持続投与する群に割り付けたオープンラベルRCTを行った.臨床的治癒率(持続投与群13/29 vs 5/28ボーラス群; 調整後OR 3.74; 95%CI 1.11-12.57; p=0.06),細菌学的治癒率(18/29 vs 14/28; 調整後OR 1.64; 95%CI 0.57-4.70; p=0.52)に統計学的有意差はみられなかったが,ロジスティック回帰解析では,持続投与(OR 22.8; 95%CI 2.24-232.3; p=0.008)とAPACHEⅡスコア(調整後OR 0.70; 95%CI 0.54-0.91; p=0.008)が良好な臨床アウトカムの関連因子であった.死亡率(3/29 vs 0/28; p=0.52)に有意差はみられなかった.

■Dulhuntyら[4]は,豪州および香港の5施設において,重症敗血症患者60例において,TAZ/PIPC,MEPM,CVA/ticarcillinを持続投与群とボーラス間欠投与群に割り付けた二重盲検RCTを行った.抗菌薬濃度がMICを超えていた時間の占める率は,持続投与群で82%,間欠投与群で29%(p=0.001)であった.臨床的治癒率は持続投与群で有意に高かったが(70% vs 43%, p=0.037),ICU-free days(19.5 vs 17, p=0.14),院内生存率(90% vs 80%, p=0.47)に有意差はみられなかった.

■上に紹介したRCTとこれら2つのRCTの計3報を統合したRでのメタ解析結果は以下の通りである.random effects modelでは死亡をアウトカムとして22.3% vs 23.9%; OR 0.90, 95%CI 0.39-2.03; I(2)=28.3%であり,αエラー0.05,検出力0.80で計算すると有意差を得るための必要サンプル数は21818例であった.
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■臨床的治癒をアウトカムとすると,53.5% vs 43.7%; OR 2.02, 95%CI 0.86-4.76; I(2)=66.2%であり,αエラー0.05,検出力0.80で計算すると有意差を得るための必要サンプル数は1332例であった.
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■以上から,敗血症においては,抗菌薬持続投与は死亡率に影響を与えるほどの有効性はない.臨床的治癒率を改善する可能性は,傾向としてはあるかもしれず,これをもって持続投与を行うのもいいかもしれないが,臨床的にはそれほどの有益性がある治療方法とは言いがたく,強い推奨をもって選択すべき治療ではないと思われる.

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[4] Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Continuous infusion of beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Clin Infect Dis 2013; 56: 236-44
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by DrMagicianEARL | 2015-08-05 20:53 | 敗血症 | Comments(0)
※恐縮ですが今回は宣伝です.

エキスパートナース8月号が出版されました.今回は東海大学救急の井上茂亮先生編集の特集「急変になる前に病棟で見抜きたい!敗血症の気づき方」が掲載されており,わたくしも執筆させていただきました.

ICUナースのみならず一般病棟・ER/外来ナース向けでもあります.敗血症を早期に察知することが早期治療と重症化予防につながります.敗血症の正しい知識と評価を覚えてください.
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Contents
1.イントロダクション:病棟で気づきたい「敗血症」
井上 茂亮先生(東海大学医学部外科学系救命救急医学准教授/東海大学医学部付属八王子病院救急センター長)

2.‟「敗血症」って何?”を解消!基礎知識
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

3.「敗血症」、どんな患者さんに注意すべき?
川崎 達也先生(静岡県立こども病院小児集中治療科小児集中治療センター長)

4.どのように「敗血症」と気づく?疑ったらどうする?
石﨑 清華先生(東海大学八王子病院救急センター救急看護認定看護師)

5.「敗血症」の治療は?
近藤 豊先生(琉球大学大学院医学研究科救急医学講座講師/琉球大学医学部附属病院救急部副部長)

6.敗血症で注意したい!「多臓器障害」とその対応
木下 喬弘先生(大阪府立急性期・総合医療センター高度救命救急センター)
松浦 暁子先生(大阪府立急性期・総合医療センター救急看護認定看護師)
山川 一馬先生(大阪府立急性期・総合医療センター高度救命救急センター/ハーバード大学ブリガム・ウイメンズ病院外科免疫学教室)

7.いち早く知りたい!「敗血症」のトピックス
松嶋 麻子先生(大阪府立急性期・総合医療センター救急診療科副部長)

ここからは裏話になりますが,私自身はこれまでナース向けにこういった特集記事を書いたことがなく,どうやって一般病棟ナースに分かりやすく書くか苦労しました.私が任されたのは敗血症がどのような病態でありどのような臨床経過をたどるか,についてで,脱稿する前に当院ICUのナース3人に査読してもらったところ,3人全員から「内容が難しすぎる」とのお叱りを受けました.

ちなみに具体的な当院ナースからの原稿完成前の査読コメントは以下の通り
「ただでさえ敗血症のケアがメインでない一般病棟ナース向けの原稿なんだから,難しい英語名称使ったらたぶん読む気なくす」
「聞いたこともない英語名称がでてきたらもう一度戻って読み直したりを繰り返して何が何だか分からなくなる」
すいませんすいません書き直します・・・ということでいろいろ手直ししたのが今回の内容です.

だいぶくずして書いたつもりですが,それでも聞きなれない用語などがあると思いますが,そこはイメージでとらえてください.幸い,私の説明を編集部が分かりやすくイラストにしてくださってますので,文字だけよりはだいぶ理解しやすくなったと思います.

ちなみに顔写真は当直明けのスマホ自撮りの顔です.
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by DrMagicianEARL | 2015-07-22 13:15 | 敗血症 | Comments(0)

by DrMagicianEARL