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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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集中治療友の会(2013年7月27日,名古屋キャッスルプラザ,旭化成ファーマ主催)の講演内容です.最初から読まれる方はこちらをクリック

2.敗血症の治療(1)
■集中治療は全身性の炎症凝固の管理ともいえ,感染,循環,呼吸,栄養,代謝,神経筋などあらゆる管理を同時並行で行っていく必要がある.その中でついつい栄養を忘れてしまったりリハビリを忘れてしまったりといったことが生じてくるが,すべてを行ってこその相乗効果が期待されるものであり,習慣づけて覚えていく必要がある.なお,私の持論であるが,重症病態における相互連関(cross-talk)は炎症と凝固のみならず,虚血も組み入れた,炎症・凝固・虚血の3つのcross-talkととらえるべきであると考えており,全身管理における制御ターゲットとしてこの3つを念頭におくべきである.

■敗血症の治療はガイドラインが存在する.2002年にSurviving Sepsis Campaign[29]が開始され,2004年にガイドラインとしてSSCG(Surviving Sepsis Campaign Guidelines)が発表された.このSSCGは2008年,2012年に改訂が行われ[30],現在では日本集中治療医学会,日本救急医学会を含む30の学会・団体に支持されている.LevyらはSSCGの評価として多施設研究を行い,SSCG遵守率上昇とともに死亡率が有意に低下したことを報告した[31].また,Kumarらは2000年から2007年までの敗血症の調査を行った[32].この調査では,敗血症患者は増加し,障害臓器数でみた重症度も重症化傾向となってきているにもかかわらず,平均入院期間,死亡率は改善傾向にあり,SSCGの効果が示されている.

■日本からも本邦の実情にあわせたガイドラインとして,日本版敗血症診療ガイドライン[33]が2012年11月12日に発表された.しかしながら,このガイドラインは推奨項目に不可解な部分も多く,パブリックコメントで多数の批判があり,発表が3ヶ月遅れるといった経緯もあり,完成版においてもいまだに推奨に疑問が残る項目が数多く指摘される.このガイドラインを本邦のスタンダードにすべきかどうかが議論されてきているが,既にこのガイドラインを作成した委員会は解散しており,今後このガイドラインがどのように改訂されるかは全く不明である.日本版敗血症診療ガイドラインについての私の見解についてはブログに記載している通りである.

■当院では敗血症治療において次の7つの目標を提示している.
① 敗血症の早期認知
② できるだけ速い適切な抗菌薬の投与
③ できるだけ速い循環動態安定化
④ 適切な栄養管理
⑤ 二次感染を起こさない感染対策の徹底
⑥ 多臓器不全を残さない
⑦ 早期離床とリハビリテーション
SSCGで「early」という表現から「rapidly」に変わったのと同様に,当院でも「早期の」から「できるだけ速い」という表現に変更している.

■敗血症性ショックはWarm ShockとCold Shockという,相反した2つの病態をもち,治療においてはその病態の理解が必須である.サイトカイン濃度が上昇すると,NOやプロスタノイドなどの各種血管拡張物質が産生されて末梢血管が過剰に拡張することで血圧が低下する[34].同時にアドレナリンβ1受容体を介した陽性変力作用が阻害され,心収縮力低下が生じるが,末梢血管拡張により後負荷が減少するため見かけ上の心拍出量は保たれる.このとき,四肢末梢は温暖であるため,Warm Shockと称される.Warm Shockの状態において血管内皮細胞傷害が進行していくと,血管内皮細胞が膨隆,脱落,アポトーシスが生じ[35],エンドセリン,プロスタグランディン,ヒスタミンなどの血管内皮細胞のNO放出に依存した血管拡張性物質は,血管内皮細胞の脱落した血管平滑筋への直接作用を高め,血管拡張作用から血管収縮作用に転じ始める[36-38].このため後負荷が増大し,心収縮力低下が具現化する.このとき四肢末梢は冷たくなり,Cold Shockと呼ばれる病態となる.

■Warm ShockからCold shockに移行するのは約6-10時間後と言われている.この移行過程において血管内皮細胞傷害に起因する播種性血管内凝固(DIC)を発症する.Warm Shockにはある程度エビデンスが確立された治療法があるが,Cold Shockにはエビデンスがある治療法は存在しない.よって,血管内皮細胞傷害が進行してしまうまでに,すなわち6時間以内に速やかに適切な治療を行って全身状態安定化を終了することが必要であり,逆に,DICなどを発症しはじめるということは血管内皮細胞傷害がかなり進行してきていることを表し,病態がCold Shockに転じ始めていることを認識しておく必要がある.

■当院の敗血症診療プロトコルでは4つの目標達成時間「4Es of Golden Time」を明示している.すなわち,発症or来院から
1時間以内の適切な抗菌薬投与(EAAA;Early Appropriate Antimicrobial Agents )
6時間以内の循環動態安定化(EGDT;Early Goal Directed Therapy)
12時間以内の感染巣コントロール(EISC;Early Infectious Sourse Control)
24時間以内の早期経腸栄養(EGDN;Early Goal Directed Nutrition)
という目標である.これらの目標・Golden Timeを達成するために,様々な治療・管理をまとめた蘇生バンドルと管理バンドルを定め,プロトコル化し,Warm ShockからCold Shockへの進展や臓器不全を予防することが重要となる.

※早期リハビリテーション(EGDR;Early Goal Directed Rehabilitation)も含めたいところだが,Golden Timeの基準はなく,現時点では含めていない.

■当院での敗血症蘇生プロトコルは,診断から始まり,各種検査,抗菌薬投与へとすすんでいくことになる.なお,カンジダ感染症は特に見逃されがちで,可能性があるのであれば(尿路,中心静脈カテーテルなど)β-Dグルカンを計測すべきである.菌血症で最も死亡率が高いのはMRSAでもグラム陰性桿菌でもなくカンジダであることが報告されている[39]

※情報交換会で質問があったため追記:カンジダを想定した経験的な抗真菌薬投与は日本真菌感染症フォーラムによるACTIONs BUNDLE[40]を参考にするとよい.エキノキャンディン系(ミカファンギン,カスポファンギン)かフルコナゾールが第一選択となるが,いずれを選択するかはnon-albicans株の考慮が必要であり,原則として各施設で流行しているカンジダ菌種とantibiogramによる.しかし,症例数の少なさと感受性試験については限界があるのが現実である.そこで,おおまかな考え方として,ICU発症ではエキノキャンディン系が効きにくいCandida parapsilosisをカバーするためにフルコナゾールを,腹部術後・血液疾患・癌患者ではフルコナゾールが効きにくいCandida glabrataをカバーするためにエキノキャンディン系を投与する.

※なお,Candida glabrataは血液培養陽性化までが他のカンジダ菌種に比して非常に遅く,C. albicansが平均40時間であるのに対し,C. glabrataは平均60時間を要する.カンジダ血症では12時間以内に陽性になれば死亡率は15%以下,24時間以内なら死亡率は30%前後だが,この24時間時点でもC. glabrataは検出時間下限に達しておらず検出できない[41].また検出成功率も他のカンジダ菌種の半分に過ぎない[42]ため見逃されやすい.このせいもあってか,検出率上位3菌種(C. albicansC. glabrataC. parapsilosis)の中ではC. glabrataが最も死亡率が高い[43].なお,愛知医大の三鴨廣繁先生の研究によると,嫌気性ボトルからカンジダが検出されたらC. glabrataとみなしてよいとのことである.


■もし血圧低下,または乳酸値が4mmol/L以上であれば敗血症性ショックの可能性があり,末梢2ルートを確保して急速輸液負荷チャレンジ(晶質液1000mL/30min)を行う.
※末梢がとれない場合は仕方ないが,原則として中心静脈カテーテルは物理的構造上,急速輸液負荷には不向きである.

■ここで,血圧低下がなくても乳酸値上昇でも敗血症性ショックの可能性を考慮していることに注目されたい.血圧低下はショックにおける現象の1つに過ぎず,血圧が正常でもショック状態ということは臨床上よく経験され,逆に,血圧が正常ならばショックではないという考え方はやめるべきである.現在,ショックは第3世代の定義まで進んでおり,たとえ血圧が維持されていても,末梢組織,細胞での酸素利用障害などを含む酸素代謝異常,もしくは灌流障害があればショックとみなすとされている.この酸素利用障害,酸素代謝異常を示しているのが乳酸値である.血圧が正常のショックはCryptic Shock(神秘的ショック,潜在的ショックと訳される)と呼ばれ,血圧が維持されていても個々の臓器への血液灌流は必ずしも保証されないことを意味する[44]

■Kangらは,Cryptic Shockの患者においては治療プロトコルの遵守率が74%低下すると報告しており[45],治療の遅れから予後悪化につながりうる可能性があるため,血圧が低下していなくても治療をただちに開始する必要がある.Puskarichらは,敗血症性ショック患者において,Cryptic Shock群53例と輸液負荷チャレンジ後も血圧が遷延するOvert Shock群247例を比較し,死亡率に有意差がなかった(20%vs19%)と報告しており[46],このことからも,血圧低下を伴っていないショックでも死亡率は高まることが分かる.
※動脈硬化が非常に進行した患者では既に最初から血管内皮細胞が傷害されている状態にあり,敗血症が進行しても血圧が下がりにくく,Cryptic Shockを呈しやすくなることがある.

※乳酸値が4mmol/L以上でなくても敗血症性ショックに進展することがあり[47,48],また,乳酸値が正常であるにもかかわらず敗血症性ショックに陥ることもある.このようなケースの認知は非常に困難となる.Nikitasらは,敗血症性ショック患者の脂肪組織の乳酸/ピルビン酸比を測定すると,乳酸値が正常の患者であっても死亡リスクと有意に相関したと報告しており[49],今後この計測が迅速に行えるような検査キットがでればより早期の認知が可能となるかもしれない.


[29] http://ssc.sccm.org/Pages/default.aspx
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←1.敗血症と炎症凝固
→2.敗血症の治療(2)

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by DrMagicianEARL | 2013-07-31 14:26 | 敗血症 | Comments(1)
2013年7月27日に名古屋キャッスルプラザにおいて旭化成ファーマ主催の集中治療友の会が開催され,主に若手ドクター向けで1時間ほど講演させていただきました.以下はその概要です(3~4回に分けてアップします).なお,現在進行中の研究データも当日は一部お披露目させていただきましたが,ここでは割愛させていただきます.

『敗血症から集中治療を臨む』

1.敗血症と炎症凝固
■敗血症は集中治療領域で扱う疾患において王道ともいえる重症疾患である.この敗血症を重症感染症としてだけでとらえるのではなく,全身性の炎症凝固病態としてとらえることで他の重症疾患と共通の病態生理の理解につながるものと考える.そこで今回,敗血症を通して集中治療の世界を紹介していく.

■「Sepsis is Infection-induced SIRS.(敗血症は感染によって生じたSIRS)」であり,「SIRS is inflammatory cytokine amok.(SIRSは炎症性サイトカインの嵐)」である.よって,敗血症の本態は炎症性サイトカインの嵐ということになる.SIRSとは全身性炎症反応症候群(Systemic Inflammatory Response Syndrome)の略であり,1992年にACCP/SCCMの合同会議で提唱された[1].SIRSの診断基準は,①体温<36.0℃ or >38.0℃,②脈拍>90/min,③呼吸数>20/min or PaCO2<32mmHg,④WBC<4000/mcL or >12000/mcL or Band>10%の4項目のうち,2項目以上を満たせば診断され,これが感染症に起因するものであれば敗血症と診断する.

■よく勘違いされるのが菌血症であり,敗血症と混同される.菌血症は敗血症の必要条件でもなければ十分条件でもない.菌血症の本態は血液中の菌であり,敗血症の本態は炎症性サイトカインをはじめとする各種メディエーターである.一例として,毒性の強い緑膿菌をウサギに直接静脈内に投与して菌血症を起こしても簡単にはショックにならないが,より少ない数の毒性の強い緑膿菌を肺ないに投与するといとも簡単にショック状態に陥ったとする動物実験が報告されている[2]

■サイトカインをはじめとするメディエーターには様々なものがあるが,病原体由来のものと宿主由来のものに分類される.病原体由来のものはPAMPs(pathogen-associated molecular patterns)と呼ばれ[3],LPS(endotoxin),Lipoteichoic acid,Triacyl lipopeptide,Peptideglycan,Lipoprotein,dsRNA,Flagellin,Diacyl lipopeptide,ssRNA,Unmethylated CpG DNA,Uropathogenic E.coliなどがある.一方,宿主由来のメディエーターはAlarminsと呼ばれており[3,4],これは以前までDAMPs(danger-associated molecular patterns)と呼ばれていたものである.AlarminsにはNecrotic tissue, Heat Shockl Proteins,Fibrinogen,Surfactant protein A,HMGB-1,Neutrophil elastase,S100s,IL-1a,Uric acid,Annexins,Fibronectinなどがある.そして,このPAMPsとAlarminsの両方をあわせた総称がDAMPs(damage-associated molecular patterns)と呼ばれる[3,5].なお,各種学会・講演会・研究会や医学雑誌を見ていると,いまだにAlarminsがDAMPsと記されていたり,AlarminsとしてのDAMPsがdamage-associated molecular patternsと誤って記されていたりするため注意が必要である.

■従来は,ある受容体はリガンドとしてある特定の病因物質(敗血症の場合には病原微生物)を認識して細胞内シグナルを誘発し,サイトカインの産生に結びつくと考えられていた.PAMPsやalarminなどのある種の普遍的で共通の立体構造を感知するmulti-ligand receptorの存在が解明された.これはPRRs(pattern-recognition receptors)と呼ばれ[6],この発見は敗血症の病態生理のより正しい解明に大きな進歩をもたらした.すなわち,敗血症病態に関連した受容体はリガンドと1対1対応ではなく,ひとつの受容体で各種のPAMPs,alarminsをリガンドとして捉え,サイトカイン産生につながる細胞内シグナルを活性化する[7,8].PRRsにはToll-like receptor(TLR),RAGE(receptor of advanced glycation endproduct),PAR(Protease Activated Receptor)などがある.
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■敗血症は感染症とSIRSのoverlapした部分と理解されている.そして,その原因となる感染症の病原体として細菌,真菌,ウイルス,寄生虫があり,感染症からPAMPsが,SIRSからAlarminsが関与して敗血症が重症化していく.一方,SIRSは感染症のみで生じるものではなく,外傷,熱傷,急性膵炎,術後,その他さまざまな疾患で生じる.すなわち,あらゆる高度侵襲によってSIRSが生じており,SIRSを制御することが集中治療における共通点ともいえ,このSIRS病態と治療を理解することが重要となる.
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■サイトカインが放出するまでの過程であるが,まずPAMPsがTLR(Toll-Like Receptor)に認識され,そこから細胞内シグナル伝達を経て転写因子NF-κB(Nuclear Factor-κB),AP-1(Active Protein-1)などが活性化され,サイトカインIL-1β,TNF-αが放出される.このサイトカインもまた細胞の受容体に認識され,TAK1を介した同一の細胞内シグナル伝達を経てIL-1β,TNF-αをさらに産生させる.この機序によりサイトカインは増幅されていく.
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■SIRSから臓器不全にいたる過程として,Alart Cell(炎症警笛細胞)という考え方が理解しやすい.これは名古屋大学救急集中治療医学講座の松田直之教授が提唱している概念である[9].各組織に4-5個に1個存在するAlert CellがDAPMsを認識し,サイトカインと活性酸素種(ROS)を放出し,ROSによる刺激を受けた正常細胞はAlert Cellに変化することでAlert Cellが増加する.また,Alert Cellは転写因子AP-1活性化によりapoptosisを起こす.このようにしてAlert Cell化した細胞が次々とapoptosisを起こし,細胞分裂速度を上回り,臓器機能が保てなくなると臓器不全が出現する.

■一方,重症病態では凝固系も重要である.凝固障害からDIC(播種性血管内凝固症候群)に至る過程でよく説明されるのが,組織因子(TF:Tissue Factor)から始まりThrombin産生に至る凝固カスケード反応である.しかし,凝固カスケード反応からThrombinを介した反応だけでDICが生じるかについては疑問がもたれていた.そこで,発見されたのがhistone,HMGB-1(Human Mobility Group Box-1),NETs(Neutrophil Extracellular Trapping system)である.

■敗血症においては,病原体の侵入に対し,まず血小板が炎症増強作用を発揮し[10],血小板自身が細菌処理機能を有することが分かっている[11].血小板上のTLR-4でPAMPs(Pathogen-Associated Molecular Patterns)を認識した血小板は好中球に結合し[12],活性化血小板がP-selectinを放出して,好中球に貪食促進のみならず,核内から放出されるクロマチンやヒストンと細胞質成分を融合(decondensation)させて構成されるNETs(neutrophil extracellular trapping system)[13]と呼ばれる網の放出を促進し,このNETsが細菌をトラップする[14,15].NETs産生の結果,好中球は死に至るが,この細胞死の過程はnecrosisでもapoptosisでもない,NETosisという新たな細胞死の過程として注目されている[16,17].また,NETsに含まれるhistoneは血小板を凝集させる作用があり,NETsを足場として血小板血栓が形成される[18].さらにはNETsに含まれる好中球エラスターゼやカプテシンGは組織因子経路インヒビター(TFPI;tissue factor pathway inhibitor)を分解することによって血液凝固反応を促進し,さらなる血栓の成長を促す[19].これにより病原微生物の捕捉,血栓での局所封鎖により,病原微生物の全身播種を防ぐ.白血球と血小板の活性化においては上記の通り相互作用が存在する.そして同様の相互作用は白血球-血管内皮細胞,血小板-血管内皮細胞の間にも存在する.また,血液凝固反応の亢進はこれらの間に介在する要因として重要であり,これらのことから生体内凝固反応を“cell-based process of hemostasis”として捉えることの重要性が提唱されている[20]

■凝固は生体にとって有害と思われがちであるが,上記機序を見ても分かる通り実際には重要な生体防御機構である.すなわち,敗血症による微小血栓形成は,細菌播種を防ぐための局所封鎖だけが目的でなく,好中球NETsなどで侵入した細菌を積極的に処理することを目的ともしており[17],また,局所にて高濃度になったhistoneやHMGB-1などのメディエータが全身に播種することも血栓による局所封鎖で防ぎうる.すなわち,凝固は感染に対する生体防御の一環であり,この防御機構が過剰になった病態が敗血症性DICである.

■以上をまとめると,細菌感染が生じ,その菌量が増加すると炎症反応(inflammatory cytokine),凝固反応(coagulation)が立ち上がる.ここまでは生体に保護的に働くが,これが進行すると,炎症過剰(inflammatory cytokine amok)と凝固障害(coagulopathy)に進展し,この2つの障害が相互連関(cross-talk)することで増幅してSIRSとDICに至るものが敗血症であり,さらに虚血進行,細胞のautophagy/apoptosis/necrosisが生じ,臓器不全に至る.この敗血症病態においての治療目標は生体に有害な状態から保護的な状態に戻すことである.高度侵襲で生じる全身性病態は恒常性(homeostasis)の破綻であり,恒常性を保てる状態に戻すことをゴールとすべきである.Suffrediniらは,炎症を消し去るのではなく,正常の炎症反応によって病原体が除去されていく過程を重要視するべきであるとするfuture directionを述べている[21]

■上記の敗血症における炎症と凝固の相互連関(cross-talk)が近年注目されている.炎症と凝固は重症化する車の両輪とされ[22],ここに重要な役割を果たすのがProtease-Activated Receptor(PAR)である.現在PARはPAR-1,2,3,4の4種類が発見されており[23-27],特にPAR-1は炎症凝固cross-talkの重要なkey receptorである[28].また,ThrombinはPAR-1,3,4のリガンドであり,Thrombinの制御が炎症凝固cross-talkのブロックに重要な役割をはたしうる.なお,antithrombin IIIやrecombinant thrombomodulineは,このThrombinに結合して効果を発揮するDIC治療薬である.

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→2.敗血症の治療
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by DrMagicianEARL | 2013-07-30 19:16 | 敗血症 | Comments(0)
3.プロカルシトニンガイド下抗菌薬治療
■前述のPCT(プロカルシトニン)の性質を利用し,PCTの値を評価して抗菌薬の治療開始のみならず終了まで決定するプロトコルの研究がなされるようになった.このようなPCTの使用法を行う上では,PCTの推移の性質も知っておく必要がある.

■Jensenら[1]はICU患者472例を対象とした多施設共同前向き観察研究を行い,1日のPCT値上昇≧1.0ng/mL,PCT最大値≧5.0ng/mLが90日全死亡に関連した予後予測因子であるとしており,その後JensenらはPASS trial[2]を行い,前日と比較してPCT値高値が遷延しているalart PCT(初回と2日目のPCTが≧1.0ng/mLで,前日と比較して減少が10%以内)の回数が多いことが予後不良因子となることも報告している.

■Karlssonら[3]は,ICUに入室した重症敗血症および敗血症性ショックの成人患者155例のPCT値を解析し,72時間でPCT値が50%以上減少した患者群の方が,減少が50%未満の患者群より有意に死亡率が低かったとしている.Charlesら[4]の敗血症によるICU患者180例の観察研究では,最初のPCT濃度は予後に影響を与えなかったが,3日後のPCT値は非生存者で有意に高かったと報告している.Azevedoら[5]は敗血症患者28例の前向き観察研究を行い,PCT初期濃度は生存群と死亡群で有意差はみられなかったが,24時間後PCTクリアランスは生存群が有意に高く,高いPCT濃度持続は死亡率増加に関連していると報告している.

■PCTの値には大きなばらつきがあり,敗血症においては1.0ng/mLを下回るケースもあれば100ng/mLを超えるものもあり,様々な治療因子もかかわってくるため,これらを一律にカットオフを定めて抗菌薬投与終了基準とすることは妥当ではないかもしれず,絶対値よりも変動を見た方が理にかなっているといえ,これは上記5報告が示す通りでもある.もう一つ注意すべきはもともとそれほどPCTが高くない場合の評価で,変動幅で評価するには測定誤差の因子が大きくなりやすい懸念があり,ある一定以上のPCT濃度がベースでなければ使用する意義は乏しいと推察される.

■PCTガイド下での抗菌薬治療について評価したメタ解析を以下にまとめた[6-14]
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■これらのメタ解析の結果を見るに,PCTガイドによる抗菌薬治療は,死亡率に影響を与えずに抗菌薬投与期間を2-3日間短縮する効果がある,ということが概観として分かる.PCTガイドのプロトコルは研究によって大きく異なる.以下では,敗血症でのPCTガイドによる抗菌薬投与終了のプロトコルについて,代表的なRCT等を紹介する.

■Bouadmaらは,PCT値が0.5ng/mL未満またはピーク値の80%を超える減少があれば抗菌薬を中止するとするプロトコルを用いて,フランス8施設のICU患者630例でのオープンラベル並行群間比較試験PRORATA trial[15]を行い,死亡率に影響を与えることなく,抗菌薬投与期間を2.7日有意に短縮させた.同様のプロトコルを用いて,Stolzらは人工呼吸器関連肺炎患者を対象として,米国とスイスの7施設101例のオープンラベルRCTであるProVAP trial[16]を行い,抗菌薬投与日数を3.5日有意に短縮させた.

■Hochreiterらは,外科系ICUにおいて細菌感染症が疑われたSIRS患者に対して,全身状態の改善とPCT<1ng/mLまたは初回値の25-35%まで低下したら投与中止とするプロトコルを用いて,単施設で110例でのRCT[17]を行い,抗菌薬治療期間を有意に短縮した(5.9±1.7日vs7.9±0.5日,p<0.001)と報告している.これと同様のプロトコルを用いて,Schoederらは,外科系ICUの重症敗血症患者を対象として単施設で27例でのRCT[18]を行い,拘禁薬治療期間を有意に短縮した(6.6±1.1日vs8.3±0.7日,p<0.001)と報告している.

■Nobreらは,重症敗血症,敗血症性ショックの患者を対象として,①PCTの初期値が>1ng/mLであれば,PCT<0.25ng/mLまで低下または90%以上低下していれば,Day 5以降という条件付きで抗菌薬投与を終了する,②PCTの初期値が<1ng/mLであれば,<0.1ng/mLまで低下していれば,Day 3以降という条件付きで抗菌薬投与を終了する,というプロトコルを用いてスイスの単施設で79例のオープンラベルRCT[19]を行った.PCT群は対照群と比較して治療期間中央値が3.5日短縮していた(ITT n=79,p=0.15).per-protocol解析では,PCT群が抗菌薬投与期間が4日間有意に短縮し,(per-protocol n=68, p=0.003)抗菌薬投与量も有意に減少した(p=0.0002).死亡率,再発率は両群間に有意差はみられなかった.また,PCT群は対照群よりICU滞在日数が2日間有意に短縮した(p=0.03).この報告での抗菌薬終了のKaplan-Meier曲線を見るに,重症敗血症,敗血症性ショックでも抗菌薬投与期間が5日間ですむ症例が非常に多いことがよく分かる.

■一方で,最も新しいRCTではPCTガイド下抗菌薬治療プロトコルに否定的な結果がでている.Layiosらは,ICU患者を対象として,全例でPCTを計測するが,PCT値を用いて抗菌薬治療を行う群と,PCT値をブラインド化して抗菌薬治療を行う群を比較した509例のベルギー単施設共同RCT[20]を行った.この報告では,治療日数割合に有意差はないが,PCT群の方がより長い傾向がみられた.また,この研究では,感染症診断の正確さについても検討しており,感染症がないと確定した症例の中でPCT値が1ng/mL未満であるのは33.8%に過ぎず,感染症が確定した症例でPCT値が0.25ng/mL未満であるのが14.9%も存在し,ICU医師と感染症専門医との間で診断能の格差を埋めるのにPCTは有用ではないとしている.

■PCTガイドによる抗菌薬の変更を検討した研究もある.Jensenらは,ICU滞在48時間以上の患者1200例において,毎日PCT値を測定して,前日と比較してPCT値高値が遷延しているalart PCT(初回と2日目のPCTが≧1.0ng/mLで,前日と比較して減少が10%以内)を認めた場合に抗菌薬のスペクトルをより広域に変更する(escalation)プロトコルを検証した9施設共同オープンラベルRCTであるPASS trial[2]を行った.この研究はPCTガイドによる抗菌薬治療が予後を改善するという仮説の検証研究であったが,結果は死亡率に有意差なく(31.5%vs32.0%),人工呼吸の割合やICU滞在日数はPCT群でより延長する結果となった.さらに,PCT群で腎機能の有意な悪化が示されている.この研究では,PCTの感染に対する感度が59.3%と低値であったこと,TAZ/PIPCやCPFXの投与が増加したことによる副作用などが問題点として指摘されており,この研究で用いられたPCTガイド下抗菌薬投与プロトコルは推奨されない.

■敗血症患者をtargetにしたPCTガイド下抗菌薬治療プロトコルとしては,対象,N数や質,プロトコルの安全性の観点からNobreらの報告[19]が最も妥当ではないかと推察される.問題は,PCTを毎日計測することは本邦の実臨床では現実的ではないということであろう.都道府県にもよるが,3回以上の計測は通らない可能性がある.そこで,1つの目安として,初日と5日目の2ポイントのPCTを計測し,Nobreらのアルゴリズムに適応させれば,かなりの症例で5日目で抗菌薬投与を終了できると思われる.一方,終了基準を満たさず,6日目以降も必要となる症例においては,新たにアルゴリズムを追加する必要があるだろう.

■Surviving Sepsis Campaign Guideline 2012[21]では,「敗血症と診断したが,その後感染の根拠が認められない患者においては,プロカルシトニンや同様のバイオマーカーが低値であることを経験的治療の中止するために使用してもよい(Grade 2C)」という推奨となっている.この根拠として2つのメタ解析[12,22]が挙げられているが,同時に限界と潜在的有害性の懸念が残るとしている.さらに,この抗菌薬中止戦略が耐性菌リスクやClostridium difficileによる抗菌薬関連下痢症のリスクを減じるとしたエビデンスはない.日本版敗血症診療ガイドラインに[23]おいても「抗菌薬中止にはプロカルシトニンを考慮してもよい(2A).」という推奨となっている.

※PCTの絶対値のみをみるのではなく,推移を追うことで治療介入を少なくできるのであれば,これは他の薬剤でも同様のことが言えるのではないかと私は考えている.そのひとつとして,播種性血管内凝固(DIC)の治療期間がある(治療有無そのものに議論があるところではあるが別の話になるためここではおいておく).多くの施設ではDIC治療終了の目安を急性期DIC診断基準スコア3点以下としている.当院では,原疾患治療がなされていることを前提として,複数の指標を設定し,これらの指標すべてが改善傾向を示した時点でDIC治療を終了するとする終了基準を設けて重症敗血症・敗血症性ショック例に導入した結果,急性期DIC診断基準スコア3点以下で投与を終了するよりも1.6日有意に投与期間を短縮しており,投与期間は4日間以内でよい症例がほとんどであった(第17回大阪DIC研究会一般演題,2013年6月).初期治療を適格に行って全身炎症を制御してSIRSやCARSを抑えることができていれば患者自身の生理的制御範囲となり,治療介入は不要となる可能性がある.近年の敗血症治療の考え方からすれば,治療により敗血症病態から患者の恒常性維持可能な状態に制御することが理想であり,その状態になれば余計な侵襲を回避してPost-Intensive Care Syndrome(PICS)のリスクやコストを減じることができるかもしれない.

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by DrMagicianEARL | 2013-07-11 21:08 | 敗血症 | Comments(0)

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