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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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今回はちょっと宣伝です.
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臨床に直結する
集中治療のエビデンス
ベッドサイドですぐに役立つリファレンスブック
文光堂

編集
讃井將満
(自治医科大学附属さいたま医療センター教授)







 文光堂のエビデンスレビューシリーズで,これまで2004年の内分泌・代謝疾患治療から始まり,呼吸疾患治療,感染症診療,消化管疾患治療,肝胆膵疾患治療,腎疾患治療,血液疾患診療が出版されており,今回は集中治療が510ページという過去最大のページ数で2月27日に出版となります.翌日から長野県松本市で開催される第40回日本集中治療医学会学術集会でも販売されます.

 第一線の集中治療の現場で奮闘する若手医師から発せられた臨床上の疑問点を60項目に集約し,エビデンスレビューを行い解説しています.今回私も担当・執筆させて頂きました.

総 論
 ● 代表的スコアリングシステムの紹介
 ● ICUにおけるルーチンの胸部単純X 線写真は必要か?
神 経
 ● 脳卒中や頭部外傷など急性期脳神経疾患において抗けいれん薬の予防投与は必要か?
 ● 動脈瘤性くも膜下出血後の脳血管攣縮に対する治療・予防法に患者の予後を改善するものはあるか?
 ● 脳卒中後,頭部外傷後の血行動態管理目標をどのように設定するか?
 ● デクスメデトミジンはICUにおける理想の鎮静薬か?
 ● せん妄はICU患者の短期・長期予後に影響するか?
 ● せん妄は積極的に診断,発見,予防した方がよいのか?
 ● ICUにおける筋弛緩薬は毒かクスリか?
 ● 集中治療に鎮静薬は必要か(現代的な鎮痛薬ベースで少ない鎮静,無鎮静は安全,有用な方法であるか)?
呼 吸
 ● ARDSに対する高いPEEPは有効か? オープンラング戦略は有効か?
 ● 人工呼吸器離脱はどのように行うか? SBT,呼吸器離脱条件のエビデンス
 ● 重症ARDSに対するレスキュー療法のエビデンス.APRVは有効か?
 ● 重症ARDSに対するレスキュー療法のエビデンス.ECMOは有効か?
 ● 人工呼吸患者に早期リハビリテーションを行うメリットはあるか? また,どのようなリハビリテーションを行えばよいか?
 ● ICUにおける気管切開の方法は? ─外科的 vs 経皮的気管切開─
 ● COPD患者に対する酸素投与は毒か薬か?
循 環
 ● ショックに対する血管作動薬:いつから何をどのように使うべきか?
 ● 敗血症性心筋症の診断をどのように行い,どのように治療するか?
 ● 集中治療室における発作性心房細動予防,治療はどのような手段が有用か?
 ● 周術期心筋梗塞の発見をどのように行うか?
 ● 非心臓手術の周術期心血管イベントの予防として,β遮断薬を使用すべきか.使用するとしたら,いつ,何をどのように使うか?
 ● EGDTは有効か?
 ● 輸液/血管内液量の評価法.何を用いてどのように行うべきか?
腎・泌尿器,電解質,輸液
 ● CRRTの抗凝固薬は何がよいのか?
 ● CRRTの開始,中止,IHDへの移行タイミングは?
 ● 重症敗血症,敗血症性ショックに対してエンドトキシン吸着療法を施行すべきか?
 ● 急性腎傷害は尿量0.5mL/kg/hrを保つことで予防できるのか?
 ● ICUにおける膠質液の投与は有効か?
 ● 敗血症性ショックの大量輸液は善か悪か?
 ● AKIに対してhANPは有効か?
腹部,栄養
 ● SDD(selective digestive decontamination)は有用か?
 ● ω-3系脂肪酸添加栄養製剤投与は有用か?
 ● 重症急性膵炎に局所膵動注療法は有効か?
 ● 急性膵炎に対する予防的抗菌薬は有効か?
 ● プロバイオティクス:いつ,どのように用いるべきか?
 ● 消化管出血予防:何が有用か(PPI vs H2 blocker)?
 ● グルタミンは重症患者の予後を改善させるか?
 ● 早期経腸栄養の有効性:いつから,どの程度投与するべきか?
 ● 経静脈栄養の有用性:いつから何をどの程度投与すべきか?
 ● 腸管蠕動亢進薬の有効性を再度検証する
内分泌,代謝
 ● ICUにおけるステロイド(副腎皮質ステロイド)療法:どのような病態で使用すべきか?どの病態で使用すべきではないか?
 ● ICUの各種病態にスタチンは効果があるのか?
感 染
 ● ICUにおけるグラム陰性耐性菌の種類と同定法,治療法をどのように行うべきか?
 ● プロカルシトニンの有用性,信頼度は?
 ● 周術期の抗菌薬の予防投与は術後どれくらいの期間行えばよいのか?
 ● 人工呼吸器関連肺炎診断のコントラバーシー
 ● 中心静脈カテーテル:何をどこから挿入すればよいか?
 ● ICU 患者の抗菌療法において初期経験的治療の適切性は予後に影響するか?
 ● MRSA感染症の抗菌療法:何をどのように使い分けるべきか?
 ● 集中治療医に必要な免疫不全の基礎知識
血液・凝固
 ● ICU患者のDVT予防における理学的な方法の有効性は?
 ● 肺塞栓症の診断は何を使ってどのように行うべきか?
 ● 輸血に関連した最近の議論(1):赤血球輸血の基準値・保存期間,エリスロポエチンについて
 ● 輸血に関連した最近の議論(2):血小板輸血の基準値,遺伝子組み換え活性型第Ⅶ因子製剤(rFⅦa)の適応外使用,トラネキサム酸について
外傷・熱傷
 ● hypotensive resuscitationの有効性と安全性
 ● 外傷急性期における至適な輸血療法は?
心肺蘇生
 ● 近年の蘇生のコントラバーシー
 ● 蘇生に対するPCPSのエビデンスはあるか?
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by DrMagicianEARL | 2013-02-25 18:19 | 敗血症 | Comments(0)
2012年肺炎関連文献集(2) ~医療介護ケア関連肺炎(NHCAP/HCAP),院内肺炎(HAP),人工呼吸器関連肺炎(VAP)~

医療介護ケア関連肺炎においてなぜ死亡率は増えるのか?肺炎球菌肺炎の教訓
Rello J, Luján M, Gallego M, et al; PROCORNEU Study Group. Why mortality is increased in health-care-associated pneumonia: lessons from pneumococcal bacteremic pneumonia. Chest 2012; 137: 1138-44
PMID:19952058
ポイント:診断しやすく,適切な抗菌薬が投与されやすい肺炎球菌肺炎での背景因子の違いを検討した研究.市中肺炎(CAP)184例と医療介護ケア関連肺炎(HCAP)44例を比較したところ,死亡率は7.6%vs29.5%とHCAPが有意に高かった.HCAP群はCAP群と比較して年齢,Charson index,入院時重症度が有意に高く,また,ICU入院率は有意に低かった.人工呼吸器装着率や循環作動薬の使用率は有意ではないもののHCAP群が低い傾向であった.HCAPであることそのものが死亡率増加に関連していた(OR 5.56).肺炎においては適切な抗菌薬治療よりも宿主状態の影響が大きいのかもしれない.

透析以外に医療介護ケア関連肺炎(HCAP)の要素を有さない透析患者における肺炎は,HCAPとして抗菌薬治療を行うべきか?
Taylor SP, Taylor BT. Healthcare-associated pneumonia in hemodialysis patients: Clinical outcomes in patients treated with narrow versus broad spectrum antibiotic therapy. Respirology 2013; 18: 364-8
PMID:23066809
ポイント:透析患者の肺炎はATS/IDSAガイドライン2005では医療ケア関連肺炎(HCAP)として扱い,広域抗菌薬を投与することが推奨されている(本邦でも医療介護関連肺炎(NHCAP)の扱い).しかし,この分類を支持するデータは少ない.透析を受けている肺炎患者125名について,市中肺炎(CAP)として扱い狭域抗菌薬を投与した患者群とHCAPとして扱い広域抗菌薬を投与した患者群をbefore-afterで比較を行った.患者背景では重症度PSI,CCIに有意差なし.広域抗菌薬群は狭域抗菌薬群に比して経口抗菌薬スイッチまでに要した期間,臨床的安定化後の抗菌薬注射製剤投与期間,入院期間が有意に長かった.臨床的に安定化するまでの期間も有意ではないが長い傾向がみられた.

MRSAによる医療ケア関連肺炎(HCAP)患者における経験的バンコマイシンの中断の試験
Boyce JM, Pop OF, Abreu-Lanfranco O, et al. A Trial of Discontinuation of Empiric Vancomycin Therapy in Patients with Suspected Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Healthcare-Associated Pneumonia. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 1163-8
PMID:23254432
ポイント:91例の後ろ向き解析.MRSA疑いの医療ケア関連肺炎(HCAP)においては,十分な下気道検体による培養が得られない場合は鼻腔・咽頭でMRSAが陰性化すること,臨床肺感染スコア(CPIS)<6をもって経験的バンコマイシン投与を中止することが合理的である.

スタチン,アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)の肺炎関連予後
Mortensen EM, Nakashima B, Cornell J, et al. Population-based study of statins, angiotensin II receptor blockers, and angiotensin-converting enzyme inhibitors on pneumonia-related outcomes. Clin Infect Dis 2012; 55: 1466-73
PMID:22918991
ポイント:65歳以上の肺炎入院患者50119名のコホートデータを用いて,propensity score matchingを行い11498例(対照群も同数)を解析し,スタチン,ACEi,ARBの効果を検討した報告.スタチン内服歴は死亡リスクを26%低下,人工呼吸器装着リスクを32%有意に低下.ACEi内服歴は死亡率を12%有意に低下,ARBは死亡率を27%有意に低下させた.

脳卒中患者におけるアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi),アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と肺炎リスク
Liu CL, Shau WY, Wu CS, Lai MS. Angiotensin-converting enzyme inhibitor/angiotensin II receptor blockers and pneumonia risk among stroke patients. J Hypertens 2012; 30: 2223-9
PMID:22929610
ポイント:脳卒中既往がありその後肺炎をきたした患者13832例の解析.ACEiは肺炎リスクを30%有意に低下させ,その効果は用量と有意に相関した.ARBの肺炎リスク低下作用はみられなかった.台湾からの報告.

アンギオテンシン変換酵素阻害薬による脳卒中後肺炎の予防:メタ解析
Shinohara Y, Origasa H. Post-stroke pneumonia prevention by angiotensin-converting enzyme inhibitors: results of a meta-analysis of five studies in Asians. Adv Ther 2012; 29: 900-12
PMID:22983755
ポイント:6カ月以上追跡しており,100名以上の患者を登録しており,高血圧と脳卒中・TIA既往のある患者を対象とした5つの研究のメタ解析で,ACEiは肺炎リスクを49%有意に減じる.アジア人に絞ると58%低下,日本人に限定すると62%低下していた.

ICU発症肺炎における全身ステロイド投与と予後の関連性:前向き観察研究
Ranzani OT, Ferrer M, Esperatti M, et al. Association between systemic corticosteroids and outcomes of intensive care unit-acquired pneumonia. Crit Care Med 2012; 40: 2552-61
PMID:22732293
ポイント:ICUで肺炎を発症した360名において40%の患者がステロイド投与を受けていた.ステロイドの投与は28日生存率の低下,全身炎症反応の低下に関連しており,propensity scoreと死亡率予測で調整すると死亡リスクは2.503倍有意に増加していた.

MRSA院内肺炎におけるリネゾリド:RCT(ZEPHyR trial)
Wunderink RG, Niederman MS, Kollef MH, et al. Linezolid in methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: a randomized, controlled study. Clin Infect Dis 2012; 54: 621-9
PMID:22247123
ポイント:MRSA肺炎患者(ITT 448例,per-protocol 348例)を患者をLZD 600mg 12時間毎投与群とVCM 15mg/kg 12時間毎投与群に無作為割付し,7-14日間(菌血症確認された場合は21日間)連日投与して効果を比較した.トラフ・腎機能障害に基づいてVCMの投与量は調節している.臨床効果がリネゾリドが有意に良好という結果であるが,試験デザインには非常に問題点が多く,査読の練習にもオススメの文献.

MRSA院内肺炎におけるバンコマイシンとリネゾリド:ZEPHyR trialをふまえて
Alaniz C, Pogue JM. Vancomycin versus linezolid in the treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: implications of the ZEPHyR trial. Ann Pharmacother 2012; 46: 1432-5
PMID:22947593
ポイント:MRSA肺炎に対するリネゾリドとバンコマイシンの効果を比較したRCTであるZEPHyR trialに関する批判的吟味.ZEPHyR trialの結果をもってMRSA肺炎に対してリネゾリドをルーティンで使用することは支持しないとしている.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)におけるドリペネム(DRPM)7日間投与とイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)10日間投与を比較したRCT
Kollef MH, Chastre J, Clavel M, et al. A randomized trial of 7-day doripenem versus 10-day imipenem-cilastatin for ventilator-associated pneumonia. Crit Care 2012; 16: R218
PMID:23148736
ポイント:VAPに対するDRPM 1gを静注時間4時間として8時間毎に計7日間投与する群と,IPM/CSを1gを静注時間1時間として8時間毎に計10日間投与する対照群を比較した二重盲検RCT.28日死亡率はDRPM群21.5%,対照群(IPM/CS)14.8%であり,DRPM群で死亡率悪化傾向を認めたため試験中止勧告がだされた.この結果を受け,米国ではVAPのみならず肺炎においてDRPMを使用しないことを勧告しているが,投与日数が異なること,本邦と米国でantibiogramが大きく異なることなどがあり,VAP以外でも検討がなされていないことを考慮すると,このFDAの勧告をそのまま適応させることにはおおいに疑問が残る.

アジスロマイシン(AZM)はクオラムセンシング阻害作用により緑膿菌による人工呼吸器関連肺炎(VAP)を予防する:RCT
van Delden C, Köhler T, Brunner-Ferber F, et al. Azithromycin to prevent Pseudomonas aeruginosa ventilator-associated pneumonia by inhibition of quorum sensing: a randomized controlled trial. Intensive Care Med 2012; 38: 1118-25
PMID:22527075
ポイント:人工呼吸器患者92名でAZM群とプラセボ群を比較したRCT.AZM群で緑膿菌によるVAPは4.7%vs14.3%(p=0.156)で有意ではないが減少傾向がみられた.ハイリスク群のVAP発生率で見たサブ解析では有意に減少していた.ただし,この解析はper-protocol解析である.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)の微生物学的診断にグラム染色は有用か?:メタ解析
O'Horo JC, Thompson D, Safdar N. Is the gram stain useful in the microbiologic diagnosis of VAP? A meta-analysis. Clin Infect Dis 2012; 55: 551-61
PMID:22677711
ポイント:21報のメタ解析.VAPにおけるグラム染色の感度79%,特異度75%,陰性予測率91%,陽性予測率40%.グラム染色が陽性の場合は中等度の特異性しかないが,陰性所見の場合にはVAPは考えにくいと思われる.培養結果が出るまでの間抗菌薬を狭域のものに変更する場合,グラム染色の陽性結果は用いるべきではない.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)早期におけるプロカルシトニン
Zielińska-Borkowska U, Skirecki T, Złotorowicz M, Czarnocka B. Procalcitonin in early onset ventilator-associated pneumonia. J Hosp Infect 2012; 81: 92-7
PMID:22552164
ポイント:PCT濃度と抗菌薬療法の妥当性またはVAPの原因菌との間に関連は認められず,またPCTと不良な転帰との有意な相関はみられなかった.非生存者および敗血症性ショックではPCTは高かったが,PCTはこれらの転帰の強力な予測因子ではない.

口腔ケアにおける歯磨きの人工呼吸器関連肺炎の予防効果:システマティック・レビュー&メタ解析
Gu WJ, Gong YZ, Pan L, et al. Impact of oral care with versus without toothbrushing on the prevention of ventilator-associated pneumonia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 2012; 16: R190
PMID:23062250
ポイント:4報RCT,828名のメタ解析.人工呼吸患者で,歯磨きなしの口腔ケアに比べて歯磨きありの口腔ケアは,有意にVAP発生率を減少させず,他の重要な臨床転帰も有意差なし.

人工呼吸器を装着した重症患者の口腔ケアにおける歯磨きの有効性:システマティックレビュー&メタ解析
Alhazzani W, Smith O, Muscedere J, et al. Toothbrushing for Critically Ill Mechanically Ventilated Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials Evaluating Ventilator-Associated Pneumonia. Crit Care Med 2012 Dec.19
PMID:23263588
ポイント:人工呼吸器を装着した重症患者の口腔ケアにおける歯磨きの有効性を検証した6報のRCT,計1408例のメタ解析.4報で歯磨き群は有意差ないがVAPリスクが低い傾向(RR 0.77, 95%CI 0.50-1.21, p=0.26)であった.バイアスリスクが低い報告に限定すると歯磨き群のVAPリスクは有意に低下した(RR 0.26, 95%CI 0.10-0.67, p=0.006).クロルヘキシジン消毒薬の使用はVAP予防における歯磨きの効果を有意に低下させていた.電動歯磨きと手動歯磨きでは有意差なし.歯磨きはICU滞在期間,ICU死亡率,院内死亡率には影響を与えなかった.

小児における口腔ケアとグラム陰性桿菌の咽頭・気道定着
Kusahara DM, Friedlander LT, Peterlini MA, Pedreira ML. Oral care and oropharyngeal and tracheal colonization by Gram-negative pathogens in children. Nurs Crit Care 2012; 17: 115-22
PMID:22497915
ポイント:PICUに入室した小児74名を0.12%クロルヘキシジン口腔ケア群とプラセボ群で比較した二重盲検RCT.咽頭・気道でのグラム陰性菌定着率に有意差はみられなかった.

ICU入院患者における口腔洗浄においてクロルヘキシジンとハーブ洗口液を比較したRCT
Baradari AG, Khezri HD, Arabi S. Comparison of antibacterial effects of oral rinses chlorhexidine and herbal mouth wash in patients admitted to intensive care unit. Bratisl Lek Listy 2012; 113: 556
PMID:22979913
ポイント:ICU患者60名におけるハーブ洗口液と2%クロルヘキシジンの口腔ケア効果を比較した二重盲検RCT:両製剤とも黄ブ菌と肺炎球菌に対して有意に抗菌効果があったが,製剤間比較ではクロルヘキシジンの方がより有意に効果的であった.

人工呼吸器関連肺炎(VAP)ガイドラインの実施:多施設共同前向き研究
Sinuff T, Muscedere J, Cook DJ, et al; Canadian Critical Care Trials Group. Implementation of Clinical Practice Guidelines for Ventilator-Associated Pneumonia: A Multicenter Prospective Study. Crit Care Med 2013; 41: 15-23
PMID:23222254
ポイント:VAPガイドラインの実行による成果:カナダ10施設,米国1施設の48時間以上人工呼吸器を装着している患者を4期に分けて評価(各330名).実行率上昇とともにVAP発生率は14.2%から8.8%まで有意に低下した.

ICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防改善を維持するプログラムの実践
Caserta RA, Marra AR, Durão MS, et al. A program for sustained improvement in preventing ventilator associated pneumonia in an intensive care setting. BMC infect dis 2012; 12: 234
PMID:23020101,Free Full Text
ポイント:ICUにおける人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防改善を維持するプログラムの実践を行い,21894患者日数を解析.VAP予防バンドルの遵守率が90%以上をキープすることにより観察期間の間に数回発生率ゼロを達成しえた.
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by DrMagicianEARL | 2013-02-22 12:30 | 肺炎 | Comments(0)
2012年肺炎関連文献集(1) ~市中肺炎(CAP)~

重症肺炎像を呈する結核患者における経験的フルオロキノロン投与は生存率を改善させる
Tseng YT, Chuang YC, Shu CC, et al. Empirical use of fluoroquinolones improves the survival of critically ill patients with tuberculosis mimicking severe pneumonia. Crit Care 2012; 16: R207
PMID:23098258
ポイント:重症肺炎を模した肺結核を伴う患者において経験的抗菌薬でフルオロキノロン使用群と非使用群を比較した観察研究.100日死亡率は40%vs68%で有意に使用群が低い.APACHE-Ⅱscore<20,ICU入院中の菌血症がないことで調整しすると,フルオロキノロンは生存に関連した独立因子であった.結核診断前にフルオロキノロンが投与されると結核死亡リスクが1.8倍になった報告(Int J Tuberc Lung Dis 2012; 16: 1162-7)があるが,これは結核を鑑別に挙げず喀痰検査も行わないまま肺炎患者に経験的というより盲目的にキノロンを投与したという点で本文献とは異なる.結核もカバーすることを認識した上で重症肺炎患者に使用することは予後をむしろ改善させる可能性があるかもしれない.

結核診断前のフルオロキノロン暴露は死亡リスク増大に関係する
van der Heijden YF, Maruri F, Blackman A, et al. Fluoroquinolone exposure prior to tuberculosis diagnosis is associated with an increased risk of death. Int J Tuberc Lung Dis 2012; 16: 1162-7
PMID:22794509
ポイント:2007年から2009年までの間の結核患者で,結核診断前6ヶ月以内にフルオロキノロン曝露がある患者の解析.609人の結核患者のうち214人(35%)が結核診断前にフルオロキノロンに曝露されていた.71人(12%)の患者が死亡し,10人(2%)が結核診断時に,61人(10%)が結核治療中に死亡した.結核診断前のフルオロキノロン曝露は死亡リスクが1.82倍有意に上昇していた.また,結核診断前にフルオロキノロンに曝露された患者はより培養・塗抹が陰性になりやすかった.

モキシフロキサシン(MFLX)による市中肺炎治療:RCTのメタ解析
Yuan X, Liang BB, Wang R, et al. Treatment of community-acquired pneumonia with moxifloxacin: a meta-analysis of randomized controlled trials. J Chemother 2012; 24: 257-67
PMID:23182045
ポイント:14報RCT,6923名のメタ解析.市中肺炎においてMFLXは他の推奨抗菌薬と比して有害事象や死亡率に有意差なく,βラクタム系がベースの治療より良好な病原菌根絶率を有していた.

市中肺炎における高用量レボフロキサシン(LVFX):オープンラベルRCT
Lee JH, Kim SW, Kim JH, et al. High-dose levofloxacin in community-acquired pneumonia: a randomized, open-label study. Clin Drug Investig 2012; 32: 569-76
PMID:22765645
ポイント:韓国からの報告.市中肺炎で高用量LVFX群(750mgIV/日→改善後750mgPO/日)と対照群(CTRX+AZM 500mg経口×3日→改善後CPDX経口)を比較したオープンラベルRCT.治療成功率は両群間に有意差なし(94% vs 84%).

市中肺炎におけるマクロライドの効果:システマティックレビュー&メタ解析
Asadi L, Sligl WI, Eurich DT, et al. Macrolide-based regimens and mortality in hospitalized patients with community-acquired pneumonia: a systematic review and meta-analysis. Clin Infect Dis 2012; 55: 371-80
PMID:22511553
ポイント:23報137574例のメタ解析.マクロライド使用群は非使用群と比較して市中肺炎死亡率を有意に低下させた(3.7% vs 6.5%,RR 0.78).しかし,RCT,またはガイドラインに沿った治療を行った患者に限定すると有意差はみられなかった.

2011年の日本の小児におけるマクロライド耐性マイコプラズマ感染症に対するミノサイクリン,ドキシサイクリンの速効性
Okada T, Morozumi M, Tajima T, et al. Rapid effectiveness of minocycline or doxycycline against macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae infection in a 2011 outbreak among Japanese children. Clin Infect Dis 2012; 55: 1642-9
PMID:22972867
ポイント:小児マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎においてミノサイクリン,ドキシサイクリン投与群はトスフロキサシン投与群よりも投与後24時間以内のマイコプラズマDNAコピー数が有意に減少していた.本邦ではマクロライド耐性マイコプラズマ肺炎が急増しており,キノロンも耐性化リスクを有することから,本報告を踏まえるとマクロライドに次ぐ第2選択薬はドキシサイクリンやミノサイクリンがよいと思われる.なお,稀ではあるがマクロライド耐性マイコプラズマ脳髄膜炎(Pediatr Int 2012; 54: 724-6)の報告もあり,このような脳髄膜炎症例ではマクロライド耐性有無にかかわらず直ちにミノサイクリンを選択して投与すべきであろう.

小児市中下気道マイコプラズマ感染症における抗菌薬
Mulholland S, Gavranich JB, Gillies MB, Chang AB. Antibiotics for community-acquired lower respiratory tract infections secondary to Mycoplasma pneumoniae in children. Cochrane Database Sys Rev 2012; 9: CD004875
PMID:22972079
ポイント:7報1912例のコクランレビュー・メタ解析.小児の市中下気道マイコプラズマ感染における抗菌薬の有効性は根拠が不十分である(肺炎ではなく下気道感染としてのレビューであり,気管支炎レベルなら抗菌薬が不要である場合も多い).RCTは1報のみであり,より質の高いDB-RCTが必要.

2008-2012年の中国は北京におけるマクロライド耐性マイコプラズマのサーベランス
Zhao F, Liu G, Wu J, et al. Surveillance of Macrolide Resistant Mycoplasma pneumoniae in Beijing, China from 2008 to 2012. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 1521-3
PMID:23263003
2008年から2012年までの中国の北京におけるマイコプラズマ(M. pneumoniae)のマクロライド耐性化率の推移:68.9%→90.0%→98.4%→95.4%→97.0%.

市中肺炎において3ステップの重要な経過を経ることは注射用抗菌薬治療と入院期間を減少させる
Carratalà J, Garcia-Vidal C, Ortega L, et al. Effect of a 3-step critical pathway to reduce duration of intravenous antibiotic therapy and length of stay in community-acquired pneumonia: a randomized controlled trial. Arch Intern Med 2012; 172: 922-8
PMID:22732747
ポイント:401例RCT.市中肺炎患者において,早期リハビリ,経口抗菌薬へのスイッチ基準の使用,退院orケア施設の決定の3ステップの重要な経過を経ることで,注射用抗菌薬使用期間,入院期間を有意に短縮し,患者に悪影響を及ぼさなかった.

高齢男性にとって独身は肺炎の死亡リスク因子
Metersky ML, Fine MJ, Mortensen EM. The Effect of Marital status on the Presentation and Outcomes of Elderly Male Veterans Hospitalized for Pneumonia. Chest 2012; 142: 982-7
PMID:22459780
ポイント:48635名コホート研究.結婚している65歳以上の男性は未婚群と比較して肺炎による院内死亡リスクは13%減少,退院後90日死亡リスクは8%減少していた.65歳以上の男性において未婚は肺炎死亡の高いリスク因子であった.

院内でのスタチン投与と肺炎患者の死亡率の関連性
Rothberg MB, Bigelow C, Pekow PS, Lindenauer PK. Association between statins given in hospital and mortality in pneumonia patients. J Gen Intern Med 2012; 27: 280-6
PMID:21842322
ポイント:121254名の解析.院内での肺炎患者に対するスタチン投与はスタチン非投与肺炎患者と比較してICU入室を減少させ(15.7% vs 18.1%, p<0.001),人工呼吸器装着を減少させ(6.9% vs 9.3%, p<0.001),院内死亡率を減少させる(3.9% vs 5.7%, p<0.001).スタチンはpropensity調整後で死亡リスクを24%減少,propensity matchingで10%減少させた.

ロスバスタチンの肺炎発症に対する効果:JUPITER試験結果の解析
Novack V, MacFadyen J, Malhotra A, et al. The effect of rosuvastatin on incident pneumonia: results from the JUPITER trial. CMAJ 2012; 184: E367-72
PMID:22431901,Free Full Text
ポイント:JUPITER trialのサブ解析.17802名の中央期間1.9年間の追跡で,スタチン製剤投与により肺炎頻度は17%減少した.

肺炎治療におけるステロイドの役割は?システマティックレビュー
Póvoa P, Salluh JI. What is the role of steroids in pneumonia therapy? Curr Opin Infect Dis 2012; 25: 199-204
PMID:22156902
ポイント:システマティックレビュー.最近のエビデンスでは,重症度,細菌かウイルス性かに関係なく,肺炎に対する全身性ステロイド投与は支持されない.なお,現在重症肺炎に対するステロイドの有効性を検討する1450名のRCTであるESCAPe(Extended Steroid in CAP(e))trialが2011年より開始,進行中である.

血漿アルブミンレベルによる成人市中肺炎入院患者の予後予測
Viasus D, Garcia-Vidal C, Simonetti A, et al. Prognostic value of serum albumin levels in hospitalized adults with community-acquired pneumonia. J Infect 2012 Dec.31
PMID:23286966
ポイント:成人市中肺炎入院患者3463例の前向きコホート研究.血漿アルブミン濃度の減少は合併症,状態安定化までの期間延長,入院期間延長,ICU入室,人工呼吸器装着,30日死亡と有意に関連していた.多変量解析では,血漿アルブミン値の0.5g/dL低下は30日死亡リスクを2.11倍に増加させた.3.0g/dL未満の低アルブミン血症をPSIやCURB-65に組み合わせるとAUROCが有意に増加した.

市中肺炎入院患者の死亡予測における血糖値:前向きコホート研究CAPNETZ study
Lepper PM, Ott S, Nüesch E, et al; German Community Acquired Pneumonia Competence Network. Serum glucose levels for predicting death in patients admitted to hospital for community acquired pneumonia: prospective cohort study. BMJ 2012; 344: e3397
PMID:22645184,Free Full Text
ポイント:2003年から2009年のドイツの市中肺炎患者6891例の解析.市中肺炎患者において非糖尿病患者で入院時高血糖は正常血糖に比べ90日死亡リスクが高い(6-10.99mmol/LでHR 1.56,≧14mmol/LでHR 2.37)..

血小板増多は市中肺炎における予後不良マーカー
Prina E, Ferrer M, Ranzani OT, et al. Thrombocytosis is a marker of poor outcome in community-acquired pneumonia. Chest 2012 Sep.10
PMID:23187959
ポイント:2423例の前向き観察研究.市中肺炎患者において,血小板増多(≧40万)は予後不良マーカーであり,30日死亡リスクは2.72倍有意に増加した.血小板増多患者は胸水,膿胸,重症敗血症,敗血症性ショック,挿管人工呼吸,ICU入院が有意に多かった.

市中肺炎患者における重症度と臨床アウトカムの評価におけるD-ダイマー値
Snijders D, Schoorl M, Schoorl M, et al. D-dimer levels in assessing severity and clinical outcome in patients with community-acquired pneumonia. A secondary analysis of a randomised clinical trial. Eur J Intern Med 2012; 23: 436-41
PMID:22726372
ポイント:市中肺炎においてD-ダイマーは上昇し,特に高いD-ダイマー値は治療失敗例や重症例で有意に多く見られた.しかしながら,臨床アウトカムや死亡率の予測バイオマーカーとはならない.147例の解析.

急性呼吸器感染症におけるプロカルシトニンガイド下での抗菌薬治療の開始と治療期間の決定:メタ解析
Schuetz P, Briel M, Christ-Crain M, et al. Procalcitonin to guide initiation and duration of antibiotic treatment in acute respiratory infections: an individual patient data meta-analysis. Clin Infect Dis 2012; 55: 651-62
PMID:22573847,Free Full Text
ポイント:14報4221例のメタ解析.急性呼吸器感染症においてプロカルシトニンガイド群と対照群の死亡率は5.7% vs 6.3%(有意差なし),治療失敗発生率は19.1% vs 21.9%(OR 0.82)であった.急性呼吸器感染症においてプロカルシトニンによる抗菌薬導入・治療期間の決定は死亡や治療失敗のリスクを増加させることなく抗菌薬使用を減少させていた.重症患者ではさらに質の高い試験が必要である.

プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用で肺炎球菌肺炎リスクが2.23倍
de Jager CP, Wever PC, Gemen EF, et al. Proton pump inhibitor therapy predisposes to community-acquired Streptococcus pneumoniae pneumonia. Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 941-9
PMID:23034135
ポイント:463例のコホート研究.PPIの投与で市中肺炎リスクが2.0倍,肺炎球菌肺炎リスクが2.23倍有意に増加した.他の市中肺炎病原菌とPPI投与の間に相関は認められなかった.PPI使用有無で市中肺炎重症度に有意差はみられなかった.

プロトンポンプ阻害薬は市中肺炎発症に関連する:メタ解析
Giuliano C, Wilhelm SM, Kale-Pradhan PB. Are proton pump inhibitors associated with the development of community-acquired pneumonia? A meta-analysis. Expert Rev Clin Pharmacol 2012; 5: 337-44
PMID:22697595
ポイント:9報のケースコントロール研究とコホート研究の120863名のメタ解析.市中肺炎発症リスクは,最近のPPI使用で1.39倍,30日以内のPPI使用で1.65倍,PPI高用量で1.50倍,PPI低用量で1.17倍であった.PPIの180日以上の使用は市中肺炎発症と関連がなかった.

市中肺炎における抗菌薬奏功度の最速の指標
Fujisaki R, Yamaoka T, Yamamura M, et al. Usefulness of gram-stained sputum obtained just after administration of antimicrobial agents as the earliest therapeutic indicator for evaluating the effectiveness of empiric therapy in community-acquired pneumonia caused by pneumococcus or Moraxella catarrhalis. J Infect Chemother 2012 Oct.17
PMID:23073648
ポイント:市中肺炎3例(肺炎球菌,モラキセラ)の症例報告.初回抗菌薬投与終了後から1時間後の喀痰グラム染色は,抗菌薬の奏功度を確認する最速の指標になるかもしれない.

慢性気管支炎急性増悪における喀痰の色と細菌
Miravitlles M, Kruesmann F, Haverstock D, et al. Sputum colour and bacteria in chronic bronchitis exacerbations: a pooled analysis. Eur Respir J 2012;39: 1354-60
PMID:22034649
ポイント:慢性気管支炎急性増悪患者の喀痰の色の検討で,菌検出率は緑色58.9%,黄色45.5%,サビ色39%,無色18%.喀痰の色が緑色または黄色であることは細菌感染の感度94.7%,特異度15%.ただし抗菌薬必要性は必ずしも予測できない.

肺超音波検査はERにおける肺炎の診断に有用なツール
Cortellaro F, Colombo S, Coen D, Duca PG. Lung ultrasound is an accurate diagnostic tool for the diagnosis of pneumonia in the emergency department. Emerg Med J 2012; 29: 19-23
PMID:21030550
ポイント:ER患者120名(81名が最終的に肺炎診断)の解析.胸部レントゲン写真の感度は67%,特異度85%であったのに対し,肺超音波検査は感度98%,特異度95%であった.なお,V-scanではあまり期待できないと思われる.

ICUに入院した重症肺炎患者におけるウイルス感染症
Choi SH, Hong SB, Ko GB, et al. Viral infection in patients with severe pneumonia requiring intensive care unit admission. Am J Respir Crit Care Med 2012; 186: 325-32
PMID:22700859
ポイント:ICU入院の重症肺炎患者においてウイルス・細菌の頻度・死亡率は同程度かもしれない.前向きコホートの後顧的解析,重症CAP患者64名,HCAP患者134名.細菌感染71名(35.9%),ウイルス感染72名(36.4%).

市中肺炎におけるMRSAの頻度
Moran GJ, Krishnadasan A, Gorwitz RJ, et al; EMERGEncy ID NET Study Group. Prevalence of methicillin-resistant staphylococcus aureus as an etiology of community-acquired pneumonia. Clin Infect Dis 2012; 54: 1126-33
PMID:22438343
ポイント:2006-2007年の米国大学12施設の市中肺炎患者の原因菌としてMRSAは全体で2.4%であった,ICUに入室した患者では5%を同定した.MRSA市中肺炎の死亡率は14%であった.分離株はすべてパルスフィールド型USA300であった.比較的市中感染型MRSAが多い米国でもそれほど高頻度にみられるわけではない.本邦での市中MRSA肺炎はまだ非常に稀である.

フランスでの市中レジオネラ感染症の院内死亡率関連因子
Chidiac C, Che D, Pires-Cronenberger S, et al; French Legionnaires’ Disease Study Group. Factors associated with hospital mortality in community-acquired legionellosis in France. Eur Respir J 2012; 39: 963-70
PMID:22005914
ポイント:540名の解析.高齢(RR 1.50),女性(RR 2.00),ICU入室(RR 3.31),腎不全(RR 2.73),ステロイド治療(RR 2.54),CRP上昇(RR 2.14)は市中発症レジオネラ症の死亡リスク因子.
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by DrMagicianEARL | 2013-02-20 15:37 | 肺炎 | Comments(0)
2012年MRSA関連文献集
MRSA院内肺炎におけるリネゾリド:RCT(ZEPHyR trial)
Wunderink RG, Niederman MS, Kollef MH, et al. Linezolid in methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: a randomized, controlled study. Clin Infect Dis 2012; 54: 621-9
PMID:22247123
ポイント:MRSA肺炎患者(ITT 448例,per-protocol 348例)を患者をLZD 600mg 12時間毎投与群とVCM 15mg/kg 12時間毎投与群に無作為割付し,7-14日間(菌血症確認された場合は21日間)連日投与して効果を比較した.トラフ・腎機能障害に基づいてVCMの投与量は調節している.臨床効果がリネゾリドが有意に良好という結果であるが,試験デザインには非常に問題点が多く,査読の練習にもオススメの文献.

MRSA院内肺炎におけるバンコマイシンとリネゾリド:ZEPHyR trialをふまえて
Alaniz C, Pogue JM. Vancomycin versus linezolid in the treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus nosocomial pneumonia: implications of the ZEPHyR trial. Ann Pharmacother 2012; 46: 1432-5
PMID:22947593
ポイント:MRSA肺炎に対するリネゾリドとバンコマイシンの効果を比較したRCTであるZEPHyR trialに関する批判的吟味.ZEPHyR trialの結果をもってMRSA肺炎に対してリネゾリドをルーティンで使用することは支持しないとしている.

医療介護関連または市中での黄色ブドウ球菌菌血症のリスクファクターと死亡率
Bassetti M, Trecarichi EM, Mesini A, et al. Risk factors and mortality of healthcare-associated and community-acquired Staphylococcus aureus bacteraemia. Clin Microbiol Infect 2012; 18: 862-9
PMID:21999245
ポイント:黄色ブドウ菌菌血症のリスク因子検討.入院から48時間以降では,中心静脈カテーテル,固形腫瘍,慢性腎不全,入院歴,抗菌薬使用歴がリスク因子であった.48時間以内では,Charlson Comorbidity Index≧3,入院歴,長期療養施設歴,ステロイドがリスク因子であった.市中感染例では糖尿病,HIV,慢性肝疾患がリスク因子であった.48時間以内発症例は市中感染例,48時間以降発症例と比して有意に不適切な抗菌薬治療が多かった(44.8% vs 33.35 vs 31.5%).死亡に関する独立危険因子は敗血症性ショック,MRSA感染,不適切な初期抗菌薬であった.半数以上の患者はMRSAであり,敗血症性ショックを呈しており,不適切な経験的治療は死亡率増加と関連していた.

MRSA感染による再入院リスク,MRSA定着高齢者と死亡の関連
Quezada Joaquin NM, Diekema DJ, Perencevich EN, et al. Long-Term Risk for Readmission, Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) Infection, and Death among MRSA-Colonized Veterans. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 1169-72
PMID:23254427
ポイント:高齢者でMRSAキャリア206例と非キャリア198例を比較したコホート研究:MRSAキャリアは感染症関連再入院リスクが4.07倍,死亡リスクが2.71倍有意に高かった.本報告ではこの結果をもってMRSA除菌を推奨しているが,再入院と死亡にMRSAが関与してるかはおおいに疑問がある.MRSAキャリアはMRSAがいるからではなくて,キャリアになる患者背景が原因で感染症関連再入院リスクや死亡リスクが増している可能性もある.

合併疾患のない黄色ブドウ球菌菌血症における治療期間
Chong YP, Moon SM, Bang KM, et al. Treatment Duration of Uncomplicated Staphylococcus aureus Bacteremia to Prevent Relapse: an Analysis of Prospective Observational Cohort Study. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 1150-6
PMID:23254436
ポイント:感染性心内膜炎や播種病巣のない黄色ブドウ球菌菌血症患者111名における抗菌薬投与日数14日未満群38例と14日以上群73例を比較した前向き観察コホート研究.治療失敗率,粗死亡率に有意差はなかった.再発率は14日未満群で有意に高かった(7.9% vs 0%, p=0.036).ガイドラインでは,非複雑性の黄ブ菌菌血症では少なくとも14日間抗菌薬を投与することを推奨しているが,実はこの推奨は公式な臨床試験で評価されたことはない.

MRSA感染が疑われる入院患者での抗菌薬治療のメタ解析
Bally M, Dendukuri N, Sinclair A, et al. A network meta-analysis of antibiotics for treatment of hospitalised patients with suspected or proven meticillin-resistant Staphylococcus aureus infection. Int J Antimicrob Agents 2012; 40: 479-95
PMID:23102749
ポイント:MRSA感染をきたした入院患者の抗菌薬に関するRCT24報のメタ解析.重症MRSA感染症(cSSTI,HAP/VAP)ではセフタロリンとリネゾリドが好ましい.

ダプトマイシン(DAP)曝露はダプトマイシン非感受性腸球菌感染または定着と関連する
Storm JC, Diekema DJ, Kroeger JS, et al. Daptomycin exposure precedes infection and/or colonization with daptomycin non-susceptible enterococcus. Antimicrob Resist Infect Control 2012; 1: 19
PMID:22958379,Free Full Text
ポイント:DAP非感受性腸球菌の定着・感染があった患者25例の解析.15例(60%)はDAP曝露があった.DAP非感受性腸球菌による感染症を発症したのは17例(68%)であり,9例は菌血症を伴っていた.感染症発症例のうち12例はDPA曝露があった.院内死亡は10例(40%)であった.DAP非感受性腸球菌は86%がE. faecium,72%がVREであった.

セフタロリンはダプトマイシン(DAP)の細胞膜結合性と抗菌活性を増強し,ダプトマイシン非感受性バンコマイシン低感受性黄色ブドウ球菌(VISA)に対する抗菌活性を発揮する.
Werth BJ, Sakoulas G, Rose WE, et al. Ceftaroline Increases Membrane Binding and Enhances the Activity of Daptomycin against Daptomycin-Nonsusceptible Vancomycin-Intermediate Staphylococcus aureus in a Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Model. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 66-73
PMID:23070161
ポイント:PK/PDモデル研究.セフタロリン(MRSAに抗菌活性を持つ第5世代広域セファロスポリン系プロドラッグ)とDAPの併用はDAPの感性・非感性いずれのMRSA(VISA株D592,D712)にも素早くかつ持続的な殺菌能を有する.なお,セフタロリンは本邦でも発売が予定されている.

ダプトマイシン(DAP)非感受性MRSAに対するダプトマイシンとトリメトプリム/スルファメソキサゾール(ST)併用の有用性
Steed ME, Werth BJ, Ireland CE, Rybak MJ. Evaluation of the novel combination of high-dose daptomycin plus trimethoprim-sulfamethoxazole against daptomycin-nonsusceptible methicillin-resistant staphylococcus aureus using an in vitro pharmacokinetic/pharmacodynamic model of simulated endocardial vegetations. Antimicrob Agents Chemother 2012; 56: 5709-14
PMID:22908167
ポイント:DAP非感受性MRSAに対する高用量DAPとSTの併用は有効.感染性心内膜炎疣贅シミュレーションPK/PDモデルのin vitro研究.

感染性心内膜炎におけるダプトマイシン(DAP):欧州レジストリの結果
Dohmen PM, Guleri A, Capone A, et al. Daptomycin for the treatment of infective endocarditis: results from a European registry. J Antimicrob Chemother 2012 Nov.28
PMID:23190763
ポイント:EU-CORE登録感染性心内膜炎患者3621名のうち,DAPを投与された患者378名の後顧的解析.MSSAとMRSAで治療成績に有意差はみられなかった.DAP≧8mg/kgの臨床的奏功率は90%(右心系91%,左心系89%)であった.

持続的腎代替療法を施行中のICU患者におけるダプトマイシン(DAP)の用量用法
Preiswerk B, Rudiger A, Fehr J, Corti N. Experience with daptomycin daily dosing in ICU patients undergoing continuous renal replacement therapy. Infection 2012 Jul.21
PMID:22821405
ポイント:DAPは血液透析時は通常量を透析直後に週3回投与(48h-48h-72h)とする.CHDF時は8mg/kg隔日投与とする.ICUでのCHDF患者ではDAP投与は連日・隔日での有意差なし.他に参考になる文献として,重症患者のCHDF時のDAPの血漿中濃度(J Chemother 2012; 24: 253-6),週3回の透析を受ける患者におけるDAPのPK/PD(Butterfield, et al. Antimicrob Agents Chemother 2012 Dec.3),CVVHD(CHDF)を受けているICU患者におけるDAP投与量(Crit Care Med 2011; 39: 19-25)がある.海外と日本で流量は違うが参考に.

東京の三次救急センター入院患者の培養とPCRに基づいたMRSA流行調査
Taguchi H, Matsumoto T, Ishikawa H, et al. Prevalence of methicillin-resistant Staphylococcus aureus based on culture and PCR in inpatients at a tertiary care center in Tokyo, Japan. J Infect Chemother 2012; 18: 630-6
PMID:22358543
ポイント:東京の三次救急センター入院患者の培養とPCRに基づいたMRSA流行を調査した東京医科大学からの報告.入院時に11%,入院後陽転化5%.MRSA陽性患者のうち,PCR・培養両方陽性は52%,PCR陽性かつ培養陰性は45%.PCRはMRSA定着を検出する高感度かつ有用な手段

バンコマイシン(VCM)のMICが2mcg/mLのMRSAの治療:旧薬(トリメトプリム/スルファメトキサゾール(ST))vs新薬(ダプトマイシン(DAP),リネゾリド(LZD))
Campbell ML, Marchaim D, Pogue JM, et al. Treatment of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Infections with a Minimal Inhibitory Concentration of 2 μg/mL to Vancomycin: Old (Trimethoprim/Sulfamethoxazole) versus New (Daptomycin or Linezolid) Agents. Ann Pharmacother 2012; 46: 1587-97
PMID:23212935
ポイント:VCM MIC 2のMRSAにおける旧薬(ST)と新薬(DAP,LZD)を比較した328例コホート研究.単変量解析では,STはDAPやLZDより入院期間,90日死亡率が有意に良好.コストもSTが安い.

軽度から中等症の腎不全を有する黄色ブドウ球菌菌血症患者におけるダプトマイシン(DAP)にβラクタム系抗菌薬の併用・非併用の臨床アウトカム
Moise PA, Amodio-Groton M, Rashid M, et al. Clinical Outcomes of Daptomycin with and without Concomitant β-lactams in Patients with Staphylococcus aureus Bacteremia and Mild to Moderate Renal Impairment: A Multicenter Evaluation. Antimicrob Agents Chemother 2013; 57: 1192-200
PMID:23254428
軽度~中等症の腎不全を有し,黄色ブドウ球菌菌血症でDAP投与を受けた106例解析.全治療成績は有意差はないがβタクタム系抗菌薬の併用効果がわずかながらみられた.多変量解析では,感染巣不明(OR 7.59),中等度腎障害(OR 9.11),前のバンコマイシン治療失敗(OR 11.2)がDAPの効果減少に関連していた.

皮下埋込型ポートモデルでの各抗菌薬のカテーテルロック療法効果
Aumeran C, Guyot P, Boisnoir M, et al; Clermont-Ferrand Biofilm Study Group. Activity of ethanol and daptomycin lock on biofilm generated by an in vitro dynamic model using real subcutaneous injection ports. Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2013; 32: 199-206
PMID:23079900
ポイント:バイオフィルム形成表皮ブ菌感染皮下埋込型ポートモデルで,バンコマイシン(VCM)群,ダプトマイシン(DAP)群,エタノール群,コントロール群でロック療法効果をin vitroで比較.縮小度はDAP,エタノールでのみ群は有意に効果あり,VCM群では有意な効果認めず.生菌数はエタノールが最も少ないため,エタノールが最も魅力的なオプションには見えるが,バイオフィルム崩壊能力には乏しい.

MRSA創部感染進展予防のための周術期抗菌薬バンコマイシンの影響
Bull AL, Worth LJ, Richards MJ. Impact of Vancomycin Surgical Antibiotic Prophylaxis on the Development of Methicillin-Sensitive Staphylococcus aureus Surgical Site Infections: Report From Australian Surveillance Data (VICNISS). Ann Surg 2012; 256: 1089-92
PMID:22824854
ポイント:周術期抗菌薬予防投与と創部感染リスクの関係の調査では,βラクタム抗菌薬投与群に比べ,VCM投与群の創部感染発症の調整ORはMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)で2.79,MRSAで0.44,緑膿菌で0.96であった.バンコマイシンではMRSA感染は予防できてもMSSA感染を予防できない.

人工関節MRSA感染症へのダプトマイシン(DAP)と従来治療の有効性・安全性を比較したRCT
Byren I, Rege S, Campanaro E, et al. Randomized controlled trial of the safety and efficacy of Daptomycin versus standard-of-care therapy for management of patients with osteomyelitis associated with prosthetic devices undergoing two-stage revision arthroplasty. Antimicrob Agents Chemother 2012; 56: 5626-32
PMID:22908174,Free Full Text
ポイント:人工関節MRSA感染症患者75名へのDAP 6mg/kg群とDAP 8mg/kg群と非DAP群を6週間の奏功率で比較したオープンラベルRCT.臨床奏功率は58.3% vs 60.9% vs 38.1%,細菌学的奏功率は50.0% vs 52.2% vs 38.1%であった.

骨髄炎治療におけるダプトマイシン(DAP)とバンコマイシン(VCM)の比較:単施設後ろ向きコホート研究
Moenster RP, Linneman TW, Finnegan PM, McDonald JR. Daptomycin compared to vancomycin for the treatment of osteomyelitis: a single-center, retrospective cohort study. Clin Ther 2012; 34: 1521-7
PMID:22748973
ポイント:骨髄炎でDAP投与を受けた患者17名とマッチさせた対照群(VCM)34名を比較.再発率はDAP群29% vs VCM群61.7%(p=0.029)で有意にDAPが少なかった.ただし,再発例に関してはDAP群・VCM群ともに不良であった.

高いバンコマイシンMICのMRSAによる血流感染症におけるダプトマイシンとバンコマイシン
Moore CL, Osaki-Kiyan P, Haque NZ, et al. Daptomycin versus vancomycin for bloodstream infections due to methicillin-resistant Staphylococcus aureus with a high vancomycin minimum inhibitory concentration: a case-control study. Clin Infect Dis 2012; 54: 51-8
PMID:22109947,Free Full Text
ポイント:177例ケースコントロールスタディ.VCMに対しE-test MIC 1.5-2.0μg/mLを示すMRSAによる菌血症患者では,VCMよりもDAPの方が死亡率を含めよりよいアウトカムを示した.

救急患者におけるMRSAコロニゼーション
Wakatake H, Fujitani S, Kodama T, et al. Positive clinical risk factors predict a high rate of methicillin-resistant Staphylococcus aureus colonization in emergency department patients. Am J Infect Control 2012; 40: 988-91
PMID:22627097
ポイント:聖マリアンナ医科大学での研究.救急部門を受診した患者の31.4%でMRSAを検出した.リスクファクターとしては,過去のMRSA定着/感染(60%),抗菌薬使用歴(47.2%),3ヶ月以内に30日以上の入院歴(43.9%)または10日以上の入院歴(41.7%),急性疾患による入院歴(40.0%)が認められた.

東京における三次救急センター入院患者のMRSA流行
Taguchi H, Matsumoto T, Ishikawa H, et al. Prevalence of methicillin-resistant Staphylococcus aureus based on culture and PCR in inpatients at a tertiary care center in Tokyo, Japan. J Infect Chemother 2012; 18: 630-6
PMID:22358543
ポイント:東京医科大学からの報告.MRSAは11%の患者から入院時に検出された.入院中にMRSA陽性となった患者は5%であった.MRSA陽性患者42名中,PCRと培養両方でMRSA陽性であった患者は22名(52%),PCR陽性かつ培養陰性であった患者は19名(45%)であった.PCRを用いた積極的サーベランスはMRSA定着を検出する高感度かつ有用な手段であると推察された.

日本におけるMRSAの抗菌薬感受性と特徴の調査
Yanagihara K, Araki N, Watanabe S, et al. Antimicrobial susceptibility and molecular characteristics of 857 methicillin-resistant Staphylococcus aureus isolates from 16 medical centers in Japan (2008-2009): nationwide survey of community-acquired and nosocomial MRSA. Diagn Microbiol Infect Dis 2012; 72: 253-7
PMID:22244779
ポイント:長崎大学からの報告.臨床分離されたMRSA 857株の解析.SCCmecタイプは,typeⅡ 73.6%,typeⅣ 20%,typeⅠ 6%であり,typeⅣは入院患者よりも外来患者で有意に多く検出された.VCM感受性においては,typeⅡがtypeⅣより有意にMICが高かった.typeⅣ 171株のうち4株(2.3%)だけがPVL(Panton-Valentine leukocidin)陽性であった.

市中肺炎におけるMRSAの頻度
Moran GJ, Krishnadasan A, Gorwitz RJ, et al; EMERGEncy ID NET Study Group. Prevalence of methicillin-resistant staphylococcus aureus as an etiology of community-acquired pneumonia. Clin Infect Dis 2012; 54: 1126-33
PMID:22438343
ポイント:2006-2007年の米国大学12施設の市中肺炎患者の原因菌としてMRSAは全体で2.4%であった,ICUに入室した患者では5%を同定した.MRSA市中肺炎の死亡率は14%であった.分離株はすべてパルスフィールド型USA300であった.比較的市中感染型MRSAが多い米国でもそれほど高頻度にみられるわけではない.本邦での市中MRSA肺炎はまだ非常に稀である.
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by DrMagicianEARL | 2013-02-19 09:47 | MRSA | Comments(0)
O.敗血症性ARDSにおける人工呼吸(Mechanical Ventilation of Sepsis-induced Acute Respiratory Distress Syndrome)
1.敗血症に起因する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者では6mg/kg理想体重の1回換気量を目標とすることを推奨する(Grade 1A vs 12mL/kg)
 推奨根拠では,「これまでの研究はARDSの定義はAECCによる基準(Am J Respir Crit Care Med 1994; 149: 818-24)に基づいているが,この項目では2011年のESICMで発表されたBerlin定義(JAMA 2012; 307: 25226-33)を用いる」と記載され,ALIの表記はなくし,ARDSに統一されている.

 ARDSにおける1回換気量の研究は,2000年までにARDS-Networkの報告であるARMA study(N Engl J Med 2000; 342: 1301-8)を含め多施設共同RCTが5報あり,このうち3報は1回換気量が予後に影響を与えない結果となった.この結果の相違は1回換気量や肺胞内圧(プラトー圧),PEEP設定が異なることによるものと推察されている(Am J Respir Crit Care Med 2002; 166: 1510).その後行われた2つのメタ解析(Ann Intrn Med 2009; 151: 566-76,PLoS ONE 2011; 6: e14623)では,気道内圧と換気量を制限した方が死亡率が減少することが示唆された.

 このメタ解析の結果は,ARMA studyが他の各報告の10倍前後の症例数(429例)を有するために死亡率低下効果が現れたものと推察される.この報告では,理想体重に対して1回換気量6mg/kg+肺胞内プラトー圧を30cmH2O以下とする群が,1回換気量12mg/kg+肺胞内プラトー圧50cmH2O以下とする群よりも全死亡率を有意に改善していた(31.0% vs 39.8%).この結果から,1回換気量6mg/kgという設定が肺保護換気療法の基本とされるに至る.ただし,注意しなければならないのは,ARMA studyではコントロール群のプラトー圧が不必要に高く設定されているところにある.
2.ARDS患者ではプラトー圧を測定し,受動的肺拡張時での初期プラトー圧上限は30cmH2O以下とすることを推奨する(Grade1B)
 前述のARMA studyにより1回換気量6mg/kg+肺胞内プラトー圧を30cmH2O以下とする管理が推奨されるようになってはいるが,Grade 1Bという推奨度はやや高すぎる印象がある.

 ARDS Networkによる6報のメタ解析(Am J Respir Crit Care Med 2008; 177: 1215-22)では,プラトー圧が1cmH2O上昇すれば死亡リスクが3%有意に上昇することが分かっており,この結果を見れば,吸気プラトー圧は低い方がよいということになる.これはARMA研究においても示されており,プラトー値と死亡率はほぼ直線的な関連が観察されている.

 しかしながら,プラトー圧を低くしすぎると虚脱肺をリクルートすることができず,死亡率が上昇する可能性も示唆されている(Am J Respir Crit Care Med 2002; 166: 1510-4).プラトー圧は肺コンプライアンスとは逆相関する上,PEEPを高くすれば当然ながらプラトー圧も上昇しやすい.このため一律にプラトー圧の至適カットオフ値を提示することは困難であり,1回換気量が低く保たれている状態でのプラトー圧高値が必ずしも有害とは限らない.実際に,人工呼吸器関連肺損傷(VALI)の原因は,高い気道内圧よりも肺胞の過伸展により生じる,いわゆる容量肺損傷volutraumaであり(Intensive Care Med 1992; 18: 139-41),ラットモデルの実験においては,気道内圧が高くても肺容量を制限すればVALIを防ぐことができることが示されている(Am Rev Respir Dis 1988; 137: 1159-64).よって,プラトー圧よりも1回換気量の方が予後に影響を与えられると考えられ,実際にARMA studyの二次解析(Am J Respir Crit Care Med 2005; 172: 1241-5)ではプラトー圧が30cmH2O以下であっても,1回換気量を12mL/kgにした群では死亡率が高くなっていた.

 以上を踏まえると,「人工呼吸中の吸気プラトー圧は高くなるほど予後は悪化するが,至適値を設定することは困難である(Grade 2B).」とした日本版ガイドラインの推奨は的を得ており,SSCG 2012のように低1回換気とプラトー圧についての推奨項目を別々に定めるのは妥当ではないと思われる.実際には,「低1回換気を行っているならばプラトー圧が高まることを許容してもよい」とする推奨を加えた方がよいのではないかと考える.
3.呼気終末時の肺胞虚脱(再開放と虚脱を繰り返すことによる損傷;atelectotrauma)を防ぐため,呼気終末陽圧換気(PEEP)を適用することを推奨する(Grade 1B)
 ARDSにおいては,酸素化を改善させ,肺胞虚脱,無気肺,ずり応力の発生を防ぐためPEEPを使用することは理にかなっている(Am J Respir Crit Care Med 2012; 185: 702-8)

 なお,PEEPにより心拍出量が減少し,血圧が低下する副作用があることを理解しておく必要がある(Crit Care Med 2010; 38: 802-7)
4.敗血症による中等症,重症のARDSでは,PEEPは低レベルよりも高レベルにすることに基づいた戦略を提案する(Grade 2C)
 ARDS NetworkによるALVEOLI study(N Engl J Med 2004; 351: 327-36),LOV study(JAMA 2008; 299: 637-45)では,FiO2の必要量に応じてPEEPを変更し高いPEEP値とする群と従来の慣習的なPEEP値を用いたコントロール群を比較したもので,死亡率に有意差はみられなかった.一方,別のRCTであるEXPRESS study(JAMA 2008; 299: 646-55)ではプラトー値を28-30cmH2Oに保つようにPEEP値が設定された.この報告では,死亡率に有意差はみられなかったが,最初の28日間において,呼吸器管理日数と臓器不全日数の中央値が有意に短縮されていた.

 これら3つのRCTのメタ解析(JAMA 2010; 303: 865-73)では,高PEEP群と低PEEP群で院内死亡率に有意差はみられなかった.しかし,P/F比が200以下の中等症・重症ARDSに限ったサブ解析では,院内死亡率は高PEEP群の方が有意に低い結果となった.あくまでもサブ解析であり,その差も有意ではあるが極めてわずかの差で,強い根拠とはならないが,これが本ガイドラインの推奨根拠である.

 PEEP値については肺の損傷レベルが患者個々によって異なるため,その至適値を画一的に決定することはできない.患者個々で最適化をはかる研究はいくつかあり,静的圧容量曲線の下部転換点以上に保つ手法,ストレスインデックスを用いる手法,胸部CTを用いる手法などであるが,現段階でスタンダードといえる方法はない状態にある.
5.ARDSによる重症難治性低酸素血症の敗血症患者ではリクルートメント手技を行ってもよい(Grade 2C)
 重症ARDS患者で難治性の低酸素血症をきたしている際に用いられる,虚脱肺胞を再開通させるリクルートメント手技(RM;recruitment maneuver)には様々な方法がある(JAMA 2010; 304: 2521-7).しかしながら,見解は一致していない状況にあり,日本版ガイドラインでは触れられていない.ARDS Networkは効果が不確実で酸素化改善も一時的に過ぎないとしており(Crit Care Med 2003; 31: 2592-7),Gattinoniら(N Engl J Med 2006; 354: 1775-86)はARDS患者の24%がリクルートメント不能であると報告している.その一方で,92%に有効だったとするBorgesらの報告(Am J Respir Crit Care Med 2006; 174: 268-78)もある.この違いはRMの方法の違いであり,有効でないとした研究は有効とした研究より人工呼吸器装着からRM施行までの期間が長く,RMの施行時間が短い傾向にある.

 BorgesらのRMは,段階的にPEEPを増加させていく方法である.4報RCTのメタ解析(Am J Respir Crit Care Med 2008; 178: 1156-63)では,高レベルのPEEPを用いたRMは重症低酸素血症の患者に限って施行することは直後に一時的に酸素化を有意に改善するため利益となりうるかもしれないが,その効果は長続きするわけではなく,また,PEEPを上昇させることで肺過膨張による人工呼吸器関連肺傷害や一過性の血圧低下,低酸素血症,不整脈をきたしうる.特に循環器系への影響は大きく,短時間の加圧しかできないため,この間に再開通が得られないのであればRMを施行する意味はなく,RMには時間的制限があることを知っておく必要がある.さらに,全ARDS患者にルーティンで施行することを支持するエビデンスは少ないとしている.また,RMを施行する場合は血圧と酸素化のモニタリングが必須であるが,熟練していないスタッフによるRMの施行はトラブルにつながりうる.明らかに気道内圧が低下したことで肺胞内圧が低下して低酸素血症が起こったと考えられる場合や,あらゆる低酸素血症を治療する手立てがない場合以外では,RMを積極的に推奨はできないものと思われる.

 RMを施行する手段として気道圧開放換気(APRV),高頻度振動換気(HFOV),2相性PEEP(BIPAP)などがある.これらのモードは通常の人工呼吸管理やRMができない症例において理論上有効であるとされている.しかし,APRV,BIPAPは敗血症性ショックを伴うARDSにおいては,循環動態に影響を与えることが重大なデメリットとなる.また,APRV,BIPAPは臨床効果を検討した大規模研究がないため,敗血症性ARDSでは推奨する根拠は乏しい.

 HFOVについては,8報RCT,419例のメタ解析(BMJ 2010; 340: c2327)では,HFOVは死亡リスクを23%低下させ,治療失敗リスクも33%低下させるとしている.しかしながら,対照群は1回換気量が高く設定されており,これまでARDS患者の死亡率を下げることが証明された人工呼吸管理法が遵守されていないという問題点を抱えていた.2013年にOSCILLATE study(Ferguson ND, et al. N Engl J Med 2013 Jan.22),OSCAR study(Young D, et al. N Engl J Med 2013 Jan.22)という2つの大規模RCTが相次いで報告された.OSCILLATE studyは,中間解析でHFOV群の死亡率が有意に高まったため,早期中止されている.OSCAR試験では30日死亡率に有意差を認めなかった.以上より低1回換気療法と比較した成人におけるHFOVの予後改善効果は現時点では否定的であり,むしろ有害である可能性も示唆されていることから,HFOVも推奨されない.
6.経験の豊富な施設であれば,PaO2/FiO2比≦100mmHgの敗血症性ARDS患者において腹臥位療法を行ってもよい(Grade 2B)
 複数の小規模研究とGuerinらの791例大規模研究(JAMA 2004; 292: 2379-87)やGattinoniらの304例大規模研究(N Engl J Med 2001; 345: 568-73)において腹臥位療法による酸素化改善効果が報告されているが,予後改善効果は認められていない.これは,Abrougらによる6報RCTのメタ解析(Intensive Care Med 2008; 34: 1002-11)においても同様であった.

 しかし,これまでの研究においてはサブ解析でP/F比≦100の重症例において生存率を改善させる可能性が示唆されていた.その後,Sudらによる10報RCTのメタ解析(Intensive Care Med 2010; 36: 585-99)において,腹臥位療法が重症例においては死亡リスクを16%有意に減少させる一方,中等症では死亡率改善効果は見られなかった.この結果から,SSCG 2012においても2Bで重症例に推奨されるに至る.現在,重症ARDS患者に限定したRCTであるProseva study(NCT00527813)が進行中である.

 ただし,腹臥位療法には褥瘡,気管チューブの詰まり,ドレーンが抜ける,循環動態に影響を与えるなどの合併症が増えることや,スタッフの仕事量も増えることもあり,経験の豊富な施設での施行が望ましい.これらの問題点を解決するひとつの案として前傾臥位療法が提唱されているが(人工呼吸 2009; 26: 210-7),エビデンスはまだ乏しい.
7.人工呼吸管理中の敗血症患者では,誤嚥のリスクを減らし人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を防ぐため頭部を30-45度挙上することを推奨する(Grade 1B)
 30-45度の頭高位は,米国医療の質改善研究所(IHI;Institute for Healthcare Improvement)が推奨するベンチレータバンドルの項目のひとつであり,その推奨根拠とSSCG 2012の推奨根拠は同じである.

 Drakulovicらによる86例のランドマークスタディ(Lancet 1999; 354: 1851-8)では,VAP発生率は45度頭高位群8% vs 仰臥位群34%であり,頭高位がVAP予防に有用であると報告している.その一方で,van Nieuwenhovenら(Crit Care Med 2006; 34: 396-402)は,人工呼吸中の患者を,頭部45度挙上群と10度挙上群で比較したRCTを行ったところ,VAP発生率に有意差はみられなかった(11% vs 7%).ただし,この研究では,実際には45度を保つことが困難なため,平均28度の挙上レベルしか保たれていなかった.これらから,エビデンスは必ずしも強いわけではないが,30-45度の頭位挙上が推奨されている.
8.敗血症性ARDSでは,非侵襲的マスク換気(NIV=NPPV)の使用による有益性が考慮される場合,およびリスクよりも上回る場合にはNIVを使用してもよい(Grade 2B)
 NPPVによって急性呼吸不全の予後を改善したとする2報のRCT(N Engl J Med 1998; 339: 429-35,Am J Respir Crit Care Med 2003; 168: 1438-44)が提示されている.しかしながら,NIVを使用するには意識状態が保たれていること,循環動態が安定していること,比較的低いレベルのPEEPやプレッシャーサポートで管理できることが条件となっており,その適応範囲は限られる.また,Agarwalら(Respir Med 2006; 100: 2235-8)はメタ解析を行い,ARDSに対するNIVは気管挿管率は低下せず,ICU生存率も改善しないと報告している.本ガイドラインには引用されていない最新の知見として,インフルエンザH1N1pdm2009によるARDS患者に対するNIV早期適用の検討(Minerva Anesthesiologica 2012; 78: 1333-40)では,入院時にSAPSⅡscore>29,P/F<127,NIV開始1時間後P/F<149は挿管・死亡リスク増加と関連していると報告している.軽症ARDS症例に対するNIVと通常マスクを比較検討したZhanら(Crit Care Med 2012; 40: 455-60)による10施設共同40例RCTがあり,挿管を必要とした患者はNPPV群で有意に少なく,軽症ARDS患者に対するNIVは安全に施行できるとしている.以上から,呼吸状態ではP/F比200-300の軽症例のみへの適応が妥当と思われる.

 ただし,NIVには挿管例と比較してVAP発生率が有意に低いことが多数報告されており,Hessらの急性呼吸不全に関連するシステマティックレビュー(Respir Care 2005; 50: 924-9)も示している通りである.
9.人工呼吸管理中の重症敗血症にはウィーニングプロトコルを適用し,以下の基準を満たしたときに人工呼吸を離脱できるかどうか定期的に自発呼吸試験(SBT)で評価を行うことを推奨する.
a) 覚醒できる
b) 血行動態的に安定している(昇圧剤を使用していない)
c) 新たな潜在的重症合併症がない
d) 換気量やPEEPの必要度が低い
e) マスクや鼻カヌラによる酸素投与でも安全なレベルまでFiO2必要度が低い
もし自発呼吸試験が成功すれば抜管を考慮すべきである(Grade 1A)
 SBTは低レベルのプレッシャーサポート,CPAP(≒5cmH2O),Tピースの使用などを含む.適切に患者を選択し,毎日SBTを行えば人工呼吸器装着期間が短縮されることが報告されている(N Engl J Med 1996; 335: 1865-9,N Engl J Med 2000; 342: 1471-7).この呼吸テストは覚醒テストと共に施行されるべきである(Lancet 2008; 371: 126-34)

 本ガイドラインの根拠にプロトコル化は触れられていない.SBTをプロトコル化して運用することには賛否両論がある.すなわち,プロトコルを用いて看護師,呼吸療法士が主導でweaningを行う方法と医師主導のweaningを行う方法のいずれがよいか,であるが,プロトコル化の方が有用であるという報告が増えているのは事実であり,集中治療医が不在のopen ICUではプロトコル化が推奨されるかもしれない.1993-2009年に行われた11報のRCTのシステマティックレビュー(BMJ 2011; 342: c7237)では,プロトコルを用いて離脱した方が人工呼吸器装着期間を25%,離脱期間を78%,ICU滞在期間を10%短縮したと報告されている.

 問題はSBTの開始基準であるが,2001年のACCP/AARC/ACCMガイドライン(Chest 2001; 120: S375-95),2005年の集中治療国際会議でのコンセンサス(Eur Respir J 2007; 29: 1033-56),ARDS Networkによる推奨などがある.これらの有用性を直接比較検討したstudyはないが,各文献で示されたSBT失敗率,再挿管率に大きな差はない.離脱可能の予測因子に精度が十分に高いものはないが,rapid shallow breathing index(RSBI)と気道閉塞圧(P0.1)が比較的信頼性が高いとされる(Chest 2001; 120: S400-24)
10.敗血症性ARDS患者に肺動脈カテーテルをルーティンでは使用しないことを推奨する(Grade 1A)
 肺動脈カテーテル(PAC)は画期的モニタリングとして登場し,敗血症においても使用されるようになったが,1995年のGattinoniら(N Engl J Med 1995; 333: 1025-32)の報告で予後改善効果が否定されたのを皮切りにPACが無効とする報告が相次いだ.Cooperらの36報のメタ解析(Crit Care Clin 1996; 276: 889-97)では,19報で有効,17報で無効,レベルの高い第希望多施設共同RCTは上記Gattinoniらの無効とする報告のみであった.

 2000年に入ってからも無効とする報告は続き,ARDS NetworkによるPACとCVCを比較した1000例のRCT検討(N Engl J Med 2006; 354: 2564-75)ではARDSに対する水分制限には有用であったが,死亡率に有意差はなかったと報告している.一方,2つの大規模コホート研究(Crit Care Med 2004; 32: 911-5,Crit Care Med 2006; 34: 1597-601)では重症例においてPAC使用が生存率改善に寄与したと報告している.13報のRCTのメタ解析(JAMA 2005; 294: 1664-70)では重症例に対するPACは死亡率を増加させないが明らかな利益ももたらさないと結論づけられている.また,PAC挿入による侵襲性も考慮する必要がある(JAMA 2003; 290: 2713-20)

 敗血症性ARDSに対してPACを挿入することによるメリットはCVCと変わらず,コストのことを考慮するとルーティンでは用いるべきではない.ただし,PACが有用と推察される患者を適切に選択した場合においてはPACを挿入することも考慮してよい(JAMA 2005; 294: 1664-7,Cochrane Database Syst Rev 2006; CD003408).例えば,重度の低心機能状態や大動脈弁狭窄症などを重症敗血症に合併した症例においてはPACは推奨されうるかもしれない.これは,低心機能状態や重症ASにおいては輸液許容領域が狭く,コントロールが困難であるからである.
11.組織低灌流の根拠がない敗血症性ARDS患者に対する保存的輸液戦略(輸液をおさえる)を推奨する(Grade 1C)
 ARDS滲出期は肺毛細血管内の静水圧が上昇することでさらに悪化する可能性があるため,適切な輸液管理が必要となる.実際,肺血管外水分量と肺血管透過性亢進は死亡に関連すると報告されている(Crit Care Med 2013; 41: 472-80).ARDS NetworkによるFACTT(N Engl J Med 2006; 354: 2564-75)では,輸液を絞った群(7日目in/outバランス -136±491mL)は通常輸液群(7日目in/outバランス 6992±502mL)と比較して60日死亡率に有意差はなかったが,酸素化が有意に改善し,人工呼吸器を必要とする日数が有意に短縮した.ただし,この研究では,輸液管理をICU入室後平均43時間,ARDS診断後24時間経過してから開始され,開始後も血行動態が不安定な場合は積極的に輸液を行っている.

 よって,ARDSでは必ずしも全例で輸液を絞るというわけではなく,ショック等の血行動態不安定例では血管内容量が減少し,心拍出量低下,組織低灌流が生じているため,輸液負荷による充填で臓器不全進行を抑える必要がある.その後,ショック離脱,組織低灌流が解除された場合は輸液を絞るという戦略が必要となってくる.血行動態が落ち着いているARDSの場合,FACTTではCBP<4mmHg,PAWP<8mmHgを目標として輸液管理を行うことでアウトカムが改善している.
12.気管支痙攣のような特異的な適応がなければ,敗血症性ARDSではβ2刺激薬を治療として使用しないことを推奨する(Grade 1B)
 β2刺激薬が肺胞での肺水腫再吸収を促進する作用があることが研究で知られていた.そこで,ARDS NetworkがARDS患者に対するβ2刺激薬(アルブテロール)の有効性を検討した多施設共同プラセボ対照RCT(Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 561-8)を行い,人工呼吸器離脱期間,退院前死亡率などの予後に有意差は認めず,ICU滞在日数はむしろβ2刺激薬吸入群の方が長かったとしている.さらにその後報告されたBALTI-2(Lancet 2012; 379: 229-35)では,ARDSに対するサルブタモールの7日間点滴投与で死亡率が増加したと報告されており,これらの結果からARDSに対してはβ2刺激薬は推奨されない方針となった.
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by DrMagicianEARL | 2013-02-11 14:25 | 敗血症 | Comments(0)
L.免疫グロブリン製剤(Immunoglobulins)
重症敗血症,敗血症性ショック患者において免疫グロブリン注射製剤は使用すべきではない(Grade 2B)
 免疫グロブリン注射製剤(IVIG)使用を推奨している日本版敗血症診療ガイドラインとは真逆の扱いとなった.

 成人624例を登録した1つの大規模多施設共同RCTであるSBITS study(Crit Care Med 2007; 35: 2693-701),小児3493例を登録した1つの大規模多施設共同RCT(N Engl J Med 2011; 365: 1201-1)ではIVIGの有効性は否定されている.IVIGに関するコクランのメタ解析(Cochrane Database Syst Rev 2002; 1: CD001090)ではポリクローナルIVIGに関する10報1430例とIgM濃厚ポリクローナルIVIGに関する7報528例を解析している.この報告は2002年のものであり,当然ながら上記2つの大規模研究を含んでいない.このメタ解析ではIVIG,IgM濃厚IVIGはそれぞれ死亡リスクを29%,34%有意に低下させていたが,バイアスリスクの低い報告に限定すると,IVIGの死亡リスク減少効果は消失した.この結果はその後報告されたPidalら(Clin Infect Dis 2004; 39: 38-46),Lauplandら(Crit Care Med 2007; 35: 2686-92)のメタ解析でも同様の結果となっている.

 以上より,IVIGの有効性を示した報告は小規模かつ研究の質が低いものであり,質の高い研究やSBITS studyのような大規模研究では有効性は否定されており,現時点でIVIGを敗血症を推奨する根拠は乏しいことからSSCG 2012では使用すべきでないと結論づけられた.

 これに対し,2012年日本版敗血症診療ガイドラインでは,死亡率改善効果は認められないものの,人工呼吸器装着日数短縮やICU生存率の改善効果があるとして使用を考慮してもよいとしている.これはSBITS studyの結果をそのまま反映したものである.なお,この日本版ガイドラインではIVIGのエビデンスのlimitationとして,これまでのIVIGのエビデンスはSSCG 2004以前の報告がほとんどであり,敗血症標準治療が異なる可能性があることを指摘している.実際,死亡率改善効果を認めなかったSBITS studyも2007年に報告されたものであるが,trialの期間は1991-95年である.

 ただし,SBITS studyと日本の現状の大きな違いは,IVIGの投与量にある.SBITS studyでは第0病日と第1病日に総量0.9g/kg(体重50kgなら総量45g)が投与されており,日本の投与量は5g/dayを3日間(総量15g)であり,3分の1に過ぎない.また,SBITS studyに限らず海外のRCTでの投与量は0.15-0.5g/kg/dayであり,海外のエビデンスをもって日本に適応させることは困難であり,SBITS studyで示された人工呼吸器装着期間短縮やICU生存率改善効果が日本の用量で得られるかは不明なはずである.また,海外で比較的有効性を示しているのはポリクローナルIgM濃厚IVIGでの報告に多く,これに対し日本のIVIGはIgGを抽出している.

 日本の投与量での研究としては2000年の正岡ら(日化療会誌 2000; 48: 199)の682例非盲検RCTがあり,発熱や症状に関してIVIGが有意に改善効果を認めたとしている.しかしながら,この研究の対象である「重症感染症」の定義が明確でなく,アウトカムも死亡率ではなく解熱や症状といったあいまいなものになっていること,非盲検であることから,エビデンスの質はかなり低く,本邦用量でのIVIGの有用性には大きな疑問が生じる.日本版ガイドラインではこの他に,2007年に日本集中治療医学会が行った第1回Sepsis Registry調査結果を提示しており,この報告では,敗血症患者において傾向スコアマッチング解析を行い,投与量は15g/3日間と少量ながら28日死亡率,院内死亡率に有意な改善がみられたとしている.ただし,これはあくまでも後ろ向き解析である.

 以上より現在の敗血症のスタンダード治療において日本の用量のIVIGが有効であるかについてはほぼエビデンスがない状況であり,高額な薬剤であることや,SSCG 2012とは別に本邦でのIVIGの現状を考慮しても,その使用を推奨する根拠は乏しいと思われる.

M.セレン(Selenium)
重症敗血症の治療においてセレン経静脈投与は行うべきではない(Grade 2C)
 セレン注射製剤は本邦では未承認製剤であるため使用できない.セレンは生体内ではセレノシステインとしてタンパク質に組み込まれ,主にセレノプロテインとして働き,ビタミンEやビタミンCと協調して,活性酸素やラジカルから生体を防御すると考えられている.ヒトではセレン単独の欠乏症状が見られない.したがって,セレン欠乏は欠乏症の二次的な要因となると考えられている.すなわち,ビタミンEなどと協調してはたらくため,両栄養素の欠乏症状の相乗作用により現れると考えられている.高度侵襲化においてはセレンの生体内レベルが低下することが知られている.

 しかしながら,セレンの臨床効果についてはいくつかのRCTが存在するものの,そのエビデンスは極めて弱い.1つだけ重症SIRS,敗血症,敗血症性ショックについて検討した大規模な臨床試験(Crit Care Med 2007; 35: 118-26)があるが,死亡率改善効果は認められなかった.また,セレン,グルタミンを評価したSIGNET trial(Trials 2007; 8: 25)でも死亡率改善効果は認めていない.

 一方,メタ解析ではHeylandら(Intensive Care Med 2005; 31: 327-37)があり,死亡率の有意な改善を認めた.この報告では,単独投与であれ他の抗酸化物質との組み合わせであれ,セレンの経静脈投与が死亡率の鍵を握ると結論している.また,12報RCTのメタ解析(PLoS One 2013; 8: e54431)では,セレンの経静脈投与で敗血症による重症患者の死亡リスクが17%低下したと報告されている.現在カナダ・米国・欧州で進行中のREDOXS study(Proc Nutr Soc 2006; 65: 250-63)は,このセレンに焦点をあて,グルタミンとの併用の効果を含めて検討している.セレンの有効性についてはこのREDOXS studyの結果を待つべきであろう.

N.遺伝子組み換え活性化プロテインCに関する推奨の歴史(History of Recommendations Regarding Use of Recombinant Activated Protein C)
 イーライ・リリー社が販売していた遺伝子組み換え活性化プロテインC(rAPC,商品名XIGRIS®)はPROWESS tiral(N Engl J Med 2001; 344: 699-709)を皮切りに敗血症に対する有効な治療薬として世界に広まり,SSCG 2004でも推奨されていたが,その効果と安全性に疑問がもたれ,2011年のPROWESS-SHOCK trial(N Engl J Med 2012; 366: 2055-64)の結果を受けて市場撤退となった.このため,SSCG 2012では推奨項目から消滅し,その推奨してきた歴史を提示している.

 この歴史提示で触れられていないが,rAPC製剤が広まるに至ったPROWESS trialについてはNEJM誌発表から半年後に米国FDAにより,研究途中でプロトコルを変更していること,rAPC製剤の工場生産ラインが研究途中で変更されていること,rAPCの治療効果に経時的変化が認められることなどの問題点を指摘しており,実際に初期プロトコルの患者に絞った解析では有効性が認められなかった.また,イーライ・リリー社はSSCG作成におけるオフィシャルスポンサーでもあった.

 その後,PROWESS tiralと比較するために行われたオープンラベル単一アーム研究であるENHANCE trial(Crit Care Med 2005; 33: 2266-77),重症敗血症であるが死亡リスクの高くない患者を対象としたADDRESS(N Engl J Med 2005; 353: 1332-41),小児での有効性・安全性を検討したRESOLVE trial(Lancet 2007; 369: 836-43)などが行われている.これらのrAPCの検討結果では,早期開始例で死亡率が低い,重篤な出血性合併症はPROWESSで報告された頻度より高い,APACHEⅡscoreが25未満の比較的軽症な重症敗血症患者では死亡率改善効果はなく重篤な出血性合併症が多かった,小児においては有効性なし,というものであった.

 rAPCを市場撤退に追い込んだPROWESS-SHOCK trialは,敗血症性ショック患者1697例におけるリコンビナントAPC製剤投与群とプラセボ群を比較した多施設共同二重盲検RCTであり,28日死亡率は26.4% vs 24.2%で有意差は認められなかった(RR 1.09, 95%CI 0.92-1.28, p=0.31).90日死亡率でも34.1% vs 32.7%で有意差は認められなかった(RR 1.04, 95%CI 0.90-1.19, p=0.56).

 市場撤退後もrAPCの報告は出続けている.Casserlyらの後ろ向きコホート研究(Crit Care Med 2012; 40: 1417-26)は,165地域15022例(8%がrAPC投与)の解析を行ったものであり,敗血症診断の24時間以内に投与を開始した症例では死亡率は45%減少させていたと報告している.また,kalilら(Lancet Infect Dis 2012; 12: 678-86)によるrAPCに関する有効性を評価した9報RCT(41401例),16報観察研究(5822例)と,安全性を評価した20報(8245名)のメタ解析では,rAPC製剤を販売中止に追い込んだPROWESS-SHOCK試験を加えても有意に死亡率は低下していたとしている.この報告では重篤な出血は5.6%でみられ,PROWESS試験の3.5%より有意に多かった.

 その一方で,質の高い研究に絞った2つのメタ解析も報告されている.Laiら(Minerva Anestesiol 2013; 79: 33-43)は,.rAPC製剤に関するRCT5報のメタ解析のupdateを行い,rAPCは重症敗血症,敗血症性ショックにおける28日死亡率を改善せず,重度の出血と関連していたと報告している.また,Martí-Carvajalらコクランレビューによるメタ解析(Cochrane Database Syst Rev 2012; 12: CD004388)では,6報(小児1報含む)のRCTを解析しており,重症敗血症・敗血症性ショックでrAPC製剤に死亡率改善エビデンスはなく,重症出血リスクは1.45倍であり,使用すべきではないと結論づけている.

 rAPC製剤自体は抗炎症効果を示すものの,生理的範囲を越えて作用してしまうリスクを伴う.敗血症治療の進歩による死亡率低下がrAPCの死亡率改善効果を消滅させた可能性も残ってはいるが,現時点での敗血症治療においては不要かもしれない.

 なお,rAPC製剤は本邦では承認されなかった薬剤であるが,類似する薬剤として遺伝子組み換えトロンボモデュリン製剤(rTM,商品名リコモジュリン®)がDIC治療薬として本邦では承認されており,DIC治療薬のシェアとしては約1/3を占めている.しかしながら,国内RCTでは敗血症性DIC離脱率は良好であるが,死亡率を改善したとするエビデンスは存在しない.RCT以外では大阪大学の後ろ向き傾向スコア層別解析研究(Yamakawa K, et al. Intensive Care Med 2013 Jan. 30),前後比較研究(J Trauma Acute Care Surg 2012; 72: 1150-7)の2報や,後ろ向きコホート研究(Thromb J 2013; 11: 3)があり,いずれもrTMで有意な死亡率低下を認めている.海外ではPhaseⅡを通過しており,現在PhaseⅢが開始され,rAPC製剤に代わる敗血症治療薬として注目されてきている.ただし,このPhaseⅢは,敗血症性DICではなくPT-INR>1.4の敗血症性凝固障害を対象としており,これはPhaseⅡのサブ解析に基づいている.PhaseⅢはPhaseⅡより治療効果が落ちやすく(BMJ 2013; 346: f457),PhaseⅡでは死亡率に減少傾向が認められたものの有意差がついていないことを考慮すると,期待された効果がでるかは疑問である.

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by DrMagicianEARL | 2013-02-06 18:09 | 敗血症 | Comments(0)
I.強心薬療法(Inotropic Therapy)
1.以下の場合,ドブタミンを投与開始または(使用しているなら)昇圧剤に追加して20μg/kg/minまで投与することを推奨する.(a) 心充満圧は上昇しているが低心拍出状態が疑われる心筋機能障害,(b) 適切な血管内容量と適切な平均動脈圧であるにもかかわらず,組織低灌流徴候が持続している場合(Grade 1C)
 1Cで強く推奨されてはいるが,RCTレベルでドブタミンが有効とするエビデンスは依然としてない状態にある.昇圧剤の項目で述べた通り,敗血症におけるβ刺激薬の有害性機序が多数報告されており,ドブタミンの作用により頻脈や血圧低下が生じてしまう可能性もある.このこともあって,日本版敗血症ガイドラインではドパミン,ドブタミンは使用に値せずとしてか推奨項目において名前すら挙げられていない.むしろ近年はesmorolに代表されるβ遮断薬が死亡率を改善させる可能性を示唆する報告が増加しているくらいである.

 Wilkmanら(Wilkman E, et al. Acta Anaesthesiol Scand 2013 Jan.8)は,420例の敗血症性ショック患者の後ろ向き解析を行い,陽性変力薬(90.3%がドブタミン)を受けた患者は90日死亡率が有意に高く(42.5% vs 23.9%, p<0.001),傾向スコア調整後も有意な死亡リスク因子であったと報告している.また,肥大型心筋症,特に左室流出路狭窄がある場合は,投与により僧帽弁のsystoloc anterior mortion(SAM)が発生し,僧帽弁逆流が生じるため禁忌となる.
2.規定された正常を上回る心係数にするための強心薬使用は行わないことを推奨する(Grade 1B)
 2つの前向き臨床試験(N Engl J Med 1995; 333: 102-32,N Engl J Med 1994; 330: 1717-22)が推奨根拠として提示されている.

J.コルチコステロイド(Corticosteroides)
1.適切な輸液蘇生と昇圧剤治療で血行動態安定性(初期蘇生目標を参照)を回復できるのであれば,成人敗血症性ショック患者の治療としてのヒドロコルチゾン静脈内投与は使用すべきではない.血行動態安定化が達成されない場合は,ヒドロコルチゾンのみを200mg/dayの用量で投与してもよい(Grade 2C)
 合成グルココルチコイドは一部の細胞には確かに抗炎症作用を導くものの,敗血症病態においては効力を示しにくい.この理由として,合成グルココルチコイドは,グルココルチコイド受容体を発現させる細胞にのみ作用が限定されること,細胞選択性がないこと,敗血症進行の過程でグルココルチコイド受容体は発現量を減少させること,などが挙げられる.ステロイド投与量を増加したとしても,グルココルチコイド受容体が存在しない以上,炎症が生じている臓器細胞(Alert Cell)の炎症性サイトカインを抑制することはできず,結果的にはグルココルチコイド受容体の発現する白血球系細胞にアポトーシスを誘導し,感染症を増悪させてしまう.しかしながら敗血症においては副腎機能低下が進行し,ショック形成に関与していることを留意する必要があり,ステロイドカバーの役割を担う可能性は残されている.

 敗血症性ショックに対する低用量ステロイド療法は有効とする報告と無効とする報告の両方が複数報告されている.2004年のメタ解析(BMJ 2004; 329: 480-84)では,ステロイドによって28日死亡率,ICU死亡率,入院死亡率が有意に減少し,消化管出血,高血糖,続発性感染などの合併症の増加を認めず,ステロイド使用によりショックの離脱率が高く,昇圧薬の使用期間が短くなることが報告され,これを根拠としてSSCG 2004では低用量ステロイド長期間投与が推奨された.

 一方で,2008年に報告された二重盲検多施設共同RCTであるCORTICUS study(N Engl J Med 2008; 358: 111-24)は症例数が500例と大規模であり,28日死亡率はステロイド投与によって変わらないことが示された.また,ステロイド群では続発性感染,高血糖,高Na血症が有意に高いことが示された.post hoc解析では,12時間以内に薬剤投与された場合でもステロイドの有無で死亡率が変わらないことが示された.この報告を受けて,SSCG 2008では少量ステロイド療法の推奨度がやや後退することとなる.しかしながら,CORTICUS studyには,ベースの患者の重症度が低い,ステロイド投与開始までの時間が長い(=すでに敗血症が軽快している可能性),有意差を出すためにサンプルサイズを800人に設定していたが,期間内に症例を集めることができず500人で終了している,などの問題点が挙げられている.

 一方,2004年のメタ解析が2009年にup-dateされ,少量ステロイド長期投与による死亡率の軽減は,CORTICUS studyを加えても維持されていた(Clin Microbiol Infect 2009; 12: 308-18).また,ステロイド非投与群での死亡率からみた敗血症の重症度とステロイドの効果についても言及し,低用量ステロイドは死亡率が高いと予測される患者(重症患者)では有効となり,死亡率が低いと予測される患者(軽症患者)では害となりうることを示した.これらから,患者の重症度に応じてステロイドを使い分ける必要がある可能性が示唆され,重症度を想定していないSSCG 2004を遵守した場合は,死亡率に有意差はでていない(Intensive Care Med 2010; 36: 222-31)

 根拠には引用されていないが,2012年にCasserlyら(Intensive Care Med 2012; 38: 1946-54)が,2005-2010年の218施設敗血症患者27836名の解析を行っており,低用量ステロイド投与患者の病院死亡リスクは1.18倍,ショック後8時間以内に早期投与された例では1.23倍有意に増加していたと報告している.
2.成人の敗血症性ショック患者にヒドロコルチゾンを投与すべきかどうかを判断するためにACTH負荷試験は行うべきではない(Grade 2B)
 CORTICUS studyも2009年のメタ解析も,ACTH反応性有無にかかわらず効果は変わっていない.

 外傷や全身性炎症の急性期管理に用いられる薬物の中には,副腎機能を低下させる可能性のある薬物がある.ベンゾジアゼピン系鎮静薬やオピオイドはACTHの放出を抑制し,副腎皮質からのコルチゾル分泌を抑制する可能性がある.また,抗真菌薬であるケトコナゾールやフルコナゾール,シクロスポリン,フェニトインなどはコルチゾル分解を促進させる.また,コルチゾル担体であるコルチコステロイド結合グロブリンは好中球エラスターゼの基質であり,好中球エラスターゼによりコルチコステロイド結合グロブリンが切断されるため,フリー体のコルチゾルの遊離が高まる.このため,局所炎症では好中球の浸潤によりコーチゾルレベルが高まり,細胞保護が合理的に行われているが,侵襲的手術や敗血症のように好中球エラスターゼレベルが血中で上昇する病態では,炎症部位へのコーチゾル運搬が障害される.敗血症性ショックや多発外傷ではアルブミンのみならずコルチコステロイド結合グロブリンが低下し,コルチゾルの血漿消失半減期が短縮することも知られている.

 ACTH刺激試験において計測されるコルチゾルは総コルチゾルであり,フリーコルチゾルではない.血中のコルチゾルは通常90%が蛋白結合型の不活性型であり,活性を持つのは残りの10%のフリーコルチゾルである.ところが,敗血症などの重症疾患ではフリーコルチゾルの割合が50%にまで増加する.しかし,特にアルブミン低下が著明な(<2.5 g/dL)重症患者では,フリーコルチゾルが正常または増加しているにもかかわらず,総コルチゾルは低く測定されてしまう.以上から,総コルチゾール測定では副腎機能低下を判定することは不正確であり,フリーコルチゾルの測定結果もすぐに得られない上に重症患者での基準値が明確でないという問題点から,ACTH刺激試験を行う意義は乏しい.
3.昇圧剤が既に不要である場合は,ステロイド療法を漸減させてもよい(Grade 2D)
 一定期間の治療プロトコルを使用したRCTは3報,ショック改善後の減量についてのRCTは2報あり,これらのうち4報では数日間でステロイド漸減を行っている.また,RCT1報を含む2報の研究ではステロイドを中断している.1つのクロスオーバー試験においてステロイドの突然の中断による血行動態的・免疫学的なリバウンドを示している.また,1つの研究で敗血症性ショック患者に対する低用量ヒドロコルチゾン使用期間は3日間と7日間で予後に有意差がなかったと報告している.これらの根拠から,突然の中断は好ましくないため漸減療法がbetterであるが,投与期間に関しては明確な基準がない.
4.ショックでない敗血症治療においてはコルチコステロイドを投与しないことを推奨する(Grade 1D)
 本項目に関しては明確な根拠となる文献はないが,非ショック病態の敗血症において投与するメリットを示す報告はなく,現時点で副作用を上回る利益を得る可能性は低いと思われ,現時点では必要性は乏しく,投与しないのが妥当と思われる.

 一方で,肺炎におけるステロイド投与が議論されており,本ガイドラインの根拠においてもステロイドが有効であるとした2つの報告(Am J Respir Crit Care Med 2005; 171: 242-8,Lancet 2011; 377: 2023-30)を引用している.6報437例のコクランのメタ解析(Cochrane Database Syst Rev 2011; 3: CD007720)では死亡リスク減少効果は認められなかったが,症状改善までの期間を短縮したとしている.ただしそのエビデンスの強さは十分ではないと付け加えている.現在肺炎に対するステロイドの効果を検証する大規模studyであるESCAP(e) studyが行われている.
5.低用量ヒドロコルチゾンを投与する際は,反復ボーラス投与よりも持続投与を行うべきである(Grade 2D)
 いくつかのRCTにおいて敗血症性ショック患者に対する低用量ヒドロコルチゾン投与は,副作用として有意に高血糖・高ナトリウム血症をきたすことが知られる(JAMA 2002; 288: 862-71).また,小規模研究ではあるが,反復ボーラス投与が持続投与よりも高血糖をきたしやすいことも報告されている(Intensive Care Med 2007; 33: 730-3)

K.血液製剤投与(Blood Product Administration)
1.組織低灌流が改善し,心筋虚血や重度の低酸素,急性出血,虚血性心疾患などの考慮すべき懸念がなければ,成人ではヘモグロビン7.0g/dL未満の場合において7.0-9.0g/dLを目標に赤血球輸血を行うことを推奨する(Grade 1B)
 重症敗血症患者において最適なHb濃度は分かっていない.TRICC trial(N Engl J Med 1999; 340: 409-17)では目標値Hb 10-12g/dLの輸血非制限群と比較して目標値7-9g/dLの輸血制限群は死亡率が低い傾向にあったが,統計学的に有意な差ではなかったと報告されており,また,重症感染症や敗血症性ショックの患者に限定したサブ解析でも30日死亡率に有意差はなかった.

 しかし,CRITT trialのその他のサブ解析について本ガイドライン根拠では触れられていない.TRICC trialにおいて,APACHEⅡスコア≦20の軽症患者,55歳未満の患者層,院内死亡率のそれぞれでサブ解析を行うと,輸血制限群の方が有意に死亡率が低い結果となった.その後,Vincentらの大規模観察研究ABC study(JAMA 2002; 288: 1499-507)が行われ,輸血が死亡率を高めると結論付けている.一方,VincentらはSOAP studyの輸血に関するデータベースの解析を行い(Anesthesiology 2008; 108: 31-9),傾向スコア解析で輸血と死亡率に関連性がないとしている.Marikらのシステマティックレビュー(Crit Care Med 2008; 36: 2667-74)では,輸血は死亡に関連する独立因子(OR 1.7, 95%CI 1.4-1.9)であり,院内感染を含む感染性合併症やARDS,多臓器不全の危険因子となることも示している.

 Leal-Novalら(Intensive Care Med 2012 Nov.27)は,非出血性の中等度貧血(Hb 7.0-9.5)がある重症患者428例の後ろ向きペアマッチングコホート研究を行い,赤血球輸血群が非輸血群より死亡率,ICU再入室率,院内感染率,急性腎傷害が有意に高いことを示している.輸血投与開始基準としてのHb値は高値がいいか低値がいいかを検討した19報RCT6000例のメタ解析(JAMA 2013; 309: 83-4)では,低値群の方が30日死亡率が15%低い結果となっている.これらのことから,日常診療では感じにくいが,輸血投与にはリスクが伴うことを周知しておく必要がある.

 一方,敗血症に限定した研究では,韓国22施設ICUの1450例の傾向スコアマッチング解析を行ったParkら(Crit Care Med 2012; 40: 3140-5)の報告があり,低リスクの重症敗血症/敗血症性ショック患者に対する輸血により7日死亡率,28日死亡率,院内死亡率のすべてが約50%低下していた.今後は敗血症における前向き研究が望まれるが,現時点では輸血リスクを考慮し,上記推奨項目通りの施行がbetterであると思われる.
2.重症敗血症による貧血の特異的治療としてのエリスロポエチンは使用しないことを推奨する(Grade 1B)
 重症患者の貧血の原因のひとつにエリスロポエチン(EPO)産生低下があり,ICUで輸血を減らすためにもEPO製剤投与が推奨されるが(Crit Care Med 2009; 37: 3124-57),敗血症ではEPOは推奨されていない.

 EPO投与についての多施設二重盲検RCTは3つ(Crit Care Med 1999; 27: 2346-50,JAMA 2002;288: 2827-35,N Engl J Med 2007; 357: 965-76)あり,2つは死亡率に有意差なし,1つはEPO群が有意に死亡率を低下させたが,EPO群において血栓性合併症発症リスクが有意に高くなることも判明し,EPO使用は安全性という点で懸念されることとなった.これらの結果やEPO試験のメタ解析(CMAJ 2007; 177: 725-34)から,腎不全による赤血球産生能低下に対してはEPO投与を考慮してもよいかもしれないが,重症敗血症に合併する貧血の特異的治療法としてはEPOを使用すべきではない.
3.出血や侵襲的な処置の予定がなければ、凝固異常補正を目的とした新鮮凍結血漿(FFP)の投与は行うべきでない(Grade 2D)
 ここはDICの積極的治療を行う日本とDICの概念に乏しい海外とで意見の分かれるところかもしれない.FFPの投与は軽度の凝固異常(PT INR 1.10-1.85)のある非出血性患者においては99%の患者でプロトロンビン時間が補正されなかったことが報告されている(Transfusion 2006; 46: 1279-85)こと,非出血性の重度凝固異常のある患者でのFFPによる補正に関する研究がなされていないことが本項目の根拠である.これに対して本邦では敗血症患者でも重症例でのDICにおいては経験的にFFPの投与を行っている施設は多い.その目的として,凝固因子補充や,ADAMTS13の輸注が挙げられるが,敗血症性DICにおいてFFPが臨床アウトカムを改善した報告はなく,日本版敗血症診療ガイドラインのDICの項目においても,「著明な出血傾向のある症例で,APTTが正常の倍以上,あるいはPT-INRが2倍以上に延長している場合に適応となる」と明記されている.

 FFPで注意しなければならない有害事象に,輸血の死亡原因となる輸血関連急性肺傷害(TRALI)もあり,血漿中の抗白血球抗体などの液性成分が発症に関与する機序も明らかとなっている.近年の前向き研究(Crit Care Med 2007; 176: 886-91)では全輸血患者のうち8%が輸血後6時間以内にTRALIを発症し,特に敗血症患者で発症率が高かったと報告されている.
4.重症敗血症,敗血症性ショックの治療においてアンチトロンビン製剤は投与すべきではない(Grade 1B)
 これもDICの概念が乏しい海外ならではの推奨項目であり,その根拠は,DIC有無関係なしにアンチトロンビン製剤(AT)を敗血症患者に投与した2314例の多施設共同二重盲検RCTであるKyberSept study(JAMA 2001; 286: 1869-78)に基づく.この報告ではAT投与群と非投与群とで28日全死亡率に有意差がなかった.サブ解析では,ATへのヘパリン併用が出血リスク増大に関連おり,ヘパリン非併用群では死亡率が改善していた(J Thromb Haemost 2006; 4: 90-7).また,DICを合併していた重症敗血症例ではATが90日後の予後を改善させていた(Crit Care Med 2006; 34: 285-92)

 以上から,ATには敗血症性DICでの有効性が残されているものの,そのエビデンスはあくまでもサブ解析に過ぎず,前向きRCTが必要である.また,KyberSept studyのAT用量は30000単位を4日間かけて投与しており,本邦の1500単位3日間投与という基本レジメンが予後を改善するのか,あるいはATを何%まで回復すれば予後が改善するのか,ということに関してはエビデンスがない状況にある.
5.重症敗血症の患者においては,明らかな出血がない患者では血小板10000/mm^3未満の場合に血小板輸血を行い,明らかな出血のリスクがある患者では血小板20000/mm^3未満で血小板輸血を行ってもよい.活動性出血のある患者,外科的処置や侵襲的処置を行う患者では血小板数が50000/mm^3以上あることが望ましい(Grade 2D)
 凝固障害をきたしやすい敗血症においては血小板輸血は慎重に考える必要があり,高いレベルの血小板数を目標としてはならない.敗血症性DICの場合は,リコンビナント・トロンボモデュリン製剤やアンチトロンビン製剤が投与されていない状況で血小板輸血を行うと臓器障害が悪化する可能性がある.また,難治性の敗血症性DIC病態においてはvon Willbrand Factor切断酵素であるADAMTS13が枯渇している可能性があり,血栓性血小板減少症(TTP)に類似した状態になっている可能性があり,血小板輸血は極めて慎重に行うべきである(Thromb Res 2010; 125: 6-11).また,ヘパリン起因性血小板減少症では血小板輸血は禁忌である.
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by DrMagicianEARL | 2013-02-05 16:55 | 敗血症 | Comments(0)
G.重症敗血症の輸液療法(Fluid Therapy of Severe Sepsis)
1.重症敗血症・敗血症性ショックの蘇生では初期輸液の選択として晶質液(crystalloids)を推奨する(Grade 1B)
 循環動態を回復させる初期輸液においては晶質液がベースとなるが,膠質液をそこに併用するかは長年議論されており,実臨床においては併用している施設も多い.膠質液を用いるメリットは血管内ボリュームの早期改善とその効果の持続性が理論上指摘されている.その一方で,膠質液にはコストの問題点があり,安価な晶質液でも十分量投与すれば膠質液と同等の効果があり,副作用も少ないとされている.ただし,Jacobら(Crit Care 2012; 16: R86)は,心肺機能が健全な成人で純粋な血管内容量不足に対して3倍量の乳酸リンゲル液による置換では血管内容量を正常に維持することはできず,維持するためには5倍量は必要であると報告している.

 過去の報告では2つのメタ解析で晶質液と膠質液では予後に有意差はないと報告されており(Crit Care Med 1999; 27: 200-10,Ann Intern Med 2001; 135: 205-),これにコスト面を踏まえてSSCG 2008では晶質液を第一選択としていた.その後,2011年にSAFE studyのサブ解析(Intensive Care Med 2011; 37: 86-96)が報告され,重症敗血症への輸液負荷時は生理食塩水と比較してアルブミン投与が腎障害やその他臓器障害を起こさず死亡率を減らす可能性が示唆されたが,SSCG 2012でも晶質液を第一選択とする方針は変わっていない.実際,このエビデンスもあくまでもサブ解析であり,新たな大規模RCTが必要である.RCTではないが,Bayerら(Crit Care Med 2012; 40: 2543-51)の前向き検討の報告では,敗血症性ショックにおいて膠質液の使用は必要とする蘇生輸液量がわずかに少ない程度であり,ショックからの回復は合成膠質液でも晶質液でも同様に早く達成できるとしている.

 どの種の輸液製剤が敗血症において優れているかというエビデンスはないが,そもそも研究した大規模スタディが少ない.生理食塩水は最も安価という利点がある一方で,大量急速投与で血中の重炭酸イオン濃度を希釈し,希釈性代謝性アシドーシスを起こしうる.また,高クロール血症も伴うと,重炭酸イオンはさらに減少し,代謝性アシドーシスが持続することがある.

 乳酸加リンゲルは,臨床的に乳酸が蓄積するような敗血症病態であっても,末梢組織の酸素代謝が改善して血中乳酸値が低下することから,ショック時でも頻用されている.その理由として,乳酸イオンそのものが生理的な物質であること,乳酸イオンも重炭酸イオンと同じくアルカリ化剤であること,他のリンゲル液に比して安価(118円)であることが挙げられる.健常人において乳酸加リンゲル1Lを1時間負荷したtrialでは,乳酸値は上昇しなかったと報告されている(Crit Care Med 2012; 25: 1851-4).一方で,乳酸代謝半減期は30分であるが,生体の代謝速度を上回る量が投与された場合は乳酸加リンゲル液投与による高乳酸血症を起こすことであり,特に肝不全や敗血症性ショックでは注意が必要である.また,乳酸加リンゲル大量輸液により,乳酸イオンの過剰負荷によるアルカリ化作用でショック回復後2-3日して高度の代謝性アルカローシスを起こすことがある.乳酸加リンゲルの問題点を解決したのが酢酸加リンゲルである(175円).さらに,細胞外補充液の中で最も生理的である重炭酸加リンゲルがあるが,高価(269円)であるのが難点である.以上の3種の細胞外補充液は,高価なものほどショック病態に向いてはいるが,実際の臨床的有意差は明らかではない.
2.重症敗血症,敗血症性ショックの輸液蘇生においてヒドロキシエチルスターチ(HES)を用いないことを推奨する(Grade 1B)(この推奨はVISEP,CRYSTMAS,6S,CHESTのtrialの結果に基づいている.最近終了したCRYSTALの結果は考慮していない).
 HESには凝固・止血機能障害,アナフィラキシー様反応,腎障害の懸念があり,特に腎障害が有意に増加したとする報告は多い.また,HESを有効とした報告の多くにかかわっていたのがBoldt J氏であるが,2009年に同氏が報告した論文が捏造であったことが発覚している(Anesth Analg 2011; 112: 498-500).HESの有効性を検討したメタ解析やシステマティックレビューで解析対象とされた同氏の報告はHESを肯定するものが多く,今後の調査結果次第でさらにHESの有効性は否定的なものとなる可能性がある.

 近年の報告はそのほとんどがHESの有効性を否定し,腎障害リスク上昇を報告している.2012年に報告されたRCTでは,6S Trial Group/Scandinavian Critical Care Trials Groupの報告(N Engl J Med 2012; 367: 124-34)ではHESによる有意な死亡リスク増加と腎障害が報告され,ANZICS trial groupの報告(N Engl J Med 2012; 367: 1901-11)でも腎障害リスク増加が報告されている.これに対し,CRYSTMAS study(Crit Care 2012; 16: R94)はHESの有効性と安全性を示した数少ないRCTの1つではあるが,そのデータを見ると死亡率,急性腎不全発生率に統計学的有意差はないものの,いずれもHES群が絶対差で6%,4.5%高い結果となっている.これらの結果からHESが推奨されないのは当然の流れと言える.

 2013年に入って2つのメタ解析が報告された.Haaseら(BMJ 2013; 346: f839)は,敗血症における6% HES 130/0.38-0.45と晶質液,アルブミンを比較した9報RCT3456例のメタ解析を行い,HESが腎代替療法や輸血の必要性を増加させ,より重篤な有害事象を引き起こすと報告している.Gattasら(Gattas DJ, et al. Intensive Care Med 2013 Feb.14)は,急性疾患の初期輸液蘇生における6% HES 130/0.4-0.42を検討した35報10391例のメタ解析を行い,HESが死亡リスク,腎代替療法を要するリスクをそれぞれ8%,25%増加させると報告している.

 ただし,HESに関するほとんどの報告が6% HES(130/0.4)であり,本邦で使用されているヘスパンダー®,サリンヘス®は海外の報告で使用されたものより低分子の6% HES(70/0.5)であり,報告もなく腎障害の有無などは不明の状態にあり,現時点では本邦では禁忌までとはいかず,慎重投与の状態にある.今後,本邦で使用されている低分子HESの安全性を検討した大規模RCTが必要である.敗血症ではないが,術中出血量1000mL以上の患者846例の後ろ向き解析(Anesth Analg 2012; 115: 1309-14)が東京慈恵医大から報告されており,6% HES(70/0.5)製剤投与は急性腎傷害を増加させず,多変量解析,傾向スコアを用いても急性腎傷害リスク増大は認められなかったとしている.
3.大量の晶質液を必要とする患者では,重症敗血症・敗血症性ショックの初期輸液としてアルブミン製剤を使用してもよい(Grade 2C)
 SAFE studyのサブ解析で重症敗血症において生理食塩水と比較してアルブミン投与が腎障害やその他臓器障害を起こさず死亡率を減らす可能性が示されていることは上で述べた通りである.また,Delaneyらのメタ解析(Crit Care Med 2011; 39: 386-91)では,アルブミン製剤使用は死亡リスクを22%減少させるとしている.ただし,この中で敗血症性ショック患者における大規模多施設RCTにおいては28日死亡率で統計学的有意差はみられず,2Cという低いグレードとなっている.
4.敗血症による組織低灌流と血管内容量減少を有する患者の初期輸液は,晶質液を最低でも30mL/kg以上投与することを推奨する(一部,相当量のアルブミンで代替してもよいかもしれない).患者によってはより急速で,より大量の輸液が必要となるかもしれない(初期蘇生推奨を参照)(Grade 1C)
  2001年にRiversらによって提唱されたEGDTが普及し,敗血症性ショックにおける大量輸液療法がスタンダードとなったものの,輸液過剰は死亡率の上昇と関連する可能性も示唆されており,現在どこまで大量輸液を行うべきなのかが議論となっている.

 Smithら(Crit Care 2012; 16: R76)は前向きコホート研究において成人敗血症性ショックにおける体液量の高値と低値の比較で,初期輸液量は死亡率に関連せず,3日間以上のショック患者においては晶質液,膠質液,血液製剤を含む高用量輸液が90日死亡率の減少に関連していた(高用量40% vs 低用量62%,p=0.03)と報告している.一方,小児ではFEAST trial(N Engl J Med 2011; 364: 2483-95)で敗血症性ショックにおける急速輸液の有害性が示されている.EGDTに関してはHiltonらが初期大量輸液に対する批判をまとめたレビューをだしているが(Crit Care 2012; 16: 302),現時点では結論を出すのは時期尚早であり,敗血症におけるEGDTの有効性を検討している3つの研究(米国のPROCESS,オーストラリア/ニュージーランドのARISE,英国のPROMISE)が進行中であり,この結果で決着がつくものと思われる.
5.初期輸液を動的指標(脈圧や1回心拍出量変化)や静的指標(動脈圧,心拍数)に基づいて血行動態の改善が得られるまで継続する輸液チャレンジテクニックを適応することを推奨する(Ungraded)
 輸液過剰とならないよう,適切な輸液量を推定する様々な方法が多数報告されているが,いずれも小規模RCTで確認されたものばかりであり,大規模で確認されたものはほとんどない.ただ,主流は静的パラメータから動的パラメータにうつりつつあるようであり,その代表例が呼吸変動であり,10年以上有効性の報告が出続けている.本ガイドラインではシステマティックレビューとしてMarikらの報告(Crit Care Med 2009; 37: 2642-7)を推奨根拠に挙げており,この報告では輸液反応性の診断における血圧変化,1回心拍出量変化のオッズ比はそれぞれ59.86(95%CI 23.88-150.05),27.34(95%CI 3.46-55.53)と非常に高い数値となっている.

H.昇圧薬(Vasopressors)
1.昇圧療法は,平均動脈圧(MAP)65mmHgを初期の目標にすることを推奨する(Grade 1C)
 血圧には,収縮期血圧SBP,拡張期血圧DBP,平均血圧MAPの3つの数字があり,重症管理患者におけるそれぞれの臨床的な意義として,SBPは左室後負荷と動脈性出血リスクに関与,DBPは冠血流の決定因子,
MAPは心臓以外の臓器灌流の決定因子となる.血圧が低いことが問題になるのは臓器血流量が減少するからであり,それを決定するのは冠血流を除いてはMAPである.よって,集中治療においてはMAPが最も重視されるべき項目である(Crit Care 2005; 9: 601-6)

 敗血症においてはノルエピネフリンによってMAPを少なくとも65mmHgに維持することで組織灌流を維持できたとする報告(Crit Care Med 2000; 28: 2729-32)がある.また,MAPが60mmHgと28日死亡率の関連が強く,SBPと死亡率の関連閾値は見出せなかったと報告されている(Intensive Care Med 2009; 35: 1225-33)
2.昇圧剤の第一選択としてノルエピネフリン(ノルアドレナリン)を推奨する(Grade 1B)
 輸液でも血圧を維持できず臓器血流量不足が懸念される状況では昇圧剤が必要となってくる.SSCG 2008ではwarm shockにおけるカテコラミン第一選択薬をドパミン(DOA),ノルアドレナリン(NA)のいずれでもよいとしていた.しかしながら,敗血症性ショック初期は末梢血管拡張を特徴としたwarm shockであり,血管トーヌスを戻す目的でのα1受容体刺激が原則とすべきであり,NAを用いることが病態生理学的に理にかなっている.

 DOAでα1受容体刺激を期待するためには10γを越える高用量が必要となり,β受容体という不必要な受容体刺激をしてしまうことを留意しておく必要がある.敗血症性ショックではβ1受容体のdown regulationが生じたり,β1シグナルが阻害されるため,DOAでは陽性変力作用が期待できないばかりか,β2受容体刺激により血管拡張や頻脈が生じ,むしろ昇圧を妨げてしまう.また,細菌にもβ受容体は存在し,DOA,DOB5γ以上の投与で菌増殖やバイオフィルム形成を促進してしまう.加えて,β受容体刺激は,転写因子NF-κBを活性化させ,炎症性サイトカインや血管拡張性物質の産生を高めてしまう.また,マクロファージはβ受容体刺激により泡沫化傾向が高まり,一時的に炎症活性が高まった後に機能不全となることも確認されている.また,β受容体刺激でリンパ球のアポトーシスが進行したり,好中球の遊走能が阻害されることも報告されている.

 これらの機序は以前から指摘されており,臨床においては,2012年には敗血症性ショックにおけるNAとDOAを比較したメタ解析が2報でており(Crit Care Med 2012; 40: 725-30,J Intensive Care Med 2012; 27: 172-8),いずれにおいてもDOAはNAに比して死亡リスクが高い結果となっており,SSCG 2012ではノルアドレナリンが第一選択となった.
3.適切な血圧を維持するため追加薬剤が必要な場合は,(ノルエピネフリンに追加,または潜在的代替薬として)エピネフリン(アドレナリン)を用いてもよい(Grade 2B)
 敗血症性ショックにおいてノルアドレナリンとアドレナリンを比較した研究はCATS study(Lancet 2007; 370: 676-84),CAT study(Intensive Care Med 2008; 34: 2226-34)があり,いずれも死亡率等に有意差はみられなかったが,CAT studyのサブ解析では,敗血症性ショック患者においてアドレナリン投与群で有意に頻脈や乳酸アシドーシスが多かったと報告されている.このことから,ノルアドレナリンを用いても,高度心機能低下によりショックから離脱できない場合に限り低用量のアドレナリンを考慮してもよいかもしれない.
4.平均動脈圧(MAP)を上昇させる,またはノルエピネフリンを減量する目的で,ノルエピネフリンにバソプレシン(0.03U/min)を追加してもよい(Ungraded)
 warm shockの中にはノルアドレナリン(NA)に反応しないケースがある.乳酸蓄積によりATP依存性Kチャネルが開放し,Caが細胞内に流入できず,NOによる血管拡張の働きのみが残ることがあり,この状態はカテコラミン不応性である.このような病態においてはバソプレシンが有効とされている.バソプレシンは血管平滑筋を収縮させ,カテコラミンに対する反応性を改善し,血圧上昇に働く.本来は血圧が下がるとバソプレシンの血液中濃度は上昇する.

 実際に,敗血症罹患初期は血中バソプレシン濃度は一過性に上昇し,その後徐々に低下することが知られている(Crit Care Med 2007; 35: 33-40).一般病棟ではこの低下の時期に敗血症が診断される場合も多い.NAとバソプレシンを比較したVASST study(N Engl J Med 2006; 354: 2564-75)では,28日死亡率に有意差がでなかったが,サブ解析で低用量ステロイド療法を施行しなければならないような難治性warm shockにおいては,バソプレシンはNAより28日死亡率を有意に低下させたと報告している(Crit Care Med 2009; 37: 811-8).実際,カテコラミン抵抗性の患者にNA単独とNA+バソプレシン併用を施行・比較検討したところ,併用した方が頻脈は減少し,平均動脈圧や心拍出量が増加,腸管血流が維持できたと報告している(Circulation 2003; 107: 2313-9).また,バソプレシンには尿量とクレアチニンクリアランスを増加させることが報告されている(Anesthesiology 2002; 96: 576-82).以上より,NAでも改善が得られないwarm shockに対してバソプレシン少量投与追加を検討してもよいかもしれない.
5.敗血症による血圧低下に対して初期に選択される昇圧剤としては低用量バソプレシンは推奨されず,0.03-0.04 U/min以上のバソプレシンは(他の昇圧剤で適切な平均動脈圧が得られない場合の)代替療法として温存すべきである(Ungraded)
 根拠としてDunserらの報告(Crit Care Med 2003; 31: 1394-8)が引用されており,高用量バソプレシンは心臓,消化管,内臓の虚血と関連し,昇圧薬による治療が奏功しないケースのために温存されるべきであるとされる.ノルアドレナリンとバソプレシンを比較した7報では,バソプレシンのルーティンでの使用は支持されておらず,代替療法の位置づけにある.しかし,ノルアドレナリンによる上室性不整脈リスクは7.25倍(95%CI 2.30-22.90)であることから,ノルアドレナリン減量目的での併用も考慮してもよいかもしれない.
6.極めて限られた患者(頻脈性不整脈や絶対的/相対的徐脈のリスクが低い患者など)においてのみ,ノルエピネフリンの代替薬としてのドパミンを使用してもよい(Grade 2C)
 上述の通り,ノルアドレナリンが第一選択となり,ドパミンの推奨度は下げられた.Levyらのメタ解析(Crit Care Med 2012; 40: 725-30)においては,ドパミンはノルアドレナリンに比して死亡リスク増大に加え,不整脈リスク増大も示されていることから,特に不整脈リスクの低い患者への限定記載を記したものと思われる.
7.フェニレフリンは敗血症性ショックにおいて以下の場合以外には推奨されない.(a) ノルエピネフリンによる重症不整脈がある場合,(b) 心拍出量が高いにもかかわらず血圧が低い状態が遷延している場合,(c) 強心薬/昇圧薬と低用量バソプレシンを併用しても平均動脈圧(MAP)が目標値を達成できない場合の代替療法(Grade 1C)
8.腎保護目的での低用量ドパミンは使用しないことを推奨する(Grade 1A)
 低用量ドパミンは腎保護作用のあるカテコラミンというドパミン神話が言われ,昔は汎用されてきた経緯があった.しかし,その有効性を示す研究の多くはケースシリーズであり,EBMが確立してきた1990年代に入って1991年のSzerlipの報告から始まり,多くのドパミンの腎保護作用に関するRCTが行われているが,有効であるとのエビデンスは存在しない.敗血症における低用量ドパミンの結果をまとめたレビュー(Clin Exp Pharmacol Physiol Suppl 1999; 26: 23-8)では,腎保護目的にルーティンでドパミンを使用すべきでないとしている.

 2000年に多施設無作為二重盲検比較試験であるANZICS trial(Lancet 2000; 356: 2139-43)が発表され,SIRS患者におけるAKIでは低用量ドパミン群とプラセボ群では同等の効果しか示さず,有意な腎保護作用・利尿作用はないと結論づけられている.その後に発表されたレビューでも低用量ドパミンの腎保護作用はなく,その副作用を考慮に入れると,腎保護目的に使用すべきではないとしている.
9.昇圧薬を必要とするすべての患者において,可能であれば動脈カテーテルを速やかに挿入することを推奨する(Ungraded)
 本ガイドラインの根拠では,敗血症性ショックでのカフを用いた非観血的血圧測定(NIBP)は不正確になりやすいと述べており,実際,NIBP測定器は本来は高血圧の検知を目的にしているよう精度が設計されており,それゆえに特に低血圧時には正確性に欠けると指摘する論文がいくつか存在する.またショック動態における動脈カテーテルでのモニタリングは,頻回の採血が必要な状態では有用であることに加え,血圧のみならず連続的な血圧変化がとらえられ,呼吸性変動などの波形変化から得られる情報も非常に有用である.

 しかしながら,根拠で触れられていないが,動脈カテーテル測定圧の過信も禁物である.なぜなら敗血症性ショック病態では動脈カテーテルの計測圧も正確でなくなりうるからである.心臓近くの血圧波形は末梢からの反射の影響はないが,末梢の動脈圧は末梢からの反射の影響を大きく受ける.基本的に心臓からの圧に末梢からの反射波が少し遅れて加わるため波形の幅は広くなる.逆に反射の影響が少ないと細い波形になりやすい.末梢血管が拡張していると反射の影響が少なくなり,静脈圧に近くなり,末梢動脈での血圧上昇は抑えられる.敗血症性ショックなどで末梢血管抵抗が極端に低い場合は動脈カテーテルでの圧がむしろ異常に低くなることがあるため,動脈カテーテル測定圧を根拠とした昇圧薬や輸液は過剰投与のリスクが生じるため注意が必要である.また,平均動脈圧<65mmHgの患者群に対してNIBPと動脈カテーテル圧を比較した報告では,NIBPが十分な代用となる可能性も報告れている(Anesth Analg 2009; 109: 494-501)

 このように,動脈カテーテル圧は共振だけでなく末梢血管抵抗にも左右されるが,NIBPは末梢血管抵抗の影響をほとんど受けず,上腕よりも心臓側の圧をよく反映しているので,NIBPは末梢血管抵抗の変化や圧測定回路による圧変化に左右される撓骨動脈カテーテル圧よりも信頼度は高くなる可能性もある.一方で,中心部の大動脈圧をより正確に反映するのは鼠径動脈であり,血圧の正確さで見れば撓骨動脈よりも鼠径から動脈カテーテルを挿入する方がよい.ただし,感染リスク上昇を加味する必要がある.内頸と大腿での静脈カテーテルでの感染率に有意差がないという報告が最近多いが,動脈カテーテルでそのままあてはまるわけではない.実際に中心静脈カテーテルでの感染確率は一定であるのに対し,動脈カテーテルの感染確率は留置日数に比例するとの報告もある(Crit Care Med 2010; 38: 1030-5).動脈カテーテルの適応やその活用方法はこれらを勘案した上で行うべきであろう. 
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by DrMagicianEARL | 2013-02-04 16:55 | 敗血症 | Comments(0)

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