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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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D.抗菌薬治療(Antimicrobial Therapy)
1.敗血症性ショック(Grade 1B),敗血症性ショックでない重症敗血症(Grade 1C)と認識してから最初の1時間以内の有効な経静脈的抗菌薬投与を治療目標とすべきである.
 抗菌薬投与の遅れが死亡率増加につながることはこれまでの複数の報告が示す通りである.

 1時間以内という時間の根拠は,Kumarらの報告(Crit Care Med 2006; 34: 1589-96)をはじめとする,抗菌薬開始までの時間と死亡率の間に強い相関を認めたという報告に基づくが,1時間という時間をカットオフとする強力なエビデンスが存在するわけではない.ただし,これを検証するのは倫理的問題を考慮すると困難であることが予想され,1時間以内をスタンダードとする流れは今後も変わらないものと推察される.

 基礎的研究については,ヒト血液およびマウスモデルの検討(Franks Z, et al. Thromb Haemost 2013 Jan. 24)において,MRSA感染に対し早期の抗菌薬投与により凝固炎症反応を有意に抑制した一方,投与が遅れると抑制効果が見られなかったことが報告されており,抗菌薬投与そのものが細菌学的効果のみならず敗血症関連メディエータに関与しうることが示唆されている.
2a.初期経験的抗菌薬治療は,原因と考えられる病原体全て(細菌,真菌,ウイルス)に活性を有し,敗血症の原因と推定される組織内に適切な濃度で移行する1つ以上の薬剤で行うことを推奨する(Grade 1B)
 重症感染症の基本事項である.経験的抗菌薬選択の指標として,患者既往歴,薬剤副作用歴,最近3ヶ月以内の抗菌薬使用歴,基礎疾患,その地域のアンチバイオグラム,以前の定着または感染の原因菌などが挙げられる.院内発症例ではグラム陽性菌が原因として最も多く,次いでグラム陰性菌,雑菌混合感染となっており,カンジダ,TSS(toxic shock syndrome),稀な病原体のカバーについては患者を選んで行う.広域カバーについては特に好中球減少患者で考慮する.

 おそらく,多くのケースではカルバペネム系が主軸になる.その際,必ずカルバペネム系が無効な病原体を把握しておく必要がある.基本的に無効,もしくは無効なことがありうる代表的なものは以下の通りである.
Mycobacterium spp,MRSA,MRCNS,Legionella pneumophilaCorynebacterium jeikeiumClostridium difficileRhodococcus equiStenotrophomonas maltophiliaBarkholderia cepacia,Carbapenem Resistant Pseudomonas aeruginosa,Multiple Drug Resistant Pseudomonas aeruginosa (MDRP),Multiple Drug Resistant Acinetobacter baumanii (MDRAB),Enterococcus spp,New Delhi Metallo-beta-lactamase (NDM-1),True Funges,Virus

 カンジダ血症を考慮する場合は経験的抗菌薬としてFLCZかエキノキャンディンをIDSAは推奨していると記載されている.これに対し,近年改訂された欧州のESCMIDガイドラインではエキノキャンディンが推奨度Aであるのに対し,FLCZは推奨度Cである.これは欧州でFLCZ耐性のカンジダが多いことに起因する.このため本邦の状況には必ずしも当てはまるものではない.本邦では真菌症フォーラムからのACTIONs BUNDLEが発表され,非常に良好な治療成績を残しており,本バンドルにおいてはエキノキャンディンとFLCZのいずれかを経験的治療の第一選択に位置づけている.その際参考となるのは各施設のlocal factorであり,FLCZが効きにくいC. glabrataとエキノキャンディンが効きにくいC. parapsilosisのいずれが頻度が高いかによる.一般的にはICUではC. parapsilosisが多いとされるが,高齢者や血液内科領域ではC. glabrataの方が多い.
2b.抗菌薬のレジメンは,耐性菌増殖を防ぎ,薬剤毒性を減らし,コストを減らすためのde-escalaionが可能であるか,毎日評価を行うべきである(Grade 1B)
 de-escalationは理論上強く推奨されるべき項目とはいえるが,エビデンス自体はいまだにそれほどあるわけではないのが現状であり,エビデンスの質がBというのはやや高い印象がある.培養された菌を初期投与した広域抗菌薬がカバーしているにもかかわらず治療奏功・臨床症状改善がなければempiric治療の再考と感染巣・原因菌再検索が必要であり,この場合は最初に培養された菌に対するde-escalationは行ってはならない.
3.敗血症と診断したが,その後感染の根拠が認められない患者においては,プロカルシトニンや同様のバイオマーカーが低値であることを経験的治療の中止するために使用してもよい(Grade 2C)
 本推奨項目の根拠として2報(Lancet Infect Dis 2007; 7: 210-7,Crit Care Med 2011; 39: 1792-9)が引用されているが,同時に限界と潜在的有害性の懸念が残るとしている.さらに,この抗菌薬中止戦略が耐性菌リスクやClostridium difficileによる抗菌薬関連下痢症のリスクを減じるとしたエビデンスはない.JensenらのProcalcitonin And Survival Study (PASS) Groupによるプロカルシトニンガイド下の抗菌薬アルゴリズムを使用したRCT(Crit Care Med 2011; 39: 2048-58)では,プロカルシトニン群は生存率を改善せず,臓器関連の有害性を示し,入院期間が延長したとしており,必ずしもプロカルシトニンガイドの抗菌薬治療が安全とは限らないことを示している.

 根拠に示されているもの以外の報告としては,重症敗血症・敗血症性ショック(Am J Respir Crit Care Med 2008; 177: 498-505),細菌感染症疑いのICU患者(Lancet 2010; 375: 463-74)を対象としたRCTにおいてプロカルシトニンが安全に抗菌薬投与期間短縮に寄与したと報告している.また,Shuetzらの14報RCTのシステマティックレビュー(Arch Intern Med 2011; 171: 1322-31)では,緊急度の高い患者やICU患者での抗菌薬投与期間の短縮にプロカルシトニンが寄与したとの結果となった.

 ただし,プロカルシトニンといえども万能ではなく,局所炎症やグラム陽性菌感染症では偽陰性となることもある.カットオフ値によるが,過去の報告ではプロカルシトニンは感度73-92%,特異度70-81%とそれほど高くはない.その他,神経内分泌腫瘍,膵炎,外傷,熱傷,手術などでも上昇することは知っておく必要がある(Crit Care Med 2008; 36: 941-52)
4a.各患者の疾患とローカルパターンに基づいた最も可能性の高い病原体に活性を有する抗菌薬で経験的治療はなされるべきである.重症敗血症を伴う好中球減少患者(Grade 2B)Acinetobacter属やPseudomonas属といった難治性多剤耐性菌による感染症(Grade 2B)においては,抗菌薬を併用した経験的治療を行ってもよい.呼吸不全や敗血症性ショックを伴う重症感染症患者では,緑膿菌菌血症では,広域スペクトラムのβラクタム系抗菌薬にアミノグリコシド系またはフルオロキノロン系を併用してもよい(Grade 2B).同様に,肺炎球菌菌血症による敗血症性ショック患者ではβラクタム系にマクロライドを併用してもよい(Grade 2B)
 高度の抗菌薬耐性菌が一般的な地域では,カルバペネム系,コリスチン,リファンピン,その他抗菌薬を取り入れたレジメンが必要かもしれない.最近のRCTの報告では,耐性菌群のリスクが低い集団においては,経験的治療にカルバペネム系にフルオロキノロンを加えても予後を改善しないことが報告されている(JAMA 2012; 307: 2390-9)

 MRSAや高度耐性グラム陽性菌においては抗MRSA薬とその他薬剤の併用が行われることが多いが,抗MRSA薬や上記推奨項目で取り上げられているRFPなどでは注意が必要である.TEICは十分な初期ローディングを行わなければ効果が得られるまでのタイムラグが生じる上,タンパク結合率が非常に高いため,低アルブミン血症では十分な血液濃度が得られないことが多い.また,菌血症状態においては静菌性抗菌薬は治療失敗につながる可能性もあり,特にLZD,TGC,RFPを菌血症に対して使うべきではない.菌血症状態では,LZDがVCMに劣ること,初期からのRFP投与で治療失敗が生じること,TGCは菌血症などの重症例ではよい成績が出ていないことから,これらの薬剤はABKやDAPで菌血症を解除してからの投与が望ましいと思われる.また,DAPは肺サーファクタントにより失活されてしまうため肺炎には使用できない(ただし敗血症性肺塞栓や膿胸では有効).

 マクロライド併用については,近年,特に市中肺炎において,βラクタム系とマクロライド系の併用がフルオロキノロン単剤治療より有意に予後を改善したとする報告が多数あり,新作用もあいまってマクロライド神話ができつつあるが,2012年に報告されたメタ解析(Clin Infect Dis 2012; 55: 371-80)においては,RCTやガイドラインによる治療を受けた患者に絞って解析を行うと死亡率に有意差はみられなかった.本邦ではマクロライド注射製剤として主にアジスロマイシンが使用されることになるが,他のマクロライド系より安全とされていたアジスロマイシンにおいても心血管死リスクが増大する可能性がある(N Engl J Med 2012; 366: 1881-90)ことは注意が必要である.
4b.重症敗血症患者に経験的に抗菌薬併用療法を行う場合,3-5日間よりも長く行うべきではない.感受性が判明すれば直ちに最も適切な単剤治療にde-escalationされるべきである(Grade 2B).例外として,特に緑膿菌敗血症や心内膜炎においてはアミノグリコシド系単剤治療は一般的に避けるべきであり,このような場合の抗菌薬併用療法は許容される.
 傾向マッチ解析,メタ解析,多変量解析,観察研究など多くの報告が高い死亡リスクを有する敗血症患者において併用療法の予後改善効果を示している(2008年以降ではCrit Care Med 2010; 38: 1651-64,Crit Care Med 2010; 38: 1742-8,Antimicrob Agents Chemother 2010; 54: 1742-8,Antimicrob Agents Chemother 2009; 53: 1386-94が引用).その一方で耐性菌群のリスクが低い集団においては,経験的治療にカルバペネム系にフルオロキノロンを加えても予後を改善しないことがRCTで報告されている(JAMA 2012; 307: 2390-9).また,高い死亡リスクを有する敗血症患者において単剤療法よりも併用療法を指示するRCTは存在しない.
5.臨床的に抗菌薬の治療期間は典型例では7-10日間でよい.ただし,治療反応性が遅い,ドレナージ不能の感染巣,黄色ブドウ球菌菌血症,真菌感染症やウイルス感染症,好中球減少症を含む免疫障害のある患者ではより長期間の治療が必要となるかもしれない(Grade 2C)
 7-10日は一般的な感染症の目安であり,実際には臨床効果,患者の状態を見ての主治医の判断により,継続,de-escalation/escalation,中止が決まる.血液培養陽性患者であれば陰性確認が望ましい.ただし,上記項目に挙げられているような病態や,骨髄炎,関節炎等では長期の治療が必要となりうる.黄色ブドウ球菌菌血症では感染性心内膜炎のリスクもあり,最低2週間の治療は必要である.また,カンジダ菌血症であれば,血液培養陰性化確認から2週間の投与は必要であることでコンセンサスが得られている.
6.重症敗血症,敗血症性ショックの原因がウイルスであれば,できるだけ速やかに抗ウイルス薬を開始する(Grade 2C)
 推奨根拠ではインフルエンザとサイトメガロウイルス,その他ヘルペスウイルスが挙げられている.とりわけ,インフルエンザではH1N1pdm2009の文献が引用され,ノイラミニダーゼ阻害薬での治療することが明記されている.これは,H1N1pdm2009の世界的パンデミックにおいて,初期から早期の病院受診とノイラミニダーゼ阻害薬投与を積極的に行うことで日本が最も死亡率が低かったことも関連しているかもしれない.

 また,一般的にはノイラミニダーゼ阻害薬は発症から48時間以内でなければ効果は得られにくいとされているが,ICUに入室したインフルエンザ患者1859名の後ろ向き解析では,発症後48時間を越えていても,5日以内であればノイラミニダーゼ阻害薬投与群が非投与群よりも有意に予後を改善していたと報告している(Clin Infect Dis 2012; 55: 1198-204)
7.高度炎症の状態にある患者で感染症が原因でないと判断した場合は抗菌薬を使用しないことを推奨する(Ungraded)
 感染症が否定的であるならば,耐性菌や抗菌薬関連有害事象のリスクを最小限とするため,抗菌薬治療は直ちに中止すべきである.ただし,抗菌薬は必ずしも早期に中止する必要はなく,見落としがないかを見極めて判断する必要がある.

E.感染巣コントロール(Source Control)
1.緊急で感染巣コントロールが必要な解剖学的に特異な感染巣(例えば壊死性軟部組織感染症,腹膜炎,胆管炎,腸管壊死)を検索し,その診断と除外をできる限り速やかに行い,可能ならば診断から12時間以内に感染巣コントロールを行うことを推奨する(Grade 1C)
 抗菌薬治療には限界があり,膿瘍ドレナージ,感染壊死組織のデブリドマン,感染した人工デバイス除去といった感染巣コントロールは敗血症管理においては基本原則である.そのためにもできる限り感染巣検索を行い,コントロールの必要性有無を早期に判断し,しかるべき専門科にコンサルテーションを行う必要がある.推奨項目では12時間以内となっているが,より早くにEarly Infectious Sorce Controlを行うべきであろう.
2.感染性膵壊死が感染巣であると判明した場合は,組織壊死の範囲が判明するまで待機してから外科的介入を行ってよい(Grade 2B)
 重症急性膵炎における感染性膵壊死では待機的なデブリドマンが行われる.これは,Marshallら(Crit Care Med 2004; 32: S513-26)によると.時間が経過することで壊死部位と正常部位の識別が容易になるためである.実際,2-3週間待ってからデブリドマンを行った方が治療成績がよいことがMierらのRCT(Am J Surg 1997; 173: 71-5)と2報の症例集積研究(J Gastrointest Surg 2002; 6: 481-7,Ann Surg 2001; 234: 572-9)で示されている.
3.重症敗血症患者で感染巣コントロールが必要である場合は,最も侵襲が少ない処置で効果的な介入(例えば膿瘍に対しては外科的ドレナージよりも経皮的ドレナージを選択する)を行うべきである(Ungraded)
 外科的介入を行う場合,当然ながら出血,正常組織傷害を始めとする合併症リスクを伴う.できる限り侵襲を少なくし効果的に感染巣コントロールを行う必要がある.
4.血管内カテーテルが重症敗血症,敗血症性ショックの感染巣であるならば,他の血管ルートを確保した後,直ちに感染カテーテルを抜去べきである(Ungraded)
 Ungradedとなっているが,重症敗血症,敗血症性ショックまで状態が悪化しているならば,感染した血管内カテーテルを決して残してはならず,これを支持する報告は多い.とりわけ,黄色ブドウ球菌,カンジダ,グラム陰性菌による感染であれば致命的になりうる.一方で,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が原因の場合は比較的予後がよいため,(やむを得ず)カテーテルを残したままの治療も許容されうるが,抜去可能であれば原則として抜去すべきである(Lancet Infect Dis 2007; 7: 645-57).実際,CNSでもカテーテルを残したままの再発率は20%ある(Infect Control Hosp Epidemiol 1992; 13: 215-21)

 どうしてもカテーテルを残して治療を継続する場合は,バイオフィルム移行性のよい薬剤を選択すべきかもしれない.具体的には,抗菌薬ではDAP,RFP,MINO,CLDM,TGCなど,抗真菌薬ではエキノキャンディン系かL-AMBを選択する.

F.感染防止(Infection Prevention)
1.選択的口腔除菌(SOD)と選択的消化管除菌(SDD)は人工呼吸器関連肺炎(VAP)を減らす方法として導入・調査されるべきである.この予防策は,当該方法が有効と考えられる医療施設や地域で行ってもよい(Grade 2B)
 SOD,SDDは推奨項目として掲載するかおおいに議論となった項目であり,SSCG 2008では記述はあるも推奨度は付されていなかった.今回は2Bというグレードがついている.ただし,本予防策は地域性の考慮も必要である他,コリスチンなど本邦では使用できない抗菌薬レジメンのエビデンスとなっていることが多く,本邦においては適応とはならないと推察される.
2.ICUの重症敗血症患者の人工呼吸器関連肺炎(VAP)のリスクを減少させるため,口腔咽頭除菌目的でグルコン酸クロルヘキシジンの口腔内塗布を行ってもよい(Grade 2B)
 口腔ケアにおけるクロルヘキシジンの有効性は現在揺らいできている状況にある.2013年に報告されたAlhazzaniらによるメタ解析(Crit Care Med. 2013; 41: 646-55)でも,クロルヘキシジンの使用は歯磨きの効果を有意に低下させていたという結果がでている.口腔ケアで雑菌とともにクロルヘキシジンが咽喉頭に垂れ込み,逆にVAPの原因となってしまう可能性も指摘されており,ジェルタイプの製剤の方が垂れ込みがなく優れていることが示され始めている.
←SSCG 2012(1)はこちら
→SSCG 2012(3)はこちら
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by DrMagicianEARL | 2013-01-31 17:00 | 敗血症 | Comments(0)
Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; and the Surviving Sepsis Campaign Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock: 2012
Critical Care Medicine 2013; 41: 580-637

■国際敗血症ガイドラインSSCG(Surviving Sepsis Campaign Guidelines)の改訂版であるSSCG 2012がCritical Care Medicineにpublishされた.分量,引用文献数,参加学会数の比較は以下の通り.
 SSCG 2004:16ページ,135文献,11学会
 SSCG 2008:33ページ,341文献,16学会
 SSCG 2012:58ページ,636文献,26学会
日本からは2008年版から日本集中治療医学会と日本救急医学会が参加している.また,2008年に離脱していたANZICSも2012年版では参加している.文献検索方法,GRADEシステムに大きな変更はない.

■成人敗血症管理におけるSSCG改訂での主な変更点を以下に示す.
①敗血症の定義は2001年のSCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISの定義とする(SIRS基準は記載されず).
②乳酸値正常化を目指すことが明記.
③昇圧薬はノルアドレナリンが第一選択となり,ドパミンの推奨度はダウン.
④活性化プロテインC製剤の推奨削除.
⑤目標血糖値は180以下.
⑥人工呼吸器関連肺炎の予防を明記.
⑦ストレス潰瘍予防はH2受容体拮抗薬よりもプロトンポンプ阻害薬を優先する.
⑧免疫グロブリン製剤は使用しない.
⑨栄養管理追加.

なお,播種性血管内凝固(DIC),エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP),リハビリテーションに関しては今回の改訂では触れられていない.全体として改善されたという印象がある.2012年の日本版敗血症診療ガイドラインに比してニュートラルな見解となっており,とりわけ免疫グロブリン製剤の評価が真逆であることは注目すべき点であろう.

■以下に成人敗血症におけるSSCG 2012の推奨項目と小生の個人的見解を示す.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
推奨グレード(Grading of Recommendations)
エビデンスの質の定義
A:高い/無作為化比較試験
B:中等度/低い質の無作為化比較試験,または高い質の観察研究
C:低い/十分に検討された観察研究
D:非常に低い/質の低い症例集積研究またはエビデンスに基づいた専門家の意見
UG(Ungraded):エビデンスはなくグレード分類できないが推奨されうる
推奨度
1:強い推奨/"We recommend"(推奨する,すべきである)
 転帰や負担,コストなどにおいて利益が不利益を明らかに上回っており,多くの臨床現場で採用されているもの
2:弱い推奨/"We suggest"(提案する,してもよい)
 利益が不利益を上回ることは予想されるが,十分な根拠に乏しいもの

敗血症の定義
敗血症は感染による全身症状を伴った感染症による症候であり,重症敗血症は敗血症に加えて敗血症に起因した臓器機能障害または組織低灌流と定義される.

●敗血症の診断基準
感染症の存在が確定もしくは疑いであり,かつ下記のいくつかを満たす(項目数規定なし)
(1) 全身所見
・発熱:深部体温>38.3℃
・低体温:深部体温<36℃
・頻脈:心拍数>90回/分,もしくは>年齢平均の2SD
・頻呼吸
・精神状態の変化
・明らかな浮腫または体液過剰:24時間以内でのプラスバランス20mL/kg
・高血糖:糖尿病の既往が無い症例で血糖値>120mg/dL
(2) 炎症所見
・白血球上昇>12000/μL
・白血球低下<4000/μL
・白血球正常で>10%の幼若白血球を認める
・CRP>基準値の2SD
・プロカルシトニン>基準値の2SD
(3) 循環所見
・血圧低下:収縮期血圧<90mmHg,平均血圧<70mmHg,もしくは成人で正常値より>40mmHgの低下,小児で正常値より>2SDの低下
・混合静脈血酸素飽和度(SvO2)<70%
・心係数(CI)>3.5L/min/m^2
(4) 臓器障害所見
・低酸素血症:P/F(PaO2/FiO2)<300
・急性の乏尿:尿量<0.5mL/kg/hrが少なくとも2時間持続
・クレアチニンの増加:>0.5mg/dL
・凝固異常:PT-INR>1.5,もしくはAPTT>60秒
・イレウス:腸蠕動音の消失
・血小板減少<10万/μL
・総ビリルビン上昇>4mg/dL
(5) 組織灌流所見
・高乳酸血症>1mmol/L
・毛細血管の再灌流減少,もしくはmottled skin(斑状皮膚)

●重症敗血症の定義
以下のいずれかが該当
(1) 敗血症に起因する低血圧
(2) 乳酸レベル高値
(3) 2時間以上の適切な輸液蘇生を行っても尿量が0.5 mL/kg/hr未満
(4) 感染巣が肺炎でない場合のPaO2/FiO2<250の急性肺傷害
(5) 感染巣が肺炎である場合のPaO2/FiO2<200の急性肺傷害
(6) クレアチニン>2.0 mg/dL
(7) ビリルビン>2 mg/dL
(8) 血小板数<100000 /μL
(9) 凝固障害(PT INR>1.5)
※敗血症に起因する低血圧は以下のように定義
「収縮期血圧<90 mmHg」または「平均動脈圧<70 mmHg」または「収縮期血圧の40 mmHgを越える低下」または「他の低血圧要因がなく,その年齢における血圧より2SD以上の低下」

●敗血症性ショックの定義
敗血症性ショックは,敗血症に起因する低血圧が適切な初期輸液蘇生を行っても持続する状態と定義する.
 1991年のACCP/SCCMによるSIRS基準が姿を消す形となった.これは,SIRS基準が特異度が低いと言われてきたことに起因するものと思われる.2001年のSCCM/ACCP/ESICM/ATS/SISによる定義がメインとなったが,22項目にわたる基準と「下記のいくつかを満たす」という曖昧な基準は変わっておらず,臨床現場で使用するには煩雑であり,かなり主観的な診断となってしまう可能性がある.とりわけ,集中治療医以外が敗血症診療にあたるであろう二次救急病院においてはこの定義を現場で用いるのは非現実的であると思われる.

 Weiss らはこの新旧2つの診断基準を用いて同一の患者群を比較した結果を報告しているが,敗血症全体では罹患率,死亡率に差を認めていない(BMC Med Inform Decis Mak 2009; 9: 25).また,ICU患者960名の観察研究であるZhaoらの報告では,1991年診断基準(SIRS基準)の精度は感度94.6%,特異度61.0%,2001年診断基準の精度は感度96.9%,特異度58.3%であり,AUCはそれぞれ0.778,0.776と有意差がなかった(Crit Care Med 2012; 40: 1700-6)

 SIRS基準は敗血症患者に対する治療などの研究を行いやすくするためのentry criteriaとして作られたものである.しかし実際には,簡便かつ高い感度をもって敗血症をスクリーニングできるSIRS基準は現在でも使用されており,本邦の急性期DIC診断基準にも組み込まれており,Weissら,Zhaoらの報告を見ても,実臨床において有用かつ実践的であることが分かる.

A.初期蘇生(Initial Resuscitation)
1.敗血症性組織低灌流(初期輸液チャレンジ後も持続する低血圧,または血清乳酸値≧4mmo/L)の患者のプロトコル化された定量的蘇生を推奨する.このプロトコルは組織低灌流が認識された時点で直ちに開始されるべきであり,ICU入室まで治療を遅らせてはならない.最初の6時間の蘇生の間,敗血症性組織低灌流の初期蘇生の目標は治療プロトコルの以下の全項目を含む(Grade 1C)
a) 中心静脈圧(CVP) 8-12 mmHg(人工呼吸器管理下や心室コンプライアンス低下例では12-15 mmHg)
b) 平均動脈圧(MAP)≧65 mmHg
c) 尿量≧0.5 mL/kg/hr
d) 中心静脈血(上大静脈血)酸素飽和度(ScvO2)≧70%または混合静脈血酸素飽和度(SvO2)≧65%
 EGDT(Early Goal-Directed Therapy)の目標として掲げられる項目であるが,この項目に大きな変更はない.EGDTの根拠として,新たに中国からの報告(Zhongguo Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue 2010; 6: 331-4),Levyらの報告(Crit Care Med 2010; 38: 367-74)が提示された.

 根拠では触れられていないが,乳酸値2-4mmol/Lおよび<2mmol/Lの患者のリスクも注意が必要である.Songらは,中等度(2-4mmol/L)乳酸レベルの成人敗血症患者474名の後顧的多変量解析を行い,SOFA score≧5においては敗血症性ショック予測率は38.9%であったと報告している(Shock 2012; 38: 249-54).また,WacharasintらによるVASSTの665例とSPHの469例のコホート研究では,敗血症性ショックにおいて正常範囲内の乳酸濃度は予後指標としてAPACHE-Ⅱscoreと同等に有用であるとしている(Shock 2012; 38: 4-10).この報告では,乳酸値1.4-2.3mmol/Lの患者は≦1.4mmol/Lの患者より有意に死亡率,臓器不全が増加しており,1.4-2.3mmol/L群は2.3-4.4mmol/L群と予後は同等であった.

 CVPとScvO2はいずれも近年有用性が疑問視されてきているが,SSCG 2012ではこれらの使用を「まだプラクティスデータで確認された標準ケアではないが」とlimitationを述べつつも強く推奨している.CVPを有効に使用する上で,その数値のみならず,呼吸変動を取り入れた評価が精度を挙げることを利用することも有用であり,小規模ながら多数の報告がある.ScvO2は,低値は緊急性を示唆するが,正常値や高値であっても末梢循環不全を解除したことにはならないということに注意が必要である.
2.組織低灌流のマーカーとしての乳酸値上昇を伴う患者では乳酸値を正常化させることを目標とした蘇生を提案する(Grade 2C)
 近年乳酸クリアランスに関する報告も増加していることから組み込まれたものと思われ,実際に2つの多施設RCTをエビデンスとして提示しており(JAMA 2010; 303: 739-46,Am J Respir Crit Care Med 2010; 182: 752-61),特に後者の報告では死亡リスクを39%有意に減じている.この報告LACTATE studyで用いられたEGDTはELGT(Early Lactate-Guided Therapy)とも呼ばれる.

B.敗血症のスクリーニングとパフォーマンス向上(Screening for Sepsis and Performance Improvement)
1.敗血症の早期発見を増やし,敗血症治療の早期実行を遂行するため,潜在的な感染をきたした重症疾患患者において重症敗血症のルーティンのスクリーニングを推奨する(Grade 1C)
 これは2012年のWrold Sepsis Dayの世界敗血症宣言においても強調されていたことであり,できる限り早期に敗血症を認識し,治療を行うことは当然の流れであり,それにより死亡率が減少することもLevyらの報告(Crit Care Med 2010; 38: 367-74)で示されている.
2.重症敗血症におけるパフォーマンス改善の努力は患者の予後改善のために行われるべきである(Ungraded)
 パフォーマンス改善の努力と患者の予後改善に関連があることは多くの報告で示されている.具体的には他職種で構成されるチームによる集学的治療,各専門科の協力,プロトコル見直し,現場からのフィードバック,教育などである.

C.診断(Diagnosis)
1.抗菌薬の投与開始が45分を越えて有意に遅延するようなことがなければ,抗菌薬投与前に適切な培養検体採取を推奨する(Grade 1C).原因病原体を適切に同定するため,少なくとも2セット(好気性・嫌気性ボトル両方)の血液培養検体を採取する.少なくとも1セットは経皮的に,もう1セットは挿入後48時間未満であれば血管内カテーテルから採取してもよい.これらの血液培養検体は,異なる箇所から採取しているならば,同時に注入する.感染巣が疑われる尿,髄液,創部,気道分泌物,その他体液といった他部位の培養(必要に応じて定量的が望ましい)も,抗菌薬投与開始の有意な遅延がなければ,抗菌薬投与前に採取すべきである(Grade 1C)
 この推奨項目に大きな変更はない.VAPにおいては喀痰の定量(または半定量)培養がしばしば推奨されているが,診断価値は不明なまま(J Crit Care 2008; 23: 138-47)と述べている.また,推奨項目に記載はないものの,根拠にはグラム染色の重要性も強調されている.そのコミュニティーで流行しているならばインフルエンザ迅速検査を行うことが推奨される.プロカルシトニンやCRPなどのマーカーを重症感染症と他の急性炎症性疾患の鑑別に用いることは推奨しない.
2.感染症の鑑別として侵襲性カンジダ症を考慮する場合は,1,3 β-D-グルカン(Grade 2B)とマンナン抗原およびマンナン抗体を測定してもよい(Grade 2C)
 真菌感染症はついつい見逃されがちであるが,カンジダ血症の予後の悪さは無視できない.Wisplinghoffらの報告(Clin Infect Dis 2004; 39: 309-17)では,血流感染症ではCNS,黄色ブドウ球菌,腸球菌に次いでカンジダは4番目の頻度であり,死亡率は全体・ICUのみのいずれにおいてもカンジダが最も高かった(全体39.2%,ICU 47.1%).

 β-D-グルカンは日本で開発されたマーカーで,近年になってようやく海外でもその有用性が認められるようになり,治療有効性指標としても注目されている.推奨項目では2Bでの推奨となっているが,根拠ではβ-D-グルカンに関する報告がどういうわけか引用されていない.

補足しておくと,β-D-グルカンの有用性を示す代表的な文献は2012年だけでも多数報告がある(Clin Infect Dis 2012; 55: 521-6,Pulmonary Review 2012; 17: 15,Clin Microbiol Infect 2012; 18: E122-7,Clin Infect Dis 2012; 54: 1240-8).カンジダだけでなく,ニューモシスチス肺炎でもβ-D-グルカンは非常に有用である.アスペルギルスでは感度がかなり落ち,ガラクトマンナン抗原の方が優れているとの報告もある(J Clin Microbiol 2004; 42: 2733-41).なお,クリプトコッカスはβ-D-グルカンが1,3でないため検出はほとんどできない.本邦ではβ-D-グルカン計測はワコー法とMK法があり,院内で計測できるタイプのものはほとんどがワコー法であるが,MK法に比して感度が落ちることに注意が必要である.また,抗菌薬TAZ/PIPC,CVA/AMPC使用でβ-D-グルカンが上昇することが報告されているが,本邦での検査キットではその心配はほとんどないとのことである.
3.潜在的な感染源の検索のため,画像検査を迅速に行うことを推奨する.潜在的感染巣検索は,移送や侵襲的手法の患者リスクを考慮(例えば,CTガイド下針生検のための移送の決定したのであれば,注意深い調整と積極的モニタリングを行う)の上で行なわれるべきである.超音波検査のようなベッドサイドの検査は患者移送を回避できるかもしれない(Ungraded)
 特に推奨根拠となる論文は示されておらず,Ungradedとなっているが,日常診療上で言うまでもなく行うべきことである.

→SSCG 2012(2)はこちら
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by DrMagicianEARL | 2013-01-30 00:00 | 敗血症 | Comments(1)
2.抗菌薬適正使用,VAP予防,CRBSI予防
ICU関連感染症が疑われた重症外科患者において,初期抗菌薬を感染を疑った時点で積極的に投与するか細菌学的根拠が認められた場合のみに投与するかのbefore-after研究
Hranjec T, Rosenberger LH, Swenson B, et al. Aggressive versus conservative initiation of antimicrobial treatment in critically ill surgical patients with suspected intensive-care-unit-acquired infection: a quasi-experimental, before and after observational cohort study. Lancet Infect Dis 2012; 12: 774-80
PMID:22951600
ポイント:米国単施設外科ICUのbefore-after研究(762例 vs 721例).感染を疑ったら抗菌薬投与の積極群と細菌学的根拠が認められた場合のみ抗菌薬投与の保存群の比較で,保存群は積極群より全死亡率が有意に低く(13% vs 27%),抗菌薬治療が有意に適切であり(74% vs 62%),投与期間が有意に短かかった(12.5日間 vs 17.7日間).背景因子で調整すると,積極群の死亡リスクは保存群の2.5倍であった.

抗菌薬使用制限医師向け多面的柔軟教育プログラムの有効性
Butler CC, Simpson SA, Dunstan F, et al. Effectiveness of multifaceted educational programme to reduce antibiotic dispensing in primary care: practice based randomised controlled trial. BMJ 2012; 344: d8173
PMID:22302780,Free Full Text
ポイント:抗菌薬使用制限医師向け多面的柔軟教育プログラムの有効性の報告.年あたり経口抗菌薬使用は介入群で対照群比較において,総数で42%減少.コンサルテーション数日において入院数,7日以内の再診数は介入群と対照群の有意差認めず.

腸球菌による細菌尿の過剰治療
Lin E, Bhusal Y, Horwitz D, et al. Overtreatment of enterococcal bacteriuria. Arch Intern Med 2012; 172: 33-8
PMID:22232145
ポイント:375の培養陽性例の後ろ向き解析.腸球菌による無症候性細菌尿に対してしばしば過剰治療がなされており,32.8%が不適切に抗菌薬を投与されていた.膿尿のみは抗菌薬不適切使用リスクが3.27倍有意に増加した.

急性呼吸器感染症患者に対する外来での抗菌薬治療への介入
Rattinger GB, Mullins CD, Zuckerman IH, et al. A sustainable strategy to prevent misuse of antibiotics for acute respiratory infections. PLoS One 2012; 7: e51147
PMID:23251440
ポイント:3831例before-after比較研究.急性呼吸器感染症患者に対する外来での抗菌薬治療への介入により不適切な抗菌薬処方は減少したという報告.基本的には気管支炎であっても抗菌薬は不要であることがほとんどであり,また,細菌性感染症であっても必ずしも抗菌薬が必要というわけではない.また,経口第3世代セフェムはほぼ効果がほとんど得られないと考えもよい.

抗菌薬投与法を参照できるスマートフォンアプリの導入とその解析
Charani E, Kyratsis Y, Lawson W, et al. An analysis of the development and implementation of a smartphone application for the delivery of antimicrobial prescribing policy: lessons learnt. J Antimicrob Chemother. 2012 Dec.19
PMID:23258314,Free Full Text
ポイント:抗菌薬投与法を参照できるスマートフォンアプリを導入したところ,最初の1ヶ月で40%のジュニアドクターがダウンロードし,1年以内に100%に達した.71%の臨床医が抗菌薬に関する知識を改善できたと回答した.

プロカルシトニンは重症急性膵炎患者において抗菌薬治療期間を補助する有用なツール
Qu R, Ji Y, Ling Y, et al. Procalcitonin is a good tool to guide duration of antibiotic therapy in patients with severe acute pancreatitis. A randomized prospective single-center controlled trial. Saudi Med J 2012; 33: 382-7
PMID:22485232
ポイント:71例RCT.重症急性膵炎患者において,感染の臨床徴候・症状とプロカルシトニンにより抗菌薬投与開始・終了を決定する方法は,予防的抗菌薬を2週間投与する方法に比して有意に抗菌薬投与期間と入院期間を短縮し,コストを減少させた.

血液培養のコンタミ率の減少させる戦略の効果
Youssef D, Shams W, Bailey B, et al. Effective strategy for decreasing blood culture contamination rates: the experience of a Veterans Affairs Medical Centre. J Hosp Infect 2012; 81: 288-91
PMID:22749066
ポイント:血液培養の採血を担当した医療従事者のイニシャルをボトルに記載することをルーチン化し,その後個人にフィードバックすることでコンタミ率は2.6%から1年後には1.5%へ有意に(p<0.001)低下した.

短期間の抗菌尿道カテーテルは尿路感染症発症率を減少させない:多施設共同RCT
Pickard R, Lam T, MacLennan G, et al. Antimicrobial catheters for reduction of symptomatic urinary tract infection in adults requiring short-term catheterisation in hospital: a multicentre randomised controlled trial. Lancet 2012; 380: 1927-35
PMID:23134837
ポイント:14日間以内の抗菌尿道カテーテル(塗銀性,ニトロフラール)と通常尿道カテーテル(対照群)の3群を比較した英国24施設RCT:尿路感染症発症率に有意差なし.抗菌尿道カテーテルのルーティン使用は支持しない.

口腔ケアにおける歯磨きの人工呼吸器関連肺炎の予防効果:システマティック・レビュー&メタ解析
Gu WJ, Gong YZ, Pan L, et al. Impact of oral care with versus without toothbrushing on the prevention of ventilator-associated pneumonia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 2012; 16: R190
PMID:23062250
ポイント:4報RCT,828名のメタ解析.人工呼吸患者で,歯磨きなしの口腔ケアに比べて歯磨きありの口腔ケアは,有意にVAP発生率を減少させず,他の重要な臨床転帰も有意差なし.

人工呼吸器を装着した重症患者の口腔ケアにおける歯磨きの有効性:システマティックレビュー&メタ解析
Alhazzani W, Smith O, Muscedere J, et al. Toothbrushing for Critically Ill Mechanically Ventilated Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials Evaluating Ventilator-Associated Pneumonia. Crit Care Med 2012 Dec.19
PMID:23263588
ポイント:人工呼吸器を装着した重症患者の口腔ケアにおける歯磨きの有効性を検証した6報のRCT,計1408例のメタ解析.4報で歯磨き群は有意差ないがVAPリスクが低い傾向(RR 0.77, 95%CI 0.50-1.21, p=0.26)であった.バイアスリスクが低い報告に限定すると歯磨き群のVAPリスクは有意に低下した(RR 0.26, 95%CI 0.10-0.67, p=0.006).クロルヘキシジン消毒薬の使用はVAP予防における歯磨きの効果を有意に低下させていた.電動歯磨きと手動歯磨きでは有意差なし.歯磨きはICU滞在期間,ICU死亡率,院内死亡率には影響を与えなかった.

小児における口腔ケアとグラム陰性桿菌の咽頭・気道定着
Kusahara DM, Friedlander LT, Peterlini MA, Pedreira ML. Oral care and oropharyngeal and tracheal colonization by Gram-negative pathogens in children. Nurs Crit Care 2012; 17: 115-22
PMID:22497915
ポイント:PICUに入室した小児74名を0.12%クロルヘキシジン口腔ケア群とプラセボ群で比較した二重盲検RCT.咽頭・気道でのグラム陰性菌定着率に有意差はみられなかった.

ICU入院患者における口腔洗浄においてクロルヘキシジンとハーブ洗口液を比較したRCT
Baradari AG, Khezri HD, Arabi S. Comparison of antibacterial effects of oral rinses chlorhexidine and herbal mouth wash in patients admitted to intensive care unit. Bratisl Lek Listy 2012; 113: 556
PMID:22979913
ポイント:ICU患者60名におけるハーブ洗口液と2%クロルヘキシジンの口腔ケア効果を比較した二重盲検RCT:両製剤とも黄ブ菌と肺炎球菌に対して有意に抗菌効果があったが,製剤間比較ではクロルヘキシジンの方がより有意に効果的であった.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)ガイドラインの実施:多施設共同前向き研究
Sinuff T, Muscedere J, Cook DJ, et al; Canadian Critical Care Trials Group. Implementation of Clinical Practice Guidelines for Ventilator-Associated Pneumonia: A Multicenter Prospective Study. Crit Care Med 2013; 41: 15-23
PMID:23222254
ポイント:VAPガイドラインの実行による成果:カナダ10施設,米国1施設の48時間以上人工呼吸器を装着している患者を4期に分けて評価(各330名).実行率上昇とともにVAP発生率は14.2%から8.8%まで有意に低下した.

ICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防改善を維持するプログラムの実践
Caserta RA, Marra AR, Durão MS, et al. A program for sustained improvement in preventing ventilator associated pneumonia in an intensive care setting. BMC infect dis 2012; 12: 234
PMID:23020101,Free Full Text
ポイント:ICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防改善を維持するプログラムの実践を行い,21894患者日数を解析.VAP予防バンドルの遵守率が90%以上をキープすることにより観察期間の間に数回発生率ゼロを達成しえた.

人手不足,過密状態,不適切な看護師/人工呼吸器患者比と院内感染
Schwab F, Meyer E, Geffers C, Gastmeier P. Understaffing, overcrowding, inappropriate nurse:ventilated patient ratio and nosocomial infections: which parameter is the best reflection of deficits? J Hosp Infect 2012; 80: 133-9
PMID:22188631
ポイント:182のICUにおける肺炎1313例,血流感染症513例の解析.看護師/人工呼吸器装着患者比の高さなどのスタッフ配置の良好性は院内感染を減少させる可能性がある.

カテーテル関連血流感染症(CRBSI)の多施設解析
Timsit JF, L'Hériteau F, Lepape A, et al. A multicentre analysis of catheter-related infection based on a hierarchical model. Intensive Care Med 2012; 38: 1662-72
PMID:22797354
ポイント:51施設ICUの患者7188例(中心静脈カテーテル8626本)の後ろ向き観察研究.中心静脈カテーテルにおけるCRBSI・菌定着のリスク因子:免疫不全1.42倍,内科患者1.64倍,外傷患者2.54倍,鎖骨下静脈以外からの挿入2.1倍,カテーテル先端定量培養2.55倍,ポビドンヨードと比較したアルコール含有消毒0.68-0.69倍であった.

皮下埋め込み型CVポート造設術に予防的抗菌薬投与は必要か?
Covey AM, Toro-Pape FW, Thornton RH, et al. Totally implantable venous access device placement by interventional radiologists: are prophylactic antibiotics necessary? J Vasc Interv Radiol 2012; 23: 358-62
PMID:22365295
1183名の皮下埋め込み型CVポート造設術の後ろ向き解析で,93%の患者は予防的抗菌薬投与を受けていないが,全体のカテーテル関連血流感染症合併率は0.6%であった.CVポート造設術に予防的抗菌薬は推奨しない.

成人重症患者におけるカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の予防におけるクロルヘキシジン含有スポンジの経済学的効果
Schwebel C, Lucet JC, Vesin A, et al. Economic evaluation of chlorhexidine-impregnated sponges for preventing catheter-related infections in critically ill adults in the Dressing Study. Crit Care Med 2012; 40: 11-7
PMID:21926570
ポイント:フランス7施設のDressing Studyのデータ解析.たとえCRBSIの発症率が低いICUであっても,クロルヘキシジン含有スポンジを動脈およびCVカテーテルのドレッシング剤として用いてその発症を予防することによりコスト削減につながっていた.

ドレッシング破綻はカテーテル関連感染症の主要な危険因子
Timsit JF, Bouadma L, Ruckly S, et al. Dressing disruption is a major risk factor for catheter-related infections. Crit Care Med 2012; 40: 1707-14
PMID:22488003
ポイント:1419患者(3275の動脈もしくは中心静脈カテーテル)で,296のカテーテルコロニぜーションを認め,29のカテーテル感染症(CRBSI)を認めた.カテーテルのドレッシング破綻はCRBSIの独立危険因子であり,2回目のドレッシング破綻後では3倍以上,最後のドレッシングが破綻すれば10倍以上に増加する.ドレッシング破綻件数とカテーテル周囲の皮膚のコロニー形成リスク増加が関連していた.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-29 00:00 | 感染対策 | Comments(0)
1.環境感染対策
 本邦の感染防止対策の歴史は非常に浅い.日本に院内感染という言葉が出てきたのは1990年の富家恵美子著書「院内感染」が出版されたのが最初と思われる.本書では,夫が食道静脈瘤手術を受け,順調に回復している最中にMRSA感染症で亡くなった.本書では感染防止対策全般の必要性を訴えていた.この当時の日本はMRSA患者隔離の概念すらなかった時代である.内視鏡はブラシを用いない簡易洗浄のみで使いまわし,洗浄・消毒は1日の終わりにのみにしかしていなかった.結核患者に対してはサージカルマスクのみで対応していた.そのような中1996年に「隔離予防策のためのCDCガイドライン」が出版され,空気感染,飛沫感染,接触感染の考え方が初めて日本にもたらされた.その後,本邦でも手探りながら感染防止対策がとられるようになる.

 2012年の診療報酬改定により感染防止対策加算が加算1で500点が算定できるようになった.院内感染対策を行うための十分な資金が診療報酬として得られる環境が整ってきている.これに伴い,日本各地で感染対策の研究会が多数開催され,感染防止対策はいまや一大ブームとなっている.

 感染防止対策は環境感染対策と抗菌薬適正使用が主要な柱となっている.環境感染対策においては,2012年の最初に医療従事者における患者接触後の手袋・ガウンの多剤耐性菌汚染の実態調査が報告され(Crit Care Med 2012; 40: 1045-51),ICUにおける院内感染のリスクを推し量るよい指標が示された.人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防は特に重要視されており,Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012でも推奨項目に組み入れられている.VAP予防手段の一つとして様々な口腔ケアが提案されるもエビデンスの進展は依然として乏しい.カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は,近年管理技術の向上もあり,鼠径と内頚で感染率に差がなくなったという報告が増加している.また,1%クロルヘキシジンアルコール製剤が消毒薬として使用可能となり,CRBSI減少が期待されている.現在,1%クロルヘキシジンアルコール,0.5%クロルヘキシジンアルコール,ポビドンヨードの3種類の消毒薬の効果を比較する本邦の多施設共同オープンラベル無作為化比較試験JSEPTIC-CRBSI trialが行われている.

 感染防止対策のコンプライアンスについては対照的な2報がある.ICUでの感染対策において,細かく遵守項目を定めてもMRSAやVREの伝播は減少できなかった(N Engl J Med 2011; 364: 18)が,意識改革を行う手法ではMRSA感染を減少させることができた(N Engl J Med 2011; 354: 1419-30)としている.厳しく遵守を求めるのではなく,意識を向上させる方がむしろコンプライアンスが高まる可能性がある.

医療従事者における患者接触後の手袋・ガウンの多剤耐性菌汚染
Morgan DJ, Rogawski E, Thom KA, et al. Transfer of multidrug-resistant bacteria to healthcare workers' gloves and gowns after patient contact increases with environmental contamination. Crit Care Med 2012; 40: 1045-51
PMID:22202707,Free Full Text
ポイント:感染対策従事者,ICUスタッフは必読文献と思われる.6施設ICUにおける前向きコホート研究.接触感染対策を行っている患者の部屋に出入りする医療従事者の予防的衣服における多剤耐性菌のコンタミネーションの調査.ガウン2.3-12.6%,手袋10.0-29.3%で患者と同一菌を検出した.また,手袋を脱いだ手から1.7-4.2%で菌を検出した.手袋・ガウンからの菌検出リスク因子は,環境から培養陽性(OR 4.15),5分以上滞在(OR 1.99),診察した(OR 1.74),人工呼吸器に触った(OR 1.78)であった.環境のコンタミネーションは手袋やガウンを通じて容易に伝播される.汚染菌は上位からA.baumanii 32.9%,MDRP 17.4%,VRE 13.9%,MRSA 13.8%であった.独立危険因子は,環境培養陽性(OR 4.2),5分を超える在室(OR 2.0),身体診察(OR 1.7),人工呼吸器への接触(OR 1.8)であった.

手術室における細菌汚染
Loftus RW, Brown JR, Koff MD, et al. Multiple reservoirs contribute to intraoperative bacterial transmission. Anesth Analg 2012; 114: 1236-48
PMID:22467892
ポイント:米国3施設548症例の手術室における細菌汚染の検討で,三方活栓で細菌が確認されたのは23%であり,三方活栓の汚染は死亡リスクを有意に58.5倍増加させる.麻酔科医の手指よりもpop-offバルブ,気化器のダイアルなど環境汚染の関与が大きい.ICT必読文献.環境感染ラウンドの際の参考に.

米国ICUにおける耐性菌のサーベランス
Eagye KJ, Banevicius MA, Nicolau DP. Pseudomonas aeruginosa is not just in the intensive care unit any more: implications for empirical therapy. Crit Care Med 2012; 40: 1329-32
PMID:22425824
ポイント:米国13施設における前向き多施設サーベイランス研究で,ICUは非ICU病棟より多剤耐性検出率(12% vs 5%),カルバペネム非感受性緑膿菌検出率(35% vs 27%)が有意に高い.病棟別アンチバイオグラムは経験的治療方針決定に役立つ可能性がある.

多剤耐性菌の定義
Magiorakos AP, Srinivasan A, Carey RB, et al. Multidrug-resistant, extensively drug-resistant and pandrug-resistant bacteria: an international expert proposal for interim standard definitions for acquired resistance. Clin Microbiol Infect 2012; 18: 268-81
PMID:21793988
ポイント:多剤耐性菌(MDR,XDR,PDR)の定義.多剤耐性菌がからんだ論文or発表を行う場合のMDR,XDR,PDRの定義確認にオススメの文献.

多剤耐性結核菌感染患者にサージカルマスクを装着させたときの効果
Dharmadhikari AS, Mphahlele M, Stoltz A, et al. Surgical face masks worn by patients with multidrug-resistant tuberculosis: impact on infectivity of air on a hospital ward. Am J Respir Crit Care Med 2012; 185: 1104-9
PMID:22323300
ポイント:サージカルフェイスマスクは多剤耐性結核患者に装着させることで結核菌伝播を有意に減らすことができる(リスク56%減少).結核患者では慣習的に行われていることであるが,意外にもこれまでほとんど研究報告がなかった.

手指衛生改善戦略のシステマティック・レビュー
Huis A, van Achterberg T, de Bruin M, et al. A systematic review of hand hygiene improvement strategies: a behavioural approach. Implement Sci 2012; 7: 92
PMID:22978722,Free Full Text
ポイント:手指衛生の向上戦略を報告した41報のシステマティックレビュー.知識・認識・行動制御・促進といった因子だけでは手指衛生の改善には十分ではない.行動の変化の決定要素に焦点をあてることでより有効な手指衛生の改善がはかれる.

環境清掃のための不織布への細菌汚染
Oie S, Arakawa J, Furukawa H, et al. Microbial contamination of a disinfectant-soaked unwoven cleaning cloth. J Hosp Infect 2012: 82; 61-3
PMID:22854353
ポイント:山口大学からの報告.ICUの調査で環境清掃に使用されている0.2%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩溶液含浸レーヨン不織布の開封済みパックがBurkholderia cepacia,緑膿菌などに汚染されていた.未開封パック42サンプル中5サンプルからもBurkholderia cepaciaが検出された.

ナーシングホームにおける経腸栄養の細菌汚染における感染制御プログラムの効果
Ho SS, Tse MM, Boost MV. Effect of an infection control programme on bacterial contamination of enteral feed in nursing homes. J Hosp Infect 2012; 82: 49-55
PMID:22765960
ポイント:効果的な感染制御プログラムにより経腸栄養の細菌汚染を大幅に減少させることが可能である.ナーシングホームに感染制御プログラムを導入することが強く推奨される.汚染と手指衛生の不足は有意な関連性がみられた.

ノロウイルスアウトブレイク時の病棟区画化による有症状患者のコホーティング
Haill CF, Newell P, Ford C, et al. Compartmentalization of wards to cohort symptomatic patients at the beginning and end of norovirus outbreaks. J Hosp Infect 2012; 82: 30-5
PMID:22770470
ポイント:ノロウイルスアウトブレイクの開始時および終了時に,病棟を区画化して有症状患者をコホーティングすることによりアウトブレイク管理の効率が改善し業務の途絶が減少した.病棟全体閉鎖よりも区画化の方が日数が短縮した.

2病院における多剤耐性緑膿菌のアウトブレイク:病院の排水システムと汚染の関連
Breathnach AS, Cubbon MD, Karunaharan RN, et al. Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa outbreaks in two hospitals: association with contaminated hospital waste-water systems. J Hosp Infect 2012; 82: 19-24
PMID:22841682
ポイント:英国2病院でのMDRPアウトブレイク調査.排水システムがMDRPやその他の院内病原体のリザーバとなる可能性があることが示された.流し・シャワー・トイレの設計不良,汚物洗浄処理室付近での清潔な物品の保管,排水管の頻繁な詰まりや漏れが原因であった.制御対策として,流しとトイレを洗浄が容易で水はねしにくいモデルへ交換すること,詰まりや不適切な保管を減らすための職員教育,清掃手順の見直し,あふれを減少させるためのシャワーの流量低下などを実施した.これらの対策によりMDRP症例数が大幅に減少した.

パンデミック時の陰圧室の代わりに換気扇を使用した患者隔離
Yuen PL, Yam R, Yung R, Choy KL. Fast-track ventilation strategy to cater for pandemic patient isolation surges. J Hosp Infect 2012; 81: 246-50
PMID:22738612
ポイント:2003年SARS流行時調査で,急増した隔離を要する感染症患者を収容する隔離施設が不足した場合は,陰圧気流を創出するための簡易な窓用換気扇の設置などを既存の一般病棟に迅速かつ広範に設置することで感染伝播を防ぎえる可能性が示唆された.

外部固定装置への消毒薬別の効果
Stinner DJ, Beltran MJ, Masini BD, et al. Bacteria on external fixators: which prep is best? J Trauma Acute Care Surg 2012; 72: 760-4
PMID:22491567
ポイント:手術時に使用する外部固定装置への消毒効果について4%クロルヘキシジン,10%ポビドンヨードを検出菌で比較した40例RCT.両群間に有意差なし.スプレー式に変えても有意差はみられなかった.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-28 13:01 | 感染対策 | Comments(0)
5.敗血症の予後関連因子,解熱処置,プロトコル遵守

1991年のACCP/SCCMの敗血症定義(SIRS基準)及び2001年のSCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISによる敗血症定義の診断精度の評価:ほぼ同等
Zhao H, Heard SO, Mullen MT, et al. An evaluation of the diagnostic accuracy of the 1991 American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine and the 2001 Society of Critical Care Medicine/European Society of Intensive Care Medicine/American College of Chest Physicians/American Thoracic Society/Surgical Infection Society sepsis definition. Crit Care Med 2012; 40: 1700-6
PMID:22610176
ポイント:1991年のACCP/SCCMの敗血症定義(SIRS基準)及び2001年のSCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISによる敗血症定義の診断精度を2007-2008年にICUに入室したサンプルデータ960例で評価.ACCP/SCCM定義は感度94.6%,特異度61.0%であった,SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SISは感度96.9%,特異度58.3%であった.

スペインにおける重症市中菌血症患者の臨床的特徴と予後の15年間の推移
Vallés J, Palomar M, Alvárez-Lerma F, et al; for the GTEISEMICYUC Working Group on Bacteremia. Evolution Over a 15-Year Period of Clinical Characteristics and Outcomes of Critically Ill Patients With Community-Acquired Bacteremia. Crit Care Med 2013; 41: 76-83
PMID:23222266
ポイント:93~07年までのスペイン47のICUに入室し入院後48時間以内に血液培養が陽性となった市中菌血症患者829名の解析.市中関連菌血症患者比率は93年の9/1000ICU入院から07年に24.4/1000に有意に増加した.敗血症性ショックも4.6/1000から14.6/1000に有意に増加していた.菌血症患者は有意に高齢でより多くの合併症を有していた.グラム陽性菌・グラム陰性菌検出率は93年・98年・07年で有意差なし.死亡率は93年42%→98年32.2%→07年22.9%で有意に低下した.敗血症性ショックと合併症の数は予後不良の独立した関連因子であった.適切な抗菌薬治療とその進展は予後改善に関連していた.

敗血症性ショック患者の凝固能低下遷延は院内死亡を予測する
Massion PB, Peters P, Ledoux D, et al. Persistent hypocoagulability in patients with septic shock predicts greater hospital mortality: impact of impaired thrombin generation. Intensive Care Med 2012; 38: 1326-35
PMID:22735856
ポイント:敗血症性ショック患者39名の前向き研究.敗血症性ショック患者はICU入室時に凝固能低下を呈している.3日目のAPTT延長と解消されないトロンビン生成欠乏によって評価される凝固能低下の持続は病院死亡率の増大と関連.

初期の適切な抗菌薬治療を受けた敗血症性ショック患者の死亡リスク因子
The determinants of hospital mortality among patients with septic shock receiving appropriate initial antibiotic treatment. Crit Care Med 2012; 40: 2016-21
PMID:22584765
ポイント:血液培養陽性の敗血症性ショック患者436例の後向きコホート研究.初期の適切な抗菌薬療法を受けた敗血症性ショック患者で,ICUでの感染獲得(OR 1.99)とAPACHEⅡscoreの増加(OR 1.11)が院内死亡の決定因子であった.一方でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染は低い院内死亡リスク(OR 0.32)と関連していた.

BNPは敗血症患者の死亡を予測する:システマティックレビュー&メタ解析
Wang F, Wu Y, Tang L, et al. Brain natriuretic peptide for prediction of mortality in patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis. Crit Care 2012; 16: R74
PMID:22559153
ポイント:12報1865例のメタ解析.BNP上昇は死亡リスクを8.65倍に有意に上昇させた(BNP 10.44倍,NT-pBNP 6.62倍).死亡予測においては感度79%,特異度60%,陽性尤度比2.27,陰性尤度比0.32であり,敗血症でBNPまたはNT-proBNPの高値は強力な死亡予測因子となる可能性が示唆された.

重症外傷患者におけるプロカルシトニンの有用性
Sakran JV, Michetti CP, Sheridan MJ, et al. The utility of procalcitonin in critically ill trauma patients. J Trauma Acute Care Surg 2012; 73: 413-8
PMID:22846948
ポイント:ICUに入室した外傷患者102名(院内死亡率13%),856計測値の解析.プロカルシトニン値は外傷・敗血症のICU患者で有意に高く,重症疾患で敗血症とSIRSを区別する一助となるかもしれない.高いプロカルシトニン値は死亡率増加と関連しており,カットオフ値を5ng/mLとすると死亡リスクは3.65倍であった.また,プロカルシトニンは敗血症の有意な予測因子(OR 2.37)であった.

大腸菌菌血症における臨床像,予後,ESBL産生と血液培養陽性までの時間の関連
Álvarez R, Viñas-Castillo L, Lepe-Jiménez JA, et al. Time to positivity of blood culture association with clinical presentation, prognosis and ESBL-production in Escherichia coli bacteremia. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2012; 31: 2191-5
PMID:22298241
ポイント:大腸菌菌血症患者226例の後ろ向き観察研究.大腸菌菌血症における血液培養陽性検出までの時間の短さは敗血症性ショックと予後不良の独立危険因子であった.ESBL産生株であることは血液培養陽性までの時間に有意な影響を与えない.

重症患者の敗血症予測における未熟血小板分画
De Blasi RA, Cardelli P, Costante A, et al. Immature platelet fraction in predicting sepsis in critically ill patients. Intensive Care Med 2012 Oct.24
PMID:23093245
ポイント:ICU入室時点で敗血症がない患者では,敗血症が明らかになる前に未熟血小板分画(IPF%)が増加する.IPF%の測定は敗血症の発症を予測する早期細胞性マーカーとなりうる.感度56.2%,特異度90.0%.なお,IPF%は急性冠症候群の予測マーカーにもなることが報告されている(Lopez-Jimenez RA, et al. Rev Esp Cardiol 2012 Sep.4).

赤血球容積粒度分布幅(RDW)はグラム陰性桿菌菌血症患者の死亡予測マーカー
Ku NS, Kim HW, Oh HJ, et al. Red blood cell distribution width is an independent predictor of mortality in patients with gram-negative bacteremia. Shock 2012; 38: 123-7
PMID:22683729
ポイント:グラム陰性桿菌菌血症患者161名の後顧的解析:赤血球容積粒度分布幅(RDW)高値はRDW正常より28日死亡率が有意に高く,グラム陰性桿菌菌血症における死亡の独立した予測因子であり,特に72時間時点でのRDWは全死亡を予測しうる.RDWは日本ではあまり測られないが,CBCとは独立したパラメータで欧米では重視されている.

集中治療を受けるSIRSもしくはショック患者において高感度トロポニンTは心臓超音波検査よりも1年死亡率予測に優れている
Bergenzaun L, Ohlin H, Gudmundsson P, et al. High-sensitive cardiac Troponin T is superior to echocardiography in predicting 1-year mortality in patients with SIRS and shock in intensive care. BMC Anesthesiology 2012; 12: 25
PMID:23006477,Free Full Text
ポイント:49例の前向き観察コホート研究.非生存者の高感度トロポニンTは生存者と比較して有意に高く(169ng/L vs 60 ng/L),高感度トロポニンTはショック患者の1年死亡率の独立予測因子(OR 2.0)であり,BNP,心エコーパラメータは予後予測的価値を有さなかった.

敗血症合併菌血症において発症前90日以内の抗菌薬曝露は予後不良
Micek S, Johnson MT, Reichley R, Kollef MH. An institutional perspective on the impact of recent antibiotic exposure on length of stay and hospital costs for patients with gram-negative sepsis. BMC Infect Dis 2012; 12: 56
PMID:22414209,Free Full Text
ポイント:米国Barnes-Jewish病院における2007年のコホートデータから抽出した重症敗血症・敗血症性ショックを合併したグラム陰性菌菌血症754例の解析.大腸菌30.8%,肺炎桿菌23.2%,緑膿菌17.6%であった.41.1%が発症前90日以内に抗菌薬曝露があり,非曝露群と比較して不適切な抗菌薬初期投与が有意に多く(45.4% vs 21.2%),院内死亡率も有意に高く(51.3% vs 34.0%),入院期間も有意に長く(13.0日間 vs 8.0日間),コストも有意に高かった(94737$ vs 21329$).

重症敗血症/敗血症性ショック患者において赤血球輸血は低い死亡率と関連する
Park DW, Chun BC, Kwon SS, et al. Red blood cell transfusions are associated with lower mortality in patients with severe sepsis and septic shock: a propensity-matched analysis. Crit Care Med 2012; 40: 3140-5
PMID:22975891
ポイント:2005年から2009年までの韓国22施設ICUの1450名,propensity matching解析.低リスクの重症敗血症/敗血症性ショック患者に対する輸血で死亡率が7日間,28日間,院内全てで約50%低下した.

集中治療における入院時または入院前のアニオンギャップは死亡率を予測する
Lipnick MS, Braun AB, Cheung JT, et al. The Difference Between Critical Care Initiation Anion Gap and Prehospital Admission Anion Gap is Predictive of Mortality in Critical Illness. Crit Care Med 2013; 41: 49-59
PMID:23190721
ポイント:ボストン2施設のICU患者8985名における重症化初期アニオンギャップ(AG)-入院前AG=ΔAGと予後の関係の研究.30日死亡リスクは,ΔAG 0-5mEq/Lと比較して,<0mEq/Lで0.75倍増加,5-10mEq/Lで1.56倍増加,>10mEq/Lで2.18倍増加していた.

臓器不全前のSIRSの期間は敗血症の有意な予後予測因子である
Sugita H, Kinoshita Y, Baba H. The duration of SIRS before organ failure is a significant prognostic factor of sepsis. Int J Emerg Med 2012; 5: 44
PMID:23273374,Free Full Text
ポイント:日本からの報告.重症敗血症患者110例の後ろ向き解析.臓器不全前SIRS期間(DSOF)≦24hは>24hより死亡率が有意に高く(52% vs 25%),死亡リスク5.89倍.DSOFは重症敗血症の予後予測因子であった.

敗血症,非敗血症における重症患者の死亡率と体温,解熱薬の関連性:日韓共同多施設前向き観察研究FACE study
Lee BH, Inui D, Tada K, Tanaka K, et al; Fever and Antipyretic in Critically ill patients Evaluation (FACE) Study Group. Association of body temperature and antipyretic treatments with mortality of critically ill patients with and without sepsis: multi-centered prospective observational study. Crit Care 2012; 16: R33
PMID:22373120,Free Full Text
ポイント:日韓の25施設ICUにおける48時間以上ICUに入院している患者1425例の解析.解熱処置を受けた患者は737例(51.7%)であり,解熱薬は計4863回投与された.敗血症における発熱は予後に影響しないが,敗血症患者への解熱薬の投与は28日死亡リスクをNSAIDsで2.61倍,アセトアミノフェンで2.05倍有意に増加させた.一方,敗血症でない場合は,高熱(>39.5℃)で28日死亡リスクは8.14倍に有意に上昇した(36.5-37.4℃と比較).現在FACE-Ⅱ studyが進行中.

敗血症性ショックにおける外部からのクーリングによる発熱のコントロール:RCT
Schortgen F, Clabault K, Katsahian S, et al. Fever control using external cooling in septic shock: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 2012; 185: 1088-95
PMID:22366046
ポイント:敗血症性ショック患者200名を外部からのクーリングによる発熱コントロールを行う群と対照群とで比較したRCT.敗血症性ショック早期の患者において,クーリングは血管作動薬の必要性を有意に減少させ,14日死亡も有意に減少させた(19% vs 34%, p=0.013).

ICU看護師の冷罨法に関する意識調査;適用に際して知識と判断が不十分な可能性
野口綾子,細川康二,志馬伸朗,他.ICU看護師の冷罨法に関する意識調査.日集中医誌 2012; 19: 273-6
ポイント:ICUに限らず冷罨法を行うことのある看護師は必読文献と思われる.7施設ICUに勤務する看護師197名へのアンケートで,発熱は37.15-38.0℃,冷罨法の開始体温は38.0℃と回答.看護師の99%が冷罨法の手法に氷枕・氷嚢を選択し,85.1%が解熱効果があると回答.冷罨法開始基準は,患者の希望(78.6%)と体温の上昇(84.2%)であり,70.7%が感染症の有無によって適応基準を変えないと回答していた.冷罨法の適用に際して知識と判断が不十分な可能性が示唆された.

アジアにおけるEGDTとSSC蘇生バンドルの実施
Na S, Kuan WS, Mahadevan M, Li CH, et al; ATLAS Investigators. Implementation of early goal-directed therapy and the surviving sepsis campaign resuscitation bundle in Asia. Int J Qual Health Care 2012; 24: 452-62
PMID:22899698
ポイント:アジア5カ国8施設の成人重症敗血症・敗血症性ショック患者556名の解析.死亡率は29.9%であった.蘇生バンドル実施は死亡率を33%有意に低下していた(調整因子補整で有意差は消失).実施コンプライアンスはチームの方が良好であった.

重症敗血症・敗血症性ショック管理における早期蘇生バンドルのコンプライアンスへの影響因子
Kang MJ, Shin TG, Jo IJ, et al. Factors influencing compliance with early resuscitation bundle in the management of severe sepsis and septic shock. Shock 2012; 38: 474-9
PMID:23042195
重症敗血症・敗血症性ショック患者317名の蘇生バンドルコンプライアンスの上昇因子・低下因子の多変量解析.高熱,臨床経験3年以上の看護師によるケア,シニアレジデントや救急認定医による治療がコンプライアンス上昇因子であった.一方,神秘的ショック,高乳酸血症がコンプライアンス低下因子であった.

韓国ICUにおける重症敗血症バンドルの施行におけるフルタイムの集中治療医と看護師/患者比率の影響
Kim JH, Hong SK, Kim KC, et al. Influence of full-time intensivist and the nurse-to-patient ratio on the implementation of severe sepsis bundles in Korean intensive care units. J Crit Care 2012; 414: e11-21
PMID:22591568
ポイント:韓国28施設ICUの251例の解析.集中治療医の24時間常駐と看護師対患者比率1:2は重症敗血症患者の蘇生バンドルの実施のコンプライアンスと死亡率低下に有意に関連しており,死亡リスクをそれぞれ54.4%,54.1%減少させていた.

重症敗血症患者における脳血管オートレギュレーションと敗血症関連譫妄
Schramm P, Klein KU, Falkenberg L, et al. Impaired cerebrovascular autoregulation in patients with severe sepsis and sepsis-associated delirium. Crit Care 2012; 16: R181
PMID:23036135
ポイント:30例の解析.重症敗血症患者における脳血管オートレギュレーションはday1 60%,day2 59%,day3 41%,day 4 46%であり,最初の2日間は脳血管の自動制御機能が障害されており,CAM-ICUにより敗血症関連譫妄は76%の患者でみられ,特にday1の脳血管オートレギュレーションはday4の敗血症関連譫妄発症と有意に関連していた.

肺炎マウスにおける腸内細菌叢の役割
Fox AC, McConnell KW, Yoseph BP, et al. The endogenous bacteria alter gut epithelial apoptosis and decrease mortality following Pseudomonas aeruginosa pneumonia. Shock 2012; 38: 508-14
PMID:23042193
ポイント:緑膿菌肺炎モデルの無菌マウスを用いた基礎研究.腸内の内因性細菌は,腸管細胞アポトーシスや局所的炎症促進反応を調整することで肺炎からの敗血症による死亡率を減少させる.

肺炎球菌のαエノラーゼはNETsを増加させる
Mori Y, Yamaguchi M, Terao Y, et al. α-Enolase of Streptococcus pneumoniae induces formation of neutrophil extracellular traps. J Biol Chem 2012; 287: 10472-81
PMID:22262863
ポイント:日本からのin vitro研究.重症感染症では血小板が好中球に結合し,好中球自らが犠牲となり(NETosis),核を分解して殺菌力のあるNETsを細胞外に放出し,菌を絡めとる.しかしながらエラスターゼやヒストンなど,一部生体に悪影響を及ぼす可能性があるものも放出されうる.肺炎球菌がこのNETs放出を促進することが本報告で分かる.なお,肺炎球菌はカプセル化とリポテイコ酸により正電荷を帯び,NETsを回避できることが知られており(Cell Microbiol 2007; 9: 1162-71),NETsが関与するalarminsによる生体への侵襲とNETsで駆除できない肺炎球菌の特徴が重症化の一因であることが推察される.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-25 00:00 | 敗血症 | Comments(0)
4.敗血症における各種メディケーション,PMX-DHP
 敗血症に対する薬剤治療は大きな進展はない.賛否両論のステロイドに関しては,有用と判断すべきエビデンスは2012年もあまりでておらず,むしろ有害との報告もでている.

 リコンビナント活性化プロテインC製剤の撤退と入れ替わりに本邦発のリコンビナント・トロンボモデュリン製剤がDIC領域で普及し,米国でも敗血症性DICにおいてPhaseⅡが終了しているが,現時点ではRCTレベルでの死亡率改善効果は得られていないのが現状であり,PhaseⅢの結果が待たれる.

 一方で近年敗血症・ARDS・肺炎領域で注目されているスタチン製剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)であるが,2012年にはRCT/PhaseⅡのASEPSIS trialが報告され,現時点では敗血症の重症化予防の効果のみという結果であった.

敗血症性ショックにおける早期の低用量ステロイド療法:後ろ向き観察研究
Park HY, Suh GY, Song JU, et al. Early initiation of low-dose corticosteroid therapy in the management of septic shock: a retrospective observational study. Crit Care 2012; 16: R3
PMID:22226237,Free Full Text
ポイント:低用量ステロイド療法を受けた敗血症性ショック患者178名の後ろ向き解析.敗血症性ショックに対する早期の低用量ステロイド療法開始は死亡率の減少と有意に関連.生存者と死亡者の低用量ステロイド療法開始までの時間は6.5時間vs10.4時間で有意に生存者の方が短かった(p=0.0135).6時間以内投与群は6時間後投与群より37%死亡率が低かった(32% vs 51%,p=0.0132).ステロイドを投与するなら早めに,ということにはなるが,本研究ではステロイド非投与群との比較は行われていない.ステロイド投与自体の改善効果についてはいまだ議論されており,エビデンスは不十分である.

成人敗血症性ショックにおける低用量ステロイドは死亡リスクを増加させる
Casserly B, Gerlach H, Phillips GS, et al. Low-dose steroids in adult septic shock: results of the Surviving Sepsis Campaign. Intensive Care Med 2012; 38: 1946-54
PMID:23064466
ポイント:2005-2010年の218施設敗血症患者27836名の解析.低用量ステロイド投与患者の病院死亡リスクは1.18倍,ショック後8時間以内に早期投与された例では1.23倍有意に増加していた.

PMX-DHPを用いない敗血症性ショック治療
岩崎衣津,時岡宏明,福島臣啓,他.エンドトキシン吸着療法を用いない敗血症性ショック患者の治療成績.日救急医会誌 2012; 23: 92-100
ポイント:下部消化管疾患による敗血症性ショック患者28例の治療は,心臓超音波検査による適切な前負荷の維持とノルアドレナリンとバソプレシンの使用により,PMX-DHPを用いなくても院内死亡率は17.9%(APACHEⅡから算出した予測死亡率63.3%),大腸穿孔患者15例では院内死亡率は0%(予測死亡率57.7%)と良好な成績を示した.本文献には岡山赤十字病院麻酔科の独自の敗血症治療プロトコルも掲載されており,非常に興味深い.

大腸穿孔患者におけるPMX-DHP(エンドトキシン吸着カラム)
Sugimoto K, Sato K, Maekawa H, et al. Analysis of the efficacy of direct hemoperfusion with polymyxin B-immobilized fiber (PMX-DHP) according to the prognostic factors in patients with colorectal perforation. Surg Today 2012 Nov.6
PMID:23129028
ポイント:日本からの報告.大腸穿孔への手術を受けた156名の解析で,術後28日死亡率は17.9%であり,APACHEⅡscore≧17が独立危険因子であった.≧17でPMX-DHPを受けた患者でも≦16の患者より有意に死亡率が高い.PMX-DHPは重症例では効果に限界があることが示唆された.

シベレスタットの使用を中止してもARDS患者の予後は悪化せず
小林秀嗣, 内野滋彦, 遠藤新大, 他.シベレスタット使用中止による敗血症性急性肺傷害症例の予後変化.日集中医誌 2012; 19: 609-15
ポイント:東京慈恵医大からの報告.シベレスタット(エラスポール)の使用を原則中止して予後を比較したbefore-after研究.シベレスタット使用中止後も敗血症性急性肺傷害の予後は悪化しなかった.中止後は人工呼吸器期間が有意に短く,院内死亡率は73.1%有意に減少した.

リコンビナント・ヒト・可溶性トロンボモデュリン(rTM)は重症敗血症患者の死亡率と呼吸機能障害を改善する
Ogawa Y, Yamakawa K, Ogura H, et al. Recombinant human soluble thrombomodulin improves mortality and respiratory dysfunction in patients with severe sepsis. J Trauma Acute Care Surg 2012; 72: 1150-7
PMID:22673239
ポイント:大阪大学からの報告.敗血症性DICに対してrTM群41例とコントロール群45例を後方視的に前後比較した研究.rTMは28日,60日,90日目(90日死亡率:rTM群37% vs コントロール群58%)の転帰,SOFA score,肺傷害スコアを有意に改善した.

DICに対するアンチトロンビン(AT)とメシル酸ガベキサート(GM):preliminary study
Nishiyama T, Kohno Y, Koishi K. Effects of antithrombin and gabexate mesilate on disseminated intravascular coagulation: a preliminary study. Am J Emerg Med 2012; 30: 1219-23
PMID:22204993
ポイント:日本からの報告.感染症によるDICを発症したICU患者16名でATとGMを比較したRCT.ATは有意ではないが凝固線溶系の治療効果がGMより強い傾向が見られた.28日死亡率に有意差はみられなかった.

成人敗血症性ショックにおける活性化プロテインC(APC):PROWESS-SHOCK study
Ranieri VM, Thompson BT, Barie PS, et al; PROWESS-SHOCK Study Group. Drotrecogin alfa (activated) in adults with septic shock. N Engl J Med 2012; 366: 2055-64
PMID:22616830,Free Full Text
ポイント:敗血症性ショック患者1697例におけるリコンビナントAPC製剤投与群とプラセボ群を比較した多施設共同二重盲検RCT.28日死亡率は26.4% vs 24.2%で有意差は認められなかった(RR 1.09, 95%CI 0.92-1.28, p=0.31).90日死亡率でも34.1% vs 32.7%で有意差は認められなかった(RR 1.04, 95%CI 0.90-1.19, p=0.56).この報告をもってイーライ・リリー社はリコンビナントAPC製剤を市場撤退させるに至った.

成人重症敗血症におけるリコンビナント・ヒト活性化プロテインC(rAPC製剤)の評価:Surviving Sepsis Campaignの結果
Casserly B, Gerlach H, Phillips GS, et al. Evaluating the use of recombinant human activated protein C in adult severe sepsis: results of the Surviving Sepsis Campaign. Crit Care Med 2012; 40: 1417-26
PMID:22430247
ポイント:165地域15022例(8%がrAPC投与)の解析.敗血症診断の24時間以内に投与を開始した症例では死亡率は45%減少させていた.PROWESS-SHOCK trialで市場撤退が決まってからpublishされた「やっぱり効いていたのでは?」という報告であるが,あくまでも後ろ向き解析であり,二重盲検RCTで否定された以上は復活の根拠とはならないだろう.

重症敗血症におけるリコンビナント活性化プロテインC(rAPC)の効果と安全性:メタ解析
Kalil AC, LaRosa SP. Effectiveness and safety of drotrecogin alfa (activated) for severe sepsis: a meta-analysis and metaregression. Lancet Infect Dis 2012; 12: 678-86
PMID:22809883
ポイント:リコンビナント活性化プロテインC(rAPC)製剤に関する有効性を評価した9報RCT(41401例),16報観察研究(5822例)と,安全性を評価した20報(8245名)のメタ解析で,rAPC製剤を販売中止に追い込んだPROWESS-SHOCK試験を加えても有意に死亡率は低下していた.重篤な出血は5.6%でみられ,PROWESS試験の3.5%より有意に多かった.Crit Care Med 2012; 40: 1417-26につづくrAPC製剤を支持する報告であるが,質の悪い報告も多数含まれており,2012年末にコクランレビューにを含む2つのメタ解析で効果は否定されることになる.

重症敗血症,敗血症性ショックにおけるリコンビナント活性化プロテインCのメタ解析
Lai PS, Matteau A, Iddriss A, et al. An updated meta-analysis to understand the variable efficacy of drotrecogin alfa (activated) in severe sepsis and septic shock. Minerva Anestesiol 2013; 79: 33-43
PMID:23174922,Free Full Text
ポイント:rAPC製剤は重症敗血症,敗血症性ショックにおける28日死亡率を改善せず,重度の出血と関連.rAPC製剤に関するRCT5報のメタ解析のupdate.

成人および小児の重症敗血症・敗血症性ショックにおけるリコンビナント活性化プロテインC(rAPC)
Martí-Carvajal AJ, Solà I, Gluud C, et al. Human recombinant protein C for severe sepsis and septic shock in adult and paediatric patients. Cochrane Database Syst Rev 2012; 12: CD004388
PMID:23235609
ポイント:コクランレビュー,6報(小児1報含む)RCTメタ解析.重症敗血症・敗血症性ショックでrAPC製剤に死亡率改善エビデンスはなく,使用すべきではない.重症出血リスクは1.45倍.

外来患者におけるスタチン使用と感染症関連死減少との関連性についてのシステマティックレビュー&メタ解析
Ma Y, Wen X, Peng J, et al. Systematic Review and Meta-Analysis on the Association between Outpatient Statins Use and Infectious Disease-Related Mortality. PLoS One 2012; 7: e51548
PMID:23284711,Free Full Text
スタチンと感染症死亡リスク減少についての41報のメタ解析.全報告での解析では,29%減少.ケースコントロールスタディは42%減,後ろ向きコホートは34%減,前向きコホートは29%減,RCTでは有意な減少認めなかった.全死亡リスクは,菌血症では60%減少,敗血症では39%減少,肺炎では31%減少しており,他の感染症では有意な減少を認めなかった.30日死亡リスクは38%減少,90日死亡リスクは32%減少,院内死亡リスクは29%減少,1年以上の長期死亡リスクは有意な減少を認めなかった.

アトルバスタチン40mg/dayは敗血症患者の重症度を減じる:二重盲検プラセボ対照RCT
Patel JM, Snaith C, Thickett DR, et al. Randomized double-blind placebo-controlled trial of 40 mg/day of atorvastatin in reducing the severity of sepsis in ward patients (ASEPSIS Trial). Crit Care 2012; 16: R231
PMID:23232151
ポイント:敗血症患者においてアトルバスタチン40mg/日投与群49名とプラセボ群51名を比較した単施設二重盲検RCT,ASEPSIS trial,PhaseⅡ報告.アトルバスタチン投与群はプラセボ群と比較して重症敗血症進展率(4%vs24%,p=0.007,NNT 5),血漿コレステロール値(p<0.0001),Alb/Cr比(p=0.049)が有意に低下した.ICU入室,入院期間,死亡率,再入院率,有害事象に有意差はみられなかった.

敗血症ラットにおける肝細胞機能と炎症におけるスタチンの効果
Stolf AM, Lívero Fdos R, Dreifuss AA, et al. Effects of statins on liver cell function and inflammation in septic rats. J Surg Res 2012; 178: 888-97
PMID:22954522
ポイント:敗血症になる前にスタチン製剤を投与すると肝ミトコンドリアの活動性が改善する.CLPマウスモデルでの研究.この機序はインフルエンザ重症化をスタチンが防ぐメカニズムとしても知られる.

市中肺炎におけるスタチン使用は急性腎傷害を減じるか?
Murugan R, Weissfeld L, Yende S, et al; Genetic and Inflammatory Markers of Sepsis (GenIMS) Investigators. Association of statin use with risk and outcome of acute kidney injury in community-acquired pneumonia. Clin J Am Soc Nephrol 2012; 7: 895-905
PMID:22461537
ポイント:1836例前向きコホート研究.市中肺炎で入院した患者においてスタチン使用は急性腎傷害リスクを減じず,1年死亡の低いリスクとも関連はなかった.

成人のSIRSおよび敗血症におけるN-acetylcysteine
Szakmany T, Hauser B, Radermacher P. N-acetylcysteine for sepsis and systemic inflammatory response in adults. Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD006616
PMID:22972094
ポイント:RCT41報2768名のコクランレビューメタ解析.N-acetylcysteine注射製剤はSIRSや敗血症においては死亡率や合併症発生率を減じず,発症24時間以降の投与では心血管に悪影響.本剤をSIRSや敗血症に使用すべきではない.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-23 00:00 | 敗血症 | Comments(0)
3.敗血症とEGDT,循環作動薬,モニタリング
 EGDTにおいて血圧が維持できなかったり,酸素代謝能が低下している場合,各種昇圧剤が使用される.ノルアドレナリンとドパミンの論争が続いていたが,メタ解析により死亡率が上昇することが示され,一定の結論がでた.もともとβ刺激薬の有害性は多数の基礎的論文で指摘されており,近年ではむしろエスモロールに代表されるβ遮断薬の有用性が報告されるようになってきている.

 SSCGで推奨されている中心静脈酸素飽和度ScvO2モニタリングは,ScvO2高値でも死亡率が上昇するなど,近年その有用性が疑問視されてきている.

敗血症性ショックではノルアドレナリンよりドパミンの方が死亡率・不整脈発生率高い
De Backer D, Aldecoa C, Njimi H, Vincent JL. Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis. Crit Care Med 2012; 40: 725-30
PMID:22036860
ポイント:11報2768例のメタ解析.敗血症性ショックにおいてはドパミンの方が死亡率,不整脈発生率がノルアドレナリンより有意に高かった.敗血症性ショックにおけるノルアドレナリンとドパミンのメタ解析は2011年にJ Intensive Care Medでも報告されており,ノルアドレナリンの方が有意に死亡率が低いとの報告であった(6報2043例).また,すでに日本版敗血症診療ガイドラインからはドパミンは名前すら消滅しており,SSCG 2012においてもドパミンの推奨度は下げられた.

ショック患者における肺動脈カテーテルとPiCCOシステムは予後に有意差なし
Trof RJ, Beishuizen A, Cornet AD, et al. Volume-limited versus pressure-limited hemodynamic management in septic and nonseptic shock. Crit Care Med 2012; 40: 1177-85
PMID:22202713
ポイント:ショック患者120例(敗血症性72例,非敗血症性48例)を肺動脈カテーテル管理群60例とPiCCOシステム管理群60例で比較したRCT.人工呼吸器離脱期間,ICU滞在日数,臓器不全,28日死亡率に有意差はなかった.敗血症性ショック以外ではPiCCOで管理された方が補液量が多く,人工呼吸期間,ICU滞在日数が有意に長かった.

敗血症性ショックでの対循環平均圧と静脈還流におけるノルアドレナリン
Persichini R, Silva S, Teboul JL, et al. Effects of norepinephrine on mean systemic pressure and venous return in human septic shock. Crit Care Med 2012; 40: 3146-53
PMID:22926333
ポイント:60名の敗血症性ショック患者でノルアドレナリン(NA)投与量を減少させると体循環平均圧は有意に低下,静脈還流量の減少を確認した.ノルアドレナリンによる循環動態作用メカニズムの研究は敗血症性ショックではこれまでなかった.敗血症循環動態のよい復習になる文献.

敗血症性ショック患者におけるβ1アドレナリン受容体遮断薬とノルアドレナリンの併用
Balik M, Rulisek J, Leden P, et al. Concomitant use of beta-1 adrenoreceptor blocker and norepinephrine in patients with septic shock. Wien Klin Wochenschr 2012; 124: 552-6
PMID:22815003
ポイント:敗血症性ショック患者10例での検討.敗血症性ショックにおいてβ1ブロッカー(エスモロール 0.2-0.5mg/kg/day持続投与)とノルアドレナリンを併用すると,心拍数を30/分低下させるが血行力学的に悪影響はなく,高い心拍出量を保ち,安全かつ心臓保護的に作用する.

βブロッカーの入院前処方はICUに入院した敗血症患者の死亡率減少に関連する
Macchia A, Romero M, Comignani PD, et al. Previous prescription of β-blockers is associated with reduced mortality among patients hospitalized in intensive care units for sepsis. Crit Care Med 2012; 40: 2768-72
PMID:22824934
ポイント:敗血症患者9465例の後向き解析.βアドレナリン受容体遮断薬を継続処方されていた患者群の敗血症28日死亡率は17.7%,非処方群は22.1%であった.調整後では,処方群は敗血症28日死亡リスクを19%有意に減少させる.

薬剤注射の準備におけるエラー:RCT
Adapa RM, Mani V, Murray LJ, et al. Errors during the preparation of drug infusions: a randomized controlled trial. Br J Anaesth 2012: 109; 729-34
PMID:22850220
ポイント:48名看護師,患者シミュレータRCT.敗血症性ショック患者の急な血圧低下で持続カテコラミン投与開始時,指示受けてナースが調剤群vs充填済みシリンジ使用群を比較.指示を受けてから,調剤群で投与開始までの時間が長く,誤投薬リスクは17倍であった.

敗血症性ショック患者における全身・微小循環に対するドブタミンの効果
Enrico C, Kanoore Edul VS, Vazquez AR, et al. Systemic and microcirculatory effects of dobutamine in patients with septic shock. J Crit Care. 2012; 27: 630-8
PMID:23084135
ポイント:敗血症性ショックにおいて,ドブタミンは,心拍数,心係数,SVIを増加させるが,平均血圧は不変であり,全身血管抵抗は減少した.微小循環障害は投与前に高度な変化がある場合のみで改善する.なお,SSCGが推奨するEGDTにはドブタミンの記載はあるが,根拠があるわけではなかった.2013年1月8日にもドブタミンが有効でないことを示唆する報告がでている(Gothner M, et al. Acta Anaesthesiol Scand 2013 Jan.8)

敗血症性ショックにおける組織酸素濃度
Mesquida J, Espinal C, Gruartmoner G, et al. Prognostic implications of tissue oxygen saturation in human septic shock. Intensive Care Med 2012; 38: 592-7
PMID:22310873
ポイント:敗血症性ショック患者33例を解析した前向き観察研究.平均動脈圧が回復した敗血症性ショック患者では,脱酸素化が障害されていると,24時間後の臓器障害の改善はみられなかった.また,脱酸素化と再酸素化が低下していると,ICU在室期間はより長かった.脱酸素化と再酸素化は平均動脈圧に関連する.

敗血症患者における中等度レベルの乳酸上昇の敗血症性ショック進展予測
Song YH, Shin TG, Kang MJ, et al. Predicting factors associated with clinical deterioration of sepsis patients with intermediate levels of serum lactate. Shock 2012; 38: 249-54
PMID:22683735
ポイント:中等度(2-4mmol/L)乳酸レベルの成人敗血症患者474名の後顧的多変量解析.SOFA score≧5においては敗血症性ショック予測率は38.9%であった.

敗血症性ショックにおける正常範囲内の血清乳酸値は予後を予測しうる:コホート研究
Wacharasint P, Nakada TA, Boyd JH, et al. Normal-range blood lactate concentration in septic shock is prognostic and predictive. Shock 2012; 38: 4-10
PMID:22552014
ポイント:VASSTの665例とSPHの469例のコホート研究.敗血症性ショックにおいて正常範囲内の乳酸濃度は予後指標としてAPACHE-Ⅱscoreと同等に有用である.乳酸値1.4-2.3mmol/Lの患者は≦1.4mmol/Lの患者より有意に死亡率,臓器不全が増加した.1.4-2.3mmol/L群は2.3-4.4mmol/L群と予後は同等であった.さらに乳酸値が1.4mmol/L以下の患者ではバソプレシン投与が有益であった.

大腿静脈酸素飽和度は中心静脈血酸素飽和度の代用とはならない
van Beest PA, van der Schors A, Liefers H, et al. Femoral venous oxygen saturation is no surrogate for central venous oxygen saturation. Crit Care Med 2012; 40: 3196-201
PMID:23168611
ポイント:160例の解析.大腿静脈血酸素飽和度は,全身状態の安定度に関係なく中心静脈血酸素飽和度のサロゲートマーカーとはならない.同様の報告(Chest 2010; 138: 76-83)では,混合静脈血との比較が報告されており,こちらでも大腿静脈血酸素飽和度で代用はできないとしている.

重症敗血症・敗血症性ショックにおける中心静脈酸素飽和度(ScvO2)の持続的・断続的モニタリングの比較
Huh JW, Oh BJ, Lim CM, et al. Comparison of clinical outcomes between intermittent and continuous monitoring of central venous oxygen saturation (ScvO2) in patients with severe sepsis and septic shock: a pilot study. Emerg Med J 2012 Nov.8
PMID:23139093
ポイント:重症敗血症・敗血症性ショック患者106名のScvO2モニタリング施行を断続的か持続的かで比較.EGDTの6時間時点で目標到達率は41.5%vs35.8%で有意差はみられなかった.死亡率,ICU滞在期間も有意差はみられなかった.持続モニタリングするならPreSepカテーテルだが,コストが高く挿入操作も面倒である.そもそもScvO2がそこまで有用かという問題がある.

重症敗血症患者において咬筋組織の酸素飽和度は,EGDT中の中心静脈酸素飽和度の正常を予測し,死亡率を予測する
Colin G, Nardi O, Polito A, et al. Masseter tissue oxygen saturation predicts normal central venous oxygen saturation during early goal-directed therapy and predicts mortality in patients with severe sepsis. Crit Care Med 2012; 40: 435-40
PMID:22020233
ポイント:38名を解析した前向き観察研究.重症敗血症の6時間の蘇生処置後の組織酸素飽和度は,有意に手掌>咬筋>三角筋であり,咬筋組織酸素飽和度は手掌組織酸素飽和度よりもScvO2>70%を有意に予測した(AUC 0.80vs0.67).咬筋組織酸素飽和度(AUC 0.87),三角筋組織酸素飽和度(AUC 0.88)は28日死亡リスクを強く予測したが,手掌組織酸素飽和度(AUC 0,66)とScvO2(AUC 0.56)はそうではなかった.

重症敗血症・敗血症性ショックにおいて中心静脈酸素飽和度(ScvO2)は生存に関連しない
Chung KP, Chang HT, Huang YT, et al. Central venous oxygen saturation under non-protocolized resuscitation is not related to survival in severe sepsis or septic shock. Shock 2012; 38: 584-91
PMID:23143064
ポイント:重症敗血症・敗血症性ショック患者においてScvO2≧70%と<70%で死亡率に有意差はみられなかった.ScvO2と28日死亡率や院内死亡率に有意な関連性はなかった.低い平均血圧と高いCVPは高い28日死亡率と関連していた.

癌患者の敗血症における非侵襲的要素を含まないEGDTプロトコルの有用性
Hanzelka KM, Yeung SC, Chisholm G, et al. Implementation of modified early-goal directed therapy for sepsis in the emergency center of a comprehensive cancer center. Support Care Cancer 2012 Sep.7
PMID:22956191
ポイント:before-after研究.癌患者の敗血症においては,EGDTの非侵襲的要素のみで組んだ治療アルゴリズム導入は,導入前に比して28日死亡率が有意に改善した(20% vs 38%, p=0.005).平均血圧目標値までの到達率(90% vs 74%, p=0.004),尿量目標値までの到達率(96% vs 79%, p=0.002)も導入後の方が有意に改善した.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-19 17:44 | 敗血症 | Comments(0)
2.敗血症における輸液療法
 2001年にRiversらによって提唱されたEGDTが普及し,敗血症性ショックにおける大量輸液療法がスタンダードとなったものの,輸液過剰は死亡率の上昇と関連する可能性も示唆されており,現在大量輸液の是非が議論となっており,既にFEAST trial(N Engl J Med 2011; 364: 2483-95)で小児の敗血症性ショックにおける急速輸液の有害性が示されている.同時に,輸液過剰とならないよう,適切な輸液量を推定する方法が多数報告されているが,いずれも小規模で確認されたものばかりである.ただ,主流は静的パラメータから動的パラメータにうつりつつあるようであり,その代表例が呼吸変動であり,10年以上有効性の報告が出続けている.

 EGDTに関してはHiltonらが初期大量輸液に対する批判をまとめたレビューをだしているが(Crit Care 2012; 16: 302,PMID:22277834),現時点では結論を出すのは時期尚早であり,敗血症におけるEGDTの有効性を検討している3つの研究(米国のPROCESS,オーストラリア/ニュージーランドのARISE,英国のPROMISE)が進行中であり,この結果で決着がつくものと思われる.

 輸液製剤に関しては,以前からHES(ヒドロキシエチルスターチ)製剤による腎障害などのネガティブ論文がRCT,メタ解析ででているが,2012年もそのような報告が相次ぎ,GuidetらのCRYSTMAS studyの1報を除き,ほぼHESの有害事象を示す報告ばかりとなった.ただし,ほとんどの報告が6% HES(130/0.4)であり,本邦で使用されているヘスパンダー,サリンヘスは海外の報告で使用されたものより低分子の6% HES(70/0.5)で報告もなく腎障害の有無などは不明の状態にあり,現時点では本邦では禁忌までとはいかず,慎重投与の状態にある.今後,本邦で使用されている低分子HESの安全性を検討した大規模RCTが必要である.

ショック患者における肺動脈カテーテルとPiCCOシステムは予後に有意差なし
Trof RJ, Beishuizen A, Cornet AD, et al. Volume-limited versus pressure-limited hemodynamic management in septic and nonseptic shock. Crit Care Med 2012; 40: 1177-85
PMID:22202713
ポイント:ショック患者120例(敗血症性72例,非敗血症性48例)を肺動脈カテーテル管理群60例とPiCCOシステム管理群60例で比較したRCT.人工呼吸器離脱期間,ICU滞在日数,臓器不全,28日死亡率に有意差はなかった.敗血症性ショック以外ではPiCCOで管理された方が補液量が多く,人工呼吸期間,ICU滞在日数が有意に長かった.

乳酸加リンゲル液の血管内容量増加効果は20%以下:前向き観察研究
Jacob M, Chappell D, Hofmann-Kiefer K, et al. The intravascular volume effect of Ringer's lactate is below 20%: a prospective study in humans. Crit Care 2012; 16: R86
PMID:22591647
ポイント:心肺機能が健全な成人で純粋な血管内容量不足に対して3倍量の乳酸リンゲル液による置換では血管内容量を正常に維持することはできず,維持するためには5倍量は必要.

敗血症性ショックにおける高用量輸液と低用量輸液の比較:前向きコホート研究
Smith SH, Perner A. Higher vs. lower fluid volume for septic shock: clinical characteristics and outcome in unselected patients in a prospective, multicenter cohort. Crit Care 2012; 16: R76
PMID:22568926
ポイント:敗血症性ショックにおける体液量の高値と低値の比較で,初期輸液量は死亡率に関連しなかった.3日間以上のショック患者においては晶質液,膠質液,血液製剤を含む高用量輸液が90日死亡率の減少に関連(高用量40% vs 低用量62%,p=0.03).前向き多施設共同コホートからの任意抽出.なお,2011年には小児における大量輸液負荷が死亡率を上昇させたとするFEAST trial(N Engl J Med 2011; 364: 2483-95)があり,発展途上国の小児重症敗血症への輸液負荷療法は48時間死亡率の上昇を招く(1.45倍).アルブミンボーラス群10.6%,生食ボーラス群10.5%,コントロール群7.3%であったため,3141名の解析で中止勧告が出された.

敗血症や重症感染症によるショックの小児に対する急速輸液後の死亡率:システマティックレビュー&メタ解析
Ford N, Hargreaves S, Shanks L. Mortality after fluid bolus in children with shock due to sepsis or severe infection: a systematic review and meta-analysis. PLoS One 2012; 7: e43953
PMID:22952819,Free Full Text
ポイント:13報メタ解析.小児敗血症性ショックにおいて,急速輸液を受けていない群は受けた群に比して48時間死亡リスクが31%減少した.晶質液と膠質液で死亡率に有意差は認められなかった.データサイズが大きいFEAST trial(N Engl J Med 2011; 364: 2483-95)の影響が強い.

ICUの敗血症患者の初期輸液においてSSCGと経食道心臓超音波検査(TEE)ガイド下で比較したpilot study
Bouferrache K, Amiel JB, Chimot L, et al. Initial resuscitation guided by the Surviving Sepsis Campaign recommendations and early echocardiographic assessment of hemodynamics in intensive care unit septic patients: a pilot study. Crit Care Med 2012; 40: 2821-7
PMID:22878678
ポイント:2施設ICUの敗血症患者46例に対し,経食道心臓超音波検査(TEE)を行い,その結果に基づいて蘇生を行うプロトコルとSSCGプロトコルを比較した研究.TEE群では上大静脈の呼吸性変動が大きかったら補液,心機能が悪かったらinotrope,いずれも問題ないのに血圧が低かったらノルアドレナリンを使用するとした.TEE群で補液の適応と判断されたのは8例のみであり,その全例がCVP<12cmH2Oであった.一方でTEE群で補液不要と判断されたがCVP<12cmH2Oであったのは14例であった.11例がTEE群ではinotropeの適応があり,SSCGでは適応がなかった.SSCGに比してTEEを用いて蘇生を行うと,補液量が減少し,inotropeの使用が増加した.補液もinotropeもいずれも予後を悪化させる素因も示唆されており,現時点でSSCGとTEEのいずれがよいのかは結論がでない.

中心静脈圧とショック指数は敗血症性ショックにおける容量負荷に対する反応の欠如を予測する
Lanspa MJ, Brown SM, Hirshberg EL, et al. Central venous pressure and shock index predict lack of hemodynamic response to volume expansion in septic shock: A prospective, observational study. J Crit Care 2012; 27: 609-15
PMID:23084132
ポイント:敗血症性ショック25例の前向き観察研究.中心静脈圧>8mmHgやショック・インデックス<1bpm/mmHgである敗血症性ショック早期の患者は容量負荷による心係数増加は期待しにくい.高いCVPと低いショック指数を組み合わせると陰性予測率は93%であった.

下大静脈径を用いた輸液反応性
Muller L, Bobbia X, Toumi M, et al.; the AzuRea group. Respiratory variations of inferior vena cava diameter to predict fluid responsiveness in spontaneously breathing patients with acute circulatory failure: need for a cautious use. Crit Care 2012; 16: R188
PMID:23043910
ポイント:自発呼吸をしている40例(敗血症24例,出血11例,脱水5例)の循環不全症例に対し,HES 130/0.4を500mL投与し,その前後で心臓超音波検査を施行し,下大静脈径を測定し,cIVC=(最大径-最小径)/最大径を算出し,補液に対する反応性を大動脈の流速(subaortic velocity time index)の15%以上の増加で定義して反応群と非反応群を比較した研究.反応群は20例であった.cIVC,E/A比のAUROCはそれぞれ0.77,0.76であった.cIVCのカットオフ値を0.40としたとき精度は最も高くなり,感度80%,特異度70%,陽性予測率72%,陰性予測率83%となった.

敗血症患者における血漿タンパクレベルによる輸液負荷後肺水腫の予測
Zhang Z, Lu B, Ni H, et al. Prediction of pulmonary edema by plasma protein levels in patients with sepsis. J Crit Care 2012; 27: 623-9
PMID:23089680
ポイント:62例の観察研究.敗血症性ショックで血漿トランスフェリンとアルブミン濃度は,輸液負荷後の肺血管外水分量インデックス(ΔEVLWI)≧10% と関連していた.両マーカーの感度は高く(AUC 0.68 and 0.72),正常値の患者では輸液負荷後に肺水腫を発症しにくい.トランスフェリンのカットオフ値を87.9mg/dLとすると,ΔEVLWI≧10%の予測感度は91%であった.

腎代替療法を受ける重症患者において輸液過剰は90日死亡リスク増加と関連
Vaara ST, Korhonen AM, Kaukonen KM, et al; The FINNAKI study group. Fluid overload is associated with an increased risk for 90-day mortality in critically ill patients with renal replacement therapy: data from the prospective FINNAKI study. Crit Care 2012; 16: R197
PMID:23075459
ポイント:腎代替療法(RRT)を受ける重症患者296例の解析.輸液過剰であった患者は非過剰患者に比して死亡率が約2倍(59.2%vs31.4%,p<0.001)であった.重症度,RRT開始時間・手法,敗血症で調整すると,輸液過剰は90日死亡リスクが2.6倍有意に増加した.

重症敗血症においてHESはリンゲル液に比して死亡リスク,腎代替療法必要度が有意に高い
Perner A, Haase N, Guttormsen AB, et al; 6S Trial Group; Scandinavian Critical Care Trials Group. Hydroxyethyl starch 130/0.42 versus Ringer's acetate in severe sepsis.
PMID:22738085
ポイント:重症敗血症患者798名の初期蘇生輸液で6% HES 130/0.42群とリンゲル液群を比較した多施設共同二重盲検無作為化並行群間試験.90日死亡率は51% vs 43%で,HES群が17%死亡リスクが高かった.腎代替療法を要した患者は22% vs 16%で,HES群が35%リスクが高かった.重度の出血に関しては10% vs 6%で有意差なし.

集中治療における蘇生輸液でのHESと生理食塩水
Myburgh JA, Finfer S, Bellomo R, et al; Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group. Hydroxyethyl starch or saline for fluid resuscitation in intensive care. N Engl J Med 2012; 367: 1901-11
PMID:23075127
ポイント:ICUに入室した患者7000名で,6% HES 130/0.4群と0.9%生理食塩水を比較したRCT.死亡率は18% vs 17%で有意差なく,サブグループ解析でも有意差はみられなかった.腎代替療法を使用した患者の割合は7.0% vs 5.8%であり,HES群が21%多かった.HESは生理食塩水より有意に有害事象と関連(5.3% vs 2.8%).

重症敗血症患者における膠質液または晶質液の蘇生輸液の効果と水分バランス,予後
Bayer O, Reinhart K, Kohl M, et al. Effects of fluid resuscitation with synthetic colloids or crystalloids alone on shock reversal, fluid balance, and patient outcomes in patients with severe sepsis: a prospective sequential analysis. Crit Care Med 2012; 40: 2543-51
PMID:22903091
ポイント:敗血症性ショックからの回復は合成膠質液でも晶質液でも同様に早く達成できる.膠質液の使用は必要とする蘇生輸液量がわずかに少ない.低分子HES130/0.4(OR 2.55)とゼラチン(OR 1.85)は急性腎傷害の独立危険因子であった.

重症敗血症における6% HES(130/0.4)と0.9%生理食塩水の血行動態への効果と安全性の評価:CRYSTMAS study
Guidet B, Martinet O, Boulain T, et al. Assessment of hemodynamic efficacy and safety of 6% hydroxyethylstarch 130/0.4 vs. 0.9% NaCl fluid replacement in patients with severe sepsis: The CRYSTMAS study. Crit Care 2012; 16: R94
PMID:22624531
ポイント:本報告はHES製剤のネガティブ論文が多い近年で数少ない有効性を示したRCT.重症敗血症患者174名に対する6% HES(130/0.4)投与群と0.9%生理食塩水(NS)投与群を比較した二重盲検RCT.血行動態安定化までの投与量はHES群1379±886mL vs NS群1709±1164mLで,HES群が有意に少なかった(p=0.0185).血行動態安定化までの時間はHES群11.8±10.1時間 vs NS群14.3±11.1時間であった.急性腎不全発症率はHES群24.5% vs NS群20.0%で有意差はなかった(p=0.454).

敗血症性ショックにおいて高分子量のヒドロキシエチルスターチ(HES)は低分子量より効果が強くはならない
Simon TP, Schuerholz T, Haugvik SP, et al. High molecular hydroxyethyl starch solutions are not more effective than a low molecular hydroxyethylstarch solution in a porcine model of septic shock. Minerva Anestesiol 2012 Oct.22
PMID:23090105,Free Full Text
ポイント:腹膜炎による敗血症性ショックの豚モデルで分子量300と700のHES製剤を用いたRCT.効果は同等であった.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-16 12:48 | 敗血症 | Comments(0)
遅くなりましたが,新年明けましておめでとう御座います.
本ブログを閲覧して頂いている皆様方,今年も御指導,御鞭撻の程宜しく御願い申し上げます.

今年も大阪で開催される敗血症,感染症,DIC関連の研究会(+KYOTO SEPSIS FORUM)にはほとんど参加する予定です.また,東京で開催される感染症関連のフォーラム,日本集中治療医学会,日本呼吸器学会にも参加する予定です.現地で会った際は宜しく御願い申し上げます.

今回は2012年にpublishされた文献で小生が閲覧したものの中から独断と偏見で興味深いものをピックアップしました.今後敗血症関連文献のみならず,2012年のARDS・呼吸管理関連文献,その他集中治療領域関連文献,感染症・抗菌薬関連文献,感染防止対策・抗菌薬適正使用関連文献,呼吸器領域関連文献を順次アップしていきます.

1.敗血症における抗菌薬治療
 2012年の敗血症領域での抗菌薬の主なトピックスは,抗菌薬の持続投与のエビデンスがでてきたこと,新薬であるリネゾリド(ザイボックス),ダプトマイシン(キュビシン),アジスロマイシン注射製剤(ジスロマック),チゲサイクリン(タイガシル)の知見であろう.最新の抗菌薬チゲサイクリンはまだ本邦で発売されたばかりであり,適応も非常に限られており,本邦での敗血症領域での報告はおそらくとうぶんは出ないと思われる.また,カンジダ血症においても本邦から大規模研究であるACTIONs BUNDLEの結果がICAAC 2012で報告され,カンジダ血症治療の強力なエビデンスになると思われる.

 日本版敗血症診療ガイドラインでは推奨抗菌薬の詳細な表が掲載されており,非常に参考になる.今後の課題としては,抗菌薬の投与開始のゴールデンタイムが1時間以内とする根拠はまだ乏しい状態にあること,持続的腎代替療法施行時の(特に本邦での)抗菌薬投与プランのエビデンスが乏しいこと,感染制御チームとの連携などが挙げられる.

重症患者におけるメロペネム(MEPM)の持続投与と間欠投与の臨床的・細菌学的効果の比較:RCT
Chytra I, Stepan M, Benes J, et al. Clinical and microbiological efficacy of continuous versus intermittent application of meropenem in critically ill patients: a randomized open-label controlled trial. Crit Care 2012; 16: R113
PMID:22742765
ポイント:ICUに入室した重症感染症患者240例におけるMEPM 2g 30分間投与を8時間毎のボーラス投与群と2gローディング→4gを24時間持続投与群を比較したチェコの単施設オープンラベルRCT.臨床的治癒頻度はボーラス群75.0% vs 83.0%, p=0.180で有意差はみられなかったが持続投与群が良好な傾向.細菌学的成功率(OR 2.977, 95%CI 1.050-8.443, p=0.040),ICU滞在期間(10日間 vs 12日間,p=0.044),MEPM投与期間(7日間 vs 8日間,p=0.035),MEPM総投与量(24g vs 48g,p<0.0001)は持続群で有意に改善していた.有害事象に有意差なし.

重症敗血症におけるβラクタム系抗菌薬持続投与:多施設共同二重盲検RCT
Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Continuous infusion of Beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Clin Infect Dis 2013; 56: 236-44
PMID:23074313
ポイント:5施設60例の二重盲検RCT.重症敗血症でのβラクタム系抗菌薬持続投与は間欠投与よりMICを有意に越えやすく,臨床的治癒率も有意に高かった(70%vs43%,p=0.037).生存退院率は有意差がみられなかった(90% vs 80%,p=0.47).

カルバペネムとピペラシリン/タゾバクタム(TAZ/PIPC)の抗菌薬長時間(または持続投与)投与vs短時間投与の臨床効果:システマティックレビュー&メタ解析
Falagas ME, Tansarli GS, Ikawa K, Vardakas KZ. Clinical Outcomes With Extended or Continuous Versus Short-term Intravenous Infusion of Carbapenems and Piperacillin/Tazobactam: A Systematic Review and Meta-analysis.
PMID:23074314
ポイント:14報1229例のメタ解析.カルバペネムやTAZ/PIPCの長時間(3時間以上または持続投与)群は短時間投与群と比較して死亡リスクを41%低下させた.肺炎患者では50%低下させた.

MRSA院内肺炎におけるリネゾリド:RCT(ZEPHyR trial)
Wunderink RG, Niederman MS, Kollef MH, et al. Linezolid in methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: a randomized, controlled study. Clin Infect Dis 2012; 54: 621-9
PMID:22247123
ポイント:MRSA肺炎患者(ITT 448例,per-protocol 348例)を患者をLZD 600mg 12時間毎投与群とVCM 15mg/kg 12時間毎投与群に無作為割付し,7-14日間(菌血症確認された場合は21日間)連日投与して効果を比較した.トラフ・腎機能障害に基づいてVCMの投与量は調節している.臨床効果がリネゾリドが有意に良好という結果であるが,試験デザインには非常に問題点が多い.査読の練習にもオススメの文献.

MRSA院内肺炎におけるバンコマイシンとリネゾリド:ZEPHyR trialをふまえて
Alaniz C, Pogue JM. Vancomycin versus linezolid in the treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: implications of the ZEPHyR trial. Ann Pharmacother 2012; 46: 1432-5
PMID:22947593
ポイント:MRSA肺炎に対するリネゾリドとバンコマイシンの効果を比較したRCTであるZEPHyR trialに関する批判的吟味.ZEPHyR trialの結果をもってMRSA肺炎に対してリネゾリドをルーティンで使用することは支持しないとしている.

重症院内敗血症における抗菌薬治療戦略,de-escalationの頻度
Heenen S, Jacobs F, Vincent JL. Antibiotic strategies in severe nosocomial sepsis: why do we not de-escalate more often? Crit Care Med 2012; 40: 1404-9
PMID:22430235
ポイント:院内重症敗血症167ケースの解析.16%で初期抗菌薬が不適切であった.de-escalationを行ったのは43%,escalationを行ったのは10%,変更なしは36%であった.

重症敗血症患者における敗血症関連臓器障害におけるモキシフロキサシン+メロペネム併用vsメロペネム単剤の経験的治療効果:RCT
Brunkhorst FM, Oppert M, Marx G, et al; German Study Group Competence Network Sepsis (SepNet). Effect of empirical treatment with moxifloxacin and meropenem vs meropenem on sepsis-related organ dysfunction in patients with severe sepsis: a randomized trial. JAMA 2012; 307: 2390-9
PMID:22692171
ポイント:重症敗血症・敗血症性ショック患者551例に対するモキシフロキサシン(400mg q24h)+メロペネム(1g q8h)併用群とメロペネム単剤群を比較した無作為化オープンラベル並行群間試験.28日死亡率(23.9% vs 21.9%, p=0.58),90日死亡率(35.3% vs 32.1%, p=0.43)に有意差なし.

持続的腎代替療法を受けている重症患者の抗菌薬濃度の変動:多施設共同薬物動態研究
Roberts DM, Roberts JA, Roberts MS, et al; RENAL Replacement Therapy Study Investigators. Variability of antibiotic concentrations in critically ill patients receiving continuous renal replacement therapy: a multicentre pharmacokinetic study. Crit Care Med 2012; 40: 1523-8
PMID:22511133
ポイント:4施設ICUのCPFX,MEPM,TAZ/PIPC,VCM投与を受けた持続的腎代替療法患者24名の解析.持続的腎代替療法を受けている重症患者において抗菌薬トラフ値はかなり変化しやすく,流量だけが原因ではない.経験的な抗菌薬投与では,投与間隔の25%の期間で目標トラフ値を達成できず.

初期の適切な抗菌薬治療を受けた敗血症性ショック患者の死亡リスク因子
The determinants of hospital mortality among patients with septic shock receiving appropriate initial antibiotic treatment. Crit Care Med 2012; 40: 2016-21
PMID:22584765
ポイント:血液培養陽性の敗血症性ショック患者436例の後向きコホート研究.初期の適切な抗菌薬療法を受けた敗血症性ショック患者で,ICUでの感染獲得(OR 1.99)とAPACHEⅡscoreの増加(OR 1.11)が院内死亡の決定因子であった.一方でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染は低い院内死亡リスク(OR 0.32)と関連していた.

持続的腎代替療法を施行中のICU患者におけるダプトマイシン(DAP)の用量用法
Preiswerk B, Rudiger A, Fehr J, Corti N. Experience with daptomycin daily dosing in ICU patients undergoing continuous renal replacement therapy. Infection 2012 Jul.21
PMID:22821405
ポイント:DAPは血液透析時は通常量を透析直後に週3回投与(48h-48h-72h)とする.CHDF時は8mg/kg隔日投与とする.ICUでのCHDF患者ではDAP投与は連日・隔日での有意差なし.他に参考になる文献として,重症患者のCHDF時のDAPの血漿中濃度(J Chemother 2012; 24: 253-6),週3回の透析を受ける患者におけるDAPのPK/PD(Butterfield, et al. Antimicrob Agents Chemother 2012 Dec.3),CVVHD(CHDF)を受けているICU患者におけるDAP投与量(Crit Care Med 2011; 39: 19-25)がある.海外と日本で流量は違うが参考に.

重症患者における広域抗菌薬による腎障害
Jensen JU, Hein L, Lundgren B, et al; Procalcitonin And Survival Study (PASS) Group. Kidney failure related to broad-spectrum antibiotics in critically ill patients: secondary end point results from a 1200 patient randomised trial. BMJ Open 2012; 2: e000635.
PMID:22411933,Free Full Text
ポイント:TAZ/PIPCは重症患者において腎機能(eGFR)回復遅延の原因となる.この腎毒性は他のβラクタム系抗菌薬では観察されなかった.デンマーク9施設ICUのプロカルシトニンのRCT(PASS)の二次解析.

ESBL産生腸内細菌による菌血症におけるカルバペネムとその他代替薬:システマティックレビュー&メタ解析
Vardakas KZ, Tansarli GS, Rafailidis PI, Falagas ME. Carbapenems versus alternative antibiotics for the treatment of bacteraemia due to Enterobacteriaceae producing extended-spectrum β-lactamases: a systematic review and meta-analysis. J Antimicrb Chemother 2012; 67: 2793-803
PMID:22915465
ポイント:21報1584例のメタ解析.ESBL産生腸内細菌菌血症ではカルバペネムやBL/BLIs(βラクタマーゼ阻害薬/βラクタム系抗菌薬)はnon-BL/BLIs(セフェムやキノロン)より有意に死亡率が低い.カルバペネムとBL/BLIsは死亡率に有意差なし.

黄色ブドウ球菌による敗血症性関節炎に対するアジスロマイシン(AZM)とリボフラビンの併用
Mal P, Dutta K, Bandyopadhyay D, et al. Azithromycin in combination with riboflavin decreases the severity of Staphylococcus aureus infection induced septic arthritis by modulating the production of free radicals and endogenous cytokines. Inflamm Res 2012 Nov.15
PMID:23229721
ポイント:AZMとリボフラビン(ビタミンB2)の併用は,フリーラジカルや内因性サイトカインを調整することで黄色ブドウ球菌による敗血症性関節炎の重症度を減じる.マウスモデル研究.2012年の第3回MRSAフォーラムでは,MRSA感染デバイスモデルに対してバンコマイシンにマクロライドを併用すると相乗効果が得られたとの報告もなされている.

敗血症管理におけるプロトコル導入は初期抗菌薬投与開始時間を早める
Tipler PS, Pamplin J, Mysliwiec V, et al. Use of a protocolized approach to the management of sepsis can improve time to first dose of antibiotics. J Crit Care 2012 Oct.24
PMID:23102528
ポイント:EGDTを強調した敗血症プロトコルの導入は抗菌薬投与開始までの時間を改善した(160分→99分).

緑膿菌菌血症における適切な経験的抗菌薬併用療法vs単剤療法
Bowers DR, Liew YX, Lye DC, et al. Outcome of Appropriate Empiric Combination versus Monotherapy for Pseudomonas aeruginosa Bacteremia. Antimicrob Agents Chemother 2012 Dec.21
PMID:23263001
ポイント:緑膿菌菌血症384例における経験的な抗菌薬併用療法と単剤療法を比較した後ろ向き多施設コホート研究.背景因子で調整した30日死亡率は有意差なし.院内死亡率は有意差ないが36.6%vs28.7%,p=0.17で単剤群が低い傾向であった.
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by DrMagicianEARL | 2013-01-15 00:00 | 敗血症 | Comments(0)

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