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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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5.重症敗血症の急性期治療

(1) 各種ガイドラインとバンドル
■2002年にSCCM,ESICM,国際敗血症フォーラム(ISF)の合同カンファレンスがスペインのバルセロナで開催され,5年間で重症敗血症患者の死亡率を25%減らすという目標をかかげた国際的なキャンペーンであるSSC(Surviving Sepsis Campaign)が合意,開始された[1,2].そして,2004年には2つ目の目標である敗血症治療のためのガイドラインの作成・実行のため,世界初の敗血症管理指針を示したガイドラインの発表を行った.このガイドラインがSSCG 2004であり,SCCM,ESICM,ISFが筆頭となり,欧米豪などの全11学会による合同のステートメントという形をとっている.SSCGを発表した意図は,①より多くの臨床医や患者が重症敗血症,敗血症性ショックを正しく認知できるようにすること,②診断基準を確立することで,より早期の認知を可能にすること,③エビデンスに準拠した敗血症治療に関するガイドラインを作成すること,④ガイドラインに準拠したバンドルを作成し,すべての治療者に治療の優先順位を認識させること,⑤現場において職種を超えた敗血症治療に関する共通認識を持たせること,などとされる.

■SSCG 2004[3]はその後SSCG 2008[4],SSCG 2012[5]へと2度の改訂を経て,日本集中治療医学会(JSICM),日本救急医学会(JAAM)を含む世界の30の学会に支持されている.同時にSSCは第3の目標としてインターネットツールを利用した敗血症のデータ収集と教育をかかげた.さらに,このSSCGを受けて,世界クリティカルケア看護師連盟(World Federation of Critical Care Nurses:WFCCN)[6]は2011年に,63項目の看護ケア推奨項目からなる看護師版SSCGをCritical Care Medicine誌に発表している[7]

■その後のSSCGの評価では,敗血症患者が増加し,重症度も増しているにもかかわらず,死亡率が改善してきていることが世界各国から報告されている[8-12].日本でも2007年に日本集中治療医学会で行われた第1回Sepsis Registry調査結果[13]では院内死亡率が37.6%であったが,2010年末に行われた第2回調査では20%台後半まで改善しているとのことである.

■SSCGの内容が必ずしも本邦の実情に合ったものとは限らない.そこで,本邦独自のガイドラインとして,日本版敗血症診療ガイドライン[14]が2012年11月12日に発表された.しかしながら,このガイドラインは推奨項目に不可解な部分も多く,パブリックコメントで多数の批判があり,発表が3ヶ月遅れるといった経緯もあり,完成版においてもいまだに推奨に疑問が残る項目が数多く指摘される.また,作成までの時間がかかったこともあってか,推奨項目の羅列とマニアックな内容になってしまっており,実践的とは言いがたい.このガイドラインを本邦のスタンダードにすべきかどうかが議論されてきているが,既にこのガイドラインを作成した委員会は解散しており,今後このガイドラインがどのように改訂されるかは全く不明である.当ブログでもこのガイドラインの問題点を指摘している[15].また,日本版敗血症診療ガイドラインの推奨度はSSCGのGRADEシステムに似ているが,設定基準は全く異なる.すなわち,SSCGはアウトカムごとを評価しているのに対し,日本版は研究ごとに評価している.これが2つのガイドラインで推奨が異なる項目が多数でたことの原因と推察される.

■SSCG 2012では急性期のバンドルが以下のように定められている.
3時間以内に達成すべき項目
1) 乳酸値計測
2) 抗菌薬投与前の血液培養検体採取
3) 広域抗菌薬の投与
4) 低血圧または乳酸値≧4mmol/Lにおける30mL/kgの晶質液投与
6時間以内に達成すべき項目
5) (初期輸液蘇生に反応しない低血圧に対する)循環作動薬の適応により平均動脈圧≧65mmHgのを維持する
6) 輸液負荷を行っても遷延する低血圧(敗血症性ショック)または初期乳酸値≧4mmol/Lにおける中心静脈圧測定,中心静脈酸素飽和度測定
7) 初期乳酸値上昇があれば乳酸値の再検

(2) 今後期待される治療
■SSCGは急性期の敗血症診療のみにスポットをあてている.しかし,退院後もQOLの障害は続いており,これが長期予後に影響を与えている可能性がある.実際に,敗血症症例が重症病態から脱し,一般病棟へ,あるいはほかの医療機関に転出した後にも死亡例が多いことが注目されている[16,17].この長期予後への影響に対する対策を練る必要があるとようやく認識され,米国集中治療医学会コンセンサス会議において,PICS(Post-Intensive Care Syndrome:集中治療後症候群)の概念が提唱された[18].PICSはICUで集中治療を受けた生存患者のみならず家族をも巻き込んでしまうこと,呼吸障害やICUAW(ICU-Acquired Weakness)をはじめとする神経筋障害などの身体的障害や認知機能障害のみならず精神的障害も生じうることを重要視している.PICSの原因はその原疾患のみならず治療行為も含まれる.救命のために不可避な治療行為の侵襲性は想像している以上に患者の長期予後に大きな影響を与えており,救命という短期予後改善の引き換えに医原性の長期予後悪化を伴うというジレンマが生じている.よって,今後は,より効果的であることに加えて低侵襲の治療がすすめられることが望まれる.

■メディエーター治療薬はrAPCを除いてすべて失敗してきており,おおいに期待されていたTLR-4拮抗薬Eritoran(E5564;synthetic toll-like receptor 4 antagonist)もPhaseⅢ[19]で姿を消した.唯一臨床応用されていたrAPC(遺伝子組み換え活性化プロテインC)もPROWESS-SHOCK[20]の中間解析で効果がないと判定され,市場撤退している.

■現在,rTM(遺伝子組み換えトロンボモデュリン)がDIC治療薬として本邦で開発・販売されており,国内PhaseⅢでは予後改善効果はみられなかったが,各種症例対照研究等で予後改善効果が示されており[21-25],DICのみならず敗血症治療において期待されている.海外PhaseⅡb[26]では敗血症性DIC(修正ISTH診断基準によるDIC疑い症例)患者750例でのRCTが行われ,28日死亡率は17.8% vs 21.6%(p=0.273)であった.p<0.3の基準をクリアしたため,サブ解析で特に治療効果が高いとされたPT INR>1.4に限定したPhaseⅢが現在行われている.

■他にも,抗ヒトTNF-α Fab製剤(AZD9773)が既にPhaseⅡ[27]を終えている.2つ以上の臓器障害を有する敗血症性ショック患者81例に対する二重盲検プラセボ対照RCTで,有意差はないが,28日全死亡率が26% vs 37%(p=0.274)と低い傾向が見られている.

■再生医療領域では間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)が敗血症領域で期待されている.間葉系幹細胞は入手しやすく,心筋梗塞後に投与するとリモデリングが抑制される,神経障害の修復に有用,といった報告がでてきており,敗血症領域でもCLPによる重症敗血症モデルマウス実験によって,細菌クリアランス強化,抗炎症作用,多臓器不全進展抑制効果が示されている[28].また,グラム陰性桿菌菌血症モデルマウス実験においては,単核球による細菌貪食作用を増強させることで死亡率を改善させることが示されている[29].iPS細胞は他の幹細胞に比して分化能に劣るため,敗血症病態での応用は厳しいと見られているが,近年,体細胞への遺伝子の導入法を変える[30],あるいは生体内でiPS細胞を生成する手法を開発する[31]等が動物実験レベルで成功しており,ES細胞に近い性質をもつ高い万能性と,採取→培養→移植の過程を省いたリアルタイムの組織再生が可能となるかもしれない.

■高脂血症治療薬のスタチン製剤が抗炎症作用,免疫調節作用,抗酸化作用,抗血栓作用,血管内皮安定化作用,抗アポトーシス作用を有し[32,33],感染症や炎症性疾患に有用との報告がでてきている.敗血症においても,その発症抑制や重症化予防潜在的利益を有するが,まだまだ不明な点も多いとされる.41報メタ解析では,敗血症で39%の死亡率改善が報告されている一方で,感染症におけるRCTでは死亡率減少効果は認めていない[34].現在,海外でPhaseⅡの結果が2報発表されている.Patelらは,敗血症患者100例においてアトルバスタチン投与を検討した二重盲検RCT,ASEPSIS trialを行っており,敗血症進展率が有意に低下(4% vs 24%, p=0.007)したが,死亡率に有意差は示されなかった[35].重症敗血症250例でのアトルバスタチン投与を検討したANZICSによる二重盲検RCT,ANZ-STATInS trialでは,IL-6濃度に影響を与えず,発症前からのスタチン使用患者において発症後もスタチンを継続すると生存率が改善したと報告されている[36].今後大規模RCTでの検討が待たれる.

■重症敗血症治療において日本発のエンドトキシン吸着カラムPMX-DHP(polymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion)が注目され,特に腹部手術を要する敗血症性ショック患者において有用性が期待されている[37].現在観察研究であるEUPHAS 2 projectがイタリアで進行中[38]であり,また,2つの大規模RCTが進行中(フランスでABDO-MIX,アメリカがEUPHRATES trial)であり,その結果を待つことになる.

■近年,大量輸液に伴う有害性の報告がではじめており,EGDTについてその有効性を再検討するため,米国のProCESS,豪州のARISE,英国のProMISeの3つのRCTが進行中であり,これらの結果を統合して評価することも検討されている[39]

■敗血症において,β遮断作用が近年注目されている.これは,自律神経系は炎症反応の制御に深く関与しており[40],副交感神経刺激により炎症反応が軽減できる[41]という考え方に基づく.β遮断薬により,炎症性サイトカインが抑制される[42,43],細胞アポトーシスが抑制される[44],交感神経により惹起された代謝亢進と蛋白異化亢進を抑え,インスリン抵抗性獲得に伴う糖利用障害を正常化し,β糖代謝抑制に伴う脂肪酸動員を抑え,酸素需給バランスを回復する[45],敗血症における心筋保護作用[43,46,47],死亡率改善効果[46,48]などが示されている.敗血症性ショックにおいてβ1遮断薬とノルアドレナリンを併用すると,心拍数を30/分低下させるが血圧は低下せず,高い心拍出量を保つことも報告されている[47].本邦ではβ1受容体選択的遮断作用のある薬剤としてエスモロール以外にランジオロール(オノアクト®)があり,エスモロールよりも血圧が低下しにくいことが知られており,敗血症性ショック病態においての有用性が期待される.ランジオロールは現時点では周術期のみしか適応がないが,早ければ2013年12月には周術期の縛りがはずれ,SIRSに伴う心房細動に対して使用可能となる模様である.

■遺伝性血管性浮腫(HANE)の治療に用いられるC1-エラスターゼインヒビターは,カリクレイン-キニン系と白血球活性を含むさまざまな炎症,抗炎症の経路を調整する作用があり,敗血症予後を改善したとする報告がでている[48].この報告では,61例で検討したRCTであり,28日全死亡率を12%vs45%(p=0.008)と大きく改善させていた.ただし,N数が少なく,オープンラベル,ブロックランダム化など試験デザインに問題がある.また,対照群の死亡率が重症度の割には高く,対照群で有意に多い術後症例が死亡率が高いこともあってバイアスがかかっている可能性があり,再検討が必要であろう.

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by DrMagicianEARL | 2013-09-30 15:51 | 敗血症 | Comments(0)
4.敗血症の予防
■感染症を発症した患者における重症敗血症の予防とは,短期的に見れば,早期認知と早期診断,長期的に見れば耐性菌を予防するための抗菌薬の適正使用である.

(1) 早期診断
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■敗血症の早期発見はSIRS(Systemic Inflammatory Rseponse Syndrome:全身性炎症反応症候群)の認知に他ならない.SIRSとなる患者の多くは軽症のまま終息することが多いが,そのうちの少数が急速な重症化をたどり,重症敗血症に至る.このため,早期のSIRS認知による敗血症の診断と経過の予測が非常に重要となる.

■SIRSの病態は,本来は有益であるはずの炎症反応が過剰となった状態であり,敗血症は感染症によって生じたSIRSとされる[1].すなわち,SIRSは感染症による侵襲に対して,局所でサイトカインが産生されて全身に播種され,炎症反応のコントロールが破綻し,炎症が局所に留まらず全身へ波及した場合,サイトカインは生体の保護因子ではなく,むしろ破壊因子として働き,多数のカスケードと網状内皮系が活性化され,循環動態が破綻するため,臓器不全が生じる.以上から,敗血症の本態は菌血症ではなく,SIRS,すなわちPAMPs,Alarminsといった炎症性メディエーター[2]である.

■敗血症は以下のSIRS基準4項目のうち2項目以上該当すれば診断される[3].この基準は1991年に米国集中医療学会(SCCM)と米国胸部医学会(ACCP)が合同で発表したものであり,その後,簡便な早期発見スクリーニング基準として広く使用されている.
(1) 体温 >38℃ or <36℃
(2) 脈拍 >90回/分
(3) 呼吸数 >20回/分 or PaCO2<32mmHg
(4) WBC >12000/mm^3 or <4000/mm^3 or 桿状好中球 > 10%
■このSIRS基準には4項目中バイタルサインが3項目を占める.覚えやすく,すぐに診断できるツールであり,早期に重症化を認知して事前に対処するためにも看護経過記録は非常に重要となる[4].常に病棟に配置されている看護師によるSIRSの早期認知は非常に重要であり[5]医師のみでなく看護師もSIRS基準と重症敗血症・敗血症性ショックの徴候を認知できるよう教育することが世界集中治療看護連盟(WFCCN)のガイドラインでもGrade 1Cで強く推奨されている[6].実際に,医師のみならず看護師も含めた敗血症教育プログラムの導入により,死亡率が改善したと報告されている[7,8].SIRS基準を使用したスクリーニングツールの導入により看護師によるスクリーニングが増加し[9],死亡率も減少しうる[10]

■2001年にはSCCM,ACCPに加え,欧州集中医療学会(ESICM),米国胸部疾患学会(ATS),外科感染症学会(SIS)で集まったInternational Sepsis Definitions Conferenceで定義の再検討が行われ,SIRSは有用な概念であるが,感度過剰かつ非特異的だとして,生体反応を細かく評価する方法が提唱され,以下の新しい診断基準[11]が発表された.敗血症の国際ガイドラインであるSuuviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)は,SSCG 2004,SSCG 2008においてはSIRS基準を推奨していたが,SSCG 2012ではSIRS基準の記載がなくなっており,2001年基準が提示されている.

■しかし,この2001年基準は,個々の項目は敗血症の臓器不全において重要なもではあるが,20個以上から構成されている上にいくつ該当すれば診断するのかが明示されておらず,実際の臨床現場では使用しづらいものとなっている.SIRS基準と精度を比較した研究が2報[12,13]あるが,ほとんど変わらない精度であり,いずれを用いても予後も差がないと報告されている.以上から,SIRS基準を用いることは精度と臨床現場を鑑みても妥当と推察される.

■現在臨床現場で使用可能なツールであるプロカルシトニンは敗血症の診断ツールとしては有用である[14]が,プロカルシトニン早期診断目的に使用するのは危険であり,推奨されない.プロカルシトニンの精度を検討したメタ解析14報を見ると,感度は0.59-0.96,特異度は0.43-0.91,AUROCは0.61-0.91とバラつきがあるが,おおむね0.7台といったところで,この数字を見ればCRPに比して特段優れているわけではない[15].診断ツールとしてはあくまでも参考指標にとどめるべきである.

■この他にも,敗血症が重症化しやすい患者集団を理解しておく必要があり,とりわけ糖尿病,肝硬変,悪性腫瘍をはじめとする免疫低下に関連する基礎疾患を有する患者が感染症を発症した場合は注意が必要であることは言うまでもない.

■事前に敗血症をきたしやすい患者,薬剤の効きやすい患者の遺伝的素因を解明する研究が進められている.現在ゲノム研究は米国を中心として急速に進んでおり,ヒトゲノムにおけるDNA多型(SNP)の一般集団におけるパターンを特定し,この情報を社会の共有財産として医学や医療の発展のために自由に利用できるようにする目的で開始された国際プロジェクトである国際ハプロタイプ地図(HapMap)計画[16]が2002年よりスタートしており,敗血症もこのHapMapプロジェクトで同定されたSNPを利用して,より大きな集団を対象にゲノムワイドでの遺伝子多型を同定していくことが望まれる.

(2) 耐性菌をださない抗菌薬適正使用

■1925年にAlexander Flemingがアオカビからペニシリンを発見し,1940年にはペニシリンが実用化となり[17],感染症治療は飛躍的に進歩し,抗菌薬のなかった時代(Pre-antibiotic era)からAntibiotic eraとも呼ばれる時代に移行した.しかし,それから20年足らずでペニシリン耐性黄色ブドウ球菌が急増している.実際にはペニシリン耐性菌は本剤が臨床で使用されるようになる以前から存在していたことが報告されている[18].自然環境においてはペニシリンを産生する菌に曝露される菌は多数存在しており,それらが生き延びるためにはペニシリンに対する耐性を持つ必要があった.すなわち,環境微生物に由来する抗菌性物質には古くから耐性菌が存在することは必然的なことであり,同時に抗菌薬に対する耐性獲得も時間の問題であったことは容易に想像できる.

■これに対し,キノロン系抗菌薬は自然界には存在しない化合物であったため[19],本剤耐性菌株が出現する可能性は低いと考えられていたが,この抗菌薬に対しても耐性菌が出現し,その頻度は上昇傾向にある[20]

■メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のアウトブレイクにより認識が広がりだした多剤耐性菌は,現在,ほとんどの抗菌薬が効かない基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL),メタロβラクタマーゼ(MBL),ニューデリー・メタロβラクタマーゼ(NDM-1)といった驚異的な耐性度をもつタンパクを有する菌が発見されるまでになっている.このような多剤耐性菌は日和見感染が主体であると考えられてきたが,近年,市中感染型MRSAが増加傾向にあり[21,22],2011年にドイツで食中毒により大流行した大腸菌O-104はESBL産生株であり[23],2011年に京都で発見された多剤耐性淋菌[24,25]も記憶に新しい.

■カルバペネムならグラム陰性桿菌にほとんど有効という時代は既に終わっており,インドをはじめとする海外では大腸菌にカルバペネムが無効であることが当たり前という国も多い.本邦であってもカルバペネム耐性緑膿菌は珍しくなくなっている[26,27].ESBL産生によるカルバペネム以外のほとんどの抗菌薬に対する薬剤耐性は世界中に拡散しているが[28],近年,カルバペネムすら加水分解するβラクタマーゼを産生する腸内細菌科の細菌(CRE)が日本でも臨床分離されている[29].このような高度多剤耐性株に対してコリスチンやチゲサイクリンなどが開発されてきたが,隣国の台湾では,この2剤すら効かないアシネトバクターが増加している[30]

■このように菌の耐性化の新規抗菌薬創薬のイタチゴッコが繰り広げられてきた中,抗菌薬開発はビジネスとしてリスクが高い割にはあまり収益が見込めない分野であり[31],採算性などの観点から最近は抗菌薬開発から撤退する企業が増加している[32].米国でも2020年までに新たな10種類の抗菌薬を開発するプロジェクトが行われているが,背景には1980年代以降,抗菌薬の数が減少し続けているという厳しい現状がある[33]

■米国で最もポピュラーな感染症診療の教科書であるInfection Diseasesは,Frederick Southwickの「われわれは抗菌薬の時代の終焉にいるのか?」という衝撃的な見出しから始まっており,今や世界は抗菌薬のなかった時代Pre-antibiotic eraと同じ状況になりつつある,Post-antibiotic eraにいるのかもしれない.抗菌薬の乱用により数多くの薬剤耐性菌が発生し,院内に留まらず,その地域にまで拡大しており,その速度は医師の想像の範疇を大きく越えるものである.

■東南アジアでの抗菌薬耐性化は特に深刻である[34].その原因は抗菌薬の乱用だけではない.インドでは入院していない一般人からもニューデリーの川からもNDM-1産生菌が普通に検出される.インドの抗菌薬後発品(ジェネリック)の生産工場の廃液にニューキノロン系抗菌薬のシプロフロキサシンが含まれており,その廃液の解析で様々な耐性遺伝子が検出されている.すなわち,ジェネリックの抗菌薬のずさんな生産管理から環境での抗菌薬耐性遺伝子を菌が獲得し,それが一般人に拡散,インドの病院での耐性菌が蔓延し,それがヨーロッパ,さらには世界に拡大しているという構図が示されつつある.抗菌薬をジェネリックメーカーが生産していることも多剤耐性菌を生み出す懸念材料となっている.

■このような中にあって日本の耐性菌の事情は実は海外よりは悪くない.MRSA分離率は近年低下傾向にあり,市中感染型MRSAの流行もまだわずかであり,VREやNDM-1なども数えられる程度しか検出されていない.カルバペネムに耐性化した大腸菌や肺炎桿菌を見ることもまずない.アシネトバクターのカルバペネム耐性化率を見ると,米国50%,欧州15%,サウジアラビア90%,インド17%,タイ75%,シンガポール46%,韓国70%,中国80-90%であるのに対し,日本は2%である.日本は1990年代から急速に発展した感染対策と感染症診療により耐性化を抑えており,いい意味でガラパゴス化しており[35],この現状を悪化させてはならない.

医療現場で使用されている抗菌薬の半数は不必要あるいは不適切であるとされている[36].今後も耐性化を抑えていくためにも,抗菌薬適正使用は必要であり[37],ICT(感染制御チーム)や感染症専門医と協力して,有効かつ耐性菌を作らない抗菌薬適正使用が望まれる.広い視点に立てば,敗血症を発症したとしても,薬剤耐性菌でなければ治療の効果および予後の改善が期待される.したがって,敗血症の予防といは,病院全体の薬剤耐性菌感染症の頻度を減少させることもひとつの方策であるということができる[35]

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by DrMagicianEARL | 2013-09-20 11:45 | 敗血症 | Comments(0)
3.感染症の予防

■究極の敗血症予防とはすなわち感染症予防に他ならない.手指衛生に始まる衛生面改善の啓発,ワクチン接種推奨が急務である.

(1) 手指衛生に始まる衛生環境改善
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■発展途上国における公衆衛生環境の改善は急務である.日本の公衆衛生状況はかなりよい部類に入るが,それでも手指衛生は不十分である.手指衛生は市民レベルで可能な感染症の防護策に他ならない.

■Curtisらによるメタ解析では,石鹸による手洗いにより感染性の下痢の発症を42-47%減少できると報告している[1].小学校での速乾性の消毒薬利用による欠席率への影響を検討した文献のシステマティックレビュー[2]では,すべての研究で欠席率の低下がみられた.また,一般住民の手洗いによる予防効果を検討した報告のメタ解析では,呼吸器感染症の発症が16%低下したと報告されている[3]

■Larsonらは就学前小児がいる3人以上の過程において抗菌石鹸と非抗菌石鹸による手洗いを比較したRCTを行ったところ,両群間とも感染症発症率は33%前後で有意差はなかった[4].Lubyらは15歳未満の小児が2人以上の家庭で抗菌石鹸,非抗菌石鹸の使用と石鹸を使用しない対照群とのRCTを行い,石鹸使用群で下痢発症が有意に減少したと報告した[5].Sandoraらは保育所に通所する小児が1人以上の家庭においてアルコール製剤を使用する群と使用しない群でRCTを行ったところ,使用群で家庭内の消化器感染症発症率が有意に低下していた[6].また,手指衛生はインフルエンザを含む気道感染症を減少させるシステマティックレビューが報告されている[7]

■世界保健機関(WHO)は,手洗い・手指衛生(hand hygiene)を「決して付加的な行為ではなく,それ自体が不可欠な医療行為である」としている.医療従事者の手指が媒体となり,病原体の感染伝播が発生する5段階についてPittetらは警鐘をならしている[8]

①第1段階:患者の皮膚や患者周囲環境に病原体が存在する
皮膚には100-100万個/cm^2の常在菌が存在し,健常な皮膚からは1日に100万個の落屑があり,細菌と一緒に剥がれ落ちる.MRSAなどの耐性菌が皮膚に定着している患者においては患者の皮膚のみならず周囲の環境から大量に耐性菌が検出される.Kramerらが各病原体の乾燥環境下での感染性持続時間を報告しているので参考にされたい[9].この報告を見ても分かる通り,数ヶ月以上生存可能な菌は非常に多い.

②第2段階:医療従事者の手によって微生物が運搬される
医療ケアを行えば医療従事者の手指は10-20%が病原体で汚染され,菌が100-1000CFU付着する.これが衣服,パソコンのキーボードやPHS,ドアの取っ手をはじめさまざまな部位に触ることで他の医療従事者にも伝播されていく.実際,聴診器,ネクタイ,あごひげ,ネクタイなども汚染されていることが多数報告されている[10-16]

③第3段階:微生物は手の皮膚上で最低数分間は生存している
手指に付着した病原体はアシネトバクター属で60分,緑膿菌で30分程度は生存している.

④第4段階:医療従事者による手指衛生が未実施,または,不適切である
医療従事者における手指衛生の遵守率は極めて低い[17].流水石鹸手洗いの時間を大幅に短縮させ,かつ効率的に手指を殺菌できる速乾性アルコール消毒薬があるにもかかわらず,実際の使用頻度は少ないのが現実である.仕事が忙しい(=ケアの頻度が増す)につれて,通常ならば手洗いの必要回数が増えるにもかかわらず,実際には手洗い実施率が極端に低下することも報告されている[18].手指衛生は耐性菌保有患者に接触するときのみに行うものではなく,全患者のケアにおいてなされるべきものである.院内感染が生じたとき,その原因は自分の手指衛生不足の可能性もあることを医療従事者は自覚すべきである.とりわけ重症例ばかりのICU患者においては接触感染を起こすと,second attackにより患者は容易に全身状態が悪化しうる.手指衛生の欠如から生まれる感染によって入院患者は敗血症に至って死亡する.

⑤第5段階:汚染された手指が別の患者と直接接触,あるいは患者が直接触れる可能性のある環境に付着する
San Juanらの興味深い報告がある[19].心臓手術1432例における術後創部感染による縦隔炎症例の解析で,MSSA検出例では78%が術前鼻腔MSSAと菌株が一致していた.しかし,MRSA検出例では,全例とも術前鼻腔MRSAと菌株が異なっていた.そして,このMRSA検出例の患者の菌株はすべて同一であった.つまり,MSSA手術部位感染は術前の鼻腔由来であったが,MRSA手術部位感染では鼻腔由来ではなく患者間での伝播であり,医療従事者が感染を媒介していたことになる.ムピロシンによる鼻腔除菌は術後MRSA感染防止の保障にはならず,そこにはかならず院内感染防止策を伴う必要があることを認識しておくべきである.

■WHOでは“Clean care is safer care〝をスローガンに手指衛生の実施率改善に努めており,手指衛生の必要な5つの具体的場面を設定している[20]
① 患者に接する前(Before Patient Contact)
② 無菌的処置を行う前(Before Aseptic Task)
③ 体液曝露の可能性があった後(After Body Fluid Exposure Risk)
④ 患者に接した後(After Patient Contact)
⑤ 患者周囲環境に接した後(After Contact With Patient Surroundings)
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■手袋の着用は手洗いの代用ではなく,手袋の着用が手洗い不要の理由とはならない.手袋を外す際にどれだけ注意を払っても手指は汚染される.また,手袋には微小孔(ピンホール)が医療従事者が考えているよりはるかに多く存在し,着用後にもピンホールは生じうる.実際に手袋を脱いだ手から患者と同一菌が1.7-4.2%の割合で検出されている[21].実際,日本グローブ工業会によると,たとえ手術時の滅菌グローブであっても少なくとも1.5%にピンホールが空いているとされており,一般病棟で使用される安価なグローブであればどれほどのピンホールリスクがあるかは想像するにたやすい.

■手指衛生に関してはその方法が適切に行わなければ意味がない.石鹸と流水による手指衛生のエビデンスの多くが,手洗い時間が30秒~1分の検討であるのに対し,実際の臨床現場では平均15秒未満である.また流水の場合,乾燥に時間もかかるが,手洗い後の手指の乾燥はしばしば軽視されており,ペーパータオル3枚以上使わなければ十分な乾燥はできず,濡れた手は乾燥した手の100-1000倍の菌を運ぶ[22].節約と称して使用するペーパータオルの枚数を制限している病院もあるが,言語道断である.

■手指衛生以外にも,うがい,マスク,感染症患者との接触を避ける等,市民レベルで可能な感染症予防策は多数存在する.加えてこれらをより効率的に行うために,その時点で流行している感染症の周知も必要である.下の図はインフルエンザ流行時の内務省衛生局が1922年3月に描いたものである.この当時はまだインフルエンザの原因がウイルスであることすら分かっていなかった時代であるが,すでに市民レベルで可能な予防策が推奨されていたことが分かる.我々は感染症の病原体が判明するよりずっと以前からその予防法を知っていたのである.これらの予防策をより広く習慣づける啓蒙活動が必要である.
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(2) ワクチン
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■ワクチンは敗血症予防の要の1つである.日本のワクチン接種体制はこれまで,新規ワクチンの定期接種化が滞った機能不全の状態にあり,医療・保険制度が優れているにもかかわらず,世界的にはワクチン後進国であることを認識しておかなければならない.これは2012年から2013年にかけての風疹大流行を見ても分かる通りである.ワクチンは接種率が低ければ効果は発揮されない.集団免疫に必要な85%の接種率を達成する必要があるが,日本では市民,行政ともに意識が極めて希薄と言わざるを得ない.

■ワクチン接種率を上げる1つの方法は定期接種化である.しかし,日本では新たに1つのワクチンを定期接種に組み込むためには予防接種法の改正が必要であり,国会の審議と議決が必要となり,非常に時間を要する.しかし,国会運営の関係で,予防接種法改正法案は重要法案とみなされることなく先送りとなり,予定から何年も遅れることは珍しくない.このような現状では2020年までにワクチン接種率を向上させることは困難といえる.なお,「新たな定期接種を国会の審議を必要としない政令で定めることができる」とする特例措置の条文が予防接種法には存在するが,いまだに活用されたことがない.

■ワクチンが普及しない原因の1つにその評価の行い方が大きな問題点として挙げられる.ワクチンの評価は,その感染症予防率の高さと予防する感染症の重篤度で決定される.死亡率,重症化率,後遺症発生率が高い感染症を予防するワクチンは要望が高く,現在普及している大部分のワクチンが該当する.しかし,このようなワクチンの効果は,普及してその感染症が減少すると一般の目に止まらなくなるためか過小評価されるようになる.加えて,日本には感染症サーベランスシステムが貧弱であり,ワクチンの効果を正確に把握しにくい現状がある.

■HPVワクチンの1件を見ても分かる通り,ワクチンでは副反応が問題とされやすい.ワクチンはその性質上,免疫系の副反応を多少ともなうことは避けられない.また,ワクチンは健康な人間に接種されるため,病気を発症している患者に投与される薬剤とは異なり,副反応に関するハードルは高くなってしまい,過剰にたたかれる要因となっている[23].また,ワクチン接種後に発生した疾患や死亡に関して,ワクチンとの関連性を判定することは基本的には不可能であり,あくまでも前後関係に過ぎない.しかしながらこれらが因果関係ととられる誤解が生じ,結果的にワクチンの風評を生み出していることも少なくない[24]

■このような性質をもつワクチンは,いわゆる薬害団体や反医療主義者,科学的根拠のない医療推進者の餌食となりやすく,過剰なまでの反ワクチン主義をもたらし,ワクチン接種の妨げの一因となっている.厄介なことに,ワクチン反対論者は製薬メーカーのビジネスとからめた陰謀論を唱え,常に科学的研究法や科学的研究論文の査読を拒絶する特徴がある[25].これがエスカレートし,中には医師が反ワクチン団体から利権をもらうケースも存在し[26],ときに金銭と引き換えに副作用を捏造した不正論文がでたこともある.1例としてはワクチン副作用を捏造し,5600万円の賄賂を受け取っていたWakefield氏[27]が有名であり,ここ100年において最も医学にいたずらにダメージを与えた事件であったとされる.

■反ワクチン主義によって広まる情報は,誤った情報が加えられながら拡散されていく.中には「ワクチンに故意にウイルスを混ぜている」「不妊になる」といった全く根拠がない驚くべきデマも広がっている.そこに拍車をかけるのが反ワクチン論者による市民向け一般書籍である.このような書籍はその執筆者にとって都合のいい情報だけを集めて過剰なまでに危険性ばかりを訴える内容となっており,医学的に完全に間違った内容も記されていることはしばしば存在する.しかしながら,例えその内容が完全に間違っており,かつ有害な内容であっても,その書籍の出版を禁止する法律は存在せず,その執筆者に責任が及ぶこともない.一方の医療従事者はワクチンのリスク&ベネフィットをバイアスなくできる限り正確に評価し,責任をもって接種有無推奨を決定する立場にあり,どちらの意見がより妥当であるかは明らかである.しかしながら,大衆は既存のシステムに反対する刺激的な内容に興味がいきがちである.ワクチンプログラム普及のためには,医療と行政はより正確な情報を発信するだけでなく,どの情報がより正確であるかを判断する術についても市民に伝えていく必要がある.

■肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌の予防接種は,特に免疫不全患者,脾臓摘出患者にとって重要である.これらの感染をきたした場合,脾臓摘出後の患者では58%が敗血症に罹患するとされる.しかしながら,これらの大部分の人々は,敗血症を誘発しうる細菌に対抗しうる予防接種を受けておらず,その感染の危険性について教育されていない現状がある.

■インフルエンザワクチンも,インフルエンザそのものによる敗血症や,その後の二次性細菌感染による敗血症を予防する上で重要である.特に高齢者のインフルエンザに起因する肺炎は敗血症に進展して致命的となりやすいため,インフルエンザワクチンの社会全体での普及は急務である.しかしながらその効果と副作用を指摘する声が主にインターネット上で流れている(とりわけTHINKERというブログは間違いだらけである).WHOや厚生労働省がインフルエンザワクチンを無効と記載しているわけではないにもかかわらずなぜか誤った情報が流布されている模様である.インフルエンザワクチン接種は強制ではなく,接種するかしないかは個人が決定すべきである.その際に考慮しなければならないのはリスク(副作用)とベネフィット(利益)どちらが大きいかである.副作用を懸念するだけではなく,インフルエンザワクチンを打たず,防ぎえたかもしれない感染を許すことで,他の人にも感染し,それが生命を奪ってしまう可能性も考えるべきであり,それらをふまえずして「インフルエンザワクチンは打ってはいけない」と他人にすすめることは言語道断であり,そのような発言を,ましてや責任もとれない非医療者がすべきではない.

■インフルエンザワクチンの学童集団接種は1960年代から行われてきた.しかし,1994年に効果が乏しいことが推定されたため中止となっている.ところが,集団接種中止後に,学級閉鎖日数,欠席率が有意に上昇した[28],集団接種は幼児の死亡率を低下させていた[29]ことが報告されている.さらに,学童集団接種中止後に高齢者の死亡率が増加していた[30],学童集団接種により高齢者の肺炎と死亡率は36%減少した[31]という報告もなされている.これは,ワクチンを接種することで他の人への感染も予防し,死亡を回避するという間接的保護効果(indirect protection)として知られ,これをもって世界がインフルエンザワクチン接種推進へと舵を切るに至っている.

■ワクチン接種率が高まれば集団免疫効果が現れ,接種を受けていない者まで含め社会全体がワクチンの恩恵を受けるようになる.そのためにも,ワクチンを接種しやすい環境を整えることも重要である.米国では「予防接種が簡単に受けられるよう努める」「予防接種に関するバリアを探して,可能な限りこれをなくすよう努める」「受診者の費用をできるだけ少なくするよう努める」「できるだけ多くの適応があるワクチンを同時に接種するよう心がける」といった目標がかかげられている[32]

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by DrMagicianEARL | 2013-09-13 00:00 | 敗血症 | Comments(0)
2011年10月25日作成
2013年9月4日改訂


2.エンドトキシン吸着カラムPMX-DHPは敗血症の予後を改善しうるか?
Summary
・エンドトキシン吸着カラム(PMX-DHP)は日本発の血液吸着療法であり,敗血症に適応がある.
・EUPHAS studyを含め,現時点でPMX-DHPが敗血症の死亡率を改善するとするRCTレベルのエビデンスはなく,血圧上昇効果についてもエビデンスは明確ではない.
・腹部手術を要する敗血症患者においては有用な可能性があるかもしれない.
・活性化好中球吸着が予後を改善しうる根拠は不明確である.
・PMX-DHPがHMGB-1を吸着するか否かは両方の結果が報告されており,現時点では定まっていない.
・現在,フランスのABDO-MIX,米国・カナダのEUPHRATESSがPMX-DHPを評価するRCTとして施行されている.
■近年,重症敗血症治療において日本発のエンドトキシン吸着カラムPMX-DHP(polymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion)が注目され,グラム陰性菌感染症において頻用されるようになってきている.抗菌薬であるポリミキシンBはエンドトキシンと結合する性質をもっており,PMXを吸着体として直接血液灌流(direct hemoperfusion:DHP)させることによりエンドトキシンを吸着させるものである.本邦では1994年に保険適応となり,臨床応用されて世界に発信されている治療法である.

■PMX-DHPが保険適応となった根拠は小玉らの臨床治験結果[16]が根拠となっている.この研究では,重症敗血症42例に対し計61回のPMX-DHPが施行され,血中エンドトキシン濃度の有意な低下,収縮期血圧の有意な上昇がみられた.しかしながら,症例数の少なさ,pre-post testであることから,根拠としては乏しい.

■その後,本邦において数多くの報告がなされてきたが,その多くが症例集積研究であり,対照群をもたないものであった.これは,保険適応されたために逆に倫理的な面から保険適応疾患に対してPMX-DHPを施行しないという選択肢の根拠が得られないからである.このため,PMX-DHPの効果に対する検証は海外での研究に頼るしかなかった.

■2005年にVincentら[17]はpilot-controlled studyにて,グラム陰性桿菌が原因と考えられる腹腔内感染症が原因の重症敗血症患者36例を無作為に2時間のPMX-DHP群と標準治療群に割り付けて比較したところ,両群間のエンドトキシン値やIL-6レベルの推移や死亡率に有意差は認めなかった.

■また,Cruzらは2007年にPMX-DHPに対する28報の英語論文によるシステマティックレビューを行い[18],その結果,PMX-DHPの施行で平均血圧の上昇(19mmHg),ドパミン使用量の低下,P/F比の改善および転帰の改善効果(死亡率53%低下)が示されている.ただし,このシステマティックレビューはほとんどが本邦での研究であり,また,本邦から報告された8編のRCTのうち7編は同一研究者のもので,同一年に2編のRCTが報告されたことが3回もあり,症例のクロスオーバーやdouble publicationの可能性が否定できないなど問題点がある.2013年にZhouらは,敗血症における血液浄化の16報のメタ解析を報告し[19],これにおいてもPMX-DHPの死亡リスク減少効果が示唆されたが,同様の問題点をかかえている.よって,バイアスを極力除外した大規模なRCTが必要である.

■PMX-DHPを評価した唯一の大規模RCTはEUPHAS(Early Use of Polymixin B Hemoperfusion in Abdominal Septic Shock) studyである[20].イタリアの10施設で行われた前向き多施設RCTであり,腹腔内感染由来の重症敗血症,敗血症性ショックの64例を対象とし,緊急手術後6時間以内にPMX-DHP施行群と標準治療群に無作為に割付し,割付から24時間以内にPMX-DHPを2時間施行し,さらに24時間以内に2回目のPMX-DHPを施行している.このstudyでは臨床的予後の改善に有効であると結論づけている.

■しかしながら,本研究にはさまざまな問題点が指摘されている.1つは64例の時点で死亡率が有意にPMX-DHP群で低いとの判断で試験が早期終了となっている点である[21].有用性をもって早期終了した臨床試験の効果は誇張されていることがあり,早期終了した試験は効果のない治療で30%の相対リスクの低下を示し,真に20%の相対リスク低下効果のある治療では40%以上の低下を示すとされている[22].ましてや有意差がでたのは生存期間に関する比例ハザード分析結果によるものであり,あまり前例がない.

■また,EUPHAS studyを掲載したJAMA誌にはこの論文に対して3 編のletter to the editorが掲載されている[23-25].まずVincentはcontrol群とPMX-DHP群が各々34例と30例を集積してあるこの治験でそもそも救命率に統計学的に有意の差はないとしている.Amaralらも同様に統計学的手法に懸念を表明している.確かに本研究では死亡関係のアウトカムでは,院内死亡率(41% vs 67%, p値記載ないが計算上は0.049),比例ハザード分析による生存期間は有意に改善しているが,これらは一次・二次評価項目のいずれにも含まれていない.二次評価項目に28日死亡率が含まれているが,32% vs 53%(p=0.13)であり,有意差はない.よって,この報告をもって予後改善が示されたとは言えないであろう.またKidaらは両群間における起炎菌の分布に関しても懸念を示している.

■これらの中で特にVincentの意見はこの死亡率改善の有効性を真っ向からから否定するものであり,Vincent自身がPMX-DHPの重症敗血症に対する有効性に関してpilot studyを行い,positiveな結果を出しているだけにその指摘の重みは大きい.

■また,腹部由来敗血症で対照群における救命率が50%以下というのは,治療法の如何に拘わらず考えられない低さである.EUPHAS studyのPMX-DHP群の救命率はPMX-DHPを用いないでも達成できるごくありふれた救命率であり,有意の差が出たのはただ単に対照群の救命率が異常に低かったからであると推察される.また,EUPHAS studyの対象は,重症敗血症/敗血症性ショックの中でも感染巣を比較的コントロールしやすく,それ故救命率も良好な腹部敗血症であり,その結果を敗血症全体に安易に一般化はできない.

■イタリアではPMX-DHPがグラム陰性菌敗血症で発症する急性腎不全に対する抑制効果があることをRCTで示した[26].その結果,PMX-DHP施行患者はapoptosis誘導因子を低下させることで腎上皮細胞のapoptosisを低下させるとともに,糸球体透過性にかかわる蛋白であるcaspase-3,8,9の発現を回復させることで糸球体透過性を回復させることがin vitroの評価で示されている.この結果から,PMX-DHPは腎損傷の早期予防に効果を発揮する可能性がある.

■PMX-DHPで血圧が上がると臨床経験でよく言われているが本当であろうか?PMX-DHPによって血圧が上昇する機序としては,エンドトキシンが関与しないグラム陽性菌感染症でも血圧が上昇する報告があることから,エンドトキシン吸着ではなく,血管拡張作用をもつ内因性大麻と呼ばれる内因性カンナビノイド(単球/マクロファージから産生されるanandamide(ANA)と血小板から産生される2-arachidonyl glycerol(2-AG))を吸着する[27]ことによる効果が主体ではないかと考えられている.

■先のEUPHAS study[20]では一次評価項目はPMX-DHP施行前から施行72時間の平均血圧(MAP)および血管作動薬必要量の変化であり,確かに有意な改善は示されている.しかしこれは,PMX-DHP群が施行前後で有意な改善を示したというデータにとどまり,対照群では変化がなかったということだけでPMX-DHP群で血行動態が改善したと結論づけているに過ぎず,Amaral[24]が指摘する通り,治療前後の比較をもって有効性を結論づけることはできない.実際にAmaralらはPMX-DHP群と対照群のデータの直接比較を行うと,症例数が少ないことによる検出力不足はあるものの,有意差はなかったとしている.

■また,PMX-DHPは活性化好中球,MMP-9(matrix metalloproteinase-9)を吸着することも知られている[28].一般的に白血球活性化は敗血症の増悪因子と考えられているが[29],問題はその吸着が予後を改善しうるか否かである.Madoiwaら[30]は,好中球エラスターゼによりフィブリンが切断され,分子表面上に露呈する部位をE-XDPとして好中球エラスターゼ濃度のサロゲートマーカーとして計測したところ,E-XDPが正常より高いと予後は悪化するが,正常より低い場合ではさらに予後が悪化していた.また,好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタットが180日死亡率をむしろ悪化させたとするSTRIVE study[31]の結果を見ても,活性化好中球への介入は必ずしも良好なアウトカムをもたらすわけではないことが考えられる.

■Kiguchiらは,EAAのマックスキャリブレーターの最大化学発光度(CImax:maximal chemiluminescent intensity)が敗血症患者の死亡を予測する有用なマーカーであると報告している[32].確かに,死亡予測としてのCI maxの精度は確かに高い(AUROC 0.902)が,気になるのは白血球数である.CI maxほどではないがかなり精度がよい(AUROC 0.802).これは,背景因子比較で生存群と非生存群で白血球数に大きく開きがあり(標準偏差域すら重なっていない),非生存群ではむしろ好中球減少傾向があったことを考えれば納得がいく.問題はCI maxへの白血球数の影響である.CI maxは検体内の白血球全体の活性化能を見ている.すなわち,「1個あたりの白血球の活性化能×白血球数」を見ていることになり,白血球数の影響は理論上は無視できず,白血球数が少ないことによるlimitationは本報告の考察でも触れられている(非生存者17例中10例は白血球数が4000未満).

■以上から,PMX-DHPが活性化好中球を吸着することで予後を改善しうるかについてはquestionableであると言わざるを得ない.

■PMX-DHPがHMGB-1(Human Mobility Group Box-1)を吸着しうるかについてはまだ結論が出ていない.PMX-DHP施行後にHMGB-1が低下するとする報告は散見されるが,直接吸着,二次性低下,原疾患治療の結果,のいずれであるかについては不明である.Abeらは,PMX-DHPを施行した20例の解析を行い[33],HMGB-1がカラム前後で濃度が低下していたと報告している.しかし,倭らは,カラム前後で濃度は変化せず,HMGB-1を吸着しないとしている[34].晩期メディエーターであるHMGB-1をもし吸着できないのであれば,PMX-DHPを晩期に施行しても予後が改善しないとする結果を説明しうる一因である可能性もある.

■重症例においては効果が得られにくいとする報告もある.秋吉らは,大腸穿孔症例において,POSSUM(Physiological and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and morbidity)予測死亡率50-70%以上の症例にPMX-DHPは有効だが,予測死亡率70%以上の症例には有効でないとしている[35].松田らも,PMX-DHPは敗血症から敗血症性ショックへと移行するごく過程の極初期,かつ一部の症例のみに効果を発揮するとしている[36].Sawaらは,敗血症性ショック患者の後ろ向き研究において,PMX-DHP群30例とバソプレシン群30例をマッチングさせた解析を行っており[37],90日生存率はバソプレシン群が有意に高かった(83% vs 53%, p=0.008)としている.PMX-DHP群に限定したサブ解析では,消化管手術を受けた患者が受けなかった患者より生存率が有意に高かった(76.9% vs 52.9%, p=0.01).

■PMX-DHPはその手法から,高度侵襲を伴う医療介入行為の1つでもある.PICS(Post-Intensive Care Syndrome)[38]に与える影響はいまだもって不明であるが,長期的予後を悪化させる可能性は否定できず,予後改善エビデンスが不十分な状態での安易な適応はすべきではない.

■以上より,PMX-DHPは,特に腹部手術を要した敗血症患者に対して,何らかの効果は示唆されるものの,生存率を改善するにまでは至っていない.日本オリジナルである,PMX-DHPがSSCGの再改訂版において推奨されることが待望されてはいるものの,エビデンスは現時点ではあまりにも不十分である.PAMPsの概念,PICSをふまえると,その推奨度は決して高いものではないかもしれない.しかし,腹部手術を要した,グラム陰性菌による敗血症が強く疑われるならば早期からの使用は考慮してもよいかもしれない.

■現在観察研究であるEUPHAS 2 projectがイタリアで進行中[39]であり,また,2つの大規模RCTが進行中(フランスでABDO-MIX[40],アメリカがEUPHRATES trial[41])であり,その結果を待つことになる.ABDO-MIXは腹部手術を要する腹膜炎を合併した敗血症性ショック患者を対象とし,標準治療+PMX-DHP群と標準治療群を比較したフランス18施設共同RCTであり,一次評価項目は28日死亡率である.現在試験は終了し,解析が開始されており,早ければ2013年内には結果が公表されるとのことである.EUPHRATES trialは,エンドトキシン血症(EA値≧0.6)を伴う敗血症性ショック患者を対象とし,標準治療+PMX-DHP群と標準治療群を比較した米国・カナダ42施設共同二重盲検RCTであるが,EA値を高めに設定したためか症例数がなかなか集められない状況にある.

※人づてのうわさではあるが,どうやらABDO-MIXはポジティブな結果が出そうとのことである.

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[40] http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01222663
[41] http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01046669

←敗血症とエンドトキシン計測&PMX-DHP(1) ~エンドトキシン計測は重要か?~
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by DrMagicianEARL | 2013-09-04 00:00 | 敗血症 | Comments(0)
■COPD治療薬の1つ,長時間作用型抗コリン薬スピリーバ®レスピマット製剤で死亡リスク増加の報告が3年連続ででていた[1-3]中,大規模安全性試験TIOSPIR trialの結果がNew England Journal of Medicineに報告された.現時点ではabstractしか閲覧できないため,詳細については後日,本記事改訂で検証するが,ClinicalTrials.govを見る限り,ハイリスク集団を除外した研究デザインであり,安全性の担保とはならないため,私はまだ処方しない方針は変えない予定である.なお,本試験結果は欧州呼吸器学会(ERS)でも報告される模様である.
COPDにおけるチオトロピウム(スピリーバ®)レスピマット吸入と死亡リスク,TIOSPIR trial
Robert WA, Antonio A, Daniel C, et al; the TIOSPIR Investigatros. Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD. N Engl J Med 2013 Aug.31
Epub ahead of print

Abstract
【背 景】
 COPD患者のプラセボ対照比較試験において,チオトロピウムレスピマット吸入での5μg用量は,チオトロピウムハンディヘラー18μgと効果は同等であった.プラセボに比して,ハンディヘラーは死亡率減少に関連していたが,レスピマットでは死亡率増加が報告されていた.

【方 法】
 COPD患者17135例(40歳以上)を登録したこの1191施設共同無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間試験において,我々はチオトロピウムレスピマット2.5μg/日,5μg/日の安全性および有効性をチオトロピウムハンディヘラー18μg/日と比較した.一次評価項目は死亡リスク(非劣勢試験,レスピマット2.5μgまたは5μg用量 vs ハンディヘラー)と初回のCOPD急性増悪リスク(優越性試験,レスピマット5μg vs ハンディヘラー)とした.また,心疾患が安定している患者の安全性を含む心血管安全性も評価した.

【結 果】
 平均観察期間2.3年で,レスピマットはハンディへラーに比して死亡リスクは非劣性でり(レスピマット5μg vs ハンディヘラー:HR 0.96, 95%CI 0.84-1.09;レスピマット2.5μg vs ハンディヘラー:HR 1.00, 95%CI 0.87-1.14),初回増悪リスクは非優越性であった(レスピマット5μg vs ハンディヘラー:HR 0.98, 95%CI 0.93-1.03).死亡原因や主要な心血管有害事象発生は3群間で同等であった.

【結 論】
 COPD患者において,チオトロピウムレスピマット5μgと2.5μgは,ハンディヘラーと比較して安全性,有効性で同等であった(Boeringer Ingelheim社より基金を受けた;TIOSPIR ClinicalTrials.gov number, NCT01126437).
■2011年6月,British Medical Journalに,スピリーバ・レスピマットにより死亡率が52%増加したという衝撃の報告がなされた[1].5報のRCTのメタ解析で,レスピマット群vsプラセボ群の死亡率は90/3686 vs 47/2836であり,相対リスク1.52,95%信頼区間1.06-2.16 (p=0.02)という結果であった.それまでのUPLIFT試験や他のメタ解析を見ても,ハンディへラー製剤で死亡率が増加したという報告はなく,レスピマット製剤そのものによる死亡率増加と考えられた.この報告において,Singhらは,スピリーバ・レスピマットによってtiotropiumが予期せぬ血中濃度に達する可能性を指摘している.実際,スピリーバ・レスピマットで吸入されたtiotropiumの約3割が血中に移行するとされており,この血中移行性が死亡率に関与している可能性もある.ただし,このメタ解析は,患者が重複している問題点も指摘されている.

■Singhらの報告から送れること1ヶ月,Boeringer Ingelheim社とPfizer社はSinghらの報告に対する見解を発表.この2社の見解は以下の通り.
(1) Singhらの報告とは見解を異にしている.
(2) Singhらの報告の結論は新しい臨床的エビデンスに基づいたものではない.このメタ解析に使用された5つの臨床試験データはスピリーバ・レスピマットの添付文書にも反映されており,Boeringer Ingelheim社とPfizer社は臨床データを分析する際はSinghらと違い,詳細な患者データを使用して行っている.この解析結果では,スピリーバの致死的事象のリスクは数字上では不均衡だが有意差はなかった.
(3) 5つの臨床試験において見られた死亡率は,他の大規模なCOPDに関する試験と同様の範囲内であった.
この見解における(2)の2社による解析結果は明示されておらず,安全性への説明があいまいと言わざるを得ない.一方の日本呼吸器学会も何ら見解を示さなかった.

■さらに,2012年10月,今度はThorax誌から42のRCT,52516名のメタ解析でスピリーバ・レスピマットによる死亡率増加がDongらより報告された[2].この報告によると,スピリーバ・レスピマットは,死亡リスクがプラセボ群と比較して1.51倍(95%CI 1.06-2.19),スピリーバ・ハンディヘラー群と比較して1.65倍(95%CI 1.13-2.43),長時間作用型β2刺激薬群と比較して1.63倍(95%CI 1.10-2.44),長時間作用型β2刺激薬+吸入ステロイド群と比較して1.90倍(95%CI 1.28-2.86)有意に増加していた.

■そして2013年に入って,レスピマットとハンディヘラーの有害事象に関する初めてのhead-to-headの比較試験が報告された[3].本試験はオランダのコホートデータから40歳以上で少なくとも1年間情報を得られる患者を登録し,死亡リスクをCox比例ハザード回帰分析で算出した.共変量として喫煙歴,基礎疾患(気管支喘息,狭心症,虚血性心疾患,末梢動脈疾患,心筋梗塞,脳卒中あるいは一過性脳虚血発作,心不全,心室性不整脈,高血圧,脂質異常症,癌,肺炎,パーキンソン症候群,抑うつ,認知症,糖尿病,腎不全),併用薬剤を想定した.11287例が23422のチオトロピウム使用エピソードを有していた.496例がチオトロピウム使用中に死亡した.レスピマットはハンディヘラーと比較して死亡リスクは1.27倍(95%CI 1.03-1.57)有意に増加した.死因としては,心血管系・脳血管系の死亡リスクが最も高かった(HR 1.56, 95%CI 1.08-2.25).心血管系疾患を有する患者では死亡リスクは1.36倍(95%CI 1.07-1.73)有意に増加した.心血管系疾患を有さない患者では死亡リスクの増加は認められなかった(HR 1.02, 95%CI 0.61-1.71).

■これらの経緯があり,チオトロピウムレスピマット製剤の使用をストップさせた医師も多い.その中で今回のTIOSPIR trialをどうとらえるかが問題となる.
(1) 本試験は安全性を一次評価項目とした大規模二重盲検RCTであり,エビデンスレベルは高い.
(2) 製造・販売メーカーであるベーリンガー社とのCOIがある(というよりメーカー主導の試験である).
(3) 6ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある患者,不安定または致死的不整脈を有し,治療介入・変更が必要な患者,心不全(NYHA ⅢorⅣ)入院既往のある患者は除外されている
(4) レスピマットとハンディヘラーの安全性に有意差はないが,この試験の一次評価項目・二次評価項目では心血管リスクを有する患者での安全性は不明である.心血管リスクがこれまで危惧されてきたこと,Verhammeらの報告[3]で心血管リスク患者において特にリスクが高まることが示されていることから,TIOSPIR trialのデータでの心血管リスク患者に限定したサブ解析は行われるべきであろう.
■以上から,レスピマットは吸入力が弱い高齢者ではハンディヘラーより有利かもしれないが,心血管リスク患者ではやはり使用は回避すべきというsuggestionは変えるべきではないであろう.有効性はレスピマットもハンディヘラーも同等であり,COPDでは心疾患合併率もそれなりに高いことから,あえてレスピマットを選択するメリットは乏しいと思われる.

■なお,まだ結果未掲載であるが,二次評価項目は以下の通りである.
・120週でのFEV1
・COPD急性増悪による初回入院までの期間
・COPD急性増悪による入院回数
・最初の心血管有害事象までの期間
・COPD急性増悪回数
・中等症から重症のCOPD急性増悪までの期間
・主要な心血管有害事象による死亡までの期間

■長時間作用型抗コリン薬のtiotropium(商品名:スピリーバ®)はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)においてガイドラインでは第一選択薬に位置づけられている.

■抗コリン薬がCOPD患者にもたらす最も重要な作用は,ムスカリン受容体でのアセチルコリン阻害作用と考えられている.短時間作用型抗コリン薬はM2受容体とM3受容体を阻害し,節前神経終末における情報伝達を社団するが,この作用はCOPD患者では重要でないと考えられている[4].長時間作用型抗コリン薬は,薬物動態的にM1受容体とM3受容体に選択的に作用し[5],その作用持続時間は24時間以上である[6]

■tiotropiumはCOPD増悪および関連する入院を抑制させ,症状および健康状態を改善し[7],呼吸リハビリテーション効果を向上させる[8].COPD患者を対象とした大規模な長期臨床試験では,その他の標準的治療にtiotropiumを追加しても肺機能低下率に対して効果はなく,心血管系リスクに関するエビデンスも認められなかった[9].他の大規模試験では増悪の抑制に関して差は小さいもののtiotropiumの方がsalmeterolに比べて優れていたと報告されている[10]

■tiotropiumはBoeringer Ingelheim社でスピリーバ®として発売されており,Pfizer社が販売提携をしている.デバイスは当初ハンディへラーのみであったが,さらに効果を上げるべく,噴射ガスを使わずに細かい霧状に噴霧する新世代のソフトミスト吸入器であるレスピマットを開発し,販売開始となった.このレスピマットにより,より肺全体にtiotropiumが行き渡るようになり,さらなる治療効果が期待された.現在,米国を除く55カ国で使用されるに至る.

■抗コリン薬は吸収性が低く,アトロピンにみられるような全身性の副作用は少ない[11].主な副作用は口渇である.前立腺症状については報告例があるものの,因果関係を証明するデータは報告されていない.一方で,短時間作用型抗コリン薬ipratropiumを連用しているCOPD患者において,心血管疾患が若干増加するという予期されていなかった副作用が報告されている[12,13]

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by DrMagicianEARL | 2013-09-03 12:00 | 文献 | Comments(0)
2011年10月25日作成
2013年9月2日改訂

1.エンドトキシン計測は重要か?
Summary
・エンドトキシンはグラム陰性菌外膜に存在し,TLR4に認識され,細胞内シグナル伝達を介して炎症性サイトカインを誘導する.
・本邦ではエンドトキシン計測はリムルス反応を用いた比濁時間分析法が用いられるが,その数値の意義は明らかではなく,偽陽性・偽陰性に注意が必要である.
・EAA法が比濁時間分析法より優れたエンドトキシンマーカーとして開発されたが,重症度や死亡率予測には有用であるが,エンドトキシンに対する特異度は低い.
・エンドトキシンはPAMPsの1つであり,これのみをターゲットとした治療が予後を改善しうるかについては不明確である.

■エンドトキシンはグラム陰性菌の外膜に存在する物質である.グラム陰性菌の外膜はコアとなる糖鎖に長鎖の脂肪酸アンカー(lipid A)が結合したリポ多糖(lipopolysaccharide:LPS)の構造をもつ.エンドトキシンの生物活性は主にlipid Aの部分にある.lipid Aの構造・活性は菌種によって異なる.血中に入ったLPSはLPS結合蛋白と結合し,その複合体が単球/マクロファージ表面のmCD14(membrane CD14)受容体と結合する.その結果,LPSはTLR4(Toll-Like receptor)を介して細胞内へのシグナル伝達が行われ,炎症反応が発生する.血管内皮細胞はCD14を持たないが,LPSが血液中の可溶性sCD14(soluble-CD14)蛋白と結合することにより膜上のTLR4に認識される.

■本邦のエンドトキシン測定法は,現在は比濁時間分析法[1]がまだ主流を占めている状態にある.この分析法は,検体溶液のゲル化反応(リムルス反応)を透過する光量値を計測し,エンドトキシン濃度を測定するものである.3.5-5pg/mLをカットオフ値とすると,グラム陰性菌が血液から検出された菌血症の患者を診断において感度50%未満である[2].そこで,感度を改良するため,60分だった測定時間を200分にまで延長させると感度が改善し,カットオフ値を1.1pg/mLまで下げることが可能であった.このときのグラム陰性菌感染症診断での感度は81.3%,特異度は86.1%となったとしている[2].ただし,この検査法は,あくまでもエンドトキシン濃度を直接計測しているのではなく,カブトガニの血球抽出液を用いたリムルス活性をみたものであるため,リムルス活性が血中に見られなかったからといってエンドトキシン濃度が高くないと断定することはできないこと,真菌のβ-D-グルカンに対しても反応して偽陽性となることに注意が必要である.

■その後登場したのがEAA(Endotoxin Activity Assay)である.血中のエンドトキシンと試薬中のマウス抗エンドトキシンモノクロナール抗体(IgM)が免疫複合体を形成し,ここに補体が結合してオプソニン化され,好中球の補体レセプター(CR1,CR3)を介して好中球に貪食されることで好中球はプライミングを受ける[3].このプライミングにより好中球が活性酸素を産生が生じる.この活性酸素がルミノール試薬を発光させるため,この化学発光濃度をルミノメーターで計測するという原理である.なお,試薬に含まれるザイモザンも好中球に取り込まれ,活性酸素の産生を増強する.

■EAAでのエンドトキシンレベル算出は3種類の検体から得られたデータにより算出される.
(1) Tube 1:コントロール
検体中の好中球のみで抗エンドトキシン抗体なし.
ベースライン.

(2) Tube 2:検体
検体中の好中球+抗エンドトキシン抗体.
検体中のエンドトキシン活性を計測する.

(3) Tube 3:マックスキャリブレーター
検体中の好中球+抗エンドトキシン抗体+過剰のエンドトキシン(大腸菌O-55:B5)
被験者の好中球が示す最大活性酸素産生反応を測定する.

EA値=(T2-T1)/(T3-T1) (0-1.0)
low EAAレベル:0.00-0.39
mid EAAレベル:0.40-0.59
high EAAレベル:0.60-1.00

1検体をn=2で測定し,その平均値を採用.n=2の測定に対する変動係数(CV値)はEA値が0.0-0.2では30%以下,0.21-1.0では15%以下である必要がある.
■Marchallらは重症患者74例でEAAと比濁時間分析法を施行し,EAAが優れていることを報告している[4].さらにMarchallらは,857例のICU入室患者を対象にEAAの測定を行った(MEDIC study)[5]ところ,ICU入室患者の57.2%がmid-high EAAレベルであり,グラム陰性菌感染はlow EAAレベル患者の1.4%,mid EAAレベル患者の4.9%,high EAAレベル患者の6.9%であり,グラム陰性菌感染の感度85.3%,特異度44.0%と報告された.また,重症敗血症への危険性について検討した結果では,low EAAレベル患者で4.9%,mid EAA患者で9.2%,high EAA患者で13.4%であった.このように,EAAは重症度や死亡率予測には有用であるが,エンドトキシンに対する特異度は低いといわざるを得ない.本邦ではMaruyamaらがICU患者40例においてコントロール群,SIRS群,sepsis群,severe sepsis群,septic shock群に分けてEAAを施行しており,EAAレベルが増加すると重症度も高まる傾向がみられた[6].また,グラム陽性菌とグラム陰性菌の感染を比較して,グラム陰性菌の感染の方が高サイトカイン血症の程度が高いことも報告されている[7]

■エンドトキシン吸着カラムを利用したPMX-DHPの使用で敗血症改善の報告論文も散見していることからも,エンドトキシンがグラム陰性菌敗血症病態において重要であるという推論は成り立ち,これまで敗血症における主流の考えであった.しかしながら,近年,様々なPAMPs(Pathogen Associated Molcular Patterns)[8]が発見され,エンドトキシンがPAMPsの1つに過ぎないことから,敗血症増悪の要因にはなっても,どこまで重要であるかはまだ明らかではない.

■PAMPsにはエンドトキシンの他に,Lipoteichoic acid,Triacyl lipopeptide,Peptideglycan,Lipoprotein,dsRNA,Flagellin,Diacyl lipopeptide,ssRNA,Unmethylated CpG DNA,Uropathogenic E.coliなどがある.また,宿主側の因子としてNecrotic tissue, Heat Shockl Proteins,Fibrinogen,Surfactant protein A,HMGB-1,Neutrophil elastase,S100s,IL-1a,Uric acid,Annexins,FibronectinなどのAlarmins[8,9]も病態を悪化させるメディエーターであり,PAMPsのみならずAlarminsまで加えたDAMPs(damage-associated molecular patterns)[8,10]を敗血症本態ととらえる必要がある.

■最近エンドトキシンがTLR-4に結合するのを阻害する新薬としてのEritoran(E5564;synthetic toll-like receptor 4 antagonist)がPhaseⅡ[11]で良好な成績をおさめ,敗血症治療でおおいに期待されたが,PhaseⅢ(ACCESS study)では28日死亡率を改善させるにはいたらず[12],この結果はPAMPsの概念から考えると十分納得できるものである.

※実はPhaseⅢについてはプロトコルがかなり甘く,1例1例詳細を調べていくと,抗菌薬治療がかなり遅れるなど原疾患治療が不十分だった症例が多かったことを指摘する声もあり,研究デザインに問題があった可能性がある[13].実際にtrialに参加した施設の医師に聞くと,明らかな手ごたえはあったとのことである.現在,Eritoranは敗血症領域ではPhaseⅢをクリアできなかったが,インフルエンザに対する研究を開始しており,すでに致死的インフルエンザ感染マウスモデル研究でポジティブな結果がでている[14]

■DIC治療薬であるrecombinant thrombomodulineは,レクチン様ドメインがエンドトキシンを吸着することが知られている[15]

■エンドトキシン血中濃度とサイトカイン血中濃度が相関していないことも報告されている[7].また,Kiguchiらの報告でも,敗血症患者の生存群と死亡群でEA値に有意差はみられなかったとしている[16]

■以上から,エンドトキシンは敗血症病態においてそれなりに関与はしているが,それ単体が重要な意味合いをもつわけではない可能性もあり,エンドトキシンを中心とする治療戦略は再考すべき時期にきているかもしれない.最近感染による生体反応の程度は種々の因子により決定されるものであり,エンドトキシン以外のものも含めたPAMPsを検討する必要がある.

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→敗血症とエンドトキシン計測&PMX-DHP(2) ~PMX-DHPは敗血症の予後を改善しうるか?~
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by DrMagicianEARL | 2013-09-02 00:00 | 敗血症 | Comments(0)

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