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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

カテゴリ:敗血症( 138 )

■敗血症患者では免疫抑制が生じることが知られていて,ICUで治療中に二次感染が生じやすくなります.ではその二次感染はどの程度死亡リスク上昇に関与しているのかについて検討した報告がJAMA誌にでました.その上昇リスクは絶対差で2%とわずかという結果でした.過去にも「ICU死亡のうちVAPが関与しているのは1.5%に過ぎない」という報告があり(Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 1133-9),ICU関連感染症自体の重症度はそれほどたいしたことはないのかもしれません.このあたりは重症度評価をきっちりはかる必要があります.

■ただし,この結果は二次感染を許容するものでは当然ありません.せん妄リスクや,入院日数・人工呼吸器装着期間,コストへの影響は大きい可能性がありますし,そのぶんだけPICSのリスクも増す可能性があります.
敗血症でICU入室後の二次感染の発生率,危険因子,死亡への寄与
van Vught LA, Klein Klouwenberg PM, Spitoni C, et al; MARS Consortium. Incidence, Risk Factors, and Attributable Mortality of Secondary Infections in the Intensive Care Unit After Admission for Sepsis. JAMA 2016 Mar 15 [Epub ahead of print]
PMID:26975785

Abstract
【背 景】
敗血症では,晩期死亡に関連した二次感染リスク増加を引き起こす免疫抑制が惹起されると考えられている.

【目 的】
敗血症のある,もしくはないICUに入室においてICU関連感染症の臨床的および宿主遺伝的な特性,発生率,死亡への寄与について検討する.

【方 法】
入室時診断(敗血症または非感染症)に応じた層別化を行った,2011年1月から2013年7月までのオランダの2つのICUにおいて48時間以上の連続的入院患者を登録した前向き観察研究である.主要評価項目はICU関連感染症(48時間超での発症)とした.寄与死亡リスク(感染に起因する危険因子の排除によって予防することができた死亡の割合)は,競合リスクを計算する時間事象モデルを用いて検討した.敗血症による入院のサブセット(461例)において,血液遺伝子発現(白血球における全遺伝子トランスクリプトーム)はベースラインとICU関連感染症(19例)と非感染(9例)事象の発症時に解析した.

【結 果】
主要コホートは1719例の敗血症入院を含んでいた(1504患者; 年齢中央値62歳; 四分位範囲[IQR] 51-71歳; 924例は男性(61.4%)).比較コホートは,最初の48時間で感染症を呈していない1921例の入院を含んでいた’(1821患者; 年齢中央値62歳; IQR 49-71歳; 1128例は男性(61.8%)).ICU関連感染症は敗血症によるICU入院の13.5%(232例),非敗血症によるICU入院の15.1%(291例)で生じていた.ICU関連感染症が生じた敗血症患者はICU関連感染症を生じなかった敗血症患者よりも,入院時(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation IV [APACHE IV]スコア中央値 90 [IQR 72-107] vs 79 [IQR 62-98]; p<0.001)およびICU滞在中の疾患重症度スコアが高かったが,ベースラインの遺伝子発現に差はみられなかった.敗血症患者におけるICU関連感染症の集団死亡寄与率は60日で10.9%(95%CI 0.9-20.6%)であり,敗血症患者とICU関連感染症のない患者の死亡率の推定差は60日で2.0%(95%CI 0.2-3.8%; p=0.03)と小さかった.非敗血症のICU入室において,ICU関連感染症の集団寄与死亡率は60日で21.1%(95%CI 0.6-41.7%)であった.ベースラインと比較すると,ICU関連感染症の発症における血液遺伝子発現は糖新生および解糖系における遺伝子発現の減少を示していた.

【結 論】
ICU関連感染症はより重症度の高い敗血症患者においてより多く発生していたが,このような感染症は全死亡への寄与はわずかであった.敗血症患者の遺伝子的反応は二次感染発症時の免疫抑制と一致していた.

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by DrMagicianEARL | 2016-04-17 00:00 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症病態においては全身性炎症反応症候群であるSIRSとその反対の抗炎症性に働くCARSが起こるとされており,その混合病態はMARSと呼ばれ,この状態は病状が落ち着いてからも遷延するとされています(PICS:Persistent Inflammation-immunosuppression Catabolism Syndrome).今回はそれに関する研究を紹介します.敗血症生存者は免疫能が低下していると考えた方がいいでしょう(免疫学的麻痺:immunoparalysis).
敗血症に起因する長期の免疫学的麻痺 - 記述的探索的研究結果
Arens C, Bajwa SA, Koch C, et al. Sepsis-induced long-term immune paralysis - results of a descriptive, explorative study. Crit Care 2016 Feb 29; 20(1): 93
PMID:27056672

Abstract
【背 景】
免疫系の長期的障害は敗血症生存後の晩期の死亡の根本的な原因として考えられている.我々は初回の敗血症の生存者において,免疫系の変化が遷延するという仮説を検証した.

【方 法】
本前向き横断予備研究では,カテコラミンを要した敗血症から生存した8例の元患者と年齢,性別,糖尿病,腎不全でマッチした8例の対照者を登録した.各参加者は既往,薬剤内服歴,感染症既往についてアンケートを行った.末梢血は,α-CD3/28,LPS,ジモサンによって刺激を加えた全血でⅰ)免疫細胞サブセット(CD4+,CD8+T細胞;CD25+CD127-制御性T細胞;CD14+単球),ⅱ)細胞表面受容体発現(PD-1,BTLA,TLR2,TLR4,TLR5,Dectin-1,PD-1L),ⅲ)HLA-DR発現,ⅳ)サイトカイン分泌(IL-6,IL-10,TNF-α,IFN-γ)を計測するため採取した.

【結 果】
敗血症生存後に,元患者は,免疫系の障害に典型的に関連した臨床的に明らかな感染症の数の増加を呈した.標準的な炎症マーカーは,元敗血症患者において低いレベルの炎症を示した.CD8+細胞表面受容体ならびに単球HLD-DR密度の数値は二群間で有意差はみられなかったが,一方でCD4+T細胞はPD-1およびBTLAによる負の免疫調節の対向機序の傾向がみられた.加えて,敗血症後群は単球表面の明確なパターン認識受容体の発現において変化が見られ,最も顕著だったのはTLR5発現の減少であった.自然免疫系(LPS,ジモサン)および獲得免疫系(α-CD3/28)の両方の重要な活性化因子への反応におけるサイトカイン分泌は元敗血症患者において弱まっていた.

【結 論】
免疫系の異なる活性化因子への反応としてのサイトカイン分泌は,敗血症生存者において総合的に障害されていた.とりわけ,これは明確な細胞表面受容体のダウンレギュレーションの傾向に基づいていた.我々の結果に基づくと,変化を特徴づけ,係合する潜在的な治療ターゲットを見つけることを目的としたより大きな検証研究の実施が可能と思われる.

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by DrMagicianEARL | 2016-04-12 12:52 | 敗血症 | Comments(0)
2011年10月18日投稿
2012年11月17日改訂
2016年3月8日改訂

Summary
・SIRSは炎症性サイトカインなどのメディエーターの過剰状態を反映しており,体温,脈拍,呼吸数,白血球数から規定され,その病態は感染症,外傷,手術,急性膵炎,広範囲熱傷,心機能低下,虚血再灌流障害,Bacterial Translocation(BT)などが挙げられる.
・SIRSは多臓器不全MOF/MODSの原因となる.
・2016年2月の敗血症の定義改訂に伴いSIRS基準はなくなったが,新基準の方がより敗血症診断精度が優れているかについては明らかではない.
・SIRSと相反する免疫抑制病態CARSも敗血症の重症化に寄与しており,二次感染の原因となる.
■SIRSの概念は敗血症とともに広まったが,Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012ではその姿は消え,2016年2月の敗血症の定義改訂でもSIRSは完全に姿を消した.ではSIRSははたしてその役目を終えたのか?について.

1.SIRS基準とは?

■SIRS(Systemic Inflammatory Rseponse Syndrome:全身性炎症反応症候群)は以下の4項目のうち2項目以上該当すれば診断される[1]
(1) 体温 >38℃ or <36℃
(2) 脈拍 >90 回/分
(3) 呼吸数 >20 回/分 or PaCO2<32mmHg
(4) 白血球数 >12000/mm^3 or <4000/mm^3 or 桿状好中球 > 10%

■SIRSの病態は,以下のように3段階で進行し,本来は有益であるはずの炎症反応が過剰となった状態である.sepsisは感染症によって生じたSIRSとされる[2]
Stage I
侵襲に対して,局所でサイトカインが産生され,炎症反応を惹起し,創治癒と網状内皮系の活性化を促す.
Stage II
局所で産生されたサイトカインは,循環内へ放出され,これによってgrowth factor が刺激され,マクロファージと血小板が産生される.この急性期の反応は,炎症を惹起する因子と内因性の拮抗因子によってコントロールされ,恒常性が維持されている.
Stage III
炎症反応のコントロールが破綻し,炎症が局所に留まらず全身へ波及した場合,サイトカインは生体の保護因子ではなく,むしろ破壊因子として働き,多数のカスケードと網状内皮系が活性化され,循環動態が破綻するため,臓器不全が生じる.

■SIRSをきたす病態は感染症,外傷,手術,急性膵炎,広範囲熱傷,心機能低下,虚血再灌流障害, Bacterial Translocation(BT)などが挙げられる.そのシンプルな診断基準ゆえに特異度は低いが感度が非常に高く,sepsisにおいては早期診断治療が可能となるメリットがある.
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敗血症の定義についてはこちらをクリック

■炎症性サイトカインは,主要臓器局所の濃度上昇(血中の1000-10000倍)による近傍作用(パラクライン作用)に加え,この極度に高められたサイトカインが血管内に流入することにより血中濃度上昇をきたし,遠隔臓器作用(エンドクライン作用)を示す.これによりSIRSが多臓器不全を導く.

■SIRSが発表された後,これに対しさまざまな異論が述べられた.Vincent[3]は,SIRS基準では,①感度が高過ぎ,ICU患者の2/3がSIRSに該当し,また特異性にも欠け,患者がSIRSであると呼ぶことは“critically ill”患者であるというのに近く,患者群が不均一となり,炎症反応のモデュレーション治療などの有効性が隠蔽されてしまう,②SIRSは病態生理の理解に役立たない,③病態の変化を反映しない,等の問題点を挙げ,最後に,④SIRSには意味がなく,役立たないばかりかしばしば背後に潜む感染源を探ろうという意欲を削ぐ結果に繋がることが懸念されると結論づけている.

■このVincent意見に対し,Dellinger,Boneは,本来SIRSは,臨床的に感染病巣が明らかでない場合でも,全身性の炎症反応を呈する患者をもれなく包含する目的を達成するものであり,この観点では,SIRS基準は全身性炎症反応の最低限レベル(閾値レベル)を捉えており妥当であると反論している[4].また、本来,感染,熱傷,膵炎,外傷といった患者の臨床像を全く考慮せずにSIRSの判定を行うべきものではなく,一方,判定では簡単かつ客観的な生理学的指標を用いるため,多施設研究に適している点もあらためて指摘している.そもそもACCP/SCCM合同カンファレンスの論文[1,5]にもその有効性を示すデータのほか,その限界も併記されており,改善の余地を残すものであることも明言されている.

■SIRSにおける体温上昇は,脳血液関門(BBB)がない視床下部に炎症性メディエータ受容体が発現しており,SIRS状態では誘導型シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の転写段階からの産生亢進によるプロスタグランディンE2(PGE2)の産生により発熱反応が誘導される[6].一方,敗血症初期には種々の血管拡張性物質が産生され,血管が強く拡張される.これに対して意識下では交感神経緊張により血漿カテコラミン濃度が上昇し,体血管抵抗をを保つことで血圧を維持しようとするが,このような代償機構を保ちにくい高齢者などでは,拡張した末梢血管より熱放散が高まり,体温が低下する.敗血症での低体温が死亡リスクを高めることは既に報告があり[7-10],高体温よりも死亡率は高い.

■敗血症では頻脈が惹起されるが,これは①内因性カテコラミン,②心房筋でのオータコイド産生(プロスタグランディンやヒスタミン),③相対的循環血液量低下による反射性頻脈,④アドレナリン作動性β2受容体の増加,の主に4つの要因が関与する[11].とりわけ敗血症性ショックにおいては,心拍数上昇が予後悪化と関連することが報告されている[12-17]

■SIRSや敗血症初期では呼吸数が増加するが,これは①乳酸アシドーシスに対する呼吸代償,②組織酸素需要量増大に伴う低酸素応答,③交感神経緊張,の3つの要因が関与しており,最も早くに現れる異常である.SIRS基準からqSOFAに変わってもなお呼吸数はスクリーニングツールに入っており,早期認知の重要な指標であり続けている.

■SIRSにおいては転写因子NF-κBによってG-CSFやM-CSFの産生が転写段階より調節されることで白血球数が上昇する.また,sepsis病態の骨髄細胞ではToll-like受容体(TLR)の細胞内シグナルとしてInterferon Regulatory Factor(IRF)が活性化し,感染症における白血球系細胞の分化を多様化している[18,19].これらの骨髄産生系の加速に比較して,末梢での白血球浸潤が強い場合,末梢血採血の白血球は見かけ上減少する.このような場合においても,末梢血に幼弱球が検出できる.

■Asayamaらの報告[20]によると,救急車で来院する全患者を診療する慶應義塾大学附属病院ERでの検討では,傷病ごとのSIRS発症率は,感染症73%,肝胆膵疾患44%,呼吸器疾患42%,代謝性疾患31%,消化管疾患22%,循環器疾患20%であり,細菌感染症がSIRSを発症しやすいことが分かる.来院時に15%の患者が,病院滞在期間中のいずれかの時点で18%がそれぞれSIRS基準を満たしている.また,SIRS患者と非SIRS患者の比較では,入院率は56.0%vs15.4%,死亡率は12.3%vs1.4%でいずれもSIRS患者が有意に高かった.SIRS該当項目数で見ても,入院率,死亡率は項目数が増えるごとに有意に増加した.この傾向は海外の報告[21]でも同様である.

2.敗血症の新定義によりSIRSは消えるのか?

■Intensivist誌の2014年7月号の特集「Severe Sepsis & Septic Shock」は志馬先生の「さよならSIRS」から始まる.確かにSIRSは前述の通り感度が高く特異度が低いがゆえの問題点をはらんでいる.ANZICSからの大規模観察研究[22]ではSIRS基準では重症敗血症の8人に1人を見逃すとしている(感度87.9%).しかし,この精度ははたしてそれほどよくないと言えるだろうか?感染+SIRS+臓器障害で9割近くの感度はむしろ優れたスクリーニングツールとも言えないこともない.後ろ向きにデータベースを見れば当然ながらSIRS基準からの漏れは見つかるし,それをもって不完全と言うのはたやすいが,実臨床では完璧なスクリーニングツールなど存在しない.また,後ろ向きで見ているとはいえ,敗血症には絶対基準が存在しない以上,この数字はいかようにも変わる.

■となれば,2016年2月の敗血症の新しい診断基準[23]もまた,正確に敗血症という病態を診断する完璧なものではない.そしてその検証研究は後ろ向きのデータベースを28日死亡とICU在室日数をアウトカムとした精度(AUROC)で評価しており[24],このアウトカムでもともと広いスクリーニングツールを想定しているSIRSより優れているとするのは違和感がある.SIRS+臓器障害のくくりと新定義がはたしてどちらがより病態を的確にとらえているのかは今後の検証しだいとなるだろう.

■もっとも,qSOFAはSIRS基準よりもよりさらに簡便かつシンプルになっており,特にSIRSにはあった白血球の項目がなくなったことで採血が不要になるため,ベッドサイドで完結できるスクリーニングツールとなる.

■SIRSからの脱却は,敗血症の診断・治療において炎症を重視しすぎてきたという事情がある.しかしながら,敗血症という病態において炎症が働くことは動かざる事実であり,同時に,免疫抑制状態のCARS,さらにはSIRSとCARSの混合病態であるMARSも既に提唱されており,敗血症病態の解明を目的として,概念としてのSIRSは今後も残っていくと思われる.

3.免疫系におけるSIRSとCARS

■SIRSはCARS(compensatory anti-inflammatory response syndrome:代償性抗炎症反応症候群)とセットで理解する必要がある.通常は炎症が高まっている状態で更なる感染症が生じることは考えにくい.しかし,敗血症ではその臨床経過中に更なる感染症を発症して重症化する病態が知られている[25,26].これは,炎症性サイトカインの産生により惹起された炎症反応を沈静化しようとして引き起こされる抗炎症性サイトカインの過剰産生により発症する免疫抑制が深く関わっていることが知られており,immunoparalysisと呼称されている[27,28].これは熱傷,膵炎等でも同様である.

■Immunoparalysisの発症は,免疫細胞のアポトーシスの増加,アネルギーやHLA-DRを発現している単球の割合の減少などで診断される.Immunoparalysisの発症にはさまざまな因子が関与しているが,抗炎症性サイトカインの過剰産生も重要な因子である[27].CARSは1996年にRoger Boneにより提唱された血清学的病態概念であり[29],CARSは炎症性サイトカイン産生の高まるSIRSに拮抗する病態として,自己免疫抑制状態と考えられている.

■抗炎症性サイトカインの代表的なものとしては,TGF-β(transforming growth factor-β) super family,IL-4,IL-6,IL-10,IL-11,IL-13やα-MSH(α-melanocyte stimulating hormone)などがある.抗炎症性サイトカインが活性化されるCARSの病態では,①皮膚アレルギー所見の出現,②単球やリンパ球の活性低下,③炎症性サイトカインの産生抑制,④TGF-βを介した組織線維化や組織増殖などが特徴となる.

■CARSで主に取り上げられるIL-10はSIRSの転写因子の主体であるNF-κBやAP-1,そしてカテコラミンによるcAMP response elementに依存して,転写が高まる.このため,炎症性サイトカインと同様の機序として,早い時期よりTh1細胞,B細胞,マクロファージや樹状細胞などでIL-10産生が上昇する.一方,このIL-10が作用するIL-10受容体は,血管内皮細胞,Ⅱ型肺胞上皮細胞,心房筋障害などの主要臓器細胞にはほとんど検出できない.IL-10受容体の発現は白血球系細胞に限られるので,IL-10を介したCARSは白血球機能の抑制にのみ作用する.これにより細菌,真菌を含めた異物の生体内侵入が容易となる.

■一方,CARSの別の主役であるIL-4やIL-13は転写因子NF-κBではなく,主に転写因子NFAT(nuclear factor of activated T-cell)で転写調節される.SIRSにおいて,NFATはNF-κBより遅れて活性を上昇させる傾向があるため,IL-4やIL-13は炎症性サイトカインより遅れて産生されてくる.これがSIRSとCARSが必ずしも並行ではない機序の一つである.IL-4,IL-13の受容体は白血球系の細胞に加えて,血管内皮細胞にも存在する.IL-4,IL-13は白血球系細胞では炎症性サイトカインの産生を抑制するが,血管内皮細胞では炎症性サイトカインの産生を高めるという逆作用をもつこと,血管内皮細胞にアポトーシスを誘導し,血管の線維化にも関与することが示唆されている.

■IL-6は,IL-1βにより刺激された単球/マクロファージ,血管内皮細胞,線維芽細胞,ケラチノサイトなどから産生され,これまで炎症性サイトカインと考えられてきたが,近年,抗炎症性サイトカインとしての役割も注目されている.IL-6受容体は,白血球系細胞以外にも,血管内皮細胞や主要臓器細胞にも存在し,NF-κB活性を下げ,炎症性サイトカインシグナルを負に調節している.すなわち,IL-6はCARSに関与しているサイトカインである.

■このように,CARSは白血球細胞の活性を低下させる一方で,血管内皮細胞などの炎症を独自に進行させ,SIRSにおける血管拡張病態を血管収縮状態にシフトさせるように作用する.CARSが持続している病態では,①白血球系細胞の機能低下により易感染性となること,②感染性2nd attackによりSIRS再燃の可能性があること,③血管内皮細胞障害進展の可能性があることに留意する.

■SIRSは症候学的定義により,評価しやすい病態である.しかし,CARSは症候学的定義がなく,あくまでも血清学的病態に過ぎず,抗炎症性サイトカインを測定しない限り明確に評価できない.実際の臨床では,SIRSとCARSがともに生じていると考え,MARS(mixed antagonistic response syndrome;混合性拮抗反応症候群)として対応している[30]

■近年,CARS病態では制御性T細胞(Treg)が注目されている.TregはCD4+で免疫を制御するT細胞として1995年にSakaguchiらの研究[31]で発見されており,その誘導は現在癌治療で注目されているPD-1/PD-Lシグナルが関与していることが分かっている.Tregの末梢での生存維持は,CD4+CD25-T細胞と比較して,IL-2への依存度が高いが[32],その一方でTreg自身はIL-2の産生を低下させてTh0の分化を抑制するnegative feedback作用を有する.敗血症患者の初期の末梢血においてはIL-2産生が高まるが,この後にTregが30-40%にまで上昇し[33],Th2優位な状態となり,CARSに至る.

■Hirakiらは,CLP敗血症マウスモデルにおいてTregの増加し,抗IL-10中和抗体,抗TGF-β中和抗体を投与することでTregを制御すると予後が改善したと報告している[34].また,Onoらは,腹腔感染症による敗血症患者32例において,PMX-DHPを施行することで,死亡例より生存例の方がTregが有意に減少していたと報告している[35].これらの報告からも敗血症病態においてはTregによるCARSがむしろ生体に不利に働く可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2016-03-08 15:08 | 敗血症 | Comments(0)
2011年10月17日作成
2012年10月29日改訂
2016年3月7日改訂
Summary
・敗血症において菌血症は必要条件でもなければ十分条件でもない.
・敗血症の診断基準としては1991年基準(SIRS),2001年の基準があるが,感度・特異度の問題があり,2016年2月に第3の定義・診断基準が定められた.
・新しい定義・診断基準ではより重症度が高い患者集団に限定された.
・SIRS基準が消え,従来の重症敗血症以上が敗血症と定義された.
・新基準ではICU発症とICU以外での発症で診断基準が異なることに注意が必要である.ICU発症では感染症が疑われSOFAスコアの2点以上の増加,ICU以外ではqSOFAスコア2点以上で敗血症疑い(かつSOFAスコア2点以上で敗血症)と診断される.
・qSOFAは呼吸数22回以上,収縮期血圧100mmHg以下,意識障害(GCS<15)で規定される.
・感染症診断,スコアリングの間隔,臓器障害が慢性か急性か,アウトカム設定の問題,日本と米国のICU環境の違いなどの問題点を考慮する必要がある.
・敗血症性ショックは急速輸液負荷でも反応しない平均血圧65mmHg未満かつ乳酸値2mmol/L以上で診断される.
■本記事では,過去の敗血症の定義も含めた解説であり,SIRS基準等も掲載している.新しい定義・基準は後半に記載があり,そちらを参照されたい.

1.SIRSに始まる敗血症の定義・診断基準の変遷

■sepsisの語源はギリシャ語のseptikosであり,「崩壊」「腐敗」の意味
※sepsisの発音は英語なら「セプシス」,ドイツ語なら「ゼプシス」になる模様.

■古い敗血症の概念は1914年にSchottmullerらが定義した「敗血症は,微生物が局所から血流に侵入し,病気の原因となっている状態」であるが[1],これは現在の敗血症とは異なる.よく勘違いされるが,敗血症は「細菌(真菌)が血液中に侵入して生じるもの」ではない.菌血症は敗血症の必要条件でもなければ十分条件でもない.その後の敗血症の定義は生体反応である炎症を主体とするもに変遷していき,Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012[2]では「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」とされた.

■1989年にBoneらは“sepsis syndrome”という概念を提唱した[3].これをもとに米国集中医療学会(SCCM)と米国胸部医学会(ACCP)が合同で発表したものが敗血症の定義の定義として十数年にわたって使用されてきたものである[4].ここで,感染症は微生物の存在,もしくは本来は無菌である組織への微生物の侵入に対する炎症反応と定義され,全身性炎症反応症候群Systemic Inflammatory response syndrome(SIRS)の概念が生まれた.SIRSについてのまとめはこちら

■SIRSは以下の4項目のうち2項目以上該当すれば診断される[3]
(1) BT >38℃ or <36℃
(2) HR >90 bpm/min
(3) RR >20 bpm/min or PaCO2<32mmHg
(4) WBC >12000/mm^3 or <4000/mm^3 or immature leukocyte > 10%
このときの敗血症の定義は感染によって発症した全身性炎症反応症候群(SIRS),すなわちinfection-induced SIRSである.

■severe sepsis(重症敗血症)の診断基準[4]
Sepsisの中でも以下の項目を1つでも満たす.
(1) 臓器障害
(2) 臓器灌流障害
  乳酸アシドーシス:lactate>2mmol/L
  乏尿:1時間以上の尿量低下(<0.5mL/kg/H)
  意識混濁
(3) 低血圧(収縮期血圧<90mmHgまたは通常血圧から40mmHg以上の低下)

■septic shock(敗血症性ショック)の診断基準[4]
severe sepsisの中で,血圧低下があり,十分な急速輸液負荷を行っても血圧が回復しないもの

■その後,2001年にSCCM,ACCP,ヨーロッパ集中医療学会(ESICM),米国胸部疾患学会(ATS),外科感染症学会(SIS)で集まったInternational Sepsis Definitions Conferenceで定義の再検討が行われ,SIRSは有用な概念であるが,感度過剰かつ非特異的だとして,生体反応を細かく評価する方法が提唱され,以下の新しい診断基準[5]が発表された.
感染症の存在が確定もしくは疑いであり,かつ下記のいくつかを満たす(項目数規定なし)
(1) 全身所見
・発熱:深部体温>38.3℃
・低体温:深部体温<36℃
・頻脈:心拍数>90回/分,もしくは>年齢平均の2SD
・頻呼吸
・精神状態の変化
・明らかな浮腫または体液過剰:24時間以内でのプラスバランス20mL/kg
・高血糖:糖尿病の既往が無い症例で血糖値>120mg/dL
(2) 炎症所見
・白血球上昇>12000/μL
・白血球低下<4000/μL
・白血球正常で>10%の幼若白血球を認める
・CRP>基準値の2SD
・プロカルシトニン>基準値の2SD
(3) 循環所見
・血圧低下:収縮期血圧<90mmHg,平均血圧<70mmHg,もしくは成人で正常値より>40mmHgの低下,小児で正常値より>2SDの低下
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)<70%
・心係数(CI)>3.5L/min/m^2
(4) 臓器障害所見
・低酸素血症:P/F(PaO2/FiO2)<300
・急性の乏尿:尿量<0.5mL/kg/hrが少なくとも2時間持続
・クレアチニンの増加:>0.5mg/dL
・凝固異常:PT-INR>1.5,もしくはAPTT>60秒
・イレウス:腸蠕動音の消失
・血小板減少<10万/μL
・総ビリルビン上昇>4mg/dL
(5) 組織灌流所見
・高乳酸血症>1mmol/L
・毛細血管の再灌流減少,もしくはmottled skin(斑状皮膚)

■しかしながら,この2001年の診断基準は1991年の診断基準(SIRS基準)より精度が特段向上したわけでもなく[6,7],24項目におよぶ上に項目数の規定がないなど非常に使いづらいものであり,精度報告も少ない.一方でSIRS基準は敗血症の疫学や治療介入を研究するためのentry criteriaの役割が主体で提唱されてはいるものの,そのスクリーニングツールとしての簡便さからSIRS基準は現場では用いられ,敗血症診療における中心的概念であり続けた.

2.Sepsis-3/敗血症の再定義と新しい診断基準

■敗血症の病理生物学的研究が進み,敗血症を単なる炎症だけでは説明できなくなってきている.実際にはSIRSという炎症過剰に引き続き,CARSという免疫抑制も生じることが分かっており,敗血症ではより複雑な免疫の多様な変化が生じていることから,炎症を過剰に重視しすぎることが問題視され,その視点をより臓器障害に向ける必要性が指摘されていた.

■また,EGDTをはじめとする多くの治療法が検討されていく中で,敗血症の死亡率は減少してきている[8-15].この中で,最重症病態である敗血症性ショックの近年の死亡率は20-30%まで低下しており,さまざまな治療介入をRCTで検証しても有意差はつかないということが相次いでいる.また,敗血症死亡率の疫学的推移を異とする主張もある.疫学研究においてはコーディング化された病名を拾いあげていくが,その際に過剰診断によるアップコーディングがあると敗血症患者が増えることになる[16].結果的にこれまでの基準では軽症例まで拾い上げていることもあり,死亡率をアウトカムとする場合,今後の治療介入の検証の妨げとなる.ならばより重症度の高い集団を敗血症と定義しなおす必要もあった.

■2016年2月22日,米国フロリダ州はオーランドで開催された第45回米国集中治療医学会(SCCM;Society of Critical Care Medicine)において,米国集中治療医学会・欧州集中治療医学会合同セッションで敗血症の新しい定義が発表され,同時にJAMA誌に新定義の論文1報[17]とその検証論文2報[18,19]がpublishされた.Sepsis-3と名付けられた新定義はこれまでの内容から大幅に変更となっている.
Sepsis-3新定義・新診断基準の概略

・敗血症の新定義:「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」
旧敗血症(SIRS+感染症)→敗血症から除外
旧重症敗血症(敗血症+臓器障害)→敗血症(重症はつけない)

・敗血症の新診断基準:ICU患者とそれ以外(院外,ER,一般病棟)で区別
(1) ICU患者:感染症が疑われSOFAスコアが2点以上増加
(2) 非ICU患者:quick SOFAスコア(qSOFA)で2点以上(疑い)→SOFAスコア2点で敗血症
qSOFAスコア:「呼吸数22回/分以上」「意識障害(GCS<15)」「収縮期血圧100mmHg以下」が各1点ずつ

・敗血症性ショックの定義・診断基準
新定義:「実質的に死亡率を増加させるに十分に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセット」
新診断基準:適切な輸液負荷を行ったにもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬を必要としかつ血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過
■これまでのSIRS基準は消え,SIRS+感染症で敗血症としていたのが,重症敗血症以上で敗血症とし,なおかつ重症敗血症という用語が消滅した.これにより,敗血症(Sepsis)と敗血症性ショック(Septic shock)の2つになりシンプルになったと言える.
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■新しい診断基準はICUとそれ以外で診断基準が異なるというややトリッキーな内容となった.大規模検証研究において,ICU患者ではSOFAスコアがqSOFAやSIRSよりも院内死亡予測妥当性(AUROC)が有意に高かったのに対し,それ以外の患者ではqSOFAがSOFAスコアよりも有意に高かったことによる[18].ICUではSOFAスコアをルーティンでつけている施設も多いと思われるが,ICU以外では通常評価されないものであり,ICU以外で迅速に認知して対応する上でqSOFAがシンプルな3項目になっており,かつ採血が不要でベッドサイドですぐに評価できる因子で構成されているのは非常に実用的かと思われる.これは,ICUに比して,特に一般病棟や院外のプライマリケアの現場において敗血症が見逃され治療開始が遅れていることが顕著であることにも起因する.

■加えて,ICU患者では既に何らかの重症疾患で入院しており,qSOFAでみられるような異常は敗血症でなくとも頻繁にみられる.そこで,SOFAスコアの2点以上の増加という臓器障害度の変化をもってICU発症の敗血症を拾い上げることになる.

■しかし,この改良された診断基準にも問題点はまだまだあるため,以下の問題点を把握して判断する必要がある.
(1) 本検証が既に感染症と診断,あるいはその疑いがもたれた患者を対象に行っていることであり,感染症であることをどのように診断もしくは疑うとするのかは定められていない.このため,まずは感染症の見逃しを事前に防ぐ必要がある.
(2) SOFAスコアの変化をどの程度の変化をもって判断すべきかが示されていない.さらに採血を毎日行うわけでもない以上はSOFAスコアで2日以上は評価できないこともある.
(3) 検証研究において,臓器障害が慢性か急性かの区別が評価されていない(たとえば,認知症患者ではベースラインを知らな得ればqSOFAで1点と数えられてしまう過剰診断リスクが生じる).
(4) 本検証研究のアウトカムは院内死亡率またはICU在室日数3日以上としており,敗血症診断の感度特異度を評価した精度解析ではないことである(そういう意味ではSIRSより本当に優れているのかは評価しづらい).これらの指標は敗血症ではよく使用されるものの,あくまでも代替指標に過ぎない.もっとも敗血症に絶対指標がないためこの問題点を解決することは不可能とも言えるが,本診断基準が何を見ているのかは常に頭に置いておく必要がある.また,院内死亡率は全死亡率であり,その死亡原因は時期によってもかなり異なり[20],敗血症が原因でない場合も含まれるため,必要な治療介入が敗血症治療でない患者集団を含んでしまう.
(5) qSOFAで敗血症と診断したとしてもICUに入室させるかはその病院環境によって異なる.とりわけ回転が速く病床数の多い米国ICUと日本のICUを比較したとき,qSOFAをもって全例をICU入室適応とするのは妥当とは言いにくく,よりつっこんだ評価が必要であろう.

■敗血症性ショックの基準についても検証研究がなされている[19].収縮期血圧ではなく平均血圧を見ていること,乳酸値をより重要視することが推奨されており,これは血圧の下がったショック(Overt Shock)のみならず潜在的ショック(Cryptic Shock)もカバーする上で重要である.収縮期血圧は左室後負荷と動脈性出血リスクに関与する一方,平均血圧は心臓以外の臓器灌流の決定因子である.敗血症において血圧が低いことが問題になるのは臓器血流量が減少するからであり,それを決定するのは冠血流を除いては平均血圧である.平均血圧は以下の式から推測する.
 MAP=DBP+(SBP-DBP)/3=SBP/3 + DBP×2/3
 MAP:平均血圧
 DBP:拡張期血圧
 SBP:収縮期血圧
実際に敗血症においてはMAPが60mmHgと28日死亡率の関連が強く,SBPと死亡率の関連閾値は見出せなかったと報告されている[21]

[1] Budelmann G. Hugo Schottmüller, 1867-1936. The problem of sepsis. Internist (Berl) 1969; 10: 92-101
[2] Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al. Surviving sepsis campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock: 2012. Crit Care Med 2013; 41: 580-637
[3] Bone RC, et al. Sepsis syndrome: a valid clinical entity. Methylprednisolone Severe Sepsis Study Group. Crit Care Med 1989; 17: 389-93
[4] American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20: 864-74
[5] Levy MM, et al. 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit Care Med 2003; 31: 1250-6
[6] Weiss M, Huber-Lang M, Taenzer M, et al. Different patient case mix by applying
the 2003 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS sepsis definitions instead of the 1992 ACCP/SCCM sepsis definitions in surgical patients: a retrospective observational study. BMC Med Inform Decis Mak 2009; 9: 25
[7] Zhao H, Heard SO, Mullen MT, et al. An evaluation of the diagnostic accuracy of the 1991 American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine and the 2001 Society of Critical Care Medicine/European Society of Intensive Care Medicine/American College of Chest Physicians/American Thoracic Society/Surgical Infection Society sepsis definition. Crit Care Med 2012; 40: 1700-6
[8] Martin GS, Mannino DM, Eaton S, et al. The epidemiology of sepsis in the United States from 1979 through 2000. N Engl J Med 2003; 348: 1546-54
[9] Kaukonen KM, Bailey M, Suzuki S, et al. Mortality related to severe sepsis and septic shock among critically ill patients in Australia and New Zealand, 2000-2012. JAMA 2014; 311: 1308-16
[10] Levy MM, Dellinger RP, Townsend SR, et al. The Surviving Sepsis Campaign: results of an international guideline-based performance improvement program targeting severe sepsis. Intensive Care Med 2010; 36: 222-31
[11] Kumar G, Kumar N, Taneja A, et al; Milwaukee Initiative in Critical Care Outcomes Research Group of Investigators. Nationwide trends of severe sepsis in the 21st century (2000-2007). Chest 2011; 140: 1223-31
[12] Ferrer R, Artigas A, Levy MM, et al; Edusepsis Study Group. Improvement in process of care and outcome after a multicenter severe sepsis educational program in Spain. JAMA 2008; 299: 2294-303
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[14] 日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会.日本集中治療医学会第1回Sepsis Registry調査 —2007年の重症敗血症および敗血症性ショックの診療結果報告— .日集中医誌 2013; 20: 329-34
[15] Barochia AV, Cui X, Vitberg D, et al. Bundled care for septic shock: an analysis of clinical trials. Crit Care Med 2010; 38: 668-78
[16] Rhee C, Gohil S, Klompas M. Regulatory mandates for sepsis care--reasons for caution. N Engl J Med 2014; 370: 1673-6
[17] Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016; 315: 801-10
[18] Seymour CW, Liu VX, Iwashyna TJ, et al. Assessment of Clinical Criteria for Sepsis: For the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016; 315: 762-74
[19] Shankar-Hari M, Phillips GS, Levy ML, et al; Sepsis Definitions Task Force. Developing a New Definition and Assessing New Clinical Criteria for Septic Shock: For the Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA 2016; 315: 775-87
[20] Daviaud F, Grimaldi D, Dechartres A, et al. Timing and causes of death in septic shock. Ann Intensive Care 2015; 5: 58
[21] Dünser MW, Takala J, Ulmer H, et al. Arterial blood pressure during early sepsis and outcome. Intensive Care Med 2009; 35: 1225-33
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by DrMagicianEARL | 2016-03-07 18:32 | 敗血症 | Comments(0)
敗血症の新定義・新診断基準(2016年2月22日のSCCM/ESICMによる大幅改訂)
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■米国フロリダ州はオーランドで開催されている第45回米国集中治療医学会(SCCM;Society of Critical Care Medicine)において,3日目の2月22日(日本時間23日午前5時)の米国集中治療医学会・欧州集中治療医学会合同セッションにおいて敗血症の新しい定義が発表されました.同時に,JAMA誌に新定義の論文1報とその検証論文2報がpublishされましたので紹介します.以下概略です.
新定義・新診断基準の概略

・敗血症の定義
旧定義:「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」(SSCG 2012)
新定義:「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」
旧敗血症(SIRS+感染症)→敗血症から除外
旧重症敗血症(敗血症+臓器障害)→敗血症(重症はつけない)

※これまでのSIRS基準は消え,SIRS+感染症で敗血症としていたのが,重症敗血症以上で敗血症とし,なおかつ重症敗血症という用語が消滅しました.これにより,敗血症(Sepsis)と敗血症性ショック(Septic shock)の2つになりシンプルになったと言えます.

・敗血症の診断基準
旧基準:SIRS基準または2001年基準
新基準:ICU患者とそれ以外(院外,ER,一般病棟)で区別
 ICU患者:感染症が疑われSOFAスコアが2点以上増加
 非ICU患者:quick SOFAスコア(qSOFA)で2点以上でスクリーニング陽性(敗血症疑い)→精査でSOFAスコアが2点以上ならば敗血症診断
qSOFAスコア:「呼吸数22回/分以上」「意識障害(GCS<15)」「収縮期血圧100mmHg以下」が各1点ずつ


※大規模検証研究において,ICU患者ではSOFAスコアがqSOFAやSIRSよりも院内死亡予測妥当性(AUROC)が有意に高かったのに対し,それ以外の患者ではqSOFAがSOFAスコアよりも有意に高かったことによります(JAMA 2016; 315: 762-74).迅速に認知して対応する上でqSOFAがシンプルな3項目になっているのは非常に実用的かと思われます.同時にSIRS基準にも入っていた呼吸数が基準に入っており,いかにベッドサイドで呼吸数が重要であるかの証左と思われます.

・敗血症性ショックの定義・診断基準
新定義:「実質的に死亡率を増加させるに十分に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセット」
旧診断基準:敗血症で輸液負荷にも反応しない低血圧(収縮期血圧で評価)
新診断基準:適切な輸液負荷を行ったにもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬を必要としかつ血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過

※こちらも検証研究がなされています(JAMA 2016; 315: 775-87).収縮期血圧ではなく平均血圧を見ていること,乳酸値をより重要視することが推奨されており,これは血圧の下がったショック(Overt Shock)のみならず潜在的ショック(Cryptic Shock)もカバーする上で重要です.
■今回の改訂により,既知の敗血症研究の多くが再検証が必要になります.特にバイオマーカーの検討はすべてやり直しです.臨床試験においては,敗血症の死亡率が年々減少してきており,新たな治療介入を検討しても有意差が出にくい状態です.より重症で死亡率が高い患者層になったことでeffect sizeがより大きくなり有効な治療法が検出されやすくなるかもしれません.
敗血症および敗血症性ショックの第3の国際コンセンサス定義(Sepsis-3)
Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016 Feb.23; 315(8): 801-10

【背 景】
敗血症および敗血症性ショックは2001年に最終改訂されている.敗血症の病理生物学(臓器機能,形態,細胞生物学,生化学,免疫学,循環の変化),管理,疫学は進歩していており,再検証の必要性が示唆されている.

【目 的】
敗血症および敗血症性ショックの定義を評価し,必要に応じて改訂を行う.

【方 法】
敗血症の病理生物学,臨床試験,疫学の専門家によるタスクフォース(19名)が米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会で招集された.定義と臨床診断基準は,査読と賛同を求めた国際的な専門学会(謝辞に記載された31学会)による補助のもと,会議,Delphiプロセス,電子カルテデータベース解析,投票を通じて作成された.

【結 果】
以前の定義の問題点として,炎症に過度の焦点を置いていること,敗血症が重症敗血症からショックへの連続体に続くという誤ったモデル,全身性炎症反応症候群(SIRS)の不適切な感度と特異度がある.敗血症,敗血症性ショック,臓器障害において,近年,多数の定義や用語の使用が,報告される発生率や観察される死亡率において不一致を招いている.タスクフォースは重症敗血症という用語が余計であると結論づけた.

【推 奨】
敗血症は,感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害として定義されるべきである.臨床的運用において,臓器障害は,院内死亡率10%超に関連するものとして,Sequential [敗血症に関連した] Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの2点以上の増加により表現しうる.敗血症性ショックは,敗血症単独よりも高い死亡リスクに関連する特に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセットと定義すべきである.敗血症性ショックの患者は体液量減少がない状態でも平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬の必要性と血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過によって臨床的に検出できる.この併用は院内死亡率40%超過に関連している.院外,救急部門,一般病棟においては,感染症が疑われた成人患者は,quick SOFA(qSOFA)と称する新しいベッドサイドの臨床スコアで構成される臨床診断基準(呼吸数22回/分以上,精神状態の変化,収縮期血圧100mmHg以下)で少なくとも2点を有するのであれば,予後不良の典型的な敗血症の可能性があると迅速に認識することができる.

【結 論】
これらの定義と臨床診断基準の更新は以前の定義と置き換え,疫学研究や臨床試験においてより大きな一貫性を提供し,敗血症や敗血症への進展リスクを有する患者のより早い認知とよりタイムリーな治療を促進するべきである.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-23 12:19 | 敗血症 | Comments(3)
 2016年2月11日から14日まで神戸国際会議場および神戸ポートピアホテルで開催された第43回日本集中治療医学会総会学術集会に参加してきました.私自身は12日にワークショップセッションでPost-Intensive Care Syndromeについて発表させていただきましたが,今回の学会の個人的なメインはJSEPTIC-DIC studyの結果報告を見に行くことと言っても過言ではありません.以下,感想などを.

1.JSEPTIC-DIC study
■これまで本邦では日本集中治療医学会や日本救急医学会がSepsis Registry委員会を立ち上げて敗血症症例のデータ集積を行ってきているが,どれも数百例レベルで,今回のJSEPTIC-DIC studyは桁が1桁違う過去最大規模かつ最新の国内敗血症データベースとなる.
【対 象】
本研究は,敗血症性DICに対する治療を積極的に施行している施設と施行しない施設の両方を含めた本邦40施設42ICU共同後ろ向き観察研究である.対象は2011年1月から2013年12月の3年間に重症敗血症/敗血症性ショックが原因でICUに入室した3195例.

【参加施設】
参加施設は院内ICUが57%,救急ICUが43%であり,ICU管理方針はClosedが41%,Openが43%であった.

【患者背景】
患者背景は,平均年齢70歳,男性が60%,平均APACHEⅡスコアは23,感染源は腹腔が32%で最多,次いで肺26%,尿路16%,血液培養陽性は44%,陰性は50%,DIC合併率は71%であった.DIC治療薬はATが31%,rTMが27%,プロテアーゼ阻害薬12%であった(重複あり).ICU入室から退院までは平均41日間,院内死亡率は33%であった.

【結果1】DIC治療方針の転帰への影響
 DIC治療薬を50%以上の患者に投与した施設の患者を積極群(23施設1670例),50%未満の患者に投与した施設の患者を非積極群(19施設1525例)とした.
 ICU生存率は80.7% vs 79.6%,p=0.46,院内生存率は67.1% vs 67.3%,p=0.90で有意差はみられなかった.多変量ロジスティック回帰解析では,積極群はICU生存退室においてOR 1.34[95%CI 1.08-1.65],p=0.007,病院生存退院においてOR 1.34[95%CI 1.11-1.60],p=0.002であり,独立した予測因子であった.
 敗血症DICを積極的に治療した施設では生存率良好と関連があり,DIC治療薬投与が転帰を改善する可能性がある.

【結果2】敗血症性DICに対する遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤(rTM)の効果
 3195例中,DIC患者1847例が対象,このうち645例にrTMが投与され(rTM群),1202例にはrTMが投与されていなかった(対照群).施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity scoreを算出し,propensity score matching解析を実施し,466組のペアが作成された.
 院内死亡においてはrTMはOR 0,717,95%CI 0.547-0.940,p=0.0161であった.生存期間の比較では,HR 0.762,95%CI 0.615-0.943,p=0.0125であった.rTM群での輸血量の増加は認めていなかった.処置を要する出血は対照群1.3%に対してrTM群2.8%と増加していたが,統計学的有意差は認めなかった.
 敗血症性DICに対するrTMの投与は死亡率の低下と関連していた.

【結果3】敗血症性DICに対するアンチトロンビン製剤(AT)の効果
 3195例から以下の3段階のサブグループで施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity score matching解析を実施した.
(1)DIC患者1875例中,715例にATが投与され(AT群),1132例には投与されていなかった(対照群).
(2)AT値をday1に測定しているDIC患者1041例中,AT群509例,対照群532例
(3)day1のAT値が70%以下のDIC患者815例中,AT群450例,対照群365例
 マッチしたペアはそれぞれ(1)428組,(2)275組,(3)212組作成された.AT群は院内死亡において(1)OR 0.906,95%CI 0.69-1.19,(2)OR 0.94,95%CI 0.65-1.34,(3)OR 1.09,95%CI 0.73-1.64,p=0.68であった.
敗血症性DICに対するATの投与は死亡率の低下と関係を認めなかった.
■この他にも,乳酸値,PMX-DHP,vv-ECMO,Open vs Closedなど多数の解析が発表されている.本研究の主旨である敗血症性DICに関しては,DIC治療薬,とりわけrTMにおいて生存率改善の可能性が示唆されているものの,施設どうしの比較にも近く,またDICを治療しない施設におけるDICパラメータの測定欠損など後ろ向き観察研究特有の限界もあるとも言える.また,先日の第22回大阪DIC研究会においては本JSEPTIC-DIC studyデータを用いたDIC治療プロトコル採用可否での死亡率比較で,APACHEⅡスコア20以上において生存率改善を示唆する結果が報告されており,過去の知見も合わせればやはりAPACHEⅡスコア20~25以上のpoppulationでなければ死亡率改善は得られない可能性があり,rTMの海外PhaseⅢ studyに登録された患者の重症度しだいで結果は決まるかもしれない.

2.TPTD study
■敗血症性ショックのEGDTにおいて,輸液指標にCVPを用いることについては懐疑的見解が相次いでいる.しかしながら,CVPに代わる確立された輸液反応性指標がないことも事実で,それではTPTDはどうかということで本研究がRCTデザインで日本で行れている.今回その中間解析結果が報告された.
敗血症治療における経肺熱希釈法の併用に関する多施設共同研究・中間報告 TPTD-study Group
【背 景】
敗血症の初期治療においては十分な輸液が必要だが,中心静脈圧を指標とした従来のEGDTについては有効性を疑問視する報告が相次いでいる.経肺熱希釈法(TPTD)は心臓の拡張終期容量と肺外の水分量を測定することが可能であり,中心静脈圧に代わる輸液の指標として期待される.

【目 的】
敗血症におけるTPTDを用いた輸液管理の有用性を検討する.

【方 法】
2013年11月から2015年8月に当研究(多施設前向き比較対照試験;UMIN000011493)に参加した16施設のICUに入院し,48時間以上の人工呼吸器管理を必要とした敗血症患者105例を対象とした.無作為に割り付けたTPTDによる輸液管理を行ったTPTD群(50症例;GEDI 650-850,SVV<15%目標)と中心静脈圧を用いたCVP群(55症例;CVP 12-15cmH2O目標)を比較した.

【結 果】
生存例について,人工呼吸器管理日数はTPTD群で有意に短縮された(Kaplan-Meier法;p=0.041,5.5±7.2 vs 7.0 vs±6.4).ICU滞在期間(6.8±6.4 vs 8.8±7.0),カテコラミン投与期間(2.3±1.8 vs 3.6±4.1)についても,TPTD群ではCVP群と比較して日数が短縮される傾向にあった.72時間の輸液バランスには有意差を認めなかった(4.8±5.9L vs 4.8±5.3L).
※輸液バランスは実際の発表では24時間で3075mL vs 3646mL,72時間トータルでは3106mL vs 4650mLという数字であった.

【結 論】
TPTDを用いた輸液管理によって,十分量の輸液とカテコラミンの必要期間の制限が可能であり,人工呼吸器管理期間を短縮できる.
■Rivers' EGDTのCVPをTPTDにしたらどうなるかというRCTですが,主要評価項目で人工呼吸器管理日数で有意差がついたほか,輸液バランスもTPTD群の方が少ない傾向で好ましく見えるのだが,問題は28日生存率である.100例ちょっとでの検討になるため微妙ではあるが,発表での28日生存率は67% vs 78%で有意差はないもののTPTD群の方が高い傾向がみられている.その絶対差は11%もあり無視できる大きさではない.本研究は最終的に200例を予定しており,この差は200例では有意差はつかないが,500例ほどになれば有意差がつく数字であるため,注意してみていく必要はあるだろう.

3.Global Sepsis Alliance委員会報告
■最終日にGlobal Sepsis Alliance委員会の報告があり,その中で市民への情報発信のためのホームページ作成について報告がなされた.「敗血症安心プラネット」というホームページ名であり昨年より開設されているが,アクセス数が伸び悩んでいた状況にあった.検索についても,「敗血症 安心」という検索ワードにしなければ上位に表示されない.業者に依頼するなどしてアクセス数を増やすことも検討されていたが,コストがかかる上に上位にいく保障がないのが問題であった.

■そこで,救急・ICU系のブロガーにリンクを貼ってもらい,アクセス数を増やすことで検索上位にひっかかることが期待された.実際に本ブログ「EARLの医学ノート」や「ER×ICU~救急医の日常~」で敗血症安心プラネットの紹介とリンクを学会期間中に貼ったところ,アクセス数が劇的に伸びたことが報告された.

■というわけで,まさかとは思ったが,依頼されたこともあり,このブログが学会デビューしてしまった.実際に委員会報告のスライドで私のブログが顔写真本名付きでの紹介という大変恐縮な状況.それはいいとして,一般市民への啓蒙手段,なかなかに難しいようである.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-19 11:30 | 敗血症 | Comments(0)
※本記事は一般市民向けでもあります.

敗血症安心プラネット~Global Sepsis Alliance JAPAN~の御紹介
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1.敗血症という病気

■敗血症(英語でSepsis)という病気を知っていますか?敗血症は医学的には「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」とされています.あらゆる感染症も重症化すると敗血症になります.一般的な肺炎や尿路感染症などの細菌感染症のみならず,インフルエンザやエボラ,MERSコロナウイルス,さらには寄生虫なども重症化すれば敗血症に至ります.この敗血症によって臓器不全,あるいはショック状態になると死亡率は著しく増加します.
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■世界では年間約2700万人の敗血症が発生しており,そのうち,約800万人が死亡しており,2-3秒に1人が世界のどこかで敗血症により死亡している計算になります.このため「Around every 3rd heartbeat, someone dies of sepsis.(心臓が3回鼓動を打つごとに誰かが敗血症で亡くなっている)」とも言われています.これは発展途上国だけの問題ではなく,日本を含む先進国でも深刻です.2002年から2008年にかけての10年間で,敗血症発生率は2倍以上と劇的に増加しており,心臓発作よりも多くの患者が敗血症に罹患しています.そして,敗血症患者の20-40%は集中治療室(ICU)での治療を必要としています.

■米国7州にある847病院の重症敗血症患者192980例の死亡統計データから日本にあてはめると,日本では年間38万4千人が重症敗血症に罹患していることになります.2011年の厚生労働省死亡統計では,敗血症が死因とされている死亡は11170例であり,全死亡の0.9%でした(2001年時は6179例であり1.8倍に増加).しかし,この数字は癌など他の病気がある患者が敗血症にかかり死亡した場合などが含まれていない可能性が高く,実際の死亡数はもっと多いものと考えられており,米国モデルにあてはめるならば,おそらく日本の実際の敗血症死亡例は死亡統計の約10倍(年間10-20万人)と予想されます.また,高齢者ほど罹患率,死亡率が高いことも示されており,超高齢化社会を迎えている日本ではさらに敗血症患者は増加すると思われます.

2.世界敗血症同盟(Global Sepsis Alliance)の設立

■この敗血症の世界的な危機的状況を改善させるため,「Stop Sepsis, Save Lives(ストップ敗血症,命を救え)」をスローガンに,非営利団体である世界敗血症同盟(GSA;Global Sepsis Alliance)設立され,敗血症患者のためにより良い管理体制を整えることを目的とし,致死性疾患である敗血症に対する認識を深めるための世界的活動の一貫として,2012年に毎年9月13日をWorld Sepsis Day(世界敗血症デー)と定め,世界各地で各種イベントが開催され,世界敗血症宣言が発表されています.日本でも東京や横浜でイベントが開催されました.
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■日本集中治療医学会では,2012年3月のブリュッセルにおける世界敗血症同盟の準備会議に参加し,World Sepsis Dayの趣旨に賛同し,8月には日本GSA委員会(中川聡委員長)を発足させ,活動を開始しています.活動としては,専門家による敗血症の早期診断,早期治療介入,集中治療,リハビリテーションの知識の普及啓発を医療者および一般市民に対して行うことを計画しています.

■2015年にGSA Japanのホームページが開設されています.敗血症がどのような病気か,どのような症状があれば病院を受診すべきか,どのようにして敗血症を予防するかなどが解説されていますので以下のリンクから是非ご覧ください.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-13 19:38 | 敗血症 | Comments(0)
■これまで2回,コホート研究でHMG-CoA還元酵素阻害薬のスタチンがICUせん妄を有意に抑制するという報告をEly先生らのグループが報告しています(Am J Respir Crit Care Med 2014; 189: 666-73,Crit Care Med 2014; 42: 1899-909).これは,集中治療領域においてスタチンの抗炎症作用が注目されており,また,炎症とせん妄の関連については近年多数の報告がでていることから,スタチンの抗炎症作用がせん妄を減じるという仮説が三段論法で成り立つわけで,この仮説を検証したことになります.

■そして今回,RCTの二次解析にはなりますが,敗血症性ARDS症例におけるスタチンを検討したSAILS trialのデータを用いてICUせん妄をスタチンが抑制するかを検討した報告がLancet Respiratory Medicineに報告されました.結果は見事なまでにネガティブ.集中治療領域でいろいろ期待されてきたスタチンですが,ARDSでむしろ予後が悪化した報告を見たあたりからかなり懐疑的です.おそらく重症急性炎症病態で脂質系に影響を与えるのはよくないのではと思います.
敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者におけるICUでのせん妄と認知機能障害遷延におけるロスバスタチンvsプラセボ
Needham DM, Colantuoni E, Dinglas VD, et al. Rosuvastatin versus placebo for delirium in intensive care and subsequent cognitive impairment in patients with sepsis-associated acute respiratory distress syndrome: an ancillary study to a randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2016 Jan 28 [Epub ahead of print]
PMID:26832963

Abstract
【背 景】
せん妄は人工呼吸患者においてよく見られ,退院後少なくとも1年の認知機能障害と関連している.臨床前観察研究においてはICUにおけるスタチンの使用はせん妄を減少させる可能性が示唆された.我々はスタチンの多面的な効果がICUにおけるせん妄を減少させ,認知機能障害遷延を減少させるかについて無作為化比較試験で評価した.

【方 法】
我々は,敗血症性急性呼吸窮迫症候群患者におけるロスバスタチンvsプラセボの死亡率と人工呼吸器非装着日数を評価した無作為化比較試験であるSAILS trialにおいて本補助的研究を行った.本研究は米国の35病院で行われた.患者は8例のブロック無作為化で割り付けられ,ロスバスタチン(40mgローディングを行い,ICU退室後3日間または試験開始から28日後または死亡まで20mg/日)またはプラセボに病院ごとに割り付けた.患者と研究者は治療割り付けを盲検化された.せん妄はConfusion Assessment Method for intensive care(CAM-ICU)で評価した.認知機能は実行機能,言語,口頭推論と概念形成,動作,迅速性,記憶遅延のテストで評価した.認知機能障害はこれらの項目の1つが正常集団の少なくとも2SD以下または2つが1.5SD以下である場合と定義した.主要評価項目はintention-to-treat集団における28日までのICUにおける毎日のせん妄状態,副次評価項目は6ヵ月および12ヵ月の認知機能とした.本試験はClinicalTrials.govに登録した(NCT00979121 and NCT00719446).

【結 果】
272例の患者がICUにおける毎日のせん妄を評価された.せん妄の日数の平均比率は,ロスバスタチン群で34%(SD 30%),プラセボ群は36%(29%),HR 1.14, 95%CI 0.92-1.41, p=0.22であった.6カ月時点では,ロスバスタチン群で53例中19例(36%),プラセボ群で77例中29例(38%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 0.93, 95%CI 0.39-2.22; p=0.87).12カ月時点では,ロスバスタチン群で67例中20例(30%),プラセボ群で81例中23例(28%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 1.1, 95%CI 0.5-2.6; p=0.87).

【結 論】
ほとんどの患者はせん妄を有し,生存者の1/3が1年以上の追跡で認知機能障害を有していた.前臨床試験および観察研究は好ましい結果であったにもかかわらず,本試験は,優位性の検出には不十分ではあるが,ICUにおけるせん妄あるいは12ヵ月の追跡における認知機能障害を減少させる上でロスバスタチンの有益性は何ら示されなかった.よって,本集団でよく観察されたICUおよびICU後の認知機能障害を減じる目的での介入の評価が引き続き必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-09 18:55 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症性ショックをはじめとする循環不全に対する輸液反応性の指標として受動的下肢挙上(PLR:Passive Leg Raising)を検討した研究のメタ解析がでましたので紹介します.PLRは当院でもカスタマイズEGDTプロトコルに組み込んでいます.今回のメタ解析では,心拍出量増加で見た反応性はかなりの高精度ですが,血圧増加でみるのはあまりあてにはならないようです(特異度が比較的高いので,PLRで血圧が上がれば反応性ありと見てもいいとは思いますが).少なくともEV1000やPiCCOなどといった特殊デバイスがない施設では非侵襲的かつ簡便に行えるものとして推奨されるのではないでしょうか.今回はレビューもつけました.
輸液反応性予測における受動的下肢挙上:システマティックレビューおよびメタ解析
Monnet X, Marik P, Teboul JL. Passive leg raising for predicting fluid responsiveness: a systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2016 Jan 29. [Epub ahead of print]
PMID:26825952

Abstract
【目 的】
成人の輸液反応性予測因子としての,受動的下肢挙上(PLR)による心拍出量(CO)と動脈血圧(PP)の変化を検討した研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った.

【方 法】
関連する原著論文およびレビュー論文をMEDLINE,EMBASE,Cochrane Databaseでスクリーニングした.COおよびPPを評価したROC曲線下面積,感度,特異度,PLRテストの閾値を統合してメタ解析を行った.

【結 果】
21研究(成人患者991例,輸液チャレンジ995例)を登録した.COは,6研究で心臓超音波検査で,6研究で較正脈波輪郭分析で,4研究でバイオリアクタンスで,3研究で経食道ドップラーで,1研究で経肺熱希釈法または肺動脈カテーテルで,1研究で胸骨ドップラーで計測された.PLRと輸液負荷間でのCOの変化の統合相関は0.76(0.73-0.80)であった.PLRによるCOの変化は,統合感度0.85(0.81-0.88),統合特異度0.91(0.88-0.93)であった.ROC曲線下面積は0.95±0.01であった.PLRによるCO変化の最良閾値は≧10±2%であった.PPのPLRによる変化においては(8研究,輸液チャレンジ432例),統合感度は0.56(0.49-0.53),統合特異度は0.83(0.77-0.88),統合ROC曲線下面積は0.77±0.05であった.感度分析およびサブグループ解析は一次解析と一致していた.

【結 論】
急性循環不全の成人において,PLRによるCOの変化は,容量負荷によるCOの反応性を非常に正確に予測する.PLRによるPPの変化の効果を評価すると,PLRテストの特異度は許容できるが,感度は乏しかった.
1.CVP計測の衰退

■Riversらが敗血症性ショックに対するEGDTの有効性をthe New England Journal of Medicineに報告[1]してから十数年,Surviving Sepsis Campaign GuidelinesでRivers’ EGDTが推奨され続けてきたが,その後3つの大規模RCTであるProCESS[2],ARISE[3],ProMISe[4]が相次いで報告され,Rivers' EGDTは集中治療医による標準ケアと同等という結果であった.この結果の解釈は様々であり,一概にRivers' EGDTを否定できるものではないが,EGDTを構成する各種モニタリングを再考する時期にきているとも言える.

■敗血症性ショック治療において急速輸液負荷が必要であることは疑う余地はない.しかしながら,どの程度の量を入れたらよいのかについては未解決の課題であり,現時点で至適投与量の目安は確立されていない.このため,実臨床においては輸液過剰も起こりうる.近年,敗血症性ショック治療に伴う過剰輸液が予後を悪化させる可能性が指摘されており[5,6],Kelmら[6]は,第1病日で,患者の67%に過剰輸液がみられ,48%が第3病日まで輸液過剰が遷延したと報告している.

■輸液反応性の指標については,Rivers' EGDTにも組み込まれている中心静脈圧(CVP)が半世紀にわたって使用されてきたが,近年はその有用性を否定する研究が相次いでいる.Marikら[7]は,CVPの輸液反応性を検討した研究43報のメタ解析を行っており,ROC曲線下面積は0.56[95%CI 0.54-0.58]という結果であり,以前にMarikが揶揄した通り,CVPを指標とするのはまさに「コイントスで決めるのと同じ」という結果であった.もっとも,各種の研究の詳細を紐解けば,CVPが使用できる状況はまだあると思われるが,少なくともCVP単独で判断することは危険かもしれない.

2.Frank-Starling曲線の理論とPassive Leg Raising test

■敗血症性ショック病態に伴う末梢循環不全による虚血が生じている場合,その部位への血液灌流と酸素運搬を要する.酸素運搬量(DO2)の規定因子は,ヘモグロビン濃度(Hb),血中酸素濃度(PaO2),そして心拍出量(CO)である.そしてこの心拍出量の構成要素は心拍数,前負荷,後負荷,交感神経,心収縮性である.一回心拍出量は心室拡張末期容積に依存しており,これは静脈環流によって決定される.この拡張末期容積に相当するものが前負荷であるが,Frank-Starling曲線の理論に基づくならば,前負荷の増加に応じて一回心拍出量が増加する.また前負荷がある一定レベルを超えるとむしろ一回拍出量は減少することも知られている.よって,一回心拍出量の増大が得られる前負荷の上限が輸液量の目安となってくる.

■前述のCVPは,確かに敗血症性ショック病態においては低下しやすい.しかし,CVPは交感神経系と心機能の影響を容易に受けうるものであることに注意が必要であり,交感神経興奮が続くと循環系の中心化が生じ,低下したCVPが上昇することがある.このため,CVPが目安になったとしてもそれはショックの初期の段階のみであるとする報告が複数ある.

■Frank-Starling曲線の理論に基づくならば,輸液反応性を見るための最良の方法は実際に輸液して前負荷をかけることであるが,当然ながらこれは過剰輸液リスクに曝される.体液総量を増加させずにあたかも急速輸液負荷をしたかのような効果を見ることができれば輸液反応性を安全に見ることができるといえる.

■そこで,輸液反応性の指標として多数報告されているのが受動的下肢挙上(PLR:Passive Leg Raising)を用いた試験である.一般的に下肢を挙上することでおよそ150-200mLの輸液負荷に相当することが古くから知られており[8],PLRはその応用である.PLRの方法は,45度ヘッドアップの状態からスタートし,その後頭部フラット+45度下肢挙上状態にすることで心拍出量や血圧が増加するかどうかを評価するものであり[9],この手法では300-500mLの輸液ボーラス投与に相当するとされる.これいより心拍出量増大をもって輸液反応性ありと判定することは実に理にかなっているものと思われる.上記のメタ解析において血圧においては感度が低かった理由は,血圧の規定因子が心拍出量と末梢血管抵抗の2つであることを考慮すると,ノルアドレナリン等で十分な末梢血管抵抗増大が得られていない患者をincludeすることにより輸液反応性判定の感度が下がることは容易に想像できる.
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■このPLRのメリットは非侵襲的(新たにカテーテル挿入が不要)であり再現性が高いことにある.また,人工呼吸器患者と自発呼吸患者では下大静脈等の圧モニタリングが異なる,カテーテルを用いたモニタリングでは心房細動等の不整脈患者では使用できないなどの問題点があるが,Cavallaroら[10]の9報メタ解析では,PLR testでは自発呼吸か人工呼吸器装着,洞調律か不整脈かで差がないことも大きなメリットといえる.

■Xiao-Tingら[11]は,ICUで人工呼吸器を装着している敗血症性ショック患者48例においてPLR testとETCO2(呼気終末炭酸ガス濃度)を用いて輸液反応性を前向きに検討している.この検討では,PLR testによって輸液反応性があると予測された患者では反応性がないと判定された患者よりもETCO2が有意に増加しており(3.0±3.0 vs 0.5±2.5mmHg; p<0.05),PLR testによるETCO2の5%以上の増加は輸液反応性を感度93.4%,特異度75.8%,AUROC 0.849(95%CI 0.739-0.930)で予測するとしている.

■現時点では敗血症性ショックに対してPLR testを用いたプロトコルを検討したRCTは報告されていないため,PLR testによるeffect sizeを知ることはできない.しかし,これまでの観察研究やそのメタ解析結果から,心拍出量増大を目安とした場合の輸液反応性を高精度に予測し,かつ非侵襲的で簡便に行えるものとしてPLR testは今後積極的に検証されるべき手法であると思われる.

[1] Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 2001; 345: 1368-77
[2] ProCESS Investigators; Yealy DM, Kellum JA, Huang DT, et al. A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med 2014; 370: 1683-93
[3] ARISE Investigators; ANZICS Clinical Trials Group; Peake SL, Delaney A, Bailey M, et al. Goal-directed resuscitation for patients with early septic shock. N Engl J Med 2014; 371: 1496-506
[4] Mouncey PR, Osborn TM, Power GS, et al; ProMISe Trial Investigators. Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock. N Engl J Med 2015; 372: 1301-11
[5] Boyd JH, Forbes J, Nakada TA, et al. Fluid resuscitation in septic shock: a positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality. Crit Care Med 2011; 39: 259-65
[6] Kelm DJ, Perrin JT, Cartin-Ceba R, et al. Fluid Overload in Patients with Severe Sepsis and Septic Shock Treated with Early-Goal Directed Therapy is Associated with Increased Acute Need for Fluid-Related Medical Interventions and Hospital Death. Shock 2015; 43: 68-73
[7] Marik PE, Cavallazzi R. Does the central venous pressure predict fluid responsiveness? An updated meta-analysis and a plea for some common sense. Crit Care Med 2013; 41: 1774-81
[8] Rutlen DL, Wackers FJ, Zaret BL. Radionuclide assessment of peripheral intravascular capacity: a technique to measure intravascular volume changes in the capacitance circulation in man. Circulation 1981; 64: 146-52
[9] Thiel SW1, Kollef MH, Isakow W. Non-invasive stroke volume measurement and passive leg raising predict volume responsiveness in medical ICU patients: an observational cohort study. Crit Care 2009; 13: R111
[10] Cavallaro F, Sandroni C, Marano C, et al. Diagnostic accuracy of passive leg raising for prediction of fluid responsiveness in adults: systematic review and meta-analysis of clinical studies. Intensive Care Med 2010; 36: 1475-83
[11] Xiao-Ting W, Hua Z, Da-Wei L, et al. Changes in end-tidal CO2 could predict fluid responsiveness in the passive leg raising test but not in the mini-fluid challenge test: A prospective and observational study. J Crit Care 2015 Jun 1 [Epub ahead of print]
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by DrMagicianEARL | 2016-02-04 18:51 | 敗血症 | Comments(0)
■発熱があると解熱薬でついつい下げたくなってしまう医療従事者は多いと思いますが,その弊害も近年知られるようになってきています.多施設共同コホート研究のFACE studyでは,敗血症患者において発熱が予後に影響しないが,解熱薬使用は予後を悪化させるとする報告が出て話題となりました.

■敗血症患者では高体温よりも低体温の方が予後が悪いことも既にいくつもの観察研究で示されており,重症感染症における解熱薬使用はあまりよくないのではないか?ととらえられるようになってきています.私自身,ICUで発熱を呈した敗血症患者に対しては,発熱による患者自身の不快感がかなり強くクーリングで解決しないとき,人工呼吸器装着中でFiO2 1.0でも酸素化が得られにくいとき,CO2貯留が過剰となりすぎているとき,高熱で中枢神経症状がでるとき,といった場合を除けば解熱薬は基本的に使用しません.

■今回,感染症が疑われたICU患者に対するアセトアミノフェンの効果を見たANZICSのRCTであるHEAT trialが報告されましたので,以下に紹介するとともに簡単なレビューをつけました.結果はアウトカムに影響なし,ということでルーチンでアセトアミノフェンを使用する必要性はないという推奨になるでしょうか.もっとも,この研究はあくまでもICU入室患者が感染症に罹患した場合であって,敗血症患者ではありませんから,敗血症と解熱薬に関してはまた別に評価が必要と思われます.(このあたりはよく混同されますが,感染症が原因でICUに入室した患者と,ICU入室中に感染症を発症した患者では重症度が異なります.当然後者の方が感染症の重症度は低いことがほとんどなのですが,これを全く同等と扱ってエビデンスを述べるとおかしなことになってきます).
感染症が疑われた重症患者の発熱に対するアセトアミノフェン(HEAT trial)
Young P, Saxena M, Bellomo R, et al; for the HEAT Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group. Acetaminophen for Fever in Critically Ill Patients with Suspected Infection. N Engl J Med 2015, October 5 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
アセトアミノフェンは,感染症が疑われた集中治療室(ICU)の患者の発熱に対する一般的な治療であるが,その効果は知られていない.

【方 法】
我々は,発熱(体温≧38℃)かつ感染症あるいはその疑いのあるICU患者700例を,ICU退室,解熱,抗菌薬治療中止あるいは死亡となるまで,6時間ごとにアセトアミノフェン1g静脈内投与を受ける群とプラセボ群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,無作為化から28日までのICUに在室しない日数(生存かつ集中治療の必要性がない日数)とした.

【結 果】
28日時点でICUに在室しない日数はアセトアミノフェン群とプラセボ群とで有意差がなく,アセトアミノフェン群で23日間(四分位範囲13-25),プラセボ群で22日間(四分位範囲12-25)であった(Hodges–Lehmann推定絶対差 0日間; 96.2%CI 0-1; p=0.07).アセトアミノフェン群で345例中55例が,プラセボ群で344例中16.6%が90日までに死亡した(RR 0.96; 95%CI 0.66-1.39; p=0.84).

【結 論】
感染症疑いによる発熱の治療のためのアセトアミノフェンの早期導入はICUに在室しない日数に影響を与えなかった.
1.ICU患者の発熱

■発熱は集中治療を要する重症患者に頻繁に生じる症状の1つであり[1],集中治療患者の20-70%に発熱が生じることが知られている[2-4].発熱を契機に新たな診察,検査,治療が開始されることは稀ではない[5].また,発熱は,手術,輸血,薬剤,急性拒絶など感染症以外の要因でも生じる.

■SIRSにおける体温上昇は,脳血液関門(BBB)がない視床下部に炎症性メディエータ受容体が発現しており,誘導型シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の転写段階からの産生亢進によるプロスタグランディンE2(PGE2)の産生により発熱反応が誘導される[6]

■発熱は,患者不快感,呼吸需要および心筋酸素需要の増大[7],中枢神経障害[8,9]などを生じるため,これらの改善を期待して,外表冷却や解熱薬による解熱処置が行われる[10]

■感染症による体温上昇は,抗体産生増加,T細胞活性化,サイトカイン合成,好中球およびマクロファージの活性化等の免疫系を惹起させる自己防衛反応であり[11,12],解熱処置によりこれらの防衛反応が抑制されてしまう可能性もある.また,解熱薬には胃腸障害,肝障害,腎障害などの副作用もある[13]

■重症度など患者情報を調整した多変量解析を行った上で,発熱と患者死亡率増加との関連性を示した報告が存在する[1,14].しかし,これらの結果は全て発熱と患者死亡率との関係を調査した観察研究から得られたものであり,あくまでも前後関係であって,その因果関係を結論付けることはできない.敗血症患者においては,発熱は予後に影響せず,その一方で低体温が予後を悪化させるとする報告が複数ある[15-18]

2.ICU患者への解熱薬

■発熱と患者死亡の関係を観察した研究は多数あるが,この中に解熱処置を含めての研究はこれまでほとんどない.また,解熱治療の有効性を評価したRCTは3つ[19-21]ある.2つはクーリングの効果をみており[19,20],クーリング施行群が死亡率が低い傾向[19]もしくは有意に低い[20]であった.もう1つはアセトアミノフェン+クーリング評価をみたもので[21],死亡率は積極的解熱群16%,非解熱群2.6%と有意に積極的解熱群の死亡率が高かった.

■RCTではないが,日韓共同のFACE study(Fever and Antipyretic in Critical ill Evaluation study)という研究がある[22].本研究の目的は,①ICU患者の発熱発生頻度・解熱処置の施行頻度とそれに伴うコスト,②ICU患者の発熱が患者予後に与える影響,③ICU患者に対する解熱処置が患者予後に与える影響,を調べることである.対象患者は2009年9月1日から11月30日までに登録された25施設の48時間以上ICUに滞在する脳損傷の疑いのない成人患者1425例であり,基礎疾患が敗血症の場合,発熱自体は予後に影響しないが,解熱剤(NSAIDsおよびアセトアミノフェン)の投与は28日死亡率悪化の独立因子であった(NSAIds補正OR 2.61, p=0.028,アセトアミノフェン補正OR 2.05, p=0.01).なお,非感染症での発熱は39.5℃以上で予後が悪化する(補正OR 8.14. p=0.01).現在,この関連性を実証するためにFACE II studyが進行中である.なお,FACE studyにおいてクーリング処置は施行されていない.

■ただし,合併症しだいでは感染症の発熱に対して例外的に解熱薬を使用すべき状況があるかもしれない.重度の呼吸不全患者においては体温が1℃上昇すると体内酸素消費量が13%増加するため,呼吸不全や心筋虚血の悪化を招く恐れがあるため,とりわけFiO2がかなり高用量となっているケースでは解熱薬をオプションとして考えてもいいのではないかと思われる.また,中枢神経系においても,体温管理の重要性は周知されており,解熱薬が有効な発熱であれば使用を考慮してもよいと思われる(逆に言えば熱中症での解熱薬は使用すべきではない).

■以上と今回のHEAT trialの報告を以下にまとめる.
・感染症(敗血症)における発熱は予後を悪化させうるものではない.
・感染症患者の発熱に対する解熱薬が予後を改善するエビデンスはなく,ICU患者が感染症疑いによる発熱を呈してもルーチンで解熱薬を使用することは推奨されない.
・敗血症などの重症感染症の発熱においては解熱薬が予後を悪化させうる懸念があるため,特定の状況(中枢神経症状,呼吸不全,心筋虚血病態などの合併)を除いては原則として推奨されるものではない.


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by DrMagicianEARL | 2015-10-06 15:12 | 敗血症 | Comments(0)

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