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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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 敗血症性ショックにおけるノルアドレナリンとドパミンの論争が続いていた.SSCGではいずれでもよいとしているが,病態生理学的にはノルアドレナリンの方が有用とする意見が多く,臨床的にもノルアドレナリンが死亡率が低いとする報告がでてきていた.メタ解析ではJ Intensive Care Med online March 24, 2011が既に出ており,ノルアドレナリンの方が有意に死亡率が低いとの報告であった(6研究,N=2043).

 本ブログにおいては敗血症性ショック(Warm Shock)の急性期治療におけるEGDTと昇圧剤についてまとめている.⇒くわしくはこちら

 今回Critical Care Medicineからのメタ解析.11研究,N=2768.結論は,ドパミンの方が死亡率,不整脈発生率がノルアドレナリンより高いという報告で,ノルアドレナリンを支持する内容.これが今後のEBMになっていくと思われ,敗血症性ショックではノルアドレナリンが第一選択に推奨され,ドパミンは推奨されない.

De Backer, Daniel MD, PhD; Aldecoa, Cesar MD; Njimi, Hassane MSc, PhD; Vincent, Jean-Louis MD, PhD, FCCM
Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis
Critical Care Medicine:
March 2012 - Volume 40 - Issue 3 - p 725–730

Objectives: There has long-been controversy about the possible superiority of norepinephrine compared to dopamine in the treatment of shock. The objective was to evaluate the effects of norepinephrine and dopamine on outcome and adverse events in patients with septic shock.

Data Sources: A systematic search of the MEDLINE, Embase, Scopus, and CENTRAL databases, and of Google Scholar, up to June 30, 2011.

Study Selection and Data Extraction: All studies providing information on the outcome of patients with septic shock treated with dopamine compared to norepinephrine were included. Observational and randomized trials were analyzed separately. Because time of outcome assessment varied among trials, we evaluated 28-day mortality or closest estimate. Heterogeneity among trials was assessed using the Cochrane Q homogeneity test. A Forest plot was constructed and the aggregate relative risk of death was computed. Potential publication bias was evaluated using funnel plots.

Methods and Main Results: We retrieved five observational (1,360 patients) and six randomized (1,408 patients) trials, totaling 2,768 patients (1,474 who received norepinephrine and 1,294 who received dopamine). In observational studies, among which there was significant heterogeneity (p < .001), there was no difference in mortality (relative risk, 1.09; confidence interval, 0.84–1.41; p = .72). A sensitivity analysis identified one trial as being responsible for the heterogeneity; after exclusion of that trial, no heterogeneity was observed and dopamine administration was associated with an increased risk of death (relative risk, 1.23; confidence interval, 1.05–1.43; p < .01). In randomized trials, for which no heterogeneity or publication bias was detected (p = .77), dopamine was associated with an increased risk of death (relative risk, 1.12; confidence interval, 1.01–1.20; p = .035). In the two trials that reported arrhythmias, these were more frequent with dopamine than with norepinephrine (relative risk, 2.34; confidence interval, 1.46–3.77; p = .001).

Conclusions: In patients with septic shock, dopamine administration is associated with greater mortality and a higher incidence of arrhythmic events compared to norepinephrine administration.
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by DrMagicianEARL | 2012-02-21 19:01 | 敗血症 | Comments(0)
肝肺症候群
Hepatopulmonary syndrome
~A Liver Induced Lung Vascular Disorder~

1.肝肺症候群の概要
 末期肝疾患患者には何らかの肺ガス交換機能異常がみられることが多い.大量の腹水による胸郭容積の減少,胸水貯留とその結果起こる無気肺などによって酸素化は悪化する.これら非特異的な要因以外に,肝疾患に特有の肺血管系の異常が起こってくることがある.それが肝肺症候群と門脈肺高血圧症である.以下ではHPSについて説明する.

HPSは1977年に初めて報告された症候群であり,①肝疾患,②肺内血管拡張(基礎に心肺疾患を伴わない),③動脈血低酸素血症,を3徴とし,あらゆる年代の肝疾患患者が罹患しうる.諸報告によれば,慢性肝疾患を有する患者においては,4-47%が本疾患を有するとされている.

2.臨床症状
症状は主として労作時呼吸困難であるが,特に立位で低酸素症状が増悪するのが特徴とされている(platypnea;扁平呼吸or起座位呼吸困難).また,座位より立位で動脈血中酸素飽和度の5%以上の低下,もしくは動脈血酸素分圧の4 Torr以上の低下がみられるとされている(orthodeoxia).他には,しばしばばち指やチアノーゼを呈する.慢性肝疾患患者で動脈血酸素分圧が空気呼吸下で70mmHgを下回れば本症を疑い,精査を行う必要がある.

なお,進行した肝疾患患者では貧血,腹水,水分貯留,筋萎縮などの肝疾患に関連する様々な合併症によって呼吸困難が認められる頻度が高く,呼吸困難があるからといって肝肺症候群と診断するのは早計である.

3.病態
低酸素血症の機序は肺内血管の拡張による右左シャントの増大であるが,肺内血管拡張の様式によって2つに分類されている.著しい肺毛細管の拡張がびまん性に起こり,換気血流不均衡が増大するタイプ1 と,肺動脈と肺静脈あるいは左房を直接つなぐ血管が新生されるタイプ2があるが,両者が混在することも多い。確定診断をするためにはこの肺内の血管拡張を証明する必要がある.正常肺の毛細血管径は5-8μm程度であるが,肝肺症候群では血管径は500μmに達する.この口径差を利用し,血管拡張を検出する方法として,後述する経胸壁のコントラストエコーと凝集アルブミンを用いた肺血流シンチグラフィがある.

肺血管が拡張すると,混合静脈血が直接的にまたは肺内シャントを経由して肺静脈へ流入しやすくなる.肺胞換気は増加しないのに,肺血流が増えるため換気血流不均衡が起こり酸素化不良となる.肝硬変患者の30%では低酸素性肺血管収縮が抑制または消失するため,さらに肺血流が増大する.肺内シャント増大や換気血流不均衡の程度は低酸素血症の程度に反映される.それに対して,門脈肺血管交通の低酸素血症との関与は僅かである.換気血流不均衡とシャントの増悪が肝肺症候群におけるorthodeoxia発生メカニズムの本態である.下側肺肺胞の肺血管トーンが変化に乏しいため換気に呼応した重力性の血流変化が起こりにくいことがorthodeoxiaの原因と考えられる.

HPSの重症度が進むに従って酸素拡散障害は悪化する.病期が進行し拡散障害が生ずると,心拍出量が増大するほど赤血球が通過する時間が短くなるのでかえって酸素化が悪化する.この現象は肝疾患一般と一部の肝肺症候群において認められる.拡散能低下のもう一つの原因は,肺胞毛細血管間隙が広すぎてヘモグロビンと一酸化炭素が完全な平衡に達することができないことであると考えられている.

このような肺血管拡張という病理学的変化が生じる原因としては血行力学的な要素や血管拡張作用をもつ物質(酸化窒素,グルカゴン,プロスタサイクリンなど)の関与が示唆されているが,詳細は不明である.

4.検査
 胸部X線撮影,胸部単純CTでは異常所見はみられないことがほとんどである.多くは非特異的な所見を示し,び漫性の肺血管拡張の存在によるものと考えられる軽度の間質性陰影が下肺野に認められることがある.毛細血管レベルでの動静脈瘻なので,造影CTでも特に異常はみられないことがほとんどである.

 動脈血ガス分析では拡散障害を主体とし,二酸化炭素蓄積を伴わないPaO2の低下と肺胞動脈血酸素分圧較差の増大を特徴とする.A-aDO2の算出は,純酸素100%を安静臥位にて20分吸入した後に施行したABGデータで行う.算出式は以下の通りである.
A-aDO2=716-PaO2-PaCO2/0.8
本算出式にてA-aDO2>15 Torrであれば,拡散障害があるとみなされる.この基準を満たした上で,室内気でのPaO2を指標として以下のような重症度分類が用いられている.
 軽 症:PaO2≧80
 中等症:80>PaO2≧60
 重 症:60>PaO2≧50
 超重症:50>PaO2 or PaO2<300mmHg(100% O2)
また,100%酸素下でのシャント率(QT/QS)も指標となる.

 肺肝症候群は,心肺疾患が基礎にないことが前提であるが,肝肺症候群から心機能に影響を与えることはある.肺内シャントの存在のため,肺低血圧症,左心系容量負荷増大による左房・左室の拡大を心臓超音波検査で認めることがある.

 確定診断としては,コントラスト心臓超音波検査と肺血流シンチグラフィの2種類がある.いずれもHPSに対しては同等の精度を有するため,侵襲性の少ない前者を第一選択とするのが望ましい.ただし,前者は定量的評価はできないので,追跡フォローするのであれば肺血流シンチグラフィの方が望ましい.

経胸壁コントラストエコーは微小な気泡を造影剤として用いる検査法で,定量性はやや劣るものの簡便で感度の高い検査である.激しく撹拌した少量の生理食塩水(約20mL)を静脈内に投与するとまず右心が造影される.その後、気泡は肺血管床へと移動するが,撹拌した生理食塩水に含まれる気泡の直径は15μm以上のため,直径2-8μmの正常肺毛細血管を通過することができず捕捉される.従って右心造影後7心拍以内に左心に気泡が現れれば肺血管の拡張があると判断される.なお,心臓超音波検査では微小気泡であるレボビストという造影剤を用いた検査もあるが,この造影剤は径1.3μmの気泡であり,正常人でも肺毛細血管を通過して左心に出現してしまうのでHPSの診断としては意味がない.

肺血流シンチグラフィでは造影剤としてテクネチウムでラベルした凝集アルブミン(99mTcMAA)を用いる.凝集アルブミンの径は20μm以上であるため,気泡と同様,静脈内に投与しても通常は肺の毛細血管を通過せず大循環に現れてこない.従って肺以外にアイソトープの取り込みがみられた場合には肺内に血管拡張が存在することが証明される.この検査では肺と肺以外(脳・甲状腺など)に集積したアイソトープの量からシャント率を定量することができる.

5.治療・予後
HPSは進行性で,ガス交換能はしだいに悪化していく事が多く,自然緩解はほとんどない.HPSを合併した肝硬変症例は,合併しないものに比べて予後が極めて悪く,多くが肝細胞機能低下,門脈圧亢進といった合併症で死亡すると報告されている.このことから,HPSの存在自体が肝疾患の進行を早め,門脈圧亢進による合併症のリスクを増すという報告がなされている.

HPSに対しては,在宅酸素療法やインドメタシン,ソマトスタチンの投与が有効という報告もあるが,長期予後を改善した報告はなく,その効果は対症療法程度に留まっている.実際には有効な内科的治療法は現在のところ存在しない.1997年頃から肝移植によって肝肺症候群が治癒したとの報告が相次ぎ,現在では肝移植が肝肺症候群に対する唯一の根本的治療法であると認識されている.しかし,肝移植後,酸素化能が正常化するには年単位の時間を要することが多い.

術後死亡率および移植後から低酸素血症の改善までの期間は,HPSの重症度が高く,術前低酸素血症が重篤であるほど延長することが明らかにされている.今までに行われたうちで最も大規模な単一施設研究では,HPS患者の肝移植後5年生存率は76%であるという結果が得られており,HPSがなく肝移植を受けた患者の5生率とのあいだに有意差はなかった.HPS合併例で肝移植を受けない場合の死亡率がHPS非合併例に比して有意に高い事実を加味すれば,肝移植がHPS患者にとっていかに有効かが分かる.この研究で死亡の予測因子として最も強い影響が認められたのは術前PaO2が50 Torr以下であることと,肺血流シンチにおける脳の取込みが20%以上であることであった.

移植以外の治療ではHPSの予後は悪いので,PaO2が60 Torr以下の肝肺症候群の患者はほかの疾患で肝移植の候補になっている患者より優先度を高く考えねばならない.上述のようにHPSは進行性であること,HPS自体が肝障害を悪化させること,低酸素血症が高度になれば肝移植の手術成績が悪くなることといったことから,HPSを示す症例では,肝機能が維持されている段階でも肝移植の適応となりうるため,今後我が国でも肝肺症候群に対する肝移植手術の症例数は増加していくと思われる.

6.周術期合併症
HPSの合併症は低酸素に起因するもの以外に血管拡張そのものが関与するものがある.肺血管床は凝血塊などの微小な血液内浮遊物を取り除くフィルターの役割も果たしている.肺血管が拡張するHPSではこのフィルターとしての機能が損なわれるため,大循環系の塞栓症を発症する危険性がある.HPSの患者に脳の出血梗塞や脳膿瘍が発生したとする症例報告がすでになされている.周術期には血栓や空気などが静脈内に混入する可能性が高いため,肝肺症候群の患者では中枢神経系や心筋の虚血症状に十分注意する必要があると思われる.

7.最後に
 HPSは医師の間ではまだあまり知られている病態ではなく,消化器内科医の間でもマイナーである.それだけに肝硬変などに合併したHPSは見逃されやすく,早期の移植の機会を逃してしまいかねない.肝硬変は適応は受けにくいが,HPSの診断があることで移植の機会を得る可能性は大きく増すであろう.確定診断法であるコントラスト心臓超音波検査は手技が簡便であり,短時間ですむ外来でも可能な検査であり,慢性肝疾患患者の4-47%がHPSを有することをふまえれば,HPSの3徴を満たす患者には積極的に行うべきであろう.
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by DrMagicianEARL | 2012-02-20 18:30 | Comments(0)
■MRSAはMethicillin Resistant Streptococcus Aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の略であり,黄色ブドウ球菌の中でもmecA(methicillin耐性)遺伝子を持ち,βラクタム系抗菌薬に耐性化したものと定義されている.このため,耐性化していない黄色ブドウ球菌はMRSAに対してMSSA(Methicillin Sensitive Streptococcus Aureus)と称する.以下,黄色ブドウ球菌はSAと略す.

■1928年のフレミングのpenicillinの発見と1940年代のチェインらによるpenicillinの実用化により,SAによる化膿性感染は克服された.しかし,1940年代末には一部の国でpenicillin耐性SAの割合が50%を越え,1950年代には80%に達した.これらの耐性菌は菌体内にプラスミド性のペニシリナーゼ遺伝子を持ち,その酵素活性によって,penicillinのβラクタム環が加水分解されて活性を失うことによる耐性化機構をもっていた.このペニシリナーゼ遺伝子保有菌は世界中に広がり,現在もなお臨床の場で分離されるSA,特にMRSAの大部分が保有している.ペニシリナーゼはその後開発されたABPCなどの広域ペニシリンも加水分解でき,耐性化をSAに与えている.それに対し,ペニシリナーゼに加水分解されないペニシリン系抗生物質であるメチシリン,オキサシリンなどが1960年に開発された.

■1960年に英国で5440株のSAが集められ,同一病院由来のSAの3株がメチシリン耐性を示していたのがMRSAの最初の報告である[1].1961-1962年に集められた22000株には99株(0.45%)のMRSAが検出された[2]

■本邦では1980年代になってMRSAの分離が次第に見られるようになった.MRSA病院感染が急激に増加するに至った背景には1981年の第3世代セファロスポリン系抗菌薬の発売とその後の多用が引き金になっていると推察されている.MRSA分離頻度は50%に達するも,MRSA感染症発症率は概ね0.8%前後のほぼ定常状態にあり,増加傾向はみられないことから,本邦でのMRSA病院対策は効果的に遂行されている.しかしながら,2006年の診療報酬改正では感染対策費が姿を消しており,これがどう影響するかは未知数である.

■近年話題となっている市中感染型MRSA(CA-MRSA)が増加しており,一般的なMRSAをHA-MRSAと表記することが増えてきた.

■高病原性のPanton-Valentine leukocidin(PVL:白血球破壊毒素.遺伝子コードlukS-lukF)遺伝子を有するMRSA市井感染症(PVL+CA-MRSA)が欧米で話題となっている[3].1990年代初頭,西オーストラリアのアボリジニの間で初めて報告されて以来,欧米において刑務所,スポーツチーム,学童などで集団発生が報告されている.PVL+CA-MRSAは遺伝子的にHA-MRSAとは異なっており,重篤な軟部組織感染ないし壊死性肺炎(致死率75%)を伴うため,公衆衛生上の脅威となっている.本邦では1979-80年代初期にはかなり認められたPVL+MRSAであるが,1999-2002年にはほとんど認められなくなった.しかしながら,本邦でもいつまた再度アウトブレイクするかは不明であり注意が必要である.

[1] British Med J 1961; 1: 124-5
[2] Lancet 1963; 1: 904-7
[3] Emerge Infect Dis 2003; 9: 978-84
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by DrMagicianEARL | 2012-02-03 12:19 | MRSA | Comments(0)

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