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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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当院地区での加算1-2連携第3回感染防止対策会議+感染対策トピックスをピックアップ

■とある地区において加算1の感染対策専従看護師が夜勤を行っていることが発覚し,加算1が剥奪され,その下についていた加算2の病院もすべて感染防止対策加算が剥奪されるという事例が発生したとのこと.1つの病院がルール違反を行えば他の病院も巻き添えをくらうことが実例として明らかになった.厚生労働省が想定した以上にはるかに多くの病院が感染防止対策加算を取りに来ていることから,予算の関係もあり,わずかなルール違反であっても加算剥奪を躊躇なく行ってくると考えられる.

■ICTラウンドは以下の5種類
(1) 血液培養陽性例,耐性菌検出時
(2) 抗菌薬適正使用
(3) 感染症診療(コンサルテーション)
(4) 環境感染ラウンド
(5) リンクナース,リンクドクター等の現場責任者によるチェックラウンド

■環境感染ラウンドは多くの病院では看護師主体であり,医師がかかわることが少ないが,何度かは参加しておくべきである.概して医師の環境感染に関する知識は少ない.環境感染ラウンドで重要なのは写真撮影であり,必須とすべきである.また,環境感染ラウンドでは清掃委託業者と一緒にラウンドすることが望ましい.

■環境調査(環境培養)は以下の場合で行われる.
(1) アウトブレイク時
(2) アウトブレイク疑い時
 ① 特定の菌の検出
 ② 普段遭遇しない菌の検出
 ③ 耐性菌が継続的に検出
(3) ベースライン把握時
CDC環境感染対策ガイドライン[1]ではベースライン把握のための環境調査は推奨されていないが,ケースバイケースで行うべきかもしれない.

■本邦では,MDRAB(多剤耐性アシネトバクター),MDRP(多剤耐性緑膿菌)などの多剤耐性菌のほとんどは抗菌薬暴露による適応耐性であり,メタロβラクタマーゼ産生菌は極めて稀であり[2,3],MDRAB・MDRPのうちせいぜい0.3%程度である.

■病院建て替えの時はICTが必ず設計チェックを行うべきである.環境感染対策を無視したとんでもない設計が行われいたりすることはよくある.また,新病院建設時はアスペルギルスに注意が必要である.

■各病院でのスポンジの使用状況について,感染防止対策会議やICDアカデミーのパネルディスカッションで話題に上がった.「スポンジは緑膿菌の塊と思え」が最近の警鐘である.スポンジは内部の洗浄・乾燥が難しく,緑膿菌,アシネトバクターなどのグラム陰性菌が増殖しやすい環境である.また一度増殖した緑膿菌はバイオフィルムを形成するため,乾燥に対しても抵抗性を示す.実際に,このようなスポンジの微生物汚染について調べたところ,高頻度に緑膿菌で汚染されていたとの報告[4]があるため注意が必要である.この報告では,85%のスポンジに細菌の定着を認め,また,そのうち31.4%は緑膿菌であった.また,緑膿菌汚染を受けていたスポンジを2日間室温放置して乾燥させ,その後スポンジに付着した緑膿菌の生菌数を調べたところ,2日間室温放置して乾燥させたスポンジではすべて緑膿菌が生存していた.また,いくつかは2ヶ月間にわたって緑膿菌が生存していた.

■スポンジの使用後は70-80℃10分間などの熱水消毒,または洗浄後,0.1%次亜塩素酸ナトリウム(ヤクラックスD液1%など)に30分以上浸漬し消毒し,十分乾燥させる必要がある.ただし,一度汚染されると乾燥させても清潔にはならないので,長期間の使用は避け,できるだけ早く廃棄することが望ましい.スポンジ交換頻度は数日から2週間と病院によって様々である.東京女子医大では業者と交渉し,1個15円のスポンジを仕入れ,1回きりの使い捨てとしているとのことであった.スポンジはなくしていく方向に向かうべきものなのかもしれない.使い回しするスポンジの使用は避け,クロスなどディスポーザブルの清拭用具を用いることが望ましい.

■感染対策上,自動蓄尿器を使ってはならない.過去に東京大学で自動蓄尿器によって緑膿菌のアウトブレイクがあった.

■消化器内視鏡は非常に感染対策がよくなった.その一方,どの病院でも問題になっているのが部署持ちの内視鏡である.特に耳鼻咽喉科の内視鏡の感染対策は不透明なケースが多い.

■自動蓄尿器は使用すべきではない.すでに自動蓄尿器による緑膿菌のアウトブレイクが国内で報告されている.極力ディスポーザブルなものをマニュアルで使用すべきである.

■水道の配管内に滞留している水にレジオネラが増殖することがある.このため,出し始めの水は使用せず,ある程度流してから使用すべきである.

[1] Sehulster L, Chinn RY; CDC; HICPAC. Guidelines for environmental infection control in health-care facilities. Recommendations of CDC and the Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee (HICPAC). MMWR recomm rep 2003; 52: 1-42
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[3] Ishikawa K, Matsumoto T, Yasuda M, et al.The nationwide study of bacterial pathogens associated with urinary tract infections conducted by the Japanese Society of Chemotherapy. J Infect Chemother 2011; 17: 126
[4] Oie S, Kamiya A. Contamination and survival of Pseudomonas aeruginosa in hospital used sponges.Microbios 2001; 105: 175-81
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by DrMagicianEARL | 2012-10-23 13:57 | 感染対策 | Comments(0)
マイコプラズマ肺炎(1)「病原体,症状,疫学」についてはこちらをクリック
マイコプラズマ肺炎(2)「検査,診断,治療」についてはこちらをクリック
Summary
・本邦ではマクロライド耐性マイコプラズマが小児において急増している.その一方で成人においてはマクロライド耐性株感染は比較的稀である.
・マクロライド耐性株は主に23S rRNAドメインVのA2063G変異が原因となっている.
・CAM 400mg/日,AZM 500mg/日の経口投与が奏功しないことは必ずしもマクロライド耐性株であることを示さない.
・マイコプラズマがテトラサイクリン系に耐性を示すことは現時点ではないと考えられている.一方で,キノロン系は点突然変異による耐性化をきたしうる.
・マクロライド耐性マイコプラズマであってもマクロライドが奏功しうるケースもあるが,その一方で感性株と比較して有熱期間などが有意に延長することも報告されている.
・耐性株が増加していても,マイコプラズマ肺炎のエンピリック治療は原則としてマクロライド系抗菌薬が第1選択薬であることに変わりはない.
・マクロライド耐性マイコプラズマ確定例に対してはテトラサイクリンを第1選択とすることが望ましいかもしれない.
・7日間以上解熱しない症例においては免疫学的な異常であると考えられ,ステロイド投与が考慮されるべきである.

1.マクロライド耐性機構
■本邦では臨床におけるマクロライド系抗菌薬の使用量増加に伴い,2000年頃からマクロライドに耐性を示すMp(マイコプラズマ)が出現し始め[1],その後耐性株が急激に増加している[2,3].耐性株は主に小児で見られているが,稀ながら成人での報告も散見される[4].当初は日本のみであったが,アジア[5],欧州[6,7],米国[8]など海外からも報告が見られるようになった.

■マクロライド耐性Mp感染症の診断は薬剤感受性試験もしくは23S rRNAの遺伝子を標的としたPCRを行って生成物の遺伝子変異をダイレクトシークエンス法で調べるなどを行う必要があるが,可能な施設は限られており,労力やコストも考えると現実的ではない.このため,臨床現場においてはマクロライドの奏功有無で判断することになるが,CAM(クラリス®,クラリシッド®)400mg/日やAZM(ジスロマック®)500mg/日の経口投与が有効でないことでマクロライド耐性株と判断することはできない.実際に判定するならばCAM 800mg/日やAZM SR2gで無効であることの確認が必要となる.
⇒理由についてはマイコプラズマ肺炎(2)「検査,診断,治療」の治療の項目参照

■マクロライドはribosomeに作用してポリペプチド合成を阻害する.その作用にあたって23S rRNAドメインVの2063,2064番目のアデニンがとりわけ重要であり[9,10],この部位に置換やメチル化などの変異が入るとマクロライドは作用部位に結合できず,菌は耐性化する.実際,耐性株の約90%は2063番目のアデニンからグアニンへの置換(A2063G)であり,残り10%はA2064Gである[11-14].なお,この部位はその他の細菌とも共通している[15].その他耐性変異として,A2063C,A2064C,C2617G,C2716A,2067番目シトシンの変異などが報告されている[1,9,13,16].菌体内に取り込まれたマクロライドの排出ポンプ機構の存在,あるいはプラスミドを介した耐性機構は見出されていない.

■マクロライドに耐性を示す臨床分離株について,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)解析を行うと,DNA切断パターンは2タイプに区別されるが,感性株にも同様に2タイプが認められている[2].おそらく2タイプあるクローンの両方にマクロライドの選択圧によって変異が生じ,それらの耐性株がヒトを介して急速に全国へと拡散していったと推察されている.

■マイコプラズマ属は自立増殖可能な最小の微生物であり,構成遺伝子量は大腸菌の17%程度しかない.その中でもMpはプラスミドを介した耐性機構は存在せず[17],Mpの薬剤耐性機構は23S rRNAドメインⅤの点突然変異のみである.このためプラスミドを介する耐性機構が主体であるテトラサイクリン系薬剤に対してはマイコプラズマは耐性を獲得しない(16S rRNAの塩基点突然変異株は知られているが,最小発育阻止濃度の上昇はわずかで,臨床的なMINO耐性にはならない[18]).なお,キノロン系は前述の通り点突然変異をきたし,耐性化しうる.

■マクロライド耐性株の増加にはAZMが関与しているとの意見がある.これは,大屋らによる報告[19,20]が根拠になっている.各種マクロライドを通常の臨床で用いられる範囲の濃度でin vitroの培地に添加してMpを培養し,人為的に耐性菌を誘導する実験を行った.この実験では,EM,CAMでは耐性化率が7%程度であるのに対し,AZMでは12-15%程度の株が耐性化しており,統計学的有意差ではないが,AZMで耐性誘導が高い傾向が見られている.また,CAMはA2064Gの変異を優位に誘導しているのに対し,AZMではA2063Gの出現率がCAMより4倍高く,耐性株の90%をA2063Gが占めること,耐性株が最初に発見されたのがAZM市場販売開始の2000年[1]であることを考慮すれば,AZMが耐性株増加の一因となった可能性がある.実際,当初はAZMは錠剤・細粒のみであり,1日用量500mgの経口投与であることから,濃度不十分であった可能性は否定できない(現在はAZM SR2g製剤があるため,高濃度で長時間推移することから耐性化は抑制しえると思われる).しかし,本実験はあくまでもin vitroであり,実臨床ではAZMがマクロライド耐性化をCAMより有意に誘導したとする根拠はなく,CAMが400mg/日では効果不十分な可能性も指摘されていること,AZMが他のマクロライド系よりはるかに炎症部位や貪食細胞への移行性が高いことを考えると,現時点でAZMの関与は不明である.

■本邦では成人の慢性肺疾患症例などに対して行われている少量マクロライド系薬の長期投与によって,マクロライド耐性Mpがさらに爆発的に蔓延する可能性は,投与される年齢などを考慮すれば,低いと考えられている.実際,マクロライド少量長期療法は少なくとも1990年頃にはほぼ普及しており,10年が経過した2000年に突然耐性菌が出現・増加した原因とするには疫学的にも無理がある.

2.マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎の治療
■臨床現場では日常診療での治療成績と細菌学的検査結果との間に乖離がある可能性が指摘されている.実際,耐性菌が分離されたMp肺炎症例11例のうち8例で臨床的にはマクロライド系薬が有効であったと主治医が判断していることが報告されている[21].また,耐性菌による肺炎が感受性菌による肺炎と比較して臨床症状が重症である傾向はなく,治療に難渋する症例もそれほど多くないとした報告もある[22].炎症反応にかかわるIL-8などのサイトカインの産生を抑制する作用も有するCAMは耐性菌の治療においても効果が期待できるとする報告もみられる[23]

■その一方で,Mp肺炎症例の中にはCAMやAZMによる治療が失敗し,発熱が遷延し,咳嗽も増悪してMINOに変更することで改善が認められる例も多く経験される.Mp肺炎に対するマクロライド系抗菌薬投与開始後の有熱期間は,マクロライド感性株では平均1.4日であるのに対して,マクロライド耐性株では4.3日であった.また,マクロライド系薬投与開始後48時間以上発熱が持続する患者数の割合は,マクロライド感性株で19.2%であるのに対し,マクロライド耐性株では72.7%であり,耐性株感染症例でのマクロラドの治療効果は感性株感染症例に比して有意に劣るという結果が報告されている[22,24,25]
※2011年12月より本邦で発売となったAZM注射製剤は組織内濃度が極めて高いことから耐性株への奏功も期待されたが,当院で経験したマクロライド耐性Mp肺炎ではAZM注射製剤の5日間投与を行っても解熱は得られず,その後MINOに変更したところ速やかに解熱した.たとえ高用量であっても耐性株に奏功しないケースも存在するということである.

■以上のように,耐性株におけるマクロライドの奏功度に関してはまだまだ議論の余地はある.耐性株においてはマクロライド系薬の治療効果が減弱すること,耐性株が増加していることが分かるが,そのような現状においても,マイコプラズマ肺炎の治療の第1選択はマクロライド系抗菌薬である.以下に理由を挙げる.
(1) Mpにはribosomeのオペロンが1組しか存在しない[26].オペロンはribosomeを作成するための生産ラインであり,そこに突然変異を持っている耐性菌は生物学的には欠陥菌であり,増殖力は劣っている.このため,耐性菌が感染しても免疫系により排除されやすい.これが非特異的防御能力が小児より発達している成人においてマクロライド耐性Mpが少ない理由と考えられている.
(2) Mp感染症は菌による直接傷害はほとんどなく,宿主の免疫応答が有害に作用した免疫発症であり,たとえ抗菌薬投与がなくとも基本的には2-3週間以内に自然治癒するself-limitedな感染症である.この点は耐性菌においても同様であり,Mp感染症においては細菌学的耐性と臨床的耐性は必ずしも同義ではない.
(3) マクロライド系にはサイトカイン産生の抑制など抗菌作用以外に免疫修飾作用もあり,マクロライド耐性Mp肺炎であっても,その病態が免疫の異常応答であることを考慮すれば,マクロライドの免疫修飾作用が治療効果として機能する可能性がある.
(4) MINO,DOXYなどのテトラサイクリン系は副作用の点から問題があり,キノロン系も耐性化の懸念がある.
※CAM 400mgやAZM 500mgの経口内服はマイコプラズマに限らず感染症全体において治療効果は不十分な可能性がある.LVFX 500mg錠が登場したのと同様に,より高用量での使用が標準化されるべきなのかもしれない.マクロライド頻用がマクロライド耐性肺炎球菌を生み出した背景として,投与量不足も一因ではないだろうか?CAMなら800mg,AZMならSR2g製剤の使用が標準化されるべきではないかと考える.

■Mp肺炎が疑われるケースでは,小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011では,第1選択薬としてマクロライド系薬を使用し,48時間以内に解熱が見られない場合はマクロライド耐性肺炎Mpを考慮してテトラサイクリン系やキノロン系(TFLX:オゼックス®)を使用することを推奨しているが,実際には全身状態や全体の発熱期間などを慎重に判断した上で,他剤への変更を考慮すべきであろう.

■ただし,学校に通う,あるいは労働年齢である若年者において耐性菌感染に対するマクロライド使用で病悩期間が延長されることがその患者においてどこまで許容されうるかという社会的問題もあり,ケース・バイ・ケースで第1選択薬をMINOに切り替えるなどの配慮が必要であろう.

■マクロライド耐性Mp肺炎確定例ではテトラサイクリン系のMINO,DOXY,キノロン系(小児ならTFLX)が選択されるが,MINO,DOXYがTFLXより有意に24時間以内のMp DNAコピー数を減少させることが報告されており[27],キノロン系の点突然変異の可能性も考慮するとテトラサイクリンが第一選択とすべきと考えられる.MINOは歯牙黄染の副作用のため8歳以下では原則使用しないこととされているが,IASRの報告では,8歳以下の小児であってもMINO 4日間投与で問題ないとされており,実臨床においても5-7日間程度では歯牙黄染はおきないというのが多くの小児臨床医の印象のようである.

■マクロライド耐性Mpによる脳炎をきたした小児の症例報告が本邦よりでており[28],このようなマイコプラズマによる脳炎が疑われるケースでは小児であっても最初から積極的にMINOが選択されるべきかもしれない.

■総発熱日数が7日以上を経過している場合には,菌の感受性の問題というよりは宿主側の免疫応答の問題である可能性が高く,むしろステロイド治療の適応を考慮すべきかもしれない.

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マイコプラズマ肺炎(2)「検査,診断,治療」
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by DrMagicianEARL | 2012-10-08 19:07 | 肺炎 | Comments(0)
マイコプラズマ肺炎(1)「病原体,症状,疫学」についてはこちらをクリック
マイコプラズマ肺炎(3)「マクロライド耐性マイコプラズマ」についてはこちらをクリック
Summary
・日本呼吸器学会成人市中肺炎診療ガイドラインの非定型肺炎鑑別指標はマイコプラズマ肺炎において有用である.ただし,結核も含まれてしまうことに注意が必要である.
・経口第3世代セフェム薬が無効であることはマイコプラズマ肺炎を疑う根拠にはならない.
・PA法(IgG)はペア血清で4倍以上,単一血清で640倍以上(もしくは320倍以上)で,寒冷凝集素価は単一血清で256倍以上,ペア血清で4倍以上で陽性と判定される.
・迅速IgMキット(イムノカード®)は精度が悪く,偽陽性・偽陰性が多いため,使用は推奨されない.
・遺伝子学的検査法ではLAMP法がPCR法に替わって期待されている.
・マイコプラズマ肺炎を胸部単純X線写真で鑑別することは困難である.一方で胸部CTでは気管支壁およびその周囲に(広義の)肺間質の炎症が起こり,気管支と併走している肺動脈周囲間質の肥厚像所見がみられる.
・気管支喘息発作が先行したマイコプラズマ肺炎ではTh2型免疫が誘導されるため,通常のマイコプラズマ肺炎像とは異なる陰影となることが多い.
・咽頭炎・気管支炎レベルのマイコプラズマ感染症では抗菌薬は不要であることが多い.
・マイコプラズマ肺炎ではマクロライド耐性株であってもマクロライド系抗菌薬が第一選択である.
・クラリスロマイシン400mg経口分2,アジスロマイシン500mg経口分1が無効であることをもってマクロライド耐性マイコプラズマを疑う根拠は乏しい.

1.マイコプラズマ肺炎の検査と診断
■細菌性肺炎とMp(Mycoplasma pneumoniae;マイコプラズマ),Chlamydophila(クラミドフィラ;旧クラミジア)などの非定型肺炎(NTP;Non-Typical Pneumonia,もしくはATP:Atypical pneumonia)との鑑別には,日本呼吸器学会,成人市中肺炎診療ガイドラインが最も有用である.これは,マイコプラズマ肺炎群と細菌性肺炎群の鑑別項目の多変量解析を行ったものであり,以下の①~⑤の5項目中,3項目以上合致した場合,または①~⑥の6項目中4項目以上合致した場合に非定型肺炎疑いとする[1,2].Mp肺炎ではともに感度85%以上を超えており,有用な指標である.
 ① 年齢60歳未満
 ② 基礎疾患がない,あるいは軽微
 ③ 頑固な咳がある
 ④ 胸部聴診上所見が乏しい
 ⑤ 痰がない,あるいは迅速診断法で原因菌がない
 ⑥ 末梢血白血球数が10000/mL未満
なお,この鑑別方法はクラミジア肺炎の診断には問題を残しており,さらなる改良が必要とされている[3].また,この指標では結核を除外できないことに注意が必要であり,咳嗽においては常に結核を鑑別に置く必要がある.
※現在,非定型肺炎にレジオネラ(Legionella spp.)は含まれていない.

■「βラクタム薬が無効」「家族内感染」は診断項目から削除されたが,それなりに有用ではある.ただし,βラクタム薬を1日だけ1回投与されただけなのに効果がない患者を非定型肺炎とする根拠は非常に乏しい.また,経口第3世代セフェム薬(フロモックス®,メイアクト®,トミロン®,バナン®,セフマゾン®)は生体内利用率や投与量の関係から,細菌学的に有効な菌種であっても臨床では非常に効果が乏しいとされ,これらの経口第3世代セフェムが無効であることは非定型肺炎を疑う根拠にはならない

■Mp肺炎ではAST,ALTの上昇を伴っていることも多い.

■喀痰からのMpの培養(PPLO寒天培地),PCRも可能であるが(約3割で陽性),施行可能な施設は限られており,臨床上行う意義も乏しい.このため,確定診断は血清診断が用いられることが多い.日本で汎用され,かつ信頼されているのはゼラチン粒子凝集法(PA法;particle agglitomation法)であり,ペア血清で4倍以上の上昇,単一血清では640倍以上(320倍以上でもよいとする報告もあり)で診断される.補体結合反応(coplement fixation reaction:CF)では,主にIgG抗体を測定するため上昇が遅く,早期診断にはあまり役に立たないが,ペア血清の診断には問題はない.ペア血清で4倍以上,単一血清で64倍以上で診断される.

■LAMP法は2011年に保険収載された新しいMpの遺伝子学的検査法である.PCR法と比べて複雑な機器をしようせず,手技も簡便であるため,院内検査として導入しやすい.感度,特異度ともに良好であるため,今後のMp感染症検査への期待が高い[4]

■早期診断用に開発された迅速キットであるイムノカードマイコプラズマは,酵素免疫測定法(enzyme immune-sorbent assay:EIA法)により主にMycoplasma特異的IgM抗体を測定するが,成人の場合再感染が多くIgMが上昇しない例[5]や偽陽性もある.また,小児領域で既感染時の抗体が6ヶ月以上もイムノカード陽性を示している場合があり[6],1年まで継続するとも言われている.これらのことから,イムノカードを用いた単一血清でのMp確定診断は困難と推察される.
※当院呼吸器内科でもイムノカードを採用したが,非常に精度が悪く,使用するに値しないと判断し,2011年以降は使用をやめている.本検査を上手に活用する方法を御存知の方がいらっしゃったら御教授下さい.

■近年,ドイツMedac社のELISA抗体測定キットでIgM,IgG,IgAを測定した検討では,成人Mp感染症の初期診断において,IgMとIgA抗体の同時測定でどちらかの上昇で陽性とする方がイムノカードよりも診断特異度が高いことが報告されている[7].これらの問題を解決するため,Mp特異的な脂質抗原(GGL-type)に対する血中特異的抗体をELISA法で測定する系が確率され,そのIgM抗体は発症後3日目から上昇するというものであり,PA法で40倍未満の倦怠でも陽性となると公表されており,早期診断が可能となるかもしれない.

■CA(cold agglutinins;寒冷凝集素)は主に赤血球表面の多糖体抗原であるI/i抗原に対するIgM抗体でり,ABO式とは無関係に,低温域で自己赤血球またはO型赤血球を凝集させる.単一血清で256倍以上,ペア血清で4倍以上の上昇を認めた場合,陽性と判定される.Mp肺炎を代表とするいくつかの感染性疾患の際に,この寒冷凝集素が上昇することが知られており[8],特にMp肺炎のときには抗I抗体が,EBV(Epstein-Barr virus)感染症などの伝染性単核球症のときには抗i抗体が上昇するとされている.一般的に,寒冷凝集素反応はMp肺炎の診断において,感度・特異度ともに低いとされている.一方で,市中肺炎診療において64倍以上の寒冷凝集素反応をみたら,原因微生物はMpの可能性が高いとも言われる.Cunhaら[8]は以下のように工夫してして寒冷凝集素をMp肺炎にしようする有用性をみいだすことができるとしている.
(1) 寒冷凝集素はMp肺炎の初期に上昇するため,病初期に1日おきに3回検査し,上昇傾向が見られればMp肺炎の可能性は高い.
(2) Mp脳炎など,重症感染症の場合には512倍または1024倍以上の高値を示す.
(3) 寒冷凝集素が64倍以上の場合,血液を冷水中に入れると凝集が肉眼で見える.この血液を再度室温に戻すと,凝集は再度溶解する.しかし,再度冷水中に入れたときに,Mpによる場合は再度凝集がみられるが,ウイルス感染による場合は凝集しない.これをagglutination-dissociation bedside testと呼ぶ.
※当院呼吸器内科では(1)をMpの早期診断に利用している.特にマクロライド耐性Mpを疑ったケースでは非常に有用であり,抗菌薬変更の根拠の一助となる.

■Mp肺炎の胸部X線所見はスリガラス陰影,浸潤陰影,気管支壁の肥厚像,粒状陰影が複数の肺葉に存在するなど非常に様々であり,細菌性肺炎との鑑別は困難である[9].注意深く観察すると,Mp肺炎の胸部X線写真では,一見病変のないところで気管支壁の肥厚像が認められることがある.また,陰影が派手なわりに患者の全身状態が良好など,症状と組み合わせることで鑑別の補助となりえる.

■CT像では,気管支壁およびその周囲に(広義の)肺間質の炎症が起こり,気管支と併走している肺動脈周囲間質の肥厚像所見がみられる.前述の通り,Mpは線毛を有する気管支に感染を起こすため,細気管支および細気管支内腔病変(COP様;Cryptogenic Organizing Pneumoniae様病変)となり,容積減少を伴いやすいのも特徴である.このため理論上は末梢胸壁に達しない中枢性優位の陰影をとりやすい.しかし,胸壁に達する所見もそれなりの頻度でみられ,成人でも胸水は25%に合併し,縦隔リンパ節も5mm以上の大きさのものは約半数に認められる[10]

■Mp肺炎でときに大葉性肺炎のような陰影をとることがある.Mp肺炎では前述の通り,通常はTh1(Ⅰ型ヘルパーT細胞)が誘導されるが,Th2免疫が誘導されるケースがあり,このような場合は大葉性肺炎に似た,通常のMp肺炎像とは異なる陰影を呈し,これには気管支喘息が関与しているとされる.すなわち,Mp感染が喘息発作に先行するとTh1免疫が誘導されるが,喘息発作がMp感染に先行するとTh2免疫が誘導され,CT画像は非常に派手なものとなる[11].このような例ではステロイドが奏功しやすい可能性がある.実際に,血清診断では気管支喘息発作入院の約18%にMp感染を合併しており[12],また,気管支肺胞洗浄(BAL)など,より高感度な手法では喘息安定期ですら約45%にMp感染が示された[13]

2.マイコプラズマ肺炎の治療
■基本的にMp気管支炎レベルまでは抗菌薬が不要なことも多く,肺炎に至っていなければ,昨今のマクロライド耐性菌出現の背景も考慮すると抗菌薬の安易な使用は避けるべきである.

マイコプラズマ肺炎に対する抗菌薬は,たとえ耐性株が増えても,マクロライド系抗菌薬が第一選択である(理由は「耐性株」の項目で後述).近年よく使用されるマクロライド系で言えば,CAM(クラリス®,クラリシッド®),AZM(ジスロマック®)ということになる.

■ここで注意すべきはマクロライド系抗菌薬の投与量である.CAMの投与量は200mg2錠分2が通常用量として用いられることがあるが,この用量がMpに有効であるかについては議論の余地がある.有効な代謝産物(active metabolite)を持たないマウスの実験系では少なくとも25mg/kg/day以上必要とされている[14].ヒトにおいては有効な代謝産物(14-OH CAM)があるが,CAM 10mg/kg/day程度の用量では感受性菌に対しても効果が不十分な場合があり,成人においてはCAM 200mg2錠分2が効いていない可能性がある.AZMは500mg経口分1が通常用量であるが,CAMに比較して肺への移行性がやや落ちることから,CAM 200mg2錠分2と同様に感受性株に奏功しない可能性がある.このため,CAM 200mg2錠分2やAZM 500mg経口分1で奏功しなかったケースをマクロライド耐性菌と判断してはならないマクロライド感受性Mpに対して確実に効果を得るためにはCAM 15mg/kg/dayで少なくとも4日間投与し,それでも効果が得られない場合に耐性株を疑うことが望ましいとされている.すなわち,CAM 600-800mg分2程度が必要である可能性が高く,また,AZM 500mg経口分1でも同様のことが考えられ,AZM SR2g製剤を使用するべきかもしれない.
※「AZMは肺への移行性が悪く,マクロライド耐性マイコプラズマが増加したのはAZMが発売されたことに起因する可能性があり,実際にAZM発売後から耐性株が増加しているデータがでている」との意見があるが,上述のCAMの用量を見れば,必ずしもAZM発売が耐性株増加の理由とは限らないことが分かる.実際にはCAM 200mg2錠分2の用量が耐性株を生み出した可能性も否定できない.

■2011年末よりAZMの注射製剤が本邦でも使用可能となったが,以下の理由によりAZM注射製剤を安易に外来で使用すべきではないと考える
(1) AZM注射製剤の本邦での安全性は確立されておらず,高濃度で推移するため,心血管系への影響は不明である.以前よりマクロライドによるQT延長作用が指摘されており[15],女性,QTc>0.5secだとQTc延長リスクが上昇し,Torsades de points(多源性心室頻拍)または心停止が生じることがあると報告されている[16].また,ベースの重症度によるlimitationはあるが,AZM 5日間投与で心血管系死亡率が有意に増加したとする報告がある[17].外来でAZM注射製剤が投与される際,心電図によるQT時間のスクリーニングや心電図モニタリングはまずなされておらず,リスク評価を行わずに投与するのは危険である.
(2) AZM注射製剤の点滴は2時間を要する.外来で投与されるとき,ほとんどの場合は原因菌が確定していないケースがほとんどであり,そのような患者を外来点滴で2時間院内にとどめる場合,感染対策上問題がある.特にインフルエンザ,結核の除外がなされていない状況では問題である.個室隔離が可能ならばまだしも,多くの場合はそのような対処はなされていない.非定型肺炎の診断基準では結核もあてはまってしまうという欠点がある.また,画像検査で結核は否定できない.肺結核において上肺野に病変を認めるのは,免疫正常者では68.1%であり,免疫不全者に至っては38.4%に過ぎない[18]

■第二選択薬の位置づけにあるのはテトラサイクリン系であるMINO(ミノマイシン®),DOXY(ビブラマイシン®)である.従来MINOは静菌的薬剤であり,約30%の患者においては肺炎治癒後も最低2-3週間は菌の排出が持続しているとされてきたが[19,20],最近の研究では比較的速やかに菌が消失しているとする報告もある[21].8歳未満の小児においては歯牙黄染が生じるため,「他剤が無効の場合に限り使用できる」となっており,マクロライド耐性菌感染症で経口服薬が困難な場合,MINO注射製剤がこれに該当すると考えられる.ただし,できる限り短期間(4日間程度)とする必要がある.また,テトラサイクリン系では肝機能障害が比較的生じやすく注意が必要である.

■第3世代以前のレスピラトリーキノロン系であるTFLX(オゼックス®),LVFX(クラビット®)なども第二選択薬候補とされる.第4世代キノロンであるMFLX(アベロックス®),STFX(グレースビット®),GRNX(ジェニナック®)も奏功するが,過剰カバーであり,不要である.レスピラトリーキノロンもその機序から点突然変異[22]によりマイコプラズマに耐性を獲得させてしまう懸念があり,また,抗結核活性も有することから,肺炎に対する安易な使用は避けるべきで,抗結核活性を唯一有さないTFLX以外は第3選択とすべきかもしれない.なお,TFLXは小児にも適応がある.
⇒参照:『結核診断前のキノロン投与で死亡率リスクは1.8倍に増加する』

■小児ではマクロライドを内服できない小児(AZMなどは非常に苦いようである)においてはCLDM(ダラシン®)の点滴が有用である.用量としては7.5mg/kg DIV q8hなどなるべく多く用いる必要がある.なお,ribosomeにおける作用部位がマクロライドと同じであるため,マクロライド耐性菌はCLDMにも耐性であるため使用できない.

■マイコプラズマ肺炎においては,先述のTh2免疫誘導パターンの場合や,血清LDH値が480 IU/Lを超えた場合[23]はステロイドが有効である可能性が高いとされており,ステロイド適応を考慮すべきかもしれない.

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[2] Ishida T, et al. Clinical differentiation of atypical pneumonia using Japanese guidelines. Respirology 2007; 12: 104-10
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マイコプラズマ肺炎(1)「病原体,症状,疫学」
マイコプラズマ肺炎(3)「マクロライド耐性マイコプラズマ」
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by DrMagicianEARL | 2012-10-05 11:23 | 肺炎 | Comments(0)

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